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開始剤基を有する水溶性コーティング剤およびコーティング方法
説明

開始剤基を有する水溶性コーティング剤およびコーティング方法

【課題】支持体表面からポリマーを成長させるべく光重合の開始を改善するために用いられ得る試薬および方法を提供する。
【解決手段】コーティング剤および重合性化合物の使用により支持体表面上にポリマー層を形成させる方法。該コーティング剤は、該表面上にポリマー層を形成させるために、該剤を該表面に付着させるように適応されている光反応性基並びに該表面に未付着のままにあり、従って重合性化合物の活性化のための光開始剤として働くように適応されている光反応性基を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、工業的におよび医学的に重要な基体の表面性質の化学的および/または物理的変性に関する。別の観点において、本発明は、親水性、滑性、耐久性、および厚さの均一性等の所望特性を表面に与えるような目的のための、表面性質の変性に関する。この観点において、本発明は、化学的誘導体化および光開始重合等の表面変性技法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
所望の化学的および/または物理的特性を達成するための表面の化学的変性は、以前に記載されている。たとえば、米国特許第4,722,906号、第4,973,493号、第4,979,959号、第5,002,582号および第5,512,329号(これらの各々はここにおいて記載された発明の譲受人により共通的に所有され、そして各々の開示は参照によりここに合体される)は、様々な基体への生体分子および合成ポリマー等の試薬の共有結合カップリングを達成するべき潜反応性基の使用による表面変性に関する。好ましい潜反応性基は、典型的には、光化学的反応性官能基(「光反応性基」)と記載されている。適切なエネルギー源に暴露される時、光反応性基は、不活性状態(すなわち、基底状態)から適切な物質との共有結合を形成することの可能な反応性中間体への変換を受ける。
【0003】
かかる潜反応性基は、たとえば、最初に標的分子を誘導体化し(たとえば、熱化学的に)、次いで誘導体化標的分子を表面に光化学的に付着させるように用いられ得る。かかる逐次手法は多くの状況において適合するが、しかし最初に誘導体化することが固有的に困難である標的分子と共にまたは生物学的活性の損失をもたらすことになる条件下で用いられる場合特に、速度、多面性、および使用の容易性等の属性を欠き得る。
【0004】
潜反応性基はまた、結合剤としての光活性化性ヘテロ二官能性分子、たとえば光反応性基を一つの端または部分に有すると共に別の端または部分に熱化学的付着基を持ったものを製造するために用いられ得る(たとえば、上記に記載された`582特許およびReiner等の米国特許第4,309,453号参照)。かかる結合剤は、適当な化学線への暴露時に表面を反応性にするように、非反応性化合物を表面に付着させまたは比較的不活性な表面を下塗りするのいずれかのために用いられ得る。
【0005】
米国特許第5,414,075号(本発明の譲受人により共通的に所有され、そして参照によりここに合体される)は、表面に光活性化性基を与えるように表面を下塗りするための、結合剤の使用を記載する。この特許は、支持体を下塗りするためにまたは支持体への標的分子との同時施用のために有用な拘束多官能性試薬を記載する。`075特許に記載されたものを含めて、上記に記載されたもの等の試薬は、一般に疎水性である。その結果、それらは水性系において比較的低い溶解性を有し、それにより親水性適用においてそれらの有用性をしばしば制限する。
【0006】
やはりここにおいて記載された発明の譲受人により共通的に所有されている(そして参照によりここに合体される)米国特許第5,714,360号は、二官能性またはより高官能性の光活性化性荷電化合物を含む化学結合剤を記載する。該結合剤は、改善水溶解性を与えるように使用条件下で荷電される少なくとも1個の基および該剤が水性系において結合剤として用いられるのを可能にするように2個またはそれ以上の光活性化性基を与える。好ましい具体的態様において、荷電基は、有機酸の塩(スルホネート、ホスホネートおよびカルボキシレート基等の)、オニウム化合物(第4級アンモニウム、スルホニウムおよびホスホニウム基等の)およびプロトン化アミン、並びにそれらの組合わせを含むが、しかしそれらに限定されない。光反応性基は、1個またはそれ以上の、ベンゾフェノン等のアリールケトンの基により与えられ得る。
【0007】
別個の主題に関して、ポリマーを支持体表面に付着させる共通の方法は、表面への予備形成ポリマーの付着、および表面へのポリマーのグラフト化を含む。たとえば、Tazuke等は、増感剤(たとえば、ベンゾフェノン)およびベースポリマー上にグラフトされるべき選定ポリマーを含有する反応溶液でベースポリマー(たとえば、ポリプロピレン)を処理することを含むグラフト化技法の使用による、ポリマー表面の変性を論じる。Modification of Polymers, ACS Symposium Series 121 American Chemical Society,1980におけるpp.217〜241のTazuke等「光グラフト化によるポリマー表面の新規変性」。
【0008】
別の主題に関して、重合を開始させるためのポリマー光増感剤が記載されている。たとえば、Kroschwitz編,Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,1990におけるpp.940〜957のC.H.Bamford「ラジカル重合」参照。「光増感開始: ポリマーの光増感剤および光開始剤」という題目のサブセクションにおいて、著者は、ポリマーの光増感剤および光開始剤が記載されていると述べる。これらのうちの多くのものは、ベンゾフェノンを基剤としたポリマーたとえばポリ(p−ジビニルベンゾフェノン)(DVBP)である。かかる硬質ポリマーは、励起ベンゾフェノンによる主鎖からの水素引抜きは比較的ありそうにないので、効果的増感剤であると報告される。更に、米国特許第4,315,998号(Neckers)は、光酸化、光二量体化および光付加環化反応等の光増感化学反応の不均質触媒作用における使用用のポリマー結合光増感性触媒を記載する。該ポリマー結合光増感性触媒は、水および普通有機溶媒中に不溶であり、そしてそれ故反応媒質および反応生成物から単なる濾過により容易に分離され得る。
【0009】
出願人の知っている限りでは、当該技術は、物品の表面から光重合を開始させるために物品の表面にそれら自体付着される非ポリマーコーティング剤の製造または使用を教示せず、また該剤を含む商業用製品も存在しない。また、被膜の厚さ、滑性および安定性等の表面性質を制御的態様にて変性するために用いられ得る試薬または方法も一般的に存在しない。対照的に、改善水溶解性および改善使用多面性を有するコーティング剤に対するニーズが残存している。最後におよび現在までの開発にもかかわらず、支持体表面からポリマーを成長させるべく光重合の開始を改善するために用いられ得る試薬および方法に対するニーズが残存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,722,906号
【特許文献2】米国特許第4,973,493号
【特許文献3】米国特許第4,979,959号
【特許文献4】米国特許第5,002,582号
【特許文献5】米国特許第5,512,329号
【特許文献6】米国特許第4,309,453号
【特許文献7】米国特許第5,414,075号
【特許文献8】米国特許第5,714,360号
【特許文献9】米国特許第4,315,998号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Modification of Polymers, ACS Symposium Series 121 American Chemical Society,1980、pp.217〜241
【非特許文献2】Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,1990におけるpp.940〜957
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、コーティング剤を用いて支持体表面上にポリマー層を形成させる方法、並びに支持体表面を該コーティング剤それ自体で下塗りする方法を提供する。本発明はまた、かかる方法により形成されたポリマー層でコーティングされた表面、並びに該剤それ自体でコーティングされた下塗りされた支持体表面を提供する。下塗りされたコーティング剤は、今度は、ポリマー層を支持体表面に共有結合的にまたは非共有結合的に付着させるべき「結合」剤として働き得る。更に、本発明は、ここにおいて記載されているような、コーティング剤および重合性基を含むコーティング系、並びに一群の新規コーティング剤を提供する。
【0013】
一つの観点において、本発明は、ポリマー層を支持体表面上に形成させる方法であって、
a)支持体表面を用意し、
b)2個またはそれ以上の光反応性種および1個またはそれ以上の負荷電基を含むコーティング剤を該支持体表面に施用し、しかも該コーティング剤は
i)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基が直接的または間接的のいずれかにて付着されている共役環状ジケトンであって、該ジケトンの各ケトン基は、フリーラジカルを与えるために活性化されることの可能な光反応性部として働くように適応されている該共役環状ジケトン、および
ii)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基および2個またはそれ以上の光反応性種が直接的または間接的のいずれかにて付着されている非ポリマーコア分子であって、それらの光反応性種は別個の光反応性基として与えられている該非ポリマーコア分子から選択され、しかもそれらの光反応性種は、支持体表面の存在下で活性化される時に該コーティング剤を該表面に付着させるように適応されている少なくとも1個の第1光反応性種およびフリーラジカル重合性基の存在下で活性化される時にこれらの基の重合を開始させるように適応されている少なくとも1個の第2光反応性種を含み、しかも第2光反応性種はかかるフリーラジカル重合性基の不存在下で潜反応性状態に復帰するように適応されており、
c)該コーティング剤を該表面に第1光反応性種により光化学的に付着させかつ第2光反応性種が支持体表面に未結合のままにありそしてそれらの潜反応性状態に復帰するようにするのに適した条件下で、該支持体表面上の該剤を照射し、
d)フリーラジカル重合性基を有する複数の分子を供給し、そして
e)該支持体表面上において該重合性基の重合を開始させるために該コーティング剤の該復帰第2光反応性種を活性化するのに適した条件下で、重合性基を有する該分子を該支持体表面上の該コーティング剤の存在下で照射することを含む上記方法を提供する。
【0014】
本発明による方法は、コーティング過程の改善制御を与え、また以前の方法の欠陥(たとえば、低試薬溶解性、および支持体表面に対する貯蔵履歴、温度および湿度等の因子の影響)の多くを減じまたは回避する。本発明はまた、表面上の重合性基と依然溶液中にある重合性基の間において等の競合重合反応の発生を減じるために用いられ得、しかしてこのことは表面上における増大的収量をもたらすことに通じる。
【0015】
コーティング剤を表面に光化学的に付着させるための照射、並びに重合性基を有する分子の供給、および重合を開始させるために光反応性基(たとえば、復帰基)を活性化させるための照射を含めて、本方法の様々な工程は、いかなる適当な態様にてもたとえば同時におよび/または逐次的に遂行され得る。本記載を考えると、当業者はまた、当該過程を所望に応じて同時または逐次的のいずれかにて遂行するように反応条件が最適にされ得る態様を認識するであろう。
【0016】
本コーティング剤の第1および第2光反応性種は、独立的に、同一または異なり得る。その代わりに、光反応性種は、熱活性化性基(たとえば、アジド基)の形態にて与えられ得る。ここにおいて用いられる光反応性種は、適切な波長の光での照射時に水素引抜きを経て共有結合を形成するように活性化されることの可能な基である。かかる光反応性種は、好ましくは、水素を引き抜くことができない場合不活性すなわち「潜反応性」状態に復帰することが可能でもある。かくして、適当な波長の光での照射時に、第1光反応性種は、表面から水素を引き抜くことにより支持体表面に共有結合するものである。一方、第2光反応性種は、未反応のままでありそしてその後潜反応性状態に復帰するものである。それにより第2光反応性種は、重合を開始させるために利用可能なままにある。第1および第2光反応性種が異なる場合、それらは、好ましい具体的態様において、特定の波長の光が第1光反応性種を活性化するがしかし第2のものを活性化しないおよびその逆であるように、異なる波長の光により活性化可能であり得る。
【0017】
理論により縛られる意図はないけれども、本発明のコーティング剤は、第1および第2光反応性種の両方が支持体表面に付着するのを妨げるのに適当な大きさおよび構造を有する傾向にある、と思える。第1光反応性種が支持体表面に付着する場合、今度は、第2光反応性種は、コーティング剤の大きさおよび該剤上の光反応性種の位置の結果として支持体表面に付着するのを妨げられる。
【0018】
一つの具体的態様において、本発明のコーティング剤は、コア分子を相当する光反応性種に付着させるように働く1個またはそれ以上の随意的スペーサーを更に含み、しかも該スペーサーは、一般式
−O−(CH2n− および
−(C24O)m−C24O−〔ここで、nは1より大きいかまたは等しくかつ約5より小さい数であり、そしてmは1より大きいかまたは等しくかつ約4より小さい数である〕を有する基から選択される。
【0019】
本発明の方法は、コーティング剤として慣用の化合物を用いて遂行され得、しかして該化合物のいくつかは、アントラキノンおよびショウノウキノン誘導体たとえばアントラキノンスルホン酸塩およびショウノウキノンスルホン酸塩のように商業的に入手できる。このタイプの適当な化合物の例は、負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基が直接的または間接的のいずれかにて付着されている共役環状ジケトンであって、該ジケトンの各ケトン基は、フリーラジカルを与えるために活性化されることの可能な光反応性部として働くように適応されている該共役環状ジケトンを含む。しかしながら、特に好ましい具体的態様において、本発明の或るコーティング剤は、単独で新規であると信じられる。一つのかかる具体的態様において、コーティング剤は、負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基および2個またはそれ以上の光反応性種が付着されている環状炭化水素コアであって、それらの光反応性種は別個の光反応性基として与えられている該環状炭化水素コアを含む。
【0020】
いかなるかかる具体的態様においても、光反応性種は、支持体表面の存在下で活性化される時にコーティング剤を該表面に付着させるように適応されている少なくとも1個の第1光反応性種およびフリーラジカル重合性基の存在下で活性化される時にこれらの基の重合を開始させるように適応されている少なくとも1個の第2光反応性種を含み、しかも第2光反応性種はかかるフリーラジカル重合性基の不存在下で潜反応性状態に復帰するように適応されている。第2光反応性種は、今度は、光開始剤として、特にフリーラジカル重合のための開始剤として働くように適応され得る。荷電基は、該剤が水性反応系において用いられるのを可能にするのに適当な水溶解性を該剤に与える。特に好ましいコーティング剤は、改善された生体適合性および血液適合性を与えるのに適当な負荷電基を含む。
【0021】
特に好ましい具体的態様において、コーティング剤は、以下に列挙された化合物から選択される:
【0022】
【表1】

【0023】
本発明のコーティング剤は、特に以前の剤が有効でなかった表面変性反応系において用いられ得るので、広範な適用性を有する。特に、1個またはそれ以上の荷電基(たとえば、スルホン酸、カルボン酸およびリン酸の塩)の存在は、該剤に高められた水溶解性を与える。このことは、今度は、水溶性剤を好む反応系においてコーティング剤が用いられるのを可能にする。それにより本発明のコーティング剤は、コーティング密度および構造安定性等の性質の改善された組合わせをもたらし、しかしてこのことは該剤が広範囲の反応系において用いられるのを可能にする。
【0024】
更に、光反応性種の存在は、該剤が広く様々な支持体表面に関して用いられるのを可能にする。コーティング剤は、コーティング剤それ自体で下塗りされた表面を与えるために、支持体表面用コーティング組成物として単独で用いられ得る。この具体的態様において、コーティング剤は、たとえば抗トロンボゲン形成性、滑性、血液適合性、湿潤性/親水性、表面への付着の持続性、生体適合性および細菌付着性等のコーティング剤それ自体の望ましい性質を表面に与える。その代わりに、コーティング剤は、支持体表面上にポリマー層を形成させるために用いられ得る。後者の場合において、コーティング剤は、ポリマー層を支持体表面に共有結合的にまたは非共有結合的に付着させるべき「結合」剤として働く。
【0025】
別の観点において、本発明は、コーティング系であって、
1)ここにおいて記載されたコーティング剤および
2)重合性基を有する複数の分子を含むコーティング系を提供する。
好ましい具体的態様において、重合性基を有する分子は、モノマー重合性分子およびマクロマー重合性分子から選択され、しかしてこれらのモノマーまたはマクロマーは、固有的に親水性であるかまたは容易に変性されて(たとえば、加水分解または可溶化により)親水性特性をもたらすかのいずれかである。かかる親水性特性は、分子に水に対する親和性を与えて、分子が加工のために水溶性であるようにする。
【0026】
本発明は、以前の方法に比べて、重合過程にわたって改善された制御を与えるために用いられ得る。このことは、重合を開始させるべき光開始剤(たとえば、光開始性基)として働くことの可能な光反応性種の使用の結果である。ここにおいて記載されている光開始性基は、溶液にてまたは支持体表面に付着されるべき予備形成ポリマーによるのいずれかにて別個に与えられる代わりに、コーティング剤それ自体により与えられる。本発明の光開始性基は、重合過程に再生的に関与するように適応されている。特に好ましい具体的態様において、光反応性種は、可逆的光分解ホモリシスを受け、それにより支持体表面への付着において消費されない光反応性種が不活性すなわち「潜」状態に復帰するのを可能にするように適応されている。これらの光反応性種は、フリーラジカル重合を開始させるための光開始剤基として働くために、引き続いて活性化され得る。かくして、光開始剤の励起は可逆的であり、そしてこの基はエネルギー源の除去時に基底状態エネルギーレベルに復帰し得る。特に好ましい光開始剤は、水性系において多回数活性化を受けそして従って増大的コーティング効率をもたらす基である。
【0027】
一つの具体的態様において、コーティング剤は、第1光反応性種の活性化を通じて支持体表面に施用され、それによりコーティング剤が付着された支持体を含む下塗りされた表面をもたらし得る。下塗りされた表面は、重合性基を有する分子の存在下で第2光反応性種を活性化するために照射され得る。第2光反応性種は、分子の重合性基のフリーラジカル重合のための光開始剤として働く。この具体的態様において、コーティング剤は、生じたポリマー層を支持体表面に付着させると共に、ポリマーがコーティング剤層上でその場で成長されるように機能する。
【0028】
本発明のコーティング剤は、好ましくは、アントラキノンスルホン酸塩、ショウノウキノンスルホン酸、ハイドロキノンモノスルホン酸誘導体、2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸二カリウム塩および4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸二カリウム塩の群から選択される。本発明の生じたポリマー層は、厚さの均一性、滑性、血液適合性、湿潤性/親水性、コーティング剤付着の持続性、生体適合性および細菌付着性等の性質の最適組合わせをもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】水平スレッドスタイル摩擦テスト200g。再生セルロース内にカバーされたステンレス鋼スレッドを用いる摩擦力評価のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本発明は、ポリマー層を支持体表面上に形成させる方法であって、支持体表面を用意し、2個またはそれ以上の光反応性種および1個またはそれ以上の負荷電基を含むコーティング剤を該支持体表面に施用し、該支持体表面上の該剤を照射して該コーティング剤を該表面に光化学的に付着させ、フリーラジカル重合性基を有する複数の分子を供給し、そして該支持体表面上の重合性基を有する該分子および該コーティング剤を照射して該支持体表面上の重合性基を有する該分子の重合を開始させることを含む上記方法を提供する。
【0031】
一つの観点において、本発明は、負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基および2個またはそれ以上の光反応性種が直接的または間接的のいずれかにて付着されている非ポリマーコア分子であって、それらの光反応性種は別個の光反応性基として与えられている該非ポリマーコア分子を含むコーティング剤を提供する。本発明によれば、光反応性種は、コーティング剤を表面に付着させるように適応されている1個またはそれ以上の第1光反応性種および光重合を開始させるように適応されている1個またはそれ以上の第2光反応性種を含む。
【0032】
一つの具体的態様において、コーティング剤は、負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基が直接的または間接的のいずれかにて付着されている共役環状ジケトンであって、該ジケトンの各ケトン基は、フリーラジカルを与えるために活性化されることの可能な光反応性部として働くように適応されている該共役環状ジケトンを含む。好ましくは、共役環状ジケトンは、置換および未置換のベンゾキノン、ショウノウキノン、ナフトキノンおよびアントラキノンから選択されたキノンである。
【0033】
別の具体的態様において、本発明のコーティング剤は、単独で新規であると信じられ、そして負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基および2個またはそれ以上の光反応性種が直接的または間接的のいずれかにて付着されている非ポリマーコア分子であって、それらの光反応性種は別個の光反応性基として与えられている該非ポリマーコア分子を含む。好ましい具体的態様において、かかるコーティング剤は、4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸二カリウム塩(DBDS)、2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸二カリウム塩(DBHQ)、ハイドロキノン誘導体、アントラキノン誘導体およびショウノウキノン誘導体の群から選択される。最適には、コーティング剤は、DBDS、DBHQおよび2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1−スルホン酸一(または二)ナトリウム塩から選択される。
【0034】
特に好ましいコーティング剤は、4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸二カリウム塩(DBDS)および2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸二カリウム塩(DBHQ)の群から選択される。
ここにおいて記載されるコーティング剤は、一般に、興味のある支持体表面上に該剤の改善コーティング密度をもたらす低分子量コア分子を与える。更に、光反応性基は、光重合のための開始剤並びに表面への該剤についての付着部位を与える。最後に、荷電基は、水溶解性および血液適合性等の改善性質を与える。かくして、コーティング剤は、広く様々な使用が可能であり、また先行技術において見られる制限の多くを回避する。
【0035】
本発明の適当なコア分子は、低分子量(たとえば、100〜1000MW)を有する非ポリマー基を含む。適当なコア分子は、コーティング密度、構造安定性、製造の容易性、およびコスト等の性質の改善組合わせを与える。更に、コア分子は、水溶性域、生分解性域、疎水性域並びに重合性域が具備され得る。適当なコア分子の例は、ベンゼンおよびその誘導体等の環状炭化水素を含む。
【0036】
光反応性種はここにおいて定義されており、そして好ましい種は、それらがかかる性質を保持する条件下で貯蔵されるのに十分に安定である。たとえば、米国特許第5,002,582号(その開示は参照によりここに合体される)参照。電磁スペクトルの様々な部分に応答性である潜反応性基が選ばれ得、しかしてスペクトルの紫外および可視部分に応答性(ここにおいて「光反応性」と称される)のものが特に好ましい。
【0037】
光反応性種は、活性種の発生を受けるべき特定の適用外部刺激に応答して、たとえば同じまたは異なる分子により与えられるような隣接化学構造への共有結合がもたらされる。光反応性種は、それらの共有結合を貯蔵の条件下で未変化に保つがしかし外部エネルギー源による活性化時に他の分子との共有結合を形成するところの、分子中の原子の基である。
【0038】
光反応性種は、電磁エネルギーの吸収時に、フリーラジカル特にニトレン、カルベンおよび励起状態のケトン等の活性種を発生する。光反応性種は、電磁スペクトルの様々な部分に応答性であるように選ばれ得、しかしてたとえばスペクトルの紫外および可視部分に応答性である光反応性種が好ましく、そしてここにおいて時折「光化学基」または「光基」と称され得る。
【0039】
アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロンおよびアントロン様複素環(すなわち、10位にN、OまたはSを有するもの等のアントロンの複素環式類似体)またはそれらの置換(たとえば、環置換)誘導体等の光反応性アリールケトンにおける光反応性種が好ましい。好ましいアリールケトンの例は、アクリドン、キサントンおよびチオキサントンおよびそれらの環置換誘導体を含めて、アントロンの複素環式誘導体を含む。特に好ましいものは、約360nmより大きい励起エネルギーを有するチオキサントンおよびその誘導体である。
【0040】
かかるケトンの官能基は、ここに記載された活性化/不活性化/再活性化のサイクルを受けることが容易に可能であるので好ましい。ベンゾフェノンは特に好ましい光反応性部であり、何故ならそれは三重項状態への項間交差を受ける励起一重項状態の初期形成を伴う光化学励起が可能であるからである。励起三重項状態は、水素原子の引抜き(たとえば、支持体表面から)により炭素−水素結合に入り、かくしてラジカル対を生じ得る。ラジカル対の引き続く崩壊は、新たな炭素−炭素結合の形成に通じる。反応性結合(たとえば、炭素−水素)が結合のために利用可能でない場合、ベンゾフェノンの紫外線誘発励起は可逆的であり、そしてその分子はエネルギー源の除去時に基底状態エネルギーレベルに戻る。ベンゾフェノンおよびアセトフェノン等の光活性化性アリールケトンは、これらの基が水中において多回数再活性化を受けそして従って増大的コーティング効率をもたらすので特に重要である。
【0041】
アジドは、光反応性種の好ましいクラスを構成し、そしてフェニルアジドおよび特に4−フルオロ−3−ニトロフェニルアジド等のアリールアジド(C653)、ベンゾイルアジドおよびp−メチルベンゾイルアジド等のアシルアジド(−CO−N3)、エチルアジドホルメート、フェニルアジドホルメート等のアジドホルメート(−O−CO−N3)、ベンゼンスルホニルアジド等のスルホニルアジド(−SO2−N3)、およびジフェニルホスホリルアジドおよびジエチルホスホリルアジド等のホスホリルアジド(RO)2PON3を基剤とした誘導体を含む。ジアゾ化合物は、光反応性種の別のクラスを構成し、そしてジアゾメタンおよびジフェニルジアゾメタン等のジアゾアルカン(−CHN2)、ジアゾアセトフェノンおよび1−トリフルオロメチル−1−ジアゾ−2−ペンタノン等のジアゾケトン(−CO−CHN2)、t−ブチルジアゾアセテートおよびフェニルジアゾアセテート等のジアゾアセテート(−O−CO−CHN2)、およびt−ブチルアルファジアゾアセトアセテート等のベータ−ケト−アルファ−ジアゾアセテート(−CO−CN2−CO−O−)の誘導体を含む。他の光反応性種は、3−トリフルオロメチル−3−フェニルジアジリン等のジアジリン(−CHN2)、およびケテンおよびジフェニルケテン等のケテン(−CH=C=O)を含む。
【0042】
光反応性種の活性化時に、コーティング剤は、光反応性種の残基を通じての共有結合により互いにおよび/または材料表面に共有結合される。例示的光反応性種および活性化時のそれらの残基は、次のように示される。光反応性 残基官能性アリールアジド アミン R−NH−R′アシルアジド アミド R−CO−NH−R′アジドホルメート カルバメート R−O−CO−NH−R′スルホニルアジド スルホンアミド R−SO2−NH−R′ホスホリルアジド ホスホルアミド (RO)2PO−NH−R′ジアゾアルカン 新たなC−C結合ジアゾケトン 新たなC−C結合およびケトンジアゾアセテート 新たなC−C結合およびエステルベータ−ケト− 新たなC−C結合およびベータ−ケトエステルアルファ−ジアゾアセテート脂肪族アゾ 新たなC−C結合ジアジリン 新たなC−C結合ケテン 新たなC−C結合光活性化ケトン 新たなC−C結合およびアルコール
本発明のコーティング剤は、光反応性種が反応してコーティング剤を表面に固定し得る炭素−水素結合を有するいかなる表面にも施用され得る。適当な表面の例は、以下に一層詳細に記載される。
【0043】
本発明において有用な光開始剤基は、フリーラジカル発生の過程により所望の程度および所望の時間枠内で重合性基の光重合を開始させるために用いられ得るものを含む。光開始剤は、光エネルギーの作用により開始性種を生成させることを担う。フリーラジカルは、分子内光開裂または水素引抜き(たとえば、分子間または分子内)により生成され得る。かくして、本発明によれば、重合は、一般に、光活性化フリーラジカル重合開始剤によりマクロマーまたはモノマーの間で開始される。好ましい光開始剤は、光エネルギーを獲得しそして重合性基を有する分子(たとえば、マクロマー重合性分子またはモノマー重合性分子)の重合を開始させる光感受性分子である。
【0044】
好ましい光開始剤の例は、上記に列挙された好ましい光反応性種を含む。光開始剤基(すなわち、第2光反応性基)は、コーティング剤を支持体表面に付着させるために用いられる第1光反応性基と同一または異なり得る。一つの具体的態様において、第1および第2光反応性種は、異なる波長の光(たとえば、紫外線対可視光線)により独立的に活性化されるように適応されている。
【0045】
支持体表面の存在下での光反応性種の活性化時に、第2光反応性基は、光開始剤基として使えるように支持体表面に未結合のままにありそしてそれらの不活性状態に復帰する。理論により縛られる意図はないけれども、未結合のままにいる(そして従って光開始剤として使える)べき光反応性基の能力は、少なくとも部分的には、様々な反応条件(たとえば、照射波長の時間および強度、試薬濃度、等)および/またはコーティング剤それ自体の大きさおよび/または構造により課せられた制限の因子である、と思える。かくして、光開始剤は、適当なエネルギー源により引き続いて活性化されそしてそれにより光重合を開始させるために利用可能なままにある。
【0046】
本発明におけるフリーラジカル重合の光開始は、光化学的分子内光開裂、水素引抜きおよびレドックス反応を含めて、様々なメカニズムを介して起こり得る。特に好ましい具体的態様において、光開始は、重合性基からの水素引抜きにより起こる。
分子内光開裂は、カルボニル基と隣接炭素原子の間のホモリチックアルファ開裂反応を含む。このタイプの反応は、一般に、ノリッシュI型反応と称される。ノリッシュI型反応性を示しかつポリマー開始系において有用な分子の例は、ベンゾインエーテルおよびアセトフェノンの誘導体を含む。たとえば、本発明のコーティング剤が隣接カルボニル基を有するキノン(たとえば、ショウノウキノン)の形態にて与えられる好ましい具体的態様において、光開始は、分子内結合開裂を介して起こる。
【0047】
第2メカニズムすなわち水素引抜きは、事実上分子内または分子間のいずれかであり得る。このメカニズムを用いる系は、追加的エネルギー移動受容体分子なしでかつ非特異性水素引抜きにより用いられ得る。しかしながら、この系は、より通常的には、エネルギー移動受容体典型的には第3級アミン(アミノアルキル基およびケチル基の両方の形成をもたらすことになる)と共に用いられる。水素引抜き反応性を示しかつポリマー開始系において有用な分子の例は、ベンゾフェノンおよびショウノウキノンの類似体を含む。
【0048】
第3メカニズムは、光還元可能なまたは光酸化可能な染料を利用する光増感反応を含む。たいていの場合において、光還元可能な染料は、還元体典型的には第3級アミンと共に用いられる。還元体は、染料のラジカルアニオンおよび還元体のラジカルカチオンを生成する誘発三重項を阻む。
本発明のコーティング剤は、いかなる適当な態様にても、たとえば支持体表面へのコーティング剤および化合物(たとえば、重合性基を有する分子)の同時または逐次付着により用いられ得る。好ましい具体的態様において、本発明の方法は、コーティング剤が最初に表面に付着されそしてその後付着された該剤の光開始剤を用いて化合物がその上で重合される逐次工程を含めて、二工程法を含む。逐次手法の一つの利点は、この種の光重合は支持体表面上において薄いポリマー層の発生を可能にすることである。生じたポリマー層は、典型的には、高度に接着性であり、厚さにおいて均一であり、また高度に耐久性である。更に、ポリマー層を形成するために用いられる溶液は、いかなる表面形態のいかなる適当な支持体表面にも施用され得る(たとえば、溶液施用、浸漬、吹付け塗布、ナイフ塗布およびロール塗布により)。生じるポリマー層は、今度は、不規則な表面並びに滑らかで比較的均一な表面を覆うように適応され得る。重合性種はまた、支持体表面に本発明のコーティング剤と同時に、コーティング剤のかかる同時付着および重合性種の重合を可能にするのに適当な反応条件を与えることにより付着され得る。
【0049】
特に好ましい具体的態様において、光開始は、電磁エネルギーの吸収時に、フリーラジカル特にニトレン、カルベンおよび励起状態のケトン等の活性種を発生させる。この励起光開始剤は、今度は、下塗りされた表面に施用されたところの、光開始剤に近接した利用可能な源たとえば重合性種から水素原子を引き抜く。かくして、この水素引抜きは重合性種内にフリーラジカル部位を発生させ、しかして該部位から重合が進行し得る。
【0050】
典型的なフリーラジカル重合は、4つの工程を含む。すなわち、開始、伝搬、停止および連鎖移動。開始において、開始剤から誘導されたフリーラジカルは、モノマー分子に付加して活性中心を形成する。他の開始反応は分子の頭部への付加または水素引抜きを含み、そして反応メカニズムはラジカルおよびモノマーの構造に依存する。伝搬すなわち成長反応は、ラジカル種へのモノマー分子の急速付加から成る。伝搬の最も普通のメカニズムは、頭尾型にて起こる。しかしながら、伝搬はまた、頭頭、尾頭および尾尾型にて起こり得る。停止において、ポリマー鎖は、伝搬ラジカルの破壊により成長を止める。通常、ラジカルを破壊する種の不存在下で、鎖停止は、ラジカルの二分子相互作用(たとえば、ラジカルの結合または不均化)により起こる。
【0051】
ここにおいて用いられる「荷電」基は、一般に、溶液中においてイオン形態にて存在するすなわち使用の条件(たとえば、pH)下で電荷を有する基を指す。荷電基は、部分的には化合物に所望の水溶解性を与えるために存在する。加えて、かかる荷電基は、抗トロンボゲン形成性および血液適合性等の望ましい特性の組合わせを与える。
【0052】
好ましいコーティング剤における荷電基のタイプおよび数は、該剤に少なくとも約0.1mg/ml好ましくは少なくとも約0.5mg/ml一層好ましくは少なくとも約1mg/mlの水溶解性(室温および最適pHにおいて)を与えるのに十分である。表面コーティング過程の特質を考えると、少なくとも約0.1mg/mlのコーティング剤溶解性レベルは、一般に、表面上に標的分子の有用な被膜(たとえば、ポリマー層)を与えるために適切である。
【0053】
かくして、本願のコーティング剤は、典型的には水中に不溶であると考えられる当該技術における多くのコーティング剤(たとえば、約0.1mg/mlまたはそれ以下一層しばしば約0.001mg/mlまたはそれ以下の範囲の比較可能水溶解性を有する)と対照的であり得る。この理由のために、慣用のコーティング剤は、典型的には、水が不存在であるかまたは小量(たとえば、約50容量%より少ない)成分として与えられるかのいずれかである溶媒系において与えられそして用いられる。
【0054】
適当な荷電基の例は、有機酸の塩(たとえば、スルホネート、ホスホネートおよびカルボキシレート基)並びにそれらの組合わせを含む。本発明のコーティング剤を製造する際に用いるための好ましい荷電基は、スルホン酸塩、たとえば対イオンがいかなる適当な正荷電種によってもたとえばカリウムまたはナトリウムイオンとして与えられるSO3-の誘導体である。
【0055】
一つの具体的態様において、本発明のコーティング剤は、非ポリマーコア分子と光反応性種の1個またはそれ以上との間に随意的スペーサーを更に含む。スペーサーは、光反応性種とコア分子の間により大きい距離を与えることが所望される状況において与えられる。たとえば、コア分子と光反応性種の間で生じ得る立体障害を回避するためにスペーサーを与えることが望ましくあり得、かくして光反応性種が支持体表面との共有結合を形成する(第2光反応性種に関して)のをまたは重合のための光開始剤として働く(第1光反応性種に関して)のを阻止する。
【0056】
一つの具体的態様において、本発明は、ここにおいて記載されたコーティング剤および各々が1個またはそれ以上の重合性基を担持している複数の分子を含む系を意図している。この具体的態様によれば、光開始剤基は、重合性基の重合を開始させるように働き、それによりコーティング剤を介して所望物品の支持体表面に共有結合されるポリマー層を形成させる。ここにおいて用いられる「重合性基」は、一般に、フリーラジカルの発生を介しての一層好ましくは可視または長波長紫外線によって活性化される光開始剤による開始により重合されるように適応されている基を指すものとする。
【0057】
適当な重合性化合物は、固有的に親水性であるかまたは適切な反応条件(たとえば、pH)において親水性特性をもたらすように容易に変性されることが可能であるかのいずれかである重合生成物(たとえば、フリーラジカル重合から生じるポリマー層)をもたらすために用いられ得る。更に、かかる化合物の重合性基は、フリーラジカル重合に関与するように適応されているものを含み得る。好ましい化合物は、少なくとも1つのフリーラジカル重合性成分(たとえば、ビニル基)および少なくとも1個の、水に対する高親和性を有する官能基を含む。本発明により意図されているように、水に対する高親和性を有するかかる官能基は、負荷電、正荷電または電気的に中性であり得る。
【0058】
適当な重合性化合物は、モノマー重合性分子(たとえば、有機モノマー)およびマクロマー重合性分子(たとえば、有機マクロマー)から選択される。ここにおいて用いられる「マクロマー」は、約250ないし約25,000好ましくは約1,000から約5,000の分子量を有する高分子モノマーを指すものとする。
【0059】
適当な重合性化合物は、電気的に中性の親水性官能単位たとえばアクリルアミドおよびメタクリルアミド誘導体を含有し得る。電気的に中性の親水性構造単位を含有する適当なモノマーの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(たとえば、N,N−ジメチルアクリルアミドまたはメタクリルアミド、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはメタクリレート、グリセロールモノメタクリレートおよびグリセロールモノアクリレート)を含む。
【0060】
その代わりに、電気的に中性の親水性官能単位を含有する適当な重合性化合物は、いったん形成された分子のポリマーが容易に変性されて(たとえば、エチレンオキシドの付加により加水分解されて)水に対する高められた親和性を有する生成物をもたらし得る分子を含む。このタイプの適当なモノマーの例は、グリシジルアクリレートまたはメタクリレート(それらのポリマーは、容易に加水分解されて水に対する高親和性を有するグリコール構造をもたらし得るエポキシ基を有する)を含む。
【0061】
適切なpHレベルにおいて負に荷電される適当なモノマー重合性分子の例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、AMPS(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)、ビニルリン酸、ビニル安息香酸、等を含む。
その代わりに、適切なpHレベルにおいて負に荷電される適当なモノマー重合性分子は、いったん形成された分子のポリマーが容易に変性されて(たとえば、エチレンオキシドの付加を介しての加水分解により)水に対する高められた親和性を有する生成物をもたらし得る分子を含む。このタイプの適当なモノマーの例は、マレイン酸無水物(そのポリマーは、容易に加水分解されてカルボン酸基をもたらし得るまたはアミンと容易に反応されて水に対する高親和性を有するアミド/酸構造をもたらし得る無水物基、および重合化ビニルエステルを有する)を含む。
【0062】
適切なpHレベルにおいて正に荷電される適当なモノマー分子の例は、3−アミノプロピルメタクリルアミド(APMA)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド(MAPTAC)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、等を含む。
その代わりに、適当な正荷電モノマー重合性分子は、容易に変性されて(たとえば、エチレンオキシドの付加を介しての加水分解により)水に対する高められた親和性並びに正電荷を有する生成物をもたらし得る分子、たとえばグリシジルメタクリレート(そのポリマー生成物は、アミン(たとえば、エチルアミン)と反応されてヒドロキシアミノ化合物もたらし得る)を含む。ある場合には、これらの物質は、たとえば完全に第4級化されたアンモニウム構造の場合のように、固有の正電荷を有する構造単位を含有する。ある場合には、正荷電構造単位は、或るpH値において特に酸性pH値において存在する。
【0063】
別の具体的態様において、本発明の重合性化合物は、マクロマー重合性分子を含む。適当なマクロマーは、上記に説明されたもの等のモノマーから合成され得る。本発明によれば、マクロマーの重合性官能成分(たとえば、ビニル基)は、ポリマー鎖のいずれかの末端にまたはポリマー鎖に沿って1つまたはそれ以上の箇所にランダムまたは非ランダム構造態様にて配置され得る。
【0064】
1分子当たりのフリーラジカル重合性基の数は、適用に従って変動され得る。たとえば、丁度1個のフリーラジカル重合性単位を有するマクロマーを用いることが好ましくあり得る。しかしながら、ある場合には、たとえば、1マクロマー当たり1個より多いたとえば2個またはそれ以上の重合性単位を有するマクロマーを用いることが好ましくあり得る。加えて、本発明のマクロマーは、典型的には小さい分子構造においては利用可能でない態様において、水に対する改善親和性をもたらすべき構造的特徴を含有し得る(たとえば、親水性ポリ(エチレングリコール)物質)。
【0065】
適当なマクロマー重合性化合物の例は、メタクリレート誘導体、モノアクリレート誘導体およびアクリルアミド誘導体を含む。特に好ましいマクロマー重合性化合物は、ポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノアクリレート、モノメタクリルアミドポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリルアミド−コ−3−メタクリルアミドプロピルアクリルアミド)、ポリ(ビニルアルコール)モノメタクリレート、ポリ(ビニルアルコール)モノアクリレート、ポリ(ビニルアルコール)ジメタクリレート、等を含む。
【0066】
かかるマクロマーは、たとえば、最初に所望分子量の親水性ポリマーを合成しそして重合性(たとえば、ビニル)官能単位の所望レベルを導入するべきポリマー変性工程を後続させることにより製造され得る。たとえば、アクリルアミドは特定量の3−アミノプロピルメタクリルアミドコモノマーと共重合され得、そして生じたコポリマーは次いでメタクリルアミド官能単位を導入するべきメタクリル酸無水物との反応により変性され得、それにより本発明の目的のために有用なマクロマーが生成される。
【0067】
所望分子量のポリ(エチレングリコール)は、合成されまたは商業源から購入され得、そして本発明の方法において有用なマクロマーを生成させるために、末端メタクリレートエステル単位を導入するように変性され得る(たとえば、メタクリリルクロライドまたはメタクリル酸無水物との反応により)。ある適用はポリマー鎖の末端にまたは末端近くに配置された重合性単位を有するマクロマーの使用により利益を得り得るのに対して、ある使用は親水性ポリマー鎖主鎖に沿って配置された重合性単位を有することにより利益を得り得る。
【0068】
かかるモノマーおよびマクロマー重合性分子は、単独でまたはたとえばマクロマーと他のマクロマーとの組合わせ、モノマーと他のモノマーとの組合わせもしくは水に対する所望親和性を有するポリマー生成物をもたらすことの可能な1種もしくはそれ以上の小分子モノマーと組み合わされたマクロマーを含めて、互いに組み合って用いられ得る。更に、上記の重合性化合物は、両性化合物(たとえば、ツビッターイオン)の形態にて与えられ、それにより正および負電荷の両方を与え得る。
【0069】
ここにおいて記載されたコーティング剤は、いかなる適当な表面をも変性するために用いられ得る。該剤の潜反応性基が好ましいタイプの光反応性基である場合、コーティングされるべき支持体表面は、好ましくは、活性化基との共有結合に適した引抜き可能な水素原子を与える。別の具体的態様において、表面は、表面上に引抜き可能な水素原子をもたらすように変性され得る(たとえば、適当な試薬での前処理により)。
【0070】
本発明による方法は、ヒドロゲルポリマー、シリコーン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(ビニルクロライド)、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、パリレン、およびガラスまたは他の無機表面を予備処理するために用いられる数多くのオルガノシランのいずれかを含めて、様々な支持体表面に関して用いるのに適合する。光反応性コーティング剤は、いかなる適当な態様にても(たとえば、溶液にてまたは分散体により)表面に施用され、次いで均一照射により光活性化されて、それらが表面に固定され得る。適当なヒドロゲルポリマーの例は、シリコーンヒドロゲル、ヒドロキシエチルメタクリレートポリマーおよびグリセリルメタクリレートポリマーから選択される。
【0071】
他の適当な表面材料は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、塩素含有ポリマー(ポリ(ビニル)クロライド等の)、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、アミノ−エポキシ樹脂、ポリエステル、シリコーン、セルロースを基剤としたプラスチックおよびゴム様プラスチックを含む。一般に、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Kroschwitz編,John Wiley and Sons,1990におけるpp.462〜464の「プラスチックス」(その開示は、参照によりここに合体される)参照。加えて、熱分解カーボンから形成されたもの等の支持体、およびガラス、セラミックまたは金属のシリル化表面は、表面変性のために適合する。
【0072】
かかる材料は、製作の前、中および/または後のいずれかにて本発明によるポリマー層が与えられることの可能な多数の装置を製作するために用いられ得る。埋没装置は、適当な装置の一つの一般的クラスであり、そして移植片、ステント、カテーテル、弁、人工心臓および心臓補助装置等の脈管装置;関節インプラント、骨折修復装置および人工腱等の整形装置;歯科用のインプラントおよび骨折修復装置等の歯科用装置;レンズおよび緑内障ドレーンシャント等の眼科用装置;および他のカテーテル、合成補てつ物および人工器官を含むがしかしそれらに限定されない。他の適当な生物医学用装置は、透析用のチューブおよび膜、血液酸素供給器用のチューブおよび膜、血液バッグ、縫合糸、膜、細胞培養装置、クロマトグラフィー用支持材、バイオセンサー、等を含む。
【0073】
本発明によれば、表面変性は、光重合(たとえば、フリーラジカル重合による)を用いて達成され得る。本方法に従って、選定表面は、上記に記載されたコーティング剤と接触される。コーティング剤の施用中および/または後、表面は適切な波長のUV線で照射され、それにより光反応性種を活性化する。かくして、コーティング剤は表面に第1光反応性種により固定され(第2光反応性種は不活性形態に復帰する)、そして次いで過剰のコーティング剤は随意に洗い流されて、コーティング剤の基層で下塗りされた表面が残され得る。
【0074】
コーティング剤は、いかなる適当な態様にても興味ある表面に施用され得る。たとえば、コーティング剤は、浸漬塗布によりまたは該剤を表面上に散布する(たとえば、吹付け塗布により)ことにより施用され得る。適当な施用方法は、溶液施用、浸漬、吹付け塗布、ナイフ塗布およびロール塗布を含む。特に好ましい具体的態様において、コーティング剤は、吹付け塗布により表面に施用され、何故ならこの施用方法は、支持体表面上におけるコーティング剤の増大的密度をもたらし、それによりグラフト耐久性を改善する。
【0075】
ここにおいて記載された逐次手法において、重合性化合物を含有する溶液は、下塗りされた表面に施用され得る。該溶液はその場で照射されて光開始剤として働く第2光反応性基を活性化し、かくして水素引抜きを介してフリーラジカル重合を開始させ得る。特に好ましい具体的態様において、光重合は、酸素がフリーラジカル重合を妨害するので、不活性雰囲気中で行われる。脱酸素は、窒素等の不活性ガスを用いて行われ得る。
【0076】
系が脱酸素されると、表面は、適切な波長のUV線で再び照射され得る。かくして、この第2照射は、フリーラジカル重合の光開始剤として働く第2光反応性基を活性化する。好ましい具体的態様において、照射は光反応性基の励起状態を発生させて、励起分子が利用可能な源たとえば重合性基を有する分子から水素を引き抜くことを可能にする。かかる水素引抜きはフリーラジカル部位を発生させ、しかして該部位から重合が進行し得る。
【0077】
本発明は、次の非制限的例に関して更に記載される。多くの変更が、記載された具体的態様において、本発明の範囲から逸脱することなくなされ得る、ということが当業者に明らかであろう。かくして、本発明の範囲は、本願に記載された具体的態様に限定されるべきではなくて、請求項の言葉により記載された具体的態様およびそれらの具体的態様に等価なものによってのみ限定されるべきである。特に断らない限り、百分率はすべて重量による。
例14,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム塩(DBDS)(化合物I)の製造
4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム塩(DBDS)を、次のように製造した。ある量(9.0g,0.027モル)の4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム塩一水和物を、オーバーヘッド撹拌機、ガス送込口および還流凝縮器を備えた250mlの三口丸底フラスコに添加した。次いで、ある量(15g,0.054モル)の4−ブロモメチルベンゾフェノン(BMBP)、54mlのテトラヒドロフラン(THF)および42mlの脱イオン水を添加した。フラスコをアルゴン雰囲気下で撹拌しながら加熱して還流させた。アルゴン雰囲気は、全還流時間中維持された。
【0078】
還流が達成された後、9.0ml(6N,0.054モル)の水酸化ナトリウム溶液を還流凝縮器を通じて添加した。反応を、還流下で3時間撹拌した。この時間後、BMBPの第2部分すなわち3.76g(0.014モル)、および3.6ml(6N,0.022モル)の水酸化ナトリウムを添加した。反応を、第2BMBP添加後12時間より多い時間還流下で続行した。
【0079】
この反応混合物をロータリーエバポレーターにて真空下で40℃にて蒸発させて、46gの黄色ペーストが得られた。このペーストを、40℃にて30分間50mlのクロロホルム中に3回懸濁させることにより抽出した。固体からのクロロホルムのデカンテーションを助けるために、遠心機が用いられた。固体を最後の抽出後ブフナー漏斗上に集め、そして30分間空気乾燥した。次いで、この固体を、ロータリーエバポレーターを用いて50℃の浴温で約1mmの圧力にて30分間乾燥した。
【0080】
この乾燥固体26.8gを、67mlの水および67mlのメタノールから再結晶した。この乾燥精製生成物は、10.4g(理論収量は19.0gであった)になり、しかして0.036mg/mlの濃度について265nmにおいて1.62の吸光度を有していた。
例2
2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸二カリウム塩(DBHQ)(化合物II)の製造
2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸二ナトリウム塩(DBHQ)を、次のように製造した。ある量(15.0g,0.043モル)の2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸二カリウム塩を、オーバーヘッド撹拌機、ガス送込口および還流凝縮器を備えた500mlの三口丸底フラスコに添加した。次いで、ある量(23.75g,0.086モル)のBMBP、10.0g(0.094モル)の炭酸ナトリウム、90mlのメタノールおよび90mlの脱イオン水を添加した。フラスコをアルゴン雰囲気下で撹拌しながら加熱して還流させた。アルゴン雰囲気は、全還流時間中維持された。反応を、還流下で2時間撹拌した。
【0081】
BMBPの第2部分すなわち6.25g(0.023モル)、および2.65g(0.025モル)の炭酸ナトリウムを添加した。反応を、第2BMBP添加後更に2時間還流下で続行した。
この反応混合物を濾過しそして乾燥して、43.6gの半乾燥固体が得られた。この固体を乾燥して、26.8gの灰色粉末(理論収量は31gであった)が得られた。
【0082】
例3
2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび/またはカリウム塩(化合物III)の製造
2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび/またはカリウム塩を、次のように製造した。ある量(1.98g,0.0087モル)の2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸カリウム塩を、オーバーヘッド撹拌機、ガス送込口および還流凝縮器を備えた100mlの三口丸底フラスコに添加した。次いで、ある量(4.75g,0.017モル)のBMBP、2.9ml(0.017モル)の6N水酸化ナトリウム、18mlのメタノールおよび14mlの脱イオン水を添加した。フラスコをアルゴン雰囲気下で撹拌しながら加熱して還流させた。アルゴン雰囲気は、全還流時間中維持された。反応を、還流下で1時間撹拌した。
【0083】
BMBPの第2部分すなわち1.25g(0.0045モル)、および1.1ml(0.0066モル)の6N水酸化ナトリウムを添加した。反応を、第2BMBP添加後更に1時間還流下で続行した。
反応の終わりに、2つの液層が存在した。この反応混合物は、2日後に固化していた。この固体を濾過しそして乾燥して、5.95gの薄黄褐色固体(理論収量は5.1ないし5.3gであった)が得られた。
【0084】
例4
シリコーン表面へのDBDSの溶液施用
シリコーン基体に関してDBDSを光固定化しそして次いでメトキシPEG1000MMA(ポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート)でグラフトして親水性被膜を生成させることの実行可能性を決定するために、実験を行った。生じた被膜を、親水性および細菌付着性の性質について分析した。
【0085】
DBDS(化合物I)下塗りを、次の態様にてシリコーン基体に施用した。アルミニウムキャップ中に入れられたおおよそ2mlの0.5mg/mlDBDS溶液(100%水)中に、シリコーン基体を置いた。この基体を、DBDS中室温にておおよそ5分間定温放置した。
定温放置後、DBDS中の基体を、ドープ処理水銀蒸気ランプを含有するDymax投光ランプ(型式番号2000−EC,コネチカット州トリングトンのDymax Corporation)で照射して、DBDS中に存在する光反応性基を活性化し、それによりDBDSを基体表面に付着させた。この基体を、基体位置において330〜340nmの波長範囲で1〜1.5mW/cm2の強度にて1分間照射した。次いで、この基体をすすぎ、そしてポリ(エチレングリコール)(PEG1000)でグラフトする前に蒸留水中に置いた。
【0086】
DBDSの下塗り後、基体を、20ml注射器中に入れられた8mlのメトキシPEG1000MA(ポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート)中に置いた。次いで、PEG1000溶液および基体を、注射器の底から泡立つ窒素ガスを用いて10分間脱酸素した。10分間の窒素でのPEG溶液のスパージング後、EFOS UV灯(Engineered Fiber Optics System,型式番号100 SS Plus,ニューヨーク州ウィリアムズヴィルのEFOS U.S.A.Inc.)を注射器の上部に置いた。
【0087】
窒素ガスをPEG溶液を通じて依然泡立たせながら、該溶液をEFOSで照射した。該溶液は、PEG溶液のレベルにおいて320〜390nmフィルターで4〜6mW/cm2の強度にて10分間照射された。
親水性
生じたシリコーン基体の親水性を、次の態様にて接触角を決定することにより測定した。接触角を、動的接触角分析器(CAHN,型式番号DCA−322)を用いて測定した。湿潤性についての試験は、初期化段階および前進および後退角度が計算される後続3サイクルから成る。各サイクルは、次のプログラムを含む。すなわち、100ミクロン/secにおける速度設定、タラ釣合い、ZDOI(ゼロ浸漬深さ)検出、10mm前進、10mm後退およびゼロへの戻し。この試験について用いられた試料の大きさは、4.1mm(幅)×0.1mm(厚さ)×13mm(長さ)であった。各試料は、食塩充填溶液中において試験された。第1表は、DBDS溶液で/PEG1000グラフトでコーティングされたシリコーン基体について完了された接触角試験を要約する。
【0088】
【表2】

【0089】
これらの結果は、前進角度において有意的減少があることを指摘しており、試料が湿潤性であることを実証している。接触角はコーティング基体上におけるラテックス手袋での擦りでもって増大するけれども、依然いくらかの親水性がシリコーン基体上に残存している。
細菌付着性検定
生じたシリコーン基体の細菌付着性検定を、次の態様にて遂行した。緑膿菌の2種の菌株(American Type Culture Collection,ATCC#27853およびATCC#15442)を、上記に記載されたように製造されたDBDS溶液で/PEGグラフトでコーティングされた基体について調査した。検定は、コーティング基体対未コーティング基体について遂行された。次の結果(第2表および第3表)に基づくと、未コーティング基体に比べて有意的な細菌の減少がある。98%減少が未コーティング基体に比べた場合菌株ATCC#27853について観察され、そして41%減少が菌株ATCC#15442について観察された。
【0090】
【表3】

【0091】
これらの結果は、PEGグラフトを有するDBDSはコーティング基体が緑膿菌に暴露される場合細菌付着性を減じることを指摘している。
例5
シリコーン基体上におけるDBDSの吹付け塗布
シリコーン基体に関して表面上におけるDBDSの密度を増大させるべき吹付け方法を用いてDBDSを光固定しそして次いでメトキシPEG1000MMA(ポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート)でグラフトして親水性被膜を生成させることの実行可能性を決定するために、実験を行った。生じた被膜を、親水性、被膜付着の持続性および細菌付着性について分析した。
【0092】
シリコーン基体を、電池式回転器(1分当たり100回転(RPM)に設定)上に載せた。次いで、回転器を噴霧器およびUV線源の下に置いた。噴霧器は、水平からおおよそ45゜の角度に置かれかつ取付台の丸みのある縁から4.5cmにあった。
2O中の濃度0.5mg/mlのDBDS溶液を、1分当たり4〜5mlの一定速度にて基体上に吹き付けた。窒素流を系中に導入することにより、窒素環境が、DBDSの施用中ずっと維持された。同時に、基体を、水銀短アークドープ処理電球(独国製)であるOsram HBO 100W/cm2を含有するOrielシリーズQアーク灯(コネチカット州ストラトフォードのOriel Instruments)で照射した。基体は、330nm〜340nmの波長範囲で20mW/cm2の強度にて30秒間照射された。UV電球は、水平から45゜の角度に置かれた。
【0093】
DBDSが基体上に吹き付けられた後、3つのコーティング基体を、20mlフォルトゥナ注射器中に入れられた8mlの25%メトキシPEG1000(水中v/v)溶液中に置いた。次いで、メトキシPEG1000溶液および基体を、注射器の底から泡立つ窒素ガスを用いて15分間脱酸素した。最後の5分間、EFOS UV灯(上記に記載されたような)を注射器の上部に置いた。窒素ガスをPEG溶液を通じて依然泡立たせながら、該溶液をEFOSで照射した。該溶液は、PEG溶液のレベルにおいて320〜500nmフィルターで4〜6mW/cm2の強度にて5分間照射された。
【0094】
親水性
コーティングシリコーン基体の親水性を、次の態様にて接触角を決定することにより測定した。接触角を、接触角分析器(CAHN,型式番号DCA−322)を用いて測定した。試験は、初期化段階および前進および後退角度が計算される後続4サイクルから成る。各サイクルは、次のプログラムを含む。すなわち、100ミクロン/secにおける速度設定、タラ釣合い、2.0mm前進、タラ釣合い、ZDOI(ゼロ浸漬深さ)検出、14mm前進、14mm後退およびゼロへの戻し。この試験について用いられた試料の大きさは、4.1mm(幅)×0.1mm(厚さ)×13mm(長さ)であった。各試料は、食塩充填溶液中において試験された。第4表は、DBDS溶液で/PEG1000吹付けグラフトでコーティングされたシリコーン基体について完了された接触角試験を要約する。
【0095】
耐久性
生じた被膜の耐久性を、次の条件を用いる5回のオートクレーブサイクル後に接触角を試験することにより測定した。すなわち、液体サイクル,0.9%等張食塩溶液で満杯の3/4満たされた密封バイアル中121℃にて20分。耐久性を測定する別の方法は、コーティング基体をラテックス手袋で擦りそして接触角試験またはトルイジンブルー溶液(ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich)中での染色を後続させることである。下記の第4表は、コーティング直後の基体について、5回のオートクレーブサイクル後におよびラテックス手袋での擦り後に集められたデータを示す。
【0096】
【表4】

【0097】
これらの結果は、吹付けDBDSおよび後続PEGグラフトが湿潤性を有意的に改善したことを指摘している。DBDS/PEGグラフト被膜の耐久性はまた、5回のオートクレーブサイクルおよびラテックス手袋での擦り後の接触角に基づいて格別であった。5回のオートクレーブサイクルおよびラテックス手袋での擦り後、トルイジンブルー溶液中で染色されたコーティング試料は、未コーティング対照試料よりはるかに暗くて、被膜が存在したことを指摘した。
【0098】
細菌付着性検定
生じたシリコーン基体の細菌付着性検定を、次の態様にて遂行した。緑膿菌細菌の2種の菌株(ATCC#27853およびATCC#15442)および表皮ブドウ球菌(ATCC#35984)を、DBDS吹付け/PEGグラフトでコーティングされた基体について調査した。コーティングおよび未コーティング基体の両方を試験し、そして各々についての結果を比較した。下記の第5〜7表は、それらの結果を要約している。
【0099】
【表5】

【0100】
上記の表に示されているように、それらの結果は、各試験において未コーティングシリコーン基体に比べて細菌付着性の少なくとも96%減少があったことを指摘している。
例6
ヒドロゲルマトリックス上におけるDBDS塗布
ポリビニルピロリドン(PVP)を基剤とした滑性のヒドロゲルマトリックスに関してコーティング剤としてDBDSを用いることの有効性を実証するために、試験を遂行した。
【0101】
処方物についての濃度は、DBDS/PVPk90組合わせで遂行される実験計画(DOE)からきた。各実験について、3つの因子すなわちPVPk90濃度(20〜40mg/ml)、DBDS濃度(0.3〜0.7mg/ml)および%イソプロピルアルコール(10〜40容量%IPA)が変動された。実験から、高PVPk90レベル(40mg/ml)、高DBDS(0.7mg/ml)および低%IPAレベル(10%)がDBDS/PVPk90組合わせについて最も有利な処方であった、ということが決定された。
【0102】
DBDSおよびPVPの溶液を調製し、そしてポリビニルクロライド(PVC)製間欠型尿カテーテルの表面に施用した。この溶液は、10%(容量による)イソプロピルアルコールおよび90%(容量による)水の溶媒系中において0.7mg/mlのDBDSおよび40mg/mlのPVPk90を含有していた。
PVC製カテーテルの表面は、アルコールが染み込まされた布で拭くことにより清浄にされた。被膜は、1cm/sの速度での浸漬法によりカテーテルに施用された。カテーテルを回転しながら、被膜をDymaxランプ(先に記載されたような)で湿潤ないし乾燥の状態で4分間照射した。
【0103】
耐久性および滑性
コーティング部品の滑性および靱性を評価するために、60サイクル試験の最初のおよび最後の5サイクルの両方についての摩擦力を評価した。コーティングカテーテルを、水平ソリ式摩擦試験方法(下記に記載されるような改良ASTM D−1894)により評価した。
【0104】
再生セルロース(Spectra/Por分子多孔膜,MWCO:6〜8,000、平幅50mm、部品#132665,カリフォルニア州ロサンジェルスのSpectrum Medical Industries,Inc.から入手できる)を水和させ、そして次いで200グラムのステンレス鋼ソリに巻き付けた。セルロースのシートを、ソリの反対側にしっかりと一緒に留めた。次いで、回転可能な腕を有するソリを、コンピューターインターフェイスを備えた250グラムのChatillonディジタルフォースゲージ(DGGHS,250×0.1)に取り付けた。試験表面を、マイクロステッパーモーター制御(Compumotor SX6 Indexer/Drive)を備えた22.5インチの位置決めレールテーブル上に載せた。
【0105】
試験されるべき部品を脱イオン水中で水和させ、そして試験表面上に1インチ(すなわち、おおよそ2.5cm)離して留めた。水和されたセルロースで覆われたソリを、部品の上部に置いた。初期力測定を、5回の押し/引張りサイクルについてソリが5cm区画を0.5cm/secにて移動する間行った。次いで、摩耗をシミュレートするために、ソリは、コーティングサンプルについてのサイクルを5cm/secにて50回の押し/引っ張りサイクル続行した。次いで、速度を0.5cm/secに下げ戻し、そして最終力測定を更に5回の押し/引張りサイクルについて行った。
【0106】
下記の図1に示されているように、それらの結果は、DBDS/PVPk90組合わせが耐久性に関して優れた滑性のヒドロゲルマトリックスをもたらしたことを示している。DBDS処方物について、力のグラム数は60サイクルのすべてについて比較的一定のままであり、耐久性被膜を指摘している。
例7
コーティング剤の部分トロンボプラスチン時間
支持体表面に付着された場合のコーティング剤の血液適合性を決定するために、実験を行った。
【0107】
試薬の血液適合性を決定するのに有用な試験は、部分トロンボプラスチン時間(PTT)試験である。PTTは、凝固の固有の(第VIII、第IX、第XIおよび第XII因子)および共通の(フィブリノーゲン、プロトロンビン、第Vおよび第X因子)経路の試験である。血漿およびリン脂質血小板代替品(ウサギ脳セファリン)の混合物をカルシウム再添加し、そしてフィブリンストランドの出現に要する時間を測定する。
【0108】
化合物Iまたは化合物IIが対照PTTを延ばす能力を有するかどうかを決定するために、PTTを試験した。0.85%NaCl中のウサギ脳セファリン(Sigma#RBC)の試験管および0.02M−CaCl2の試験管を、水浴中で37℃にもたらした。Dade Ci-trol凝固制御凍結乾燥血漿(Dade International,Inc.,製品番号34224−10)を、滅菌脱イオン水中で再生した。10×75mmのガラス試験管中で、100μlの再生血漿および100μlのRBCを混合し、そして水浴中で37℃にて5分間定温放置した。次に、50μlの試料(脱イオン水、光架橋性ポリビニルピロリドン(SurModics,Inc.から入手できる,製品番号PVO5)または化合物IもしくはII)を添加し、そして混合した。同時にストップウォッチを始動しながら、100μlの0.02M−CaCl2を添加して凝固カスケードを開始させた。40秒が経過した後、試験管を軽く振り、フィブリン形成について観察し、そして秒数を記録した。
【0109】
すべての試料を、二重反復にて試験した。試薬が溶解される溶媒に依存する適切な対照PTTが、対照PTTが延ばされる時間を与える試薬についての平均PTTから引かれた。
各試薬の2つの異なる濃度についてのPTT実験の結果が、第8表に示されている。スルホネート基を何ら有さないポリマーPVO5は、脱イオン水対照PTTを延ばさなかった。スルホネート基を含有する化合物IおよびIIは、試験された両方の濃度においてそれらの対照PTTをかなり延ばす能力があった。試験された2つの最終濃度の高い方において、化合物IIはその水対照からのPTTを1時間またはそれ以上延ばす能力があり、そして化合物IIは50%IPA対照PTTを1時間延ばす能力がある。これらの結果は、試薬が凝固カスケードを阻止する能力がありそしてそれ故血液適合性適用にとって有益であり得たことを示している。
【0110】
【表6】

【0111】
例8
変性スルホネート試薬(化合物IおよびII)での低密度ポリエチレン(PE)の表面変性および分析
ポリマーポリエチレンをDBDS(化合物I)およびDBHQ(化合物II)の両方で表面変性した。ポリエチレン基体を、平シートとして得そして1/2インチ直径円盤として用いた。コーティング溶液を、次のように調製した。すなわち、DBDS(化合物I)を純水中に10mg/mlにて溶解し、そしてDBHQ(化合物II)を50%(v/v)イソプロパノール(IPA)および50%(v/v)水中に9mg/mlにて溶解した。試薬を、手作業浸漬塗布法を用いてポリエチレン基体に施用した。
【0112】
スルホネート試薬でコーティングする前、ポリエチレン表面の疎水性特質を湿潤性にしてスルホネート含有化合物が容易に施用され得るように、ポリエチレンシートを純IPA中の5mg/mlのPVO5(SurModics,Inc.,上記に記載されたような)の一塗りで予備コーティングした。該シートは垂直に吊り下げられ、PVO5溶液中に浸されそして定速度にて取り出された。次に、溶媒がもはや見えなくなるまで(しばしば、1分内)、該シートは風乾された。
【0113】
次いで、PVO5塗りの基体を、各々がHeraeus Q402Z4電球を装備している2台の食い違い配置のDymax UV硬化用ランプの中間に吊り下げた。ランプの設置距離において、これらの断片は、波長範囲330〜340nmでおおよそ1.5mW/cm2を受けた。表面が光に一様に浴されることを確実にするために、基体を2分間の照射中3rpmにて回転させた。
【0114】
PVO5下塗りを基体に施用した後、スルホネート試薬の三塗りを同じ態様にて施用した。次いで、これらのコーティングシートを、血小板付着・活性化検定および表面分析について用いられるまで周囲温度にて貯蔵した。
被膜の存在および均一性を確認するべくスルホネート変性ポリエチレンの表面を評価するために、2つの異なる技法すなわち染色およびESCA(化学分析用電子分光法)を用いた。コーティングされた材料を、正荷電可視波長染料であるトルイジンブルーOで染色した。試料は、染料の溶液(水中0.02%w/v)中に30秒間浸され、溶液から取り出されそして脱イオン水ですすがれた。染色された断片を、染色の均一性および強度について目視検査により評価した。
【0115】
変性基体の表面化学組成を定量的に調べるために、ESCAを用いた。単色AlX線を用いる量子2000ESCAシステム(Physical Electronics)で分析した。サーベイスペクトルを集めて、表面中の原子濃度を計算した。
血小板富化血漿からの血小板の付着および活性化
血小板の付着および活性化に対する表面化学の影響を決定するために、表面変性材料を血小板富化血漿(PRP)と共に定温放置し、走査電子顕微鏡で観察しそして写真撮影した。血液を3.8%(v/v)クエン酸ナトリウム溶液中に、血液対抗凝固剤の9:1比を用いて、ヒト志願者から新たに採取した。血液を1200rpmにて15分間遠心分離して、血液からPRPを分離した。このPRPを採取し、そして用いられるまで(1時間未満)室温に保った。
【0116】
試験試料(1/2インチ円形体)を、1ウェル当たり1個の試料にて、6ウェル平板中に置いた。PRP溶液を試料の全表面が覆われるまで試料の上部に添加し、そして試料を揺動することなく室温にて1時間定温放置した。血小板溶液を定量するために、PRPの試料を採取し、そして1%(v/v)シュウ酸アンモニウムで1:100に希釈した。毛管を用いて少量の溶液を血球計に移し、そして試料を蓋されたペトリ皿中で30分間室温にて定温放置して、血小板を沈降させた。
【0117】
血小板を位相差顕微鏡下で計数し、そしておおよそ50〜100×109個の血小板/Lであると決定された。定温放置後、PRPを吸引により注意深く取り出し、そして3mlのタイロード緩衝剤(138mMのNaCl、2.9mMのKCl、12mMの重炭酸ナトリウム,pH7.4)を各ウェルに穏やかに添加した。血小板を軌道振とう機にて15分間わずかに揺動し、溶液を変えそして洗浄を繰り返した。洗浄溶液を吸引し、そして2.0mlのカルノブスキー固定剤(25mlのホルムアルデヒド、5mlの25%グルタルアルデヒド、20mlの、23%NaH2PO4−H2O、77%NaHPO4無水物の溶液)を各ウェルに添加した。平板をパラフィルムで包み、そしてわずかに揺動しながら一晩室温にて定温放置した。
【0118】
固定剤を吸引除去し、そして試料を各回純水で各回15分間3回洗浄した。次いで、試料を25、50、75および100%のエタノール系列で各々15分間脱水した。試料を、取り付けるまで(4日の日数まで)100%エタノール中に4℃にて保管した。試料を取り付けそしてPd/Auの100オングストロームスパッター被膜でコーティングし、そしてJEOL 840走査電子顕微鏡を用いて観察した。写真を試料に沿った異なる域について数倍の倍率にて撮って、各試料の描写写真を得た。血小板を計数し、そして活性化度および形態により判定した。
【0119】
染料結合の結果は、表面変性手法がスルホネート試薬を基体表面上に固定するのに成功であったことを示唆した。化合物IIおよび化合物Iでコーティングされた表面は暗青色に染まり、かつ色は均一であった。未コーティングポリエチレンは、染まらなかった。
第9表は、未コーティングおよびスルホネート変性ポリエチレンの表面に関してESCA(化学分析用電子分光法)測定の結果を示す。未コーティング状態のポリエチレンは、100%炭素(ESCAは水素原子を検出できないので)の原子濃度を有するはずである。変性および未変性試料は、化合物IおよびIIに含有されているスルホネート基に因る変性ポリエチレンの表面上の硫黄を検出することにより、簡単に比較され得た。
【0120】
【表7】

【0121】
未コーティングポリエチレンに関して硫黄は不存在であったのに対して、化合物Iおよび化合物IIの両方に関してそれぞれ3.41および3.49あった。コーティングが成功であったことの別の指摘は、適切な対イオン(たとえば、ナトリウムまたはカリウム)の存在である。ESCA結果は、化合物Iが主としてカリウムを対イオンとして有しそして化合物IIが主としてナトリウムを対イオンとして有することを示している。このことは、どんな対イオンが各試薬について存在するはずであるかということと一致している。
【0122】
血小板付着実験についてのSEM(走査電子顕微鏡)結果は、第10表および第11表に示されている。SEM写真から、結合血小板の表面密度が推定された。
主たる血小板形態は、SEM写真から観察されそして第11表に要約されている。
【0123】
PV05コーティング対照以外の最低血小板密度は、化合物II変性PEについて見られた。化合物IIは少数の血小板を示し、しかしてそれらの血小板はすべて、いくらかの拡がり偽足を有していたがしかしほとんどまたは全く凝集のものを有していなかった。化合物Iは、未コーティング対照に関して見られたものと同様な血小板密度を有していたが、しかし劣った活性化および拡がりを示した。丸くなっていて劣った拡がりを有した血小板はより小さく活性化されていると解釈されたのに対して、実質的な凝集物および拡がりを示した血小板はより大きく活性化されていると解釈された。
【0124】
【表8】

【0125】
まばら=0〜10個の血小板/cm2軽度=10〜100個の血小板/cm2中程度=1cm2当たり100〜1000個の血小板完全=1cm2当たり>1000個の血小板
ベータ−トロンボグロブリン検定
表面変性材料をPRPと共に定温放置し、そして血小板の活性化に因りα−顆粒から放出されたベータ−トロンボグロブリン(β−TG)について血漿を検定した。血液を3.8%(v/v)クエン酸ナトリウム中に、血液対抗凝固剤の9:1比を用いて、ヒト志願者から新たに採取した。血液を1200rpmにて15分間遠心分離して、血液からPRPを分離した。このPRPを採取し、そして用いられるまで(1時間未満)室温に保った。試験試料(1/2インチ円形体)を、1ウェル当たり1個の試料にて、6ウェル平板中に置いた。PRP溶液を試料の全表面が覆われるまで試料の上部に添加し、そして試料を揺動することなく室温にて1時間定温放置した。初期β−TGレベルについての、血漿の対照試料を、定温放置に先だって採取した。
【0126】
試料についての定温放置後、プロスタグランジンE1(Sigma,製品番号P5515)を各試料に添加し、そして放出されたβ−TGの量について血漿を酵素免疫検定キット(Asserachrom American Bioproduct,製品番号0250)で検定した。
化合物Iで変性された表面は、未コーティングおよびPV05対照より低いレベルのβ−TG放出を一貫して示した。アルファ顆粒からのβ−TG放出は、血小板活性化について典型的である。それ故、上記の血小板付着・活性化実験と共に、このことは、化合物Iのコーティングがインビトロでポリエチレン表面との接触における血小板の活性化を低減したことを指摘している。
【0127】
本発明は詳細に記載されたけれども、以上の記載は本発明についての説明であるがしかし限定的であるとは考えられない。数多くの変型および改変が本発明の真の範囲および精神から逸脱することなく遂行され得、しかしてそれらのすべては請求項の範囲内に入ると意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー層を支持体表面上に形成させる方法であって、
a)支持体表面を用意し、
b)2個またはそれ以上の光反応性種および1個またはそれ以上の負荷電基を含むコーティング剤を該支持体表面に施用し、しかも該コーティング剤は
i)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基が直接的または間接的のいずれかにて付着されている共役環状ジケトンであって、該ジケトンの各ケトン基は、フリーラジカルを与えるために活性化されることの可能な光反応性部として働くように適応されている該共役環状ジケトン、および
ii)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基および2個またはそれ以上の光反応性種が直接的または間接的のいずれかにて付着されている非ポリマーコア分子であって、それらの光反応性種は別個の光反応性基として与えられている該非ポリマーコア分子から選択され、しかもそれらの光反応性種は、支持体表面の存在下で活性化される時に該コーティング剤を該表面に付着させるように適応されている少なくとも1個の第1光反応性種およびフリーラジカル重合性基の存在下で活性化される時にこれらの基の重合を開始させるように適応されている少なくとも1個の第2光反応性種を含み、しかも第2光反応性種はかかるフリーラジカル重合性基の不存在下で潜反応性状態に復帰するように適応されており、
c)該コーティング剤を該表面に第1光反応性種により光化学的に付着させかつ第2光反応性種が支持体表面に未結合のままにありそしてそれらの潜反応性状態に復帰するようにするのに適した条件下で、該支持体表面上の該剤を照射し、
d)フリーラジカル重合性基を有する複数の分子を供給し、そして
e)該支持体表面上において該重合性基の重合を開始させるために該コーティング剤の該復帰第2光反応性種を活性化するのに適した条件下で、重合性基を有する該分子を該支持体表面上の該コーティング剤の存在下で照射することを含む上記方法。
【請求項2】
共役環状ジケトンがキノンである、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項3】
キノンが、置換および未置換のベンゾキノン、ショウノウキノン、ナフトキノンおよびアントラキノンから選択される、請求の範囲第2項に記載の方法。
【請求項4】
負荷電基が、独立的に、有機酸の塩から選択される、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項5】
有機酸が、スルホン酸、カルボン酸およびリン酸から選択される、請求の範囲第4項に記載の方法。
【請求項6】
非ポリマーコア分子が環状基を含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項7】
環状基がベンゼン基である、請求の範囲第6項に記載の方法。
【請求項8】
(b)(ii)の光反応性種が、独立的に、アリールケトンである、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項9】
各アリールケトンが、独立的に、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロンおよびアントロン様複素環並びにそれらの置換誘導体の群から選択される、請求の範囲第8項に記載の方法。
【請求項10】
支持体表面を照射してコーティング剤を表面に光化学的に付着させる工程、重合性基を供給する工程および復帰光反応性種を活性化して重合を開始させる工程を同時に遂行する、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項11】
支持体表面を照射してコーティング剤を表面に光化学的に付着させる工程、重合性基を供給する工程および復帰光反応性種を活性化して重合を開始させる工程を逐次的に遂行する、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項12】
(b)(ii)に記載されたコーティング剤を含みかつ相当する光反応性種をコア分子に付着させる1個またはそれ以上のスペーサー基を更に含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項13】
スペーサー基が各々、独立的に、式
−O−(CH2n−〔ここで、nは少なくとも1に等しい整数である〕の基を含む、請求の範囲第12項に記載の方法。
【請求項14】
スペーサー基が各々、独立的に、式
−(C24O)m−C24O−〔ここで、mは少なくとも1に等しい整数である〕の基を含む、請求の範囲第12項に記載の方法。
【請求項15】
重合性基を有する分子が、水に対する高親和性を有する少なくとも1個の官能基を更に含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項16】
重合性基を有する分子が、モノマー重合性分子およびマクロマー重合性分子の群から選択される、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項17】
水に対する高親和性を有する官能基が、電気的に中性の親水性基を含む、請求の範囲第15項に記載の方法。
【請求項18】
水に対する高親和性を有する官能基が、負荷電基を含む、請求の範囲第15項に記載の方法。
【請求項19】
水に対する高親和性を有する官能基が、正荷電基を含む、請求の範囲第15項に記載の方法。
【請求項20】
コーティング剤が、式
【化1】

〔ここで、
1は、第1光反応性種を含み、
2は、第2光反応性種を含み、
Yは、非ポリマーコア分子を含み、そして
Zは、少なくとも1個の荷電基を含む〕の化合物を含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項21】
Yが環状基を含む、請求の範囲第20項に記載の方法。
【請求項22】
環状基がベンゼン基である、請求の範囲第21項に記載の方法。
【請求項23】
1およびX2の光反応性種が、独立的に、アリールケトンである、請求の範囲第20項に記載の方法。
【請求項24】
各アリールケトンが、独立的に、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロンおよびアントロン様複素環並びにそれらの置換誘導体の群から選択される、請求の範囲第23項に記載の方法。
【請求項25】
光反応性種を含むX1およびX2が同一である、請求の範囲第20項に記載の方法。
【請求項26】
光反応性種を含むX1およびX2が非同一である、請求の範囲第20項に記載の方法。
【請求項27】
コーティング剤が、4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸塩、2,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,4−ジスルホン酸塩および2,5−ビス(4−ベンゾイルメチレンオキシ)ベンゼン−1−スルホン酸塩の群から選択される、請求の範囲第1項に記載の方法。
【請求項28】
コーティング系であって、
a)2個またはそれ以上の光反応性種および1個またはそれ以上の負荷電基を含むコーティング剤であって、
i)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基が直接的または間接的のいずれかにて付着されている共役環状ジケトンであって、該ジケトンの各ケトン基は、フリーラジカルを与えるために活性化されることの可能な光反応性部として働くように適応されている該共役環状ジケトン、および
ii)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基および2個またはそれ以上の光反応性種が直接的または間接的のいずれかにて付着されている非ポリマーコア分子であって、それらの光反応性種は別個の光反応性基として与えられている該非ポリマーコア分子から選択され、しかもそれらの光反応性種は、支持体表面の存在下で活性化される時に該コーティング剤を該表面に付着させるように適応されている少なくとも1個の第1光反応性種およびフリーラジカル重合性基の存在下で活性化される時にこれらの基の重合を開始させるように適応されている少なくとも1個の第2光反応性種を含み、しかも第2光反応性種はかかるフリーラジカル重合性基の不存在下で潜反応性状態に復帰するように適応されている該コーティング剤、および
b)フリーラジカル重合性基を有する複数の分子を含むコーティング系。
【請求項29】
負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基および2個またはそれ以上の光反応性種が直接的または間接的のいずれかにて付着されている非ポリマーコア分子を含むコーティング剤であって、それらの光反応性種は別個の光反応性基として与えられており、しかもそれらの光反応性種は、支持体表面の存在下で活性化される時に該コーティング剤を支持体表面に付着させるように適応されている少なくとも1個の第1光反応性種およびフリーラジカル重合性基の存在下で活性化される時にこれらの基の重合を開始させるように適応されている少なくとも1個の第2光反応性種を含み、しかも第2光反応性種はかかるフリーラジカル重合性基の不存在下で潜反応性状態に復帰するように適応されている上記コーティング剤。
【請求項30】

【化2】

〔ここで、
1は、第1光反応性基を含み、
2は、第2光反応性基を含み、
Yは、非ポリマーコア分子を含み、そして
Zは、少なくとも1個の荷電基を含む〕の化合物を含むコーティング剤。
【請求項31】
支持体表面をコーティング剤でコーティングして潜反応性基を与える方法であって、
a)支持体表面を用意し、
b)2個またはそれ以上の光反応性種および1個またはそれ以上の負荷電基を含むコーティング剤を該支持体表面に施用し、しかも該コーティング剤は
i)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基が直接的または間接的のいずれかにて付着されている共役環状ジケトンであって、該ジケトンの各ケトン基は、フリーラジカルを与えるために活性化されることの可能な光反応性部として働くように適応されている該共役環状ジケトン、および
ii)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基および2個またはそれ以上の光反応性種が直接的または間接的のいずれかにて付着されている非ポリマーコア分子であって、それらの光反応性種は別個の光反応性基として与えられている該非ポリマーコア分子から選択され、しかもそれらの光反応性種は、支持体表面の存在下で活性化される時に該コーティング剤を該表面に付着させるように適応されている少なくとも1個の第1光反応性種およびフリーラジカル重合性基の存在下で活性化される時にこれらの基の重合を開始させるように適応されている少なくとも1個の第2光反応性種を含み、しかも第2光反応性種はかかるフリーラジカル重合性基の不存在下で潜反応性状態に復帰するように適応されており、そして
c)該コーティング剤を該表面に第1光反応性種により光化学的に付着させかつ第2光反応性種が支持体表面に未結合のままにありそしてそれらの潜反応性状態に復帰するようにするのに適した条件下で、該支持体表面上の該剤を照射することを含む上記方法。
【請求項32】
支持体表面上に与えられたコーティング剤が、該表面に抗トロンボゲン形成性質を与える、請求の範囲第31項に記載の方法。
【請求項33】
コーティング剤により支持体表面に付着されたポリマー層を含む被膜を有する支持体表面であって、該コーティング剤は2個またはそれ以上の光反応性種の残基および1個またはそれ以上の負荷電基を含み、しかも該コーティング剤は
i)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基が直接的または間接的のいずれかにて付着されている共役環状ジケトンであって、該ジケトンの各ケトン基は、フリーラジカルを与えるために活性化されることの可能な光反応性部として働くように適応されていた該共役環状ジケトン、および
ii)負荷電基を含む1個またはそれ以上の置換基および2個またはそれ以上の光反応性種の残基が直接的または間接的のいずれかにて付着されている非ポリマーコア分子であって、それらの光反応性種は別個の光反応性基として与えられていた該非ポリマーコア分子から選択され、しかもそれらの光反応性種は、支持体表面の存在下で活性化される時に該コーティング剤を該表面に付着させるように適応されている少なくとも1個の第1光反応性種およびフリーラジカル重合性基の存在下で活性化される時にこれらの基の重合を開始させるように適応されている少なくとも1個の第2光反応性種を含んでいたものであり、しかも第2光反応性種はかかるフリーラジカル重合性基の不存在下で潜反応性状態に復帰するように適応されていた上記支持体表面。

【図1】
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【公開番号】特開2011−25247(P2011−25247A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−229101(P2010−229101)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【分割の表示】特願2001−524742(P2001−524742)の分割
【原出願日】平成11年9月22日(1999.9.22)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】