説明

開花、結実促進剤

【課題】使用時の制限を無くしてより広範囲な条件での使用を可能にするとともに、病原菌による根腐れや葉の枯死を持続的に予防してその健全な生育を促し、開花の時期を有効にはやめ、安全性が高く、不快臭のない、光触媒含有開花、結実促進剤を提供すること。
【解決手段】植物の開花促進や結実促進を目的として、土壌又は葉面上に対し、a)土壌撒布、土壌灌水される場合、1m2当たり0.5g〜10g、b)葉面撒布される場合、1m2当たり0.5g〜10g、c)土壌灌注される場合、1鉢当たり0.5g〜10gの割合で適用される光触媒、を含む開花、結実促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒を含有する開花、結実促進剤に関し、より詳しくは、病原菌による根腐れや葉の枯死を持続的に予防し、健全な生育を促し、開花の時期を有効にはやめ、安全性が高く、かつ、不快臭のない光触媒含有開花、結実促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の開花や結実を促進することは、育種を目的とした栽培では育種期間の短縮が可能になり、収穫時期や出荷時期を早めることができるため、生産性の向上、必要経費の節約、や販売価格の引下げなど、農業、林業分野において有益な効果が期待できる。そのため、植物に対して開花や結実の促進処理を施す場合がある。
【0003】
従来の係る開花、結実促進技術としては、1)白熱電球や蛍光灯などの人工光で日照時間を補う長日又は短日処理する技術(特許文献1など)、2)温室などにより温度調整を行う技術、3)開花促進剤を適用する技術、が汎用されている。
【0004】
従来より汎用の開花促進剤としては、ジベレリン、サイトカイニン、オーキシン、アブシジン酸などの植物ホルモン、ヒバ油中に含まれるヒノキチオールが配合されその抗菌性や抗かび性を利用するもの、ジャスモン酸エステルを有効成分とするもの(特許文献2)、ケイヒ酸及びコーヒー酸をはじめとするケイヒ酸誘導体を配合したものもの(特許文献3)、ケイヒ酸又はその誘導体とシクロデキストリンを含有するもの、β−インドール酢酸又はクロルフェノキシ酢酸などと、核酸の分解により得られるプリン塩基、ピリミジン塩基、ヌクレオシド及びヌクレオチドの群から選択された少なくとも1種とを有効成分とする、(特許文献4、特許文献5)、ヌクレオチド類の1種又は2種以上を成熟した観葉植物の葉、又は葉の茎、あるいは葉の柄の切口に接触させるもの(特許文献6)など、が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−97082
【特許文献2】国際公開番号:WO97/31536号公報
【特許文献3】特願平7−88857号公報
【特許文献4】特公昭39−22919号公報
【特許文献5】特公昭49−16310号公報
【特許文献6】特公昭54−17670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば上記特許文献2記載の方法によると、これらの物質の持つ特性から、この開花促進剤は、その使用が制限される場合があった。すなわち、ケイヒ酸及びその誘導体は根の生育を阻害するために、根が十分発達する前の、あまり早い時期からの苗に対する使用は控えなければならなかった。また、これらの物質は芳香族化合物であることから、使用の際には、そのかすかな臭いが園芸愛好家の嗜好を害する恐れがあり、閾値以下の分量での使用に制限された。
【0007】
上記特許文献3乃至6記載の方法によると、核酸分解により得られる、分解程度の異なる核酸塩基、ヌクレオシド及びヌクレオチドは、全て、これらの間の区別のない同効物として取り扱われており、しかも、これらの核酸分解生成物は、プリン塩基に属するある種のものを除き実質的な植物生長調整作用を有しない、と記載されているところから明らかなように、β−インドール酢酸などと核酸分解物との併用を必須要件とする組成物であるといえる。
【0008】
すなわち、核酸関連物質を植物に用いる従来の技術は、核酸関連物質と他の物質との併用が必須要件とされていたり、核酸関連物質が単独に使用されていても、種々の核酸関連物質はなんら区別されることなく同効物として取り扱われていたりするものであり、また、植物ホルモンやジャスモン酸エステル、ケイヒ酸及びコーヒー酸をはじめとするケイヒ酸誘導体などの有機化合物を植物に用いる上記従来技術はいずれも本願発明の技術的思想とは異別のものである。
【0009】
果花樹が健全で充実した状態で開花することは、その花が受精して結実した果実の肥大化に繋がり、延いては大型良質の果実を収穫できることにもなる。また、生花の場合、開花が促進されしかも大型の品質のよい花を咲かせる生花を作成することができれば、生花の栽培や出荷業者にとって稗益するところ極めて大である。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用時の制限を無くしてより広範囲な条件での使用を可能にするとともに、病原菌による根腐れや葉の枯死を持続的に予防してその健全な生育を促し、開花の時期を有効に早め、安全性が高く、不快臭のない開花促進剤を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、迅速かつ確実に開花、結実させるためには、栽培期間中の病原菌の発生を抑止することが重要であり防黴・抗菌性は開花、結実促進剤として具備すべき要件の一つであること、毒性を持つ物質の使用は直接人間が摂取するものではないとはいえ環境破壊の原因となるなど種々の問題があること、開花、結実促進処理を施した後長期間安定した効果を持続させることができること、及び、使用環境において特有な臭いが漂わないことなどの観点から鋭意研究を重ねた結果、土壌面にあるいは葉面上に、組成物を適用することにより、上記各要件を全て解決できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0012】
すなわち、上記課題を解決するために本発明が採用した手段は、請求項1の発明は、植物の開花促進や結実促進を目的として、土壌又は葉面上に対し、つぎのa)〜c)の割合で適用される光触媒を含む開花、結実促進剤。
【0013】
a)土壌撒布、土壌灌水される場合、1m2当たり0.5g〜10g。
b)葉面撒布される場合、1m2当たり0.5g〜10g。
c)土壌灌注される場合、1鉢当たり0.5g〜10g。
【0014】
請求項2の発明は、前記光触媒が、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、窒素又は硫黄をドープした酸化チタン、及び、酸素欠陥を有する酸化チタンよりなる群から選ばれているところに特徴がある。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の開花、結実促進剤において、前記光触媒が、光触媒として不活性なセラミックスにて部分的に被覆されており、該光触媒として不活性なセラミックスが、アパタイト、シリカ、活性炭素、活性アルミナ又は多孔質ガラスのいずれかであるところに特徴がある。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の開花、結実促進剤において、前記光触媒が、珪砂、珪石、長石、陶土、凝灰石、ゼオライト、シリカ、シリカゲル、マイカ、活性炭、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、消石灰、及び、珪藻土を含む無機化合物の群から選ばれた多孔質担体に担持されているところに特徴がある。
【0017】
健康な植物体を保持するためには、ミネラル分が必要である。ミネラル成分を含む物質、自然石等、例えば、輝緑石等を添加若しくは混合し土壌に与えることによりミネラル分が土壌に溶け出し、植物のミネラル補給が最適となる。一般的には、m2当たり0.5〜10gの割合で適用、強化される。ただし、m2当たり0.5g〜2gの範囲内であると、植物種によってはミネラル効果が弱い場合があり、m2当たり10g以上であると、混入するケイ素分が多すぎるためか、植物の選別吸収が起きない傾向がある。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の開花、結実促進剤において、 前記開花、結実促進剤に、有機肥料もしくは無機肥料のいずれか一方又はその両方がさらに配合されているところに特徴がある。
【0019】
請求項6の発明は、請求項5に記載の開花、結実促進剤において、前記有機肥料もしくは無機肥料に、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、消石灰を含むカルシウム化合物の群から選択されたいずれか1種又は2種以上が含まれているところに特徴がある。
【0020】
硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、消石灰等はアルカリ性物質であるため、土壌や植物に適用することにより酸性土壌を中和することができ、さらに、カルシウム効果を増大できる。なお、ここで、カルシウム効果とは、植物の着色効果(植物のカルシウム吸収量が増加すること)により、植物の色が鮮明となり、徒長を防ぎ最適な状態となり、耐病性に優れ最適な健康状態になる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の開花、結実促進剤において、前記開花、結実促進剤は、そのカサ比重が0.4g/cm3〜1.6g/cm3であるところに特徴がある。カサ比重は0.4〜1.6g/cm3とするが、0.4g/cm3以下であると風などにより飛ばされてしまう傾向がある。1.6g/cm3以上であると土の中へ潜ってしまう傾向があり、土の中へ潜ってしまうと光が当たりにくくなり、光触媒機能を発揮しにくくなる。より好適なカサ比重は、0.4〜1.0g/cm3である。
【0022】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の開花、結実促進剤において、前記開花、結実促進剤は、その粒径が0.05mm〜15mmであるところに特徴がある。光触媒の粒径が0.05mm以下であると、土の中へ潜ってしまう傾向があり、粒径が15mm以上であると表面積が少なくなるためか、接地面積が少なくなるためか光触媒機能が充分に発揮できない傾向がある。より好適な粒径は1〜8mmである。
【0023】
請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の開花、結実促進剤において、前記開花、結実促進剤は、その比表面積が1m2/g以上であるところに特徴がある。
【0024】
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の開花、結実促進剤において、前記開花、結実促進剤は、土壌撒布用粉末剤もしくは粒剤、潅水用懸濁剤、潅注用懸濁剤、注入用懸濁剤、又は、葉面噴霧用懸濁剤のいずれかであるところに特徴がある。
【0025】
つぎに、請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の開花、結実促進剤において、前記開花、結実促進剤が、塊根・塊茎肥大促進剤として適用されるところに特徴がある。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る開花、結実促進剤によると、つぎの格別顕著な作用効果が得られる。
【0027】
1)その主たる成分の入手が簡単であると共にその組成も簡単で容易に調整でき、光触媒の分散性に優れるとともにその保存安定性にも優れ、そして、土壌又は葉面上に安定且つ持続的に適用することができる。
【0028】

2)光触媒の光触媒機能すなわち酸化還元反応によって、有害な病原菌、汚染物質等を分解し排除することができるため、病原菌による根腐れや葉の枯死を持続的に予防してその健全な生育を促し、開花の時期を有効に促進することができる。また、安全性が高く、不快臭の発生もない。すなわち、光触媒機能により植物に有害である土壌表面辺りの菌・カビ等の有機物が分解排除され、土壌全体では整菌されることにより植物本来の生長が阻害されず促進される。又、光触媒機能により忌避効果も見とめられダニや虫なども寄り付きにくい環境ができる。
【0029】
すなわち、光触媒の酸化還元反応により植物に有害な病原菌、害虫を防除し、植物に最適な環境を作ることにより植物の開花、結実時間が短縮でき、かつ、豊な作物が生産できる。
【0030】
3)光触媒機能により、ダイオキシン、PCB、環境ホルモン、残留農薬などの有害有機汚染物質を分解浄化できる。すなわち、自然界に優しく、植物の発育に最適な環境を創出できるため、果花樹が健全で充実した状態で開花させることができる。
【0031】
4)肥料を入れることにより豊な土壌となっていくが、肥料を入れ続けると、土壌が肥料過多となり植物が育たない環境となってしまう。しかし、光触媒機能により多少の肥料過多でも余分な有機物を分解し植物が育つ環境となる。
【0032】
5)物質を土壌表面に与えることにより光触媒機能である酸化還元反応により土壌表面(界面)温度が数度上昇するので植物にとっても生長しやすい環境を作ることができる。又、酸化還元反応により二酸化炭素が豊富になり光合成が促進される。又、土壌中の微量成分、窒素、リン酸、カリウム等を含む物質が分解され、イオン化されて植物体内に吸収されやすくなる事により、植物体内の活性が活発になる事によっても光合成が活発に促進される。よって、植物の開花、結実までのスピードを促進させかつ植物が本来持っている理想的な豊な植物となり、糖度も上がる。
【0033】
6)温室栽培の場合、光触媒機能を有する物質を土壌及び植物に与えることにより、光触媒の酸化還元反応、及び活発な光合成により温室内温度が上昇し、暖房費が大幅に削減できる。
【0034】
すなわち、活発な光合成等により植物の開花、結実スピードが大幅に上がり、植付けから出荷までの期間短縮をすることができ、出荷業者にとって、生産コストも大幅に削減できるなど、稗益するところ極めて大である。
【0035】
とりわけ、請求項2の発明に係る開花、結実剤によると、光触媒が、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、窒素又は硫黄をドープした酸化チタン、及び、酸素欠陥を有する酸化チタンよりなる群から選ばれているので、可視光線によっても励起させることができ、光触媒反応物における電子の正孔再結合を効率的に防止でき、水酸ラジカルやスーパーオキサイドイオン等の活性酸素種の生成を効率的に維持でき(光触媒作用による酸化、還元反応を安定且つ持続的に維持でき)、光触媒作用による酸化、還元反応を効率良く発現させることができる。
【0036】
また、請求項3の発明に係る開花、結実剤によると、光触媒が、光触媒として不活性な例えばアパタイト、シリカ、活性炭素、活性アルミナ又は多孔質ガラスのいずれかにて部分的に被覆されているため、光触媒が培養土壌中に混和されても、その表面の全てが培養土壌によって覆われることがない。とりわけ、請求項6の発明に係る開花、結実剤光触媒(例えばアパタイトで部分被覆した酸化チタンの比重が、培養土壌よりも低比重となるように構成されているため、有害な病原菌、汚染物質等をより効果的に分解し排除することができる。したがって、病原菌による根腐れや葉の枯死を持続的に予防してその健全な生育を促し、開花の時期を有効に促進することができる。
【0037】
請求項5の発明に係る開花、結実促進剤によると、有機肥料もしくは無機肥料のいずれか一方又はその両方がさらに配合されているため、植物の発育に最適な環境をより効果的に調整でき、果花樹の健全で充実した開花の促進と、結実を促すことができる。すなわち、生産コストも大幅に削減や、結実を促進するとともに果実を肥大化させ、大型化かつ良質の果実を収穫できる。
【0038】
請求項6の発明に係る開花、結実促進剤によると、酸性土壌を中和することができる。また、カルシウム効果を増大できるため、植物の色が鮮明となり徒長を防ぎ最適な状態となり、耐病性に優れ、最適な健康状態で開花、結実させることができる。
【0039】
請求項11の発明の係る開花、結実促進剤によると、植物の塊根(球根・宿根)や塊茎(地下茎)の肥大を促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて詳細に説明するがその代表的なものを例示したに過ぎず、以下の実施例により本発明が限定されるものではない。
【0041】
本発明に係わる光触媒とは、結晶の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)の光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる物質のことであり、さらに詳しくは、光触媒を光励起すると、光触媒の表面において電子−正孔対が生じ、このうち電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドイオン(O2-)を生成し、正孔は表面水酸基を酸化して水酸ラジカル(・OH)を生成し、これらの反応性に富んだ両活性種により、悪臭成分やホルムアルデヒド等の物質を効率的にそして確実に酸化分解処理するものであり、例えば、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化バナジウム、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、酸化第二鉄、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウムなどの各粒子を例示することができ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。
【0042】
優れた光触媒作用を発揮するという点では、酸化チタンを使用することが好ましい。また、結晶性の酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のものがあり、どれを使用しても構わないが、このうち最も優れた光触媒作用を発揮するという観点からは、アナターゼ型の酸化チタンを使用することが好ましい。
【0043】
なお、光触媒として、酸化チタン(チタニア)、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、窒素又は硫黄をドープした酸化チタン、及び、酸素欠陥を有する酸化チタンなどを使用しても構わない。可視光によって光触媒を光励起ができるからである。
【0044】
また、光触媒としては、光触媒として不活性な例えばアパタイト、シリカ、活性炭素、活性アルミナ、多孔質ガラス等のセラミックスを、マスクメロンのネット構造状に形成したものや、又は光触媒として不活性なセラミックス(アパタイト結晶等)を例えば金平糖状に備えたものなども使用できる。
【0045】
これら光触媒は、太平化学産業(株)より商品名を「マスクメロン型光触媒」として、昭和電工(株)より商品名を「ジュピター」として、及び、丸武産業(株)より商品名を「アパテック」として上市されている。例えばマスクメロンのネット構造状にセラミックスを備えた光触媒は、有機高分子を添加したセラミックスのゾル液にて光触媒(例えばチタニア粒子)の表面をコーティングした後、噴霧乾燥などで乾燥し、その後、加熱焼成すると、焼成時に有機高分子が消失するため、セラミックス膜の表面に細孔を形成できこの細孔の底部にチタニアが露出した状態となっているものとして製造できる。
【0046】
また、金平糖形状のセラミックス(例えばアパタイト結晶等)を備えた光触媒は、カルシウムとリンを含む溶液から析出させたアパタイトを、光触媒の表面で成長させることによって製造されたものである。例えば光触媒が酸化チタンである場合、チタニア粒子とアパタイトの混合物やチタニア粒子を水酸化カルシウムとリン酸イオンの両方を含有する等張な疑似体液中に浸漬し、静置することで、水酸化カルシウムとリン酸イオンとの反応で生成するアパタイトをチタニア粒子の表面に析出させることで製造される。なお、ここで云う「アパタイト(結晶)」とは、水酸アパタイト、炭酸アパタイト、フッ化アパタイト、リン酸三カルシウム、又はリン酸八カルシウムのいずれか1種又はこれら2種以上の混合物であっても構わないものとする。
【0047】
光触媒(チタニア粒子)の表面が光触媒として不活性なセラミックス(例えばヒドロキシアパタイトや水酸アパタイトなど)によって部分的に被覆されているため、セラミックス表面に細孔を有する構造に構成された光触媒で、細孔の底に光触媒として活性なチタニアが露出した状態となっているため、例えば後述する担持単体に、プラスチックスを介して表面に担持させても、プラスチックスと接触している部分が光触媒として不活性なセラミックスであるから、プラスチックス自身の分解を生じることない。そのため、有機化合物を効果的に吸着でき、光励起された光触媒の酸化作用(光触媒作用)により、これらを迅速にかつ連続的に分解除去することができる。
【0048】
また、光触媒として不活性なセラミックスで菌やカビなどの生体構成成分である蛋白質や糖質などとの親和性(生体親和性)が大きいため、菌やカビなどの微生物を効率的に吸着でき、これらを上述した反応性に富んだ活性種によって迅速且つ連続的に酸化分解することができ、最終的には炭酸ガスにまで分解処理できる。すなわち、菌やカビなどの生命活動にて産生され菌体外に放出される悪臭成分の発生をも防止できる。すなわち、光を照射するだけで低コスト、省エネルギー的、かつ長期間にわたり使用できるのである。
【0049】
光触媒が、多孔質担体表面に光触媒を固着してなる多孔質の光触媒体であると、光触媒粒の比表面積を大きくすることができ、より一層効果的に光触媒作用を発現させることが期待できる。このような目的に使用する好適な多孔質担体としては、具体的には、例えば、珪砂、珪石、長石、陶土、凝廃石、ゼオライト、シリカ、シリカゲル、タルク、珪藻土、アルミナ、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸ヵルシウム、消石灰、ベントナイト(モンモリロナイト)、石英、おが屑、発泡ガラス、粒状セラミックス焼結体、粘土焼結体等を例示することができる。比表面積が大きいこととコストの観点から、活性炭、活性アルミナ、シリカゲルなどの多孔質セラミックスを担体として使用することが好ましい。多孔質担体の形状は、粒状、板状、円筒状、角柱状、円錐状、球状、ラグビーボール状等どのような形状であっても良い。なお、これら担体は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
本発明にかかる開花、結実促進剤は、有効成分として光触媒を含んでいるものであり、必要に応じて、その効果を助長若しくは安定化させるために、例えば、農薬に用いられる補助剤等の各種補助剤と混合して、懸濁剤、粉剤、粒剤、顆粒剤、水和剤、フロアブル剤、乳剤、ペースト剤等の種々の製剤形態で以て使用することもできる。つまり、本発明にかかる開花、結実促進剤は、必要に応じて上記の補助剤を含んでいてもよく、従って、該開花、結実促進剤は、上記種々の製剤形態(調整濃度、適用時の濃度などを含む)を採用することができる。
【0051】
上記の補助剤としては、例えば、溶剤(希釈剤)、乳化剤、懸濁補助剤、各種担体、各種基材、展着剤、湿展剤、固着剤、崩壊剤等が挙げられる。そして、開花、結実促進剤である上記各種製剤は、そのまま使用することができるが、必要に応じて、水で所定の濃度に希釈して使用することもできる。なお、上記化合物が塩を形成する等して水溶性を備えている場合には、上記溶剤を用いなくとも、塊根・塊茎肥大促進剤を水で所定の濃度に希釈することができる。
【0052】
懸濁剤やフロアブル剤、乳剤(エマルション)を調製するのに好適な溶剤としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;シクロヘキサン、テトラヒドロナフタレン、メチルナフタレン;動植物油、脂肪酸、脂肪酸エステル;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら溶剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0053】
乳化剤又は懸濁補助剤としては、各種界面活性剤を用いることができる。該界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩等の陰イオン系界面活性剤、四級アンモニウム塩等の陽イオン系界面活性剤、ベタイン型等の両性界面活性剤、エーテル型等の非イオン系界面活性剤(ノニオン系界面活性剤)等が挙げられる。界面活性剤を用いることにより、上記化合物が植物により一層吸収され易くなる。
【0054】
上記化合物をペースト状(剤)にするのに好適な基材としては、具体的には、例えば、ワセリン、ラノリン、合成樹脂、ゴム等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら基材は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0055】
本発明にかかる開花、結実促進剤は、塊根(球根・宿根)や塊茎(地下茎)を有する植物に適用すると、塊根・塊茎肥大促進剤としても機能する場合がある。適用可能な植物としては、例えば、メークインや男爵、出島等のジャガイモ(馬鈴薯)、サツマイモ(甘藷)、サトイモ、ヤマイモ、タロイモ、キャッサバ、ニンジン、朝鮮ニンジン、ダイコン、二十日ダイコン、カブ、テンサイ、ゴボウ、ワサビ、食用ユリ、タマネギ、ニンニク、レンコン、ラッカセイ等の野菜類(作物);テッポウユリ等のユリ、チューリップ、フリージア、グラジオラス、ヒヤシンス、球根ベゴニア、チグリシア、ダリア、カラー、アネモネ、ムスカリ、ラナンキュラス、クロッカス、コルチカム、スイセン、アイリス、アリュウム、カタクリ、オーニソガラム、ハブランサス、グロッパ、リコリス、ネリネ、チオノドクサ、トキソウ、雲南トキソウ、ギボウシ、アカプルコ、チューベローズ等の花卉類;等が
を挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0056】
本発明にかかる開花、結実促進剤を塊根・塊茎肥大促進剤として使用した場合、植物における塊根(球根・宿根)や塊茎(地下茎)にデンプンを蓄える機能が向上されるので、これら塊根や塊茎を、使用しない場合よりも効果的に肥大させることができる。すなわち、作物増収剤としての機能を備えているといえる。
【0057】
開花、結実促進剤(塊根・塊茎肥大促進剤)の使用方法、すなわち、開花、結実促進剤(塊根・塊茎肥大促進剤)を用いた植物の処理方法としては、具体的には、例えば、茎葉処理、土壌処理、浸漬処理、粉剤(粉末)処理、注入処理等を採用することができるが、特に限定されるものではない。つまり、開花、結実促進剤(塊根・塊茎肥大促進剤)の植物に対する使用部位としては、茎葉(地下茎を含む)、根(球根・宿根を含む)、種子、花、果実等が挙げられるが、特に限定されるものではない。開花、結実促進剤(塊根・塊茎肥大促進剤の使用形態としては、該植物に対して当該生理活性を発揮させることができる手段であればよく、具体的には、例えば、土壌撒布、土壌潅水、土壌潅注、土壌注入、葉面撒布等が挙げられる。要するに、対象とする植物の種類や使用時期(使用目的)等に応じて、該植物に最も効果的に生理活性を発揮させることができる使用形態(使用量を含む)を選択すればよい。
【0058】
本発明の開花結実促進剤の使用方法は、開花時期にオスおよびメスの花がより健全に充実した状態で開花するのを援助する目的を有し、本発明の植物の開花促進剤の施用時期は、対象植物によって異なる。
【0059】
具体的には、例えば、柿のような果樹では予想開花時期の1か月程度前である。イチゴの例ではもっと近くなる。イチゴは苗作りの時に顕微鏡で見ると奥に花芽が観察できるが、苗を定植してある期間が過ぎるとこれが生長して開花するに到る。しかして、その間はせいぜい1か月である。こういうわけで、イチゴに上記の目的で投与する場合は、開花予想時期の半月位前である。生花用の彼岸桜(ヒガンサクラ)やレンギョウに花を付ける作業では、湿度の高い室(ムロ)に1週間程度置いて花の芽を出させてから室外へ出すが、本発明の開花促進剤によるときは室外へ出す初日に僅かに花の芽が吹き出た枝に本発明の開花結実促進剤を噴霧することで花を付けることができる。
【0060】
詳述すると、米粒程度の大きさに生長した花の芽は、これから通常は2週間程度かかって開花するが、本発明の開花促進剤を投与すると、半分の1週間位でかつ見事な、色の鮮やかな大きな花が咲くのである。本発明によれば、このように、開花が早まると同時に色鮮やかで大型の花が咲く。彼岸桜では、出始めた花の芽に施用せずに切り枝の根元にのみ溶液として投与した例では、開花時期の促進は同様にみられたが花色が桃色になることもあった。レンギョウの場合、室から出して僅かに花の芽が吹き出した枝に本発明の開花促進 剤を噴霧したところ、開花が促進され、しかも花の姿が大きく、ボリュウム感のあるものであった。
【0061】
施用時期は、このように対象植物によって異なるが、当業者であれば、所与の場合に、予想開花時期のどの位前に施用するのが適当であるかを、後掲実施例を含む本明細書の記載を参考にし、また予備試験を行なってみることにより容易に決定することができる。
【0062】
また、施用方法は、要するに、植物の花の芽に有効成分の光触媒を付着させることのできるような仕方であって、例えば、噴霧、浸漬、塗布などを挙げることができるが、これらに限られるものではない。また、生花の場合は、生花用の水に加えておいて、その根元の切り口に接触させることもできる。
【0063】
施用量は、施用対象植物の種類や果樹などはその栽培密度などによっても異なるが、要するに、本発明の植物の開花結実促進剤を施用した植物の開花促進 の程度が、本発明の植物の開花促進剤を施用しないことを除いては全く同様の条件下に置かれた植物の開花程度に優る量であり、この量は、当業者の容易に行うことのできる予備比較実験で定めることができる。例えば、動力噴霧器で目的の部位が濡れる程度から水滴がしたたり落ちる程度とすることができる。
【0064】
要するところ、開花、結実促進剤(塊根・塊茎肥大促進剤)の使用量及び使用時期は、対象とする植物の種類、製剤形態、処理方法、使用時期(使用目的)等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0065】
例えば、剤形が粉剤(粒剤を含む)や懸濁剤である場合、撒布される光触媒量が圃場1m2あたり0.5g/以下であると、植物種によっては光触媒機能を充分に発揮させることができず、また、病気が発生する傾向があり、また、圃場1m2あたり10g/m2以上であっても、光触媒機能を顕著に向上できない傾向がある。より好ましくは、1g/m2〜8g/m2である。なお、懸濁剤を葉面撒布する場合の光触媒量の撒布量は、1m2あたり0.5g〜10g、より好ましくは1g〜4g程度であり、懸濁剤を灌注する場合は、0.5g〜10g、より好ましくは1g〜4g程度である。
【0066】
なお、本発明にかかる開花、結実促進剤(塊根・塊茎肥大促進剤)は、必要に応じて、各種の植物生長調節剤、肥料(糖類、アミノ酸、有機酸、各種ミネラル等)、除草剤、殺黴剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、農園芸用殺菌剤、土壌殺菌剤、土壌改良剤等と併用することができるものとする。
【0067】
本発明による“開花、結実促進”の意味について付記しておく。開花、結実促進 というと、花の咲くのを急がせるという意味だけに取られかねないが、それよりも健全な大きな雄しべおよび雌しべを持つ花の育成に貢献する意味が市場では大きいこともある。例えば、生け花向けの桜の花では開花時期が従来よりも随分早いことが一つのメリットとなるが、同時に見事な花が咲くのも市場価値を上げる要素となっている。また、イチゴ等では早く咲く意味はそれほど重要ではなく、元気な大きな花が咲くことが求められる。本発明の開花促進剤によれば、開花時期を早めることのみならず、及び/又は立派な花を咲かせることもできるので、本発明による“開花促進 ”はこれら両者を含む広義の開花促進である。
【0068】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0069】
まず、菊の温室栽培について検討した。温室内の圃場の一角を千鳥関係に区画し同一面積(10mx10m)の3区画(区画A、区画B、区画C)を整地した。なお、実施例となる栽培を行った区画Aは、区画Bと区画Cの間に存する区分であり、区画Bと区画Cはそれぞれ比較例の栽培を実施した。
【0070】
元肥(腐葉土、牛糞)を施した区画A、区画B及び区画Cのそれぞれに、菊苗を5cm間隔に定植し、以下のごとく栽培した。温室温度:20℃、水管理:3日毎に約5トン/1000m2
【0071】
実施例1
常法に従って臭化メチルにて土壌消毒した区画Aに菊苗を定植し、定植後20日目に、アパタイトで部分被覆された酸化チタン(商品名を「ジュピターF4−APS」、昭和電工(株)製))の懸濁剤(分散剤)を、区画A1000m2当たり、光触媒が約50gの割合となるように葉面撒布した。なおこの間、追肥及び、殺虫剤や殺菌剤の葉面撒布は一切行わなかった。
【0072】
区画A内の菊苗を定植した25日目に、後記比較例1bに記載の病気の発生を認めることなく、菊の花芽を確認でき、約98%の収穫率で菊花が収穫できた。また、植物の周りにおける二酸化炭素が豊富になり温室内温度が上昇するためか、温室内の暖房費(重油の使用量)を約10%削減できた。
【0073】
比較例1a
常法に従って臭化メチルにて土壌消毒した区画Bに菊苗を定植し、定植後20日目に常法に従って、殺虫剤(スミチオン1000倍希釈液)及び殺菌剤(ポリドール2000倍希釈液)を葉面撒布した。なおこの間、追肥は一切行わなかった。
【0074】
区画B内の菊苗を定植した36日目に菊の花芽が確認できた。なお、その一部には、ウイロイド及びさび病が発生し、その収穫率は約60%であった。
【0075】
比較例1b
区画Cに菊苗を定植した。なおこの間に、土壌消毒、追肥、殺虫剤や殺菌剤の葉面撒布、及び光触媒処理は一切行わなかった。
【0076】
区画Cの菊は、定植後25日目に、葉腐れ細菌病、ウイロイド、さび病、灰色カビ病などの病気が発生していることが確認でき、その収穫率は約5%に過ぎなかった。
【0077】
以上のことから、つぎの、
1)光触媒機能により、菌及び害虫を防除することができ、農薬を使用しなくて済むこと、
2)光触媒を葉面撒布することにより、葉腐れ細菌病、ウイロイド、サビ病、灰色カビ病などの病気が防止できること、
3)光触媒を葉面撒布することにより、葉腐れ細菌病、ウイロイド、さび病、灰色カビ病などの病気が治癒できること、
4)光触媒機能により、植物の周りで二酸化炭素が豊富になり、植物の光合成が促進され成長が早くなり短期間で出荷できること、
5)光合成を活発化して植物に最適な環境作りができ、菊の開花時期を促進すること、
6)温室内の暖房費(重油の使用量)を削減できること、
などが解った。
【0078】
なお、地下植えしたバラの温室栽培について、上記と実質的に同様、すなわち光触媒を1〜8g/m2の割合で土壌撒布する栽培試験を試みたところ、栽培方法などの詳細は改めて詳述しないが、上記の、
1)光触媒機能により、菌及び害虫を防除することができ、農薬を使用しなくて済むこと。
2)光触媒を葉面撒布することにより、病気の防止ができること、
3)光触媒を葉面撒布することにより、病気の治癒ができること、
4)光触媒機能により、植物の周りで二酸化炭素が豊富になり、植物の光合成が促進され成長が早くなり短期間で出荷できること。
5)光合成を活発化して植物に最適な環境作りができ、菊の開花時期を促進すること。
が解った。
6)温室内の暖房費(重油の使用量)を削減できること。
と同様の結果が得られた。
【0079】
つぎに、温室温度が20℃、水管理を3日毎に約5トン/1000m2で育成したガーベラ苗を5号に鉢上げしたガーベラに対し、根が活着したと思われる7日目に、酸化チタンが担時された粒状凝灰石(粒径:1mm〜8mm)を、1鉢あたり光触媒が1g〜8gの割合となるように土壌表面に適用したところ、適用後18〜21日目に、花芽を目視観察でき、健康なガーベラの花を育成できた。
【0080】
また、植物の周りにおける二酸化炭素が豊富になり温室内温度が上昇するためか、温室内の暖房費(重油の使用量)を約10%削減できた。
【0081】
比較例2a
温室温度が20℃、水管理を3日毎に約5トン/1000m2で育成したガーベラ苗を5号に鉢上げしたガーベラに対し、根が活着したと思われる7日目に、殺虫剤(スミチオン1000倍希釈液)及び殺虫剤(ポリドール2000倍希釈益)を葉面撒布したところ、24〜29日目に、花芽を目視観察できた。
【0082】
比較例2b
鉢上げした鉢(5号鉢)植えガーベラに対し、土壌消毒、殺虫剤や殺菌剤撒布、あるいは、光触媒処理することなく栽培したところ、24〜29日目に、花芽を目視観察できた。
【0083】
以上のことから、つぎの、
7)光触媒機能により、植物の周りで二酸化炭素が豊富になり、植物の光合成が促進され成長が早くなり短期間で出荷できること。
8)光合成を活発化して植物に最適な環境作りができ、菊の開花時期を促進すること。
9)温室内の暖房費(重油の使用量)を削減できること。
が解った。
【0084】
つぎに、鉢植えファレノシプス(胡蝶蘭)の温室栽培について検討した。
実施例3
完成鉢(5号鉢)に植え込んだファレノシプス(胡蝶蘭)に対し、完成鉢に植え込んだ時に、アパタイトで部分被覆された酸化チタン(商品名を「ジュピターF4−APS」、昭和電工(株)製))の懸濁剤(分散剤)を、1鉢あたり光触媒が5gの割合となるように灌注適用したところ、25〜27日目に、花芽を目視観察できるとともに、健康なファレノシプス(胡蝶蘭)を栽培できることが解った。
【0085】
また、植物の周りにおける二酸化炭素が豊富になり温室内温度が上昇するためか、温室内の暖房費(重油の使用量)を約10%削減できた。
【0086】
比較例3a
完成鉢(5号鉢)に植え込んだファレノシプス(胡蝶蘭)に対して、完成鉢に植え込んだ時に、殺虫剤(スミチオン1000倍希釈液)及び殺虫剤(ポリドール2000倍希釈液)を葉面撒布したところ、35〜38日目に、花芽を目視観察できたが、ナンプ病に罹患したものがあった。
なお、ナンプ病、葉腐れ細菌病が発生した完成鉢ファレノシプス(胡蝶蘭)に対し、アパタイトで部分被覆された酸化チタン(商品名を「ジュピターF4−APS」、昭和電工(株)製))の懸濁剤(分散剤)を、1鉢あたり光触媒が5gの割合となるように灌注適用したところ、ナンプ病、葉腐れ細菌病はいずれも治癒できた。
【0087】
比較例3b
完成鉢(5号鉢)に植え込んだファレノシプス(胡蝶蘭)を、土壌消毒、殺虫剤や殺菌剤撒布、あるいは、光触媒処理することなく栽培したところ、ナンプ病、葉腐れ細菌などの病気が発生した。
【0088】
以上のことから、つぎの、
10)光触媒機能により、菌及び害虫を防除することができ、農薬を使用しなくて済むこと、
11)光触媒を灌注適用することにより、ナンプ病、葉腐れ細菌などの病気防止できるのみならず、発生したナンプ病、葉腐れ細菌が治癒できること、
12)光触媒機能により、光合成を活発化して植物に最適な環境作りができ、花芽の発芽時期を促進でき、短期間で開花させることできること、
13)温室内の暖房費(重油の使用量)を削減できること、
などが解った。
【0089】
つぎに、梨(果樹)の栽培について検討した。
実施例4
施肥された区画内に定植された梨の木のうちで眠り病、炭素病、黒星病を有する梨の木群に対して、梨の幼実が梅干し大となった時、アパタイトで部分被覆された酸化チタン(商品名を「ジュピターF4−APS」、昭和電工(株)製))の懸濁剤(分散剤)を、区画A1000m2当たり、光触媒が50gの割合となるように葉面撒布したところ、眠り病、炭素病、黒星病が治癒でき、比較例2bよりも結実の速度を約1ヶ月短縮させることができた。
【0090】
また、無差別抽出した梨100個の平均重量は、比較例2aの梨の平均重量のも約140%であり、さらに、糖度も1〜2度上昇していることが解った。収穫率は約98%であった。
【0091】
比較例4a
施肥された区画内に定植された梨の木のうちで眠り病、炭素病、黒星病を有する梨の木群に対して、殺虫剤(スミチオン1000倍希釈液)及び殺虫剤(ポリドール2000倍希釈液)を葉面撒布したところ、眠り病、炭素病、黒星病を治癒することはできなかった。収穫率は約60%であった。
【0092】
比較例4b
施肥された区画内に定植された梨の木群を、土壌消毒、殺虫剤や殺菌剤の葉面撒布、及び光触媒処理することなく栽培したところ、眠り病、炭素病、胴枯れ病、黒星病など様々な病気が発生した。収穫率は約5%であった。
【0093】
以上のことから、つぎの、
14)光触媒機能により、菌及び害虫を防除することができ、農薬を使用しなくて済むこと、
15)光触媒を葉面撒布することにより、眠り病、炭素病、胴枯れ病、黒星病などの病気防止できるのみならず、発生した眠り病、炭素病、黒星病が治癒できること、
16)光触媒機能により、植物の周りで二酸化炭素が豊富になり、植物の光合成が促進され成長が早くなり短期間で結実させることできること、
17)果実を肥大させることができること、
18)および、果実の糖度を上昇させることができること、
が解った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の開花促進や結実促進を目的として、土壌又は葉面上に対し、つぎのa)〜c)の割合で適用される光触媒を含む開花、結実促進剤。
a)土壌撒布、土壌灌水される場合、1m2当たり0.5g〜10g。
b)葉面撒布される場合、1m2当たり0.5g〜10g。
c)土壌灌注、灌入される場合、1鉢当たり0.5g〜10g。
【請求項2】
前記光触媒が、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、窒素又は硫黄をドープした酸化チタン、及び、酸素欠陥を有する酸化チタンよりなる群から選ばれていることを特徴とする、請求項1に記載の開花、結実促進剤。
【請求項3】
前記光触媒が、光触媒として不活性なセラミックスにて部分的に被覆されており、該光触媒として不活性なセラミックスが、アパタイト、シリカ、活性炭素、活性アルミナ又は多孔質ガラスのいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の開花、
結実促進剤。
【請求項4】
前記光触媒が、珪砂、珪石、長石、陶土、凝灰石、ゼオライト、シリカ、シリカゲル、マイカ、活性炭、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、消石灰、及び、珪藻土を含む無機化合物の群から選ばれた多孔質担体に担持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の開花、結実促進剤。
【請求項5】
前記開花、結実促進剤に、有機肥料もしくは無機肥料のいずれか一方又はその両方がさらに配合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の開花、結実促進剤。
【請求項6】
前記有機肥料もしくは無機肥料に、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、消石灰を含むカルシウム化合物の群から選択されたいずれか1種又は2種以上が含まれていることを特徴とする請求項5記載の開花、結実促進剤。
【請求項7】
前記開花、結実促進剤は、そのカサ比重が0.4g/cm3〜1.6g/cm3であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の開花、結実促進剤。
【請求項8】
前記開花、結実促進剤は、その粒径が0.05mm〜15mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の開花、結実促進剤。
【請求項9】
前記開花、結実促進剤は、その比表面積が1m2/g以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の開花、結実促進剤。
【請求項10】
前記開花、結実促進剤は、土壌撒布用粉末剤もしくは粒剤、潅水用懸濁剤、潅注用懸濁剤、注入用懸濁剤、又は、葉面噴霧用懸濁剤のいずれかであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の開花、結実促進剤。
【請求項11】
前記開花、結実促進剤が、塊根・塊茎肥大促進剤として適用されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の開花、結実促進剤。

【公開番号】特開2006−321721(P2006−321721A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143848(P2005−143848)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(591106602)新東陶料株式会社 (1)
【出願人】(305024776)豊実産業有限会社 (1)
【Fターム(参考)】