説明

開蓋工具及び開蓋方法

【課題】地面を損傷しない開蓋工具及び開蓋方法を提供する。
【解決手段】開蓋工具1は、開蓋対象の蓋本体4を跨ぐ門形フレーム2と、門形フレーム2に鉛直方向に移動自在に支持されて、蓋本体4の係止部16に係合する爪ユニット3とを備え、さらに、爪ユニット3をフレームに対して昇降させる昇降手段として、爪ユニット3に固定された吊り下げ軸10と、吊り下げ軸10に螺合するナット15を備える。また爪ユニット3は、門形フレーム2に鉛直方向に移動自在に支持される吊り下げ軸10と、蓋本体4の係止部16に係合する爪本体11からなり、爪本体11は吊り下げ軸10に軸支されて、水平軸回りに揺動する。また、爪ユニット3を2組備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物用蓋を開放する開蓋工具及び該工具を用いて地下構造物用蓋を開放する開蓋方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ガス供給用の管路は、道路の地下に埋設されて、管路の途中には減圧弁、仕切弁、流量調整弁等の流れ調整弁、あるいはその他の付属機器が配置される。これらの付属機器等はプロテクター(弁プロテクター)に収容される。プロテクターの頂部には鉄蓋があって、操作、点検あるいは修理のために地上から付属機器等に接近することを可能にしている(特許文献1)。
【0003】
また、道路の地下には、都市ガス供給用の管路の他に、例えば、上下水道用、電力用、あるいは通信用の管路が埋設されて、管路の途中には各種の付属機器が配置されている。これらの管路あるいは付属機器に地上から接近する開口の蓋も路面に設置されている。
【0004】
ここで、ガス、上下水道に係る路面下の埋設導管及びその付属機器等、あるいは電力・通信に係る地下ケーブル及びその付属機器等を総称して「地下構造物」と呼ぶことにする。また、操作、点検あるいは修理のために地上から地下構造物に接近するための開口を閉蓋する蓋、例えば、減圧弁蓋、仕切弁蓋、流量調整弁蓋、制水弁蓋、空気弁蓋、量水器蓋、マンホール蓋、汚水桝蓋、共同溝用鉄蓋、送電用鉄蓋、配線用鉄蓋等を総称して「地下構造物用蓋」と呼ぶことにする(特許文献2,3)。つまり、前述した弁プロテクターは「地下構造物」の一種であり、弁プロテクターの鉄蓋は「地下構造物用蓋」に相当する。なお、本明細書でいう「地下構造物用蓋」は、寸法や形状によって限定されない。例えば、人間や資材の出入り口に使用するような、大型の「地下構造物用蓋」もあれば、手や工具を通すだけの小型の「地下構造物用蓋」もある。また、円板形の「地下構造物用蓋」もあれば、角形の「地下構造物用蓋」もある。
【0005】
さて、一般に地下構造物用蓋は、地面に固定された受枠と、該受枠に嵌め込まれた蓋本体とから構成されている(特許文献1〜3)。この地下構造物用蓋の蓋本体を受枠から取り外して、地下構造物用蓋を開放するのには大きな力を必要とする。蓋本体の上を通過する車両の重量を受けて蓋本体が受枠に食い込んだり、蓋本体と受枠の間に砂粒が入って摩擦が大きくなったり、あるいは錆び付いたりするからである。
【0006】
そこで、地下構造物用蓋の蓋本体を受枠から取り外す装置・工具が多数提案されている。例えば、特許文献4には、支持部材と、支持部材から垂下してマンホール蓋の鈎穴に係合するフック棒と、支持部材を地面に対して昇降させる油圧式ジャッキとを有するマンホール蓋用開閉装置が提案されている。
【0007】
また、特許文献5には、基台に支持されて鉛直方向に移動する昇降架台と、昇降架台と蓋部材に係合する爪ユニットと、昇降架台を常に上方向に付勢する弾性手段とを備える開閉治具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−161268号公報
【特許文献2】特開2009−13784号公報
【特許文献3】特開2009−30436号公報
【特許文献4】特開平7−279189号公報
【特許文献5】特開2003−184113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
確かに、特許文献4、5に開示された装置等を使用すれば、蓋本体の取り外しに大きな腕力を必要としないが、これらの装置等は地面に直接載置されて、蓋本体を持ち上げるときの反力を地面で受けるので、地面を損傷する恐れがあった。つまり、地面が凹んだり、舗装が割れたりする恐れがあった。あるいは、受枠を地面から持ち上げてしまう恐れもあった。
【0010】
本発明は、このような背景の下でなされたものであり、地面を損傷しない開蓋工具及び開蓋方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る開蓋工具は、開蓋対象物を跨ぐ門形フレームと、前記門形フレームに鉛直方向に移動自在に支持されて、前記開蓋対象物に係合する爪ユニットと、前記爪ユニットを前記門形フレームに対して昇降させる昇降手段を備えることを特徴とする。
【0012】
前記昇降手段は、例えば、前記爪ユニットに固定されたねじ軸と、前記ねじ軸に螺合するナットである。
【0013】
また、前記爪ユニットは、前記門形フレームに鉛直方向に移動自在に支持される軸体と、前記開蓋対象物に係合する爪本体からなり、前記爪本体は前記軸体に軸支されて水平軸回りに揺動するようにしても良い。
【0014】
本発明の開蓋方法は、受枠に嵌め込まれた蓋本体を、前述した開蓋工具のいずれかを使って前記受枠から取り外す開蓋方法において、前記門形フレームの基部を前記受枠の上に載置して、前記門形フレームに前記蓋本体を跨がせる載置段階と、前記爪ユニットを前記蓋本体に係合する係合段階と、前記昇降手段を操作して、前記爪ユニットを前記門形フレームに対して上昇させる持ち上げ段階を有することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、爪ユニットを門形フレームに対して昇降させる昇降手段を備えるので、作業者の腕力に頼らずに、蓋体を取り外すことができる。また、昇降手段を爪ユニットに固定されたねじ軸と、そのねじ軸に螺合するナットで構成するので、開蓋工具を安価に実現することができる。また、爪ユニットを軸体と、前記軸体に水平軸回りに揺動自在に軸支された爪本体で構成すれば、特定の爪ユニットを使用しない場合に、その爪ユニットが蓋体と干渉するのを避けることができる。
【0016】
また、本発明の開蓋方法によれば、前記門形フレームを受枠で支持して、蓋本体を持ち上げるので、受枠の周囲の地面に力が加わらない。そのため地面を損傷することがない。また受枠を持ち上げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す開蓋工具の外形図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A’線で切断した側断面図である。
【図2】開蓋工具を用いて、地下構造物の蓋を取り外す手順を示す説明図である。
【図3】本発明の別の実施形態を示す開蓋工具の外形図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を適宜参照しながら説明する。
【0019】
本発明の実施形態の一例を示す開蓋工具1は、図1に示すように、門形フレーム2と、門形フレーム2に支持された2組の爪ユニット3から構成されている。なお、蓋本体4は開蓋工具1によって開蓋される作業対象であり、受枠5に嵌め込まれている。
【0020】
門形フレーム2は、桁部材6の両端に柱部材7を溶接固定して、全体を門形に構成した構造部材である。また、桁部材6は下方が開いた「コ」字形の断面形(図1(c)参照)を持つ鋼材であり、柱部材7は角パイプ状の鋼材である。また、桁部材6と柱部材7の取り合い部は、ブラケット8で補強されている。また柱部材7の下端には、山形鋼が当接部材9として溶接固定されている。
【0021】
爪ユニット3は、吊り下げ軸10と、爪本体11から構成され、爪本体11はボルト12を介して吊り下げ軸10に揺動自在に支持されている。吊り下げ軸10は貫通穴13を通って桁部材6の上方に突き出ている。また、吊り下げ軸10の上部には雄ねじ14が刻まれていて、雄ねじ14はナット15と螺合している。なお、ナット15の径は貫通穴13より大きくされている。
【0022】
このように構成されているので、ナット15を回転させることによって、吊り下げ軸10は桁部材6に対して相対的に昇降させることができる。つまり、吊り下げ軸10とナット15は爪ユニット3を門形フレーム2に対して相対的に昇降させる昇降手段として機能する。
【0023】
また、爪本体11は、鋼板から切り出された鈎型の部品であって、蓋本体4に形成された係止部16と係合する。また、桁部材6の左右の側面には爪掛け17があって、予備の爪本体18が吊されている。予備の爪本体18は、係止部16の形状や寸法が異なる(例えば、幅が異なる)場合に、爪本体11に代えて、吊り下げ軸10に取り付けて使用される。
【0024】
さて、この開蓋工具1を使って蓋本体4を受枠5から取り外す手順を説明する。
【0025】
図2(a)に示すように、受枠5は路面19に埋め込まれ、蓋本体4は受枠5に嵌め込まれている。また、一般に、路面19上を通行する車両や歩行者を妨げないように、受枠5の上端と蓋本体4の上面は路面19と同じ高さになるように設置される。
【0026】
次に、図2(b)に示すように、開蓋工具1を受枠5の上に載置する。門形フレーム2の幅(つまり、2本の柱部材7の間隔)は蓋本体4の幅に若干の余裕を加えた大きさになっているので、門形フレーム2は蓋本体4を跨いで載置される。また門形フレーム2の基部の当接部材9は受枠5に当接する。
【0027】
次に、爪本体11を、蓋本体4の係止部16と係合させる(図2(b)参照)。この時、必要に応じて、ナット15を回して、爪ユニット3を上下させても良いし、爪本体11をボルト12回りに回動させて、爪本体11の姿勢を変えても良い。つまり、爪本体11が係止部16に確実に係合するように、爪本体11の高さや姿勢を調節すれば良い。
【0028】
最後に、ナット15を回して、爪ユニット3を上昇させれば、図2(c)に示すように、蓋本体4は爪ユニット3に引かれて持ち上げられて、受枠5から外れる。なお、この時、門形フレーム2は受枠5の上に載置されているから、門形フレーム2は路面19を直接押圧しない。そのため、路面19を損傷することがない。また受枠5を蓋本体4と一緒に路面19から持ち上げることもない。
【0029】
また、図2(d)に示すように、蓋本体4が受枠5にヒンジ軸20を介して支持されて、ヒンジ軸20回りに揺動するように構成されている場合は、ヒンジ軸20に近い側の爪ユニット3の爪本体11をボルト12回りに回動させて、爪ユニット3を折り畳めば、該爪ユニット3と蓋本体4の干渉を避けることができる。
【0030】
また、受枠5の上端が路面19より低くなっている場合、つまり、受枠5が路面19から陥没している場合は、図2(e)に示すように、スペーサ枠21を受枠5の上に載置して、スペーサ枠21の上に開蓋工具1を載置すれば、門形フレーム2が蓋本体4から受ける反力が路面19に直接負荷されるのを避けることができる。
【0031】
なお、スペーサ枠21は受枠5と同一、もしくは受枠5より小さな平面形を有し、受枠5の路面19に対する陥没深さに見合う高さを備える鋼鉄製の枠である。また、高さの異なるスペーサ枠21を用意して、陥没深さに見合ったスペーサ枠21を選ぶようにしても良い。
【0032】
また、開蓋工具1は図3に示すように構成されても良い。すなわち、門形フレーム2の桁部材6を右桁部材22と左桁部材23に分割し、右桁部材22と左桁部材23を2本のボルト24で結合するとともに、ボルト24を右桁部材22に開けた長穴25に通すようにすれば、門形フレーム2の幅を蓋本体4の幅に合わせて自在に変更することができる。
【0033】
また、吊り下げ軸10を通す貫通穴13(図1(c)参照)を長穴26(図3(a)参照)にすれば、爪ユニット3の取付位置を蓋本体4の係止部16の位置に合わせて自在に変更することができる。
【0034】
なお、以上説明した実施形態は例示であって、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲において、自由に変形、応用、あるいは改良して実施することができる。
【0035】
例えば、上記実施形態では、複数の部品を組み立てて、溶接で接合した門形フレーム2の例を示したが、本発明はかかる門形フレーム2を備えるものには限定されない。門形フレーム2は一体成形された鋳造品や鍛造品であっても良いし、あるいは、鋼管を曲げ加工しても良い。勿論、門形フレーム2の素材は鋼に限られない。他の金属であっても良いし、非金属材料を素材にしても良い。
【0036】
また、爪ユニット3の形状も例示であって、本発明はこのような形状の爪ユニットを備えるものには限定されない。特に「爪」あるいは「鈎」の文字面に拘って、「爪ユニット」の概念を狭く解釈してはならない。要は、蓋本体4の係止部16と係合する形状を有していれば十分であり、係止部16の形状に応じて、様々な形状を選ぶことができる。勿論、爪ユニットの素材は鋼に限られない。
【0037】
また、上記実施形態では、吊り下げ軸10とナット15で昇降手段を構成する例を示したが、本発明の昇降手段は、このようなものには限定されない。昇降手段は爪ユニットを門形フレームに対して昇降させる機能を有すれば十分であるから、各種の応用変形が可能である。昇降手段は、例えば、油圧ジャッキや空気圧ジャッキであっても良いし、梃子や楔を利用する仕掛けであっても良い。あるいは、電動モータで駆動される機器であっても良い。
【0038】
また、本発明の装置及び方法が対象とする地下構造物用蓋は特定のサイズや形状を有するものには限定されない。弁プロテクターの蓋から、マンホールの蓋まで、各種のサイズの地下構造物用蓋に本発明を適用することができる。また、円板形あるいは角形の地下構造物用蓋に本発明を適用することができる。
【0039】
また、本発明の装置及び方法の対象が都市ガス供給用の管路や弁装置にアクセスする開口の蓋に限られないことは言うまでもない。また、本発明の装置及び方法を使用する場所は、路面には限定されない。つまり、路面以外に設置された地下構造物用蓋の開蓋に本発明の装置及び方法を使用することができることも言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 開蓋工具
2 門形フレーム
3 爪ユニット
4 蓋本体
5 受枠
6 桁部材
7 柱部材
8 ブラケット
9 当接部材
10 吊り下げ軸
11 爪本体
12 ボルト
13 貫通穴
14 雄ねじ
15 ナット
16 係止部
17 爪掛け
18 予備の爪本体
19 路面
20 ヒンジ軸
21 スペーサ枠
22 右桁部材
23 左桁部材
24 ボルト
25 長穴
26 長穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開蓋対象物を跨ぐ門形フレームと、
前記門形フレームに鉛直方向に移動自在に支持されて、前記開蓋対象物に係合する爪ユニットと、
前記爪ユニットを前記門形フレームに対して昇降させる昇降手段を備える
ことを特徴とする開蓋工具。
【請求項2】
前記昇降手段は、前記爪ユニットに固定されたねじ軸と、前記ねじ軸に螺合するナットである
ことを特徴とする請求項1に記載の開蓋工具。
【請求項3】
前記爪ユニットは、前記門形フレームに鉛直方向に移動自在に支持される軸体と、前記開蓋対象物に係合する爪本体からなり、
前記爪本体は前記軸体に軸支されて水平軸回りに揺動する
ことを特徴とする請求項1に記載の開蓋工具。
【請求項4】
受枠に嵌め込まれた蓋本体を、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の開蓋工具を使って前記受枠から取り外す開蓋方法において、
前記門形フレームの基部を前記受枠の上に載置して、前記門形フレームに前記蓋本体を跨がせる載置段階と、
前記爪ユニットを前記蓋本体に係合する係合段階と、
前記昇降手段を操作して、前記爪ユニットを前記門形フレームに対して上昇させる持ち上げ段階を有する
ことを特徴とする開蓋方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−137292(P2011−137292A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296205(P2009−296205)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000196680)西部瓦斯株式会社 (47)
【Fターム(参考)】