説明

開孔閉塞装置

【課題】開孔作業状態と閉塞作業状態とを切り替えられる開孔閉塞装置を提供する。
【解決手段】出銑口を開孔、閉塞する開孔閉塞装置1であって、マッド材Mを収容する内部空間11および内部空間に連通する第一の開口12、第二の開口13が形成されたケーシング10と、内部空間に配置されケーシングの内面とマッド材を収容する収容空間14を形成する隔離面21aと、隔離面を移動させる圧力発生部20と、一端が第一の開口を形成する縁部から離間した状態で配置され、隔離面を貫通し、他端側の開口が第二の開口に連通するガイド管30と、炉壁を穿孔する穿孔部41と、穿孔部に着脱可能に接続される着脱機構51を有し穿孔部をガイド管の軸線C1回りに回転させる回転駆動部50と、着脱機構をガイド管の軸線方向に移動させる進退駆動部60とを備え、穿孔部および着脱機構の少なくとも一方は、ガイド管に挿通できる形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の炉壁に出銑口を開孔するとき、および、この出銑口を閉塞するときに用いる開孔閉塞装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄設備の中で、鉄鉱石に含まれる酸素を還元して鉄を取り出す設備である高炉では、銑鉄が製造される。高炉における炉底の湯溜まり部に溜まる溶銑(溶融した銑鉄)は、湯溜まり部横の炉壁に設けられた出銑口から取り出される。溶銑の取り出しは、空圧式もしくは油圧式の開孔機を使用して、錐ロッドを前後進・打撃・回転動作させることにより、出銑口に充填されている閉塞材を開孔することにより行われる。溶銑を取り出した後は、マッドガンを使用して、マッド材と呼ばれる粘土状の耐火物を出銑口に充填して焼成させて出銑口を閉塞する。
このように、出銑口の開孔作業および閉塞作業には、それぞれ専用の装置を使用している。
【0003】
出銑口の開孔作業と閉塞作業とにそれぞれ専用の装置を用いると、装置を設置するためのスペースを必要とするだけでなく、それぞれの装置に対して購入費やメンテナンス費が必要となる。開孔装置と閉塞装置とを一体化すると設置スペースと設備コストの問題が解消できるため、様々な開孔閉塞装置が検討されている。
【0004】
たとえば、特許文献1に記載された開閉装置は、穿孔ドリルおよび押出しロッドを駆動するドリフターと、穿孔ドリルの先端側を支持するとともにマッド材が装填される充填筒とを備えている。この開閉装置により開孔するときには、先端側が充填筒により支持された穿孔ドリルの基端をドリフターに接続し、ドリフターにより穿孔ドリルを穿孔ドリルの軸方向に振動させるとともにこの軸回りに回転させることで、出銑口を形成する。そして、閉塞するときには、穿孔ドリルを取り外してから押出しロッドの基端をドリフターに接続し、充填筒に充填されたマッド材を押出しロッドの先端で充填筒の前方に押し出すことで、出銑口にマッド材を充填している。
【0005】
この開閉装置によれば、ドリフターが穿孔ドリルおよび押出しロッドの両方を駆動できるため構造を簡略化することができるとともに、ドリフターと充填筒とが同軸上に配設されているので、装置の設置スペースをコンパクト化できるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−46218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の開閉装置では、閉塞時には充填筒内にマッド材が充填されているが、開孔時にはこのマッド材を取り除いてから充填筒で支持した穿孔ドリルで開孔していた。このため、開孔作業と閉塞作業とを切り替えるのに多大な労力を要していた。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、開孔作業状態と閉塞作業状態とを容易に切り替えることができる開孔閉塞装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の開孔閉塞装置は、高炉の炉壁を貫通する出銑口を開孔するとともに前記出銑口を閉塞する開孔閉塞装置であって、前記出銑口を閉塞するためのマッド材を収容する内部空間、および前記内部空間に連通する第一の開口、第二の開口が形成されたケーシングと、前記内部空間に配置され、前記ケーシングの内面とともに前記マッド材を収容する収容空間を形成する隔離面と、前記隔離面を移動させて前記収容空間に収容された前記マッド材に圧力を作用させる圧力発生部と、前記収容空間に設けられ、一端が前記第一の開口内に前記第一の開口を形成する縁部の少なくとも一部から離間した状態で配置され、他端側の開口が前記第二の開口に連通するガイド管と、前記炉壁を穿孔するための穿孔部と、前記穿孔部の基端部に着脱可能に接続される着脱機構を有し、前記穿孔部を前記ガイド管の軸線回りに回転させる回転駆動部と、前記着脱機構を前記ガイド管の軸線方向に移動させる進退駆動部と、を備え、前記穿孔部および前記着脱機構の少なくとも一方は、前記ガイド管に挿通できる形状に形成されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の開孔閉塞装置では、出銑口を閉塞するときには、穿孔部および着脱機構の少なくとも一方をガイド管内に配置した閉塞作業状態にして、圧力発生部により隔離面を移動させて収容空間に収容されたマッド材に圧力を作用させることで、マッド材を第一の開口から押し出して出銑口にマッド材を充填する。
一方で、出銑口を開孔するときには、ケーシングの収容空間にマッド材を収容した状態で、穿孔部をガイド管から先端側に突出させた開孔作業状態にする。そして、回転駆動部により穿孔部をガイド管の軸線回りに回転させつつ、進退駆動部により穿孔部を炉壁に押し付けて出銑口を形成する。ケーシングの収容空間において、穿孔部はガイド管内に配置されているため、穿孔部をマッド材の影響を抑えて容易に回転、進退させることができる。
【0011】
また、上記の開孔閉塞装置において、前記圧力発生部は、先端面が前記隔離面とされたピストンを油圧により駆動する油圧シリンダであり、前記ピストンは、前記ケーシングの前記内部空間に配置されるとともに自身の軸線方向に貫通孔が形成され、前記ガイド管は、前記ピストンの前記貫通孔に挿通されていることがより好ましい。
また、上記の開孔閉塞装置において、前記ガイド管に挿通できる棒状に形成されるとともに基端部が前記着脱機構に着脱可能に接続され、前記ガイド管の前記一端側の開口から前記マッド材が前記ガイド管内に入るのを抑える封止部を備え、前記穿孔部は前記ガイド管に挿通できる棒状に形成されていることがより好ましい。この場合、着脱機構に穿孔部を取り付けることで開孔作業状態となり、着脱機構に封止部を取り付けて封止部をガイド管内に配置することで閉塞作業状態となる。
【0012】
また、上記の開孔閉塞装置において、前記封止部の先端は、略棒状に形成され前記出銑口の内径より小さい外径に設定された閉塞栓の基端に着脱可能とされていることがより好ましい。この場合、着脱機構に封止部を取り付け、さらに封止部の先端に閉塞栓の基端を取り付ける。この状態で、ケーシングの第一の開口を出銑口に連通させ、進退駆動部により閉塞栓を出銑口内の炉内側まで移動させ、圧力発生部により出銑口にマッド材を充填する。封止部を閉塞栓から取り外してから所定時間経過すると、マッド材が焼成され出銑口が閉塞される。
また、上記の開孔閉塞装置において、前記ガイド管に挿通できる棒状に形成され、両端に前記穿孔部および前記着脱機構がそれぞれ着脱可能な延長体を備えることがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明において、請求項1に記載の開孔閉塞装置によれば、ケーシングの収容空間にマッド材を収容した状態であっても、回転駆動部および進退駆動部により穿孔部を駆動することで、出銑口を形成することができる。したがって、ガイド管に対する穿孔部の位置を変えるだけで、開孔作業状態と閉塞作業状態とを容易に切り替えることができる。
請求項2に記載の開孔閉塞装置によれば、圧力発生部として油圧シリンダを用いることで、前記特許文献に記載されたドリフターなどの他の圧力発生装置に比べて、収容空間内のマッド材に高い圧力を作用させることができる。また、ガイド管の軸線回りの全周において、第一の開口に向けてピストンにより圧力を作用させることで、マッド材を第一の開口から効果的に押し出すことができる。
【0014】
請求項3に記載の開孔閉塞装置によれば、開孔作業状態と閉塞作業状態との切り替えを容易に行うとともに、封止部によりマッド材がガイド管内に入るのを抑えることができる
請求項4に記載の開孔閉塞装置によれば、閉塞後に出銑口を開孔するときに、閉塞栓の炉内側の端部まで削孔すれば開孔するとほぼ分かっているので、開孔時において出銑口を容易に開孔することができる。
請求項5に記載の開孔閉塞装置によれば、着脱機構から穿孔部の先端までの長さを調節することで、様々な炉壁の厚さに対応して出銑口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態の開孔閉塞装置の一部を破断した側面図である。
【図2】同開孔閉塞装置の動作を説明する出銑口を開孔するときの側面断面図である。
【図3】同開孔閉塞装置の動作を説明する出銑口を閉塞するときの側面断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の開孔閉塞装置の一部を破断した側面図である。
【図5】同開孔閉塞装置の要部の一部を破断した側面図である。
【図6】同開孔閉塞装置の動作を説明する出銑口を閉塞するときの側面断面図である。
【図7】同開孔閉塞装置で用いられる閉塞栓の変形例の側面断面図である。
【図8】同開孔閉塞装置の動作を説明する出銑口を閉塞するときの側面断面図である。
【図9】本発明の変形例の開孔閉塞装置における開孔作業状態の一部を破断した側面図である。
【図10】本発明の変形例の開孔閉塞装置における閉塞作業状態の一部を破断した側面図である。
【図11】本発明の変形例の開孔閉塞装置における要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る開孔閉塞装置の第1実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。図1に示すように、本開孔閉塞装置1は、高炉100の炉壁101を貫通する出銑口102(図2参照)を開孔するとともに、マッド材Mにより出銑口102を閉塞する装置である。
本実施形態の開孔閉塞装置1は、マッド材Mを収容する内部空間11が形成されたケーシング10と、内部空間11に収容されたマッド材Mに圧力を作用させる油圧シリンダ(圧力発生部)20と、内部空間11に設けられたガイド管30と、炉壁101に設けられたマッド材の焼成物M1を穿孔するための穿孔ロッド(穿孔部)41と、穿孔ロッド41の基端41aに着脱可能に接続される着脱機構51を有する回転駆動部50と、着脱機構51をガイド管30の軸線C1方向に移動させる進退駆動部60とを備えている。
【0017】
ケーシング10は、油圧シリンダ20が作用させる圧力にも耐えられるように、鋼材などで一定の剛性を有するように形成されている。ケーシング10の先端側には第一の開口12が、基端側には第二の開口13が、それぞれ内部空間11に連通するように形成されている。
油圧シリンダ20は、ケーシング10の内部空間11における基端側に取り付けられている。油圧シリンダ20には、油圧シリンダ20内のオイルの量を調節する不図示の流入口、および流出口が設けられている。
油圧シリンダ20にはピストン21が取り付けられている。ピストン21の外周面と油圧シリンダ20の内周面との間には、ピストン21と油圧シリンダ20との間を水密に保持するための不図示のシール部材が設けられている。ピストン21の先端面21aは隔離面とされ、ケーシング10の内面とともにマッド材Mを収容する収容空間14を形成する。前述のマッド材Mは、ケーシング10の内部空間11に形成された収容空間14に収容されている。
ピストン21および油圧シリンダ20には、ピストン21の軸線C2方向に貫通孔21b、20aがそれぞれ形成されている。
ピストン21および油圧シリンダ20は、軸線C2が第一の開口12から第二の開口13に向かう方向に延びるように配置されている。ピストン21の先端側の外周面は、ケーシング10の内面に摺接するように構成されている。
このように構成された油圧シリンダ20およびピストン21は、油圧シリンダ20内のオイル量を調節することで、ピストン21をガイド管30にそって移動させることができる。
【0018】
ガイド管30は、たとえば鋼管などで形成されている。ガイド管30は、一端31が第一の開口12内に配置され、ピストン21の貫通孔21bおよび油圧シリンダ20の貫通孔20aを挿通し、他端32が第二の開口13に達するとともに他端32側の開口が第二の開口13に連通するように配置されている。本実施形態では、ガイド管30の一端31は、第一の開口12の中央部に、すなわち、第一の開口12を形成する縁部から離間した位置に配置されている。
ガイド管30の外周面とピストン21の貫通孔21bの内周面との間は、不図示のシール部材によりピストン21が摺動可能となるように水密にシールされている。このため、ガイド管30とピストン21との間にマッド材Mが入るのが防止されている。
【0019】
穿孔ロッド41は、ガイド管30に挿通できる棒状に形成されている。すなわち、穿孔ロッド41は、外径がガイド管30の内径より小さく設定されている。穿孔ロッド41の先端には、炉壁101を穿孔するための穿孔ビッド41bが設けられている。
開孔閉塞装置1は、穿孔ロッド41と同様に着脱機構51に着脱可能に接続される封止ロッド(封止部)45を備えている。封止ロッド45は、ガイド管30に挿通できる棒状に形成されるとともに、外径がガイド管30の内径よりわずかに小さく設定されている。後述するように、封止ロッド45は、穿孔ロッド41とは異なり、ガイド管30に対して速い速度で移動させることはないので、封止ロッド45とガイド管30との隙間を小さく設定することができる。
このため、ガイド管30内に封止ロッド45を挿通したときに、ガイド管30の一端31側の開口からマッド材Mがガイド管30内に入るのを抑えることができる。
穿孔ロッド41および封止ロッド45の長さは、ガイド管30およびケーシング10の軸線C1方向の長さより長く設定されている。
【0020】
回転駆動部50は、不図示の回転駆動モータを有していて、ガイド管30を通して着脱機構51に接続された穿孔ロッド41をガイド管30の軸線C1回りに回転させることができる。着脱機構51としては、公知のチャック機構などを好適に用いることができる。
進退駆動部60は、軸線C1に平行に延びるガイドレール61と、ガイドレール61の基端側に取り付けられ、内蔵する不図示の進退駆動モータによりガイドレール61に平行にスライド可能とされたスライダー62とを有している。進退駆動部60は、進退駆動モータを駆動させることで、着脱機構51に接続された穿孔ロッド41および封止ロッド45を軸線C1方向に移動させることができる。
前述のケーシング10は、ガイドレール61の先端側に固定されている。
【0021】
次に、以上のように構成された開孔閉塞装置1の動作について説明する。
出銑口102を開孔するときには、ガイド管30に挿通させた穿孔ロッド41の基端41aを着脱機構51に接続し、開孔閉塞装置1を開孔作業状態にする。このとき、ケーシング10の収容空間14にマッド材Mを収容していてもよい。
そして、ケーシング10の第一の開口12から先端側に穿孔ビッド41bを突出させた状態で、炉壁101に対してガイド管30の軸線C1を位置決めする。図2に示すように、回転駆動部50により穿孔ロッド41を軸線C1回りに回転させつつ、進退駆動部60により穿孔ロッド41を炉壁101に押し付けながら軸線C1方向に移動させることで、炉壁101に出銑口102を形成する。このとき、穿孔ロッド41を軸線C1方向に急速に前後させることにより、炉壁101に打撃を与えることができる。
出銑口102を形成した後は、高炉100内の溶銑Lを取り出す間、出銑口102の近傍から開孔閉塞装置1を退避させておく。
【0022】
高炉100から出銑口102を通して一定量の溶銑を取り出した後で、出銑口102を閉塞する。このとき、図3に示すように、着脱機構51から穿孔ロッド41を取り外し、ガイド管30に挿通させた封止ロッド45の基端を着脱機構51に接続し、開孔閉塞装置1を閉塞作業状態にする。
高炉100の炉壁101にケーシング10を押し付けて出銑口102と第一の開口12とを連通させた状態で、油圧シリンダ20によりピストン21を介してマッド材Mに圧力を作用させることで、ケーシング10の収容空間14に収容されたマッド材Mを第一の開口12から押し出して出銑口102にマッド材Mを充填する。このとき、封止ロッド45は外径がガイド管30の内径よりわずかに小さく設定されているため、マッド材Mがガイド管30内に入りにくくなっている。
充填した後で所定時間経過すると、マッド材Mが焼成され出銑口102が閉塞される。
【0023】
以上説明したように、本実施形態の開孔閉塞装置1によれば、出銑口102を閉塞するときには、封止ロッド45をガイド管30内に配置することによりマッド材Mがガイド管30内に入るのを抑えた閉塞作業状態にする。そして、油圧シリンダ20により収容空間14内のマッド材Mに圧力を作用させることで、ケーシング10に収容されたマッド材Mを第一の開口12から押し出して出銑口102にマッド材Mを充填する。
一方で、出銑口102を開孔するときには、ケーシング10にマッド材Mを収容した状態で封止ロッド45を取り外し、ガイド管30を通して穿孔ロッド41を着脱機構51に取り付けた開孔作業状態にする。そして、回転駆動部50により穿孔ロッド41をガイド管30の軸線C1回りに回転させつつ、進退駆動部60により穿孔ロッド41を炉壁101に押し付けて出銑口102を形成する。
【0024】
このように、ケーシング10の収容空間14内にマッド材Mを収容した状態であっても、穿孔ロッド41を着脱機構51に取り付けて回転駆動部50および進退駆動部60により穿孔ロッド41を駆動することで、出銑口102を形成することができる。したがって、穿孔ロッド41および封止ロッド45を着脱機構51に着脱することで、開孔状態と閉塞状態とを容易に切り替えることができる。
また、ケーシング10の収容空間14において、穿孔ロッド41はガイド管30内に配置されているため、穿孔ロッド41がケーシング10内のマッド材Mに接触するのが防止され、穿孔ロッド41をマッド材Mの影響を抑えて容易に回転、進退させることができる。
【0025】
本実施形態の開孔閉塞装置1では、圧力発生部として油圧シリンダ20を用い、ガイド管30はピストン21の貫通孔21bに挿通されている。圧力発生部として油圧シリンダ20を用いることで、前記特許文献に記載されたドリフターなどの他の圧力発生装置に比べて、収容空間14内のマッド材Mに高い圧力を作用させることができる。
また、ガイド管30の軸線C1回りの全周において、第一の開口12に向けてピストン21により圧力を作用させることで、マッド材Mを第一の開口12から効果的に押し出すことができる。
開孔および閉塞のいずれの場合であっても、ガイド管30の軸線C1上で作業を行うため、一度開孔した後での閉塞時の位置決めが容易となり、作業性を向上させることができる。
【0026】
なお、本実施形態の開孔閉塞装置1では、封止ロッド45を備えず、閉塞作業時にはガイド管30内に穿孔ロッド41を配置するようにしてもよい。ガイド管30内にマッド材Mが入った場合であっても、そのマッド材Mを穿孔ロッド41で削り出すことができるからである。
また、封止部として、封止ロッド45に代えて、ガイド管30の一端31に装着されるキャップを用いて、マッド材Mがガイド管30内に入るのを防止してもよい。
【0027】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4から図8を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図4に示すように、本実施形態の開孔閉塞装置2は、前記第1実施形態の開孔閉塞装置1において、封止ロッド45に代えて封止ロッド71を備えている。
この封止ロッド71は、図5に示すように、前述の封止ロッド45に対して先端71aの形状のみが異なる。封止ロッド71の先端71aには、雄ネジなどの接続部71bが設けられている。この接続部71bが略棒状に形成された閉塞栓110の基端110aに設けられた雌ネジなどの被接続部110bと螺合することで、封止ロッド71が閉塞栓110と着脱可能に接続するように構成されている。
【0028】
閉塞栓110の外径は、出銑口102およびガイド管30の内径より小さく設定されている。閉塞栓110の長さは、出銑口102の長さ以上に設定されていることが好ましい。
閉塞栓110は、たとえば、アルミナ、ろう石、炭化珪素、耐火粘土などからなるマッド材を焼成した耐火物により形成されている。
【0029】
次に、以上のように構成された開孔閉塞装置2の動作について説明する。なお、出銑口を開孔するときの動作は、前述の開孔閉塞装置1の動作と同一なので説明を省略する。
出銑口102を閉塞するときには、着脱機構51から穿孔ロッド41を取り外す。そして、先端71aに閉塞栓110を接続させた封止ロッド71をガイド管30に挿通させ、封止ロッド71の基端を着脱機構51に接続し、開孔閉塞装置2を閉塞作業状態にする。
なお、このとき、閉塞栓110をガイド管30内に配置し、閉塞栓110の先端がガイド管30から先端側に突出しないようにしておく。
【0030】
図6に示すように、高炉100の炉壁101にケーシング10を押し付けて、出銑口102と第一の開口12とを連通させる。進退駆動部60により封止ロッド71を先端側に移動させて閉塞栓110を出銑口102内に送り出しながら、油圧シリンダ20によりピストン21を介してマッド材Mに圧力を作用させることで、収容空間14内のマッド材Mを第一の開口12から押し出して出銑口102に注入する。このとき、マッド材Mよりも閉塞栓110を先行させて出銑口102内に挿入することが好ましい。
閉塞栓110を出銑口102内の所定の位置に配置した後で、さらにマッド材Mを注入する。これにより、閉塞栓110の外周面と出銑口102の内周面との間の全周にわたりマッド材Mが充填される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の開孔閉塞装置2によれば、開孔作業状態と閉塞作業状態とを容易に切り替えることができる。
さらに、閉塞後に出銑口102を開孔するときに、閉塞栓110の先端に対応する位置まで削孔すれば開孔するとほぼ分かっているので、開孔時において出銑口102を容易に開孔することができる。
閉塞栓110がケーシング10の第一の開口12を通過するまでマッド材Mに接触しないため、閉塞栓110をマッド材Mとは独立させた状態で、ケーシング10内から外部に送り出しやすくすることができる。
【0032】
なお、本実施形態の開孔閉塞装置2では、閉塞栓110以外にも、図7に示すような閉塞栓120を用いることができる。閉塞栓120は、パイプ121と、パイプ121の内部空間に配置された充填部材122とを有している。
パイプ121は、管状に形成された管状部本体123と、管状部本体123の外径より大きく形成された大径部124とを有している。大径部124は、管状部本体123の一端123aに配置され、この一端123aから離間するほど拡径するように形成されている。管状部本体123の他端の内周面には、封止ロッド71の接続部71bに螺合する雌ネジである被接続部123bが形成されている。
パイプ121を形成する材料としては、たとえば、鉄鋼などの金属を用いることができる。
充填部材122は、マッド材Mの焼成物よりも柔らかい、焼成した耐火物により形成されている。充填部材122としては、たとえば、アルミナ、ろう石、炭化珪素、耐火粘土などからなるマッド材を焼成した耐火物を用いることができるが、この耐火物は、前述のマッド材Mの焼成物よりも柔らかくなるように調節されている。
【0033】
以上のように構成された閉塞栓120を開孔閉塞装置2の封止ロッド71に接続して閉塞作業を行うと、以下のようになる。
すなわち、図8に示すように、出銑口102から炉内側D1に閉塞栓120を大径部124の長さ程度突出させた状態で、マッド材Mを出銑口102と閉塞栓120との間に流す。これにより、閉塞栓120の外周面と出銑口102の内周面との間の全周にわたりマッド材Mが充填されるとともに、大径部124に沿って流れたマッド材Mが炉壁101の炉内側D1側の面に沿って流れの向きを変えられることで、マッド材Mが出銑口102の炉内側D1側の開口近傍に配置される。
【0034】
閉塞栓120をこのように構成することで、マッド材Mが流れる力を大径部124でより確実に受け、閉塞栓120をより容易に炉内側D1に押し出すことができる。また、マッド材Mが大径部124に沿って流れることでマッド材Mが炉壁101の炉内側D1の面に沿って流れやすくなり、このマッド材Mにより出銑口102の炉内側D1の部分を溶銑Lから効果的に保護することができる。
また、穿孔ロッド41により、マッド材Mの焼成物よりも柔らかい充填部材122を掘削することで、炉壁101に出銑口102をさらに容易に形成することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、閉塞栓110の外径はガイド管30の内径より大きく設定されていてもよい。閉塞栓110全体がガイド管30から先端側に突出した状態でも、閉塞栓110を出銑口102内に挿入できるからである。
封止ロッド71と閉塞栓110とを接続するために、接続部71bとして雄ネジ、被接続部110bとして雌ネジを用いたが、凹凸構造などの他の嵌合構造を適宜用いることができる。
また、前記変形例では、炉壁101が充分に厚く形成されている場合などには、閉塞栓120に大径部124は備えられていなくてもよい。
【0036】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態の開孔閉塞装置1では、図9に示すように、回転駆動部50に代えて、ガイド管30に挿通できる棒状の着脱機構56を有する回転駆動部55を備えてもよい。この場合、開孔作業状態においては、穿孔ロッド41に代えて、軸線C1方向の長さが穿孔ロッド41よりも短い穿孔部43が着脱機構56に接続されることになる。
同様に、閉塞作業状態においては、封止ロッド45に代えて、図10に示すように、軸線C1方向の長さが封止ロッド45よりも短い封止部47が着脱機構56に接続されることになる。
前記第2実施形態の開孔閉塞装置2においても、同様に構成することができる。
【0037】
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、開孔閉塞装置が、図11に示すように、ガイド管30に挿通できる棒状に形成され、両端に穿孔ロッド41および着脱機構51がそれぞれ着脱可能な延長体76を備えてもよい。
このように構成することで、着脱機構51から穿孔ロッド41の先端までの長さを調節することができ、様々な炉壁101の厚さに対応して出銑口102を形成することができる。
【0038】
前記第1実施形態および第2実施形態では、圧力発生部として油圧シリンダ20を用いた。しかし、マッド材Mに作用させる圧力が比較的小さい場合には、空圧シリンダなどを用いることができる。
ガイド管30の一端31は、ケーシング10の第一の開口12を形成する縁部の少なくとも一部から離間した状態に配置されていればよい。このように構成されていれば、マッド材Mを第一の開口12から押し出すことができる。
なお、前記第1実施形態および第2実施形態では、進退駆動部60に加えて、穿孔ロッド41や着脱機構56を軸線C1方向に急速に移動させてマッド材の焼成物M1を打撃する機構を備えてもよい。
【0039】
前記第1実施形態および第2実施形態では、ガイド管30の他端32が第二の開口13に達するように構成した。しかし、この構成は必須ではない。ガイド管30の他端32は、最も基端側に配置されたときのピストン21の先端面21aより基端側まで延びるように構成されていればよい。このように構成することで、ピストン21とガイド管30との間にマッド材Mが入るのを防止することができる。
ガイド管30内を移動する穿孔ロッド41および着脱機構56が、ガイド管30の軸線C1に対してずれるのを防止したり、ガイド管30と擦れるのを防止したりするために、ガイド管30の内周面に穿孔ロッド41および着脱機構56を支持するベアリングなどを設けてもよい。
本発明の開孔閉塞装置は、製鉄設備の高炉、およびその他の溶解炉において、溶銑などの内容物を取り出す際の作業に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1、2 開孔閉塞装置
10 ケーシング
11 内部空間
12 第一の開口
13 第二の開口
14 収容空間
20 油圧シリンダ(圧力発生部)
21 ピストン
21a 先端面(隔離面)
21b 貫通孔
30 ガイド管
41 穿孔ロッド(穿孔部)
43 穿孔部
45、71 封止ロッド(封止部)
47 封止部
50、55 回転駆動部
51、56 着脱機構
60 進退駆動部
76 延長体
100 高炉
101 炉壁
102 出銑口
110、120 閉塞栓
C1、C2 軸線
M マッド材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の炉壁を貫通する出銑口を開孔するとともに前記出銑口を閉塞する開孔閉塞装置であって、
前記出銑口を閉塞するためのマッド材を収容する内部空間、および前記内部空間に連通する第一の開口、第二の開口が形成されたケーシングと、
前記内部空間に配置され、前記ケーシングの内面とともに前記マッド材を収容する収容空間を形成する隔離面と、
前記隔離面を移動させて前記収容空間に収容された前記マッド材に圧力を作用させる圧力発生部と、
前記収容空間に設けられ、一端が前記第一の開口内に前記第一の開口を形成する縁部の少なくとも一部から離間した状態で配置され、他端側の開口が前記第二の開口に連通するガイド管と、
前記炉壁を穿孔するための穿孔部と、
前記穿孔部の基端部に着脱可能に接続される着脱機構を有し、前記穿孔部を前記ガイド管の軸線回りに回転させる回転駆動部と、
前記着脱機構を前記ガイド管の軸線方向に移動させる進退駆動部と、
を備え、
前記穿孔部および前記着脱機構の少なくとも一方は、前記ガイド管に挿通できる形状に形成されていることを特徴とする開孔閉塞装置。
【請求項2】
前記圧力発生部は、先端面が前記隔離面とされたピストンを油圧により駆動する油圧シリンダであり、
前記ピストンは、前記ケーシングの前記内部空間に配置されるとともに自身の軸線方向に貫通孔が形成され、
前記ガイド管は、前記ピストンの前記貫通孔に挿通されていることを特徴とする請求項1に記載の開孔閉塞装置。
【請求項3】
前記ガイド管に挿通できる棒状に形成されるとともに基端部が前記着脱機構に着脱可能に接続され、前記ガイド管の前記一端側の開口から前記マッド材が前記ガイド管内に入るのを抑える封止部を備え、
前記穿孔部は前記ガイド管に挿通できる棒状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の開孔閉塞装置。
【請求項4】
前記封止部の先端は、略棒状に形成され前記出銑口の内径より小さい外径に設定された閉塞栓の基端に着脱可能とされていることを特徴とする請求項3に記載の開孔閉塞装置。
【請求項5】
前記ガイド管に挿通できる棒状に形成され、両端に前記穿孔部および前記着脱機構がそれぞれ着脱可能な延長体を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の開孔閉塞装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−219331(P2012−219331A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86400(P2011−86400)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)