説明

開閉体の気密構造

【課題】開閉体と接触する閉塞片や、別部材の閉鎖体等を重ね巻きすることなく、簡素な構造で気密性を確保できる開閉体の気密構造を提供する。
【解決手段】開口部11の一辺部に沿って固定され巻取軸15を中心に正逆回転される巻取部材17を収容する収納ケース19と、巻取部材17に巻装され巻取部材17が正逆回転することにより収納ケース19のスリット状の出入口部21から出入りし両側縁部23が一対のガイドレール27にガイドされて開口部11を開閉する開閉体29と、開閉体29に固定される係止部材31と、開口部11、一対のガイドレール27、又は収納ケース19のいずれか一つに固定され開閉体29の閉止時に係止部材31を支持して開閉体29の荷重を受けるキャッチ部材33と、巻取部材17に開閉体29を連結し開閉体29の閉止した後の巻取部材17の順回転にて出入口部21の縁部35に密接する可撓シート部材37と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物や構造物の開口部を開閉するシャッターカーテン等の開閉体の気密構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば開閉体であるシャッターカーテンを巻取り・繰出すことにより建造物等の開口部を開閉するシャッター装置では、シャッターカーテンの開閉先端部や、ガイドレールに挿入されるシャッターカーテン両側縁部の気密確保は比較的容易であるが、シャッターカーテンの出入りする収納ケースの開口部においては、収納ケースの内部を介してシャッターカーテンの表裏面側の空間が通じることから気密の確保が難しくなる。このような課題を解決しようとしたものとして例えば特許文献1のシャッター装置では、まぐさ体の挿通口を閉塞する挿通口閉塞体を設けている。挿通口閉塞体は一対のまぐさ部材の相対する上端水平板部に沿ってそれぞれ取り付けられる弾性変形可能な一対の閉塞片にて形成され、この閉塞片がシャッターカーテンに接触することでまぐさ体の挿通口を気密に閉塞する。
【0003】
また、特許文献2の開閉装置は、開閉体における開放方向側の部位に、一端側を開閉体に幅方向へわたって止着するとともに他端側を自由端部とした可撓性シート状の閉鎖体を備え、開閉体が略全閉される際に、前記自由端部を不動部位と一体的な受部に当接させることで、閉鎖体の中間部を弛ませるとともに、その弛んだ状態の中間部を、不動部位と一体的な接触部に開閉体幅方向へわたって接触させて、開閉体と接触部との間で開閉体前後へ連通する隙間を塞ぐようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−182159号公報
【特許文献2】特開2006−46026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のシャッター装置は、閉塞片がシャッターカーテンと常に接触状態となるため、摩耗、損傷、汚れなど、経時劣化が生じる。また、閉塞片だけでなく、シャッターカーテン側も摩耗、損傷する。一方、特許文献2の開閉装置は、常時接触とはならないが、別部材である可撓性シート状の閉鎖体を開閉体に重ねて設けることから構造が複雑となる点、可撓性シート状の閉鎖体を開閉体と共に巻き取ることから大径となる点、自由端部を受部に当接させる際に騒音の生じる点や経時劣化による可撓性の低下等で不利があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、開閉体と接触する閉塞片や、別部材の閉鎖体等を重ね巻きすることなく、簡素な構造で気密性を確保できる開閉体の気密構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の開閉体の気密構造は、方形状の開口部11の一辺部13に沿って固定され該一辺部13に沿う巻取軸15を中心に正逆回転される巻取部材17を収容する収納ケース19と、
前記巻取部材17に巻装され該巻取部材17が正逆回転することにより前記収納ケース19に形成される前記一辺部13に沿う方向に長いスリット状の出入口部21から出入りし両側縁部23が前記開口部11の両側部25に設けられた一対のガイドレール27にガイドされて前記開口部11を開閉する開閉体29と、
前記開閉体29に固定される係止部材31と、
前記開口部11、前記一対のガイドレール27、又は前記収納ケース19のいずれか一つに固定され前記開閉体29の閉止と同時に前記係止部材31を支持して該開閉体29の荷重を受け繰り出しを規制するキャッチ部材33と、
前記巻取部材17と前記開閉体29との間に介在して前記巻取部材17に前記開閉体29を連結し前記開閉体29の閉止した後の前記巻取部材17の閉止方向の順回転にて弛み前記出入口部21の縁部35に前記開閉体29の幅方向に渡って密接する可撓シート部材37と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
この開閉体の気密構造では、開閉体29が繰り出され、開閉体29の開閉端に設けられる座板等が着地すると、同時に係止部材31がキャッチ部材33に支持されて、開閉体29の荷重がキャッチ部材33に受けられる。この状態でさらに巻取部材17が順回転されると、係止部材31よりも基端側で巻取部材17に巻かれていた可撓シート部材37が繰り出されて弛部43を作る。出入口部21の直上で作られた弛部43は、出入口部21の縁部35に密接する。これにより、収納ケース19の内部を介して通じようとする開閉体29の表裏面側の空間が、弛部43と縁部35の接触部によって遮断されることになる。
【0009】
請求項2記載の開閉体の気密構造は、請求項1記載の開閉体29の気密構造であって、
前記収納ケース19に設けられ前記巻取部材17を回転駆動する巻取装置41と、
前記巻取装置41に備えられ閉止時における前記開閉体29の停止を行うとともに、停止後にさらに前記巻取部材17を順回転することにより前記可撓シート部材37に弛部43を作る制御部45と、
を具備することを特徴とする。
【0010】
この開閉体の気密構造では、開閉体29が開口部11の閉止位置に達すると、巻取装置41が制御部45によって停止される。この際、開閉体29は、係止部材31がキャッチ部材33に支持され、荷重がキャッチ部材33に受けられた状態となっている。その後、制御部45が、弛みを作る分だけ巻取装置41を順回転方向に駆動することで、可撓シート部材37に弛部43が作られる。
【0011】
請求項3記載の開閉体の気密構造は、請求項2記載の開閉体29の気密構造であって、
前記制御部45が制御する前記順回転の回転量は、前記可撓シート部材37の巻装時半径方向内側となる面を、前記縁部35に接触させる回転量であることを特徴とする。
【0012】
この開閉体の気密構造では、予め定めた回転量で巻取部材17が順回転に回転されることで、可撓シート部材37の巻装時半径方向内側となる面が、出入口部21の縁部35に密接する。なお、出入口部21の縁部35は、出入口部21から導出する開閉体29を挟んで2つ存在するが、この場合の縁部35は、可撓シート部材37の巻装時半径方向内側となる面が対面する側の縁部35となる。
【0013】
請求項4記載の開閉体の気密構造は、請求項1又は2又は3に記載の開閉体29の気密構造であって、
前記係止部材31は、前記開閉体29の幅方向に延在して両端部47が前記ガイドレール27に挿入され、
前記キャッチ部材33は、前記一対のガイドレール27のそれぞれに固定されて前記両端部47を支持することを特徴とする。
【0014】
この開閉体の気密構造では、開閉体29がガイドレール27にガイドされて閉止位置まで移動されると、開閉体29に設けられ、ガイドレール27に進入した係止部材31がガイドレール27内のキャッチ部材33に支持され、開閉体29がガイドレール27内のみに設けられる支持構造で支持状態となる。
【0015】
請求項5記載の開閉体の気密構造は、請求項1又は2又は3に記載の開閉体29の気密構造であって、
前記キャッチ部材33が、前記収納ケース19に固定されることを特徴とする。
【0016】
この開閉体の気密構造では、例えばキャッチ部材33が、収納ケース19の内部に固定され、出入口部21から繰り出される直前の係止部材31が、内部のキャッチ部材33に支持される。係止部材31が支持された開閉体29は、巻取部材17が順回転されると、可撓シート部材37が繰り出されて弛部43を作り、この出入口部21の直上で縁部35に密接する。
【0017】
請求項6記載の開閉体の気密構造は、方形状の開口部11の一辺部13に沿って固定され該一辺部13に沿う巻取軸15を中心に正逆回転される巻取部材17を収容する収納ケース19と、
前記巻取部材17に巻装され該巻取部材17が正逆回転することにより前記収納ケース19に形成される前記一辺部13に沿う方向に長いスリット状の出入口部21から出入りし両側縁部23が前記開口部11の両側部25に設けられた一対のガイドレール27にガイドされて前記開口部11を開閉する開閉体29と、
前記巻取部材17と前記開閉体29との間に介在して前記巻取部材17に前記開閉体29を連結し前記開閉体29の閉止した後の前記巻取部材17の閉止方向の順回転にて前記出入口部21の縁部35に前記開閉体29の幅方向に渡って密接する可撓シート部材37と、
を具備することを特徴とする。
【0018】
この開閉体の気密構造では、開閉体29が繰り出され、開閉体29の開閉端に設けられる座板等が着地した後、巻取部材17がさらに順回転されると、巻取部材17に巻かれていた可撓シート部材37が一旦弛んだ後、巻取部材17の順回転によって再び引っ張られ、出入口部21の縁部35に密接する。これにより、収納ケース19の内部を介して通じようとする開閉体29の表裏面側の空間が、可撓シート部材37と縁部35の接触部によって遮断されることになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る請求項1記載の開閉体の気密構造によれば、開閉体が繰り出され係止部材がキャッチ部材に支持されて、開閉体の荷重がキャッチ部材に受けられ、この状態からさらに巻取部材が順回転されると、係止部材よりも基端側で巻取部材に巻かれていた可撓シート部材が繰り出されて弛部を作り、この弛部が出入口部の縁部に密接することとなり、これにより、収納ケースの内部を介して通じようとする開閉体の表裏面側の空間が、弛部と縁部の接触によって遮断することが可能となる。このことから、従来の開閉体と接触する閉塞片や、別部材の閉鎖体等を重ね巻きするような構成が不要となり、簡素な構造で気密性を確保することができる。
【0020】
請求項2記載の開閉体の気密構造によれば、開閉体が閉止した後、さらに巻取部材を順回転することで、可撓シート部材に、気密性確保に有効となる弛部を作ることができる。
【0021】
請求項3記載の開閉体の気密構造によれば、制御部による順回転の回転量によって、可撓シート部材に張力を付与して出入口部の縁部に密接させることができる。
【0022】
請求項4記載の開閉体の気密構造によれば、係止部材とキャッチ部材をガイドレール内に配置でき、これら部材の専用スペースを装置外に別途確保する必要がなく、装置全体のコンパクト化を実現できる。
【0023】
請求項5記載の開閉体の気密構造によれば、キャッチ部材の設置スペースが確保し易くなり、キャッチ部材の取り付けを容易にできる。
【0024】
請求項6記載の開閉体の気密構造によれば、開閉体と接触する閉塞片や、別部材の閉鎖体等を重ね巻きすることなく、簡素な構造で気密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る開閉体の気密構造を備えた開閉装置の斜視図である。
【図2】(a)は図1に示した開閉装置の正面図、(b)はそのA−A矢視図である。
【図3】係止部材の支持前後から弛部が接触するまでを(a)(b)(c)で表した動作説明図である。
【図4】係止部材を大径パイプで形成した他の実施の形態の側面図である。
【図5】可撓シート部材の巻装時半径方向内側となる面を縁部に接触させる実施の形態を(a)(b)(c)で表した動作説明図である。
【図6】(a)は係止部材が収納ケースに設けられる実施の形態の正面図、(b)はそのB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る開閉体の気密構造を備えた開閉装置の斜視図である。
本発明に係る開閉体の気密構造は、例えばシャッターカーテン等の開閉体29を操出し・巻取ることにより開口部11を開閉するシャッター装置等の開閉装置39に好適に用いることができる。なお、開閉体29の閉鎖方向は、通常の下降で閉鎖のみではなく、上昇で閉鎖であってもよい。また、開閉体29の開閉方向は、通常の昇降(上下方向)の他、左右方向であってもよい。また、開閉体29の姿勢は、鉛直面に沿う垂直姿勢の他、水平姿勢などであってもよい。さらに、開閉体29は、通常のスラットカーテン、シートカーテン、パネルカーテン、或いは引戸のような構造などであってもよい。
【0027】
本実施の形態では、開閉体29がシートカーテンであって上方からの下降が閉鎖方向である場合を例に説明する。建造物や構造物に形成される方形状の開口部11の上辺部である一辺部13には、収納ケース19が固定されている。収納ケース19は、箱状に形成されて気密性を有する。開閉体29の閉鎖方向先端(図1の下端)には袋状の下端シート51が連結され、下端シート51は開閉体29の幅方向に渡って延在し、内部に不図示の重錘が取り付けられている。
【0028】
図2(a)は図1に示した開閉装置の正面図、(b)はそのA−A矢視図である。
収納ケース19には一辺部13(図1参照)に沿う方向に延在する巻取軸15を中心に正逆回転される巻取部材17が収容されている。巻取部材17は、収納ケース19内に設けられる巻取装置41によって回転駆動される。一辺部13を挟む開口部11の両側部25には一対のガイドレール27が固定される。開閉体29は、両側縁部23が一対のガイドレール27にガイドされる。開閉体29は、巻取部材17に巻装され、この巻取部材17が正逆回転することにより、収納ケース19に形成される一辺部13に沿う方向に長いスリット状の出入口部21から出入りして、開口部11を開閉する。
【0029】
開閉体29は、基材がシート材53からなる。シート材53は、ビニル、シリカクロスなど、可撓性のあるシート状部材を素材とする。シート材53の片面にはパイプ55が上下方向で略等間隔に配設されている。すなわち、一枚もののシート材53の一方の面に、袋状シート部が溶着され、その袋状シート部の全幅方向にパイプ55が挿入されている。挿入されたパイプ55は、両端がガイドレール27内で上下方向に移動自在にガイドされる。
【0030】
開閉体29には係止部材31が固定される。係止部材31は、開閉体29の幅方向に延在して両端部47がガイドレール27に挿入される。また、開口部11、一対のガイドレール27、又は収納ケース19のいずれか一つにはキャッチ部材33が固定され、キャッチ部材33は開閉体29の閉止と同時に係止部材31を支持して該開閉体29の荷重を受ける。本実施の形態では、キャッチ部材33がガイドレール27に設けられている。
【0031】
このキャッチ部材33は、一対のガイドレール27のそれぞれに固定されて係止部材31の両端部47を支持する。開閉体29がガイドレール27にガイドされて閉止位置まで移動されると、ガイドレール27に進入した係止部材31がガイドレール27内のキャッチ部材33に支持され、開閉体29がガイドレール27内のみに設けられる支持構造で支持状態となる。すなわち、シート材53およびパイプ55はキャッチ部材33に当接や干渉をせずにガイドレール27を上下方向に移動できるように、本実施の形態においては、キャッチ部材33をシート材53およびパイプ55の幅方向両端よりも開閉体29の幅方向外側に配置している。これにより、係止部材31とキャッチ部材33をガイドレール27内に配置でき、これら部材の専用スペースを装置外に別途確保する必要がなく、装置全体のコンパクト化を実現できるようになっている。なお、シート材53およびパイプ55に干渉しないか、あるいは若干干渉してもガイドレール27を上下方向に移動するのに支障がなければ内側に配置してもよい。
【0032】
巻取部材17と開閉体29との間には、両者の間に介在して巻取部材17に開閉体29を連結する可撓シート部材37が設けられている。可撓シート部材37は、開閉体29の閉止した後の巻取部材17の閉止方向の順回転にて弛み、出入口部21の縁部35に開閉体29の幅方向に渡って密接する。本実施の形態では、開閉体29のシート材53と、可撓シート部材37とが同一部材で構成されるが、開閉体29が例えばスラットカーテンの場合には、スラットカーテンが可撓シート部材37を介して巻取部材17に連結されることとなる。
【0033】
可撓シート部材37は、基端が吊元57となって巻取部材17に固定される。開閉体29は、下端シート51が着地すると同時に、係止部材31がキャッチ部材33に支持される。この際、図2(b)に示すように、開閉体29は、巻取部材17から接線方向に垂下し、その基端が吊元57となる。したがって、この状態から巻取部材17が更に順回転(図2(b)中の時計回りに回転)されることで、可撓シート部材37に弛部43(図3参照)が形成されることになる。出入口部21の縁部35は、開閉体29を挟んで所定の間隙を有して配置される。つまり、開閉移動時の開閉体29は、出入口部21に接触しないようになっている。
【0034】
本実施の形態において、係止部材31は、パイプ55と同径のパイプ部材で形成される。係止部材31は、幅方向に連続する一本ものでなくとも良く、開閉体29の両側縁部23から両端部47が突出するものであれば良い。本実施の形態では、キャッチ部材33は、ガイドレール27内に設けられるが、後述するように、キャッチ部材33は収納ケース19内に設けられても良い。
【0035】
収納ケース19内には電動モータや減速機構などを具備する巻取装置41が設けられ、巻取装置41は巻取部材17を回転駆動する。巻取装置41には制御部45が備えられ、制御部45は全閉時である閉止時における開閉体29の停止を行うとともに、停止後にさらに巻取部材17を順回転することにより、または全閉時になっても開閉体29の停止を直ちには行わずにさらに巻取部材17を順回転することにより、可撓シート部材37に弛部43を作った後に開閉体29の停止を行う。
【0036】
このように、開閉装置39では、開閉体29が開口部11の閉止位置に達すると、巻取装置41が制御部45によって停止される。この際、開閉体29は、係止部材31がキャッチ部材33に支持され、荷重がキャッチ部材33に受けられた状態となっている。その後、制御部45が、弛みを作る分だけ巻取装置41を順回転方向に駆動することで、可撓シート部材37に弛部43が作られる。開閉体が閉止した後、さらに巻取装置41を順回転することで、可撓シート部材37に、気密性確保に有効となる弛部43を作ることができるようになっている。
【0037】
次に、上記構成を有する開閉体29の気密構造の作用を説明する。
図3は係止部材の支持前後から弛部が接触するまでを(a)(b)(c)で表した動作説明図である。
開閉装置39は閉鎖途中、図3(a)に示すように、巻取部材17が巻取装置41(図2参照)によって駆動され、開閉体29が繰り出され、開閉体29の開閉端に設けられる座板等(下端シート51)が着地する直前になると、係止部材31がキャッチ部材33に接近する。
【0038】
下端シート51が着地して、開閉体29が開口部11を閉鎖すると同時に、図3(b)に示すように、開閉体29に設けられた係止部材31がキャッチ部材33に支持され、開閉体29の荷重がキャッチ部材33に受けることとなって開口部11での繰り出しが規制される。図3(c)に示すように、この状態でさらに巻取部材17が巻取装置41によって順回転されると、係止部材31よりも基端側で巻取部材17に巻かれていた可撓シート部材37が繰り出されて弛部43を作る。
【0039】
出入口部21の直上で作られた弛部43は、出入口部21の縁部35に密接する。これにより、収納ケース19の内部を介して通じようとする開閉体29の表裏面側の空間59,61が、弛部43と縁部35の接触部によって遮断されることになる。特に、この状態で空間59,61に気圧差があれば、可撓シート部材37が出入口部21のいずれか一方の縁部35に密着状態となって、気密性が得られることになる。また、開閉体29の開閉動作中である昇降移動中には、開閉体29と縁部35とが触れることがなく、摩擦などを生じず、摩耗、損傷、汚れなどが無い。
【0040】
したがって、本実施の形態に係る開閉体29の気密構造によれば、開閉体29と接触する閉塞片や、別部材の閉鎖体等を重ね巻きすることなく、簡素な構造で気密性を確保することができる。別構造のシート材を設けるなどの構成ではなく、開口部11を塞ぐ開閉体29に連続して可撓シート部材37が構成されるものであり、構成は簡素になる。可撓シート部材37は、開閉体29と経年劣化がほぼ同じになることで、交換やメンテが行いやすい。また、低温による硬化などでの気密性の低下などの不具合も起きにくい。
【0041】
さらに、出入口部21の直上に形成される弛部43は、左右いずれの縁部35にも密接可能となる。このことから、例えば開閉体29を挟むいずれの空間59,61が負圧であっても、負圧側に弛部43が引っ張られ、弛部43が負圧側の縁部35に密接するこことなる。これにより、空間59,61のいずれが負圧になるか分からない場合であっても、常に弛部43を左右一方の縁部35に密接させて、気密性を確保することができる。
【0042】
以下に、発明に係る開閉体の気密構造の他の実施の形態を説明する。
図4は係止部材を大径パイプで形成した他の実施の形態の側面図である。
この第2の実施の形態において、係止部材31Aは、パイプ55よりも大径で形成されている。別の考え方をすれば、パイプ55の最上部のものが大径であると言える。ガイドレール27の上端にはY字状に開口する呑み口部63が形成され、呑み口部63はパイプ55を受け入れる一方、大径の係止部材31Aは入り口で進入を阻止して係止状態に保持する。つまり、係止部材31Aのみが引っ掛かり、この位置が開閉体29の全閉位置となる。この状態で、上記実施の形態と同様に、弛部43が形成され、弛部43が出入口部21の縁部35に密接して気密性が確保される。
【0043】
この第2の実施の形態では、パイプ55のガイドレール27への進入ガイドとなる呑み口部63が上記のキャッチ部材33の兼用部材となる。したがって、部品点数を少なくすることができる。
なお、この実施の形態の変形例として、呑み口部63を、ガイドレール27の上端のみならず、出入口部21の長手方向に渡って、すなわち、開口部11の幅方向に全通して形成することもできる。この変形例では、呑み口部63の斜面を縁部35とし、この縁部35に係止部材31Aが密接することとなる。この変形例によれば、呑み口部63に係止部材31Aを支持すると同時に、弛部43を作らずに気密性を確保できる。
【0044】
次に、第3の実施の形態を説明する。
図5は可撓シート部材の巻装時半径方向内側となる面を縁部に接触させる実施の形態を(a)(b)(c)で表した動作説明図である。
この実施の形態では、制御部45(図2参照)が制御する順回転の回転量が、可撓シート部材37の巻装時半径方向内側となる面37aを縁部35に接触させる回転量となる。
【0045】
図5(a)に示すように、係止部材31がキャッチ部材33に接近し、図5(b)に示すように、係止部材31がキャッチ部材33に支持されると同時に開閉体29の閉鎖が完了すると、図5(c)に示すように、予め定めた回転量で巻取部材17が順回転に回転される。すると、可撓シート部材37が固定される吊元部分がさらに回転移動して、可撓シート部材37の巻装時半径方向内側となる面37aが、出入口部21の縁部35に密接する。なお、出入口部21の縁部35は、出入口部21から導出する開閉体29を挟んで2つ存在するが、この場合の縁部35は、可撓シート部材37の巻装時半径方向内側となる面37aが対面する側の縁部35(図5の左側の縁部35)となる。
【0046】
この第3の実施の形態によれば、可撓シート部材37に張力を付与して出入口部21の縁部35に密接させることができる。したがって、気圧差(圧力差)や風圧があっても気密性の確保が可能となる。
【0047】
ここで第3の実施の形態の変形例を説明する。
第3の実施の形態では、係止部材31とキャッチ部材33を備えたが、第3の実施の形態の基本構成によれば、これら係止部材31及びキャッチ部材33を省略することもできる。すなわち、係止部材31及びキャッチ部材33が省略された構成において、開閉体29が繰り出され、開閉体29の開閉端に設けられる座板等(下端シート51)が着地した後、巻取部材17がさらに順回転されると、巻取部材17に巻かれていた可撓シート部材37が一旦弛んだ後、巻取部材17の順回転によって再び引っ張られる。その結果、可撓シート部材37は、出入口部21の縁部35に密接することとなる。
【0048】
これにより、収納ケース19の内部を介して通じようとする開閉体29の表裏面側の空間59,61が、可撓シート部材37と縁部35の接触部によって遮断されることになる。この変形例によっても、開閉体29と接触する閉塞片や、別部材の閉鎖体等を重ね巻きすることなく、簡素な構造で気密性を確保することができる。
【0049】
次に、第4の実施の形態を説明する。
図6(a)は係止部材が収納ケースに設けられる実施の形態の正面図、(b)はそのB−B断面図である。
この実施の形態では、キャッチ部材33が、収納ケース19の内部に固定される。キャッチ部材33が、収納ケース19の内部に固定されることで、出入口部21から繰り出される直前の係止部材31が、内部のキャッチ部材33に支持される。係止部材31が支持された開閉体29は、巻取部材17が順回転されると、可撓シート部材37が繰り出されて弛部43(図3参照)を作り、この出入口部21の直上で縁部35に密接する。
【0050】
この実施の形態によれば、キャッチ部材33の設置スペースが幅の狭いガイドレール27内ではなく収納ケース19内となって確保し易くなり、キャッチ部材33の取り付けを容易にできる。また、開閉体29には、両側縁部23に抜止部材(ファスナー形状)65が設けられ、この抜止部材65がガイドレール27に形成されるスリットに係合するものもある。この場合、ガイドレール27のスリットは、ファスナーと係合するものであることから極めて幅狭のもので構成される。すなわち、このようなガイドレール27に、係止部材31を挿入したり、キャッチ部材33を設けたりすることは困難となる。本実施の形態のように、収納ケース19内にキャッチ部材33を設けることとすれば、このようなファスナー係合方式の開閉体29に対しても、本発明を適用することができる。
【0051】
この他、上記の実施の形態ではシート材53に設けられるパイプ55が片面に設けられる構成としたが、本発明に係る気密構造のパイプ固定構造は、上記構造には限定されず、例えば表裏二枚のシート材53の間にパイプ55が挟持される構造等であってもよい。
【0052】
また、開閉体29は、縦幅30cm程度の可撓シートと、その上下両端に配置されるフレーム枠とが交互となって構成されるシャッターカーテン等であってもよい。
【0053】
さらに、上述した各実施の形態では、シート面の幅方向の両端に突出するように係止部材31を設ける例として述べたが、シート面に貫通方向で、シートの中途部分に係止部材31を突設し、出入口部21を構成するまぐさをキャッチ部材33として、このキャッチ部材33に係止部材31を当てて支持し、その後に、可撓シート部材37を弛ませる構成としてもよい。
【0054】
また、開閉体29は、係止部材31の位置よりも上縁の吊元側の部分を可撓シート部材37とすれば良く、開口部11を塞ぐ開閉体29の本体部分については、スラットやパネル等のその他の異素材等を組合せた複合構造として構成してもよく、上記同様に収納ケース19での気密性を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
11…開口部
13…一辺部
15…巻取軸
17…巻取部材
19…収納ケース
21…出入口部
23…両側縁部
25…両側部
27…ガイドレール
29…開閉体
31…係止部材
33…キャッチ部材
35…縁部
37…可撓シート部材
39…開閉装置
41…巻取装置
43…弛部
45…制御部
47…両端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状の開口部の一辺部に沿って固定され該一辺部に沿う巻取軸を中心に正逆回転される巻取部材を収容する収納ケースと、
前記巻取部材に巻装され該巻取部材が正逆回転することにより前記収納ケースに形成される前記一辺部に沿う方向に長いスリット状の出入口部から出入りし両側縁部が前記開口部の両側部に設けられた一対のガイドレールにガイドされて前記開口部を開閉する開閉体と、
前記開閉体に固定される係止部材と、
前記開口部、前記一対のガイドレール、又は前記収納ケースのいずれか一つに固定され前記開閉体の閉止と同時に前記係止部材を支持して該開閉体の荷重を受け繰り出しを規制するキャッチ部材と、
前記巻取部材と前記開閉体との間に介在して前記巻取部材に前記開閉体を連結し前記開閉体の閉止した後の前記巻取部材の閉止方向の順回転にて弛み前記出入口部の縁部に前記開閉体の幅方向に渡って密接する可撓シート部材と、
を具備することを特徴とする開閉体の気密構造。
【請求項2】
請求項1記載の開閉体の気密構造であって、
前記収納ケースに設けられ前記巻取部材を回転駆動する巻取装置と、
前記巻取装置に備えられ閉止時における前記開閉体の停止を行うとともに、停止後にさらに前記巻取部材を順回転することにより前記可撓シート部材に弛部を作る制御部と、
を具備することを特徴とする開閉体の気密構造。
【請求項3】
請求項2記載の開閉体の気密構造であって、
前記制御部が制御する前記順回転の回転量は、前記可撓シート部材の巻装時半径方向内側となる面を、前記縁部に接触させる回転量であることを特徴とする。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の開閉体の気密構造であって、
前記係止部材は、前記開閉体の幅方向に延在して両端部が前記ガイドレールに挿入され、
前記キャッチ部材は、前記一対のガイドレールのそれぞれに固定されて前記両端部を支持することを特徴とする開閉体の気密構造。
【請求項5】
請求項1又は2又は3に記載の開閉体の気密構造であって、
前記キャッチ部材が、前記収納ケースに固定されることを特徴とする開閉体の気密構造。
【請求項6】
方形状の開口部の一辺部に沿って固定され該一辺部に沿う巻取軸を中心に正逆回転される巻取部材を収容する収納ケースと、
前記巻取部材に巻装され該巻取部材が正逆回転することにより前記収納ケースに形成される前記一辺部に沿う方向に長いスリット状の出入口部から出入りし両側縁部が前記開口部の両側部に設けられた一対のガイドレールにガイドされて前記開口部を開閉する開閉体と、
前記巻取部材と前記開閉体との間に介在して前記巻取部材に前記開閉体を連結し前記開閉体の閉止した後の前記巻取部材の閉止方向の順回転にて前記出入口部の縁部に前記開閉体の幅方向に渡って密接する可撓シート部材と、
を具備することを特徴とする開閉体の気密構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87494(P2013−87494A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228982(P2011−228982)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)