説明

開封性に優れた自立型袋及びその製造方法

本発明は自立型袋本体及び自立型袋底部(特に袋立て底)を有する自立型袋に関し、少なくとも袋本体が、少なくとも一軸に延伸されたフィルムから成ることを特徴とする。本発明はさらに、このような自立型袋の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲第1項及び第13項前文に記載の自立型袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の自立型袋は、固体、液体、ペースト状の食品、消耗品、その他あらゆる種類の実用品を包装するために、袋だけでなくビン、カン、紙箱の代わりとして広く使用されている。
【0003】
自立型袋は上に挙げた従来の梱包材に比べて利点が多い。例えばまず軽量であり、貯蔵性に優れ、製造が簡易で安価であり、かつ、廃棄も簡単である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で自立型袋は、使用時に開封し難いことが多いのが欠点とされてきた。例えば切り欠きなどから自立型袋にいったん裂け目ができてしまうと、そこから目茶苦茶に裂けてしまうことがよくあり、そうなると袋が破れて内容物が漏れてしまう。このように一度開いてしまった自立型袋をそれ以上使用することは到底できなくなる。
【0005】
この問題の対策としては、開封糸やミシン目を設けたり、ハサミかナイフの使用を推奨するなど、様々な手段が用いられてきたが、これらはいずれも、面倒で高価な製造方法を必要とするか、あるいは、常に手元にあるとは限らない何らかの道具を必要とするものである。
【0006】
従って、完全に破れてしまったり全体が目茶苦茶に裂けてしまうことなく簡単な方法で開封でき、開封後もさらに使用することのできる自立型袋の需要は大きい。
【0007】
従って本発明は、従来技術の欠点を回避しつつ前述の特性を有し、様々な用途に適しているだけでなく、寿命が長く簡便に廃棄できる材料から成り、安価に製造できる簡単な自立型袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特許請求の範囲第1項に記載の自立型袋、及び特許請求の範囲第13項に記載の自立型袋の製造方法により、上記目的は達成される。すなわち、自立型袋本体と自立型袋底部(特に袋立て底)を有し、少なくとも自立型袋本体が、少なくとも一軸延伸されたフィルムより成る自立型袋により、上記目的は達成される。
【0009】
ここで、本発明における「自立型袋」とは、フィルム及び/又は積層フィルムから成る容器であって、特に筒状袋を指し、別体の又は結合された底部や肩部や蓋部などを有するものも含まれる。
【0010】
本発明の基本的特徴点は、一軸延伸フィルムにおいて、フィルムを形成する分子鎖が延伸方向に沿ってほぼ平行に配されることにある。そのため、この延伸フィルム材は、延伸方向に交わる方向よりも、これに平行な方向に裂け易いので、この配向分子鎖によって、材料を斜め方向に破ることはほぼ不可能となる。
【0011】
一軸延伸フィルムを使用するさらなる利点としては、フィルム材を形成している分子鎖が入り組んだ構造ではなく互いに隣接してほぼ直線状に配列されているため、フィルムを延伸方向に平行に切り開いたときに、分子鎖が分子会合から切離されることがない。そのため、このような一軸延伸フィルムを延伸方向に平行に破る場合、従来のフィルムに比べて格段に少ない力ですみ、従来の無延伸フィルム又は二軸延伸フィルムに比べて、破るのに必要な力は50〜60%ほど少なくてすむ。
【0012】
このため、少なくとも開封部分が一軸延伸フィルムより成る自立型袋は、従来の自立型袋に比べて最適な開封性を有し、延伸方向に真っ直ぐで平らな線に沿って破ることができる。このような自立型袋では、裂け目が袋全体に目茶苦茶に広がる恐れがなく、液体の内容物を収容した自立型袋であっても問題なく、中身をこぼす心配なく開封することができる。
【0013】
本発明によれば、前述のように、自立型袋の少なくとも開封部分が、少なくとも一軸に延伸されたフィルムにて形成されている。但し、完全を期すために、自立型袋本体全体、自立型袋底部すなわち袋立て底、蓋部及び/又はこれに連結された肩部も全てこのような一軸延伸フィルムにて形成してもよい。
【0014】
一実施形態として、一軸延伸フィルムが積層フィルムの一部を成し、この積層フィルムが保護層を備えていてもよい。本発明によれば、一軸延伸フィルムはポリオレフィン及び/又はエステルの少なくとも一つ、好ましくはポリエチレン及び/又はポリプロピレン及び/又はポリエチレンテレフタレートを含む。場合によっては、例えばエチル−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、又は、積層フィルム上に形成した蒸着金属層や金属箔などから成る保護層を設けてもよい。保護層材料としては他に、例えば、二酸化シリコンを含むガラス状物質が挙げられる。これらの材料をポリエチレン及び/又はポリプロピレンとともに単独で用いても、共押出フィルムとして用いてもよいし、ポリエチレンテレフタレートと共に用いてもよい。
【0015】
金属としては特にアルミが考えられるが、用途によってはその他の、好ましくは耐腐食性の金属を用いることもできる。
【0016】
本発明によれば、保護層は少なくとも封着可能な層上に配され、好適には例えばポリエチレンテレフタレート層とポリプロピレン又はポリエチレン層の間に埋設される。無論、保護層を複数備えた多層積層フィルムを用いてもよく、この場合は少なくとも外側の層のうちの一つ、好適には最外層が封着可能であるとよい。
【0017】
本発明によれば、一軸延伸フィルムを複数設けてもよく、このうち上述の一軸延伸フィルムは積層フィルムの他の層に比べて厚みが大きい。
【0018】
さらに、本発明においては、一軸延伸フィルムの厚みは積層フィルムのその他全ての層より大きく、例えば一軸延伸フィルムは10μm〜200μm、好ましくは35μm〜155μm、特に45μm〜95μmの厚みを有する。
【0019】
これにより、上記一又は複数の一軸延伸フィルムによって自立型袋の開封性を明確に特徴づけることができる。
【0020】
尚、本発明の自立型袋の製造に、開封性に優れ、メルトフローインデックスが高く、開封方向に配列された分子構造を有する粒状樹脂を使用してもよい。
【0021】
好ましい実施形態としては、上記一軸延伸フィルムを用いて製造された自立袋が消毒可能であるとよい。この場合フィルム材としてはポリプロピレンが適しており、一方、消毒の必要がない場合は経済的なポリエチレンが適している。
【0022】
一実施形態においては、自立型袋は筒状に押出成形するか、あるいはラップシール又はフィンシールを用いて作製され、これにより、自立型筒状袋本体の最適な丸い形状を得ることができる。
【0023】
ポリエチレンテレフタレートを使用すれば機械的安定性が得られ、また、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンを使用すれば寸法安定性が得られるなど、少なくとも一つの一軸延伸フィルムにより、自立型袋の安定性を確実に高めることができる。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、自立型袋本体の、例えば封着継目部分に、開封補助部、特に、切り欠きなどの指向性脆弱部を設けており、この部分から自立型袋を一軸延伸フィルムの延伸方向に平行に開封することができる。
【0025】
自立型袋の方向へ向けて設けられた開封矢印又は切り欠きが、後の切り取り線に通じ、一軸延伸フィルムの分割線へつながっていくので、このような初回開封補助部を設けることで筒状袋を確実に適切に開封することができる。
【0026】
但し、本発明の自立型袋は、従来の自立型袋に比べて格段に少ない力で開封できるので、原則としてこのような初回開封補助部は必須のものではなく、フィルム又は積層フィルムの厚みによっては、例えば、爪や、その他、端の鋭い物で切り込みを作るだけで、自立型袋を真っ直ぐの開封線に沿って適切にきれいに開封することができる。
【0027】
従って、例えば、積層フィルムやフィルムに開封糸やテープや、(欠点の多いパンチ穴やレーザー孔を含めた)ミシン目を手間をかけて設けるなど、自立型袋の開封を容易にするために従来用いられていた様々な手段は必要でなくなる。従って、本発明による延伸フィルム、及び、これを用いた(保護層を備えたものも含めた)自立型袋は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなど、従来の非常に安価なポリオレフィン及び/又はポリアミド樹脂で充分製造できるので、本発明の自立型袋の製造によれば、製造・材料コストを大幅に削減することができる。
【0028】
また、上記本発明の目的は、以下の工程を含む自立型袋の製造方法によって達成される:
a)厚いフィルムを作製する工程と、
b)前記厚いフィルムを一軸に延伸する工程と、
c)前記一軸延伸フィルムを積層する工程と、
d)自立型袋を成形する工程と、
e)必要に応じて、一軸延伸フィルムの延伸方向に平行に自立型袋を開封するための、指向性を有する脆弱部、特に、初回開封補助部を自立型袋に設ける工程。
【0029】
前記厚いフィルムの製造には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの共押出体など、ポリオレフィン及び/又はポリアミドを使用する。また、前記厚いフィルムの製造にポリエチレンテレフタレートを用いてもよい。
【0030】
一実施形態の変形として、特に共押出工程途中において、a)からc)の工程を同時に、あるいはほぼ同時に行なうことも可能である。この場合、積層フィルムの製造中に直接、積層フィルム上又は積層フィルム層間に保護層を形成することができる。
【0031】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項に記載の通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の2つの実施形態につき説明する。
【0033】
本発明の自立型袋の製造においては、まずそれぞれがポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートから成る厚いフィルムを作製する。これらポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレンの厚いフィルムは、マシン方向に沿う一軸に延伸される。次いで、厚さ8μmのアルミ層を、厚み70μmのポリプロピレン延伸フィルム上に形成する。次いで、厚みが12μmの前記ポリエチレンテレフタレート延伸フィルムをアルミ層上に積層する。
【0034】
このようにして作製され保護性能を有する積層フィルムを、ラップシール継目により筒状に形成して筒状袋本体を作製し、これの底部に、保護性能を有する例えば深絞り成形にて得られる底部材を封着する。筒状袋の頂部はフィンシールにより封止される。開封用として、フィンシールの下端線部分に切り欠きが設けられ、これにより、筒状袋を開封すると頂部のフィンシールが取り除かれて筒状袋が開封される。閉じた状態の筒状袋の頂部を合わせて保持するフィンシールが取り除かれることで、筒状袋本体はその円形状を取り戻し、袋が広がることで袋の内容物の高さがやや下に下がるので、この結果、袋の内容物が漏れるのを防ぐことができる。
【0035】
第2の実施形態によれば、まずポリプロピレンから成る厚いフィルムを作製し、次いでこれをマシン走行方向に沿って一軸に延伸し、延伸ポリプロピレンフィルムの厚みが70μmとなるようにする。また別にポリエチレンテレフタレートから成る厚いフィルムをマシン方向に沿って一軸に延伸し、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが12μmとなるようにする。これら2つの延伸フィルムと、これらの間に介される厚さ8μmのアルミフォイル層とにより、シート状の積層フィルムを作製する。
【0036】
この積層フィルムから、自立型袋本体の前面と後面を成すフィルム片をそれぞれ切り出す。この前面用と後面用の積層フィルム片それぞれの両外端部を3mm幅に渡って封止する。自立型袋の底部は、V字折り目を備えたフィルム片を所定位置に封着して作製される。
【0037】
充填後、自立型袋の頂部を、例えばフィンシールによって閉じる。また、フィンシールの側方には初回開封補助部が切り欠きの形で設けられており、ここから自立型袋を開封できるようになっている。
【0038】
初回開封補助部は自立型袋の一方だけに設けても両側に設けてもよい。
【0039】
自立袋を開封する際は、切り欠きから側方に向けて自立型袋を破り開けるが、この時、一軸延伸フィルムによって、開封方向が常に袋の底部と平行になるよう規制され、また、従来の自立型袋と比べて格段に少ない力で破り開くことができる。
【0040】
必要に応じて、開封用切り欠きとフィルム延伸方向によって規定される切り取り線に沿って、これの隣に刻印を設けても良い。
【0041】
尚、上記の部材は全て、単体であっても組合せであっても、本発明の必須要件として権利請求されている。当業者には自明の通り、これらを変更することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立型袋本体と自立型袋底部、特に袋立て底を有し、少なくとも前記自立型袋本体が、少なくとも一軸に延伸されたフィルムより成ることを特徴とする自立型袋。
【請求項2】
前記一軸延伸フィルムが、積層フィルムの一部であることを特徴とする請求項1に記載の自立型袋。
【請求項3】
前記一軸延伸フィルムが、積層フィルムのその他の層に比して厚みが大きいことを特徴とする請求項2に記載の自立型袋。
【請求項4】
前記一軸延伸フィルムの厚みが、積層フィルムのその他全ての層より厚みが大きいことを特徴とする請求項2又は3に記載の自立型袋。
【請求項5】
少なくとも一つの前記一軸延伸フィルムが、少なくともポリオレフィン及び/又はポリアミド及び/又はエステルのいずれか、特に、ポリエチレン及び/又はポリプロピレン及び/又はポリエチレンテレフタレートのいずれかより成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自立型袋。
【請求項6】
自立型袋の安定性の有無が、少なくとも一つの一軸延伸フィルムにより決定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自立型袋。
【請求項7】
前記一軸延伸フィルムが10μm〜200μm、好ましくは35μm〜155μm、特に45μm〜95μmの厚みを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自立型袋。
【請求項8】
前記積層フィルムが少なくとも一つの保護層を有することを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の自立型袋。
【請求項9】
前記保護層がエチル−ビニルアルコール共重合体(EVOH)及び/又は二酸化シリコン(SiO2)及び/又は金属、特にアルミより成ることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の自立型袋。
【請求項10】
自立型袋が消毒可能であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の自立型袋。
【請求項11】
前記自立型袋本体が、筒状に押出成形して成るか、あるいはラップシール及び/又はフィンシールにより作製されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の自立型袋。
【請求項12】
自立型袋に初回開封補助部、特に、切り欠きなどの指向性を有する脆弱部が設けられ、この部分から自立型袋を前記一軸延伸フィルムの延伸方向に平行に開封することができることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の自立型袋。
【請求項13】
a)厚いフィルムを作製し、
b)前記厚いフィルムを一軸に延伸し、
c)前記一軸延伸フィルムを積層し、
d)自立型袋を成形し、
e)前記一軸延伸フィルムの延伸方向に平行に自立型袋を開封するために、指向性を有する脆弱部、特に、初回開封補助部を自立型袋に設ける工程を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の自立型袋の製造方法。
【請求項14】
特に共押出工程途中に、a)からc)の工程を同時に、あるいはほぼ同時に行なうことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。

【公表番号】特表2007−537938(P2007−537938A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517058(P2007−517058)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005290
【国際公開番号】WO2005/113370
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505176811)
【氏名又は名称原語表記】HUHTAMAKI RONSBERG, ZWEIGNIEDERLASSUNG DER HUHTAMAKI DEUTSCHLAND GMBH & CO.KG
【住所又は居所原語表記】HEINRICH−NICOLAUS−STRASSE 6 D−87671 RONSBERG−DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】