開放循環式冷却水系の水処理方法及び開放循環式冷却水系用水処理剤
【課題】開放循環冷却水系の金属の水処理剤ならびに水処理方法において、重金属など環境に有害な物質を使用せず、かつ濃縮度を過度に上昇させることなく開放循環冷却水系における金属の腐食とスケール付着を低減できる方法を提供する。
【解決手段】本発明は、冷却塔で循環冷却水と外気とを接触させて循環冷却水を冷却する開放循環式冷却水系の水処理方法であり、循環冷却水に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを添加する。
【解決手段】本発明は、冷却塔で循環冷却水と外気とを接触させて循環冷却水を冷却する開放循環式冷却水系の水処理方法であり、循環冷却水に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを添加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放循環式冷却水系における水処理方法及び開放循環式冷却水系用水処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
循環冷却水を冷却塔で冷却する循環式冷却水システムとして、開放循環式冷却水システムが広く普及している。この開放循環式冷却水システムでは、冷却塔に空気を強制的に取りこんで循環冷却水と接触させることにより、循環冷却水の一部を蒸発させ、そのときに奪われる気化熱によって水の温度を下げることを原理としている。
【0003】
開放循環式冷却水システムでは、循環冷却水の蒸発および飛散により、循環冷却水は徐々に濃縮される。このため、循環冷却水中の塩類(例えば補給水由来の重炭酸イオンやカルシウムイオン)濃度も徐々に高くなり、炭酸カルシウム等の析出によるスケールが発生し易くなる。また、塩化物イオンや硫酸イオン等の腐食性イオンの濃度が高くなると、孔食が発生し易くなる。さらには、循環冷却水の滞留時間が長くなると、微生物や縣濁性粒子による汚れが発生し易くなる。
【0004】
以上の問題を解決するため、濃縮された循環冷却水の一部をブローし、新たな水を補給し、濃縮度が2〜6倍の濃縮度を維持するように運転することが行なわれている。
また、鉄系金属の腐食抑制のために、亜鉛塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩等の重金属や、高濃度の無機リン酸塩等の各種リン系化合物を用いた腐食抑制剤も使用されてきた。
【0005】
しかし、これら重金属を用いた腐食抑制剤は、環境問題を引き起こすことから、近年、重金属を用いない腐食抑制剤が、数多く提案されている。
【0006】
例えば、分子中のリン含有量の少ない有機ホスホン酸化合物や有機ホスフィン酸化合物の使用が提案され、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸等の有機ホスホン酸による腐食防止方法及びスケール抑制方法(例えば特許文献1参照)、2−ホスホノブタン−1、2、4−トリカルボン酸、1−ホスホノプロパン−2、3−ジカルボン酸、ホスホノスクシン酸等のホスホノカルボン酸による腐食抑制剤及びスケール生成防止剤(例えば特許文献2参照)、2−ヒドロキシホスホノ酢酸による金属腐食抑制方法及びスケール沈積防止方法(例えば特許文献3参照)、リンを含まない環境調和型の処理剤としてマレイン酸とアミレンとの共重合体を用いる金属腐食抑制剤(例えば特許文献4参照)、無水マレイン酸とアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル等と、スチレン、スチレンスルホン酸などを加えた三元共重合体を用いるスケールの析出抑制方法及び金属の腐食抑制方法(例えば特許文献5参照)、無水マレイン酸99〜80重量%とモノエチレン性不飽和単量体1〜20重量%との共重合体の水溶性マレイン酸共重合体を用いるスケール(缶石)析出抑制方法(例えば特許文献6参照)、無水マレイン酸とモノエチレン系不飽和単量体の共重合体加水分解物を添加するボイラや蒸発缶の金属表面の腐食抑制方法及び析出物成形抑制方法(例えば特許文献7参照)、無水マレイン酸と炭素数5〜12のオレフィン共重合体によるボイラや蒸発缶におけるスケール抑制方法(例えば特許文献8参照)、カルシウム硬度10〜300mg−CaCO3/Lである開放循環冷却水系において、アルカリ金属水酸化物を循環冷却水に対し20〜300mg/L添加し、かつ当該循環冷却水のリツナー指数(40℃)を4.0〜6.0に維持する開放循環冷却水系の腐食抑制方法(例えば特許文献9参照)等が挙げられる。
【0007】
また、本発明の技術分野とは異なる技術分野の技術ではあるが、水道管、建築物の給水・給湯配管、各種用水配管、排水用配管等の冷却塔を有さない水供給用配管の金属の腐食を抑制するために、水酸化カルシウムと炭酸ガスとの併用による腐食防止方法が知られている(非特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】特公昭48−39348号公報
【特許文献2】特公昭53−15707号公報
【特許文献3】特公平3−2953号公報
【特許文献4】特公昭61−19714号公報
【特許文献5】特開平2−115384号公報
【特許文献6】特開昭63−182318号公報
【特許文献7】特公昭54−29998号公報
【特許文献8】特公平5−81320号公報
【特許文献9】特開2005−200721号公報
【非特許文献1】第51回材料と環境討論会予稿集、201〜202頁、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、重金属類を使用することがなく、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することのできる開放循環式冷却水系の水処理方法及び開放循環式冷却水用水処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、上記課題を解決するために、従来、開放循環冷却水系の水処理剤としては用いられることのなかった、水酸化カルシウムに注目した。水酸化カルシウムは、水道管、建築物の給水・給湯配管、各種用水配管、排水用配管等の、冷却塔を有さない密閉系である水供給用配管の金属の腐食を抑制するために、炭酸ガスと併用して用いられている。(非特許文献1参照)。しかし、この方法を直接、開放循環冷却水系の水処理方法に適用することはできない。なぜならば、開放循環冷却水系においては、上述したように、循環冷却水の蒸発および飛散により、循環冷却水は徐々に濃縮される(通常、2〜6倍の濃縮度を維持するように運転することが行なわれている)ため、重炭酸イオンやカルシウムイオンの濃度も徐々に高くなる。そこへさらに水酸化カルシウムを添加したのでは、カルシウムイオンの増大とpH上昇によって、炭酸カルシウムの析出やケイ酸マグネシウムの析出によるスケール障害が生じるおそれがあるとともに、銅や銅合金の腐食も促進される。このため、開放循環冷却水系に水酸化カルシウムや酸化カルシウムを添加する方法は、これまで行われることはなかった。
【0011】
もちろん、水酸化カルシウムとともに炭酸ガスを併用し、pHを下げてスケール障害を防ぐことも考えられるが、開放循環冷却水系においては極めて多量の炭酸ガスが必要となる。また、炭酸ガスの供給装置が必要となり、それに要する設備費や管理費も必要となり、水処理コストの高騰化を招いてしまう。
【0012】
そこで、発明者は、開放循環冷却水系の特徴である、冷却水と空気との接触を利用することを考えた。すなわち、空気の中には炭酸ガスが含まれているため、その空気中の炭酸ガスで冷却水のpHを下げることを考えたのである。さらには、炭酸カルシウムスケールの析出を防ぐために、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤を併用することにより、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の開放循環式冷却水系の水処理方法は、冷却塔で循環冷却水と外気とを接触させて該循環冷却水を冷却する開放循環式冷却水系の水処理方法において、前記循環冷却水に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを添加することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、開放循環式循環水系における循環冷却水に、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とが添加される。これらの薬剤は次のような役割を有している。
【0015】
すなわち、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加によって、循環冷却水中のカルシウムイオン濃度及びpHが高められ、開放循環式冷却水系の配管等に防食の役割を果たす炭酸カルシウム皮膜が形成されやすくなり、金属腐食が防止される。しかも、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムは、水に溶解してカルシウムイオンと水酸化物イオンを生成し、循環冷却水中の水酸化物イオンは冷却塔において大気中の炭酸ガスと反応して重炭酸イオンや炭酸イオンが生じる。こうして生成した炭酸塩のpH緩衝作用により、炭酸ガス等の酸性物質を添加しなくても、循環冷却水のpHを適切な範囲に自動調整されるのである。
【0016】
また、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤の添加によって、炭酸カルシウムスケールの過剰析出による配管の詰まり等のスケールによるトラブルを防止することができる。
【0017】
すなわち、本発明では水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加によって防食の役割を奏する炭酸カルシウム皮膜の形成を促すとともに、スレッショルド抑制剤の添加によって炭酸カルシウムのスケールとしての析出を防止する。
したがって、本発明の循環冷却水の水処理方法によれば、重金属類を使用することがなく、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することができる。
【0018】
本発明の循環冷却水の水処理方法では、循環冷却水の40°Cにおけるリツナー指数が3.5〜6となるように制御することが好ましい。リツナー指数が3.5未満となると、これ以上の腐食抑制効果の増加は見込めず、スケール析出傾向が増加してスケール障害のおそれが生ずる。また、リツナー指数が6を超えると十分な腐食抑制効果が得られない。リツナー指数を3.5〜6となるように制御することにより、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することができるのである。
【0019】
リツナー指数(RI)とは、炭酸カルシウムの析出傾向を示す指数であり、次式で定義される数値である。
RI=2×pHs−pH
(ここで、pHは循環冷却水のpHであり、pHsは式(1)で示される対象の循環冷却水の条件において炭酸カルシウムが飽和となるときのpHである。)
【数1】
ここで、
pK2:H2CO3の第2解離定数
pKs:CaCO3の溶解度積
pCa=−log[循環冷却水のCa硬度](mg−CaCO3/l)
pA=−log[循環冷却水のMアルカリ度](mg−CaCO3/l)
μ:イオン強度であり、次式で算出される。
μ=[循環冷却水の電気伝導率](μS/cm)×0.0000175
【0020】
リツナー指数(RI)を3.5〜6となるよう制御するためには、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加を調整する他、循環冷却水への補給水の量や、ブローダウンの水量を調節することによって制御することができる。水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加は、循環冷却水のCa硬度とMアルカリ度を増加させ、その結果、リツナー指数(RI)は小さくなる。また、ブローダウンの水量を多くし、その分を補給水で補給した場合には、Mアルカリ度や、カルシウムイオンの濃度が低下し、リツナー指数(RI)は大きくなる。
【0021】
循環冷却水中のカルシウム硬度は100〜300mg−CaCO3/Lとすることが好ましい。発明者の試験結果によれば、冷却水中のカルシウム硬度がこの範囲であれば、リツナー指数(RI)を3.5〜6となるように制御することができる。
【0022】
循環冷却水に対して、さらにアルカリ金属水酸化物を20〜300mg/Lの範囲で添加することも好ましい。アルカリ金属水酸化物はpHを高める作用が水酸化カルシウムや酸化カルシウムよりも高いため、リツナー指数(RI)をより大きく変化させることができる。ただし、アルカリ金属水酸化物を添加する場合には、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムだけでなく、アルカリ金属水酸化物の添加量も考慮して、リツナー指数を3.5〜6となるように制御する。
【0023】
スレッショルド抑制剤としては、有機ホスホン酸及びその塩、ホスフィノポリカルボン酸及びその塩、ホスホノカルボン酸及びその塩、マレイン酸系重合体及びその塩、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体と(メタ)アクリル酸との共重合体及びその塩、からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0024】
本発明の開放循環式冷却水用水処理剤は、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを有効成分として含有することを特徴とする。
上述したように、このような開放循環式冷却水用水処理剤を用いれば、重金属類を使用することがなく、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することが可能となる。
【0025】
循環冷却水に対するスレッショルド抑制剤の添加量が0.5〜200mg/Lの範囲とされていることが好ましい。スレッショルド抑制剤の添加量がこの範囲にあれば、充分なスケール防止効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、河川、湖水、地下水、雨水等から工業用水、水道水、井水などを取り入れて使用される開放循環冷却水系に適用することができる。このような開放循環式冷却水系として、例えば石油精製工業、石油化学工業、紙パルプ製造業、繊維工業、塗料工業、合成ゴムラテックス工業などの各種製造業、発電プラント、空調システム等における開放循環冷却水系が挙げられる。
【0027】
酸化カルシウムは、水に溶解すると水酸化カルシウムとなるため、水酸化カルシウムと酸化カルシウムとはどちらか一方を用いてもよく、これらを混合して用いることもできる。水酸化カルシウムあるいは酸化カルシウムは、固体のまま開放循環冷却水系に添加しても良く、水溶液あるいはスラリーとして添加しても良い。
【0028】
スレッショルド抑制剤としては、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制する効果を奏するものであればもちいることができるが、有機ホスホン酸及びその塩、ホスフィノポリカルボン酸及びその塩、ホスホノカルボン酸及びその塩、マレイン酸系重合体及びその塩、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体と(メタ)アクリル酸との共重合体及びその塩、からなる群から選択される1種以上とすることが好ましい。
【0029】
有機ホスホン酸とは、分子中に1個以上のホスホノ基を有する有機化合物であり、具体的には1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸等が挙げられる。これらの中でも、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸は特に好適に用いることができる。
【0030】
また、ホスホノカルボン酸とは、分子中に1個以上のホスホノ基と1個以上のカルボキシル基を有する有機化合物であり、具体的には2−ホスホノブタン−1、2、4−トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ホスホノポリマレイン酸、ホスホンコハク酸等が挙げられる。これらの中でも2−ホスホノブタン−1、2、4−トリカルボン酸やホスホノポリマレイン酸は特に好適である。
【0031】
ホスホノポリマレイン酸は、中性〜アルカリ性の水性溶媒中で亜リン酸とマレイン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより製造することができ(特開平4−334392号公報参照)、また、ローディア社からBRICORR288の商品名で市販されている。
【0032】
また、ホスフィノポリカルボン酸とは、分子中に1個以上のホスフィノ基と2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、具体的にはアクリル酸と次
亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(1,2−ジカル ボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸とアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるポリ(2−カルボキシエチル)(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と次亜リン酸の反応物等が挙げられる。これらの中でもポリ(2−カルボキシエチル)(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸は特に好適に用いることができる。
ホスフィノポリカルボン酸の調製は、通常、水性溶媒中で次亜リン酸と不飽和カルボン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより行なわれ、例えば特公昭54−29316号公報、特公平5−57992号公報、特公平6−47113号公報等に開示されている。また、ホスフィノポリカルボン酸は、BWA社よりBELCLENE500、BELSPERSE164、BELCLENE400等の商品名で市販されている。
【0033】
また、マレイン酸系重合体とは、ホモマレイン酸重合体と、マレイン酸と共重合可能な不飽和単量体との共重合体である。このような不飽和単量体としては、モノエチレン性不飽和スルホン酸の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、共役ジエンスルホン化物、スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレートエステル、スルホアルキル(メタ)アリルエーテル、スルホフェノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸など;(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル;(メタ)アクリルアミドの(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;炭素数 2〜8のオレフィンのエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテン等;ビニルアルキルエーテルのビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル;マレイン酸アルキルエステルなどが挙げられ、それらの1種または2種以上が用いられる。
また、マレイン酸重合体とは、マレイン酸30〜99重量%と、上記の不飽和単量体を1〜70重量%から得られる共重合体であり、中でも好ましくはホモマレイン酸重合体である。また、マレイン酸系重合体の重量平均分子量は、300〜20000が好ましく、さらに好ましいのは400〜1000である。
【0034】
マレイン酸系重合体の製造方法は、有機溶媒中ないし水性溶媒中で無水マレイン酸又はマレイン酸を遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより製造することができる。例えば特許2964154号公報、特公平7−49450号公報、特開平6−298874号公報等で開示されている。
また、(メタ)アクリル酸とスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体とは、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸と共重合可能なスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体である。共重合可能なスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、共役ジエンスルホン化物、スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレートエステル、スルホアルキル(メタ)アリルエーテル、スルホフェノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸などが挙げられる。また、これ以外のモノエチレン性不飽和単量体単量体を含む多元共重合体であっても良い。このようなモノエチレン性不飽和単量体単量体の例として、(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル;(メタ)アクリルアミドの(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;炭素数2〜8のオレフィンのエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテン等;ビニルアルキルエーテルのビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル;マレイン酸アルキルエステル等が挙げられ、その1種または2種以上が用いられる。
(メタ)アクリル酸とスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体としては、好ましくは(メタ)アクリル酸30〜99重量%とスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体を1〜70重量%から得られる共重合体であり、より好ましい単量体比率は80:20〜40:60である。また、この共重合体の重量平均分子量は、1,000〜100,000が好ましく、さらに好ましくの4,000〜20,000である。
(メタ)アクリル酸と、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体として好ましいのは、(メタ)アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と共役ジエンスルホン化物との共重合体、から選択される1種又は2種以上である。
【0035】
またスレッショルド抑制剤は、有機ホスホン酸、ホスフィノポリカルボン酸、ホスホノカルボン酸及びマレイン酸系重合体から選択される1種以上と、アクリル酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸との共重合体とを含む組成物が好ましい。この場合の組成物のアクリル酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸の比率は通常10:90〜90:10であり、好ましくは20:80〜80:20である。
さらに好ましいのは、スレッショルド抑制剤が、有機ホスホン酸、ホスフィノポリカルボン酸、ホスホノカルボン酸及びマレイン酸系重合体から選択される1種以上と、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)の共重合体、及びアクリル酸と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(AHPS)の共重合体から選択される1種以上とを含む組成物である。この場合の組成物の比率は通常、10:90〜90:10であり、好ましくは30:70〜70:30である。
【0036】
スレッショルド抑制剤は、中和されていない酸の形態であってもよく、アルカリ金属水酸化物等で中和された塩の形態でもよい。スレッショルド抑制剤を中和されていない酸の形態で添加した場合、部分的に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムが中和されるが、通常はスレッショルド抑制剤よりも水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加比率が高いため、スレッショルド抑制剤によって水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムが完全に中和されることはない。
循環冷却水に対するスレッショルド抑制剤の添加量は、0.5〜200mg/Lとすることが好ましい。スレッショルド抑制剤の添加量がこの範囲にあれば、充分なスケール防止効果を得ることができる。
【0037】
水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムとスレッショルド抑制剤とは、それぞれ別々に開放循環冷却水系に添加しても良く、それらを混合してから添加しても良い。
【0038】
水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウム並びにスレッショルド抑制剤の添加量については、対象とする水系の水質、腐食抑制の種類や濃度、スケール抑制の程度等により、その量は適宜調整して添加される。通常、水系に対して水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムにおける水酸化カルシウム換算の合計量として20〜300mg/Lが適切な範囲となる。水酸化カルシウム換算の合計量として添加量が20mg/L未満では十分な防食効果を見込めない。一方水酸化カルシウム換算の合計量としての添加量が300mg/Lを超えると、これ以上の腐食抑制効果の増加は見込めず、また水酸化カルシウムが溶解せずに未溶解のまま残留するため好ましくない。反面、水酸化カルシウムは水に対する溶解度が限定されるため、塩化カルシウムや炭酸ナトリウム等の溶解度の高い水質調整剤のように、過剰添加によるスケール障害の弊害がないという点で有利である。
【0039】
スレッショルド抑制剤の添加量としては、好ましくは0.5〜200mg/L、より好ましくは1〜50mg/Lである。スレッショルド抑制剤の添加量が0.5mg/L未満では十分なスケール抑制効果と腐食抑制効果を見込めず、添加量が200mg/Lを超えると、これ以上のスケール抑制効果や腐食抑制効果の増加は見込めず、逆にスケールを増加させるため好ましくない。
【0040】
水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウム並びにスレッショルド抑制剤の添加方法については、特に限定されるものではなく、通常、薬品注入ポンプ等の注入装置を用いて添加すれば良く、粉体の場合は搬送用ブロワを用いて添加しても良い。
また、スレッショルド抑制剤の添加箇所については、開放循環式冷却水系のいずれの場所に添加しても良いが、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウム成分は、循環冷却水に直接添加するのではなく、補給水に対して添加することが好ましい。補給水の方が循環冷却水よりもpHやカルシウム硬度が低いため、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムが溶けやすいからである。
【0041】
本発明の水処理方法を行う場合における作用・効果については、以下のとおりである。すなわち、循環冷却水に添加された水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムは、溶解してカルシウムイオンと水酸化物イオンを生成する。そして、水酸化物イオンは、冷却塔において大気との接触し、大気中の炭酸ガスと反応して重炭酸イオンとなる。そして、この重炭酸塩の緩衝作用により、循環冷却水のpHが8.5〜9.5の領域で安定に維持される。このようにして生成したカルシウムイオンと重炭酸イオンは、金属表面におけるカソード反応(酸素の還元反応)により生成した水酸化物イオンと反応して、金属表面のカソード部に単分子から数分子レベルの薄くて緻密な炭酸カルシウムの保護皮膜を形成して腐食を抑制する。さらには、スレッショルド抑制剤の作用により、炭酸カルシウムや水酸化カルシウム等のスケール生成を有効に防止でき、鉄系金属だけでなく銅や銅合金に対しても腐食抑制効果が奏される。スレッショルド抑制剤は、単分子から数分子レベルの炭酸カルシウムの生成は阻害せず、数分子レベルを超えた臨界半径に相当する炭酸カルシウムの核形成と結晶成長を阻害するため、炭酸カルシウムの保護皮膜形成を阻害することなく、炭酸カルシウムのスケールの発生を抑制することができる。
【0042】
なお、開放循環式冷却水系の冷却水と接する箇所に銅合金が用いられている場合には、銅合金の腐食抑制である芳香族アゾール化合物を添加することが好ましい。芳香族アゾール化合物の例としては、例えばトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、ハロ置換ベンゾトリアゾール、ハロ置換トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0043】
また、開放循環式冷却水系における微生物関連の障害を抑制するため、スライムコントロール剤を添加することも好ましい。本発明の水処理方法においては、冷却水のpHが高くなるため、高いpHでも殺菌効果が優れた臭素系殺菌剤を添加するのが最も好ましい。臭素系殺菌剤としては、水中で次亜臭素酸を生成するものであれば特に限定はないが、例えば、次亜臭素酸塩、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジブロモジメチルヒダントイン、塩化臭素、次亜塩素酸と臭化物の反応物等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に本発明を具体化した実施例を比較例と比較しつつ説明する。
<開放循環式冷却水用水処理剤の調整>
実施例においては、水酸化カルシウムと、スレッショルド抑制剤とを混合したスラリーを開放循環式冷却水用水処理剤として用いた。スレッショルド抑制剤としては、以下に示す各種有機ホスホン酸及び各種共重合体を単独あるいは混合して用いた。
【0045】
(スレッショルド抑制剤として用いた有機ホスホン酸)
HEDP:1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸ナトリウム塩
PBTC:2−ホスホノブタン−1、2、4−トリカルボン酸ナトリウム塩
(スレッショルド抑制剤として用いた共重合体)
AA−AMPS:アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
の共重合体のナトリウム塩〔重合比(重量)60:40、重量平均
分子量10,000〕
AA−AHPS:アクリル酸と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスル
ホン酸の共重合体のナトリウム塩〔重合比(重量)50:50、重
量平均分子量5,000〕
PMA:ポリマレイン酸ナトリウム塩「BELCLENE200LA」(商品名、BW
A社製)、〔活性分50%〕
AMP:アクリル酸−マレイン酸−次亜リン酸共重合体(モル比2:1:1)のナト
リウム塩
【0046】
(実施例1〜6及び比較例1〜9)
実施例1〜6の開放循環式冷却水用水処理剤の組成及び比較例1〜9の水処理剤の組成を表1に示す。なお、比較例8で水酸化カルシウムとともに添加されているPAA(ポリアクリル酸ナトリウム塩〔重量平均分子量2,200〕)は、分散剤であり、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤ではない。
【表1】
【0047】
<評価方法>
水処理方法の評価は、JIS G0593−2002「水処理剤の腐食及びスケール防止評価試験方法」のオンサイト試験法に準拠して行った。
また、評価は図1に示す開放循環式冷却水システムを用いて行った。この開放循環式冷却水システムは、冷却能力1.8冷却トンの誘引通風向流接触型の冷却塔1と、水槽2と、熱交換器3とが配管4によって接続されており、配管4の途中に設置された循環ポンプ5によって配管4内を冷却水が循環可能とされている。水槽2及び配管4を含む系全体の水容量は62Lである。水槽2には、水処理剤を供給するための水処理剤注入装置6と、補給水を供給するための補給水管7と、排水を行うための排水管8及びブローダウンポンプ8aとが接続されている。また、水槽2には、水温制御装置9も設置されている。
【0048】
循環ポンプ5と熱交換器3とを接続する配管4aには、電気伝導率測定セル10と、流量調整バルブ11と、流量計12とが設けられている。また、熱交換器3と冷却塔1とを接続する配管4bには、腐食試験を行うための試験用伝熱管を保持する試験片保持具13が設けられている。
【0049】
さらに、この開放循環式冷却水システムでは、電気伝導率測定セル10からの信号によって、水処理剤注入装置6の注入量及びブローダウンポンプ8aの排水量を制御する電気伝導率制御装置14が設けられている。
【0050】
<腐食試験1>
上記の開放循環式冷却水システムを用いて、腐食試験を行った。すなわち、水槽2に四日市市水を張り、初期処理としてヘキサメタリン酸ソーダ
75mg/Lと塩化亜鉛40mg/Lとを添加して、常温で48時間循環後、全量を排出した。四日市市水の水質は、pH:7、電気伝導率:12.6mS/m、Ca硬度:37mg−CaCO3/L、Mg硬度8mg−CaCO3/L、Mアルカリ度:39mg−CaCO3/L、
塩化物イオン:7mg/L、硫酸イオン:11mg/L、シリカ:10mg/Lであった。
【0051】
その後、新たに四日市市水を水槽に張り、試験片保持具13に外径12.7mm、長さ510mmの炭素鋼鋼管STKM11A(JIS G3445)からなる試験用伝熱管を取付けた後、水処理剤200mg/Lを添加して循環を開始し、熱負荷を開始した。水槽2の水温は35°Cとなるように水温制御装置9で制御した。試験用伝熱管評価部の線流速0.3m/sに相当する流量210L/hとなるように流量調整バルブ11で制御しながら、循環ポンプ5で冷却水を循環させ、熱交換器3の熱流束は70kW/m2とした。冷却塔入口・出口の循環冷却水の温度差は15°Cであった。蒸発水量は4.4L/h、補給水量は5.5L/h、ブローダウン水量は1.1L/h、濃縮度は5倍であった。循環冷却水の電気伝導率は電気伝導率測定セル10で連続的に測定し、電気伝導率の入力信号より電気伝導率制御装置14を用いて濃縮度3.5倍に相当する電気伝導率になるようにブローダウンポンプ8aを制御した。
【0052】
熱負荷開始2日後に濃縮度が3.5倍に達してからブローダウンを開始して濃縮度を3.5倍に維持した。ブローダウン開始と同時にブローダウン量に対して200mg/Lの水処理剤を水処理剤注入装置6により添加した。試験期間は30日間とした。
【0053】
腐食試験1を行っている間の循環冷却水の平均水質を表2に示す。水酸化カルシウムを添加した実施例1〜6では、水酸化カルシウム未添加の比較例2〜7と比較して、Mアルカリ度とCa硬度とが著しく増加した。実施例1〜6において、冷却塔1に通水しない場合の試験水のpHは10.3であったが、冷却塔1に循環通水することにより、大気中の炭酸ガスを吸収してpHは9.0まで低下した。また、リツナー指数は実施例1〜6では4.8でほぼ安定していた。これに対して比較例2〜7では、リツナー指数が6.0となり、比較例9では6.2となった。
【表2】
【0054】
腐食試験終了後、試験用伝熱管を取り外して、平均腐食速度、最大腐食深さ及び平均付着速度を測定した。その結果、表3に示すように、実施例1〜6はいずれも十分な腐食抑制効果とスケール抑制効果を示した。これに対し、水酸化カルシウムのみでスレッショルド抑制剤は未添加の比較例1や、水酸化カルシウムは未添加でスレッショルド抑制剤のみ添加した比較例2〜7は、いずれも十分な腐食抑制効果を示さず、スケール抑制効果も十分ではなかった。
【表3】
【0055】
<腐食試験2>
腐食試験2では、試験用伝熱管として外径12.7mm、長さ510mmのアルミニウム黄銅管C6871(JIS H3300)を用い、全ての水処理剤に対して、さらに銅合金用の腐食抑制剤であるトリルトリアゾールを1mg/L添加した。それ以外の条件は腐食試験1と同様であり、説明を省略する。
【0056】
その結果、表4に示すように、実施例1〜6はいずれも十分な腐食抑制効果とスケール抑制効果を示した。これに対し、水酸化カルシウムのみでスレッショルド抑制剤は未添加の比較例1や、水酸化カルシウムと凝集剤であるPAAとを混合しスレッショルド抑制剤を添加しなかった比較例2では、いずれも十分な腐食抑制効果を示さず、スケール抑制効果も十分ではなかった。
【表4】
【0057】
(実施例7〜10)
実施例7〜10では、表5に示す組成の開放循環式冷却水用水処理剤を用いた。
【表5】
<腐食試験3>
上記実施例7〜10の開放循環式冷却水用水処理剤を用いて、腐食試験を行った。すなわち、実施例1〜6の場合と同様、水槽2に四日市市水を張り、初期処理としてヘキサメタリン酸ソーダ
75mg/Lと塩化亜鉛40mg/Lとを添加して、常温で48時間循環後、全量を排出した。
【0058】
その後、新たに四日市市水を水槽に張り、試験片保持具13に外径12.7mm、長さ510mmの炭素鋼鋼管STKM11A(JIS G3445)からなる試験用伝熱管を取付けた後、循環を開始し、熱負荷を開始した。熱負荷開始2日後に濃縮度が3.5倍に達してからブローダウンを開始して濃縮度を3.5倍に維持した。ブローダウン開始と同時にブローダウン量に対して300mg/Lの水処理剤を水処理剤注入装置6により添加した。試験期間は30日間とした。
【0059】
腐食試験3を行っている間の循環冷却水の平均水質を表6に示す。その結果、リツナー指数は4.1〜5.3の範囲に入っていた。
【表6】
【0060】
腐食試験終了後、試験用伝熱管を取り外して、平均腐食速度、最大腐食深さ及び平均付着速度を測定した。その結果、表7に示すように、実施例7〜10はいずれも十分な腐食抑制効果とスケール抑制効果を示した。
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、開放循環式冷却水系における水処理方法及び開放循環式冷却水系用水処理剤として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例に使用した開放循環式冷却水システムの系統図である。
【符号の説明】
【0063】
1…冷却塔、2…水槽、3…熱交換器、4…配管、5…循環ポンプ、
6…水処理剤注入装置、7…補給水管、8…排水管、8a…ブローダウンポンプ
9…水温制御装置、10…電気伝導率測定セル、11…流量調整バルブ
12…流量計、13…試験片保持器、14…電気伝導率制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放循環式冷却水系における水処理方法及び開放循環式冷却水系用水処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
循環冷却水を冷却塔で冷却する循環式冷却水システムとして、開放循環式冷却水システムが広く普及している。この開放循環式冷却水システムでは、冷却塔に空気を強制的に取りこんで循環冷却水と接触させることにより、循環冷却水の一部を蒸発させ、そのときに奪われる気化熱によって水の温度を下げることを原理としている。
【0003】
開放循環式冷却水システムでは、循環冷却水の蒸発および飛散により、循環冷却水は徐々に濃縮される。このため、循環冷却水中の塩類(例えば補給水由来の重炭酸イオンやカルシウムイオン)濃度も徐々に高くなり、炭酸カルシウム等の析出によるスケールが発生し易くなる。また、塩化物イオンや硫酸イオン等の腐食性イオンの濃度が高くなると、孔食が発生し易くなる。さらには、循環冷却水の滞留時間が長くなると、微生物や縣濁性粒子による汚れが発生し易くなる。
【0004】
以上の問題を解決するため、濃縮された循環冷却水の一部をブローし、新たな水を補給し、濃縮度が2〜6倍の濃縮度を維持するように運転することが行なわれている。
また、鉄系金属の腐食抑制のために、亜鉛塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩等の重金属や、高濃度の無機リン酸塩等の各種リン系化合物を用いた腐食抑制剤も使用されてきた。
【0005】
しかし、これら重金属を用いた腐食抑制剤は、環境問題を引き起こすことから、近年、重金属を用いない腐食抑制剤が、数多く提案されている。
【0006】
例えば、分子中のリン含有量の少ない有機ホスホン酸化合物や有機ホスフィン酸化合物の使用が提案され、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸等の有機ホスホン酸による腐食防止方法及びスケール抑制方法(例えば特許文献1参照)、2−ホスホノブタン−1、2、4−トリカルボン酸、1−ホスホノプロパン−2、3−ジカルボン酸、ホスホノスクシン酸等のホスホノカルボン酸による腐食抑制剤及びスケール生成防止剤(例えば特許文献2参照)、2−ヒドロキシホスホノ酢酸による金属腐食抑制方法及びスケール沈積防止方法(例えば特許文献3参照)、リンを含まない環境調和型の処理剤としてマレイン酸とアミレンとの共重合体を用いる金属腐食抑制剤(例えば特許文献4参照)、無水マレイン酸とアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル等と、スチレン、スチレンスルホン酸などを加えた三元共重合体を用いるスケールの析出抑制方法及び金属の腐食抑制方法(例えば特許文献5参照)、無水マレイン酸99〜80重量%とモノエチレン性不飽和単量体1〜20重量%との共重合体の水溶性マレイン酸共重合体を用いるスケール(缶石)析出抑制方法(例えば特許文献6参照)、無水マレイン酸とモノエチレン系不飽和単量体の共重合体加水分解物を添加するボイラや蒸発缶の金属表面の腐食抑制方法及び析出物成形抑制方法(例えば特許文献7参照)、無水マレイン酸と炭素数5〜12のオレフィン共重合体によるボイラや蒸発缶におけるスケール抑制方法(例えば特許文献8参照)、カルシウム硬度10〜300mg−CaCO3/Lである開放循環冷却水系において、アルカリ金属水酸化物を循環冷却水に対し20〜300mg/L添加し、かつ当該循環冷却水のリツナー指数(40℃)を4.0〜6.0に維持する開放循環冷却水系の腐食抑制方法(例えば特許文献9参照)等が挙げられる。
【0007】
また、本発明の技術分野とは異なる技術分野の技術ではあるが、水道管、建築物の給水・給湯配管、各種用水配管、排水用配管等の冷却塔を有さない水供給用配管の金属の腐食を抑制するために、水酸化カルシウムと炭酸ガスとの併用による腐食防止方法が知られている(非特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】特公昭48−39348号公報
【特許文献2】特公昭53−15707号公報
【特許文献3】特公平3−2953号公報
【特許文献4】特公昭61−19714号公報
【特許文献5】特開平2−115384号公報
【特許文献6】特開昭63−182318号公報
【特許文献7】特公昭54−29998号公報
【特許文献8】特公平5−81320号公報
【特許文献9】特開2005−200721号公報
【非特許文献1】第51回材料と環境討論会予稿集、201〜202頁、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、重金属類を使用することがなく、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することのできる開放循環式冷却水系の水処理方法及び開放循環式冷却水用水処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、上記課題を解決するために、従来、開放循環冷却水系の水処理剤としては用いられることのなかった、水酸化カルシウムに注目した。水酸化カルシウムは、水道管、建築物の給水・給湯配管、各種用水配管、排水用配管等の、冷却塔を有さない密閉系である水供給用配管の金属の腐食を抑制するために、炭酸ガスと併用して用いられている。(非特許文献1参照)。しかし、この方法を直接、開放循環冷却水系の水処理方法に適用することはできない。なぜならば、開放循環冷却水系においては、上述したように、循環冷却水の蒸発および飛散により、循環冷却水は徐々に濃縮される(通常、2〜6倍の濃縮度を維持するように運転することが行なわれている)ため、重炭酸イオンやカルシウムイオンの濃度も徐々に高くなる。そこへさらに水酸化カルシウムを添加したのでは、カルシウムイオンの増大とpH上昇によって、炭酸カルシウムの析出やケイ酸マグネシウムの析出によるスケール障害が生じるおそれがあるとともに、銅や銅合金の腐食も促進される。このため、開放循環冷却水系に水酸化カルシウムや酸化カルシウムを添加する方法は、これまで行われることはなかった。
【0011】
もちろん、水酸化カルシウムとともに炭酸ガスを併用し、pHを下げてスケール障害を防ぐことも考えられるが、開放循環冷却水系においては極めて多量の炭酸ガスが必要となる。また、炭酸ガスの供給装置が必要となり、それに要する設備費や管理費も必要となり、水処理コストの高騰化を招いてしまう。
【0012】
そこで、発明者は、開放循環冷却水系の特徴である、冷却水と空気との接触を利用することを考えた。すなわち、空気の中には炭酸ガスが含まれているため、その空気中の炭酸ガスで冷却水のpHを下げることを考えたのである。さらには、炭酸カルシウムスケールの析出を防ぐために、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤を併用することにより、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の開放循環式冷却水系の水処理方法は、冷却塔で循環冷却水と外気とを接触させて該循環冷却水を冷却する開放循環式冷却水系の水処理方法において、前記循環冷却水に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを添加することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、開放循環式循環水系における循環冷却水に、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とが添加される。これらの薬剤は次のような役割を有している。
【0015】
すなわち、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加によって、循環冷却水中のカルシウムイオン濃度及びpHが高められ、開放循環式冷却水系の配管等に防食の役割を果たす炭酸カルシウム皮膜が形成されやすくなり、金属腐食が防止される。しかも、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムは、水に溶解してカルシウムイオンと水酸化物イオンを生成し、循環冷却水中の水酸化物イオンは冷却塔において大気中の炭酸ガスと反応して重炭酸イオンや炭酸イオンが生じる。こうして生成した炭酸塩のpH緩衝作用により、炭酸ガス等の酸性物質を添加しなくても、循環冷却水のpHを適切な範囲に自動調整されるのである。
【0016】
また、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤の添加によって、炭酸カルシウムスケールの過剰析出による配管の詰まり等のスケールによるトラブルを防止することができる。
【0017】
すなわち、本発明では水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加によって防食の役割を奏する炭酸カルシウム皮膜の形成を促すとともに、スレッショルド抑制剤の添加によって炭酸カルシウムのスケールとしての析出を防止する。
したがって、本発明の循環冷却水の水処理方法によれば、重金属類を使用することがなく、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することができる。
【0018】
本発明の循環冷却水の水処理方法では、循環冷却水の40°Cにおけるリツナー指数が3.5〜6となるように制御することが好ましい。リツナー指数が3.5未満となると、これ以上の腐食抑制効果の増加は見込めず、スケール析出傾向が増加してスケール障害のおそれが生ずる。また、リツナー指数が6を超えると十分な腐食抑制効果が得られない。リツナー指数を3.5〜6となるように制御することにより、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することができるのである。
【0019】
リツナー指数(RI)とは、炭酸カルシウムの析出傾向を示す指数であり、次式で定義される数値である。
RI=2×pHs−pH
(ここで、pHは循環冷却水のpHであり、pHsは式(1)で示される対象の循環冷却水の条件において炭酸カルシウムが飽和となるときのpHである。)
【数1】
ここで、
pK2:H2CO3の第2解離定数
pKs:CaCO3の溶解度積
pCa=−log[循環冷却水のCa硬度](mg−CaCO3/l)
pA=−log[循環冷却水のMアルカリ度](mg−CaCO3/l)
μ:イオン強度であり、次式で算出される。
μ=[循環冷却水の電気伝導率](μS/cm)×0.0000175
【0020】
リツナー指数(RI)を3.5〜6となるよう制御するためには、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加を調整する他、循環冷却水への補給水の量や、ブローダウンの水量を調節することによって制御することができる。水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加は、循環冷却水のCa硬度とMアルカリ度を増加させ、その結果、リツナー指数(RI)は小さくなる。また、ブローダウンの水量を多くし、その分を補給水で補給した場合には、Mアルカリ度や、カルシウムイオンの濃度が低下し、リツナー指数(RI)は大きくなる。
【0021】
循環冷却水中のカルシウム硬度は100〜300mg−CaCO3/Lとすることが好ましい。発明者の試験結果によれば、冷却水中のカルシウム硬度がこの範囲であれば、リツナー指数(RI)を3.5〜6となるように制御することができる。
【0022】
循環冷却水に対して、さらにアルカリ金属水酸化物を20〜300mg/Lの範囲で添加することも好ましい。アルカリ金属水酸化物はpHを高める作用が水酸化カルシウムや酸化カルシウムよりも高いため、リツナー指数(RI)をより大きく変化させることができる。ただし、アルカリ金属水酸化物を添加する場合には、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムだけでなく、アルカリ金属水酸化物の添加量も考慮して、リツナー指数を3.5〜6となるように制御する。
【0023】
スレッショルド抑制剤としては、有機ホスホン酸及びその塩、ホスフィノポリカルボン酸及びその塩、ホスホノカルボン酸及びその塩、マレイン酸系重合体及びその塩、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体と(メタ)アクリル酸との共重合体及びその塩、からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0024】
本発明の開放循環式冷却水用水処理剤は、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを有効成分として含有することを特徴とする。
上述したように、このような開放循環式冷却水用水処理剤を用いれば、重金属類を使用することがなく、金属腐食を抑制し、スケール付着を抑制することが可能となる。
【0025】
循環冷却水に対するスレッショルド抑制剤の添加量が0.5〜200mg/Lの範囲とされていることが好ましい。スレッショルド抑制剤の添加量がこの範囲にあれば、充分なスケール防止効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、河川、湖水、地下水、雨水等から工業用水、水道水、井水などを取り入れて使用される開放循環冷却水系に適用することができる。このような開放循環式冷却水系として、例えば石油精製工業、石油化学工業、紙パルプ製造業、繊維工業、塗料工業、合成ゴムラテックス工業などの各種製造業、発電プラント、空調システム等における開放循環冷却水系が挙げられる。
【0027】
酸化カルシウムは、水に溶解すると水酸化カルシウムとなるため、水酸化カルシウムと酸化カルシウムとはどちらか一方を用いてもよく、これらを混合して用いることもできる。水酸化カルシウムあるいは酸化カルシウムは、固体のまま開放循環冷却水系に添加しても良く、水溶液あるいはスラリーとして添加しても良い。
【0028】
スレッショルド抑制剤としては、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制する効果を奏するものであればもちいることができるが、有機ホスホン酸及びその塩、ホスフィノポリカルボン酸及びその塩、ホスホノカルボン酸及びその塩、マレイン酸系重合体及びその塩、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体と(メタ)アクリル酸との共重合体及びその塩、からなる群から選択される1種以上とすることが好ましい。
【0029】
有機ホスホン酸とは、分子中に1個以上のホスホノ基を有する有機化合物であり、具体的には1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸等が挙げられる。これらの中でも、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸は特に好適に用いることができる。
【0030】
また、ホスホノカルボン酸とは、分子中に1個以上のホスホノ基と1個以上のカルボキシル基を有する有機化合物であり、具体的には2−ホスホノブタン−1、2、4−トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ホスホノポリマレイン酸、ホスホンコハク酸等が挙げられる。これらの中でも2−ホスホノブタン−1、2、4−トリカルボン酸やホスホノポリマレイン酸は特に好適である。
【0031】
ホスホノポリマレイン酸は、中性〜アルカリ性の水性溶媒中で亜リン酸とマレイン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより製造することができ(特開平4−334392号公報参照)、また、ローディア社からBRICORR288の商品名で市販されている。
【0032】
また、ホスフィノポリカルボン酸とは、分子中に1個以上のホスフィノ基と2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、具体的にはアクリル酸と次
亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸と次亜リン酸を反応させて得られるビス−ポリ(1,2−ジカル ボキシエチル)ホスフィン酸、マレイン酸とアクリル酸と次亜リン酸を反応させて得られるポリ(2−カルボキシエチル)(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と次亜リン酸の反応物等が挙げられる。これらの中でもポリ(2−カルボキシエチル)(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸は特に好適に用いることができる。
ホスフィノポリカルボン酸の調製は、通常、水性溶媒中で次亜リン酸と不飽和カルボン酸とを遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより行なわれ、例えば特公昭54−29316号公報、特公平5−57992号公報、特公平6−47113号公報等に開示されている。また、ホスフィノポリカルボン酸は、BWA社よりBELCLENE500、BELSPERSE164、BELCLENE400等の商品名で市販されている。
【0033】
また、マレイン酸系重合体とは、ホモマレイン酸重合体と、マレイン酸と共重合可能な不飽和単量体との共重合体である。このような不飽和単量体としては、モノエチレン性不飽和スルホン酸の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、共役ジエンスルホン化物、スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレートエステル、スルホアルキル(メタ)アリルエーテル、スルホフェノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸など;(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル;(メタ)アクリルアミドの(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;炭素数 2〜8のオレフィンのエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテン等;ビニルアルキルエーテルのビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル;マレイン酸アルキルエステルなどが挙げられ、それらの1種または2種以上が用いられる。
また、マレイン酸重合体とは、マレイン酸30〜99重量%と、上記の不飽和単量体を1〜70重量%から得られる共重合体であり、中でも好ましくはホモマレイン酸重合体である。また、マレイン酸系重合体の重量平均分子量は、300〜20000が好ましく、さらに好ましいのは400〜1000である。
【0034】
マレイン酸系重合体の製造方法は、有機溶媒中ないし水性溶媒中で無水マレイン酸又はマレイン酸を遊離ラジカル開始剤の存在下で加熱することにより製造することができる。例えば特許2964154号公報、特公平7−49450号公報、特開平6−298874号公報等で開示されている。
また、(メタ)アクリル酸とスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体とは、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸と共重合可能なスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体である。共重合可能なスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、共役ジエンスルホン化物、スチレンスルホン酸、スルホアルキル(メタ)アクリレートエステル、スルホアルキル(メタ)アリルエーテル、スルホフェノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸などが挙げられる。また、これ以外のモノエチレン性不飽和単量体単量体を含む多元共重合体であっても良い。このようなモノエチレン性不飽和単量体単量体の例として、(メタ)アクリル酸エステルの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキルエステル;(メタ)アクリルアミドの(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;炭素数2〜8のオレフィンのエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、2−エチルヘキセン、ペンテン、イソペンテン、オクテン、イソオクテン等;ビニルアルキルエーテルのビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル;マレイン酸アルキルエステル等が挙げられ、その1種または2種以上が用いられる。
(メタ)アクリル酸とスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体としては、好ましくは(メタ)アクリル酸30〜99重量%とスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体を1〜70重量%から得られる共重合体であり、より好ましい単量体比率は80:20〜40:60である。また、この共重合体の重量平均分子量は、1,000〜100,000が好ましく、さらに好ましくの4,000〜20,000である。
(メタ)アクリル酸と、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体として好ましいのは、(メタ)アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸との共重合体、(メタ)アクリル酸と共役ジエンスルホン化物との共重合体、から選択される1種又は2種以上である。
【0035】
またスレッショルド抑制剤は、有機ホスホン酸、ホスフィノポリカルボン酸、ホスホノカルボン酸及びマレイン酸系重合体から選択される1種以上と、アクリル酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸との共重合体とを含む組成物が好ましい。この場合の組成物のアクリル酸とモノエチレン性不飽和スルホン酸の比率は通常10:90〜90:10であり、好ましくは20:80〜80:20である。
さらに好ましいのは、スレッショルド抑制剤が、有機ホスホン酸、ホスフィノポリカルボン酸、ホスホノカルボン酸及びマレイン酸系重合体から選択される1種以上と、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)の共重合体、及びアクリル酸と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(AHPS)の共重合体から選択される1種以上とを含む組成物である。この場合の組成物の比率は通常、10:90〜90:10であり、好ましくは30:70〜70:30である。
【0036】
スレッショルド抑制剤は、中和されていない酸の形態であってもよく、アルカリ金属水酸化物等で中和された塩の形態でもよい。スレッショルド抑制剤を中和されていない酸の形態で添加した場合、部分的に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムが中和されるが、通常はスレッショルド抑制剤よりも水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムの添加比率が高いため、スレッショルド抑制剤によって水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムが完全に中和されることはない。
循環冷却水に対するスレッショルド抑制剤の添加量は、0.5〜200mg/Lとすることが好ましい。スレッショルド抑制剤の添加量がこの範囲にあれば、充分なスケール防止効果を得ることができる。
【0037】
水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムとスレッショルド抑制剤とは、それぞれ別々に開放循環冷却水系に添加しても良く、それらを混合してから添加しても良い。
【0038】
水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウム並びにスレッショルド抑制剤の添加量については、対象とする水系の水質、腐食抑制の種類や濃度、スケール抑制の程度等により、その量は適宜調整して添加される。通常、水系に対して水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムにおける水酸化カルシウム換算の合計量として20〜300mg/Lが適切な範囲となる。水酸化カルシウム換算の合計量として添加量が20mg/L未満では十分な防食効果を見込めない。一方水酸化カルシウム換算の合計量としての添加量が300mg/Lを超えると、これ以上の腐食抑制効果の増加は見込めず、また水酸化カルシウムが溶解せずに未溶解のまま残留するため好ましくない。反面、水酸化カルシウムは水に対する溶解度が限定されるため、塩化カルシウムや炭酸ナトリウム等の溶解度の高い水質調整剤のように、過剰添加によるスケール障害の弊害がないという点で有利である。
【0039】
スレッショルド抑制剤の添加量としては、好ましくは0.5〜200mg/L、より好ましくは1〜50mg/Lである。スレッショルド抑制剤の添加量が0.5mg/L未満では十分なスケール抑制効果と腐食抑制効果を見込めず、添加量が200mg/Lを超えると、これ以上のスケール抑制効果や腐食抑制効果の増加は見込めず、逆にスケールを増加させるため好ましくない。
【0040】
水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウム並びにスレッショルド抑制剤の添加方法については、特に限定されるものではなく、通常、薬品注入ポンプ等の注入装置を用いて添加すれば良く、粉体の場合は搬送用ブロワを用いて添加しても良い。
また、スレッショルド抑制剤の添加箇所については、開放循環式冷却水系のいずれの場所に添加しても良いが、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウム成分は、循環冷却水に直接添加するのではなく、補給水に対して添加することが好ましい。補給水の方が循環冷却水よりもpHやカルシウム硬度が低いため、水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムが溶けやすいからである。
【0041】
本発明の水処理方法を行う場合における作用・効果については、以下のとおりである。すなわち、循環冷却水に添加された水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムは、溶解してカルシウムイオンと水酸化物イオンを生成する。そして、水酸化物イオンは、冷却塔において大気との接触し、大気中の炭酸ガスと反応して重炭酸イオンとなる。そして、この重炭酸塩の緩衝作用により、循環冷却水のpHが8.5〜9.5の領域で安定に維持される。このようにして生成したカルシウムイオンと重炭酸イオンは、金属表面におけるカソード反応(酸素の還元反応)により生成した水酸化物イオンと反応して、金属表面のカソード部に単分子から数分子レベルの薄くて緻密な炭酸カルシウムの保護皮膜を形成して腐食を抑制する。さらには、スレッショルド抑制剤の作用により、炭酸カルシウムや水酸化カルシウム等のスケール生成を有効に防止でき、鉄系金属だけでなく銅や銅合金に対しても腐食抑制効果が奏される。スレッショルド抑制剤は、単分子から数分子レベルの炭酸カルシウムの生成は阻害せず、数分子レベルを超えた臨界半径に相当する炭酸カルシウムの核形成と結晶成長を阻害するため、炭酸カルシウムの保護皮膜形成を阻害することなく、炭酸カルシウムのスケールの発生を抑制することができる。
【0042】
なお、開放循環式冷却水系の冷却水と接する箇所に銅合金が用いられている場合には、銅合金の腐食抑制である芳香族アゾール化合物を添加することが好ましい。芳香族アゾール化合物の例としては、例えばトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、ハロ置換ベンゾトリアゾール、ハロ置換トリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0043】
また、開放循環式冷却水系における微生物関連の障害を抑制するため、スライムコントロール剤を添加することも好ましい。本発明の水処理方法においては、冷却水のpHが高くなるため、高いpHでも殺菌効果が優れた臭素系殺菌剤を添加するのが最も好ましい。臭素系殺菌剤としては、水中で次亜臭素酸を生成するものであれば特に限定はないが、例えば、次亜臭素酸塩、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジブロモジメチルヒダントイン、塩化臭素、次亜塩素酸と臭化物の反応物等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に本発明を具体化した実施例を比較例と比較しつつ説明する。
<開放循環式冷却水用水処理剤の調整>
実施例においては、水酸化カルシウムと、スレッショルド抑制剤とを混合したスラリーを開放循環式冷却水用水処理剤として用いた。スレッショルド抑制剤としては、以下に示す各種有機ホスホン酸及び各種共重合体を単独あるいは混合して用いた。
【0045】
(スレッショルド抑制剤として用いた有機ホスホン酸)
HEDP:1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸ナトリウム塩
PBTC:2−ホスホノブタン−1、2、4−トリカルボン酸ナトリウム塩
(スレッショルド抑制剤として用いた共重合体)
AA−AMPS:アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸
の共重合体のナトリウム塩〔重合比(重量)60:40、重量平均
分子量10,000〕
AA−AHPS:アクリル酸と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスル
ホン酸の共重合体のナトリウム塩〔重合比(重量)50:50、重
量平均分子量5,000〕
PMA:ポリマレイン酸ナトリウム塩「BELCLENE200LA」(商品名、BW
A社製)、〔活性分50%〕
AMP:アクリル酸−マレイン酸−次亜リン酸共重合体(モル比2:1:1)のナト
リウム塩
【0046】
(実施例1〜6及び比較例1〜9)
実施例1〜6の開放循環式冷却水用水処理剤の組成及び比較例1〜9の水処理剤の組成を表1に示す。なお、比較例8で水酸化カルシウムとともに添加されているPAA(ポリアクリル酸ナトリウム塩〔重量平均分子量2,200〕)は、分散剤であり、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤ではない。
【表1】
【0047】
<評価方法>
水処理方法の評価は、JIS G0593−2002「水処理剤の腐食及びスケール防止評価試験方法」のオンサイト試験法に準拠して行った。
また、評価は図1に示す開放循環式冷却水システムを用いて行った。この開放循環式冷却水システムは、冷却能力1.8冷却トンの誘引通風向流接触型の冷却塔1と、水槽2と、熱交換器3とが配管4によって接続されており、配管4の途中に設置された循環ポンプ5によって配管4内を冷却水が循環可能とされている。水槽2及び配管4を含む系全体の水容量は62Lである。水槽2には、水処理剤を供給するための水処理剤注入装置6と、補給水を供給するための補給水管7と、排水を行うための排水管8及びブローダウンポンプ8aとが接続されている。また、水槽2には、水温制御装置9も設置されている。
【0048】
循環ポンプ5と熱交換器3とを接続する配管4aには、電気伝導率測定セル10と、流量調整バルブ11と、流量計12とが設けられている。また、熱交換器3と冷却塔1とを接続する配管4bには、腐食試験を行うための試験用伝熱管を保持する試験片保持具13が設けられている。
【0049】
さらに、この開放循環式冷却水システムでは、電気伝導率測定セル10からの信号によって、水処理剤注入装置6の注入量及びブローダウンポンプ8aの排水量を制御する電気伝導率制御装置14が設けられている。
【0050】
<腐食試験1>
上記の開放循環式冷却水システムを用いて、腐食試験を行った。すなわち、水槽2に四日市市水を張り、初期処理としてヘキサメタリン酸ソーダ
75mg/Lと塩化亜鉛40mg/Lとを添加して、常温で48時間循環後、全量を排出した。四日市市水の水質は、pH:7、電気伝導率:12.6mS/m、Ca硬度:37mg−CaCO3/L、Mg硬度8mg−CaCO3/L、Mアルカリ度:39mg−CaCO3/L、
塩化物イオン:7mg/L、硫酸イオン:11mg/L、シリカ:10mg/Lであった。
【0051】
その後、新たに四日市市水を水槽に張り、試験片保持具13に外径12.7mm、長さ510mmの炭素鋼鋼管STKM11A(JIS G3445)からなる試験用伝熱管を取付けた後、水処理剤200mg/Lを添加して循環を開始し、熱負荷を開始した。水槽2の水温は35°Cとなるように水温制御装置9で制御した。試験用伝熱管評価部の線流速0.3m/sに相当する流量210L/hとなるように流量調整バルブ11で制御しながら、循環ポンプ5で冷却水を循環させ、熱交換器3の熱流束は70kW/m2とした。冷却塔入口・出口の循環冷却水の温度差は15°Cであった。蒸発水量は4.4L/h、補給水量は5.5L/h、ブローダウン水量は1.1L/h、濃縮度は5倍であった。循環冷却水の電気伝導率は電気伝導率測定セル10で連続的に測定し、電気伝導率の入力信号より電気伝導率制御装置14を用いて濃縮度3.5倍に相当する電気伝導率になるようにブローダウンポンプ8aを制御した。
【0052】
熱負荷開始2日後に濃縮度が3.5倍に達してからブローダウンを開始して濃縮度を3.5倍に維持した。ブローダウン開始と同時にブローダウン量に対して200mg/Lの水処理剤を水処理剤注入装置6により添加した。試験期間は30日間とした。
【0053】
腐食試験1を行っている間の循環冷却水の平均水質を表2に示す。水酸化カルシウムを添加した実施例1〜6では、水酸化カルシウム未添加の比較例2〜7と比較して、Mアルカリ度とCa硬度とが著しく増加した。実施例1〜6において、冷却塔1に通水しない場合の試験水のpHは10.3であったが、冷却塔1に循環通水することにより、大気中の炭酸ガスを吸収してpHは9.0まで低下した。また、リツナー指数は実施例1〜6では4.8でほぼ安定していた。これに対して比較例2〜7では、リツナー指数が6.0となり、比較例9では6.2となった。
【表2】
【0054】
腐食試験終了後、試験用伝熱管を取り外して、平均腐食速度、最大腐食深さ及び平均付着速度を測定した。その結果、表3に示すように、実施例1〜6はいずれも十分な腐食抑制効果とスケール抑制効果を示した。これに対し、水酸化カルシウムのみでスレッショルド抑制剤は未添加の比較例1や、水酸化カルシウムは未添加でスレッショルド抑制剤のみ添加した比較例2〜7は、いずれも十分な腐食抑制効果を示さず、スケール抑制効果も十分ではなかった。
【表3】
【0055】
<腐食試験2>
腐食試験2では、試験用伝熱管として外径12.7mm、長さ510mmのアルミニウム黄銅管C6871(JIS H3300)を用い、全ての水処理剤に対して、さらに銅合金用の腐食抑制剤であるトリルトリアゾールを1mg/L添加した。それ以外の条件は腐食試験1と同様であり、説明を省略する。
【0056】
その結果、表4に示すように、実施例1〜6はいずれも十分な腐食抑制効果とスケール抑制効果を示した。これに対し、水酸化カルシウムのみでスレッショルド抑制剤は未添加の比較例1や、水酸化カルシウムと凝集剤であるPAAとを混合しスレッショルド抑制剤を添加しなかった比較例2では、いずれも十分な腐食抑制効果を示さず、スケール抑制効果も十分ではなかった。
【表4】
【0057】
(実施例7〜10)
実施例7〜10では、表5に示す組成の開放循環式冷却水用水処理剤を用いた。
【表5】
<腐食試験3>
上記実施例7〜10の開放循環式冷却水用水処理剤を用いて、腐食試験を行った。すなわち、実施例1〜6の場合と同様、水槽2に四日市市水を張り、初期処理としてヘキサメタリン酸ソーダ
75mg/Lと塩化亜鉛40mg/Lとを添加して、常温で48時間循環後、全量を排出した。
【0058】
その後、新たに四日市市水を水槽に張り、試験片保持具13に外径12.7mm、長さ510mmの炭素鋼鋼管STKM11A(JIS G3445)からなる試験用伝熱管を取付けた後、循環を開始し、熱負荷を開始した。熱負荷開始2日後に濃縮度が3.5倍に達してからブローダウンを開始して濃縮度を3.5倍に維持した。ブローダウン開始と同時にブローダウン量に対して300mg/Lの水処理剤を水処理剤注入装置6により添加した。試験期間は30日間とした。
【0059】
腐食試験3を行っている間の循環冷却水の平均水質を表6に示す。その結果、リツナー指数は4.1〜5.3の範囲に入っていた。
【表6】
【0060】
腐食試験終了後、試験用伝熱管を取り外して、平均腐食速度、最大腐食深さ及び平均付着速度を測定した。その結果、表7に示すように、実施例7〜10はいずれも十分な腐食抑制効果とスケール抑制効果を示した。
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、開放循環式冷却水系における水処理方法及び開放循環式冷却水系用水処理剤として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例に使用した開放循環式冷却水システムの系統図である。
【符号の説明】
【0063】
1…冷却塔、2…水槽、3…熱交換器、4…配管、5…循環ポンプ、
6…水処理剤注入装置、7…補給水管、8…排水管、8a…ブローダウンポンプ
9…水温制御装置、10…電気伝導率測定セル、11…流量調整バルブ
12…流量計、13…試験片保持器、14…電気伝導率制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却塔で循環冷却水と外気とを接触させて該循環冷却水を冷却する開放循環式冷却水系の水処理方法において、
前記循環冷却水に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを添加することを特徴とする循環冷却水の水処理方法。
【請求項2】
循環冷却水の40°Cにおけるリツナー指数が3.5〜6となるように制御することを特徴とする請求項1記載の循環冷却水の水処理方法。
【請求項3】
循環冷却水のカルシウム硬度を100〜300mg−CaCO3/Lとすることを特徴とする請求項1又は2記載の開放循環式冷却水系の水処理方法。
【請求項4】
循環冷却水に対して、さらにアルカリ金属水酸化物を20〜300mg/Lの範囲で添加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の開放循環式冷却水系の水処理方法。
【請求項5】
スレッショルド抑制剤は、有機ホスホン酸及びその塩、ホスフィノポリカルボン酸及びその塩、ホスホノカルボン酸及びその塩、マレイン酸系重合体及びその塩、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体と(メタ)アクリル酸との共重合体及びその塩、からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の開放循環式冷却水系の水処理方法。
【請求項6】
水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを有効成分として含有する開放循環式冷却水用水処理剤。
【請求項7】
循環冷却水に対するスレッショルド抑制剤の添加量が0.5〜200mg/Lの範囲とされていることを特徴とする請求項6記載の開放循環式冷却水用水処理剤。
【請求項1】
冷却塔で循環冷却水と外気とを接触させて該循環冷却水を冷却する開放循環式冷却水系の水処理方法において、
前記循環冷却水に水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを添加することを特徴とする循環冷却水の水処理方法。
【請求項2】
循環冷却水の40°Cにおけるリツナー指数が3.5〜6となるように制御することを特徴とする請求項1記載の循環冷却水の水処理方法。
【請求項3】
循環冷却水のカルシウム硬度を100〜300mg−CaCO3/Lとすることを特徴とする請求項1又は2記載の開放循環式冷却水系の水処理方法。
【請求項4】
循環冷却水に対して、さらにアルカリ金属水酸化物を20〜300mg/Lの範囲で添加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の開放循環式冷却水系の水処理方法。
【請求項5】
スレッショルド抑制剤は、有機ホスホン酸及びその塩、ホスフィノポリカルボン酸及びその塩、ホスホノカルボン酸及びその塩、マレイン酸系重合体及びその塩、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体と(メタ)アクリル酸との共重合体及びその塩、からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の開放循環式冷却水系の水処理方法。
【請求項6】
水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、炭酸カルシウムの結晶成長を抑制するスレッショルド抑制剤とを有効成分として含有する開放循環式冷却水用水処理剤。
【請求項7】
循環冷却水に対するスレッショルド抑制剤の添加量が0.5〜200mg/Lの範囲とされていることを特徴とする請求項6記載の開放循環式冷却水用水処理剤。
【図1】
【公開番号】特開2008−249285(P2008−249285A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93007(P2007−93007)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】
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