開閉工具
【課題】作業時には常にアームが開方向に付勢される開閉工具でありながら、小さな力で握り込み操作をおこなうことができて疲れにくく作業性がよいうえ、コンパクトな収納が可能で取り出し易い開閉工具を提供する。
【解決手段】それぞれ一端側に握持部4、他端側に作業部12を備える一対のアーム1・1を連結軸2によって開閉自在に支持し、前記握持部4・4のそれぞれの後端部に、前記アーム1・1を開方向に付勢する屈曲弾性体3の両腕部3a・3aの端部を内外反転自在に取り付けるとともに、前記両腕部3a・3aの内側に係止手段として係合部材32・32を係脱自在に設ける。
【解決手段】それぞれ一端側に握持部4、他端側に作業部12を備える一対のアーム1・1を連結軸2によって開閉自在に支持し、前記握持部4・4のそれぞれの後端部に、前記アーム1・1を開方向に付勢する屈曲弾性体3の両腕部3a・3aの端部を内外反転自在に取り付けるとともに、前記両腕部3a・3aの内側に係止手段として係合部材32・32を係脱自在に設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンチ、ニッパ、プライヤ等の開閉工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一対のアームを連結軸で交差連結した開閉工具では、握り込み操作をおこなった後で元の開いた状態に戻すためには、その都度、一方のアームを指で挟んで開く必要があった。この不便を解消するものとしては、連結軸の近くにアームを開方向に付勢するコイル状の圧縮バネを取り付けたものがあり、これは既に広く市場に供せられている。
【0003】
ところが、この種の従来バネ付き開閉工具は、支点(連結軸)のすぐ近くに力点(圧縮バネ)が設けられているために比較的反発力の強いバネを用いており、この反発力に抗して作業者が握り込み操作をおこなう際にはより大きな力を必要とした。そのため短時間の作業であっても手や腕が疲れやすく、付勢力を有しない開閉工具と比して作業性に劣るという欠点があった。
【0004】
そこで、この問題を解消する提案として、握持部と握持部との間にU字形状の弾性体を一体に設けた開閉工具が文献1に開示されている。かかる構成をとることにより、この提案の開閉工具は支点(連結軸)と力点(U字形状の弾性体)との間隔を従来開閉工具よりも長くとることに成功し、少ない力で握り込み操作ができるようになっている。
【0005】
しかしながら、一般に開閉工具はその開き角度や閉じ力を微調整しながら作業をおこなうことも多く、その場合には例えば握り手の人差し指などを握持部と握持部との間に軽く挟み込むことによって制御している。ところが、前記特許文献1のように握持部の間に余分な部材(前記弾性体)を設けてしまうと指を動かす際に邪魔になり、作業能率が低下するという問題が生じる。
【0006】
また、従来バネ付き開閉工具、特許文献1の提案のいずれにしても、使用しないときでも常にアームが開いた状態であるため、工具箱などへの収納時には嵩張るうえ、アームが他の工具に絡んで取り出しにくいという欠点をもっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−300858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来開閉工具の不都合を解消すべくなされたもので、その目的は、作業時には常にアームが開方向に付勢される開閉工具でありながらも、少ない労力で握り込み作業をおこなうことができて疲れにくく、しかも作業性のよい開閉工具を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、作業時には常にアームが開方向に付勢される開閉工具でありながらも、保管時にはコンパクトに収納することができて取り出し易い開閉工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために本発明は、一端側に作業部、他端側に握持部を備えるアーム一対が連結軸によって開閉自在に交差連結された開閉工具において、前記握持部のそれぞれの後端部に、前記アームを開方向に付勢する屈曲弾性体の両端部が内外反転自在に取り付けられていることを特徴としている。
【0011】
すなわち本発明の開閉工具は、付勢力を与える屈曲弾性体が連結軸からもっとも遠い位置となる握持部後端部に取り付けられている(支点と力点とが大きく離れている)ので従来バネ付き開閉工具よりも小さな力でアームを開方向に付勢することができ、作業者も少ない力でアームの握り込み操作をおこなうことができる。そのため開閉作業を長時間おこなったとしても疲れにくい。さらに、屈曲弾性体が内外反転自在に握持部に取り付けられているので、作業中は握持部よりも外側に配置して作業者の指の動きを妨げず、使用しないときには内側に反転収納して保管しやすいようにコンパクトにすることができる。
【0012】
また、前記屈曲弾性体には、係脱自在であって係合状態にあるときには前記アームの開方向への付勢力を抑止する係止手段を備えてもよい。
【0013】
かかる構成を与えておくと、使用しないときには前記係止手段を用いて屈曲弾性体の腕部を係合しておくことでアームを閉じた状態に保つことができ、よりコンパクトに保管収納することが出来る。
【0014】
なお、ここでいう作業部とは切断刃や挟持面が設けられた実際加工をおこなう部分であり、屈曲弾性体とは弾性を有する部材を屈曲させて取り付け、その復元力を利用するものである。
【0015】
また、ここでいう屈曲弾性体とは、屈曲させ、その弾性復元力を用いて付勢作用をおこなうものであり、本実施例では樹脂材からなるものとしているが、これに限定されるものではなく、例えば金属製の捻りコイル形のバネであってもよい。また、その形状も略U字に限らず、例えばV字やW字形状のものであってもよく、要はその両腕部が弾性復元力によって拡開するものであればよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の開閉工具は、小さな労力で握り込み作業をおこなうことができて疲れにくく、作業性が良い。さらに保管時にはコンパクトに収納することができて取り出し易いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の開いた状態を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の開いた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の要部拡大斜視図である。
【図4】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の要部拡大平面図である。
【図5】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の閉じた状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施例にかかる開閉工具を閉じ、係止手段によって屈曲弾性体の復元力を抑止させた状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の屈曲弾性体を反転収納した状態を示す正面図である。
【図8】本発明の第2実施例にかかる開閉工具の開いた状態を示す正面図である。
【図9】本発明の第2実施例にかかる開閉工具要部拡大斜視図である。
【図10】本発明の第2実施例にかかる開閉工具の屈曲弾性体を反転収納した状態を示す正面図である。
【図11】本発明の第3実施例にかかる開閉工具の要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる開閉工具の一実施形態を説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
図1ないし図7は本発明をペンチに適用した場合の一実施例を示している。図においてペンチAは一対のアーム1・1とこれを開閉自在に軸支する連結軸2、さらに各アーム1・1を開方向に付勢する屈曲弾性体3とで構成されている。
【0020】
アーム1は鍛造品からなり、一端側には作業部12として半体の挟持部12aと切断刃12bが形成され、他端側には握持部4が設けられている。なお、ここでの半体とは一対となって機能するものを称しており、挟持部12a・12a一対が組み合わされて挟持機能を発揮し、切断刃12b・12b一対が組み合わされて切断機能を発揮する。また、便宜上、この作業部12が形成されている側を先端側(前方)、握持部4が設けられている側を基端側(後方)とここでは定義して説明する。
【0021】
握持部4は樹脂成形品からなるもので、鍛造品のため感触の固いアーム1に装着することによって握った時の感触を柔らかくし、作業時の疲労を防ぐとともに滑り止めの役割をも果たしている。この握持部4の後端部内側には反転軸41および該反転軸41の周縁から長手方向前後に突出する遊動防止用のストッパ41a、さらに該反転軸41の上端周縁から径方向外側に向かって膨出する抜け止め41bが一体に凸設されている。
【0022】
屈曲弾性体3は、前記反転軸41・41に内外反転自在に取り付けられ、各アーム1・1を開方向に付勢している。これについて以下にさらに詳細に説明する。
【0023】
屈曲弾性体3は弾性復元力に優れる樹脂成形品からなるもので正面視略U字形状をしており、その両腕部3a・3aのそれぞれの端部には前記握持部4側の反転軸41に対応する軸孔31及び前記ストッパ41aに対応する抑止溝31aが穿設されている。また軸孔31・31よりも中央寄り内側には、係止手段としてそれぞれ矩形薄板形状の係合部材32・32が凸設され、該係合部材32・32の先端にはカギ状に曲げられ外面を傾斜させたフック32a・32aが対向してそれぞれ形成されている。
【0024】
この屈曲弾性体3は、少なくとも前記アーム1・1が限度いっぱいまで開いた状態でなお弾性復元力を有する程度に屈曲させた状態でアーム1・1に取り付けられている。詳しくは握持部4・4の反転軸41・41に屈曲弾性体3側の両端の軸孔31・31を回動自在に嵌合させている。このとき、図4に示すように平面視で握持部4と屈曲弾性体3とが長手方向同一線上にあれば、アーム1・1側のストッパ41a・41aと屈曲弾性体3側の抑止溝31a・31aが嵌合して屈曲弾性体3の無用な遊動を防ぐようになっている。
【0025】
また、前記係合部材32・32の先端のフック32a・32aは、図5に示すようにアームを単に閉じただけの状態ではお互いが離れた位置にあるように設定されており、通常のアーム開閉作業に支障をきたすことはない。これを係合させるためには、アーム1・1が閉じた状態にあるときに屈曲弾性体3の両腕部3a・3aをそれぞれが接近する方向に向かって押し縮めてゆく。そうするとフック32a・32aの先端部がまず当接し、さらに押し縮めることによって係合部材32・32が外方向に逃げるように弾性変形したのちフック32a・32aがそれぞれの外側傾斜面を乗り越えて係合する(図6参照)。
【0026】
いったん係合すると屈曲弾性体3の弾性復元力によってその状態は維持されたままとなり、付勢力は抑止され、アーム1・1を開くこともできなくなる(ロックされる)。
【0027】
この状態で屈曲弾性体3を内側に反転させ、図7に示すように握持部4・4の間にできた領域内に収納することで屈曲弾性体3による嵩張りがなくなり、保管収納や取り出し作業が簡単になる。なお、反転収納された屈曲弾性体3は、その位置でも前記したアーム1・1と長手方向同一線上になり、ストッパ41a・41aと抑止溝31a・31aが嵌合することによって遊動を抑止している。
【0028】
この本発明開閉工具を使用する際には、まず屈曲弾性体3を反転させて外側(握持部から見て後方)に配置する。なお、反転させている最中には前記抑止溝31aは弾性変形して拡開し、ストッパ41aを通過させる。つぎに屈曲弾性体3の両腕部3a・3aを、係合しているフック32a・32aが離れる方向に捻ってやる(フック32aが突出している方向と逆側)。そうすると係合状態が解除されるのでそのまま掴んだ手を離せば弾性復元力によってそれぞれの係合部材32・32が元の離れた状態に戻り、アーム1・1の開閉作業が可能となる。あとは通常の開閉工具と何らかわりなく使用することができる。
【実施例2】
【0029】
図8ないし図10は本発明の実施例2を示している。なお、煩雑さを防ぐために前記実施例1と同じ箇所には同一の符号を付し、説明を省略する。図においてペンチBは一対のアーム1・1とこれを開閉自在に軸支する連結軸2、さらに各アーム1・1を開方向に付勢する屈曲弾性体5とで構成されている。
【0030】
アーム1の基端側には握持部6が設けられており、該握持部6の後端縁からは支持部6aが後方に向かって延出している。この支持部6aには前記屈曲弾性体5を反転自在に取り付けるための軸孔61が穿設され、該軸孔61の両脇には長手方向前後に伸びる二本の凸条62・62が形成されている。この凸条62・62は屈曲弾性体5の両側に当接して設けられており、屈曲弾性体5の幅方向への遊動を防ぐためのものである。
【0031】
一方、屈曲弾性体5側の両腕部5a・5aの端部には反転軸51・51、該反転軸51の上端周縁から径方向外側に向かって膨出する抜け止め51bが一体に凸設され、さらに反転軸51の上端面から反転軸の全高にわたって割溝51cが刻設されている。この割溝51cは反転軸51をアーム1側の軸孔61に嵌合させ易くするためのものである。また、係止手段として一側の腕部5a(図では上側腕部)の端縁には係止用の台座部材52が形成され、他方の端縁からは係止腕部材53が正面視で斜め外方向に延出している。台座部材52側には係止孔52aが穿設されており、これに対応して係止腕部材53側の先端には突起53aが凸設されている。
【0032】
係止腕部材53は腕部の端を起点としてその弾性で前後方向揺動自在であり、図10に示すようにアーム1・1を閉じた状態で台座部材52側に揺動させて係止孔52aに突起53aを挿通させることによってアーム1・1の開閉動作をロックさせることができるようになっている。
【実施例3】
【0033】
図11は本発明の実施例3を示している。ここでは係止腕部材54は内方向(屈曲弾性体5で囲まれた領域内)に向かって延出しており、突起54aは内側から係止孔52aに挿通するようになっている。また、この実施例では、腕部5aと係止腕部材54との間に内向きに湾曲したヒンジ部54bを設けることによって係止腕部材54の前後方向の揺動角を大きく取ることができるようにするとともに、その動作をよりスムーズにおこなえるものにしている。
【0034】
なお、前記実施例1・2・3では、係止手段として、屈曲弾性体の両腕部からそれぞれ係合用の部材を凸設するものとしているが、これに限定されるものではなく、例えば一方の腕部をそのまま係合用の部材として利用し、他方の腕部に設けたカギ状の係合部材をこれに引っ掛けることによって係止するものでもよく、先端に係止孔を設けた係合用の腕部材を一方の腕部から延出させ、他方の腕部の突端を前記係止孔に挿入することで係止するものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 アーム
12 作業部
2 連結軸
3,5 屈曲弾性体
31,61 軸孔
32 係合部材
4,6 握持部
41,51 反転軸
52 台座部材
53,54 係止腕部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンチ、ニッパ、プライヤ等の開閉工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一対のアームを連結軸で交差連結した開閉工具では、握り込み操作をおこなった後で元の開いた状態に戻すためには、その都度、一方のアームを指で挟んで開く必要があった。この不便を解消するものとしては、連結軸の近くにアームを開方向に付勢するコイル状の圧縮バネを取り付けたものがあり、これは既に広く市場に供せられている。
【0003】
ところが、この種の従来バネ付き開閉工具は、支点(連結軸)のすぐ近くに力点(圧縮バネ)が設けられているために比較的反発力の強いバネを用いており、この反発力に抗して作業者が握り込み操作をおこなう際にはより大きな力を必要とした。そのため短時間の作業であっても手や腕が疲れやすく、付勢力を有しない開閉工具と比して作業性に劣るという欠点があった。
【0004】
そこで、この問題を解消する提案として、握持部と握持部との間にU字形状の弾性体を一体に設けた開閉工具が文献1に開示されている。かかる構成をとることにより、この提案の開閉工具は支点(連結軸)と力点(U字形状の弾性体)との間隔を従来開閉工具よりも長くとることに成功し、少ない力で握り込み操作ができるようになっている。
【0005】
しかしながら、一般に開閉工具はその開き角度や閉じ力を微調整しながら作業をおこなうことも多く、その場合には例えば握り手の人差し指などを握持部と握持部との間に軽く挟み込むことによって制御している。ところが、前記特許文献1のように握持部の間に余分な部材(前記弾性体)を設けてしまうと指を動かす際に邪魔になり、作業能率が低下するという問題が生じる。
【0006】
また、従来バネ付き開閉工具、特許文献1の提案のいずれにしても、使用しないときでも常にアームが開いた状態であるため、工具箱などへの収納時には嵩張るうえ、アームが他の工具に絡んで取り出しにくいという欠点をもっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−300858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来開閉工具の不都合を解消すべくなされたもので、その目的は、作業時には常にアームが開方向に付勢される開閉工具でありながらも、少ない労力で握り込み作業をおこなうことができて疲れにくく、しかも作業性のよい開閉工具を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、作業時には常にアームが開方向に付勢される開閉工具でありながらも、保管時にはコンパクトに収納することができて取り出し易い開閉工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために本発明は、一端側に作業部、他端側に握持部を備えるアーム一対が連結軸によって開閉自在に交差連結された開閉工具において、前記握持部のそれぞれの後端部に、前記アームを開方向に付勢する屈曲弾性体の両端部が内外反転自在に取り付けられていることを特徴としている。
【0011】
すなわち本発明の開閉工具は、付勢力を与える屈曲弾性体が連結軸からもっとも遠い位置となる握持部後端部に取り付けられている(支点と力点とが大きく離れている)ので従来バネ付き開閉工具よりも小さな力でアームを開方向に付勢することができ、作業者も少ない力でアームの握り込み操作をおこなうことができる。そのため開閉作業を長時間おこなったとしても疲れにくい。さらに、屈曲弾性体が内外反転自在に握持部に取り付けられているので、作業中は握持部よりも外側に配置して作業者の指の動きを妨げず、使用しないときには内側に反転収納して保管しやすいようにコンパクトにすることができる。
【0012】
また、前記屈曲弾性体には、係脱自在であって係合状態にあるときには前記アームの開方向への付勢力を抑止する係止手段を備えてもよい。
【0013】
かかる構成を与えておくと、使用しないときには前記係止手段を用いて屈曲弾性体の腕部を係合しておくことでアームを閉じた状態に保つことができ、よりコンパクトに保管収納することが出来る。
【0014】
なお、ここでいう作業部とは切断刃や挟持面が設けられた実際加工をおこなう部分であり、屈曲弾性体とは弾性を有する部材を屈曲させて取り付け、その復元力を利用するものである。
【0015】
また、ここでいう屈曲弾性体とは、屈曲させ、その弾性復元力を用いて付勢作用をおこなうものであり、本実施例では樹脂材からなるものとしているが、これに限定されるものではなく、例えば金属製の捻りコイル形のバネであってもよい。また、その形状も略U字に限らず、例えばV字やW字形状のものであってもよく、要はその両腕部が弾性復元力によって拡開するものであればよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の開閉工具は、小さな労力で握り込み作業をおこなうことができて疲れにくく、作業性が良い。さらに保管時にはコンパクトに収納することができて取り出し易いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の開いた状態を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の開いた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の要部拡大斜視図である。
【図4】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の要部拡大平面図である。
【図5】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の閉じた状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施例にかかる開閉工具を閉じ、係止手段によって屈曲弾性体の復元力を抑止させた状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1実施例にかかる開閉工具の屈曲弾性体を反転収納した状態を示す正面図である。
【図8】本発明の第2実施例にかかる開閉工具の開いた状態を示す正面図である。
【図9】本発明の第2実施例にかかる開閉工具要部拡大斜視図である。
【図10】本発明の第2実施例にかかる開閉工具の屈曲弾性体を反転収納した状態を示す正面図である。
【図11】本発明の第3実施例にかかる開閉工具の要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる開閉工具の一実施形態を説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
図1ないし図7は本発明をペンチに適用した場合の一実施例を示している。図においてペンチAは一対のアーム1・1とこれを開閉自在に軸支する連結軸2、さらに各アーム1・1を開方向に付勢する屈曲弾性体3とで構成されている。
【0020】
アーム1は鍛造品からなり、一端側には作業部12として半体の挟持部12aと切断刃12bが形成され、他端側には握持部4が設けられている。なお、ここでの半体とは一対となって機能するものを称しており、挟持部12a・12a一対が組み合わされて挟持機能を発揮し、切断刃12b・12b一対が組み合わされて切断機能を発揮する。また、便宜上、この作業部12が形成されている側を先端側(前方)、握持部4が設けられている側を基端側(後方)とここでは定義して説明する。
【0021】
握持部4は樹脂成形品からなるもので、鍛造品のため感触の固いアーム1に装着することによって握った時の感触を柔らかくし、作業時の疲労を防ぐとともに滑り止めの役割をも果たしている。この握持部4の後端部内側には反転軸41および該反転軸41の周縁から長手方向前後に突出する遊動防止用のストッパ41a、さらに該反転軸41の上端周縁から径方向外側に向かって膨出する抜け止め41bが一体に凸設されている。
【0022】
屈曲弾性体3は、前記反転軸41・41に内外反転自在に取り付けられ、各アーム1・1を開方向に付勢している。これについて以下にさらに詳細に説明する。
【0023】
屈曲弾性体3は弾性復元力に優れる樹脂成形品からなるもので正面視略U字形状をしており、その両腕部3a・3aのそれぞれの端部には前記握持部4側の反転軸41に対応する軸孔31及び前記ストッパ41aに対応する抑止溝31aが穿設されている。また軸孔31・31よりも中央寄り内側には、係止手段としてそれぞれ矩形薄板形状の係合部材32・32が凸設され、該係合部材32・32の先端にはカギ状に曲げられ外面を傾斜させたフック32a・32aが対向してそれぞれ形成されている。
【0024】
この屈曲弾性体3は、少なくとも前記アーム1・1が限度いっぱいまで開いた状態でなお弾性復元力を有する程度に屈曲させた状態でアーム1・1に取り付けられている。詳しくは握持部4・4の反転軸41・41に屈曲弾性体3側の両端の軸孔31・31を回動自在に嵌合させている。このとき、図4に示すように平面視で握持部4と屈曲弾性体3とが長手方向同一線上にあれば、アーム1・1側のストッパ41a・41aと屈曲弾性体3側の抑止溝31a・31aが嵌合して屈曲弾性体3の無用な遊動を防ぐようになっている。
【0025】
また、前記係合部材32・32の先端のフック32a・32aは、図5に示すようにアームを単に閉じただけの状態ではお互いが離れた位置にあるように設定されており、通常のアーム開閉作業に支障をきたすことはない。これを係合させるためには、アーム1・1が閉じた状態にあるときに屈曲弾性体3の両腕部3a・3aをそれぞれが接近する方向に向かって押し縮めてゆく。そうするとフック32a・32aの先端部がまず当接し、さらに押し縮めることによって係合部材32・32が外方向に逃げるように弾性変形したのちフック32a・32aがそれぞれの外側傾斜面を乗り越えて係合する(図6参照)。
【0026】
いったん係合すると屈曲弾性体3の弾性復元力によってその状態は維持されたままとなり、付勢力は抑止され、アーム1・1を開くこともできなくなる(ロックされる)。
【0027】
この状態で屈曲弾性体3を内側に反転させ、図7に示すように握持部4・4の間にできた領域内に収納することで屈曲弾性体3による嵩張りがなくなり、保管収納や取り出し作業が簡単になる。なお、反転収納された屈曲弾性体3は、その位置でも前記したアーム1・1と長手方向同一線上になり、ストッパ41a・41aと抑止溝31a・31aが嵌合することによって遊動を抑止している。
【0028】
この本発明開閉工具を使用する際には、まず屈曲弾性体3を反転させて外側(握持部から見て後方)に配置する。なお、反転させている最中には前記抑止溝31aは弾性変形して拡開し、ストッパ41aを通過させる。つぎに屈曲弾性体3の両腕部3a・3aを、係合しているフック32a・32aが離れる方向に捻ってやる(フック32aが突出している方向と逆側)。そうすると係合状態が解除されるのでそのまま掴んだ手を離せば弾性復元力によってそれぞれの係合部材32・32が元の離れた状態に戻り、アーム1・1の開閉作業が可能となる。あとは通常の開閉工具と何らかわりなく使用することができる。
【実施例2】
【0029】
図8ないし図10は本発明の実施例2を示している。なお、煩雑さを防ぐために前記実施例1と同じ箇所には同一の符号を付し、説明を省略する。図においてペンチBは一対のアーム1・1とこれを開閉自在に軸支する連結軸2、さらに各アーム1・1を開方向に付勢する屈曲弾性体5とで構成されている。
【0030】
アーム1の基端側には握持部6が設けられており、該握持部6の後端縁からは支持部6aが後方に向かって延出している。この支持部6aには前記屈曲弾性体5を反転自在に取り付けるための軸孔61が穿設され、該軸孔61の両脇には長手方向前後に伸びる二本の凸条62・62が形成されている。この凸条62・62は屈曲弾性体5の両側に当接して設けられており、屈曲弾性体5の幅方向への遊動を防ぐためのものである。
【0031】
一方、屈曲弾性体5側の両腕部5a・5aの端部には反転軸51・51、該反転軸51の上端周縁から径方向外側に向かって膨出する抜け止め51bが一体に凸設され、さらに反転軸51の上端面から反転軸の全高にわたって割溝51cが刻設されている。この割溝51cは反転軸51をアーム1側の軸孔61に嵌合させ易くするためのものである。また、係止手段として一側の腕部5a(図では上側腕部)の端縁には係止用の台座部材52が形成され、他方の端縁からは係止腕部材53が正面視で斜め外方向に延出している。台座部材52側には係止孔52aが穿設されており、これに対応して係止腕部材53側の先端には突起53aが凸設されている。
【0032】
係止腕部材53は腕部の端を起点としてその弾性で前後方向揺動自在であり、図10に示すようにアーム1・1を閉じた状態で台座部材52側に揺動させて係止孔52aに突起53aを挿通させることによってアーム1・1の開閉動作をロックさせることができるようになっている。
【実施例3】
【0033】
図11は本発明の実施例3を示している。ここでは係止腕部材54は内方向(屈曲弾性体5で囲まれた領域内)に向かって延出しており、突起54aは内側から係止孔52aに挿通するようになっている。また、この実施例では、腕部5aと係止腕部材54との間に内向きに湾曲したヒンジ部54bを設けることによって係止腕部材54の前後方向の揺動角を大きく取ることができるようにするとともに、その動作をよりスムーズにおこなえるものにしている。
【0034】
なお、前記実施例1・2・3では、係止手段として、屈曲弾性体の両腕部からそれぞれ係合用の部材を凸設するものとしているが、これに限定されるものではなく、例えば一方の腕部をそのまま係合用の部材として利用し、他方の腕部に設けたカギ状の係合部材をこれに引っ掛けることによって係止するものでもよく、先端に係止孔を設けた係合用の腕部材を一方の腕部から延出させ、他方の腕部の突端を前記係止孔に挿入することで係止するものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 アーム
12 作業部
2 連結軸
3,5 屈曲弾性体
31,61 軸孔
32 係合部材
4,6 握持部
41,51 反転軸
52 台座部材
53,54 係止腕部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に作業部、他端側に握持部を備えるアーム一対が連結軸によって開閉自在に交差連結された開閉工具において、
前記握持部のそれぞれの後端部に、前記アームを開方向に付勢する屈曲弾性体の両端部が内外反転自在に取り付けられていることを特徴とする開閉工具。
【請求項2】
前記屈曲弾性体に、係脱自在であって係合状態にあるときには前記開方向への付勢力を抑止する係止手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の開閉工具。
【請求項1】
一端側に作業部、他端側に握持部を備えるアーム一対が連結軸によって開閉自在に交差連結された開閉工具において、
前記握持部のそれぞれの後端部に、前記アームを開方向に付勢する屈曲弾性体の両端部が内外反転自在に取り付けられていることを特徴とする開閉工具。
【請求項2】
前記屈曲弾性体に、係脱自在であって係合状態にあるときには前記開方向への付勢力を抑止する係止手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の開閉工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−35352(P2012−35352A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175944(P2010−175944)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【特許番号】特許第4733221号(P4733221)
【特許公報発行日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(301043041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【特許番号】特許第4733221号(P4733221)
【特許公報発行日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(301043041)
【Fターム(参考)】
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