説明

間仕切り壁構造

【課題】間仕切りパネルの取り付け及び取り外しが簡単で、かつ容易に再利用またはリサイクルできる。
【解決手段】上ランナー11と下ランナー12とを、天井Aと床面Bとにビス止めし、これらの間にスタッド13を装着する。上ランナー11と下ランナー12とに、それぞれブラケット3、4を取付ける。ブラケット3、4の両側面には、ケンドン式の差込溝3b、4bが形成してある。石膏ボード2を、上下の差込溝3b、4bに吊り込み、両面接着テープ5で、スタッド13に着脱自在に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石膏ボードの間仕切りパネルからなる住居内の間仕切り壁構造に関し、特に間仕切りパネルの取り付け及び取り外しが簡単で、かつ容易に再利用またはリサイクルできる間仕切り壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば石膏ボードの間仕切りパネルからなる住居内の間仕切り壁は、天井と床面とに固定した横部材である上下ランナーと、これらの間に設けた縦部材であるスタッドとからなる取付け部材の側面に、間仕切りパネルをビス止めして構成していた。そしてビス止め部分の凹みをパテ等で平坦に仕上げた後に、壁紙等を貼着していた。
【0003】
しかるに間取りの変更や住居の改築等において、間仕切り壁を取り外す場合には、パテ等で覆われたビスを取り外すことには手間が掛かるため、いきおい取付け部材と一緒に間仕切りパネルを破壊して取り外していた。このため間仕切り壁の取り外しには騒音と埃が生じ、間仕切りパネルは再利用できなかった。また間仕切り壁の解体後も、間仕切りパネルと壁紙等とを分別することに手間が掛かるため、鉄材を除いて、石膏ボートと壁紙とからなる廃棄物は、リサイクルが困難であった。
【0004】
このため間仕切りパネルの取り付けや取り外しが容易な、間仕切り壁構造が提案されている。その1つは、コの字状の断面形状を有する天井ランナーと床ランナーとに、間仕切りパネルを差込んで構成するものがある(例えば特許文献1参照。)。また2枚の石膏ボードの間に、上端部をやや低くして凹溝ができるように補強材等を挟んで貼り合せた3枚重ねのパネルを使用し、この凹溝を天井ランナーの突出する取付片に嵌挿し、下端部を、床ランナーの側面にビス止めするものがある(例えば特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−9268号公報(1〜4頁、図4)
【特許文献2】特開2005−23679公報(1〜4頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上述した間仕切り壁構造には、いずれも改良すべき次の問題があった。特許文献1に記載の間仕切り壁構造は、間仕切りパネルを天井ランナーと床ランナーとに差し込むだけであるため、取り付け、及び取り外しが容易で、再利用またはリサイクルが可能である。しかし間仕切りパネルは一枚であるため、防音性や断熱性に欠け、さらに天井ランナーと床ランナーとの間に、縦部材であるスタッドを装着することが困難な構成であるため、間仕切りパネルの強度や剛性に欠けるという問題がある。
【0006】
また特許文献2に記載の間仕切り壁構造は、中間に補強部材を挟む多重構造の間仕切りパネルを使用しているため、防音性や断熱性に優れ、さらに強度や剛性にも優れるが、間仕切りパネルの製造コストが増加し、また補強部材との分別に手間が掛かるという問題がある。さらに間仕切りパネルの下端部は、床ランナーの側面にビス止めしているため、上述したように、間仕切りパネルの取り外し、及び再利用が困難である。
【0007】
そこで本発明の目的は、間仕切りパネルの取り付け及び取り外しが簡単で、かつ容易に再利用またはリサイクルできる間仕切り壁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本発明による間仕切り壁構造の特徴は、天井に固定した上ランナーと床面に固定した下ランナーとの側面に、それぞれケンドン式の差込溝を設け、間仕切りパネルをこれらの差込溝に差込み、さらにこの上ランナーと下ランナーとの間に装着したスタッドと間仕切りパネルの裏面とを、着脱自在の接着材によって接合して構成したことにある。
【0009】
すなわち本発明による間仕切り壁構造は、天井と床面との間に取り付け部材を介して間仕切りパネルを固定する間仕切り壁構造であって、この取り付け部材は、上ランナーと下ランナーと、これらの間に装着するスタッドとを備えている。上記上ランナーと下ランナーとの側面には、それぞれ互いに対向して開口するコの字断面形状のケンドン式の差込溝が設けてある。そして上記間仕切りパネルの上下端部を、それぞれ上記上ランナーと下ランナーとの差込溝に差込み、この間仕切りパネルの裏面と上記スタッドとを着脱自在の接着材によって接合して構成してある。
【0010】
上記ケンドン式の差込溝は、上記上ランナー及び下ランナーとに着脱自在な別部材で構成してあることが望ましい。また上記間仕切りパネルは、石膏ボードであることがより望ましい。
【0011】
ここで「上ランナー」とは、住居内の天井等にビス等で固定され、間仕切りパネルの上端部を取り付ける部材を意味する。下方向に開口するコの字状断面形状を有するものが望ましいが、下面に略同一幅のスタッド(縦部材)を取り付けことができれば、この形状に限らず、例えば中空の矩形断面形状を有するものも該当する。また材質は軽量鉄材が望ましいが、アルミあるいは合成樹脂等の他の材質を使用することもできる。「下ランナー」とは、住居内の床面等にビス等で固定され、間仕切りパネルの下端部を取り付ける部材を意味する。形状及び材質は、上記上ランナーと同等のものが該当する。
【0012】
「スタッド」とは、上述した上ランナーと下ランナーとの間に取り付ける縦部材であって、その形状と材質とは、この上ランナー等と同等のものを意味する。「上ランナーと下ランナーとの側面」とは、これらの上ランナーと下ランナーとを断面方向から見たときの
サイド面を意味し、両面に限らず一方の面の場合も含む。「ケンドン式の差込溝」とは、日本古来からあるふすま、障子、あるいは引き戸等の取り付け溝であって、一旦建具の上端を差込む上部の切り込み溝、及び次に建具の下端を落とし込む下部の切り込み溝を意味する。なお材質は、軽量鉄材が望ましいが、アルミあるいは合成樹脂等の他の材質を使用することもできる。またこのケンドン式の差込溝は、上ランナー等と一体的に形成したものに限らず、別部材で製作して、上ランナー等の側面等に取り付けたものも含む。「着脱自在の接着材」とは、被接着面に容易に接着し、かつ容易に引き剥がすことができる接着材を意味し、例えば両面接着テープ、あるいは接着性のパテが該当する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による間仕切り壁構造は、間仕切りパネルを、上ランナーと下ランナーとの側面に設けたケンドン式の差込溝に差込み、この上ランナーと下ランナーとの間に装着したスタッドに着脱自在に接着して構成する。したがって第1に、上ランナーと下ランナーとの両側面に間仕切りパネルを取り付けると、両者の間に空間が形成され、防音性及び断熱性を向上させることができる。また間仕切りパネルの裏面をスタッドに接着するため、間仕切り壁構造の強度と剛性とを向上させることができる。
【0014】
第2に、間仕切りパネルをビス等で取り付ける必要がないため、特別な技能がなくても、容易かつ迅速に間仕切り壁構造の組み付けを行なうことができる。したがって組み付け作業の大幅なコストダウンが可能になる。第3に、間仕切り壁構造の取り外しは、間仕切りパネルをスタッドから引き剥がして、上下ランナーから引き抜くだけであるため、容易かつ迅速に行なうことができる。また分解時に騒音や埃が生じない。
【0015】
そして第4に、間仕切りパネルは傷つけることなく取り外しができるので、再度壁紙を貼り付けることによって再利用が可能になる。また石膏ボードの破壊片等が生じないため、廃棄物量の大幅な削減が可能になる。さらに下ランナーをそのまま幅木として使用することもできるため、この幅木の製造と組み付けコストとの大幅な削減が可能になる。第5に、ケンドン式の差込溝を、上ランナー及び下ランナーに着脱自在な別部材で構成することによって、ケンドン式の差込溝を備えていない、従来の上ランナー等が利用可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1及び図3を参照しつつ、本発明による間仕切り壁構造の具体例を説明する。なおこの間仕切り壁構造は、例えば両側に部屋を設けるために住居空間を2分するもので、中間に空間を有する二重パネル構造である。さて図1に示すように、本発明による間仕切り壁構造は、天井Aと床面Bとの間に、取り付け部材1を介して、間仕切りパネルである石膏ボード2を固定する構造である。取り付け部材1は、それぞれコの字断面形状の軽量鉄材からなる上ランナー11と、下ランナー12と、これらの間に装着する縦部材であるスタッド13とを備えている。なお上ランナー11と下ランナー12とは、それぞれビスによって、天井Aと床面Bとに固定する。またスタッド13は、互いに所定の間隔を隔てて、上ランナー11と下ランナー12とのコの字断面に挿入し、ビス止めする。
【0017】
上ランナー11と下ランナー12とには、軽量鉄材からなるブラケット3、4が着脱自在に取り付けてある。ブラケット3、4は、それぞれ略Ω(オメガ)の字断面形状を有しており、コの字断面形状の中央部分3a、4aが、それぞれ上ランナー11と下ランナー12との両外側面に嵌合している。またブラケット3、4は両側部に、それぞれ互いに対向して開口するコの字断面形状のケンドン式の差込溝3b、4bが形成してある。なお図3に、ブラケット3の拡大図を示す。
【0018】
次に図1を参照しつつ、本発明による間仕切り壁構造の取り付け手順を説明する。まず住居内の間仕切りする位置において、上ランナー11と下ランナー12とを、それぞれ天井Aと床面Bとにビス止めする。次いで上ランナー11と下ランナー12との間に、相互に所定の間隔をおいて、スタッド13を挿入してビス止めする。次に上ランナー11と下ランナー12とに、ブラケット3、4とを装着する。なおスタッド13と重なる部分は、相互が干渉しないように、ブラケット3、4の一部が切り欠いてある。
【0019】
次にスタッド13に、両面接着テープ5を複数個所貼りつけておき、石膏ボード2の上端部を、上ランナー11に装着したブラケット3の差込溝3bに挿入する。次いで石膏ボード2を吊り上げて、この石膏ボードの下端部を、下ランナー12に装着したブラケット4の差込溝4bに挿入して落とし込む。そして両面接着テープ5を貼着した部分を押圧し、石膏ボード2をスタッド13に接着する。最後に石膏ボード2の表面に壁紙を貼って仕上げる。
【0020】
本発明による間仕切り壁構造の取り外しは、上述した取り付けと逆の手順で行なう。すなわちまず、石膏ボード2の合わせ面において、カッター等で壁紙を切断する。次いで石膏ボード2を少し手前に引いて、両面接着テープ5をスタッド13から剥し、その状態で吊り上げる。そして石膏ボード2の下端部を、下ランナー12に装着したブラケット4の差込溝4bから取り出し、少し手前に引いて、この石膏ボードの上端部を、上ランナー11に装着したブラケット3の差込溝3bから取り外す。最後にブラケット3、4、スタッド13、及び上ランナー11と下ランナー12とを、順次取り外す。
【0021】
図2及び図4を参照しつつ、本発明による間仕切り壁構造の他の具体例を説明する。なおこの間仕切り壁構造は、例えば住居の側壁Cに接して設ける一重パネル構造である。また上述したものと同等の部材や部位については、参照を容易にするため、一律100を加えた記号にしてある。さて図2に示すように、本発明による間仕切り壁構造は、天井Aと床面Bとの間に、取り付け部材101を介して、間仕切りパネルである石膏ボード102を固定する構造である。取り付け部材101は、それぞれコの字断面形状の軽量鉄材からなる上ランナー111と、下ランナー112と、これらの間に装着する縦部材であるスタッド113とを備えている。なお上ランナー111と下ランナー112とは、それぞれビスによって、天井Aと床面Bとに固定する。またスタッド113は、互いに所定の間隔を隔てて、上ランナー111と下ランナー112とのコの字断面に挿入し、ビス止めする。
【0022】
上ランナー111と下ランナー112とには、軽量鉄材からなるブラケット103、104が着脱自在に取り付けてある。ブラケット103、104は、それぞれ略横Sの字断面形状を有しており、コの字断面形状の中央部分103a、104aが、それぞれ上ランナー111と下ランナー112との一方の外側部材に嵌合している。またブラケット103、104は一方の外側部に、それぞれ互いに対向して開口するコの字断面形状のケンドン式の差込溝103b、104bが形成してある。なお図4に、ブラケット103の拡大図を示す。
【0023】
なおこの間仕切り壁構造の取り付け、及び取り外しは、上述したものと同等の手順で行なうことができる。
【0024】
なおブラケット3、4等は、上ランナー11等と下ランナー12等と一体的に形成することも容易にできる。またブラケット3、4等の差込溝3b、4b等と、石膏ボード2等との隙間にシール部材を挿入して、密閉性を向上させることも有効である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明による間仕切り壁構造は、間仕切りパネルの取り付け及び取り外しが簡単で、かつ容易に再利用またはリサイクルできるため、建築に関する産業に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】間仕切り壁構造の横断面図である。
【図2】他の間仕切り壁構造の横断面図である。
【図3】ブラケットの断面図である。
【図4】他のブラケットの断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1、101 取り付け部材
11、111 上ランナー
12、112 下ランナー
13、113 スタッド
2、102 石膏ボード(仕切りパネル)
3、103 ブラケット
3b、103b 差込溝
4、104 ブラケット
4b、104b 差込溝
5、105 両面接着テープ(接着材)
A 天井
B 床面
C 側壁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井と床面との間に、取り付け部材を介して間仕切りパネルを固定する間仕切り壁構造であって、
上記取り付け部材は、上ランナーと下ランナーと、これらの間に装着するスタッドとを備え、
上記上ランナーと下ランナーとの側面には、それぞれ互いに対向して開口するコの字断面形状のケンドン式の差込溝が設けてあり、
上記間仕切りパネルの上下端部を、それぞれ上記上ランナーと下ランナーとの差込溝に差込み、この間仕切りパネルの裏面と上記スタッドとを着脱自在の接着材によって接合して構成してある
ことを特徴とする間仕切り壁構造。
【請求項2】
請求項1において、上記ケンドン式の差込溝は、上記上ランナー及び下ランナーとに着脱自在な別部材で構成してあることを特徴とする間仕切り壁構造。
【請求項3】
請求項1〜2において、上記間仕切りパネルは、石膏ボードであることを特徴とする間仕切り壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−262823(P2007−262823A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91958(P2006−91958)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(599084500)社団法人新都市ハウジング協会 (1)