開閉可能な身体拘束具
【課題】暴漢者等から身体の危険を回避するとともに、手足を確実に拘束することができる開閉可能な身体拘束具を提供する。
【解決手段】操作杆10の一端に設けられた拘束部2と、前記操作杆10に設けられたロック部3とからなり、前記拘束部2は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アーム11と、前記一対の拘束アーム11の間に配設された進退自在なラックバー12と、ラックバー12を挿通する支持部材13からなり、前記拘束アーム11に扇状に形成した歯11cとラックバー12の両側に平行に形成した歯12aとを噛合させてラックバー12の進退によって一対の拘束アーム11を開閉させるように形成されている。前記ラックバー12に接合したスライド部材17が操作杆10の後端部方向にスライドして後退したときに、前記一対の拘束アーム11が閉じるようにしたことを特徴とする。
【解決手段】操作杆10の一端に設けられた拘束部2と、前記操作杆10に設けられたロック部3とからなり、前記拘束部2は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アーム11と、前記一対の拘束アーム11の間に配設された進退自在なラックバー12と、ラックバー12を挿通する支持部材13からなり、前記拘束アーム11に扇状に形成した歯11cとラックバー12の両側に平行に形成した歯12aとを噛合させてラックバー12の進退によって一対の拘束アーム11を開閉させるように形成されている。前記ラックバー12に接合したスライド部材17が操作杆10の後端部方向にスライドして後退したときに、前記一対の拘束アーム11が閉じるようにしたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、犯罪者、暴漢者等からの生命、身体に対する急迫した攻撃から身体を保護するとともに、犯罪者等の足、手等を拘束して身体の自由を奪い、抵抗や逃走を防ぐことができる開閉可能な身体拘束具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刃物を所持している暴漢者から身を守りながら取り押さえる防犯具又は捕物具として、刺股が使用されており、また、警察官が犯罪者を逮捕する際には、手錠を用いて捕縛することが行われている。刺股は、江戸時代から使用されており、長柄の先端に湾曲した二股状の押し当て金具を取り付けたもので、二股の部分で激しく抵抗する暴漢者等を壁や床に押し付けて取り押さえる防犯具である。
【0003】
このような刺股として、例えば、特開2000−230800号公報記載の「刺股型の捕物道具」があり、特開2003−254697号公報記載の「刺股」がある。前記公報記載の「刺股型の捕物道具」は、いずれも二股状押し当て部の先端部を近接させるように可動させて閉塞状態とし、身体の自由を奪うように構成されている。
【0004】
特開2000−230800号公報記載の「刺股型の捕物道具」は、左右に分割された二股状押し当て部の中心部に摺動体を設けてなり、押し当て部が開放状態のときには摺動体が突出しており、暴漢者等の身体によって摺動体が押圧されると押し当て部が閉塞状態となって暴漢者等が自由に通れないようにしたものである。また、特開2003−254697号公報記載の「刺股」は、支持部材に端部を固定された左右の押し当て部の手前側途中部に空気圧シリンダーが装着されており、操作レバーを手動で操作することにより空気圧シリンダーが作動して左右の押し当て部が閉塞状態となるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−230800号公報
【特許文献2】特開2003−254697号公報(図17参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報記載の「刺股型の捕物道具」及び「刺股」は、いずれも暴漢者等の身体の周囲を取り囲むように閉塞して自由を奪うものであるから、押し当て部は大型となり操作が困難である。また、激しく抵抗する暴漢者等の身体は一定の角度には保たれてはいないから、長柄を両手で持って対応しても周囲の障害物や衣服等が邪魔になり、押し当て部で身体の周囲を取り囲むように閉塞することは困難である。
【0007】
また、刺股は、先端に二股状の大きな押し当て部が長柄に形成されているから、パトカーに積んでおくことができず、持ち運びや保管が困難である。また、刺股は、長柄を有しているから迅速な対応には不向きである。さらに、刺股は身体の周囲を拘束するものであり、行動の自由を奪ったとしても手足は自由に動かすことができる。したがって、暴漢者等が刃物等の凶器を所持している場合には、むやみに近付いて取り押さえることはできない。手足の自由を奪って完全に拘束するには、第三者の力を借りなければならないという問題がある。
【0008】
また、手錠は手首を拘束して両腕の自由を奪う手段として使用されることがあるが、両手に嵌めるまでは暴漢者等から危害を加えられるおそれがある。手錠を使用する場合には、暴漢者等の身体を拘束し、行動の自由を奪っておくことが必要である。
【0009】
上述の通り、刺股や手錠にはそれぞれ一長一短があって、現場で即座に対応できないという問題がある。この発明は、上述のような問題を解消するものであって、暴漢者等から身体の危険を回避しつつ、手足の自由を拘束することによって容易に取り押さえることができる開閉可能な身体拘束具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上記目的を達成するために次のような構成とした。この発明に係る開閉可能な身体拘束具は、
操作杆の一端に設けられた拘束部と、前記操作杆に設けられたロック部とからなり、
前記拘束部は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アームと、前記一対の拘束アームの間に配設された進退自在なラックバーと、ラックバーを挿通する支持部材からなり、前記拘束アームに扇状に形成した歯とラックバーの両側に平行に形成した歯とを噛合させてラックバーの進退によって一対の拘束アームを開閉させるように形成されており、
前記ロック部は、前記ラックバーに固着されたスライド部材に形成した鋸歯状突起を有するラック型係合部と、前記鋸歯状突起と係合する係止片を有する係止部とからなり、前記鋸歯状突起と係止片とはスライド部材を操作杆の後端部方向にのみスライドさせるように形成してなり、
前記スライドバーが操作杆の後端部方向にスライドして後退したときに、前記一対の拘束アームが閉じるようにしたことを特徴とする。
前記一対の拘束アームの先端部にはガイドローラを取り付けることが好ましい。また、一対の拘束アームは閉じたとき交差するように形成することができる。前記操作杆には、スライド部材を操作杆の後端部側に付勢するバネを設けるとともに、スライド部材を強制的に操作杆の後端部側に引くことができる操作部を設けることができる。さらに、操作杆には一対の拘束アームの開口状態を保持するように、スライド部材に設けた係止孔と前記係止孔に出没自在に挿入する押下ピンとからなるバネ圧保持部を設けてもよい。前記スライド部材は、操作杆内に設けたバネによって拘束部側に付勢するようにしてもよい。
【0011】
操作杆の一端に拘束部を設けてなり、
前記拘束部は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アームと、前記一対の拘束アームの間に配設された進退自在なラックバーと、ラックバーを挿通する支持部材からなり、前記拘束アームに設けたピニオンとラックバーの先端部両側に形成した歯とを噛合させてラックバーの進退によって一対の拘束アームを開閉させるように形成し、
操作杆には、前記拘束アームの閉じた状態をロックするロック部が設けられており、前記ロック部は、前記ラックバーに固着されたスライド部材に形成した鋸歯状突起を有するラック型係合部と、前記鋸歯状突起と係合する係止片を有する係止部とからなり、前記鋸歯状突起と係止片とはスライド部材を操作杆の後端部方向にのみスライドさせるように形成したことを特徴とする。
前記拘束アームの少なくとも一方のピニオンに戻り止めを配設することができる。また、拘束アームは、歯を形成し支持部材内を進退する歯形成部と操作杆に挿入されるスライド部とに分割し、前記歯形成部とスライド部とを自在継手で連結するとともに、拘束アーム又は支持部材を可撓性部材によって形成した搖動板を介して操作杆に固定した支持材に取り付けて、拘束部と操作杆との角度を変えられるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の開閉可能な身体拘束具は、片手で操作することができ、身の安全を図りながら激しく抵抗する暴漢者等の身体を拘束することができる。また、警棒のように攻撃防御にも使用することができるとともに、嵩張らないからパトカー等に積んでおくこともでき、臨機応変に対応することができる。
【0013】
また、身体を拘束する拘束部は、手錠と同じように、拘束アームを噛み合いによって回動する構造としたので、拘束アームがスムーズに閉じるとともに、一旦閉じるとロック状態を解除するまでは開口することはないから、継続して行動の自由を奪うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1実施形態に係る身体拘束具の一部を断面した平面図である。
【図2】第1実施形態の要部の一部を断面した側面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】第2実施形態の要部を断面した平面図である。
【図5】第3実施形態の要部を断面した平面図である。
【図6】第4実施形態の拘束部を示す断面した平面図である。
【図7】第5実施形態の拘束部を示す断面した平面図である。
【図8】第5実施形態の噛み合いを示す斜視図である。
【図9】同じく第5実施形態の一部を省略した断面側面図である。
【図10】第6実施形態の拘束部を示す平面図である。
【図11】第6実施形態のラックバーの継ぎ手部を示す斜視図である。
【図12】ロック部と操作部を示す第2実施形態の断面図である。
【図13】ロック部と操作部を示す第3実施形態の断面図である。
【図14】ロック部と操作部を示す第3実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明に係る開閉可能な身体拘束具の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る開閉可能な身体拘束具(以下、単に身体拘束具という)の第1実施形態を示す一部を断面した平面図、図2は一部を断面した要部側面図、図3は拘束部の断面図である。
【0016】
図示する身体拘束具1は、拘束部2と、前記拘束部2の拘束アームが閉じたときにロックするロック部3と、拘束部2の拘束アームを開口した状態に保持するバネ圧保持部4から構成されている。前記拘束部2は、管状の操作杆10の一端部に設けられており、ロック部3及びバネ圧保持部4は操作杆10に形成されている。
【0017】
さらに詳述すると、前記拘束部2は、開閉自在な独立した一対の拘束アーム11、11と、前記拘束アーム11,11の間に配設されるラックバー12と、前記拘束アーム11,11を回動自在に軸着するとともに、前記ラックバー12を挿通する支持部材13によって構成されている。前記拘束アーム11、11は、平面形状を略フック状に形成され、内側面に暴漢者の身体、特に手又は足を挟みこんで拘束することができるように湾曲面11a,11aが形成されている。さらに、拘束アーム11、11の内側に折り返した折返部11b、11bの外側面は湾曲しており、歯11c、11cが扇状に形成されている。
【0018】
前記ラックバー12の下端部は、支持部材13を介して操作杆10にスライド自在に挿入されている。ラックバー12の上部の両側面には、前記拘束アームの歯1c、11cと噛合する歯12a,12aを平行に設け、先端に押し当て部12bを設けるとともに、操作杆10内にスライド自在に挿通された下端部には、スライド部材17が連結されている。スライドバー12の下端部には、後述するように、スライド部材17側に付勢する圧縮バネ18が取り付けられている。
【0019】
前記拘束アーム11,11はラックバー12の両側に対向するように対称に配設されており、歯1c、11cと歯12a,12aとが噛合するから、ラックバー12が支持部材13内をスライドして進退すると、後述するように、拘束アーム11,11が支持部材13との回動軸21を中心に回動することになる。
【0020】
さらに、拘束アーム11,11について詳述すると、拘束アーム11,11は、閉じたときに先端部が交差することができるように、中間部に屈曲部11d、11dを有している。前記屈曲部11d、11dを形成することによって、図2に示すように、屈曲部11d、11dより先端部は突き当たることがなく互いに上下に交差する。拘束アーム11,11は、湾曲面11a,11aを有しているとともに、屈曲部11d、11dを形成することによって交差可能に形成したから、閉じたときに湾曲面によって形成される隙間を徐々に小さくすることができ、手足の太さに対応することができる。
【0021】
拘束アーム11,11の先端部には、手足の挿入を容易にするためのガイド部材としてガイドローラ19,19が取り付けられている。前記ガイドローラ19,19は、内側にのみ回転し、外側には回転しない逆止め付きローラであることが好ましい。また、前記ガイドローラ19,19は、挟み込む手足を拘束アーム11,11の内側に案内するものであるから、拘束アーム11,11の先端部において互いに反対向きに取り付けられている。
【0022】
前記ガイドローラ19,19は、省略することが可能であり、また、他の構成のガイド部材とすることができる。例えば、拘束アーム11,11の先端部に外側に開いたガイド板を取り付けたり、先端部を単にテーパー面としてもよい。
【0023】
さらに、支持部材13について説明すると、支持部材13は、2枚の挟持板13a,13aを重ね合わせて前記拘束アーム11,11を摺動自在に挟み込むとともに、中央部に前記ラックバー12を挿通する挿通孔13bを形成してなる。従って、前記挟持板13aと挟持板13aとの間には、拘束アーム11,11の厚さよりも大きい隙間が設けられており、この隙間に拘束アーム11,11の一部が摺動自在に挿入されている。
【0024】
支持部材13に一部が挿入された拘束アーム11,11は、軸ピン21、21によって回動可能に軸着されている。軸ピン21、21は、歯11c、11cが形成された扇状外側面を円弧としたとき円の中心となる位置に設けられている。従って、ラックバー12が進退すると、拘束アーム11,11は軸ピン21,21を中心にして回動する。挟持板13a,13aは、前記挿通孔13bの両側の固定ピン13c、13cによって一体に固定されている。
【0025】
前記ラックバー12の端部には突片12aが形成されており、前記突片12aと支持部材13との間に圧縮コイルバネ18が装着される。前記する圧縮コイルバネ18は、ラックバー12をロック部3及びバネ圧保持部4方向に付勢するように装着されている。
【0026】
従って、拘束部2の拘束アーム11,11が開いているときは、ラックバー12の押し当て部12bが引き出されて圧縮コイルバネ18が圧縮される。反対に、圧縮コイルバネ18が開放されると、圧縮コイルバネ18の付勢力によってラックバー12が後退し、歯12aと歯11cとが噛合することによって、拘束アーム11,11は軸ピン21,21を中心にして回動することにより、拘束アーム11,11は急速にしかもスムーズに閉じられる。
【0027】
尚、上記実施形態において、拘束アーム11,11に屈曲部11d、11dを形成して互いに交差することができるようにしたが、拘束アーム11,11を交差させるためには、屈曲部を形成することなく支持部材13に拘束アーム11,11を取り付ける際に、予め上下に軸着してもよい。拘束アーム11,11を交差するように取り付けた場合には、拘束アーム11,11が閉じられたときに形成される内側の隙間を徐々に小さくすることができる。
【0028】
また、拘束アーム11,11は、交差させることなく単に突合せて当接させてもよいし、近接させる構成としてもよい。また、拘束アーム11,11の形状は、挟み込んだとき内側に隙間を有する形状であればよく、図1に示すように略L字状に形成するほか、後述するように、全体を湾曲させた形状としてもよく、特に限定されるものではない。
【0029】
次に、ロック部3の構成について説明する。ロック部3は、拘束部2における拘束アーム11,11が閉じたときにロックするものであって、図1に示すように、鋸歯状突起23aを有するラック型係合部23と、内面に係止片25aを突設した環状の係止部25によって形成されている。前記ラック型係合部23は、ラックバー12の後端部に固着されたスライド部材17の後部に形成されており、環状の係止部25は、操作杆10の内面においてラック型係合部23に対応して嵌入されている。
【0030】
前記ラック型係合部23の鋸歯状突起23aと係止部25の係止片25aとが係合する。前記係止片25aは、前記圧縮コイルバネ18が圧縮しているときは、前記鋸歯状突起23aのバネ圧保持部4側において係合し、前記圧縮コイルバネ18が開放したときは、前記鋸歯状突起23aのラックバー12側において係合するように構成されている。前記スライド部材17は、操作杆10の内部に配設された支持環26にスライド自在に挿通されており、ラックバー12と一体に進退移動する。
【0031】
ラック型係合部23と管状係止部25の近傍には、ラック型係合部23を係止部25に押し付ける押圧ピン28が設けられている。前記押圧ピン28は、操作杆10の内面側に設けた押圧バネ28aによって、先端部がラック型係合部23を押圧している。
【0032】
次に、バネ圧保持部4について説明する。バネ圧保持部4は、図1に示すように、押下げ部30aと挿入ピン30bを有するストッパー30とスライド部材17の端部に設けた係止孔17aによって構成されている。前記押下げ部30aと挿入ピン30bは、略くの字状に形成されており、操作杆10内に突出している挿入ピン30bが上下動するように軸着されている。スライド部材17が前進して拘束アーム11,11が開口しているときに、前記係止孔17aに挿入ピン30bが挿入されるように構成されている。
【0033】
前記係止孔17aに挿入ピン30bを挿入させるには、鋸歯状突起23aと係止片25aとの係合状態を解除した後、圧縮コイルバネ18を圧縮しながら係止孔17aを挿入ピン30bの位置まで前進させる。係止孔17aに挿入ピン30bが挿入されると、圧縮コイルバネ18が圧縮されてバネ圧が保持されるとともに、拘束アーム11,11の開口状態が保持される。拘束アーム11,11の開口状態を保持した後に、押圧ピン28を押下げて、鋸歯状突起23aと係止片25aを係合させればよい。
【0034】
拘束アーム11,11を閉じるには、開口させるときとは反対に、挿入ピン30bを係止孔17aから引き出すと、圧縮コイルバネ18の付勢力によってラックバー12及びスライド部材17は一気に後端部方向にスライドして拘束アーム11,11を閉じることになる。拘束アーム11,11が閉じられているときは、前記係止片25aと鋸歯状突起23aとは鋸歯状に片側のみ傾斜面を有しているから、押圧ピン28によって鋸歯状突起23aと係止片25aとの係合状態がロックされ、拘束部2の方向へスライドするのは阻止される。
【0035】
拘束アーム11,11の閉じた状態がロックされると、手錠のように拘束して暴漢者の手又は足の自由を奪うことができる。このとき、挿入ピン30bは、係止孔17aから引き出されている。一方、押圧ピン28を引き出して、鋸歯状突起23aと係止片25aとの係合状態を解除すると、スライド部材17の拘束部2方向へのスライドが可能になる。そこで、鋸歯状突起23aと係止片25aとの係合状態を解除しながら拘束アーム11,11を開けばよい。
【0036】
前記スライド部材17は棒状部材、板状部材のいずれであってもよい。また前記スライド部材17を湾曲した板バネによって構成した場合には、湾曲した外面にラック型係合部23を設けることによって、ラック型係合部23を係止部25側に押し付けるようにすることができ、押圧ピン28を省略することができる。このように、スライド部材17を板バネによって構成した場合には、鋸歯状突起23aと係止片25aの係合状態を解除することができるように、前記押圧ピン28を実施形態とは反対側に設ければよい。
【0037】
図4に示す第2実施形態について説明する。図4に示す実施形態は、前記実施形態が圧縮コイルバネ18を使用したのに対して引張バネを使用した点において異なる。従って、同一の構成については同一符号を付してその説明は省略する。図4(a)に示す実施形態では、操作杆10の後端面に嵌合するキャップ31の内側に渦巻バネ33が配設されており、前記渦巻バネ33の先端がスライド部材17に取り付けられている。従って、前記挿入ピン30bが係止孔17aから引き出されているときは、スライド部材17とラックバー12はキャップ31側に付勢されて拘束アーム11,11は閉じられることになる。
【0038】
また、図4(b)に示す実施形態では、前記渦巻バネ33に代えて引張コイルバネ35を使用している。引張コイルバネ35は一端をキャップ31aに取り付け、他端をスライド部材17に取り付けられている。図1の実施形態と図4の実施形態との違いは、圧縮コイルバネと引張バネの違いであって、他の構成において異なるところはない。
【0039】
次に、この発明に係る開閉可能な身体拘束具の第3実施形態を図5に基づいて説明する。図示する身体拘束具1Aは、拘束部2と、前記拘束部2をロック状態にするロック部3と、拘束部2を手動で閉じることができる操作部5から構成されている。前記拘束部2は、管状の操作杆10の一端部に設けられており、ロック部3及び操作部5は操作杆10に形成されている。拘束部2とロック部3の構成は上記実施形態と同様に構成されている。従って、同一構成については同一符号を付してその説明は省略する。
【0040】
この実施形態では、操作杆10の内部に支持環36が設けられており。この支持環36とラックバー12の後端面との間にラックバー12を先端方向(拘束部2方向)に付勢する押圧バネ37が装着されている。押圧バネ37によってラックバー12が悪阻出されて押し当て部12bが突出すると、歯11cと歯12aは噛合しているから、拘束アーム11,11は軸ピン21を中心に回動しながら開口する。
【0041】
次に、ロック部3Aの構成について説明する。ロック部3Aは、拘束部2における拘束アーム11,11を閉じた状態にロックするものである。図1に示すロック部3との違いは、押圧ピン28の押圧力に抗してラック型係合部23を押し下げる押下げピン38を設けた点にある。押下げピン28は、押下げ部38aと挿入ピン38bからなり、押下げ部38aは操作杆10の外面に設けたバネ38cによって操作杆10の外方に付勢されている。押下げ部38aをバネ38cに抗して押下げることによって、押圧ピン28が押し出されてラック型係合部23と係止部25の係合状態を解除する。
【0042】
この実施形態においては、押し当て部12bが押し込まれると、ラックバー12及びスライド部材17が後退して拘束アーム11,11が閉じられる。同時に、ラック型係合部23と係止部25によって拘束アーム11,11の閉じた状態がロックされる。即ち、暴漢者の手又は足に押し当てるだけで、手錠のように拘束して自由を奪うことができる。
【0043】
そして、拘束アーム11,11がある程度閉じるとロック状態となり、押し当て部12bを押し込めば押し込むほど拘束アーム11,11の挟み込みの隙間が小さくなるから、暴漢者が激しく抵抗すればするほど拘束されることになる。また、ロックの初期状態で手足が外れて拘束を逃れた場合には、押下げ部38aを押下げると押圧バネ38の付勢力によって、ワンタッチでロック状態を解除することができるから、次の行動に迅速に対応することができる。
【0044】
次に、操作部5について説明する。操作部5は、操作杆10の後端面のキャップを兼ねており、ロック部3Aのラック型係合部23を引っ張ることによって、拘束アーム11,11を閉じるものである。即ち、操作部5は、キャップ40と連結材41とからなる。キャップ40は、操作杆10よりも径の大きな握り部40aと操作杆10に嵌入する嵌入部40bによって形成されており、前記嵌入部40bと前記スライド部材17の後端部とを連結材41を介して連結している。
【0045】
前記連結材41の長さは、嵌入部40bが操作杆10に嵌入されて握り部40aが操作杆10の端面に当接したときに、拘束アーム11,11が最も開口した状態となるように調整されている。キャップ40は、連結材41を介してスライド部材17に連結されているから、握り部40aを引っ張って嵌入部40bを引き出すとスライド部材17が同時に後退する。このとき、歯12aとは11cは噛合しているからラックバー12の後退によって拘束アーム11,11は閉じられ、同時に閉じられた状態がラック型係合部23と係止部25によってロックされる。
【0046】
前記操作部5は、押し当て部12b、即ちラックバー12の押し込みが十分でない場合にも、拘束アーム11,11を閉じるときに有効である。なお、上記操作杆10の長さは特に限定されるものではないが、暴漢者等から身体の危険を回避しつつ、片手で迅速に対応することができる長さとすればよい。例えば、通常の警棒と同じか若干長く形成することができる。
【0047】
次に、図6に示す第4実施形態の拘束部2について説明する。図6に示す第4実施形態の拘束部2Aは、拘束アーム11A,11Aの内側にピニオン43、43を設け、前記ピニオン43とラックバー12の歯12aとが噛合するように構成するとともに、支持部材13に設けた円弧状スリット13fに拘束アーム11A,11Aに突設したガイドピン11f、11fを嵌入してなる。前記ピニオン43、43は拘束アーム11A,11Aに一体に設けられているから、ピニオン43、43が回動すると拘束アーム11A,11Aも一体に回動する。
【0048】
この実施形態における拘束アーム11A,11Aは、2つの湾曲部を形成した点において拘束アーム11,11とは異なる。即ち、拘束アーム11A、11Aは、内側に湾曲面44,44と湾曲面44a、44aを有している。拘束アーム11A,11Aの先端部には、手足を内側に案内するガイドローラ19,19と、湾曲面44,44と湾曲面44a,44aの境界部となる突出部に同じくガイドローラ19a、19aが取り付けられている。ガイドローラ19,19aは、その一部が拘束アーム11A,11Aの内側に突出しており、逆回転防止機構を有していることが好ましい。
【0049】
さらに、前記ピニオン43、43の少なくとも一方のピニオン43には、戻り止め45が噛み合わされている。戻り止め45は、ラックバー12の押し当て部12bが押圧されてラックバー12が後退するときにはピニオン43,43を回転させるが、ラックバー12が前進するときには、ピニオン43,43の回転を阻止するように作用する。即ち、戻り止め45は、拘束アーム11A,11Aが閉じるときにはピニオン43,43と噛み合わないが、拘束アーム11A,11Aが開くときにピニオン43,43と噛み合って拘束アーム11A,11Aの開きを防止するものである。
【0050】
戻り止め45は、例えば、バネで押えた押爪の先端をピニオン43に係合させて、ラックバー12が後退するときにはピニオン43との係合を解除し、ラックバー12が前進するときにはピニオン43と係合するようにすることができる。ラックバー12が前進して拘束アーム11A,11Aを開くときは、手動で押爪とピニオンとの係合を解除すればよい。
【0051】
図6に示す第4実施形態の拘束部2Aにおいては、戻り止め45がロック部3をなすものであるから、操作杆10にはロック部3は不要であり、バネ圧保持部4を設ければよい。バネ圧保持部4は、図1及び図4に記載したとおりであり、その説明は省略する。
【0052】
図7〜図9に示す第5実施形態の拘束部2Bは、拘束部2Aが拘束アーム11A,11Aの下端部を支持部材13に挿入しているのに対して、支持部材13とは分離されている点で異なる。即ち、拘束部2Bは、略L字状に形成された拘束アーム11B,11Bと、前記拘束アーム11B,11Bの内側端部を連結する連結部47と、搖動板48と、操作杆10に固定されている支持材49によって構成されている。
【0053】
さらに詳述すると、前記拘束部2Bは、開閉自在な独立した一対の拘束アーム11B,11Bは、内側面に暴漢者の身体、特に手又は足を挟みこんで拘束することができるように湾曲面11a,11aを有し、内側端部にはピニオン50,50が設けられており、ラックバー12Aの先端部に形成された歯12dと噛合するように形成されている。ラックバー12Aの歯は、平面略三角形状に形成された両側の弧状面に前記ピニオン50,50と噛合するように形成されている。ピニオン50,50の軸は連結部47に固定されている。
【0054】
前記連結部47は、図9に示すように上板47aと下板47bの間に前記ラックバー12A,拘束アーム11B,11B及びピニオン50,50を挟持するように構成されている。ピニオン50,50は一方を拘束アーム11Bの上面に固定し、他方を他の拘束アーム11Bの下面に固定することによってラックバー12Aと噛合させるとともに、拘束アーム11B,11Bを上下に配設することによって閉じたときに交差することができる。ピニオン50,50は拘束アーム11B,11Bと一体に固着されているから、ピニオン50,50が回転すると拘束アーム11B,11Bもピニオン50,50を回転軸として同時に回転する。
【0055】
拘束アーム11B,11Bは、搖動板48、48の一端に回動自在に軸着されており、搖動板48の他端は、操作杆10の先端に取り付けられた支持材49の両端部に回動自在に軸着されている。従って、前記ラックバー12Aが後退すると、搖動板48によって拘束アーム11B,11Bの外側が外方に回動することによって拘束アーム11B,11Bの先端部が閉じられる。拘束アーム11B,11Bが閉じられると、押し当て部2bが押し込まれて湾曲面11a,11aによって隙間が形成されるから、この隙間に手又は足が挟み込まれることになる。
【0056】
この実施形態においても、ピニオン50,50の少なくとも一方には、戻り止め45が設けられている。戻り止め45の構成については上述したとおりである。従って、この実施形態においても、操作杆10にはロック部3は不要であり、バネ圧保持部4を設ければよい。また、他の構成については既に詳述した上記実施形態と同様であるから、同一構成については同一符号を付してその説明は省略する。
【0057】
次に、図10〜図11に示す第6実施形態の拘束部について説明する。第1〜5実施形態では、拘束部2,2A,2Bを形成する拘束アーム11,11A及び11Bと操作杆10とは直線状に一体に形成されており、両者の向きを変えることはできない。しかしながら、この実施形態に係る拘束部2Cでは、操作杆10と拘束アーム11A,11Aとの角度を変えられるように形成した点において、上記第1〜5実施形態とは異なる。図10は、図6に示す拘束部2Aの操作杆10に対する角度を変えられるようにした変形例を示す。
【0058】
ラックバー12は先端部に歯12aを形成し支持部材13内を進退する歯形成部12Aと操作杆10に挿入されるスライド部12Bとに分割するとともに、前記歯形成部12Aとスライド部12Bとを自在継手51で連結する。また、支持部材13は、コイルバネ、板バネ、ゴム部材又は樹脂材等の可撓性を有する可撓性部材により形成した搖動板52を介して支持材49に連結されている。前記支持材49は、操作杆10の先端部に固着されている。前記自在継手51が支持部材13と支持材49との間を進退する、即ち、歯12aとピニオン50が噛合するラックバー12が進退することになり拘束アーム11A,11Aが開閉する。
【0059】
このように、歯形成部12Aとスライド部12Bとを自在継手51で連結するとともに、搖動板52を可撓性部材により形成したので、操作杆10と拘束アーム11A,11Aとの角度を変えることができる。このように、拘束部2Cの拘束アーム11A,11Aの角度が変わることによって、暴漢者等が激しく抵抗した場合でも、その動きに応じてその力を逃がすことができるから、拘束アーム11A,11Aをロックした状態でも拘束している手足を損傷させることがない。
【0060】
尚、拘束部と操作杆との角度を変えられるようにするには、上記実施形態に限定されるものではなく任意の構成とすることができ、例えば、歯形成部12Aの端部に2つの平行な挟持板を突設し、この挟持板の間にスライド部12Bの先端に形成した突出部を挿入し、両者を軸止めして回転可能に連結してもよい。また、ピニオン43,43の一方には、戻り止め45を設けてもよいし、戻り止め45を設けることなく、図1〜図4に示すようなロック部3及びバネ圧保持部4を設けてもよい。
【0061】
次に、図12〜図14に示すロック部と操作部の他の実施形態について説明する。図12にはロック部の第2実施形態を示す。ロック部3Aは、図1及び図5に示す第1実施形態のロック部3とは反対に、操作杆10の内面に内接させた複数列の鋸歯状突起54を設けた係止用円筒体55と、スライド部材17の後端部に設けた前記鋸歯状突起54と係合する係止片56と、鋸歯状突起54と係止片56との係合状態を解除する押下げピン57とからなる。
【0062】
前記鋸歯状突起54と係止片56とが係合した状態では、係止片56は操作杆10の後端方向にスライドすることは可能であるが、拘束部2方向へスライドすることはできない。従って、拘束部2の拘束アーム11,11は閉じた状態でロックされることになる。押下げピン57を押下げることによって係合状態が解除され、拘束部2の方向へ前進移動が可能になる。前記押下げピン57の先端部は、操作杆10の内側に突出していて、スライド部材17に接近している。押下げピン57は、図5に示す押下げピン38と同様の構成であるから、その説明は省略する。
【0063】
図12には操作部の第2実施形態を示す。操作部5Aは、操作杆10の外面に取り付けたロックレバー60をスライド部材17に連結材61を介して連結することによって構成されている。従って、前記ロックレバー60を握って押下げると連結材61を介してスライド部材17を引っ張ることになり、係止片56を鋸歯状突起54と係合させながら後退させる。前記ロックレバー60は、図5に示す第1実施形態の握り部40aと同様に、拘束アーム11,11を急速に閉じるときに使用することができる。
【0064】
尚、拘束部の構成やスライド部材17が圧縮バネ18によって付勢されている点等は上述の通りである。従って、押下げピン57を押し下げて鋸歯状突起54と係止片56との係合状態を解除すれば、スライド部材17が前進し拘束アーム11,11は開口されることになる。
【0065】
次に、図13及び図14に示すロック部と操作部の第3実施形態について説明する。図13及び図14に示すロック部3Bは、スライド部材17に操作杆10内をスライドするスライド管63を連結し、前記スライド管63に係止孔63aを軸方向に多数穿設するとともに、前記係止孔63aに操作杆10に取り付けた押下ピン65の挿入ピン65aを嵌合させるように構成されている。
【0066】
前記押下ピン65は、押下げ部65bと挿入ピン65aとにより全体が略くの字状に形成されており、操作杆10内に突出している挿入ピン65aが上下動するように形成されている。また、挿入ピン65aの先端には、操作杆10の先端方向(拘束部2方向)に向いた傾斜面が形成されている。一方、前記係止孔63aの先端方向(拘束部2方向)も傾斜面に形成されている。
【0067】
従って、スライド管63が後退すると前記挿入ピン65aの傾斜面と係止孔63aの傾斜面とがスライドし、挿入ピン65aは押し上げられスライド管63はスムーズにスライドすることができる。前記挿入ピン65aと係止孔63aとの係止状態によって、スライド管63は操作杆10の先端方向(拘束部2方向)へスライドすることはない。
【0068】
前記挿入ピン65aと係止孔63aとの係止状態によって後退のみが可能となる。挿入ピン65aと係止孔63aとの係止状態を解除するには、押下げピン65の押下げ部65bの後端部を押下げて挿入ピン65aを引き上げればよい。押圧バネ37の付勢力によってスライド管63は前進し、拘束アーム11,11を開口させる。
【0069】
一方、第3実施形態の操作部5Bは、操作杆10に設けた略L字状スリット67にロックレバー68を摺動可能に挿入し、前記ロックレバー68の操作杆10内に突出している先端部68aをスライド管63に固着することによって構成されている。前記スリット67は、操作杆10の軸方向のスリット67aと操作杆10の周方向のスリット67bとによって略L字状に形成されている。
【0070】
従って、ロックレバー68を引いてスリット67a内を後退させると、スライド管63も後退する。また、スライド管63の後退とともに前記挿入ピン65aは係止孔63aとの係止を繰り返しながらロックされる。前記ロックレバー68は、第3実施形態のキャップ40と同様に、ラックバー12が後退して拘束アーム11,11が閉じた状態となる前に、拘束アーム11,11を急速に閉じる場合に使用することができる。
【0071】
ロックレバー68を引いてスリット67bに係止させれば、スライド管63が後退して拘束アーム11,11を閉じた状態でロックすることになる。拘束アーム11,11のロック状態を解除するには、ロックレバー68をスリット67bからスリット67aに回動するとともに、押下げピン65の後端部を押し下げて挿入ピン65aを引き上げればよい。スライド管63が連結しているラックバー12は、コイルバネ37によって操作杆10の先端方向に押圧されているから、前記挿入ピン65aと係止孔63aとの係止状態が解除されれば、ラックバー12が復帰して拘束アーム11,11は開いた状態となる。
【0072】
尚、図13〜図14に示すロック部と操作部の実施形態において、上記図5以下の実施形態と同様な構成については同一符号を付してその説明は省略する。また、拘束部は第1実施形態から第6実施形態のいずれであってもよい。
【0073】
以上詳述したように、この発明に係る開閉可能な身体拘束具によれば、暴漢者等の手足を瞬時に又は手足に押し付けながら最も有効に拘束することができる。また、片手で操作して警棒のように攻撃防御にも使用することができから、身を守るにも有効である。
【符号の説明】
【0074】
1、1A:身体拘束具
2A、2B:拘束部
3、3A、3B:ロック部
4:バネ圧保持部
5: 操作部
10:操作杆
11、11A、11B:拘束アーム
11a:湾曲面
11b:折返部
11c:歯
11d:屈曲部
12:ラックバー
12a:歯
12b:押し当て部
13:支持部材
13a:挟持板
13b:挿通孔
13c:軸ピン
17:スライド部材
18:圧縮バネ
19:ガイドローラ
23:ラック型係合部
25:係止部
26:支持環
28:押圧ピン
30:挿入ピン
31:キャップ
33:渦巻バネ
35:引張コイルバネ
36:支持環
37:押圧バネ
38:押下げピン
40:キャップ
41:連結材
43、50:ピニオン
44、44a:湾曲面
45:戻り止め
47:連結部
48:搖動板
49:支持材
51:自在継手
52:可撓性部材
54:鋸歯状突起
55:係止用円筒体
56:係止片
57:押下げピン
60:ロックレバー
61:連結材
63:スライド管
65:押下ピン
67:略L字状スリット
68:ロックレバー
【技術分野】
【0001】
この発明は、犯罪者、暴漢者等からの生命、身体に対する急迫した攻撃から身体を保護するとともに、犯罪者等の足、手等を拘束して身体の自由を奪い、抵抗や逃走を防ぐことができる開閉可能な身体拘束具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刃物を所持している暴漢者から身を守りながら取り押さえる防犯具又は捕物具として、刺股が使用されており、また、警察官が犯罪者を逮捕する際には、手錠を用いて捕縛することが行われている。刺股は、江戸時代から使用されており、長柄の先端に湾曲した二股状の押し当て金具を取り付けたもので、二股の部分で激しく抵抗する暴漢者等を壁や床に押し付けて取り押さえる防犯具である。
【0003】
このような刺股として、例えば、特開2000−230800号公報記載の「刺股型の捕物道具」があり、特開2003−254697号公報記載の「刺股」がある。前記公報記載の「刺股型の捕物道具」は、いずれも二股状押し当て部の先端部を近接させるように可動させて閉塞状態とし、身体の自由を奪うように構成されている。
【0004】
特開2000−230800号公報記載の「刺股型の捕物道具」は、左右に分割された二股状押し当て部の中心部に摺動体を設けてなり、押し当て部が開放状態のときには摺動体が突出しており、暴漢者等の身体によって摺動体が押圧されると押し当て部が閉塞状態となって暴漢者等が自由に通れないようにしたものである。また、特開2003−254697号公報記載の「刺股」は、支持部材に端部を固定された左右の押し当て部の手前側途中部に空気圧シリンダーが装着されており、操作レバーを手動で操作することにより空気圧シリンダーが作動して左右の押し当て部が閉塞状態となるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−230800号公報
【特許文献2】特開2003−254697号公報(図17参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報記載の「刺股型の捕物道具」及び「刺股」は、いずれも暴漢者等の身体の周囲を取り囲むように閉塞して自由を奪うものであるから、押し当て部は大型となり操作が困難である。また、激しく抵抗する暴漢者等の身体は一定の角度には保たれてはいないから、長柄を両手で持って対応しても周囲の障害物や衣服等が邪魔になり、押し当て部で身体の周囲を取り囲むように閉塞することは困難である。
【0007】
また、刺股は、先端に二股状の大きな押し当て部が長柄に形成されているから、パトカーに積んでおくことができず、持ち運びや保管が困難である。また、刺股は、長柄を有しているから迅速な対応には不向きである。さらに、刺股は身体の周囲を拘束するものであり、行動の自由を奪ったとしても手足は自由に動かすことができる。したがって、暴漢者等が刃物等の凶器を所持している場合には、むやみに近付いて取り押さえることはできない。手足の自由を奪って完全に拘束するには、第三者の力を借りなければならないという問題がある。
【0008】
また、手錠は手首を拘束して両腕の自由を奪う手段として使用されることがあるが、両手に嵌めるまでは暴漢者等から危害を加えられるおそれがある。手錠を使用する場合には、暴漢者等の身体を拘束し、行動の自由を奪っておくことが必要である。
【0009】
上述の通り、刺股や手錠にはそれぞれ一長一短があって、現場で即座に対応できないという問題がある。この発明は、上述のような問題を解消するものであって、暴漢者等から身体の危険を回避しつつ、手足の自由を拘束することによって容易に取り押さえることができる開閉可能な身体拘束具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上記目的を達成するために次のような構成とした。この発明に係る開閉可能な身体拘束具は、
操作杆の一端に設けられた拘束部と、前記操作杆に設けられたロック部とからなり、
前記拘束部は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アームと、前記一対の拘束アームの間に配設された進退自在なラックバーと、ラックバーを挿通する支持部材からなり、前記拘束アームに扇状に形成した歯とラックバーの両側に平行に形成した歯とを噛合させてラックバーの進退によって一対の拘束アームを開閉させるように形成されており、
前記ロック部は、前記ラックバーに固着されたスライド部材に形成した鋸歯状突起を有するラック型係合部と、前記鋸歯状突起と係合する係止片を有する係止部とからなり、前記鋸歯状突起と係止片とはスライド部材を操作杆の後端部方向にのみスライドさせるように形成してなり、
前記スライドバーが操作杆の後端部方向にスライドして後退したときに、前記一対の拘束アームが閉じるようにしたことを特徴とする。
前記一対の拘束アームの先端部にはガイドローラを取り付けることが好ましい。また、一対の拘束アームは閉じたとき交差するように形成することができる。前記操作杆には、スライド部材を操作杆の後端部側に付勢するバネを設けるとともに、スライド部材を強制的に操作杆の後端部側に引くことができる操作部を設けることができる。さらに、操作杆には一対の拘束アームの開口状態を保持するように、スライド部材に設けた係止孔と前記係止孔に出没自在に挿入する押下ピンとからなるバネ圧保持部を設けてもよい。前記スライド部材は、操作杆内に設けたバネによって拘束部側に付勢するようにしてもよい。
【0011】
操作杆の一端に拘束部を設けてなり、
前記拘束部は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アームと、前記一対の拘束アームの間に配設された進退自在なラックバーと、ラックバーを挿通する支持部材からなり、前記拘束アームに設けたピニオンとラックバーの先端部両側に形成した歯とを噛合させてラックバーの進退によって一対の拘束アームを開閉させるように形成し、
操作杆には、前記拘束アームの閉じた状態をロックするロック部が設けられており、前記ロック部は、前記ラックバーに固着されたスライド部材に形成した鋸歯状突起を有するラック型係合部と、前記鋸歯状突起と係合する係止片を有する係止部とからなり、前記鋸歯状突起と係止片とはスライド部材を操作杆の後端部方向にのみスライドさせるように形成したことを特徴とする。
前記拘束アームの少なくとも一方のピニオンに戻り止めを配設することができる。また、拘束アームは、歯を形成し支持部材内を進退する歯形成部と操作杆に挿入されるスライド部とに分割し、前記歯形成部とスライド部とを自在継手で連結するとともに、拘束アーム又は支持部材を可撓性部材によって形成した搖動板を介して操作杆に固定した支持材に取り付けて、拘束部と操作杆との角度を変えられるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の開閉可能な身体拘束具は、片手で操作することができ、身の安全を図りながら激しく抵抗する暴漢者等の身体を拘束することができる。また、警棒のように攻撃防御にも使用することができるとともに、嵩張らないからパトカー等に積んでおくこともでき、臨機応変に対応することができる。
【0013】
また、身体を拘束する拘束部は、手錠と同じように、拘束アームを噛み合いによって回動する構造としたので、拘束アームがスムーズに閉じるとともに、一旦閉じるとロック状態を解除するまでは開口することはないから、継続して行動の自由を奪うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1実施形態に係る身体拘束具の一部を断面した平面図である。
【図2】第1実施形態の要部の一部を断面した側面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】第2実施形態の要部を断面した平面図である。
【図5】第3実施形態の要部を断面した平面図である。
【図6】第4実施形態の拘束部を示す断面した平面図である。
【図7】第5実施形態の拘束部を示す断面した平面図である。
【図8】第5実施形態の噛み合いを示す斜視図である。
【図9】同じく第5実施形態の一部を省略した断面側面図である。
【図10】第6実施形態の拘束部を示す平面図である。
【図11】第6実施形態のラックバーの継ぎ手部を示す斜視図である。
【図12】ロック部と操作部を示す第2実施形態の断面図である。
【図13】ロック部と操作部を示す第3実施形態の断面図である。
【図14】ロック部と操作部を示す第3実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明に係る開閉可能な身体拘束具の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る開閉可能な身体拘束具(以下、単に身体拘束具という)の第1実施形態を示す一部を断面した平面図、図2は一部を断面した要部側面図、図3は拘束部の断面図である。
【0016】
図示する身体拘束具1は、拘束部2と、前記拘束部2の拘束アームが閉じたときにロックするロック部3と、拘束部2の拘束アームを開口した状態に保持するバネ圧保持部4から構成されている。前記拘束部2は、管状の操作杆10の一端部に設けられており、ロック部3及びバネ圧保持部4は操作杆10に形成されている。
【0017】
さらに詳述すると、前記拘束部2は、開閉自在な独立した一対の拘束アーム11、11と、前記拘束アーム11,11の間に配設されるラックバー12と、前記拘束アーム11,11を回動自在に軸着するとともに、前記ラックバー12を挿通する支持部材13によって構成されている。前記拘束アーム11、11は、平面形状を略フック状に形成され、内側面に暴漢者の身体、特に手又は足を挟みこんで拘束することができるように湾曲面11a,11aが形成されている。さらに、拘束アーム11、11の内側に折り返した折返部11b、11bの外側面は湾曲しており、歯11c、11cが扇状に形成されている。
【0018】
前記ラックバー12の下端部は、支持部材13を介して操作杆10にスライド自在に挿入されている。ラックバー12の上部の両側面には、前記拘束アームの歯1c、11cと噛合する歯12a,12aを平行に設け、先端に押し当て部12bを設けるとともに、操作杆10内にスライド自在に挿通された下端部には、スライド部材17が連結されている。スライドバー12の下端部には、後述するように、スライド部材17側に付勢する圧縮バネ18が取り付けられている。
【0019】
前記拘束アーム11,11はラックバー12の両側に対向するように対称に配設されており、歯1c、11cと歯12a,12aとが噛合するから、ラックバー12が支持部材13内をスライドして進退すると、後述するように、拘束アーム11,11が支持部材13との回動軸21を中心に回動することになる。
【0020】
さらに、拘束アーム11,11について詳述すると、拘束アーム11,11は、閉じたときに先端部が交差することができるように、中間部に屈曲部11d、11dを有している。前記屈曲部11d、11dを形成することによって、図2に示すように、屈曲部11d、11dより先端部は突き当たることがなく互いに上下に交差する。拘束アーム11,11は、湾曲面11a,11aを有しているとともに、屈曲部11d、11dを形成することによって交差可能に形成したから、閉じたときに湾曲面によって形成される隙間を徐々に小さくすることができ、手足の太さに対応することができる。
【0021】
拘束アーム11,11の先端部には、手足の挿入を容易にするためのガイド部材としてガイドローラ19,19が取り付けられている。前記ガイドローラ19,19は、内側にのみ回転し、外側には回転しない逆止め付きローラであることが好ましい。また、前記ガイドローラ19,19は、挟み込む手足を拘束アーム11,11の内側に案内するものであるから、拘束アーム11,11の先端部において互いに反対向きに取り付けられている。
【0022】
前記ガイドローラ19,19は、省略することが可能であり、また、他の構成のガイド部材とすることができる。例えば、拘束アーム11,11の先端部に外側に開いたガイド板を取り付けたり、先端部を単にテーパー面としてもよい。
【0023】
さらに、支持部材13について説明すると、支持部材13は、2枚の挟持板13a,13aを重ね合わせて前記拘束アーム11,11を摺動自在に挟み込むとともに、中央部に前記ラックバー12を挿通する挿通孔13bを形成してなる。従って、前記挟持板13aと挟持板13aとの間には、拘束アーム11,11の厚さよりも大きい隙間が設けられており、この隙間に拘束アーム11,11の一部が摺動自在に挿入されている。
【0024】
支持部材13に一部が挿入された拘束アーム11,11は、軸ピン21、21によって回動可能に軸着されている。軸ピン21、21は、歯11c、11cが形成された扇状外側面を円弧としたとき円の中心となる位置に設けられている。従って、ラックバー12が進退すると、拘束アーム11,11は軸ピン21,21を中心にして回動する。挟持板13a,13aは、前記挿通孔13bの両側の固定ピン13c、13cによって一体に固定されている。
【0025】
前記ラックバー12の端部には突片12aが形成されており、前記突片12aと支持部材13との間に圧縮コイルバネ18が装着される。前記する圧縮コイルバネ18は、ラックバー12をロック部3及びバネ圧保持部4方向に付勢するように装着されている。
【0026】
従って、拘束部2の拘束アーム11,11が開いているときは、ラックバー12の押し当て部12bが引き出されて圧縮コイルバネ18が圧縮される。反対に、圧縮コイルバネ18が開放されると、圧縮コイルバネ18の付勢力によってラックバー12が後退し、歯12aと歯11cとが噛合することによって、拘束アーム11,11は軸ピン21,21を中心にして回動することにより、拘束アーム11,11は急速にしかもスムーズに閉じられる。
【0027】
尚、上記実施形態において、拘束アーム11,11に屈曲部11d、11dを形成して互いに交差することができるようにしたが、拘束アーム11,11を交差させるためには、屈曲部を形成することなく支持部材13に拘束アーム11,11を取り付ける際に、予め上下に軸着してもよい。拘束アーム11,11を交差するように取り付けた場合には、拘束アーム11,11が閉じられたときに形成される内側の隙間を徐々に小さくすることができる。
【0028】
また、拘束アーム11,11は、交差させることなく単に突合せて当接させてもよいし、近接させる構成としてもよい。また、拘束アーム11,11の形状は、挟み込んだとき内側に隙間を有する形状であればよく、図1に示すように略L字状に形成するほか、後述するように、全体を湾曲させた形状としてもよく、特に限定されるものではない。
【0029】
次に、ロック部3の構成について説明する。ロック部3は、拘束部2における拘束アーム11,11が閉じたときにロックするものであって、図1に示すように、鋸歯状突起23aを有するラック型係合部23と、内面に係止片25aを突設した環状の係止部25によって形成されている。前記ラック型係合部23は、ラックバー12の後端部に固着されたスライド部材17の後部に形成されており、環状の係止部25は、操作杆10の内面においてラック型係合部23に対応して嵌入されている。
【0030】
前記ラック型係合部23の鋸歯状突起23aと係止部25の係止片25aとが係合する。前記係止片25aは、前記圧縮コイルバネ18が圧縮しているときは、前記鋸歯状突起23aのバネ圧保持部4側において係合し、前記圧縮コイルバネ18が開放したときは、前記鋸歯状突起23aのラックバー12側において係合するように構成されている。前記スライド部材17は、操作杆10の内部に配設された支持環26にスライド自在に挿通されており、ラックバー12と一体に進退移動する。
【0031】
ラック型係合部23と管状係止部25の近傍には、ラック型係合部23を係止部25に押し付ける押圧ピン28が設けられている。前記押圧ピン28は、操作杆10の内面側に設けた押圧バネ28aによって、先端部がラック型係合部23を押圧している。
【0032】
次に、バネ圧保持部4について説明する。バネ圧保持部4は、図1に示すように、押下げ部30aと挿入ピン30bを有するストッパー30とスライド部材17の端部に設けた係止孔17aによって構成されている。前記押下げ部30aと挿入ピン30bは、略くの字状に形成されており、操作杆10内に突出している挿入ピン30bが上下動するように軸着されている。スライド部材17が前進して拘束アーム11,11が開口しているときに、前記係止孔17aに挿入ピン30bが挿入されるように構成されている。
【0033】
前記係止孔17aに挿入ピン30bを挿入させるには、鋸歯状突起23aと係止片25aとの係合状態を解除した後、圧縮コイルバネ18を圧縮しながら係止孔17aを挿入ピン30bの位置まで前進させる。係止孔17aに挿入ピン30bが挿入されると、圧縮コイルバネ18が圧縮されてバネ圧が保持されるとともに、拘束アーム11,11の開口状態が保持される。拘束アーム11,11の開口状態を保持した後に、押圧ピン28を押下げて、鋸歯状突起23aと係止片25aを係合させればよい。
【0034】
拘束アーム11,11を閉じるには、開口させるときとは反対に、挿入ピン30bを係止孔17aから引き出すと、圧縮コイルバネ18の付勢力によってラックバー12及びスライド部材17は一気に後端部方向にスライドして拘束アーム11,11を閉じることになる。拘束アーム11,11が閉じられているときは、前記係止片25aと鋸歯状突起23aとは鋸歯状に片側のみ傾斜面を有しているから、押圧ピン28によって鋸歯状突起23aと係止片25aとの係合状態がロックされ、拘束部2の方向へスライドするのは阻止される。
【0035】
拘束アーム11,11の閉じた状態がロックされると、手錠のように拘束して暴漢者の手又は足の自由を奪うことができる。このとき、挿入ピン30bは、係止孔17aから引き出されている。一方、押圧ピン28を引き出して、鋸歯状突起23aと係止片25aとの係合状態を解除すると、スライド部材17の拘束部2方向へのスライドが可能になる。そこで、鋸歯状突起23aと係止片25aとの係合状態を解除しながら拘束アーム11,11を開けばよい。
【0036】
前記スライド部材17は棒状部材、板状部材のいずれであってもよい。また前記スライド部材17を湾曲した板バネによって構成した場合には、湾曲した外面にラック型係合部23を設けることによって、ラック型係合部23を係止部25側に押し付けるようにすることができ、押圧ピン28を省略することができる。このように、スライド部材17を板バネによって構成した場合には、鋸歯状突起23aと係止片25aの係合状態を解除することができるように、前記押圧ピン28を実施形態とは反対側に設ければよい。
【0037】
図4に示す第2実施形態について説明する。図4に示す実施形態は、前記実施形態が圧縮コイルバネ18を使用したのに対して引張バネを使用した点において異なる。従って、同一の構成については同一符号を付してその説明は省略する。図4(a)に示す実施形態では、操作杆10の後端面に嵌合するキャップ31の内側に渦巻バネ33が配設されており、前記渦巻バネ33の先端がスライド部材17に取り付けられている。従って、前記挿入ピン30bが係止孔17aから引き出されているときは、スライド部材17とラックバー12はキャップ31側に付勢されて拘束アーム11,11は閉じられることになる。
【0038】
また、図4(b)に示す実施形態では、前記渦巻バネ33に代えて引張コイルバネ35を使用している。引張コイルバネ35は一端をキャップ31aに取り付け、他端をスライド部材17に取り付けられている。図1の実施形態と図4の実施形態との違いは、圧縮コイルバネと引張バネの違いであって、他の構成において異なるところはない。
【0039】
次に、この発明に係る開閉可能な身体拘束具の第3実施形態を図5に基づいて説明する。図示する身体拘束具1Aは、拘束部2と、前記拘束部2をロック状態にするロック部3と、拘束部2を手動で閉じることができる操作部5から構成されている。前記拘束部2は、管状の操作杆10の一端部に設けられており、ロック部3及び操作部5は操作杆10に形成されている。拘束部2とロック部3の構成は上記実施形態と同様に構成されている。従って、同一構成については同一符号を付してその説明は省略する。
【0040】
この実施形態では、操作杆10の内部に支持環36が設けられており。この支持環36とラックバー12の後端面との間にラックバー12を先端方向(拘束部2方向)に付勢する押圧バネ37が装着されている。押圧バネ37によってラックバー12が悪阻出されて押し当て部12bが突出すると、歯11cと歯12aは噛合しているから、拘束アーム11,11は軸ピン21を中心に回動しながら開口する。
【0041】
次に、ロック部3Aの構成について説明する。ロック部3Aは、拘束部2における拘束アーム11,11を閉じた状態にロックするものである。図1に示すロック部3との違いは、押圧ピン28の押圧力に抗してラック型係合部23を押し下げる押下げピン38を設けた点にある。押下げピン28は、押下げ部38aと挿入ピン38bからなり、押下げ部38aは操作杆10の外面に設けたバネ38cによって操作杆10の外方に付勢されている。押下げ部38aをバネ38cに抗して押下げることによって、押圧ピン28が押し出されてラック型係合部23と係止部25の係合状態を解除する。
【0042】
この実施形態においては、押し当て部12bが押し込まれると、ラックバー12及びスライド部材17が後退して拘束アーム11,11が閉じられる。同時に、ラック型係合部23と係止部25によって拘束アーム11,11の閉じた状態がロックされる。即ち、暴漢者の手又は足に押し当てるだけで、手錠のように拘束して自由を奪うことができる。
【0043】
そして、拘束アーム11,11がある程度閉じるとロック状態となり、押し当て部12bを押し込めば押し込むほど拘束アーム11,11の挟み込みの隙間が小さくなるから、暴漢者が激しく抵抗すればするほど拘束されることになる。また、ロックの初期状態で手足が外れて拘束を逃れた場合には、押下げ部38aを押下げると押圧バネ38の付勢力によって、ワンタッチでロック状態を解除することができるから、次の行動に迅速に対応することができる。
【0044】
次に、操作部5について説明する。操作部5は、操作杆10の後端面のキャップを兼ねており、ロック部3Aのラック型係合部23を引っ張ることによって、拘束アーム11,11を閉じるものである。即ち、操作部5は、キャップ40と連結材41とからなる。キャップ40は、操作杆10よりも径の大きな握り部40aと操作杆10に嵌入する嵌入部40bによって形成されており、前記嵌入部40bと前記スライド部材17の後端部とを連結材41を介して連結している。
【0045】
前記連結材41の長さは、嵌入部40bが操作杆10に嵌入されて握り部40aが操作杆10の端面に当接したときに、拘束アーム11,11が最も開口した状態となるように調整されている。キャップ40は、連結材41を介してスライド部材17に連結されているから、握り部40aを引っ張って嵌入部40bを引き出すとスライド部材17が同時に後退する。このとき、歯12aとは11cは噛合しているからラックバー12の後退によって拘束アーム11,11は閉じられ、同時に閉じられた状態がラック型係合部23と係止部25によってロックされる。
【0046】
前記操作部5は、押し当て部12b、即ちラックバー12の押し込みが十分でない場合にも、拘束アーム11,11を閉じるときに有効である。なお、上記操作杆10の長さは特に限定されるものではないが、暴漢者等から身体の危険を回避しつつ、片手で迅速に対応することができる長さとすればよい。例えば、通常の警棒と同じか若干長く形成することができる。
【0047】
次に、図6に示す第4実施形態の拘束部2について説明する。図6に示す第4実施形態の拘束部2Aは、拘束アーム11A,11Aの内側にピニオン43、43を設け、前記ピニオン43とラックバー12の歯12aとが噛合するように構成するとともに、支持部材13に設けた円弧状スリット13fに拘束アーム11A,11Aに突設したガイドピン11f、11fを嵌入してなる。前記ピニオン43、43は拘束アーム11A,11Aに一体に設けられているから、ピニオン43、43が回動すると拘束アーム11A,11Aも一体に回動する。
【0048】
この実施形態における拘束アーム11A,11Aは、2つの湾曲部を形成した点において拘束アーム11,11とは異なる。即ち、拘束アーム11A、11Aは、内側に湾曲面44,44と湾曲面44a、44aを有している。拘束アーム11A,11Aの先端部には、手足を内側に案内するガイドローラ19,19と、湾曲面44,44と湾曲面44a,44aの境界部となる突出部に同じくガイドローラ19a、19aが取り付けられている。ガイドローラ19,19aは、その一部が拘束アーム11A,11Aの内側に突出しており、逆回転防止機構を有していることが好ましい。
【0049】
さらに、前記ピニオン43、43の少なくとも一方のピニオン43には、戻り止め45が噛み合わされている。戻り止め45は、ラックバー12の押し当て部12bが押圧されてラックバー12が後退するときにはピニオン43,43を回転させるが、ラックバー12が前進するときには、ピニオン43,43の回転を阻止するように作用する。即ち、戻り止め45は、拘束アーム11A,11Aが閉じるときにはピニオン43,43と噛み合わないが、拘束アーム11A,11Aが開くときにピニオン43,43と噛み合って拘束アーム11A,11Aの開きを防止するものである。
【0050】
戻り止め45は、例えば、バネで押えた押爪の先端をピニオン43に係合させて、ラックバー12が後退するときにはピニオン43との係合を解除し、ラックバー12が前進するときにはピニオン43と係合するようにすることができる。ラックバー12が前進して拘束アーム11A,11Aを開くときは、手動で押爪とピニオンとの係合を解除すればよい。
【0051】
図6に示す第4実施形態の拘束部2Aにおいては、戻り止め45がロック部3をなすものであるから、操作杆10にはロック部3は不要であり、バネ圧保持部4を設ければよい。バネ圧保持部4は、図1及び図4に記載したとおりであり、その説明は省略する。
【0052】
図7〜図9に示す第5実施形態の拘束部2Bは、拘束部2Aが拘束アーム11A,11Aの下端部を支持部材13に挿入しているのに対して、支持部材13とは分離されている点で異なる。即ち、拘束部2Bは、略L字状に形成された拘束アーム11B,11Bと、前記拘束アーム11B,11Bの内側端部を連結する連結部47と、搖動板48と、操作杆10に固定されている支持材49によって構成されている。
【0053】
さらに詳述すると、前記拘束部2Bは、開閉自在な独立した一対の拘束アーム11B,11Bは、内側面に暴漢者の身体、特に手又は足を挟みこんで拘束することができるように湾曲面11a,11aを有し、内側端部にはピニオン50,50が設けられており、ラックバー12Aの先端部に形成された歯12dと噛合するように形成されている。ラックバー12Aの歯は、平面略三角形状に形成された両側の弧状面に前記ピニオン50,50と噛合するように形成されている。ピニオン50,50の軸は連結部47に固定されている。
【0054】
前記連結部47は、図9に示すように上板47aと下板47bの間に前記ラックバー12A,拘束アーム11B,11B及びピニオン50,50を挟持するように構成されている。ピニオン50,50は一方を拘束アーム11Bの上面に固定し、他方を他の拘束アーム11Bの下面に固定することによってラックバー12Aと噛合させるとともに、拘束アーム11B,11Bを上下に配設することによって閉じたときに交差することができる。ピニオン50,50は拘束アーム11B,11Bと一体に固着されているから、ピニオン50,50が回転すると拘束アーム11B,11Bもピニオン50,50を回転軸として同時に回転する。
【0055】
拘束アーム11B,11Bは、搖動板48、48の一端に回動自在に軸着されており、搖動板48の他端は、操作杆10の先端に取り付けられた支持材49の両端部に回動自在に軸着されている。従って、前記ラックバー12Aが後退すると、搖動板48によって拘束アーム11B,11Bの外側が外方に回動することによって拘束アーム11B,11Bの先端部が閉じられる。拘束アーム11B,11Bが閉じられると、押し当て部2bが押し込まれて湾曲面11a,11aによって隙間が形成されるから、この隙間に手又は足が挟み込まれることになる。
【0056】
この実施形態においても、ピニオン50,50の少なくとも一方には、戻り止め45が設けられている。戻り止め45の構成については上述したとおりである。従って、この実施形態においても、操作杆10にはロック部3は不要であり、バネ圧保持部4を設ければよい。また、他の構成については既に詳述した上記実施形態と同様であるから、同一構成については同一符号を付してその説明は省略する。
【0057】
次に、図10〜図11に示す第6実施形態の拘束部について説明する。第1〜5実施形態では、拘束部2,2A,2Bを形成する拘束アーム11,11A及び11Bと操作杆10とは直線状に一体に形成されており、両者の向きを変えることはできない。しかしながら、この実施形態に係る拘束部2Cでは、操作杆10と拘束アーム11A,11Aとの角度を変えられるように形成した点において、上記第1〜5実施形態とは異なる。図10は、図6に示す拘束部2Aの操作杆10に対する角度を変えられるようにした変形例を示す。
【0058】
ラックバー12は先端部に歯12aを形成し支持部材13内を進退する歯形成部12Aと操作杆10に挿入されるスライド部12Bとに分割するとともに、前記歯形成部12Aとスライド部12Bとを自在継手51で連結する。また、支持部材13は、コイルバネ、板バネ、ゴム部材又は樹脂材等の可撓性を有する可撓性部材により形成した搖動板52を介して支持材49に連結されている。前記支持材49は、操作杆10の先端部に固着されている。前記自在継手51が支持部材13と支持材49との間を進退する、即ち、歯12aとピニオン50が噛合するラックバー12が進退することになり拘束アーム11A,11Aが開閉する。
【0059】
このように、歯形成部12Aとスライド部12Bとを自在継手51で連結するとともに、搖動板52を可撓性部材により形成したので、操作杆10と拘束アーム11A,11Aとの角度を変えることができる。このように、拘束部2Cの拘束アーム11A,11Aの角度が変わることによって、暴漢者等が激しく抵抗した場合でも、その動きに応じてその力を逃がすことができるから、拘束アーム11A,11Aをロックした状態でも拘束している手足を損傷させることがない。
【0060】
尚、拘束部と操作杆との角度を変えられるようにするには、上記実施形態に限定されるものではなく任意の構成とすることができ、例えば、歯形成部12Aの端部に2つの平行な挟持板を突設し、この挟持板の間にスライド部12Bの先端に形成した突出部を挿入し、両者を軸止めして回転可能に連結してもよい。また、ピニオン43,43の一方には、戻り止め45を設けてもよいし、戻り止め45を設けることなく、図1〜図4に示すようなロック部3及びバネ圧保持部4を設けてもよい。
【0061】
次に、図12〜図14に示すロック部と操作部の他の実施形態について説明する。図12にはロック部の第2実施形態を示す。ロック部3Aは、図1及び図5に示す第1実施形態のロック部3とは反対に、操作杆10の内面に内接させた複数列の鋸歯状突起54を設けた係止用円筒体55と、スライド部材17の後端部に設けた前記鋸歯状突起54と係合する係止片56と、鋸歯状突起54と係止片56との係合状態を解除する押下げピン57とからなる。
【0062】
前記鋸歯状突起54と係止片56とが係合した状態では、係止片56は操作杆10の後端方向にスライドすることは可能であるが、拘束部2方向へスライドすることはできない。従って、拘束部2の拘束アーム11,11は閉じた状態でロックされることになる。押下げピン57を押下げることによって係合状態が解除され、拘束部2の方向へ前進移動が可能になる。前記押下げピン57の先端部は、操作杆10の内側に突出していて、スライド部材17に接近している。押下げピン57は、図5に示す押下げピン38と同様の構成であるから、その説明は省略する。
【0063】
図12には操作部の第2実施形態を示す。操作部5Aは、操作杆10の外面に取り付けたロックレバー60をスライド部材17に連結材61を介して連結することによって構成されている。従って、前記ロックレバー60を握って押下げると連結材61を介してスライド部材17を引っ張ることになり、係止片56を鋸歯状突起54と係合させながら後退させる。前記ロックレバー60は、図5に示す第1実施形態の握り部40aと同様に、拘束アーム11,11を急速に閉じるときに使用することができる。
【0064】
尚、拘束部の構成やスライド部材17が圧縮バネ18によって付勢されている点等は上述の通りである。従って、押下げピン57を押し下げて鋸歯状突起54と係止片56との係合状態を解除すれば、スライド部材17が前進し拘束アーム11,11は開口されることになる。
【0065】
次に、図13及び図14に示すロック部と操作部の第3実施形態について説明する。図13及び図14に示すロック部3Bは、スライド部材17に操作杆10内をスライドするスライド管63を連結し、前記スライド管63に係止孔63aを軸方向に多数穿設するとともに、前記係止孔63aに操作杆10に取り付けた押下ピン65の挿入ピン65aを嵌合させるように構成されている。
【0066】
前記押下ピン65は、押下げ部65bと挿入ピン65aとにより全体が略くの字状に形成されており、操作杆10内に突出している挿入ピン65aが上下動するように形成されている。また、挿入ピン65aの先端には、操作杆10の先端方向(拘束部2方向)に向いた傾斜面が形成されている。一方、前記係止孔63aの先端方向(拘束部2方向)も傾斜面に形成されている。
【0067】
従って、スライド管63が後退すると前記挿入ピン65aの傾斜面と係止孔63aの傾斜面とがスライドし、挿入ピン65aは押し上げられスライド管63はスムーズにスライドすることができる。前記挿入ピン65aと係止孔63aとの係止状態によって、スライド管63は操作杆10の先端方向(拘束部2方向)へスライドすることはない。
【0068】
前記挿入ピン65aと係止孔63aとの係止状態によって後退のみが可能となる。挿入ピン65aと係止孔63aとの係止状態を解除するには、押下げピン65の押下げ部65bの後端部を押下げて挿入ピン65aを引き上げればよい。押圧バネ37の付勢力によってスライド管63は前進し、拘束アーム11,11を開口させる。
【0069】
一方、第3実施形態の操作部5Bは、操作杆10に設けた略L字状スリット67にロックレバー68を摺動可能に挿入し、前記ロックレバー68の操作杆10内に突出している先端部68aをスライド管63に固着することによって構成されている。前記スリット67は、操作杆10の軸方向のスリット67aと操作杆10の周方向のスリット67bとによって略L字状に形成されている。
【0070】
従って、ロックレバー68を引いてスリット67a内を後退させると、スライド管63も後退する。また、スライド管63の後退とともに前記挿入ピン65aは係止孔63aとの係止を繰り返しながらロックされる。前記ロックレバー68は、第3実施形態のキャップ40と同様に、ラックバー12が後退して拘束アーム11,11が閉じた状態となる前に、拘束アーム11,11を急速に閉じる場合に使用することができる。
【0071】
ロックレバー68を引いてスリット67bに係止させれば、スライド管63が後退して拘束アーム11,11を閉じた状態でロックすることになる。拘束アーム11,11のロック状態を解除するには、ロックレバー68をスリット67bからスリット67aに回動するとともに、押下げピン65の後端部を押し下げて挿入ピン65aを引き上げればよい。スライド管63が連結しているラックバー12は、コイルバネ37によって操作杆10の先端方向に押圧されているから、前記挿入ピン65aと係止孔63aとの係止状態が解除されれば、ラックバー12が復帰して拘束アーム11,11は開いた状態となる。
【0072】
尚、図13〜図14に示すロック部と操作部の実施形態において、上記図5以下の実施形態と同様な構成については同一符号を付してその説明は省略する。また、拘束部は第1実施形態から第6実施形態のいずれであってもよい。
【0073】
以上詳述したように、この発明に係る開閉可能な身体拘束具によれば、暴漢者等の手足を瞬時に又は手足に押し付けながら最も有効に拘束することができる。また、片手で操作して警棒のように攻撃防御にも使用することができから、身を守るにも有効である。
【符号の説明】
【0074】
1、1A:身体拘束具
2A、2B:拘束部
3、3A、3B:ロック部
4:バネ圧保持部
5: 操作部
10:操作杆
11、11A、11B:拘束アーム
11a:湾曲面
11b:折返部
11c:歯
11d:屈曲部
12:ラックバー
12a:歯
12b:押し当て部
13:支持部材
13a:挟持板
13b:挿通孔
13c:軸ピン
17:スライド部材
18:圧縮バネ
19:ガイドローラ
23:ラック型係合部
25:係止部
26:支持環
28:押圧ピン
30:挿入ピン
31:キャップ
33:渦巻バネ
35:引張コイルバネ
36:支持環
37:押圧バネ
38:押下げピン
40:キャップ
41:連結材
43、50:ピニオン
44、44a:湾曲面
45:戻り止め
47:連結部
48:搖動板
49:支持材
51:自在継手
52:可撓性部材
54:鋸歯状突起
55:係止用円筒体
56:係止片
57:押下げピン
60:ロックレバー
61:連結材
63:スライド管
65:押下ピン
67:略L字状スリット
68:ロックレバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作杆の一端に設けられた拘束部と、前記操作杆に設けられたロック部とからなり、
前記拘束部は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アームと、前記一対の拘束アームの間に配設された進退自在なラックバーと、ラックバーを挿通する支持部材からなり、前記拘束アームに扇状に形成した歯とラックバーの両側に平行に形成した歯とを噛合させてラックバーの進退によって一対の拘束アームを開閉させるように形成されており、
前記ロック部は、前記ラックバーに固着されたスライド部材に形成した鋸歯状突起を有するラック型係合部と、前記鋸歯状突起と係合する係止片を有する係止部とからなり、前記鋸歯状突起と係止片とはスライド部材を操作杆の後端部方向にのみスライドさせるように形成してなり、
前記スライドバーが操作杆の後端部方向にスライドして後退したときに、前記一対の拘束アームが閉じるようにしたことを特徴とする開閉可能な身体拘束具。
【請求項2】
一対の拘束アームの先端部にガイドローラを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項3】
一対の拘束アームは閉じたとき交差するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項4】
操作杆には、スライド部材を操作杆の後端部側に付勢するバネを設けるとともに、スライド部材を強制的に操作杆の後端部側に引くことができる操作部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項5】
操作杆には一対の拘束アームの開口状態を保持するように、スライド部材に設けた係止孔と前記係止孔に出没自在に挿入する押下ピンとからなるバネ圧保持部を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項6】
スライド部材は、操作杆内に設けたバネによって拘束部側に付勢されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項7】
操作杆の一端に拘束部を設けてなり、
前記拘束部は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アームと、前記一対の拘束アームの間に配設された進退自在なラックバーと、ラックバーを挿通する支持部材からなり、前記拘束アームに設けたピニオンとラックバーの先端部両側に形成した歯とを噛合させてラックバーの進退によって一対の拘束アームを開閉させるように形成し、
操作杆には、前記拘束アームの閉じた状態をロックするロック部が設けられており、前記ロック部は、前記ラックバーに固着されたスライド部材に形成した鋸歯状突起を有するラック型係合部と、前記鋸歯状突起と係合する係止片を有する係止部とからなり、前記鋸歯状突起と係止片とはスライド部材を操作杆の後端部方向にのみスライドさせるように形成したことを特徴とする開閉可能な身体拘束具。
【請求項8】
拘束アームの少なくとも一方のピニオンに戻り止めが配設されていることを特徴とする請求項7に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項9】
拘束アームは、歯を形成し支持部材内を進退する歯形成部と操作杆に挿入されるスライド部とに分割し、前記歯形成部とスライド部とを自在継手で連結するとともに、拘束アーム又は支持部材を可撓性部材によって形成した搖動板を介して操作杆に固定した支持材に取り付けて、拘束部と操作杆との角度を変えられるようにしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項1】
操作杆の一端に設けられた拘束部と、前記操作杆に設けられたロック部とからなり、
前記拘束部は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アームと、前記一対の拘束アームの間に配設された進退自在なラックバーと、ラックバーを挿通する支持部材からなり、前記拘束アームに扇状に形成した歯とラックバーの両側に平行に形成した歯とを噛合させてラックバーの進退によって一対の拘束アームを開閉させるように形成されており、
前記ロック部は、前記ラックバーに固着されたスライド部材に形成した鋸歯状突起を有するラック型係合部と、前記鋸歯状突起と係合する係止片を有する係止部とからなり、前記鋸歯状突起と係止片とはスライド部材を操作杆の後端部方向にのみスライドさせるように形成してなり、
前記スライドバーが操作杆の後端部方向にスライドして後退したときに、前記一対の拘束アームが閉じるようにしたことを特徴とする開閉可能な身体拘束具。
【請求項2】
一対の拘束アームの先端部にガイドローラを取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項3】
一対の拘束アームは閉じたとき交差するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項4】
操作杆には、スライド部材を操作杆の後端部側に付勢するバネを設けるとともに、スライド部材を強制的に操作杆の後端部側に引くことができる操作部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項5】
操作杆には一対の拘束アームの開口状態を保持するように、スライド部材に設けた係止孔と前記係止孔に出没自在に挿入する押下ピンとからなるバネ圧保持部を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項6】
スライド部材は、操作杆内に設けたバネによって拘束部側に付勢されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項7】
操作杆の一端に拘束部を設けてなり、
前記拘束部は、内側に湾曲面を有する独立した開閉自在な一対の拘束アームと、前記一対の拘束アームの間に配設された進退自在なラックバーと、ラックバーを挿通する支持部材からなり、前記拘束アームに設けたピニオンとラックバーの先端部両側に形成した歯とを噛合させてラックバーの進退によって一対の拘束アームを開閉させるように形成し、
操作杆には、前記拘束アームの閉じた状態をロックするロック部が設けられており、前記ロック部は、前記ラックバーに固着されたスライド部材に形成した鋸歯状突起を有するラック型係合部と、前記鋸歯状突起と係合する係止片を有する係止部とからなり、前記鋸歯状突起と係止片とはスライド部材を操作杆の後端部方向にのみスライドさせるように形成したことを特徴とする開閉可能な身体拘束具。
【請求項8】
拘束アームの少なくとも一方のピニオンに戻り止めが配設されていることを特徴とする請求項7に記載の開閉可能な身体拘束具。
【請求項9】
拘束アームは、歯を形成し支持部材内を進退する歯形成部と操作杆に挿入されるスライド部とに分割し、前記歯形成部とスライド部とを自在継手で連結するとともに、拘束アーム又は支持部材を可撓性部材によって形成した搖動板を介して操作杆に固定した支持材に取り付けて、拘束部と操作杆との角度を変えられるようにしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の開閉可能な身体拘束具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−190446(P2010−190446A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32665(P2009−32665)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(391005248)三力工業株式会社 (5)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(391005248)三力工業株式会社 (5)
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