説明

閉鎖型直鎖状DNAの製造

閉鎖型直鎖状デオキシリボ核酸(DNA)の製造のためのin vitro無細胞法は、以下のステップ:(a)少なくとも1つのプロテロメラーゼ標的配列を含むDNA鋳型を、該鋳型の増幅を促進する条件下で、少なくとも1種のプライマーの存在下で、少なくとも1種のDNAポリメラーゼと接触させるステップ;および(b)閉鎖型直鎖状DNAの製造を促進する条件下で、ステップ(a)で生成された増幅されたDNAを、少なくとも1種のプロテロメラーゼと接触させるステップを含む。キットは、該方法において必要な構成要素を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖型直鎖状デオキシリボ核酸(DNA)の製造のためのin vitro無細胞法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量のDNAの増幅のための従来の細胞ベースの方法は、コストが高い。例えば、細菌の使用は、高価な発酵器での大容量での増殖を必要とし、培養物の汚染を防ぐために、発酵器は無菌状態に維持する必要がある。細菌を溶解させて増幅されたDNAを放出させる必要もあり、DNAは他の細菌成分から清浄化・精製しなければならない。特に、DNAワクチンまたは他の治療用DNA剤を製造する場合、哺乳動物に対して毒性である内毒素の存在を排除するために、高純度が要求される。
【0003】
コストの問題に加えて、多くの場合、細菌の使用は、増幅プロセスの確実性に関する困難性を示す場合がある。細菌細胞の複雑な生化学的環境では、所望のDNA生成物の品質および収量を制御することは困難である。時には、細菌が、増幅されたDNAの内部のクローニングされた所望の遺伝子を変化させて、それを、必要とされる目的に対して役に立たないものにしてしまう場合がある。組換え事象もまた、対象となるDNAの確実な製造において問題をもたらす場合がある。DNAの増幅のための無細胞酵素法は、宿主細胞の使用のための必要条件を回避させ、したがって有利である。
【0004】
例えば、医薬用DNAカセットの製造は、ほとんど、細菌プラスミドへのその挿入および細菌発酵法でのその増幅に依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
技術プロセスでのこの現状は、多くの点で、そのようなDNA医薬の製造を改良するための機会を制限している。さらに、プラスミド製品は、実質的に、その医薬機能に必要ないヌクレオチド配列を含有する粗精製DNA分子である。したがって、DNA医薬などのDNA製品の製造の分野では、大量のDNA増幅のための改良された方法を提供する必要性がある。特に、閉鎖型直鎖状DNAなどの特別な形態のDNAの増幅のための改良された方法を提供する必要がある。閉鎖型直鎖状DNA分子は、DNAの他の形態と比して、改善された安定性および安全性を有するので、治療的用途に対して格別な有用性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、直鎖状共有結合閉鎖型DNA(閉鎖型直鎖状DNA)のin vitro無細胞製造のための方法に関する。この方法は、細胞プロセスおよびプラスミド内での増幅を含む現行の方法と比較して、直鎖状共有結合閉鎖型DNAの改良された製造を可能にする。このことは、生成物精製のコストを下げながら、プロセス生産性を著明に上昇させる。
【0007】
本発明では、DNA鋳型からの直鎖状共有結合閉鎖型DNAの製造を、宿主細胞の非存在下で、酵素的に行なう。鋳型DNAは、少なくとも1つのプロテロメラーゼ標的配列を含む。鋳型DNAを、鋳型の増幅を促進する条件下で、1種以上のプライマーの存在下で、少なくとも1種のDNAポリメラーゼと接触させる。鋳型から増幅されたDNAを、閉鎖型直鎖状DNAの製造を促進する条件下で、少なくとも1種のプロテロメラーゼと接触させる。
【0008】
したがって、本発明は、閉鎖型直鎖状デオキシリボ核酸(DNA)の製造のためのin vitro無細胞法を提供し、該方法は、以下のステップ:
(a)少なくとも1つのプロテロメラーゼ標的配列を含むDNA鋳型を、該鋳型の増幅を促進する条件下で、1種以上のプライマーの存在下で、少なくとも1種のDNAポリメラーゼと接触させるステップ;
(b)閉鎖型直鎖状DNAの製造を促進する条件下で、(a)で生成された増幅されたDNAを、少なくとも1種のプロテロメラーゼと接触させるステップ
を含む。
【0009】
本発明はさらに、本発明の方法において必要な構成要素を提供するキットにも関する。したがって、本発明は、少なくとも1種のDNAポリメラーゼおよび少なくとも1種のプロテロメラーゼと、本発明の方法での使用のための説明書を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】バクテリオファージにおける直鎖状共有結合閉鎖型DNAの複製、およびプロテロメラーゼの役割を示す図である。A.染色体外バクテリオファージ直鎖状共有結合閉鎖型DNAの図示。*=テロメアのパリンドローム配列の中心。R配列は、L配列の逆方向パリンドローム反復である。B.宿主内でのバクテリオファージDNAの複製:円はDNA鎖の複製を示す。RおよびLに対する相補鎖の合成により、同一の二本鎖RL配列がもたらされる。C.プロテロメラーゼの作用により形成される生成物。プロテロメラーゼは、RL配列に結合し、パリンドローム配列の中心点で反対鎖を切断し、ライゲーションして、テロメアを再形成させ、元の直鎖状共有結合閉鎖型DNAの複製を完了させる。
【図2】その標的部位であるtelRLを含む環状二本鎖DNAに対する大腸菌ファージN15プロテロメラーゼ(TelN)の作用を示す図である。telRLは、矢印により示される28bpの右腕(telR)および左腕(telL)を有する逆方向パリンドロームである。下線部の配列は、telRLパリンドローム中の不完全な部分を示している。中央の22bpの完全逆方向パリンドロームTelOが、酵素TelNの結合に必要である。TelNはその中心点でこの22bp配列を切断し、相補鎖の末端を結合させて、共有結合閉鎖型末端を形成させる。
【図3】種々の生物で見出されるプロテロメラーゼ標的配列の比較を示す図である。四角で囲った配列は、完全または不完全パリンドローム配列の範囲を示す。下線部は、パリンドローム中の不完全な部分を示す。網掛けされた塩基対配列は、全てのプロテロメラーゼ標的配列に共通であり、このことは、プロテロメラーゼの結合および作用に対するその重要性を示す。A.大腸菌ファージN15。B.クレブシエラファージPhi KO2。C.エルシニアファージPy54。D.ハロモナスファージPhi HAP。E.ビブリオファージVP882。F.ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)プラスミドlpB31.16。四角で囲まれた配列は、各バクテリオファージについての完全または不完全パリンドローム配列の範囲を示す。G.バクテリオファージプロテロメラーゼの結合および作用に対するコンセンサス逆方向パリンドローム配列を示す。これは、22塩基対の完全逆方向反復配列である(切断部位のそれぞれの側に11塩基対)。コンセンサス配列は、A〜Eについて示された網掛けされた保存残基に由来する。保存された塩基対およびパリンドローム中でのその位置を示す。ハイフンは、配列組成における柔軟性を示し、すなわち、塩基はN(A、T、CまたはG)であり得る。
【図4】RCA鎖置換型DNAポリメラーゼをTelNプロテロメラーゼと組み合わせて用いる、直鎖状二本鎖共有結合閉鎖型DNAのin vitro増幅についての具体的なプロセスを示す図である。A.閉鎖型直鎖状DNA鋳型。RおよびLは、TelNプロテロメラーゼ結合配列の右腕および左腕のDNA配列を示す。B.環状一本鎖DNAを形成させるための出発鋳型の変性。C.プライマー結合。D〜E. RCA鎖置換型DNAポリメラーゼによる一本鎖DNA鋳型からのローリングサークル型増幅(rolling circle amplification)。F.プロテロメラーゼ結合配列(RL)により分離された増幅された鋳型の複数の単独単位を含む、長いコンカタマー二本鎖DNAの形成。G. RL配列に特異的なTelNプロテロメラーゼとの接触。プロテロメラーゼは、RL部位でコンカタマーDNAを切断し、相補鎖をライゲーションして、元の直鎖状共有結合閉鎖型DNA鋳型の増幅コピーを生成させる。
【図5】閉鎖型直鎖状DNAカセットを作製するための、長い二本鎖DNA分子からの対象遺伝子を発現するDNAカセットの切り出しを示す図である。A.プロテロメラーゼ標的配列に挟まれた対象遺伝子を保持するDNAカセットを含む直鎖状二本鎖DNA分子。B.直鎖状共有結合閉鎖型DNA分子としてのDNAカセットの切り出し。
【図6】「ドギーボーン」発現カセットについての閉鎖型直鎖状DNAの増幅およびリポーター遺伝子発現を示す図である。A.アガロースゲル電気泳動による、閉鎖型直鎖状DNAを形成させるためのRCA増幅コンカタマーのTelN切断の確認。レーン1〜3は、RCA増幅pUC18を示す。レーン1:3マイクロリットルの未消化RCA増幅pUC18。レーン2:2マイクロリットルのPuv1消化RCA増幅pUC18。レーン3:2マイクロリットルのTelN処理RCA増幅pUC18(陰性対照)。レーン4〜6は、RCA増幅pUC18 telRLを示す。レーン4:3マイクロリットルの未消化RCA増幅pUC18 telRL。レーン5:1マイクロリットルのPvu1消化RCA増幅pUC18 telRL。レーン6:4マイクロリットルのTelN処理RCA増幅pUC18 telRL。TelNを用いた処理によって生成された2.7kbの閉鎖型直鎖状DNAが示される。隣接するレーンは、DNAサイズマーカーである。B.熱変性に対する閉鎖型直鎖状DNAの抵抗性を示すラボチップ(LOC)分析。レーン1:DNAサイズマーカー。レーン2および3:100ng DNA DOG。レーン4および5:100ng変性PCR DOG。レーン6および7:「ドギーボーン」DNA−100ngのTelN処理pGL DOG。レーン6および7:「ドギーボーンDNA」−100ngのTelN処理および変性pGL DOG。C.トランスフェクションによる細胞中の閉鎖型直鎖状DNAの発現の確認。y軸:平均ホタル/ウミシイタケ比;x軸:トランスフェクションで用いた直鎖状DNA構築物。PCR pGL:luc遺伝子にわたるpGL4.13由来の開放型直鎖状PCR断片。PCR DOG:telRL部位が連結されたプライマーを用いてpGL DOGから増幅された開放型直鎖状PCR断片。「ドギーボーンMP」:PvuIで消化し(混入したベクターDNAを除去するため)、TelNで切断した、ミニプレップDNAから単離したpGL DOG由来の閉鎖型直鎖状DNA。「ドギーボーンRCA」:PvuIで消化しTelNで切断した、RCAにより増幅したpGL DOG由来の閉鎖型直鎖状DNA。
【発明を実施するための形態】
【0011】
配列の説明
配列番号1は、バチルスバクテリオファージphi29 DNAポリメラーゼの核酸配列である。
【0012】
配列番号2は、配列番号1によりコードされるバチルスバクテリオファージphi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列である。
【0013】
配列番号3は、ピロコッカス・エスピーDeep Vent DNAポリメラーゼのアミノ酸配列である。
【0014】
配列番号4は、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼIの核酸配列である。
【0015】
配列番号5は、配列番号4によりコードされるバチルス・ステアロサーモフィルスDNAポリメラーゼIのアミノ酸配列である。
【0016】
配列番号6は、ハロモナスファージphiHAP-1プロテロメラーゼ核酸配列の核酸配列である。
【0017】
配列番号7は、配列番号6によりコードされるハロモナスファージphiHAP-1プロテロメラーゼのアミノ酸配列である。
【0018】
配列番号8は、エルシニアファージPY54プロテロメラーゼの核酸配列である。
【0019】
配列番号9は、配列番号8によりコードされるエルシニアファージPY54プロテロメラーゼのアミノ酸配列である。
【0020】
配列番号10は、クレブシエラファージphiKO2プロテロメラーゼの核酸配列である。
【0021】
配列番号11は、配列番号10によりコードされるクレブシエラファージphiKO2プロテロメラーゼのアミノ酸配列である。
【0022】
配列番号12は、ビブリオファージVP882プロテロメラーゼの核酸配列である。
【0023】
配列番号13は、配列番号12によりコードされるビブリオファージVP882プロテロメラーゼのアミノ酸配列である。
【0024】
配列番号14は、大腸菌バクテリオファージN15プロテロメラーゼ(telN)および二次免疫リプレッサー(cA)核酸配列の核酸配列である。
【0025】
配列番号15は、配列番号14によりコードされる大腸菌バクテリオファージN15プロテロメラーゼ(telN)のアミノ酸配列である。
【0026】
配列番号16は、バクテリオファージプロテロメラーゼ標的配列中に存在する完全逆方向反復のコンセンサス核酸配列である。
【0027】
配列番号17は、大腸菌ファージN15およびクレブシエラファージphiKO2由来の22塩基完全逆方向反復核酸配列である。
【0028】
配列番号18は、エルシニアファージPY54由来の22塩基完全逆方向反復核酸配列である。
【0029】
配列番号19は、ハロモナスファージphiHAP-1由来の22塩基完全逆方向反復核酸配列である。
【0030】
配列番号20は、ビブリオファージVP882由来の22塩基完全逆方向反復核酸配列である。
【0031】
配列番号21は、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)プラスミドlpB31.16由来の14塩基完全逆方向反復核酸配列である。
【0032】
配列番号22は、ビブリオファージVP882由来の24塩基完全逆方向反復核酸配列である。
【0033】
配列番号23は、エルシニアファージPY54由来の42塩基完全逆方向反復核酸配列である。
【0034】
配列番号24は、ハロモナスファージphiHAP-1由来の90塩基完全逆方向反復核酸配列である。
【0035】
配列番号25は、プロテロメラーゼ標的配列を含む大腸菌ファージN15由来の核酸配列である。
【0036】
配列番号26は、プロテロメラーゼ標的配列を含むクレブシエラファージphiKO2由来の核酸配列である。
【0037】
配列番号27は、プロテロメラーゼ標的配列を含むエルシニアファージPY54由来の核酸配列である。
【0038】
配列番号28は、プロテロメラーゼ標的配列を含むビブリオファージVP882由来の核酸配列である。
【0039】
配列番号29は、プロテロメラーゼ標的配列を含むボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)プラスミドlpB31.16由来の核酸配列である。
【0040】
配列番号30は、TelNの増幅で用いられる改変型オリゴヌクレオチドプライマーである。
【0041】
配列番号31は、TelNの増幅で用いられる改変型オリゴヌクレオチドプライマーである。
【0042】
配列番号32は、TelN認識部位telRLを含む合成オリゴヌクレオチドである。
【0043】
配列番号33は、TelN認識部位telRLを含む合成オリゴヌクレオチドである。
【0044】
配列番号34は、PCR DOGの増幅で用いられるプライマー配列である。
【0045】
配列番号35は、PCR DOGの増幅で用いられるプライマー配列である。
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、直鎖状二本鎖共有結合閉鎖型DNA、すなわち、閉鎖型直鎖状DNA分子の製造方法に関する。閉鎖型直鎖状DNA分子は、典型的には、ヘアピンループとも記載される共有結合閉鎖型末端を含み、相補的DNA鎖の間の塩基対形成は存在しない。ヘアピンループが、相補的DNA鎖の末端同士を結合させる。このタイプの構造は、典型的には、閉鎖型構造で末端ヌクレオチドを封じ込めることにより、染色体DNAの欠失または損傷を防ぐために、染色体のテロメア末端で形成される。本明細書中に記載される閉鎖型直鎖状DNA分子の例では、ヘアピンループは相補的な塩基対形成したDNA鎖に隣接し、「ドギーボーン」(犬の骨)型構造を形成する(図1に示されている)。
【0047】
本発明の方法は、増幅されたDNAを閉鎖型直鎖状DNAに変換する単一の処理ステップを組み込むことにより、閉鎖型直鎖状DNA分子のハイスループット製造を提供する。さらに、本発明の方法は、in vitroの無細胞環境で実施され、それにより、細菌増殖に必要な外来性配列を有するDNA鋳型の使用に限定されない。したがって、以下に概説するように、本発明の方法は、問題の多いベクター配列を有しない閉鎖型直鎖状DNA分子を製造するために用いることができ、治療的用途に特に好適である。
【0048】
閉鎖型DNA分子は、治療薬、すなわち、in vivoで遺伝子産物を発現させるために用いることができるDNA医薬として、格別な有用性を有する。これは、その共有結合閉鎖型構造が、エキソヌクレアーゼなどの酵素による攻撃を防ぎ、このことが、露出したDNA末端を有する「開放型」DNA分子と比較して、遺伝子発現の増強された安定性および長期性をもたらすためである。直鎖状二本鎖開放型末端カセットは、宿主組織に導入した場合、遺伝子発現に関して不十分であることが実証されている。これは、細胞外空間でのエキソヌクレアーゼの作用によるカセットの不安定性に起因する。
【0049】
DNA末端を共有結合閉鎖型構造の内部に封じ込めることは、他の利点も有する。DNA末端がゲノムDNAに組み込まれることが防止され、したがって、閉鎖型直鎖状DNA分子は改善された安全性を有する。また、閉鎖型直鎖状構造は、宿主細胞内でのDNA分子のコンカタマー化を防ぎ、したがって、遺伝子産物の発現レベルを、より繊細に調節することができる。本発明は、鋳型特異的DNA増幅、およびプロテロメラーゼによる増幅DNAの特異的プロセシングを含む、閉鎖型直鎖状DNA分子の製造のためのin vitro無細胞法を提供する。
【0050】
典型的には、本発明の方法は、特にDNAワクチンでの、宿主細胞でのin vitro発現のためのDNAの製造のために用いることができる。典型的には、DNAワクチンは、感染性生物のDNAの改変型をコードする。DNAワクチンは被験体に投与され、そこで続いて感染性生物の選択されたタンパク質を発現し、一般的に防御的なそのタンパク質に対する免疫応答を惹起する。DNAワクチンはまた、癌免疫療法アプローチでの腫瘍抗原をコードする場合もある。
【0051】
DNAワクチンは、多数の状態の治療または予防のための抗原をコードする核酸配列を含むことができ、そのような状態としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:癌、アレルギー、毒性、および限定するものではないが、真菌、ウイルス(ヒトパピローマウイルス(HPV)、HIV、HSV2/HSV1、インフルエンザウイルス(A、BおよびC型)、ポリオウイルス、RSVウイルス、ライノウイルス、ロタウイルス、A型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス群、エンテロウイルス、アストロウイルス、麻疹ウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプステイン・バーウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、ヒトT細胞リンパ腫I型ウイルス(HTLV-1)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス、ポックスウイルス、マールブルグウイルスおよびエボラウイルスを含む);細菌(ヒト型結核菌、クラミジア、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、シゲラ属、サルモネラ属、コレラ菌(Vibrio cholerae)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、シュードモナス属、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ブルセラ属、野兎病菌(Franciscella tularensis)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ペスト菌(Yersinia pestis)、連鎖球菌(A型およびB型)、肺炎球菌、髄膜炎菌(Meningococcus)、インフルエンザ菌(B型)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、カンピロバクター感染、カタラリス菌(Moraxella catarrhalis)、ドノバン感染(Donovanosis)、および放線菌症を含む);真菌病原体(カンジダ感染およびアスペルギルス症を含む);寄生性病原体(テニア属、吸虫、回虫、アメーバ症、ランブル鞭毛虫症(Giardiasis)、クリプトスポリジウム属、住血吸虫属(Schistosoma)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、トリコモナス症および旋毛虫病(Trichinosis)を含む)などの病原体による感染。
【0052】
DNAワクチンは、アデノウルス科(例えば、ヒトアデノウイルスを含む)、ヘルペスウイルス科(例えば、HSV-1、HSV-2、EBV、CMVおよびVZVを含む)、パポバウイルス科(例えば、HPVを含む)、ポックスウイルス科(例えば、天然痘およびワクシニアを含む)、パルボウイルス科(例えば、パルボウイルスB19を含む)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルスを含む)、コロナウイルス科(例えば、SARSを含む)、フラビウイルス科(例えば、黄熱病ウイルス、西ナイル熱ウイルス、デングウイルス、C型肝炎ウイルスおよびダニ媒介脳炎ウイルスを含む)、ピコルナウイルス科(ポリオウイルス、ライノウイルス、およびA型肝炎ウイルスを含む)、トガウイルス科(例えば、風疹ウイルスを含む)、フィロウイルス科(例えば、マールブルグウイルスおよびエボラウイルスを含む)、パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルスおよび麻疹ウイルスを含む)、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルスを含む)、ブニヤウイルス科(例えば、ハンターンウイルスを含む)、オルトミクソウイルス科(例えば、A型、B型およびC型インフルエンザウイルスを含む)、レトロウイルス科(例えば、HIVおよびHTLVを含む)およびヘパドナウイルス科(例えば、B型肝炎ウイルスを含む)のメンバー由来の抗原をコードする核酸配列を含むことができる。
【0053】
抗原は、獣医学的疾患の原因となる病原体に由来するものであり得、特に、ウイルス性病原体に由来するものであり得、そのようなものとしては例えば、レオウイルス(アフリカウマ病ウイルスまたはブルータングウイルスなど)およびヘルペスウイルス(ウマヘルペスを含む)が挙げられる。抗原は、口蹄疫ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、デングウイルス、SARS、西ナイル熱ウイルスおよびハンターンウイルスに由来するものであり得る。抗原は、免疫不全ウイルスに由来するものであり得、例えば、SIVまたはネコ免疫不全ウイルスに由来するものであり得る。
【0054】
本発明の方法により製造されるDNAワクチンは、腫瘍抗原をコードする核酸配列を含むこともできる。腫瘍関連抗原の例としては、限定するものではないが、精巣癌抗原(cancer-testes antigen)(MAGEファミリーのメンバー(MAGE 1、2、3など)、NY-ESO-1およびSSX-2など)、分化抗原(チロシナーゼ、gp100、PSA、Her-2およびCEAなど)、突然変異型自己抗原およびウイルス腫瘍抗原(癌原性HPVタイプに由来するE6および/またはE7など)が挙げられる。特定の腫瘍抗原のさらなる例としては、MART-1、Melan-A、p97、β-HCG、GaINAc、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-4、MAGE-12、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC18、CEA、DDC、P1A、EpCam、メラノーマ抗原gp75、Hker8、高分子量メラノーマ抗原、K19、Tyr1、Tyr2、pMel 17遺伝子ファミリーのメンバー、c-Met、PSM(前立腺ムチン抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、前立腺分泌タンパク質、α-フェトプロテイン、CA125、CA19.9、TAG-72、BRCA-1およびBRCA-2抗原が挙げられる。
【0055】
また、本発明の方法は、他のタイプの治療用DNA分子(例えば、遺伝子治療で用いられるもの)を製造することができる。例えば、そのようなDNA分子は、機能的遺伝子を発現するために用いることができ、その場合、被験体は、その遺伝子の機能不全型により引き起こされる遺伝的障害を有する。そのような疾患の例としては、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、ゴーシェ病、およびアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症が挙げられる。遺伝子治療が有用であり得る他の疾患には、免疫疾患、自己免疫疾患、慢性疾患および感染性疾患が含まれ、そのようなものとしては、AIDS、癌、神経疾患、心血管疾患、高コレステロール血症、種々の貧血、サラセミアおよび血友病をはじめとする種々の血液障害、ならびに肺気腫などの障害が挙げられる。固形腫瘍の治療のために、毒性ペプチド(すなわち、リシン、ジフテリア毒素およびコブラ毒因子などの化学療法剤)をコードする遺伝子、p53などの腫瘍抑制遺伝子、形質転換癌遺伝子に対してアンチセンスのmRNA配列をコードする遺伝子、腫瘍壊死因子(TNF)および他のサイトカインなどの抗新生物ペプチド、または形質転換癌遺伝子のトランスドミナント劣性突然変異体を発現させることができる。
【0056】
治療用DNA分子の他のタイプも、本発明の方法による製造のために考慮される。例えば、活性を有するRNA形態に転写されるDNA分子(例えば、小分子干渉RNA(siRNA))を、本発明の方法に従い製造することができる。
【0057】
治療用途を有するDNA分子の製造を目的とする実施形態では、典型的には、DNA鋳型は、1以上のプロモーターまたはエンハンサーエレメント、および、対象となるmRNAもしくはタンパク質をコードする遺伝子または他のコード配列、を含む発現カセットを含むであろう。DNAワクチン分子または遺伝子治療のためのDNA分子の生成を目的とする特定の実施形態では、DNA鋳型は、対象となるタンパク質をコードする配列に機能的に連結された真核生物プロモーター、ならびに任意によりエンハンサーおよび/または真核生物転写終結配列からなる発現カセットを含む。典型的には、DNA鋳型は、遺伝子を維持するために通常用いられるベクター(例えば、プラスミドなどの染色体外遺伝的エレメント)の形態であり得る。
【0058】
「プロモーター」は、ポリヌクレオチドの転写を開始させ、それを調節するヌクレオチド配列である。プロモーターは、誘導性プロモーター(プロモーターに機能的に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、アナライト、補因子、調節タンパク質などにより誘導される)、抑制性プロモーター(プロモーターに機能的に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、アナライト、補因子、調節タンパク質などにより抑制される)、および構成的プロモーターを含み得る。「プロモーター」または「制御エレメント」との用語が、全長プロモーター領域およびそれらの領域の機能的(例えば、転写または翻訳を制御する)セグメントを含むことが意図される。
【0059】
「機能的に連結された」とは、記載された構成要素が、それらの通常の機能を発揮するように構成された、エレメントの配置を意味する。したがって、核酸配列に機能的に連結された所与のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合、その配列の発現をもたらすことができる。その発現をもたらすように機能する限り、プロモーターは配列に連続している必要はない。したがって、例えば、翻訳されないが転写される介在配列が、プロモーター配列と核酸配列との間に存在することができ、プロモーター配列は、それでもコード配列に「機能的に連結された」とみなすことができる。したがって、「機能的に連結された」との用語は、転写複合体によるプロモーターエレメントの認識に際して対象となるDNA配列の転写の開始を可能にする、プロモーターエレメントと対象となるDNA配列とのいかなる距離または方向も包含するものと意図される。
【0060】
本発明において、閉鎖型直鎖状DNA分子は、少なくとも1つのプロテロメラーゼ標的配列を含むDNA鋳型から増幅されたDNAに対するプロテロメラーゼの作用によって生成される。プロテロメラーゼ標的配列は、DNA鋳型中でのその存在が、プロテロメラーゼの酵素活性による閉鎖型直鎖状DNAへのその変換を可能にするいずれかのDNA配列である。言い換えれば、プロテロメラーゼ標的配列が、共有結合閉鎖型直鎖状DNAを形成するために、プロテロメラーゼによる二本鎖DNAの切断および再ライゲーションに必要である。
【0061】
典型的には、プロテロメラーゼ標的配列は、いずれかの完全パリンドローム配列、すなわち二回の回転対称を有するいずれかの二本鎖DNA配列(本明細書中で完全逆方向反復とも記載される)を含む。図3に示されるように、種々の中温性バクテリオファージおよび1種の細菌プラスミドに由来するプロテロメラーゼ標的配列は、全て、完全逆方向反復を含むという共通の特徴を共有する。完全逆方向反復の長さは、具体的な生物によって異なる。ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)では、完全逆方向反復は、14塩基対長である。種々の中温性バクテリオファージにおいて、完全逆方向反復は22塩基対長以上である。また、一部のケース(例えば、大腸菌N15)では、中央の完全逆方向パリンドロームが、逆方向反復配列に挟まれており、すなわち、より長い不完全逆方向パリンドロームの一部分を形成している(図2および3を参照されたい:下線部の塩基は、逆方向反復の対称性が妨げられている箇所を示す)。
【0062】
本発明で用いられるプロテロメラーゼ標的配列は、好ましくは、少なくとも14塩基対長の二本鎖パリンドローム(完全逆方向反復)配列を含む。好ましい完全逆方向反復配列には、配列番号16〜21の配列およびその変異体が含まれる。配列番号16(NCATNNTANNCGNNTANNATGN)は、中温性バクテリオファージ完全逆方向反復についての22塩基のコンセンサス配列である。図3に示されているように、完全逆方向反復の塩基対は、種々のバクテリオファージの間で一定の位置で保存されているが、他の位置では配列の柔軟性が可能である。したがって、配列番号16は、本発明の方法におけるバクテリオファージプロテロメラーゼとの使用にとって、完全逆方向反復配列の最小限のコンセンサス配列である。
【0063】
配列番号16により規定されるコンセンサスの範囲内で、配列番号17(CCATTATACGCGCGTATAATGG)は、大腸菌ファージN15(配列番号15)、およびクレブシエラファージPhi KO2(配列番号11)プロテロメラーゼとの使用にとって、特に好ましい完全逆方向反復配列である。また、配列番号16により規定されるコンセンサスの範囲内で、配列番号18〜20:
配列番号18(GCATACTACGCGCGTAGTATGC)
配列番号19(CCATACTATACGTATAGTATGG)
配列番号20(GCATACTATACGTATAGTATGC)
は、それぞれ、エルシニアファージPY54(配列番号9)、ハロモナスファージphiHAP-1(配列番号7)、およびビブリオファージVP882(配列番号13)由来のプロテロメラーゼとの使用にとって、特に好ましい完全逆方向反復配列である。配列番号21(ATTATATATATAAT)は、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)プロテロメラーゼとの使用にとって、特に好ましい完全逆方向反復配列である。この完全逆方向反復配列は、ボレリア・ブルグドルフェリに含まれる直鎖状共有結合閉鎖型プラスミドであるlpB31.16に由来する。この14塩基の配列は、バクテリオファージの22bpのコンセンサス完全逆方向反復よりも短く、このことは、細菌のプロテロメラーゼ同士が、バクテリオファージプロテロメラーゼに対する特異的標的配列の必要条件において異なっている場合があることを示している。しかしながら、全てのプロテロメラーゼ標的配列は、完全逆方向反復という共通の構造モチーフを共有している。
【0064】
完全逆方向反復配列は、本発明の方法で用いる特異的なプロテロメラーゼの必要条件に応じて、22bp長よりも長い場合がある。したがって、一部の実施形態では、完全逆方向反復は、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも60、少なくとも80または少なくとも100塩基対長であり得る。そのような完全逆方向反復配列の例としては、配列番号22〜24およびその変異体が挙げられる:
配列番号22(GGCATACTATACGTATAGTATGCC)
配列番号23(ACCTATTTCAGCATACTACGCGCGTAGTATGCTGAAATAGGT)
配列番号24(CCTATATTGGGCCACCTATGTATGCACAGTTCGCCCATACTATACGTATAGTATGGGCGAACTGTGCATACATAGGTGGCCCAATATAGG)。
【0065】
配列番号22〜24およびその変異体は、それぞれ、ビブリオファージVP882(配列番号13)、エルシニアファージPY54(配列番号9)およびハロモナスファージphi HAP-1(配列番号7)に由来するプロテロメラーゼとの使用にとって特に好ましい。
【0066】
完全逆方向反復には、追加の逆方向反復配列が隣接していてもよい。隣接する逆方向反復は、完全反復または不完全反復であり得、すなわち、完全に対称的または部分的に対称的であり得る。隣接する逆方向反復は、中央のパリンドロームに連続しているか、不連続であり得る。プロテロメラーゼ標的配列は、少なくとも14塩基対長の完全逆方向反復配列を含む不完全逆方向反復配列を含み得る。一例は、配列番号29である。不完全逆方向反復配列は、少なくとも22塩基対長の完全逆方向反復配列を含み得る。一例は、配列番号25である。
【0067】
特に好ましいプロテロメラーゼ標的配列は、配列番号25〜29の配列またはその変異体を含む:
配列番号25(TATCAGCACACAATTGCCCATTATACGCGCGTATAATGGACTATTGTGTGCTGATA)
配列番号26(ATGCGCGCATCCATTATACGCGCGTATAATGGCGATAATACA)
配列番号27(TAGTCACCTATTTCAGCATACTACGCGCGTAGTATGCTGAAATAGGTTACTG)
配列番号28(GGGATCCCGTTCCATACATACATGTATCCATGTGGCATACTATACGTATAGTATGCCGATGTTACATATGGTATCATTCGGGATCCCGTT)
配列番号29(TACTAAATAAATATTATATATATAATTTTTTATTAGTA)。
【0068】
配列番号25〜29の配列は、上記の完全逆方向反復配列を含み、さらに、関連する生物に由来する隣接配列を含む。配列番号25の配列またはその変異体を含むプロテロメラーゼ標的配列は、配列番号15の大腸菌N15 TelNプロテロメラーゼおよびその変異体との組み合わせでの使用にとって好ましい。配列番号26の配列またはその変異体を含むプロテロメラーゼ標的配列は、配列番号11のクレブシエラファージPhi K02プロテロメラーゼおよびその変異体との組み合わせでの使用にとって好ましい。配列番号27の配列またはその変異体を含むプロテロメラーゼ標的配列は、配列番号9のエルシニアファージPY54プロテロメラーゼおよびその変異体との組み合わせでの使用にとって好ましい。配列番号28の配列またはその変異体を含むプロテロメラーゼ標的配列は、配列番号13のビブリオファージVP882プロテロメラーゼおよびその変異体との組み合わせでの使用にとって好ましい。配列番号29の配列またはその変異体を含むプロテロメラーゼ標的配列は、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)プロテロメラーゼとの組み合わせでの使用にとって好ましい。
【0069】
上記のパリンドロームまたはプロテロメラーゼ標的配列のいずれかの変異体には、そのホモログまたは突然変異体が含まれる。突然変異体には、天然の配列に対する、切断、置換または欠失が含まれる。変異体配列は、DNA鋳型中のその存在が、プロテロメラーゼの酵素活性による閉鎖型直鎖状DNAへのその変換を可能にするいずれかの配列である。これは、閉鎖型直鎖状DNAの形成に関する適切なアッセイの使用により、容易に決定することができる。当技術分野で記載されているいずれかの好適なアッセイを用いることができる。好適なアッセイの例は、Deneke et al, PNAS (2000) 97, 7721-7726に記載されている。好ましくは、変異体は、天然の配列で観察されるのと同等のプロテロメラーゼ結合性および活性を可能にする。本明細書中に記載されるパリンドローム配列の好ましい変異体の例としては、完全反復構造を保存し、閉鎖型直鎖状DNAの形成を可能にする能力を保持している、切断型パリンドローム配列が挙げられる。しかしながら、変異体プロテロメラーゼ標的配列は、それらがプロテロメラーゼ活性に対する基質として機能することができれば、完全なパリンドロームを保存していないように改変することができる。
【0070】
当業者であれば、上記で概説した構造的原則に基づいて、本発明での使用のための好適なプロテロメラーゼ標的配列を容易に特定することができるであろうことを理解すべきである。候補プロテロメラーゼ標的配列は、上記のアッセイを用いて、閉鎖型直鎖状DNAの形成を促進するその能力についてスクリーニングすることができる。
【0071】
DNA鋳型は、2以上のプロテロメラーゼ標的配列、例えば、2、3、4、5、10またはそれ以上のプロテロメラーゼ標的配列を含むことができる。複数のプロテロメラーゼ標的配列の使用は、より長いDNA分子からの、対象となる配列を含む短い閉鎖型直鎖状DNAの切り出しを可能にすることができる。特に、DNA鋳型中の1以上の対象となる配列には、いずれかの側(すなわち、5’および3’)で、プロテロメラーゼ標的配列が隣接していることができる。2つの隣接するプロテロメラーゼ配列は、続いて、プロテロメラーゼの作用のもとで、増幅されたDNAから閉鎖型直鎖状DNAとしての対象となるそれぞれの短い配列の切り出しを媒介することができる(図5に示されている通り)。DNA鋳型は、いずれかの側でプロテロメラーゼ標的配列が隣接している1以上の対象となる配列(好ましくは、発現カセット)を含むことができる。DNA鋳型は、上記のようにプロテロメラーゼ標的配列が隣接している、2、3、4、5またはそれ以上の対象となる配列を含むことができる。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、いずれかの側でプロテロメラーゼ標的配列が隣接している発現カセットを含むDNA鋳型を用いる。発現カセットは、好ましくは、対象となるコード配列に機能的に連結された真核生物プロモーター、および任意により真核生物転写終結配列を含む。この実施形態では、鋳型DNAの増幅、および本発明に従うプロテロメラーゼとの接触に続いて、発現カセットが、増幅された鋳型から閉鎖型直鎖状DNAとして放出される。鋳型DNA中の不要な配列は、同時に、結果として生成物から除去される。
【0073】
そのような不要なまたは外来性の配列(細菌配列またはベクター配列とも記載される)としては、細菌性複製起点、細菌性選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)、および非メチル化CpGジヌクレオチドが挙げられる。そのような配列の除去は、外来性の遺伝的物質を含まない「最小限の」発現カセットをつくり出す。また、上記のタイプの細菌性配列は、一部の治療的アプローチでは問題を引き起こす場合がある。例えば、哺乳動物細胞内では、細菌/プラスミドDNAは、クローニングされた遺伝子を不活性化し、対象となるタンパク質の持続的な発現を達成することができないようにする場合がある。また、細菌増殖で用いられる抗生物質耐性遺伝子は、ヒトの健康に対してリスクをもたらす場合がある。さらに、細菌プラスミド/ベクターDNAは、望ましくない非特異的な免疫応答を引き起こし得る。細菌性DNA配列の特異的な特徴であるメチル化されていないシトシン-グアニンジヌクレオチド(典型的には、CpGモチーフとして知られる)の存在もまた、望ましくない免疫応答をもたらす場合がある。
【0074】
特に、閉鎖型直鎖状DNA生成物がDNAワクチンである一部の実施形態では、CpGモチーフは、生成物の配列中にCpGモチーフを残すことができる。これは、CpGモチーフが、コードされるタンパク質に対する免疫応答に有利なアジュバント作用を有し得るためである。
【0075】
したがって、本発明は、閉鎖型直鎖状発現カセットDNAの製造のためのin vitroの方法を提供する。この方法は、以下のステップ:(a)いずれかの側でプロテロメラーゼ標的配列が隣接している少なくとも1つの発現カセットを含むDNA鋳型を、該鋳型の増幅を促進する条件下で、1種以上のプライマーの存在下で、少なくとも1種のDNAポリメラーゼと接触させるステップ;および(b)閉鎖型直鎖状発現カセットDNAの形成を促進する条件下で、ステップ(a)で生成された増幅DNAを少なくとも1種のプロテロメラーゼと接触させるステップを含む。閉鎖型直鎖状発現カセットDNA生成物は、対象コード配列に機能的に連結された真核生物プロモーター、および任意により真核生物転写終結配列を含むか、それらからなるか、または実質的にそれらからなることができる。閉鎖型直鎖状発現カセットDNA生成物は、さらに、典型的には以下のもの:(i)細菌性複製起点;(ii)細菌性選択マーカー(典型的には抗生物質耐性遺伝子)、および(iii)非メチル化CpGモチーフからなる群より選択される1以上の細菌配列またはベクター配列を有しないことができる。
【0076】
上記で概説したように、少なくとも1つのプロテロメラーゼ標的配列を含むいずれのDNA鋳型も、本発明の方法に従って増幅させることができる。したがって、DNAワクチンおよび他の治療用DNA分子の製造が好ましいが、本発明の方法は、いずれのタイプの閉鎖型直鎖状DNAを製造するためにも用いることができる。DNA鋳型は、二本鎖(ds)DNAまたは一本鎖(ss)DNAであり得る。二本鎖DNA鋳型は、開環状二本鎖DNA、閉環状二本鎖DNA、開放型直鎖状二本鎖DNAまたは閉鎖型直鎖状二本鎖DNAであり得る。好ましくは、鋳型は、閉環状二本鎖DNAである。閉環状dsDNA鋳型は、RCA DNAポリメラーゼとの使用のために特に好ましい。環状dsDNA鋳型は、細菌増殖のための遺伝子の維持のために典型的に用いられるプラスミドその他のベクターの形態であり得る。したがって、本発明の方法は、いずれかの市販のプラスミドその他のベクター(市販のDNA医薬など)を増幅し、続いて増幅されたベクターDNAを閉鎖型直鎖状DNAに変換するために用いることができる。
【0077】
DNAポリメラーゼがニック入りDNA鎖から増幅を開始することができる鎖置換型ポリメラーゼである場合、開環状dsDNAを鋳型として用いることができる。この実施形態では、鋳型を、1以上の部位で鋳型中のDNA鎖にニックを入れる1種以上の酵素と予めインキュベートすることができる。閉鎖型直鎖状dsDNAを鋳型として用いることもできる。閉鎖型直鎖状dsDNA鋳型(出発材料)は、閉鎖型直鎖状DNA生成物と同一であり得る。閉鎖型直鎖状DNAを鋳型として用いる場合、鋳型DNAの増幅を促進する条件の前またはその間に、鋳型DNAを変性条件でインキュベートし、一本鎖環状DNAを形成させることができる。
【0078】
上記で概説した通り、典型的には、DNA鋳型は、上記の通りの(すなわち、対象タンパク質をコードする配列に機能的に連結された真核生物プロモーター、および真核生物転写終結配列を含むか、それらからなるか、または実質的にそれらからなる)発現カセットを含む。任意により、発現カセットは、上記の通りの最小限の発現カセットであり得る(すなわち、典型的には以下のもの:(i)細菌性複製起点;(ii)細菌性選択マーカー(典型的には抗生物質耐性遺伝子)および(iii)非メチル化CpGモチーフからなる群より選択される、1以上の細菌配列またはベクター配列を欠いている)。
【0079】
DNA鋳型は、当技術分野で公知のいずれかの方法によって、本発明の方法での使用に十分な量で提供することができる。例えば、DNA鋳型は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成することができる。DNA鋳型がdsDNAである場合、少なくとも94℃の温度で予めインキュベートすることにより、変性した一本鎖として増幅ステップに供することができる。したがって、本発明の方法は、好ましくは、dsDNA鋳型を変性させて、一本鎖DNAを提供するステップを含む。あるいは、dsDNA鋳型は、二本鎖形態で提供することができる。DNA鋳型の全体または選択された一部分を、反応中に増幅することができる。
【0080】
DNA鋳型を、該鋳型の増幅を促進する条件下で、少なくとも1種のDNAポリメラーゼと接触させる。いかなるDNAポリメラーゼでも用いることができる。いかなる市販のDNAポリメラーゼも、本発明の方法での使用に好適である。2、3、4、5種類またはそれ以上の異なるDNAポリメラーゼを用いることができ、例えば、1種類はプルーフリーディング機能を備え、他の1種以上は備えていない。異なるメカニズムを有するDNAポリメラーゼを用いることができ、例えば、鎖置換型ポリメラーゼおよび他の方法によりDNAを複製するDNAポリメラーゼを用いることができる。鎖置換活性を有しないDNAポリメラーゼの好適な例は、T4 DNAポリメラーゼである。
【0081】
DNAポリメラーゼが非常に安定であり、その活性が、プロセス条件下での長時間のインキュベーションによって実質的に低下しないことが好ましい。したがって、好ましくは、酵素は、限定するものではないが、温度およびpHをはじめとするプロセス条件の範囲で長い半減期を有する。DNAポリメラーゼが、製造プロセスに好適な1以上の特性を有することも好ましい。DNAポリメラーゼは、好ましくは、例えばプルーフリーディング活性を有しながら、高い忠実度(フィデリティ)を有する。さらに、DNAポリメラーゼが、高い処理能力、高い鎖置換活性、ならびにdNTPおよびDNAに対して低いKmを示すことが好ましい。DNAポリメラーゼは、鋳型として、環状および/または直鎖状DNAを用いることが可能であり得る。DNAポリメラーゼが、鋳型としてdsDNAまたはssDNAを用いることが可能であり得る。DNAポリメラーゼが、非特異的エキソヌクレアーゼ活性を示さないことが好ましい。
【0082】
当業者であれば、所与のDNAポリメラーゼが、市販のDNAポリメラーゼ(例えば、phi29、DeepVent(登録商標)およびバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)(Bst)DNAポリメラーゼI(それぞれ、配列番号2、3および5))により示される特性と比較して、上記で規定した特性を示すか否かを決定することができる。Bst DNAポリメラーゼIは、New England Biolabs社から市販されている。高い処理能力に言及する場合、これは、典型的には、鋳型との結合/解離あたりにDNAポリメラーゼ酵素により付加されるヌクレオチドの平均数、すなわち、1回の結合事象から得られるプライマー伸長の長さを意味する。
【0083】
鎖置換型ポリメラーゼが好ましい。好ましい鎖置換型ポリメラーゼは、Phi29(配列番号2)、Deep Vent(登録商標)(配列番号3)およびBst DNAポリメラーゼI(配列番号5)またはそれらのいずれかの変異体である。配列番号2、3および5の変異体は、プロテロメラーゼ酵素との関連で、下記で定義する通りのものであり得る。「鎖置換」との用語は、DNA合成の間、二本鎖DNAの領域に遭遇した際に、相補鎖を置換するDNAポリメラーゼの能力を説明するために、本明細書中で用いられる。鎖置換型増幅法は、新規のDNA鎖の合成を継続するために、二本鎖DNAは障害とならないので、変性サイクルは効率的なDNA増幅に必要ないという点で、PCRベースの方法とは異なることを理解すべきである。対照的に、PCR法は、二本鎖DNAを融解して、新規の一本鎖鋳型をもたらすために、増幅プロセス中に変性サイクル(すなわち、94℃以上まで温度を上昇させるステップ)を必要とする。
【0084】
本発明の方法で用いられる鎖置換型DNAポリメラーゼは、好ましくは、少なくとも20kb、より好ましくは少なくとも30kb、少なくとも50kb、もしくは少なくとも70kbまたはそれ以上の処理能力(プライマー伸長の長さ)を有する。特に好ましい実施形態では、鎖置換型DNAポリメラーゼは、phi29 DNAポリメラーゼと同等かまたはそれ以上の処理能力を有する。
【0085】
好ましい鎖置換複製プロセスは、ローリングサークル型増幅(RCA)である。RCAとの用語は、ハイブリダイズしたプライマーを伸長させながら、環状DNA鋳型鎖の周りを連続的に進行するRCA型DNAポリメラーゼ(本明細書中ではRCAポリメラーゼとも称される)の能力を説明する。これは、増幅されたDNAの複数の反復を有する直鎖状一本鎖生成物の形成をもたらす。これらの直鎖状一本鎖生成物は、多重ハイブリダイゼーション、プライマー伸長および鎖置換事象の基盤となり、コンカタマー二本鎖DNA生成物(これもまた増幅されたDNAの複数の反復を含む)の形成をもたらす。したがって、コンカタマー二本鎖DNA生成物中には、それぞれの増幅された「単独単位」DNAの複数コピーがある。
【0086】
RCAポリメラーゼは、本発明の方法での使用のために特に好ましい。RCA型鎖置換複製プロセスの生成物は、慣用的には、単独単位DNAを放出させるための複雑な処理を必要とする。有利なことに、本発明では、プロテロメラーゼ触媒機能の使用は、この処理を1ステップで行なうことを可能にする。プロテロメラーゼの使用はまた、この構造を有する分子を形成させるために追加の処理ステップを必要とすることなく、所望の閉鎖型直鎖状DNA構造を直接的に生成させる。
【0087】
本発明に従う増幅を可能にするために、DNA鋳型を、1種以上のプライマーとも接触させることが好ましい。プライマーは非特異的であり得(すなわち、配列がランダム)、またはDNA鋳型内に含まれる1以上の配列に特異的であり得る。DNA鋳型上のいかなる部位でも非特異的な開始が可能となるように、プライマーがランダムな配列のものであることが好ましい。このことは、各鋳型鎖からの多重開始反応による高効率な増幅を可能にする。ランダムプライマーの例は、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマー、デカマー、またはそれより長い配列、例えば12、15、18、20または30ヌクレオチド長である。ランダムプライマーは、6〜30、8〜30または12〜30ヌクレオチド長であり得る。典型的には、ランダムプライマーは、DNA鋳型中の、例えばヘキサマー、ヘプタマー、オクタマーまたはノナマーの全ての考えられる組み合わせの代表であるオリゴヌクレオチドの混合物として提供される。
【0088】
他の実施形態では、プライマーは特異的である。このことは、それらが、増幅の開始が所望されるDNA鋳型中の配列に相補的な配列を有することを意味する。この実施形態では、プライマーのペアを用いて、2箇所のプライマー結合部位の内側のDNA鋳型の一部分を特異的に増幅することができる。プライマーは非標識であってもよいし、または1種以上の標識(例えば、放射性核種もしくは蛍光色素)を含んでもよい。プライマーはまた、化学的に修飾されたヌクレオチドを含んでいてもよい。プライマー長/配列は、典型的には、温度についての検討事項に基づいて(すなわち、増幅ステップで用いられる温度で鋳型に結合できるように)選択することができる。
【0089】
DNA鋳型とDNAポリメラーゼおよび1種以上のプライマーとの接触は、DNA鋳型へのプライマーのアニーリングを促進する条件下で行なう。条件には、プライマーのハイブリダイゼーションを可能にする一本鎖DNAの存在が含まれる。条件には、鋳型へのプライマーのアニーリングを可能にする温度およびバッファーも含まれる。適切なアニーリング/ハイブリダイゼーション条件は、プライマーの性質に応じて選択することができる。本発明で用いられる好ましいアニーリング条件の例としては、30mM Tris-HCl pH7.5、20mM KCl、8mM MgCl2のバッファーが挙げられる。アニーリングは、変性に続いて、所望の反応温度までの段階的な冷却により行なわれる。
【0090】
DNA鋳型がDNAポリメラーゼおよび1種以上のプライマーに接触したら、続いて、該鋳型の増幅を促進する条件下でのインキュベーションステップが行なわれる。好ましくは、条件は、別の鎖の鎖置換複製による複製された鎖の置換により、該鋳型の増幅を促進する。条件は、通常は20〜90℃の範囲内の、DNAの増幅を可能にするいずれかの温度の使用を含む。好ましい温度範囲は、約20〜約40℃または約25〜約35℃であり得る。
【0091】
典型的には、適切な温度は、具体的なDNAポリメラーゼが至適活性を有する温度に基づいて選択される。この情報は、一般的に利用可能であり、当業者の一般常識の一部分を形成する。例えば、phi29 DNAポリメラーゼを用いる場合、好適な温度範囲は、約25〜35℃、好ましくは約30℃であろう。当業者であれば、本発明の方法に従う効率的な増幅のための好適な温度を慣習的に特定することができるであろう。例えば、方法は、一定範囲の温度で行なうことができ、増幅DNAの収量をモニタリングして、所与のDNAポリメラーゼに対する至適温度範囲を特定することができる。
【0092】
DNA鋳型の増幅を促進する他の条件は、DNAポリメラーゼおよび1種以上のプライマーの存在を含む。条件には、4種類全てのdNTP(ATP、TTP、CTPおよびGTP)、好適な緩衝剤/pHおよび酵素の性能または安定性に必要とされる他の因子の存在も含まれる。好適な条件には、当技術分野で公知のDNAポリメラーゼ酵素の活性をもたらすために用いられるいずれかの条件が含まれる。
【0093】
例えば、pHは、3〜10の範囲内、好ましくは5〜8または約7(約7.5など)であり得る。pHは、1種以上の緩衝剤の使用により、この範囲内に維持することができる。そのようなバッファーとしては、限定するものではないが、MES、Bis-Tris、ADA、ACES、PIPES、MOBS、MOPS、MOPSO、Bis-Trisプロパン、BES、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、Trizma、HEPPSO、POPSO、TEA、EPPS、トリシン、Gly-Gly、ビシン、HEPBS、TAPS、AMPD、TABS、AMPSO、CHES、CAPSO、AMP、CAPS、CABS、リン酸塩、クエン酸-リン酸水素ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム-酢酸、イミダゾールおよび炭酸ナトリウム-重炭酸ナトリウムが挙げられる。反応物は、二価金属の塩(限定するものではないが、塩化物、酢酸塩および硫酸塩をはじめとするマグネシウム(Mg2+)およびマンガン(Mn2+)の塩など)も含むことができる。一価金属の塩もまた含めることができ、それは、ナトリウム塩およびカリウム塩など(例えば、塩化カリウム)である。含めることができる他の塩は、アンモニウム塩、特に硫酸アンモニウムである。
【0094】
界面活性剤も含めることができる。好適な界面活性剤としては、Triton X-100、Tween 20およびそのいずれかの誘導体が挙げられる。安定化剤も反応物に含めることができる。いずれかの好適な安定化剤、特に、ウシ血清アルブミン(BSA)および他の安定化タンパク質を用いることができる。反応条件は、DNAを緩ませ、鋳型の変性を容易にする薬剤を添加することによっても改善することができる。そのような薬剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、グリセロールおよびベタインが挙げられる。
【0095】
当業者であれば、その一般常識に基づいて、本発明の方法のために増幅・インキュベーション条件を改変し、最適化することができることを理解すべきである。同様に、特定の薬剤の具体的な濃度は、当技術分野での以前の例に基づいて選択することができ、一般常識に基づいてさらに最適化することができる。一例として、当技術分野でRCAベースの方法で用いられる好適な反応バッファーは、50mM Tris HCl、pH 7.5、10mM MgCl2、20mM (NH4)2SO4、5%グリセロール、0.2mM BSA、1mM dNTPである。本発明のRCA増幅で用いられる好ましい反応バッファーは、35mM Tris-HCl、50mM KCl、14mM MgCl2、10mM (NH4)2SO4、4mM DTT、1mM dNTPである。このバッファーは、phi29 RCAポリメラーゼを用いる使用に特に好適である。
【0096】
反応条件はまた、1種以上の追加のタンパク質の使用も含むことができる。DNA鋳型は、少なくとも1種のピロホスファターゼ(酵母無機ピロホスファターゼなど)の存在下で増幅することができる。2、3、4、5種類またはそれ以上の異なるピロホスファターゼを用いることができる。これらの酵素は、鎖複製中にdNTPからDNAポリメラーゼにより生成されるピロリン酸塩を分解することができる。反応物中でのピロリン酸塩の形成は、DNAポリメラーゼの阻害を引き起こす場合があり、DNA増幅の速度および効率を低下させる場合がある。ピロホスファターゼは、ピロリン酸塩を非阻害的リン酸塩に分解することができる。本発明の方法での使用のために好適なピロホスファターゼは、New England Biolabs社から市販されているサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)ピロホスファターゼである。
【0097】
一本鎖DNAを安定化させるために、いずれかの一本鎖結合タンパク質(SSBP)を本発明の方法で用いることができる。SSBPは、生存細胞の必須の成分であり、ssDNAに作用する全てのプロセス(DNA複製、修復および組換えなど)に関与する。これらのプロセスでは、SSBPは、形成されたssDNAに一時的に結合し、ssDNA構造の安定化を助けることができる。本発明の方法での使用のために好適なSSBPの例は、New England Biolabs社から市販されているT4遺伝子32タンパク質である。
【0098】
増幅ステップに加えて、本発明の方法は、閉鎖型直鎖状DNAの生成のための処理ステップも含む。増幅されたDNAを、閉鎖型直鎖状DNAの生成を促進する条件下で、少なくとも1種のプロテロメラーゼと接触させる。プロテロメラーゼに基づくこのシンプルな処理ステップは、閉鎖型直鎖状DNA分子の製造のために用いられる他の方法に比して有利である。増幅ステップおよび処理ステップは、同時に行なうことができる。しかしながら、好ましくは、増幅ステップおよび処理ステップは、処理ステップが増幅ステップに続いて(すなわち、増幅されたDNAに対して)行われるように逐次的に行なう。
【0099】
本発明で用いられるプロテロメラーゼは、プロテロメラーゼ標的部位を含む鋳型を切断し、再結合させて、共有結合閉鎖型直鎖状DNA分子を生成することが可能ないずれかのポリペプチドである。したがって、プロテロメラーゼは、DNA切断機能およびライゲーション機能を有する。プロテロメラーゼ型の活性を有する酵素は、テロメアリゾルベースとしても報告されている(例えば、ボレリア・ブルグドルフェリにおいて)。プロテロメラーゼに対する典型的な基質は、環状二本鎖DNAである。このDNAがプロテロメラーゼ標的部位を含む場合、酵素はこの部位でDNAを切断し、末端をライゲーションして、直鎖状二本鎖共有結合閉鎖型DNA分子をつくり出すことができる。プロテロメラーゼ標的部位の必要条件は、上記で論じている。これもまた上記で概説したように、所与のポリペプチドがプロテロメラーゼ標的部位を含む鋳型からの閉鎖型直鎖状DNAの生成を触媒する能力は、当技術分野で報告されているいずれかの好適なアッセイを用いて決定することができる。
【0100】
プロテロメラーゼ酵素は、バクテリオファージで報告されている。一部の溶原菌では、バクテリオファージは、共有結合閉鎖型末端を有する直鎖状二本鎖を含む染色体外DNAとして存在する。このDNAの複製および共有結合閉鎖型末端(またはテロメア性末端)の維持は、この酵素、プロテロメラーゼの活性に依存する。ウイルスDNAの複製でのプロテロメラーゼの役割を、図1に図示してある。この触媒活性の例は、大腸菌に感染するバクテリオファージであるN15由来の酵素TelNによりもたらされる。TelNは、環状二本鎖DNA中の特異的ヌクレオチド配列を認識する。この配列は、22塩基対の逆方向完全反復(telO)が連なる2つの半分であるtelRおよびtelLを含む、telRLと称される若干不完全な逆方向パリンドローム構造である(図2を参照されたい)。2つのtelRL部位は、直鎖状プロファージDNAに作用する特異的DNAポリメラーゼの最初の活性により、環状二本鎖DNA中に形成される。TelNは、この環状DNAを、2つの同一の直鎖状プロファージDNA分子に変換し、複製サイクルを完了させる。telRおよびtelLは、直鎖状プロファージDNAの閉鎖型末端を含み、DNAが同様にしてさらに複製されるのを可能にする。
【0101】
本発明の方法は、少なくとも1種のプロテロメラーゼの使用を必要とする。本発明の方法は、2、3、4、5種類またはそれ以上の異なるプロテロメラーゼなどの2種以上のプロテロメラーゼの使用を含むことができる。好適なプロテロメラーゼの例としては、ハロモナス・アクアマリナ(Halomonas aquamarina)由来のphiHAP-1(配列番号7)、エルシニア・エンテロリティカ(Yersinia enterolytica)由来のPY54(配列番号9)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)由来のphiKO2(配列番号11)およびビブリオ・エスピー(Vibrio sp.)由来のVP882(配列番号13)、ならびに大腸菌由来のN15(配列番号15)などのバクテリオファージに由来するもの、またはそれらのいずれかの変異体が挙げられる。バクテリオファージN15プロテロメラーゼ(配列番号15)またはその変異体の使用が、特に好ましい。
【0102】
配列番号7、9、11、13および15の変異体には、そのホモログまたは突然変異体が含まれる。突然変異体には、天然の配列に対する、切断、置換または欠失が含まれる。変異体は、上記のようにプロテロメラーゼ標的配列を含む鋳型から閉鎖型直鎖状DNAを生成することができる。
【0103】
本明細書中で言及されるいかなるホモログも、典型的には機能的ホモログであり、典型的には、天然のタンパク質の重要な領域に対して少なくとも40%相同である。相同性は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、UWGCGパッケージは、(例えば、その初期設定で用いて)相同性を算出するために用いることができるBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12, 387-395)。PILEUPアルゴリズムおよびBLASTアルゴリズムは、(典型的にはその初期設定で)相同性を算出するかまたは配列同士を並べるために用いることができ、例えば、Altschul S. F. (1993) J Mol Evol 36:290-300;Altschul, S, F et al (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載されている。BLAST解析を行なうためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/))を通して公衆に利用可能である。
【0104】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計学的解析を行なう;例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致(マッチ)が偶然に起こるであろう確率を示す。例えば、第1の配列と第2の配列との比較における最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、ある配列が別の配列に類似しているとみなされる。
【0105】
変異体ポリペプチドは、天然のタンパク質に対して少なくとも40%の同一性を有する配列を含む(かまたはそれからなる)。好ましい実施形態では、変異体配列は、少なくとも20、好ましくは少なくとも30、例えば少なくとも40、60、00、200、300、400個もしくはそれ以上の連続するアミノ酸にわたって、または変異体の全体配列にわたってさえ、天然のタンパク質の特定の領域に対して少なくとも55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、より好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であり得る。あるいは、変異体配列は、全長天然タンパク質に対して、少なくとも55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、より好ましくは少なくとも95%、97%または99%相同であり得る。典型的には、変異体配列は、少なくとも2、5、10、20、40、50または60箇所またはそれ未満の突然変異(そのそれぞれが、置換、挿入または欠失であり得る)で天然のタンパク質の重要な領域とは異なる。本発明の変異体配列は、上記で言及した配列の長さのいずれかにわたって、具体的な相同性%値のいずれかと同じである、全長天然タンパク質の特定の領域との同一性%を有し得る(すなわち、少なくとも40%、55%、80%または90%、より好ましくは少なくとも95%、97%または99%の同一性を有し得る)。
【0106】
天然のタンパク質の変異体には、切断も含まれる。変異体が上記の閉鎖型直鎖状DNAを生成することができるままである限り、いかなる切断でも用いることができる。切断は、典型的には、触媒活性に必須でなく、かつ/またはフォールディングしたタンパク質のコンホメーション(特に、活性部位のフォールディング)に影響しない配列を除去するためになされるであろう。切断はまた、プロテロメラーゼポリペプチドの溶解性を改善するためにも選択することができる。適切な切断は、N末端またはC末端からの種々の長さの配列の体系的な切断によって、慣用的に特定することができる。
【0107】
天然のタンパク質の変異体はさらに、天然のタンパク質の特定の領域に対する、1箇所以上、例えば、2、3、4、5〜10、10〜20、20〜40箇所またはそれ以上のアミノ酸挿入、置換または欠失を有する突然変異体を含む。欠失および挿入は、好ましくは、触媒ドメインの外側でなされる。挿入は、典型的には、例えば、組換え発現の目的で、天然のタンパク質に由来する配列のN末端またはC末端でなされる。置換もまた、典型的には、触媒活性に必須でなく、かつ/またはフォールディングしたタンパク質のコンホメーションに影響しない領域でなされる。そのような置換は、酵素の溶解性または他の特性を改善するために行なうことができる。一般的には好ましくないが、置換は、活性部位で、または第2スフェアで(すなわち、活性部位のアミノ酸のうち1以上の位置もしくは方向に影響するかまたはそれに接触する残基で)行なうこともできる。これらの置換は、触媒特性を改善するために行なうことができる。
【0108】
好ましくは、置換は、1以上の保存的変化を導入するものであり、保存的変化は、類似の化学構造、類似の化学的特性または類似の側鎖体積の他のアミノ酸で、アミノ酸を置換する。導入されたアミノ酸は、それが置換したアミノ酸に対して、類似の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性または電荷を有し得る。あるいは、保存的変化は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入するものであり得る。保存的アミノ酸変化は、当技術分野で周知であり、表Aに規定されるように20種の主要なアミノ酸の特性に従って選択することができる。
【表1】

【0109】
変異体が、天然のタンパク質と同等であるか、または同じ効率で、上記のように閉鎖型直鎖状DNAを生成することができることが特に好ましい。
【0110】
上記で概説したように、本発明の方法に従うDNAの増幅は、鎖置換型DNAポリメラーゼ、より好ましくはRCA DNAポリメラーゼによって行なうことが好ましい。in vitro無細胞法でのRCA DNAポリメラーゼとプロテロメラーゼとの組み合わせは、閉鎖型直鎖状DNAの製造において驚くべき効率および簡潔性を可能にする。
【0111】
上記で論じたように、長い直鎖状一本鎖DNA分子を、最初に鎖置換反応で形成させ、これが続いて新たな鋳型となって、二本鎖分子が形成されるようにする(図4)。二本鎖分子は、鎖置換型ポリメラーゼの前進作用により形成された増幅DNAのタンデムな単位の連続的な連なりを含む(コンカタマー)。これらのコンカタマーDNA生成物は、増幅された鋳型DNAの複数の反復を含む。したがって、本発明の方法で生成されるコンカタマーは、DNA鋳型から増幅された配列の複数単位を含む。コンカタマーは、増幅される対象の単独単位の長さに応じて、増幅された配列の10、20、50、100、200、500もしくは1000またはそれ以上の単位を含み得る。コンカタマーは、少なくとも5kb、少なくとも10kb、少なくとも20kb、より好ましくは少なくとも30kb、少なくとも50kb、もしくは少なくとも70kbまたはそれ以上のサイズであり得る。
【0112】
多数の実施形態において、例えばDNA医薬の製造では、増幅されたDNAは、単独単位としての使用のために必要とされるであろう。したがって、そのようなコンカタマーは、増幅されたDNAの単独単位を放出するためのプロセシングを必要とする。このコンカタマーDNAを増幅されたDNAの単独単位に変換するために、正確に切断することが必要であり、対になった鎖の末端同士が再ライゲーションされる必要がある。慣用的には、これは、DNA鋳型への制限エンドヌクレアーゼ部位の組み込みによって行なうことができた。つまり、制限エンドヌクレアーゼをコンカタマーとインキュベートして、その認識部位で切断し、単独単位を放出することができた。制限エンドヌクレアーゼの作用によって形成された開放型直鎖状二本鎖DNAを、次にDNAリガーゼ酵素とインキュベートして、単独単位DNAを共有結合させることができた。
【0113】
本発明によれば、閉鎖型直鎖状単独単位DNAへのコンカタマーDNAのプロセシングは、単一の酵素、プロテロメラーゼの使用により達成することができる。このことは、閉鎖型直鎖状DNA分子の生成のための方法での有利な簡潔性および経済性を表す。第1に、単独単位の切断および再ライゲーションが、単一の酵素とのインキュベーションによって達成される。第2に、単独単位はまた、所望の閉鎖型直鎖状構造を有して放出され、したがって、(すなわち、共有結合閉鎖型環状一本鎖DNAから)この構造を生成するための追加の処理ステップは必要ない。
【0114】
DNA鋳型から増幅されたDNAを、閉鎖型直鎖状DNAの生成を促進する条件下で、少なくとも1種のプロテロメラーゼとインキュベートする。言い換えれば、この条件は、ヘアピン末端を有する共有結合閉鎖型直鎖状DNAを形成させるための、プロテロメラーゼ標的配列を含む二本鎖DNAの切断および再ライゲーションを促進する。閉鎖型直鎖状DNAの生成を促進する条件は、一般的には20〜90℃の範囲での、閉鎖型直鎖状DNAの生成を可能にするいずれかの温度の使用を含む。温度は、好ましくは、25〜40℃の範囲内(約25〜約35℃、または約30℃など)であり得る。具体的なプロテロメラーゼに対する適切な温度は、DNAポリメラーセのための温度条件との関連で上記に概説した原則に従って選択することができる。配列番号15の大腸菌バクテリオファージTelNプロテロメラーゼとの使用のために好適な温度は、約25〜約35℃(約30℃など)である。
【0115】
閉鎖型直鎖状DNAの生成を促進する条件はまた、プロテロメラーゼおよび好適な緩衝剤/pHならびに酵素の性能または安定性に必要とされる他の因子の存在も含む。好適な条件には、当技術分野で公知のプロテロメラーゼ酵素の活性をもたらすために用いられるいずれかの条件が含まれる。例えば、大腸菌バクテリオファージTelNプロテロメラーゼを用いる場合、好適なバッファーは、20mM TriHCl, pH7.6;5mM CaCl2;50mMグルタミン酸カリウム;0.1mM EDTA;1mMジチオスレイトール(DTT)であり得る。最適な活性および安定性を維持するための薬剤および条件は、DNAポリメラーゼについて列挙されたものから選択することもできる。
【0116】
一部の実施形態では、プロテロメラーゼの活性のために、DNA増幅のために用いるのと同じ条件を用いることができる。特に、同じ条件の使用は、DNA増幅およびプロテロメラーゼによる処理が同時に行なわれる場合に説明される。他の実施形態では、最適なDNAポリメラーゼ活性をもたらすために用いられる条件が、最適未満のプロテロメラーゼ活性をもたらす場合、反応条件を変化させることが必要であり得る。特定の薬剤の除去および反応条件の変更は、ろ過、透析および当技術分野で公知の他の方法によって達成可能であり得る。当業者であれば、最適なDNAポリメラーゼ活性および/またはプロテロメラーゼ活性を可能にする条件を、容易に特定することができるであろう。
【0117】
特に好ましい実施形態では、RCA DNAポリメラーゼ(好ましくはphi29)によるDNAの増幅での使用のために、DNA増幅は、25〜35℃(約30℃など)の温度で、35mM Tris-HCl、50mM KCl、14mM MgCl2、10mM (NH4)2SO4、4mM DTT、1mM dNTPと実質的に同一であるか、または本質的にそれらからなるバッファー条件下で行なう。続いて、プロテロメラーゼでの処理ステップは、好ましくは、TelNを用いて、かつ/または好ましくは25〜35℃(約30℃など)の温度で、20mM TrisHCl, pH7.6;5mM CaCl2;50mMグルタミン酸カリウム;0.1mM EDTA;1mMジチオスレイトール(DTT)と実質的に同一であるか、または本質的にそれらからなるバッファー条件で行なうことができる。
【0118】
本発明の方法での使用のための全ての酵素およびタンパク質は、組換え的に、例えば細菌中で生成することができる。組換え発現を可能にする、当業者に公知のいずれかの手段を用いることができる。対象タンパク質をコードする核酸配列を含むプラスミドまたは他の形態の発現ベクターを、細菌に導入して、コードされたタンパク質を発現するようにすることができる。例えば、配列番号2、5、7、9、11、13または15の発現のために、ベクターは、それぞれ、配列番号1、4、6、8、10、12または14の配列を含むことができる。典型的には、続いて、発現されたタンパク質は、例えばアフィニティータグを用いて、十分な量で精製され、本発明の方法での使用に好適な形態で提供されるであろう。組換えタンパク質生成のためのそのような方法は、その一般常識に基づいて、当業者には慣用的に利用可能である。上記の議論は、本明細書中で論じたいずれのタンパク質の供給にもあてはまる。
【0119】
DNA鋳型をDNAポリメラーゼと接触させることにより取得される増幅されたDNAは、プロテロメラーゼとの接触の前に精製することができる。したがって、本発明の方法は、DNA鋳型から増幅したDNAを精製するステップをさらに含むことができる。しかしながら、好ましい実施形態では、該方法は、プロテロメラーゼとの接触に先立つ増幅DNAの精製を含むことなく行なわれる。このことは、増幅ステップおよび処理ステップを、典型的には同じ容器または溶液中で、連続的に行なうことができることを意味する。そのような一部の実施形態では、該方法は、プロテロメラーゼ活性をもたらすバッファーの添加(すなわち、閉鎖型直鎖状DNAの形成を促進する条件を提供するために)を含む。
【0120】
プロテロメラーゼの作用による閉鎖型直鎖状DNAの生成に続いて、本発明の方法は、直鎖状共有結合閉鎖型DNA生成物を精製するステップをさらに含むことができる。上記で言及した精製は、典型的には、いずれかの望ましくない生成物を除去するために行なわれるであろう。精製は、当技術分野で公知のいずれかの好適な手段により行なうことができる。例えば、増幅されたDNAまたは直鎖状共有結合閉鎖型DNAの処理は、フェノール/クロロホルム核酸精製または核酸に選択的に結合するカラム(Qiagenから市販されているものなど)の使用を含むことができる。当業者は、増幅されたDNAの単離での使用のための好適な精製技術を、慣用的に特定することができる。
【0121】
直鎖状共有結合閉鎖型DNAが生成され、十分な量で精製されたら、該方法は、DNA組成物(例えば、治療用DNA組成物)としてのその製剤化をさらに含むことができる。治療用DNA組成物は、上記で言及したタイプの治療用DNA分子を含むであろう。そのような組成物は、所望の経路による投与に好適な形態(例えば、エアロゾル、注射用組成物または経口投与、粘膜投与もしくは局所投与に好適な製剤)で、治療上有効量のDNAを含むであろう。
【0122】
慣用の医薬調製物としてのDNAの製剤化は、当業者に利用可能な標準的な製薬製剤化学および方法を用いて行なうことができる。いずれかの製薬上許容される担体または賦形剤を用いることができる。湿潤化剤または乳化剤、pH緩衝物質などの添加物が、賦形剤またはビヒクル中に存在する場合もある。これらの賦形剤、ビヒクルおよび添加物は、一般的には、不適切な毒性なしに投与することができる製薬用物質であり、ワクチン組成物の場合には、該組成物を投与される個体での免疫応答を誘導しないであろうものである。好適な担体は、リポソームであり得る。
【0123】
製薬上許容される賦形剤としては、限定するものではないが、水、生理食塩液、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられる。製薬上許容される塩もまた、そこに含めることができ、そのような塩とは例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱物酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩である。必要ではないが、調製物が、特にペプチド、タンパク質などの分子(それらが組成物中に含まれる場合)に対する安定化剤として作用する製薬上許容される賦形剤を含有するであろうことも好ましい。ペプチドに対する安定化剤としても作用する好適な担体の例としては、限定するものではないが、製薬グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストランなどが挙げられる。他の好適な担体としては、これもまた限定するものではないが、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムまたはカルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。製薬上許容される賦形剤、ビヒクルおよび添加物の詳細な議論は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Mack Pub. Co., N.J. 1991)(参照により本明細書中に組み入れられる)において利用可能である。
【0124】
本発明の方法は、in vitroの無細胞環境で行なわれる。つまり、該方法は、宿主細胞の非存在下で行なわれ、典型的には、精製された酵素成分の使用を含む。したがって、鋳型DNAの増幅およびプロテロメラーゼによる処理は、典型的には、好適な容器の中で溶液中で反応成分を接触させることにより行なわれる。任意により、特定の成分を、固体支持体に結合させたものなどの固定化形態で提供することができる。
【0125】
本発明の方法は、いかなる規模でも行なうことができることを理解すべきである。しかしながら、該方法が、商業的または工業的規模で、すなわち、ミリグラム以上の量で増幅DNAを生成する規模で、DNAを増幅するために行なわれるのが好ましい。該方法により、少なくとも1ミリグラム、少なくとも10ミリグラム、少なくとも20ミリグラム、少なくとも50ミリグラムまたは少なくとも100ミリグラムの増幅DNAが生成されるのが好ましい。好ましくは、増幅されたDNAに由来する最終的な閉鎖型直鎖状DNA生成物を、ミリグラム以上の量で生成することもできる。該方法により、少なくとも1ミリグラム、少なくとも2ミリグラム、少なくとも5ミリグラム、少なくとも10ミリグラム、少なくとも20ミリグラム、少なくとも50ミリグラム、または少なくとも100ミリグラムの閉鎖型直鎖状DNAが生成されるのが好ましい。
【0126】
本発明はさらに、本発明の方法を実施するために必要な構成要素を含むキットを提供する。このキットは、少なくとも1種のDNAポリメラーゼおよび少なくとも1種のプロテロメラーゼ、ならびに任意により本明細書中に記載された方法での使用のための説明書を含む。キットは、2、3、4、5種またはそれ以上の異なるDNAポリメラーゼを含むことができる。好ましくは、キットは、少なくとも1種の鎖置換型DNAポリメラーゼ、さらにより好ましくはRCA DNAポリメラーゼを含む。キットが、phi29 DNAポリメラーゼ(配列番号2)、Deep Vent(登録商標)DNAポリメラーゼ(配列番号3)もしくはBst 1 DNAポリメラーゼ(配列番号5)またはそれらのいずれかの変異体を含むことが特に好ましい。一部の実施形態では、他の方法によりDNAを複製するDNAポリメラーゼを含めることもできる。キットは、少なくとも1種のプロテロメラーゼを含む。キットは、2、3、4種またはそれ以上の異なるプロテロメラーゼを含むことができる。プロテロメラーゼは、配列番号5、7、9、11、13もしくは15またはそれらのいずれかの変異体のうちいずれかから選択することができる。キットが、大腸菌N15 TelN(配列番号15)またはその変異体を含むことが特に好ましい。
【0127】
キットは、少なくとも1種の一本鎖結合タンパク質(SSBP)も含むことができる。好ましいSSBPは、New England Biolabs社から市販されているT4遺伝子32タンパク質である。2、3、4種またはそれ以上の異なるSSBPをキットに含めることができる。キットは、ピロホスファターゼをさらに含むことができる。好ましいピロホスファターゼは、New England Biolabs社から市販されているサッカロミセス・セレビジエピロホスファターゼである。一部の実施形態では、2、3、4、5種またはそれ以上の異なるピロホスファターゼを含めることができる。キットは、本明細書中に記載されたいずれかのDNAポリメラーゼ、プロテロメラーゼ、SSBPまたはピロホスファターゼを含むことができる。キットはまた、dNTP、好適なバッファー、ならびに本明細書中に記載されるDNAポリメラーゼおよび/もしくはプロテロメラーゼ酵素性能または安定性に必要な他の因子も含むことができる。
【実施例】
【0128】
実施例1 - TelNの発現およびプロテロメラーゼ標的配列を含むベクター構築物の作製
TelNは、市販のpQE-30ベクター(Qiagen)への部位特異的インフレームクローニングのために、改変オリゴヌクレオチドプライマー:
PT1F:5’ ATGAGCAAGGTAAAAATCGGTG 3’(配列番号30)
PT1R:5’ TTAGCTGTAGTACGTTTCCCAT 3’(配列番号31)
を用いて、市販のクローニングベクターpJAZZ(Lucigen)からPCR増幅した。このシステムは、lacI発現プラスミドpREP4からのtransでの(in trans)強力な抑制をもたらしながら、lacプロモーターからの6×N末端Hisタグ付きタンパク質の誘導性発現を可能にする。いくつかの推定上の組換えクローンを大腸菌M15で特定し、TelNのインフレームの挿入を示すことを配列決定により確認した。6種類のクローンを、小規模誘導実験でさらに特性決定した。全てのクローンが、組換えTelNプロテロメラーゼに分子量が対応する、74.5kDaのタンパク質を発現した。
【0129】
TelNは、IPTGを用いてpQE-30からのタンパク質発現を誘導することにより、大腸菌M15 pREP4から発現させ、誘導した細胞を音波処理し(100%で30秒のバースト6回)、遠心分離し(25000gで30分)、細胞溶解液から不溶性画分および不溶性画分を得た。ゲル分析により、可溶性画分でのTelNの存在が示された。TelNの精製は、0〜100%(0.5M)イミダゾール勾配を用いた溶出により、Akta Primeシステム(GE Healthcare社)を用いてHisTrapカラムで行なった。精製されたTelNは、イミダゾールを除去するために透析し、10mM Tris HCl pH 7.4、75mM NaCl、1mM DTT、0.1mM EDTAおよび50%グリセロールのバッファー中で保存した。
【0130】
TelN活性の確認を可能にするベクター構築物は、プラスミドpUC18およびpBR329のBamHI部位およびHindIII部位への、TelN認識部位telRLを保持する合成オリゴヌクレオチドの部位特異的クローニングによって作製した:
RL1:5’AGCTTTATCAGCACACAATTGCCCATTATACGCGCGTATAATGGACTATTGTGTGCTGATAG 3’(配列番号32)
RL2:5’GATCCTATCAGCACACAATAGTCCATTATACGCGCGTATAATGGGCAATTGTGTGCTGATAA 3’(配列番号33)
pUC18は、Genbank登録番号L09136を有し、Fermentas(カタログ番号SD0051)から購入することができ;pBR329は、Genbank登録番号J01753を有し、DSMZ(カタログ番号5590)から購入することができる。
【0131】
さらに、トランスフェクション研究のために、2コピーのtelRL認識部位を、ホタルルシフェラーゼ遺伝子のための発現カセットに隣接したユニークなSacIおよびBamHI制限部位で、ルシフェラーゼ発現プラスミドpGL4.13(Promega)にクローニングした。第1のtelRL部位は、SacIオーバーハングを有するtelRL合成オリゴヌクレオチドの再アニーリングに続いて、SV40プロモーターの上流のユニークなSacI部位にクローニングした。第2のtelRL部位は、BamHIオーバーハングを有するtelRL合成オリゴヌクレオチドを用いて、ユニークなBamHI部位に、SV40ポリアデニル化シグナルの下流にクローニングした。得られた構築物が、哺乳動物細胞で発現されるルシフェラーゼをコードする共有結合閉鎖型直鎖状(ドギーボーン)DNAの形成を可能にするので、これをpGL DOGと名付けた。
【0132】
実施例2 - TelN切断の確認
TelNによるスーパーコイル環状pUC18 telRLおよびpGL DOGベクター構築物の切断を確認した。100ngの各基質を、30℃で1時間40分、4.5pmolのTelNとインキュベートした。反応は、TelNバッファー[10mM Tris HCl pH 7.6、5mM CaCl2、50mMグルタミン酸カリウム、0.1mM EDTA、1mM DTT]中で行なった。
【0133】
切断産物は、ネイティブアガロースゲル電気泳動により可視化した。スーパーコイル環状pUC18 telRLとTelNとのインキュベーションにより、切断を示す2.7kbの直鎖状断片が放出された。スーパーコイル環状pGL DOGとTelNとのインキュベーションにより、2つのtelRL部位での切断を示す2.4kbの2つの断片が放出された。
【0134】
さらに、pUC18 telRLおよびpGL DOGを制限消化により直線化し、続いてTelNとインキュベートして、telRLでの特異的切断をさらに確認した。100ngのpUC18 telRLをXmn1で直線化し、続いてTelNとインキュベートした。これにより、1.9kbおよび0.8kbの予測された断片が放出された。100ngのpGL DOGをPvu1で直線化し、続いてTelNとインキュベートした。これにより、2.4kb、1.6kbおよび0.7kbの予測された断片が放出された。同様に、pGL DOGをPst1で直線化し、続いてTelNとインキュベートすると、2.4kb、1.1kbおよび別の1.1kbの予測された断片が放出された。このことは、プロテロメラーゼ標的配列を含む環状および直鎖状DNA基質に対するTelNのエンドヌクレアーゼ活性を実証した。
【0135】
切断活性の予備的な評価では、3.4pmolでの過剰量のTelNが、1時間で少なくとも200ngのpUC18 telRLを切断することが見出された。時間経過実験では、同じ量のDNAが、約10分以内に切断された。
【0136】
実施例3 - TelNの再結合活性および閉鎖型直鎖状DNAの形成の確認
TelN切断の生成物の閉鎖型直鎖状DNA構造の確認を、変性ゲル電気泳動を用いて行なった。実施例3と同様に、pGL DOGをTelNとインキュベートした。ドギーボーン内に保持されるが、開放型DNA末端を有する領域に対応する合成PCR産物(PCR DOG)を、対照として用いた。PCR DOG直鎖状断片を、telRL部位が隣接したプライマーを用いてpGL DOGから増幅した:
Sac pGL:5’ GTGCAAGTGCAGGTGCCAGAAC 3’(配列番号34);
Bam pGL:5’ GATAAAGAAGACAGTCATAAGTGCGGC 3’(配列番号35)。
【0137】
ネイティブアガロースゲル[0.8%アガロース、TEAバッファー(40mM Tris-酢酸、1mM EDTA)中]では、100ng pGL DOGとTelNとのインキュベーションにより得られた2.4kbの切断産物が、PCR DOG(2.7kb)と同様のサイズまで移動し、これは、両方の生成物が二本鎖のままであるためである。
【0138】
しかしながら、変性アガロースゲル[1%アガロース(H2O中)で、50mM NaOH、0.1mM EDTA中での泳動、および1M TrisHCl pH7.6、1.5M NaCl中での中和後泳動(neutralised post-run)]で泳動した場合(二本鎖DNAの一本鎖DNAへの変性および分離を可能にする)、TelN「ドギーボーン」断片は、開放型末端PCR対照またはXmnIで直線化したpUC18 telRL(いずれも2.7kb)よりも高分子量[約5kb]に移動した。
【0139】
移動でのこの差異は、TelNによる閉鎖型直鎖状「ドギーボーン」構造の形成を示した。「ドギーボーン」構造の変性は、一本鎖開放環をもたらすと考えられ、これは、開放型末端直鎖状PCR産物の変性によって放出される直鎖状一本鎖よりも、ゲル中をゆっくりと移動する。
【0140】
TelNにより形成された生成物の閉鎖型直鎖状構造の確認は、ラボチップ(LOC)キャピラリー電気泳動による熱変性の分析によっても示された。LOC分析は、生物学的分子の迅速分離のためのキャピラリー電気泳動プラットフォームを代表する。Agilent BioanalyserとDNA 7500チップ(Agilent, UK)は、7000bpまでのDNA断片の分離およびおおまかなサイズ決定のために用いることができる。
【0141】
このチップシステムは、一本鎖DNAを検出しない。例えばH2O中の、低塩条件下での通常の二本鎖DNAの熱変性(95℃、5分間)および迅速(<1℃/s)冷却1℃/sは、LOCシステムでは可視化できない一本鎖DNAをもたらす。しかしながら、「ドギーボーン」DNA中の共有結合しているDNA末端(TelNによる切断によりもたらされる)は変性によって分離することができず、したがって、再アニーリングして、再び二本鎖DNAを形成し、これは可視的である。したがって、熱変性し、迅速に冷却したDNAの比較は、共有結合閉鎖型直鎖状(ccl)ドギーボーンDNAと通常の開放型直鎖状(ol)二本鎖DNAとの区別を可能にする。
【0142】
H2O中のDNAサンプル(100ng)を、サーマルサイクラー(Biorad I-cycler, Biorad, UK)で薄壁PCRチューブ中で変性させ(95℃、5分間)、4℃まで迅速に(<1℃/s)冷却した。TelN切断との比較のために、まずサンプルを1×TelNバッファー中で、1マイクロリットルの精製プロテロメラーゼ酵素と、30℃にて10分間インキュベートした。対照サンプルは、酵素なしで同じように処理した。サンプル(1マイクロリットル)を、製造業者の説明書に従いAgilent BioanalyserとDNA 7500チップを用いて分析した。
【0143】
結果を図6Bに示す。これらは、pGL DOGとTelNとのインキュベーションにより得られた閉鎖型直鎖状「ドギーボーン」DNAが、同等の慣用的な開放型直鎖状DNA(PCR DOG)と比較して、熱変性に抵抗性であることを示す。熱変性に対する同等の抵抗性は、RCA増幅およびTelN切断によりもたらされたRCA増幅ドギーボーンDNAを用いても得られた。
【0144】
他の実験では、TelN切断を、開放型末端PCR DOGに対して行なった。これは、2.8kbの熱安定性切断産物「ドギーボーン」DNA、ならびに0.09および0.14kbの熱安定性「ドギーボーン」末端の形成をもたらした。
【0145】
LOC分析での「ドギーボーン」およびPCR DOGの推定サイズは、2.4kbおよび2.7kbのおおまかなサイズを予測した配列データと比較して、それぞれ2.8kb〜3.0kbおよび3.1〜3.5kbの範囲であった。このことは、非変性LOC分析で生じる移動の、コンホメーションに基づく差異を反映している。
【0146】
実施例4 - RCA(ローリングサークル型増幅)により形成されたコンカタマーDNAからの閉鎖型直鎖状DNAの形成
DNA鋳型を増幅し、増幅されたDNAを閉鎖型直鎖状「ドギーボーン」DNAに変換するためのin vitro無細胞法を行なった。枯草菌(Bacillus subtilis)ファージphi29由来のphi29酵素およびプライマーとしてランダムヘキサマーを用いたRCAを種々の条件で用いて、telRL部位を有するおよび有しない共有結合閉鎖型プラスミド鋳型を増幅した。これは、phi29の進行性鎖置換活性によって、コンカタマーDNAの増幅をもたらした。初期の実験は、TempliPhiキット(GE Healthcare)を製造業者の説明書に従って用いて行なった。しかしながら、これは後には高い純度でより高い生成物収量をもたらす自作の方法(NEBから供給されるphi29を用いる)に置き換えられた。
【0147】
40pg〜200ngの閉鎖型環状鋳型の変性およびプライマーのアニーリングを、10マイクロリットルのアニーリング/変性バッファー(30mM Tris-HCl pH7.5、20mM KCl、8mM MgCl2、20マイクロモル濃度のランダムヘキサマー)中で行なった。変性およびアニーリングを、95℃で1分間の加熱、続く30分にわたる室温までの冷却により行なった。
【0148】
次に、10マイクロリットルの反応バッファー[35mM Tris-HCl、50mM KCl、14mM MgCl2、10mM (NH4)2SO4、4mM DTT、10U phi29、0.002U PPi(酵母無機ピロホスファターゼ)、1mM dNTP]を、10マイクロリットルのアニーリングしたDNA/プライマー反応物に添加した。
【0149】
20マイクロリットルの反応物を、30℃で18時間インキュベートした。サンプルをゲルで泳動し、コンカタマーの形成をチェックして、次に反応混合物を消化酵素またはTelNで消化して生成物をチェックした。
【0150】
RCAにより増幅されたコンカタマーDNAを、次にTelNとインキュベートした。典型的には、RCA増幅DNA基質を水および10×TelNバッファー中に希釈し、最終容量20マイクロリットルとした。pUC18 telRLについての結果を、図6Aに示す。
【0151】
レーン1のゲルから見て取れるように、未消化コンカタマー増幅DNAは、ゲルに入らないメッシュを形成している。しかしながら、TelNはRCA材料を切断することができ、2.7kbのドギーボーン断片の放出をもたらした(レーン6)。RCAにより増幅されたDNAが反応で用いられた出発鋳型であったことの確認は、Pvu1での制限消化によって達成した(レーン2および5)。pUC18(telRLなし)はTelN活性についての陰性対照として機能した(レーン3)。
【0152】
同様に、他の実験では、pGL DOGのRCA生成コンカタマーも、TelNにより切断された。したがって、本発明の方法は、出発鋳型からの閉鎖型直鎖状DNAの増幅において有効であることが示された。さらに、RCAポリメラーゼおよびプロテロメラーゼを連続的ステップで用いて、増幅DNAの途中の精製なしに、簡単な方法で閉鎖型直鎖状DNAを増幅することが可能であった。
【0153】
実施例5 - 増幅された閉鎖型直鎖状DNAの発現
本発明に従って生成された閉鎖型直鎖状「ドギーボーン」DNAからのルシフェラーゼリポーター遺伝子の発現を調べるために、HeLa細胞を用いたトランスフェクション実験を行なった。共有結合閉鎖型環状DNAおよび直鎖状PCR DOG対照を、対照として用いた。
【0154】
トランスフェクションは、RPMI中で20mm直径ウェルにおいて60%コンフルエントで行ない、Transfectam(登録商標)(Promega)を製造業者の説明書に従って用いた。それぞれのトランスフェクションは、400ngの構築物DNAを用いた。トランスフェクション頻度は、各トランスフェクションにおいて40ngのウミシイタケルシフェラーゼ発現プラスミドpGL4.73(レニア・レニフォルミス(Renilla reniformis)由来のhRluc遺伝子を保持する)を用いた内部対照を含めることにより、実験内および実験間で標準化した。ホタルルシフェラーゼ(フォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis)由来の発光)およびウミシイタケルシフェラーゼ活性を、Dual-Luciferase(登録商標) Reporter(DLRTM)アッセイシステム(Promega)を用いて連続的に測定した。相対的光単位を、GloMaxマルチルミノメーター(Promega)を用いて測定し、結果を、ホタルルシフェラーゼ/ウミシイタケルシフェラーゼの比として表した。全ての実験は、3回反復で行なった。
【0155】
トランスフェクションで試験した構築物は、以下の通りである:
pGL4.13 luc対照DNA
pGL4.73 hRluc
PCR DOG
PCR対照(luc遺伝子をまたぐpGL4.13由来の断片)
pGL DOG(2つのtelRL部位を保持するpGL4.13)
「ドギーボーン」MP(PvuI消化(混入したベクターDNAを除去するため)し、続いてTelN切断した、ミニプレップDNAから単離したpGL DOG)
「ドギーボーン」RCA(PvuI消化し、続いてTelNで切断した、RCAにより増幅したpGL DOG)
RCA pGL DOG(pGL DOGの初期のRCA増幅で生成されたコンカタマーDNA)。
【0156】
結果を図6Cに示す。RCAにより増幅したものを含めた閉鎖型直鎖状DNAは、開放型直鎖状PCR構築物よりも高いレベルでルシフェラーゼを発現することが示された。このことは、哺乳動物細胞に導入した場合、本発明に従い生成された閉鎖型直鎖状DNAを用いて、うまくルシフェラーゼを発現させることができることを実証している。
【0157】
本発明の配列











【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖型直鎖状デオキシリボ核酸(DNA)の製造のためのin vitro無細胞法であって、以下のステップ:
(a)少なくとも1つのプロテロメラーゼ標的配列を含むDNA鋳型を、該鋳型の増幅を促進する条件下で、1種以上のプライマーの存在下で、少なくとも1種のDNAポリメラーゼと接触させるステップ;および
(b)閉鎖型直鎖状DNAの製造を促進する条件下で、ステップ(a)で生成された増幅されたDNAを、少なくとも1種のプロテロメラーゼと接触させるステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記DNA鋳型を、別の鎖の鎖置換複製による複製鎖の置換により該鋳型の増幅を促進する条件下でインキュベートする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鋳型の増幅を、ローリングサークル型増幅(RCA)で行なう、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プライマーがランダムプライマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記DNAポリメラーゼが配列番号2のphi29もしくはその変異体であり、かつ/または前記プロテロメラーゼが配列番号15のバクテリオファージN15 TelNもしくはその変異体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)で生成された増幅されたDNAが、前記DNA鋳型から増幅されたDNA配列のタンデムな単位を含むコンカタマーを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コンカタマーを、前記プロテロメラーゼにより増幅DNA配列の単独単位に分解する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプロテロメラーゼ標的配列が、完全逆方向反復DNA配列を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記DNA鋳型が、閉鎖型環状DNAである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記DNA鋳型が閉鎖型直鎖状DNAであり、好ましくは該DNA鋳型を変性条件下でインキュベートして閉鎖型環状DNAを形成させる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記DNA鋳型が、対象コード配列に機能的に連結された真核生物プロモーター、および任意により真核生物転写終結配列を含む発現カセットを含み、
該対象コード配列が、任意によりヒトコード配列またはヒトに感染する病原体由来のコード配列である、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記発現カセットに、いずれかの側でプロテロメラーゼ標的配列が隣接している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
閉鎖型直鎖状発現カセットDNAの製造のための、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b)で生成された閉鎖型直鎖状DNAを精製するステップをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
以下のステップ:
(a)配列番号15のTelNにより切断および再結合されるプロテロメラーゼ標的配列を有する一本鎖の前記DNA鋳型を、配列番号2またはその変異体のphi29 DNAポリメラーゼによる該鋳型の増幅を促進する条件下で、約25〜約35℃の温度で、該ポリメラーゼと接触させるステップ;ならびに
(b)ステップ(a)で生成されたコンカタマーを、該プロテロメラーゼTelNの活性を促進する条件下で、約25〜約35℃の温度で、該プロテロメラーゼTelNまたはその変異体と接触させるステップ
を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記プロテロメラーゼ標的配列が、配列番号25の配列またはその変異体を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種のDNAポリメラーゼおよび少なくとも1種のプロテロメラーゼと、任意により請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法での使用のための説明書を含むキット。
【請求項18】
宿主での抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、以下のステップ:
該抗原をコードする前記DNA鋳型を用いて、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法を行なうステップ、および
該抗原が該宿主において発現され、該抗原に対する免疫応答を誘導するように、該抗原をコードする得られた閉鎖型直鎖状DNAを該宿主に投与するステップ
を含む、上記方法。
【請求項19】
閉鎖型直鎖状DNA分子を含む医薬組成物の製造方法であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法を行なうステップ、および得られた閉鎖型直鎖状DNAを、製薬上許容される担体または賦形剤と共に製剤化するステップを含む、上記方法。
【請求項20】
治療によるヒトまたは動物身体の処置のための医薬の製造における閉鎖型直鎖状DNA分子の使用であって、該製造が、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法を行なうステップを含む、上記使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−516147(P2012−516147A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546955(P2011−546955)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000165
【国際公開番号】WO2010/086626
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(511183571)タッチライト ジェネティクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】