説明

閉鎖型ガス循環式冷凍装置及びその運転方法

【課題】圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を調整可能で、簡易かつ低コストな閉鎖型ガス循環式冷凍装置を実現する。
【解決手段】閉鎖型空気冷媒式冷凍装置10Aは、圧縮機22で圧縮された高温高圧の冷媒空気を、水冷式熱交換器16及び熱回収熱交換器18で冷却した後、膨張機26で膨張して極低温で低圧の冷媒空気とする。この低温低圧の冷媒空気をブラインクーラ20に供給する。膨張タンク51、圧縮機吸入側接続路52及び圧縮機吐出側接続路54からなる密閉系冷媒空気給排装置50が設けられ、圧力センサ62で圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧を検出し、該冷媒空気圧が設定範囲となるように、膨張タンク51と圧縮機吸入側冷媒空気路12a又は圧縮機吐出側冷媒空気路12bとの間で冷媒空気を給排する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気冷媒式冷凍装置に代表されるような、気相で循環するガスの顕熱によって冷却を行なう冷凍装置に関し、詳しくは、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を調整可能にした閉鎖型ガス循環式冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒として空気を用い、圧縮機で高圧高温の空気とし、これを冷却水を用いた冷却器や冷熱回収熱交換器で冷却した後、圧縮機と同一の駆動軸で駆動される膨張機で低圧低温の空気とし、この低温低圧空気の顕熱で冷却を行なう空気冷媒式冷凍装置が知られている。空気冷媒式冷凍装置は、フロンやアンモニア等の冷媒を用いないので、環境を害しない利点がある。
【0003】
このような空気冷媒式冷凍装置には、冷媒空気循環系の一部に大気開放端を具えた開放型空気冷媒式冷凍装置(以下開放型装置という)と前記冷媒空気循環系が大気に対して閉鎖されている閉鎖型空気冷媒式冷凍装置(以下閉鎖型装置という)とがある。開放型装置は、例えば膨張機出口側の低温空気を冷凍庫内で放出し、この低温空気で冷却対象物を冷却し、冷却に供した後の空気を圧縮機吸入口に接続された圧縮機吸入側冷媒空気路に戻している。そのため、圧縮機吸入側冷媒空気路の冷媒空気圧は、常に大気圧に保持されている。一方、閉鎖型空気冷媒式冷凍装置は、冷媒空気循環系が大気に対して閉鎖されている為に、膨張機出口側の低温空気とブラインとを熱交換させ、冷却したブラインで冷却対象物を冷却するブラインを介在した熱交換構成にしている。そのため、圧縮機吸入側冷媒空気圧は、運転状態によって異なり、一定とはならない。
【0004】
閉鎖型空気冷媒式冷凍装置は、大気圧で運転を開始した場合、冷媒空気循環系内の冷媒空気が徐々に冷えていき、体積の減少によって、冷媒空気循環系内の空気圧は徐々に低下し、圧縮機吸入側では負圧になる。そのため、圧縮機の圧縮機能や膨張機の冷却機能が急激に低下し、あるいは故障の原因となる。従って、開放型装置と閉鎖型装置とで、同一な(圧力等)の設計仕様の装置を兼用できず、夫々別な設計仕様の装置が必要になり、高コストとなる。
【0005】
閉鎖型装置の圧縮機吸入側冷媒空気圧を調整可能とすれば、圧縮機吸入側で大気圧となることが出来、前記冷却機能の低下を解消できるとともに、耐圧的に一機種で閉鎖型装置と開放型装置とを兼用できると共に、閉鎖型装置として用いられとき、冷却機能の低下を解消できる。
【0006】
かかる圧縮機吸入側冷媒空気圧を調整可能とする技術として、例えば特許文献1が開示されている。
かかる特許文献1の装置は、開放型装置であるが、圧縮機吸込圧の異常低下時に、乾燥空気を冷媒流路に供給し、圧縮機吸込圧が大気圧以上になると、冷媒空気の一部を外部に放出する流路閉塞防止兼圧力調整手段を具えている。
前記特許文献1に開示された装置は、元々膨張機出口側の低温空気を冷凍庫内で放出する開放型の装置であって、閉鎖型装置ではないが、圧縮機吸込圧を大気圧前後に維持する点において、耐圧的に一機種で閉鎖型装置と開放型装置とを兼用できる課題を解決出来る。
しかしながら前記装置にあっては、圧力調整のために圧縮機吸入側に乾燥空気導入部と空気放出路を設けているために導入する空気圧と放出する空気圧が平衡し易く、円滑な圧力制御が困難になり易い。
また、閉鎖型の冷凍装置において、例えば特許文献2において、冷媒ガス補給装置から導入経路を介して冷媒ガス循環経路を形成する圧縮機吸入経路に、露点約−30℃の乾燥空気を導入する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−317081号公報
【特許文献2】特開平10−47829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献2に開示された装置は、圧縮機吸入経路に、露点約−30℃の乾燥空気を導入して、その後に冷媒ガス循環経路内が所定圧力、例えば約1kg/cm2
G程度に充圧された後、圧縮機を起動する閉塞型装置(段落[0019]参照)ではあるが、段落[0008]に開示のあるように、前記冷媒ガスにより蓄冷材を冷却する運転と、前記循環冷媒により被冷凍物を冷凍する運転とを、同時に又は異なる時間帯に行うという特殊な冷凍装置に適用するもので、圧縮機を起動する前に乾燥空気を導入する旨の開示しかなく、圧縮機吸入側圧を調整することの記載はない。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、空気又は窒素ガス冷媒とし、簡易かつ低コストな装置構成で、圧縮機吸入側圧を調整可能な閉鎖型ガス循環式冷凍装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明の閉鎖型ガス循環式冷凍装置は、駆動装置の単一出力軸に連結された圧縮機及び膨張機と、圧縮機吐出側冷媒ガスを冷却する冷却器と、空気または窒素ガスからなる冷媒ガスで冷却対象物を冷却するブラインを冷却するブライン冷却器と、冷却器で冷却された冷媒ガスをブライン冷却器からの戻り冷媒ガスでさらに冷却する冷熱回収熱交換器とを備えた閉鎖型ガス循環式冷凍装置において、大気圧以上の圧力を有し且つ高圧ガス保安法適用外圧力である0.2MPa(ゲージ圧)未満の冷媒ガスが封入された膨張タンク、膨張タンクと圧縮機吸入側冷媒ガス路とを接続する圧縮機吸入側接続路、及び膨張タンクと圧縮機吐出側冷媒ガス路とを接続する圧縮機吐出側接続路からなる密閉系冷媒ガス給排装置と、圧縮機吸入側冷媒ガス路を流れる冷媒ガスの圧力を検出する圧力センサと、を備え、圧力センサで圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を検出しながら、膨張タンクから圧縮機吸入側冷媒ガス路への冷媒ガスの補給と、圧縮機吐出側冷媒ガス路から膨張タンクへの冷媒ガスの排出とを行い、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を設定範囲に保持するように構成したものである。
【0011】
本発明装置では、外部への開放口のない前記密閉系冷媒ガス給排装置を設けている閉塞型装置であっても、膨張タンクから圧縮機吸入側冷媒ガス路への冷媒ガスの補給と、圧縮機吐出側の冷媒ガス路から膨張タンクへの冷媒ガスの排出とを行うために、圧縮機吐出側と吸入側の圧力差を利用して確実に、膨張タンクよりの冷媒ガスの補給と膨張タンクへの冷媒ガスの排出を行う事が出来る。
また、冷媒ガスの補給と排出は膨張タンクを経由する閉鎖循環路であるために、冷媒ガスの無用な大気放出がなく閉鎖循環系を維持しながら、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を調整可能になる。これによって、膨張タンクを高圧ガス保安法適用外圧力である0.2MPa(ゲージ圧)未満に保持することができる。
この結果閉鎖型装置であっても開放型装置と同一な(圧力等)の設計仕様の装置として兼用でき低コスト化が可能となる。
【0012】
また、冷媒ガスの外部への放散が生じない。そのため、冷媒ガスの損耗がなくなると共に、外部空気が冷媒ガス路に混入しないので、冷媒ガス中に外部空気の湿分が混入しない。従って、膨張タンクに冷凍装置の運転温度より低い露点をもつ乾燥空気若しくは窒素ガスを封入しておけば、常に冷媒ガスの露点温度以上で運転できるので、除湿機を必要とせず、また、冷媒ガス含有水分の凍結による冷媒ガス流路の圧力損失増加の問題も起こらない。更に、密閉系冷媒ガス給排装置を用いることで、冷媒ガスの損耗を抑制できる。
【0013】
また、膨張タンクの冷媒ガス圧を圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧より高圧に保持すると共に、圧縮機吐出側冷媒ガス路の冷媒ガス圧より低圧の且つ高圧ガス保安法適用外圧力である0.2MPa(ゲージ圧)未満にしておけば、開放型装置と同様な設計仕様の閉鎖型装置であっても、低コストであり、且つ膨張タンクから圧縮機吸入側冷媒ガス路への冷媒ガスの供給と、圧縮機吐出側冷媒ガス路から膨張タンクへの冷媒ガスの排出とを、スムーズに行なうことができる。
【0014】
本発明において、圧縮機吸入側接続路に設けられた第1開閉弁と、圧縮機吐出側接続路に設けられた第2開閉弁と、圧力センサの検出信号を入力し、第1開閉弁及び第2開閉弁を操作して吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を設定範囲に保持するコントローラと、を備えるようにするとよい。
【0015】
かかる構成において、装置の運転中、圧力センサの検出値が設定範囲を下回れば、第1開閉弁が開いて、圧縮機吸入側冷媒ガス路に冷媒ガスが供給され、圧力センサの検出値が設定範囲を上回れば第2開閉弁が開いて、過剰な冷媒ガスを冷媒ガス路から膨張タンクに回収するようにする。これによって、冷媒ガス路の冷媒ガス圧を精度良く設定範囲に維持できる。
【0016】
本発明装置において、膨張タンクが、伸縮可能な中空密閉膜の内部にガスを封入してなる中空伸縮体を内蔵し、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧に応じて該中空伸縮体を伸縮させ、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を設定範囲に保持するように構成するとよい。これによって、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧が設定範囲より低下すれば、中空伸縮体が自動的に膨張し、圧縮機吸入側冷媒ガス路に冷媒ガスを供給する。逆に、圧縮機吸入側冷媒ガス圧が設定範囲より上昇すれば、中空伸縮体の周囲の冷媒ガスが中空伸縮体を圧迫するので、中空伸縮体が自動的に収縮し、圧縮機吸入側冷媒ガス路から冷媒ガスを回収する。
【0017】
かかる構成とすれば、圧縮機吸入側冷媒ガス路に減圧弁や開閉弁を設ける必要がなくなると共に、弁操作等の複雑な制御を必要とせずに、冷媒ガス路の冷媒ガス圧を設定範囲に維持できる。また、中空伸縮体のガス圧を膨張タンクの大きさに応じて予め決めておくことにより、圧縮機吸入側冷媒ガス圧を自動的に設定できる。
【0018】
前記本発明装置を利用した本発明の運転方法は、圧力センサで吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を検出するステップと、該冷媒ガス圧が設定範囲を下回った時、膨張タンクから吸入側冷媒ガス路に冷媒ガスを供給し、該冷媒ガス圧を設定範囲に戻すステップと、該冷媒ガス圧が設定範囲を上回った時、吐出側冷媒ガス路から膨張タンクに冷媒ガスを排出し、吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を設定範囲に戻すステップと、からなるものである。
【0019】
本発明方法では、密閉系冷媒ガス給排装置と膨張タンクを経由する閉鎖型の冷媒ガス路との間で冷媒ガスの給排を行なうようにしているので、圧縮機吸入側冷媒ガス圧を調整可能になる。これによって、膨張タンクを高圧ガス保安法適用外圧力である0.2MPa(ゲージ圧)未満に保持することができる。また、冷媒ガスの大気(外部)への放出による損耗がなくなると共に、外部空気が冷媒ガス路に混入しない。そのため、乾燥ガスを膨張タンクに封入しておけば、冷媒ガス中に外部空気の湿分が混入しないので、常に冷媒ガスの露天温度以上で運転できる。従って、除湿機を必要としない。また、密閉型冷媒ガス給排装置を用いるので、冷媒ガスの損耗がない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特徴は 膨張タンクの冷媒ガス圧を圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧より高圧で且つ圧縮機吐出側冷媒ガス路の冷媒ガス圧より低圧(の0.2MPa(ゲージ圧)未満)に保持することにより、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧の調整を円滑に行なうことができるとともに、除湿機の設置等を必要とせず、冷媒ガス路からの冷媒ガスの給排をスムーズに行なうことができる。 しかも閉鎖型装置であっても開放型装置と同一な(圧力等)の設計仕様の装置として兼用でき、膨張タンクを高圧ガス保安法適用外圧力である0.2MPa(ゲージ圧)未満に保持することができるので低コストとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を空気冷媒式冷凍装置に適用した第1実施形態に係る閉鎖型空気冷媒式冷凍装置の系統図である。
【図2】本発明を空気冷媒式冷凍装置に適用した第2実施形態に係る閉鎖型空気冷媒式冷凍装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0023】
(実施形態1)
本発明を空気冷媒式冷凍装置に適用した第1実施形態を図1に基づいて説明する。図1に示す本実施形態に係る閉鎖型空気冷媒式冷凍装置10Aにおいて、冷媒空気が循環する冷媒空気路12a〜fが設けられ、該冷媒空気路12a〜fに、圧縮膨張ユニット14と、水冷式熱交換器16と、熱回収熱交換器18と、ブラインクーラ20とが設けられている。圧縮膨張ユニット14は、圧縮機22と、モータ24と、膨張機26とからなり、圧縮機22と膨張機26とは、モータ24の回転軸24aに結合され、同軸に回転する。
【0024】
圧縮機22の吐出口に接続された圧縮機吐出側冷媒空気路12bは、水冷式熱交換器16の高温側流路の入口に接続されている。該高温側流路の出口は冷媒空気路12cに接続され、冷媒空気路12cの他端は、熱回収熱交換器18の高温側流路の入口に接続されている。該高温側流路の出口は冷媒空気路12dに接続され、冷媒空気路12dの他端は、膨張機26の入口に接続されている。
【0025】
膨張機26の出口は冷媒空気路12eに接続され、冷媒空気路12eの他端は、ブラインクーラ20の入口に接続されている。ブラインクーラ20の出口には冷媒空気路12fが接続され、冷媒空気路12fの他端は、熱回収熱交換器18の低温側流路の入口に接続されている。該低温側流路の出口は、圧縮機吸入側冷媒空気路12aに接続され、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの他端は、圧縮機22の吸入口に接続されている。
【0026】
水冷式熱交換器16の低温側流路の入口及び出口は、冷却水循環路28が接続されている。冷却水循環路28には冷却塔30、ポンプ32及び流量調整弁34が設けられている。冷却水は、冷却塔30によって冷却され、ポンプ32によって矢印方向に循環する。冷却水循環路28には、適宜井水、工業用水等の補給水cが補給される。
ブラインクーラ20の内部には、ブライン循環路36が配設されている。ブライン循環路36は、冷凍庫40の内部に配設された熱交換管38と接続されている。
【0027】
また、大気圧以上の圧力で冷媒空気を封入し、外部への開放口のない密閉された膨張タンク51が設けられている。膨張タンク51と圧縮機吸入側冷媒空気路12aとは圧縮機吸入側接続(補給)路52で連通しており、膨張タンク51と圧縮機吐出側冷媒空気路12bとは圧縮機吐出側接続(回収)路54で連通している。圧縮機吸入側接続(補給)路52には減圧弁56、電磁弁58が設けられ、圧縮機吐出側接続(回収)路54には電磁弁60が設けられている。なお、膨張タンク51には、冷凍装置の運転温度条件より低い露点となる乾燥空気若しくは窒素ガスを封入する。また、膨張タンク51内の圧力を、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧より高く、圧縮機吐出側冷媒空気路12bの冷媒空気圧より低くなるようにしておく。
【0028】
また、圧縮機吸入側冷媒空気路12aには、冷媒空気圧を検出する圧力センサ62が設けられている。コントローラ64は、圧力センサ62の検出信号を入力し、電磁弁58及び60の開閉動作を制御する。膨張タンク51、圧縮機吸入側接続路52、圧縮機吐出側接続路54、及びこれらに装備された機器類で密閉系冷媒空気給排装置50を構成している。
【0029】
かかる構成において、冷媒空気は圧縮機22で圧縮され、高温高圧となって吐出される。高温高圧となった冷媒空気は、水冷式熱交換器16で冷却水によって一次冷却される。一次冷却された冷媒空気は、熱回収熱交換器18で、ブラインクーラ20から戻った冷媒空気によって二次冷却される。二次冷却された冷媒空気は、膨張機26で膨張して極低温で低圧の冷媒空気となる。
【0030】
低温低圧となった冷媒空気は、冷媒ガス路12eを経てブラインクーラ20に供給され、ブラインクーラ20でブライン循環路36を循環するブラインと熱交換し、ブラインを冷却する。ここで冷却されたブラインは、冷凍庫40内の熱交換管38に送られ、冷凍庫40内の雰囲気を、例えば−50℃〜−100℃に冷却する。これによって、冷凍庫40に保管された食品等の冷却対象物を冷凍保存する。ブラインクーラ20でブラインの冷却に供した後の冷媒空気は、冷媒空気路12fを経て、熱回収熱交換器18に達する。そして、熱回収熱交換器18で膨張機26に送られる前の冷媒空気と熱交換し、該冷媒空気を冷却した後、圧縮機吸入側冷媒空気路12aを経て、圧縮機22の吸入口に送られる。
【0031】
閉鎖型空気冷媒式冷凍装置10Aの運転を開始すると、冷媒空気路12d〜f内の冷媒空気が徐々に冷えていき、それと共に冷媒空気の体積が減少し、体積の減少と共に、その密度が増加していく。そのため、冷媒空気路12a,12e,12fの冷媒空気圧は徐々に低下し、圧縮機吸入側冷媒空気路12aでは負圧になり、設定範囲を下回る。そこで、圧力センサ62でそれを検出し、コントローラ64で電磁弁58を開放する。これによって、膨張タンク51に封入された冷媒空気が圧縮機吸入側接続(補給)路52を介して圧縮機吸入側冷媒空気路12aに供給され、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧を設定範囲に戻す。
【0032】
また、冷凍装置の周囲温度の上昇等に起因して、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧が上昇すると、運転開始不能となる場合がある。そこで、冷媒空気圧が設定範囲を上回った時、圧力センサ62でこれを検出し、コントローラ64で電磁弁60を開放する。これによって、圧縮機吐出側冷媒空気路12bの冷媒空気を圧縮機吐出側接続(回収)路54を介して膨張タンク51に戻し、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧を設定範囲に戻す。
【0033】
本実施形態によれば、閉鎖型空気冷媒式冷凍装置10Aの圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧を設定範囲に調整可能になるので、開放型空気冷媒式冷凍装置への切り替え使用が可能になる。そのため、1基の空気冷媒式冷凍装置で閉鎖型と開放型空気冷媒式冷凍装置との兼用が可能になり、しかも膨張タンク51を高圧ガス保安法適用外圧力である0.2MPa(ゲージ圧)未満に保持することができるので低コストとなる。
【0034】
また、密閉系冷媒空気給排装置50と圧縮機吸入側冷媒空気路12aとの間で冷媒空気の給排を行なうので、冷媒空気の損耗がなくなると共に、外部空気が冷媒ガスに混入しない。冷媒ガス中に外部空気の湿分の混入がないため、常に冷媒ガスの露天温度以上で運転できる。そのため、除湿機を必要としない。さらに、冷媒空気を外部に放出しないので、冷媒空気が損耗しない。
【0035】
また、冷媒空気を膨張タンク51から低圧の圧縮機吸入側冷媒空気路12aに供給し、圧縮機吐出側冷媒ガス路12bの冷媒空気を圧縮機吐出側冷媒空気路12bより圧縮機吐出側接続(回収)路54を介して低圧の膨張タンク51に排出するようにしているので、これら冷媒空気路からの冷媒空気の給排をスムーズに行なうことができる。
また、圧力センサ62で圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧を検出し、この圧力検出値が設定範囲となるように、コントローラ64で電磁弁58及び60を開閉するので、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧を精度良く設定範囲に維持できる。
【0036】
なお、本実施形態では、冷媒ガスとして、空気を用いているが、空気の代わりに窒素ガスを用いるようにしてもよい。この場合、膨張タンク51には窒素ガスを封入するようにする。
また、コントローラ64で流量調整弁34の開度を制御し、冷却水循環路28を流れる冷却水の流量を調整し、これによって、水冷式熱交換器16の冷却能力を調整するようにしてもよい。
【0037】
(実施形態2)
次に、本発明を空気冷媒式冷凍装置に適用した第2実施形態を図2に基づいて説明する。本実施形態の閉鎖型空気冷媒式冷凍装置10Bでは、密閉系冷媒空気給排装置70を構成する膨張タンク72の内部に、伸縮可能な中空密閉膜の内部にガスgを封入した中空伸縮体74を内蔵している。該密閉膜は例えばゴム製でもよく、中空伸縮体74の内部に封入されるガスgは、空気又は窒素ガスを用いることができる。
【0038】
また、本実施形態の密閉系冷媒空気給排装置70では、前記第1実施形態の減圧弁56及び電磁弁58を吸入側接続路52から取り去り、コントローラ64は、圧力センサ62の検出信号を入力し、該検出信号に応じて電磁弁60を開閉するものである。その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0039】
本実施形態では、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気が低下すれば、中空密閉膜72が自動的に膨張し、圧縮機吸入側接続(補給)路52を介して圧縮機吸入側冷媒空気路12aに冷媒空気を供給する。逆に、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧が上昇すれば、伸縮中空体74の周囲の冷媒空気が伸縮中空体74を外部から圧迫するので、伸縮中空体74が自動的に収縮し、圧縮機吸入側冷媒空気路12aから冷媒空気を回収する。
【0040】
なお、中空伸縮体74の伸縮によっても、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧が設定範囲を上回る場合、コントローラ64によって電磁弁60を開放し、圧縮機吐出側接続(回収)路54より中空伸縮体74に回収し、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧を設定範囲に戻すようにする。
【0041】
かかる構成によれば、第1実施形態と同様に、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧の調整が可能になることに加えて、圧縮機吸入側冷媒空気路12aに減圧弁や開閉弁を設ける必要がなくなる。そのため、これら弁の操作等のための複雑な制御を必要としないので、密閉系冷媒空気給排装置70を低コストにできる利点がある。また、中空伸縮体74のガス圧を膨張タンク72の大きさに応じて予め決めておくことにより、圧縮機吸入側冷媒空気路12aの冷媒空気圧を自動的に設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、膨張タンクの冷媒ガス圧を圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧より高圧で且つ圧縮機吐出側冷媒ガス路の冷媒ガス圧より低圧の0.2MPa(ゲージ圧)未満に保持することにより、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を調整可能で、低コストな閉鎖型ガス循環式冷凍装置を実現できる。
【符号の説明】
【0043】
10A、10B 閉鎖型空気冷媒式冷凍装置
12a 圧縮機吸入側冷媒空気路
12b 圧縮機吐出側冷媒空気路
12c〜f 冷媒空気路
14 圧縮膨張ユニット
16 水冷式熱交換器
18 熱回収熱交換器
20 ブラインクーラ
22 圧縮機
26 膨張機
28 冷却水循環路
30 冷却塔
32 ポンプ
34 流量調整弁
36 ブライン循環路
38 熱交換管
40 冷凍庫
50,70 密閉系冷媒空気給排装置
51,72 膨張タンク
52 圧縮機吸入側接続(補給)路
54 圧縮機吐出側接続(回収)路
56 減圧弁
58,60 電磁弁
62 圧力センサ
64 コントローラ
74 中空伸縮体
c 補給水
g 封入ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置の単一出力軸に連結された圧縮機及び膨張機と、圧縮機吐出側冷媒ガスを冷却する冷却器と、空気または窒素ガスからなる冷媒ガスで冷却対象物を冷却するブラインを冷却するブライン冷却器と、前記冷却器で冷却された冷媒ガスをブライン冷却器からの戻り冷媒ガスでさらに冷却する冷熱回収熱交換器とを備えた閉鎖型ガス循環式冷凍装置において、
大気圧以上の圧力を有し且つ高圧ガス保安法適用外圧力である0.2MPa(ゲージ圧)未満の冷媒ガスが封入された膨張タンク、該膨張タンクと圧縮機吸入側冷媒ガス路とを接続する圧縮機吸入側接続路、及び膨張タンクと圧縮機吐出側冷媒ガス路とを接続する圧縮機吐出側接続路からなる密閉系冷媒ガス給排装置と、圧縮機吸入側冷媒ガス路を流れる冷媒ガスの圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記圧力センサで圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を検出しながら、前記膨張タンクから圧縮機吸入側接続路を介して圧縮機吸入側冷媒ガス路への冷媒ガスの供給と、圧縮機吐出側冷媒ガス路から圧縮機吐出側接続路を介して膨張タンクへの冷媒ガスの排出とを行い、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を設定範囲に保持するように構成したことを特徴とする閉鎖型ガス循環式冷凍装置。
【請求項2】
前記圧縮機吸入側接続路に設けられた第1開閉弁と、前記圧縮機吐出側接続路に設けられた第2開閉弁と、前記圧力センサの検出信号を入力し、第1開閉弁及び第2開閉弁を操作して圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を設定範囲に保持するコントローラと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の閉鎖型ガス循環式冷凍装置。
【請求項3】
前記膨張タンクが、伸縮可能な中空密閉膜の内部にガスを封入してなる中空伸縮体を内蔵し、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧に応じて該中空伸縮体を伸縮させ、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を設定範囲に保持するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の閉鎖型ガス循環式冷凍装置。
【請求項4】
請求項1に記載の閉鎖型ガス循環式冷凍装置の運転方法において、
前記圧力センサで圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を検出するステップと、
該冷媒ガス圧が設定範囲を下回った時、前記膨張タンクから圧縮機吸入側接続路を介して圧縮機吸入側冷媒ガス路に冷媒ガスを供給し、該冷媒ガス圧を設定範囲に戻すステップと、
該冷媒ガス圧が設定範囲を上回った時、圧縮機吐出側冷媒ガス路から圧縮機吐出側接続路を介して膨張タンクに冷媒ガスを排出し、圧縮機吸入側冷媒ガス路の冷媒ガス圧を設定範囲に戻すステップと、からなることを特徴とする閉鎖型ガス循環式冷凍装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−44517(P2013−44517A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185284(P2011−185284)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)