説明

開孔金属発泡体および製造方法

本発明は、開孔金属発泡体およびその製造方法に関する。これらの金属発泡体は、多くの常用物質に高腐蝕を引き起こし、したがってその耐用寿命をしばしば減少させる周囲環境条件下で、有利に用いられる。所定の目的によると、該金属発泡体は、低い質量と同時に高い比表面積、および化学的に攻撃的な周囲環境条件下で高い耐蝕性を有しているべきである。そこで、本発明による開孔金属発泡体は、少なくとも40重量%のニッケルおよび少なくとも90%の気孔率を有するニッケル‐銅合金から形成されるように開発されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、開孔金属発泡体およびその製造方法に関する。本発明による開孔金属発泡体は、多くの常用物質に高腐蝕を引き起こして適切な部品の耐用寿命が減少するような周囲環境条件下で、有利に用いられる。
【背景技術】
【0002】
このような野外条件下で、ニッケル‐銅合金は高い耐蝕性を発揮し、そのため全部品がこのような合金から製造されることが知られている。
【0003】
しかしながら、このような部品は低い質量にもかかわらず、非常に高い比表面積と大きな容量を有してほしい、という要求が多く出されている。これは、例えば、化学プラントに適合させられる熱交換器、海水脱塩プラントと、様々なフィルターおよび触媒用途向けにも望まれている。
【発明の開示】
【0004】
したがって、低い質量と同時に高い比表面積、および化学的に攻撃的な周囲環境条件下で高い耐蝕性を有した部品を提供することが、本発明の目的である。
【0005】
本発明によると、この目的は請求項1で規定されているような開孔金属発泡体で解決される。このような金属発泡体は請求項5による方法で製造しうる。
【0006】
本発明の好ましい態様および改良は、その従属項で記載された特徴により得られる。
【0007】
本発明による開孔金属発泡体は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも60重量%のニッケルが含有されたニッケル‐銅合金から形成され、それらは少なくとも90%の気孔率を有している。
【0008】
ニッケルおよび銅に加えて、最大で6重量%の別な合金元素および不純物も含有させうる。適切な合金元素は、例えば、マンガン、鉄、炭素、ケイ素、アルミニウムおよびチタンである。
【0009】
低い質量および非常に大きな比表面積と共にそれらの比較的高い気孔率のおかげで、本発明による開孔金属発泡体は多くの用途に用いられ、それらは500℃以上に達する高温でも良好な機械的性質および十分な強度を有している。
【0010】
それらは酸、塩および塩水溶液に耐性であり、そのためそれらはこのような条件下でも高耐用寿命で用いられる。既に記載された攻撃的物質に加えて、フッ素およびフッ化水素化合物に対して、更にはフッ化水素酸に対しても、それらの耐性を強調しうる。
【0011】
製造に際しては、最低気孔率が90%以上と言われている、市販の純ニッケル製の開孔金属発泡体の形で、半製品が用いられる。
【0012】
その場合に、このような開孔金属発泡体のニッケルフォーム構造の表面が純銅および/または酸化銅粉末で被覆される。
【0013】
ニッケルフォーム構造の表面が開孔内で、更にはウェブ内でも被覆されるように、コーティングは行なわれるべきである。
【0014】
粉末または粉末混合物で被覆後に、ニッケルおよび銅の合金効果をもたらす熱処理が700℃以上の温度で行なわれる。
【0015】
最後に得られる合金の組成は、用いられる粉末量により、比較的広範囲で影響される。
【0016】
有機結合剤の別な適用の結果として、該粉末でのコーティングが影響をうけ、表面上で粉末粒子の均一な接着が得られる。
【0017】
用いられる基本粉末と一度に懸濁液/分散液を形成することもできるように、とにかく液体形で、好ましくは水溶液で用いられることが、このような有機結合剤にとっては有利である。
【0018】
ニッケル発泡体のニッケルフォーム構造の表面を被覆することは、金属発泡体を無粉末の純結合剤および懸濁液/分散液に各々浸漬することで、比較的簡単に行なえる。浸漬後に、場合により過剰な結合剤と、更に各粉末を含有した懸濁液/分散液の、より均一な分布と除去が、プレス作用により各々行なわれるが、これは好ましくは吸収パッドで行なわれる。
【0019】
浸漬およびプレス後に、こうして製造された金属発泡体へ、なお改良してコーティングを均一に行なわせるため、振動手段により振動を加えてもよい。こうして粉末が付着される。粉末は結合剤で湿潤された運動表面の全体に分布されて、該表面に接着される。
【0020】
こうして製造された金属発泡体もなお開孔体である。
【0021】
それは、好ましくは不活性ガス雰囲気中、特に好ましくは水素雰囲気中で、熱処理に付される。
【0022】
同時に、約300〜600℃範囲内の第一段階で、有機成分の除去、いわゆる放出が生じる。
【0023】
更に温度上昇して700℃から金属ニッケルおよび銅の合金化が行なわれ、該銅は、場合により上記環境下で酸化銅からも還元されているが、問題なくニッケル中へ拡散され、合金化がこうして行なわれるのである。
【0024】
結果として、最終金属発泡体の強度は純ニッケルから形成された金属発泡体と比較してなお増加している。
【0025】
他の初期条件、特に使用粉末および純ニッケル製の金属発泡体が同一であれば、本発明による最終開孔金属発泡体の各気孔率および各比表面積に関して計算された影響が、特に、熱処理に際し各温度について特別なバリエーションと有意なコントロールの結果として及ぼされる。
【0026】
そのため、例えば、700℃〜900℃範囲の温度での熱処理に際しては、純ニッケル製の金属発泡体の気孔率と比べて気孔率の比較的軽微な減少、同時に開孔金属発泡体の比表面積の増加が、熱処理後に生じる。
【0027】
それとは異なり、より高い温度、好ましくは1100℃〜1300℃の温度範囲での熱処理に際しては、ニッケルフォーム構造の初期気孔率が少なくとも大体で維持され、それで得られるウェブおよび孔の内壁の非常に滑らかな表面のために、初めに用いられた純ニッケル製の金属発泡体と比較して比表面積はほぼ一定のままである。
【0028】
本発明による触媒作用金属発泡体が製造されるならば、一方で、ニッケルフォーム構造を被覆するために用いられる初期粉末に、後で実施される熱処理に際して合金の成分とならない触媒作用物質を粉末形で加えることが可能である。第二の可能性は、その場合、熱処理後に、既に記載されたように表面上の層として同様にニッケル‐銅合金から形成される金属発泡体に付着させ、次いでとにかく焼結されるように、各触媒作用物質に特有の特別な熱処理を行なうことである。
【0029】
しかしながら、特に金属触媒作用物質のために、他は最終の本発明による金属発泡体に電気メッキを施すことが熱処理後に可能な手法である。
【例】
【0030】
以下で、本発明が各態様について更に詳細に説明される。
【0031】
態様1
初期粉末として、20μmの平均粒径およびスパッタ形を有する粉末20gを用いる。
【0032】
約94%の気孔率および300mm×150mm×1.7mmの寸法を示す純ニッケル製の開孔金属発泡体を、有機結合剤としてポリビニルピロリドンの1%水溶液50mlに浸漬する。
【0033】
浸漬後、ニッケルフォーム構造のウェブと共に内表面が単に湿潤されているだけとなるよう孔空間から過剰の結合剤を除去するために、こうして製造された純ニッケル製の金属発泡体を吸収パッドにより結合剤でプレスした。
【0034】
この後、こうして被覆されたニッケルフォーム構造を振動装置に固定して、振動させた。ニッケルフォーム構造の孔質網状組織で粉末の均一分布を得て、開気孔率を維持するために、振動に際して、結合剤で湿潤された金属発泡体に両側から銅粉末を散布した。
【0035】
こうして製造されて、結合剤および銅粉末で表面上が被覆されたニッケルフォーム構造は、もしこれが望まれるのであれば、変形させる。例えば、それは中空円筒の形に巻く。変形に際して、銅粒子は表面上に接着している。
【0036】
こうして被覆および変形されたニッケルフォーム構造を、場合により、水素雰囲気中で行なわれる熱処理に付す。同時に、それを5K/minの昇温期間で操作する。300℃〜600℃の温度範囲内で有機成分が放出され、好ましくは約30分間の保持時間がそのために保たれる。
【0037】
次いで、温度を同昇温期間で1100℃〜1300℃の範囲に高め、30分間にわたり維持する。
【0038】
熱処理後に、こうして製造された開孔金属発泡体は、純ニッケル製の金属発泡体の初期気孔率に相当する約94%の気孔率を再び示した。
【0039】
金属発泡体のウェブおよび内壁は滑らかであった。
【0040】
こうして製造された開孔金属発泡体は望ましい高い耐蝕性を示し、ニッケルフォーム構造と比較して著しく高い強度を獲得しており、後でそれはなおうまく更に機械加工することができた。
【0041】
少なくとも40%のニッケル分を有する単相固溶体銅‐ニッケル合金から焼結孔質構造が作製される。該合金には、Mn、Fe、C、Si、Al、Ti、Sも更に含有させてよい。
【0042】
態様2
この関係では、純ニッケル、同初期銅粉末およびポリビニルピロリドンの1%水溶液から作製された同一の開孔金属発泡体を用いた。
【0043】
しかも、放出をもたらす熱処理の第一段階が同一方式で行なわれた。単に、熱処理の第二段階が有意に低い温度、即ち700℃〜900℃の範囲内で行なわれ、その温度が1時間にわたり維持された。
【0044】
この熱処理後、こうして製造されたニッケル‐銅合金製の金属発泡体は、約94%の純ニッケル製の開孔金属発泡体の初期気孔率と比較して、約91%のやや低い気孔率を示した。しかしながら、内表面およびウェブは銅粒子のやや不完全な焼結に起因する粗さの増加も示し、そのため最終開孔金属発泡体の比表面積の明白な増加がみられた。
【0045】
実際に、既に記載された望ましい有利な性質が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも40重量%のニッケルを有するニッケル‐銅合金から形成され、少なくとも90%の気孔率を有している、開孔金属発泡体。
【請求項2】
最大で6重量%の追加合金元素が、ニッケルおよび銅に加えて含有されている、請求項1に記載の金属発泡体。
【請求項3】
ニッケルが少なくとも60重量%で含有されている、請求項1または2に記載の金属発泡体。
【請求項4】
マンガン、鉄、炭素、ケイ素、アルミニウム、チタンから選択される追加合金元素が含有されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属発泡体。
【請求項5】
請求項1〜4の少なくとも一項に記載された開孔金属発泡体の製造方法であって、
純ニッケル製の該開孔金属発泡体が銅粉末および/または酸化銅粉末で、該粉末が該ニッケルフォーム構造の表面を該開孔内までも覆うように被覆され、次いで熱処理が700℃以上の温度で行なわれ、その際に該ニッケルおよび該銅の合金化が生じることで特徴付けられる方法。
【請求項6】
粉末が、ニッケルフォーム構造の表面で、有機結合剤により付着される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
銅粉末および/または酸化銅粉末が、ポリマー結合剤の水溶液により付着される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
熱処理が水素雰囲気中で行なわれる、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
700〜900℃範囲内の熱処理に際して、気孔率の減少および比表面積の増加が得られる、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1100〜1300℃の温度範囲内の熱処理に際して、ニッケルフォーム構造の初期気孔率が維持される、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
触媒作用物質が粉末形で熱処理前に粉末へ加えられる、請求項5〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
熱処理後に、触媒作用物質が表面上にガルバーニ電気的にまたは焼結により付着される、請求項5〜10のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−502798(P2008−502798A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515903(P2007−515903)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006822
【国際公開番号】WO2006/002834
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(591017261)シーブイアールディ、インコ、リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】CVRD Inco Limited
【出願人】(594102418)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ (63)
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D−80686 Muenchen, Germany