間充織幹細胞の分離及び培養方法
本明細書は、Notch2受容体を発現する間充織幹細胞(MSC)(Notch2+MSC)の比較的に純粋な集団を提供する。また、被験者からNotch2+MSCの集団を分離する方法、及びNotch2+MSCの集団を培養する方法を提供する。また、Notch2+MSCの集団を被験者に投与することを含む、間葉細胞系列における欠陥又は異常と関連する障害を患っている被験者を治療する方法を提供する。本発明は、複数の継代を通して能力を維持する間充織幹細胞(MSC)の集団を、被験者から分離する方法であって、(a)前記被験者からMSCを含む生物学的試料を得ること;及び(b)前記生物学的試料からNotch2受容体を発現するMSCを選択し、Notch2+MSCの集団を得ることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年2月2日に出願された米国特許仮出願第61/300,625号の優先権の利益を主張し、その全体は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号AR057022−01及びAR059733−01の下、政府支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
MSCは、骨髄、血液、脂肪組織、滑膜、及び胎児組織を含む、種々のヒトの組織及び部分から分離することができる。ヒトのMSCは、培地中でゆっくりと増殖し、細胞の老化が進行し、増殖及び細胞通過の際に、「幹細胞様」の性質を失う傾向にある。ヒトのMSC(hMSC)集団は、通常、CD105、CD166、CD44、Stro−1を含む多くの細胞表面マーカーを発現し、CD34、CD45及びCD31を含む造血及び内皮細胞系列マーカーを発現しない。これらのマーカーの多くは、骨髄からのコロニー形成前駆細胞集団を濃縮するための使用に成功してきた。骨髄間室細胞のサブセットのみがコロニー形成性及び多分化能であり、それ故、真のMSCとして同定され得る。コロニー形成性及び多分化能MSCは、コロニー形成単位−繊維芽細胞(CFU−F)アッセイを用いて古典的に同定されてきた。貯蔵した時、又は骨髄間室細胞を低密度で培養した時に、単一の細胞−拡張コロニーを形成する。コロニー形成単位の頻度(CFU−Fs)は、骨髄間室細胞集団から分離された、コロニー形成性及び多分化能MSCの出現率を用いて直接関連づけられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書において、間充織幹細胞(MSC)の集団を被験者から分離する方法が提供される。この方法は、被験者からMSCを含む生物学的試料を得る工程、及び生物学的試料からNotch2受容体を発現するMSCを選択し、Notch2+MSCの集団を得る工程を含む。また、本発明は、Notch2受容体を発現するMSC(Notch2+MSC)の相対的に純粋な集団を提供する。
【0005】
本発明において、Notchシグナル経路の活性化剤の存在下に、MSCを培養する工程を含む、Notch2+MSCの集団を培養する方法が提供される。また、本発明は、間葉細胞系列における欠陥又は異常と関連する疾患を患っている被験者を治療する方法を提供する。この治療法は、Notch2+MSCの集団を被験者に投与することを含む。
【0006】
1つ以上の実施形態の詳細を、添付図面及び以下の詳細な説明に示す。他の特徴、目的及び利点は、詳細な説明及び図面、並びに請求項から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図1B】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図1C】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図1D】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図1E】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図2A】図2A〜2Cは、DAPTで仲介されるNotchの阻害が、細胞系列の決定を偏らせることなく、肢芽MSC分化を促進することを示す画像及びグラフである。具体的には、図2A〜2Cは、肢芽MSC培養、それに続く、Notch阻害剤、DAPT(1μM)又は媒体による連続処理の染色及び分析を示す。図2Aは、微量の肢芽MSC軟骨結節のアルシアンブルー染色の顕微鏡写真、並びに初期の軟骨形成マーカー、Sox9、Col2a1及びAgc1のRT−PCR発現レベルのグラフを示す。図2Bは、肢芽MSC骨形成単層培養物のアルカリホスファターゼ染色の顕微鏡写真、並びに骨形成マーカー、Colla1、AP及びOcのRT−PCR遺伝子発現レベルの画像を示す。図2Cは、肢芽MSC脂肪細胞形成単層培養物のオイルレッド−O染色の顕微鏡写真、並びに脂肪細胞形成マーカー、PparγのRT−PCR遺伝子発現レベルのグラフを示す。グラフのY−軸は、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)hr、時間:d、日。
【図2B】図2A〜2Cは、DAPTで仲介されるNotchの阻害が、細胞系列の決定を偏らせることなく、肢芽MSC分化を促進することを示す画像及びグラフである。具体的には、図2A〜2Cは、肢芽MSC培養、それに続く、Notch阻害剤、DAPT(1μM)又は媒体による連続処理の染色及び分析を示す。図2Aは、微量の肢芽MSC軟骨結節のアルシアンブルー染色の顕微鏡写真、並びに初期の軟骨形成マーカー、Sox9、Col2a1及びAgc1のRT−PCR発現レベルのグラフを示す。図2Bは、肢芽MSC骨形成単層培養物のアルカリホスファターゼ染色の顕微鏡写真、並びに骨形成マーカー、Colla1、AP及びOcのRT−PCR遺伝子発現レベルの画像を示す。図2Cは、肢芽MSC脂肪細胞形成単層培養物のオイルレッド−O染色の顕微鏡写真、並びに脂肪細胞形成マーカー、PparγのRT−PCR遺伝子発現レベルのグラフを示す。グラフのY−軸は、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)hr、時間:d、日。
【図2C】図2A〜2Cは、DAPTで仲介されるNotchの阻害が、細胞系列の決定を偏らせることなく、肢芽MSC分化を促進することを示す画像及びグラフである。具体的には、図2A〜2Cは、肢芽MSC培養、それに続く、Notch阻害剤、DAPT(1μM)又は媒体による連続処理の染色及び分析を示す。図2Aは、微量の肢芽MSC軟骨結節のアルシアンブルー染色の顕微鏡写真、並びに初期の軟骨形成マーカー、Sox9、Col2a1及びAgc1のRT−PCR発現レベルのグラフを示す。図2Bは、肢芽MSC骨形成単層培養物のアルカリホスファターゼ染色の顕微鏡写真、並びに骨形成マーカー、Colla1、AP及びOcのRT−PCR遺伝子発現レベルの画像を示す。図2Cは、肢芽MSC脂肪細胞形成単層培養物のオイルレッド−O染色の顕微鏡写真、並びに脂肪細胞形成マーカー、PparγのRT−PCR遺伝子発現レベルのグラフを示す。グラフのY−軸は、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)hr、時間:d、日。
【図3A】図3A1〜3A8は、インビボにおけるRBPjκ−依存性Notchシグナルが四肢発生の際に軟骨形成を加速することを示す画像を示し、図3Bはグラフを示す。図3A1及び3A2は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rbpjκf/f (RBPjκ)胎生12.5日齢後肢のアルシアンブルー染色を示す。図3A3〜3A8は、軟骨形成マーカー遺伝子Sox9(図3A3及び3A4)、Col2a1(図3A5及び3A6)及びAgc1(図3A7及び3A8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現分析を示す。図3Bは、WT及びRBPjκ変異体胎生12.5日齢後肢の全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)
【図3B】図3A1〜3A8は、インビボにおけるRBPjκ−依存性Notchシグナルが四肢発生の際に軟骨形成を加速することを示す画像を示し、図3Bはグラフを示す。図3A1及び3A2は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rbpjκf/f (RBPjκ)胎生12.5日齢後肢のアルシアンブルー染色を示す。図3A3〜3A8は、軟骨形成マーカー遺伝子Sox9(図3A3及び3A4)、Col2a1(図3A5及び3A6)及びAgc1(図3A7及び3A8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現分析を示す。図3Bは、WT及びRBPjκ変異体胎生12.5日齢後肢の全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)
【図4A】図4A1〜4A6及び4B1〜4B10は、骨格の発達の際のMSC分化を抑制するNotchシグナルの持続的活性化を示す画像を示し、図4Cはグラフを示す。図4A1〜4A6は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)変異体胎生18.5日の全骨格(図4A1及び4A2)、前肢(図4A3及び4A4)、及び後肢(図4A5及び4A6)のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。図4B1及び4B2は、胎生12.5日におけるWT及びNICD後肢のアルシアンブルー染色を示す。図4B3〜4B8は、骨形成マーカー遺伝子Sox9(図4B3及び4B4)、Col2a1(図4B5及び4B6)及びAgc1(図4B7及び4B8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現レベルを示す。図4B9及び4B10は、WT(図4B9)及びNICD変異体(図4B10)後肢におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。図4Cは、骨形成マーカー、Sox9、Col2a1、Agc1及びRunx2、並びにRBPJκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLについての全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)。d、桁;r、半径;u、尺骨;h、上腕;s、肩甲骨;t、脛骨;fi、排骨;fe、大腿骨;il、イリウム;pu、恥骨。
【図4B】図4A1〜4A6及び4B1〜4B10は、骨格の発達の際のMSC分化を抑制するNotchシグナルの持続的活性化を示す画像を示し、図4Cはグラフを示す。図4A1〜4A6は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)変異体胎生18.5日の全骨格(図4A1及び4A2)、前肢(図4A3及び4A4)、及び後肢(図4A5及び4A6)のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。図4B1及び4B2は、胎生12.5日におけるWT及びNICD後肢のアルシアンブルー染色を示す。図4B3〜4B8は、骨形成マーカー遺伝子Sox9(図4B3及び4B4)、Col2a1(図4B5及び4B6)及びAgc1(図4B7及び4B8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現レベルを示す。図4B9及び4B10は、WT(図4B9)及びNICD変異体(図4B10)後肢におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。図4Cは、骨形成マーカー、Sox9、Col2a1、Agc1及びRunx2、並びにRBPJκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLについての全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)。d、桁;r、半径;u、尺骨;h、上腕;s、肩甲骨;t、脛骨;fi、排骨;fe、大腿骨;il、イリウム;pu、恥骨。
【図4C】図4A1〜4A6及び4B1〜4B10は、骨格の発達の際のMSC分化を抑制するNotchシグナルの持続的活性化を示す画像を示し、図4Cはグラフを示す。図4A1〜4A6は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)変異体胎生18.5日の全骨格(図4A1及び4A2)、前肢(図4A3及び4A4)、及び後肢(図4A5及び4A6)のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。図4B1及び4B2は、胎生12.5日におけるWT及びNICD後肢のアルシアンブルー染色を示す。図4B3〜4B8は、骨形成マーカー遺伝子Sox9(図4B3及び4B4)、Col2a1(図4B5及び4B6)及びAgc1(図4B7及び4B8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現レベルを示す。図4B9及び4B10は、WT(図4B9)及びNICD変異体(図4B10)後肢におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。図4Cは、骨形成マーカー、Sox9、Col2a1、Agc1及びRunx2、並びにRBPJκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLについての全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)。d、桁;r、半径;u、尺骨;h、上腕;s、肩甲骨;t、脛骨;fi、排骨;fe、大腿骨;il、イリウム;pu、恥骨。
【図5A】図5A1〜5A6及び5C1〜5C2は、肢間充織内のNotchシグナルの持続する活性化が、肢の様式又はアポトーシスに著しく影響しないが、肢の発達の際にMSCの増殖を増大させることを示す画像であり、図5B及び5C3〜5C4はグラフを示す。図5A1〜5A6は、胎生11.0日における野生型(WT)(図5A1、5A3及び5A5)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+変異体(NICD)(図5A2、5A4及び5A6)肢芽のin situハイブリダイゼーション分析を示す。肢芽増殖及びパターニン形成マーカー:Fgf8(図5A1及び5A2)、Fgf10(図5A3及び5A4)、及びPtc1(図5A5及び5A6)について遺伝子発現パターンを分析した。図5Bは、胎生11.0日において、WT及びNICD変異体について実施したMSCアポトーシスの蛍光TUNEL染色及び統計分析を示す。胎生11.5日において、WT(図5C1)及びNCID変異体(図5C2)についてMSC増殖ののBrdU免疫組織学(図5C1及び5C2)及び統計分析(図5C3)を実施した。(*対照に対し、p<0.05)。AZ、頂端領域。破線を引いた部分は、MSC増殖について分析した領域を示す。図5C4は、NICD変異体及び対照肢芽に由来するRNAを用いた、E11.5におけるcyclinD1のRT−PCRレベルを示す。
【図5B】図5A1〜5A6及び5C1〜5C2は、肢間充織内のNotchシグナルの持続する活性化が、肢の様式又はアポトーシスに著しく影響しないが、肢の発達の際にMSCの増殖を増大させることを示す画像であり、図5B及び5C3〜5C4はグラフを示す。図5A1〜5A6は、胎生11.0日における野生型(WT)(図5A1、5A3及び5A5)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+変異体(NICD)(図5A2、5A4及び5A6)肢芽のin situハイブリダイゼーション分析を示す。肢芽増殖及びパターニン形成マーカー:Fgf8(図5A1及び5A2)、Fgf10(図5A3及び5A4)、及びPtc1(図5A5及び5A6)について遺伝子発現パターンを分析した。図5Bは、胎生11.0日において、WT及びNICD変異体について実施したMSCアポトーシスの蛍光TUNEL染色及び統計分析を示す。胎生11.5日において、WT(図5C1)及びNCID変異体(図5C2)についてMSC増殖ののBrdU免疫組織学(図5C1及び5C2)及び統計分析(図5C3)を実施した。(*対照に対し、p<0.05)。AZ、頂端領域。破線を引いた部分は、MSC増殖について分析した領域を示す。図5C4は、NICD変異体及び対照肢芽に由来するRNAを用いた、E11.5におけるcyclinD1のRT−PCRレベルを示す。
【図5C】図5A1〜5A6及び5C1〜5C2は、肢間充織内のNotchシグナルの持続する活性化が、肢の様式又はアポトーシスに著しく影響しないが、肢の発達の際にMSCの増殖を増大させることを示す画像であり、図5B及び5C3〜5C4はグラフを示す。図5A1〜5A6は、胎生11.0日における野生型(WT)(図5A1、5A3及び5A5)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+変異体(NICD)(図5A2、5A4及び5A6)肢芽のin situハイブリダイゼーション分析を示す。肢芽増殖及びパターニン形成マーカー:Fgf8(図5A1及び5A2)、Fgf10(図5A3及び5A4)、及びPtc1(図5A5及び5A6)について遺伝子発現パターンを分析した。図5Bは、胎生11.0日において、WT及びNICD変異体について実施したMSCアポトーシスの蛍光TUNEL染色及び統計分析を示す。胎生11.5日において、WT(図5C1)及びNCID変異体(図5C2)についてMSC増殖ののBrdU免疫組織学(図5C1及び5C2)及び統計分析(図5C3)を実施した。(*対照に対し、p<0.05)。AZ、頂端領域。破線を引いた部分は、MSC増殖について分析した領域を示す。図5C4は、NICD変異体及び対照肢芽に由来するRNAを用いた、E11.5におけるcyclinD1のRT−PCRレベルを示す。
【図6A】図6A1〜6A4及び6B1〜6B15は、Notchシグナルが、RBP−Jκ−依存様式でMSCの分化を抑制することを示す画像である。図6A1〜6A4は、野生型(WT)、Prx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)、Prx1Cre/Rbpjκf/f(RBPjκ)、及び、Prx1Cref/Rosa−NICDf/+/Rbpjκf/f (NICD;RBPjκ)変異体胎生18.5日の全骨格のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。灰色の矢印は、WT、RBPjκ、及びNICD;RBPjκの脛骨の長さを示す。図6B1〜6B3は、胎生12.5日における、WT、NICD及びNICD;RBPjκ同腹子の後肢のアルシアンブルー染色を示す(B1〜B3)。図6B4〜6B12は、軟骨形成マーカー遺伝子Sox9(図6B4〜6B6)、Col2a1(図6B7−6B9)、及びAgc1(図6B10〜6B12)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現分析を示す。図6B13〜6B15は、WT(図6B13)、NICD変異体(図6B14)、及びNICD;RBPjκrescue(図6B15)の後肢部分におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。
【図6B】図6A1〜6A4及び6B1〜6B15は、Notchシグナルが、RBP−Jκ−依存様式でMSCの分化を抑制することを示す画像である。図6A1〜6A4は、野生型(WT)、Prx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)、Prx1Cre/Rbpjκf/f(RBPjκ)、及び、Prx1Cref/Rosa−NICDf/+/Rbpjκf/f (NICD;RBPjκ)変異体胎生18.5日の全骨格のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。灰色の矢印は、WT、RBPjκ、及びNICD;RBPjκの脛骨の長さを示す。図6B1〜6B3は、胎生12.5日における、WT、NICD及びNICD;RBPjκ同腹子の後肢のアルシアンブルー染色を示す(B1〜B3)。図6B4〜6B12は、軟骨形成マーカー遺伝子Sox9(図6B4〜6B6)、Col2a1(図6B7−6B9)、及びAgc1(図6B10〜6B12)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現分析を示す。図6B13〜6B15は、WT(図6B13)、NICD変異体(図6B14)、及びNICD;RBPjκrescue(図6B15)の後肢部分におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。
【図7A】図7A1〜7A6は、Hes1が、MSCの分化及び軟骨形成を制御する、RBPjκ−依存性Notch標的遺伝子であることを示す画像を、図7Bはグラフを示す。図7A1〜7A6は、微量で3、4又は7日間培養した、感染した対照(図7A1、7A3及び7A5)及び感染したHes1 shRNA infected(shHes1)(図7A2、7A4及び7A6)の肢芽MSC細胞のアルシアンブルー染色を示す。図7Bは、インビトロにおける軟骨形成、それに続くHes1のノックダウンの際の軟骨形成マーカーSox9、Col2a1、Agc1についてのRT−PCR遺伝子発現レベルを示す。グラフのY−軸は、3日における、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)d、日。
【図7B】図7A1〜7A6は、Hes1が、MSCの分化及び軟骨形成を制御する、RBPjκ−依存性Notch標的遺伝子であることを示す画像を、図7Bはグラフを示す。図7A1〜7A6は、微量で3、4又は7日間培養した、感染した対照(図7A1、7A3及び7A5)及び感染したHes1 shRNA infected(shHes1)(図7A2、7A4及び7A6)の肢芽MSC細胞のアルシアンブルー染色を示す。図7Bは、インビトロにおける軟骨形成、それに続くHes1のノックダウンの際の軟骨形成マーカーSox9、Col2a1、Agc1についてのRT−PCR遺伝子発現レベルを示す。グラフのY−軸は、3日における、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)d、日。
【図8】図8は、WT及びNICD変異体の肢間充織からの胎生11.5日齢の切片におけるアポトーシス細胞の数値を示すグラフである。活性化カスパーゼ−3免疫組織学を用い、データは、肢間充織中のNotchシグナルの持続的活性化がMSCアポトーシスに影響しないことを示す。
【図9−1】図9A1〜9A6及び9B1〜9B6は、Hes1が軟骨形成のC3H10T1/2モデルにおけるMSC分化の重要な調節因子である画像を示し、図9C及び9Dはグラフを示す。図9A1〜9A6及び9B1〜9B6は、小塊で5、10又は14日培養した、対照で感染した(図9A1、9A3及び9A5)、Hes1 shRNAで感染した(shHes1)(図9A2、9A4、及び9A6)、対照で形質移入された(図9B1、9B3及び9B5)、及び、Hes1で形質移入された(CMV−Hes1)(図9B2、9B4、及び9B6)C3H10T1/2細胞のアルシアンブルー染色を示す。図9C及び9Dは、インビトロにおける軟骨形成、それに続くHes1のノックダウン(図9C)又はHes1の過剰発現(図9D)の際の軟骨形成マーカーSox9、Col2a1、Agc1及びNotch標的遺伝子、Hes1についてのRT−PCR遺伝子発現レベルを示す。グラフのY−軸は、5日における、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)d、日。
【図9−2】図9A1〜9A6及び9B1〜9B6は、Hes1が軟骨形成のC3H10T1/2モデルにおけるMSC分化の重要な調節因子である画像を示し、図9C及び9Dはグラフを示す。図9A1〜9A6及び9B1〜9B6は、小塊で5、10又は14日培養した、対照で感染した(図9A1、9A3及び9A5)、Hes1 shRNAで感染した(shHes1)(図9A2、9A4、及び9A6)、対照で形質移入された(図9B1、9B3及び9B5)、及び、Hes1で形質移入された(CMV−Hes1)(図9B2、9B4、及び9B6)C3H10T1/2細胞のアルシアンブルー染色を示す。図9C及び9Dは、インビトロにおける軟骨形成、それに続くHes1のノックダウン(図9C)又はHes1の過剰発現(図9D)の際の軟骨形成マーカーSox9、Col2a1、Agc1及びNotch標的遺伝子、Hes1についてのRT−PCR遺伝子発現レベルを示す。グラフのY−軸は、5日における、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)d、日。
【図10】図10A及び10Bは、hMSC中で発現するNotch分子を示すグラフである。遺伝子発現をベータ−アクチンに対して標準化し、任意の単位で表した。
【図11】図11A〜11Cは、多分化能幹細胞マーカー及びhMSC増殖の組換えJagged1誘導を示すグラフである。図11Aは、Notch成分、及び継代1(P1)及び継代15(P15)におけるhMSC内での幹細胞多分化能の調節因子についての遺伝子発現レベルを示す。図11Bは、Notch標的遺伝子、及び対照IgG又はJag1をコーティングしたプレートで培養したhMSC内での幹細胞多分化能の調節因子についての遺伝子発現レベルを示す。全ての遺伝子発現をベータ−アクチンに対して標準化し、次いでP1対照(図11A)又はIgG対照(図11B)に対して標準化した。図11Cは、IgG対照又はJag1コーティングプレートにおいて培養したhMSCの増殖を測定するBrdU ELISAアッセイを示す。
【図12】図12A及びBは、標準的なhMSC培養条件における継代2及び10に続く、hMSC細胞表面マーカー、CD105(A)、及びNotch受容体、Notch2(B)についてのフローサイトメトリーのデータを示す。
【図13】図13A〜Cは、Notch2選択的hMSCにおける、Jag1が介在するNotch活性化が、幹細胞調節因子、細胞増殖、及び幹細胞膨張を誘導することを示す。図13Aは、Jag1コーティングプレートで培養した、全hMSC及びNotch選択的hMSC内でのNotchシグナル分子(Notch2及びHes1)、重要な幹細胞制御分子(Oct4、Sox2、及びNanog)、及び細胞増殖のマーカー(CycD1)についてのリアルタイムRT−PCR遺伝子発現分析を示す。図13Bは、Jag1コーティングプレートで培養した、全hMSC、Notch2陰性hMSC、およびNotch2陽性hMSC上で行われたBrdU ELLISAアッセイを示す。図13Bは、Jag1コーティングプレート上での培養に続いて行われた、全hMSC、Notch2陰性hMSC、およびNotch2陽性hMSC上でのCFU−Fアッセイを示す。
【図14】図14A〜Dは、Notch2−選択的hMSCが、Jag1が介在する維持及び拡張に次ぎ、軟骨形成及び骨形成の向上を示すことを示す。図14A及びCは、2又は3週間、軟骨形成又は骨形成条件で培養した後の、全Notch2−陰性及びNotch2−陽性hMSC由来の軟骨形成(Sox9、Col2a1、及びAgc1)(A)及び骨形成(Col1a1、Ap、及びOc)(C)マーカー遺伝子についてのリアルタイムRT−PCR遺伝子発現分析を示す。図14Bは、軟骨形成分化に続く、全Notch2−陰性及び陽性hMSC(継代2)のアルシアンブルー染色を示す。図14Dは、骨形成分化に続く、Notch2−陰性及び陽性hMSC(継代2及び5)のAP染色を示す。hMSCは、最初にJag1コーティングプレートで2代継代培養した(3〜4日/継代)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
間充織幹細胞(MSC)内におけるNotch経路についての作用の正確な役割及び様式を決定するため、組織特異的機能喪失(Prx1Cre;Rbpjκf/f)、機能獲得(Prx1Cre;Rosa−NICDf/+)及び遺伝子レスキューマウス(Prx1Cre;Rosa−NICDf/+;Rbpjκf/f)を生成し、初期肢発生の際のMSC増殖及び分化における欠陥について分析した。結果を以下の実施例1に示す。データは、Hes1が、MSC内で発現するHes/Heyファミリーの主要なRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子であることを示す。さらに、これらのデータは、RBPjκ−依存Notchシグナル経路が、骨格発達の際のMSCの維持及び拡張のために重要であることを示す。したがって、Notch経路の操作は、MSC集団を利用する、骨格修復及び再生医療用途のために、MSCの分化を維持、拡張及び調節する手段を提供する。hMSCのNotch活性化の制御は、hMSCの維持及び拡張を促進するが、それらの軟骨形成、骨形成及び脂肪細胞形成分化の可能性を維持する。したがって、本明細書に開示されるものは、MSCの相対的に純粋な集団、及びMSCの分離及び培養方法を開示する。
【0009】
Notch2受容体(Notch2+MSC)を発現するMSCの相対的に純粋な集団が提供される。本明細書で用いられる場合、相対的に純粋という用語は、Notch2を発現する集団における、MSCの少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%を意味する。場合により、Notch2+MSCは、複数の継代を通じて拡張する能力を維持する。Notch2+MSCは、CD105、CD106、CD156、CD44、CD29、CD166、Stro−1、FGF10、Prx1、Oct4、Sox2、及びNanogからなる群から選択される間充織幹細胞と関連する1つ以上の追加のマーカーを発現する。場合により、Notch2+MSCは、CD105及びCD156を発現する。場合により、Notch2+MSCは、CD34、CD45、CD14及びCD31からなる群から選択される造血又は表皮細胞系列と関連する1つ以上のマーカーを発現しない。
【0010】
Notch2+MSCの比較的に純粋な集団は、非分化培養条件において安定である。本明細書で用いられる場合、非分化培養条件には、分化を促進せずに増殖を促進する培養条件が含まれるが、これに限定されない。例えば、細胞は、ウシ胎児血清、又は分化を起こさない血清を含まない代替物の存在下に、例えばDMEM、RPMI等で維持することができる。
【0011】
具体的には、被験者からMSCを分離する方法が提供される。この方法は、被験者からMSCを含む生物学的試料を得、生物学的試料からNotch2受容体を発現するMSCを選択し、Notch2+MSCの集団を得る工程を含む。また、提供される方法により製造されるNotch2+MSCの相対的に純粋な集団が提供される。MSCは、複数の継代を通じて拡張する能力を維持している。MSCは、少なくとも約5、10、15又は20回、又は5〜20回の任意の回数継代することができる。場合により、MSCは10回以上継代することができる。例えば、MSCは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20回継代することができる。
【0012】
本明細書で用いられる場合、「継代」又は「継代する」は、細胞を継代培養することを意味する。細胞を培養及び継代培養する方法及び材料は公知である。例えば、細胞は、インキュベーター内の、例えば、皿又はプレートのような培地を含む基質上で増殖させられる。継代培養の際、培地を除去し、細胞を洗浄し、次いで、基質から細胞を分離する薬剤を加える。分離した培地を懸濁し、懸濁液内の適切な数の細胞を新しい基質に移し、新しい培地を加え、新しい基質をインキュベーターに入れ、そのサイクルを再度開始する。細胞は、場合により、100%未満(増殖の対数期)であるが、密集の10%以上に維持される。細胞は、少なすぎるかあまりに密集すると死滅する。
【0013】
選択工程は、フローサイトメトリー、磁気ビーズ分離、パニング、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は親和性クロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない種々の方法の任意の1つを用いて実施される。例えば、フローサイトメトリー又はFACSは、蛍光強度、並びに細胞のサイズ及び光の散乱のようなその他のパラメータに基づき細胞集団を分離するために用いられることができる。
【0014】
選択工程は、場合により、Notch2受容体抗体又は他のNotch2受容体リガンドを用いて実施される。場合により、抗体又はリガンドは基質に結合し、例えば、基質は可動式又は固定式の固体支持体であってもよい。場合により、可動式固体支持体は蛍光ビーズである。場合により、固定式固体支持体はカラム又はプレートである。試料を基質と接触させ、Notch2+細胞を有する基質をNotch2+細胞を欠く基質から選別するか、試料中の結合MSCを、例えば競争結合工程によって基質から分離する。蛍光ラベル又は他の標識手段は、MSCを選別するために用いることができる。FACSのような選別方法を用いて、特に所望の発現プロフィールを有するMSCの種々の集団を選別することができる。
【0015】
被験者からの試料は、例えば、骨髄、脂肪組織、滑膜、骨膜、軟骨膜、軟骨、歯の組織、胎盤組織、肝臓組織、筋肉組織、肺組織、心臓組織、結合組織、及び脾臓組織からなる群から選択されるMSC含有試料から選択される。
【0016】
分離したNotch2+MSCを、例えば、細胞の生存度を維持する任意の適切な培地内に集める。場合により、培地は、収集容器、例えば、試験管に配置される。種々の培地は市販されており、それを用いてもよく、場合によりウシ胎児血清を追加していてもよい、ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩液(dPBS)、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地、Iscove培地等を含むが、これらに限定されない。
【0017】
また、Notchシグナル経路の活性化剤の存在下に、MSCを培養する工程を含む、Notch2+MSCの集団の培養法法が提供される。場合により、培養条件は、Notch2+MSCの集団が拡張される条件である。種々の培地が市販されており、MSCを培養するために用いてもよく、これらは場合によりウシ胎児血清を追加していてもよいDMEM、HBSS、dPBS、RPMI培地、Iscove培地等を含むがこれらに限定されない。
【0018】
場合により、Notchシグナル経路の活性化剤は、delta−like 1、delta−like 3、delta−like 4、Jagged 1、Jagged 2、Dlk1/Pref1、DNER、Contactin1(F3)、Contactin6(NB3)、CCN3/NOV、MAGP1、及びMAGP2からなる群から選択される。場合により、Notchシグナル経路の活性化剤は、Notch受容体の細胞内ドメインである。場合により、Notch受容体は、Notch1、Notch2、Notch3又はNotch4である。Notchシグナル経路の活性化剤は、培養皿に部分的又は完全に固定化していてもよい。また、活性化剤は培地内で可溶性であってもよい。
【0019】
Notch活性化は、Notch細胞内ドメイン(ICD)の切断及び遊離を引き起こすリガンドにより誘導され得る。NICDは核へ転位し、RBPjkと相互作用し、標的遺伝子を活性化する。MSC内でのNotchシグナルは、Notch ICDを直接発現することによっても活性化され得る。Notch ICDの発現は、細胞内でペプチドを発現させる任意の手段を用い、例えば発現ベクター(例えば、ウイルスベクター)を用いて提供することができる。Notch ICDの発現は一時的であるか、又は安定である。
【0020】
培養方法は、1つ以上の分化誘導薬の存在下にNotch2+MSCの集団を培養する工程をも含む。Notchの活性化が「停止し」、細胞の分化が可能になる。場合により、1つ以上の分化誘導薬は、軟骨形成、骨形成又は脂肪細胞形成系列への分化を選択的に誘導する。異なる培養条件下でのNotch2+MSCの培養は、所望のタイプの表現型、例えば、脂肪細胞、軟骨細胞等を有する選択細胞を濃縮する培養環境においてMSCを培養又は分化させることにより実施される。したがって、培地は、特定の系列への分化を増大させる薬剤を含んでいてもよい。例えば、軟骨形成分化は、9−グリセロールホスフェート、アスコルビン酸及びレチン酸を含む培地中でMSCを培養することにより増大させることができる(Cowanら、(2005)Tissue Engineering 11:645−658)。脂肪細胞形成分化は、例えば、デキサメタゾン、インドメタシン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)及びインスリンを含む培地中でMSCを培養し、次いでインスリンを含む培地内で維持することにより、増大させることができる。筋細胞分化は、例えば、5−アザシチジンを含む培地(Fukudaら、(2001)Artificial Organs 25:187)、又はウマ血清、デキサメタゾン及びヒドロコルチゾンを含む培地(Eunら(2004)Stem Cells 22:617−624)内で培養することにより、増大させることができる。軟骨細胞分化は、例えば、
【数1】
(Williamsら、(2003)Tissue Engineering 9(4):679)を含むか又は含まない、デキサメタゾン、アスコルビン酸2−ホスフェート、インスリン、トランスフェリン及び亜セレン酸を含む培地中で培養することにより増大させることができる。培養における分離に続き、得られた細胞を直接用いるか、例えば、MSC及び他の未分化細胞を除去するための陰性選択においてさらに分離してもよい。さらに、所望の細胞型の濃縮は、細胞に特有のマーカーの選択により、例えば、フローサイトメトリー、磁気ビーズ分離、パニング等により得られることは公知である。
【0021】
Notch2+MSCの集団を被験者に投与することを含む、間葉細胞内の欠陥又は異常に関連する疾患を患っている患者の治療方法を提供する。Notch2+MSCの集団は、同一又は異なる被験者に由来する。
【0022】
Notch2+MSCは、必要に応じて被験者に投与される。例えば、Notch2+MSCは、骨又は軟骨の異常部位又はその近くで被験者に投与され、又は被験者に全身投与される。Notch2+MSCは、意図する組織に移植され、移動し、機能的欠陥部位を再構成又は再生できるような方法で投与される。場合により、MSCの表面の標的分子は、所望の部位への適切な移動を促進するように用いられる。例えば、MSCは、軟骨、成長板、骨及び腱/靱帯、並びに自家軟骨細胞移植片を設計するために用いることができる。したがって、MSCの投与は、比較的に純粋な集団により、又は再生医療を用いて生成される構築物内で細胞を投与することにより、実施することができる。
【0023】
Notch2+MSCの投与は、骨の手術(骨の手術は、顔の形成、上顎又は下顎の再構築、骨折修復、骨移植、プロテーゼ移植、関節置換術(臀部及び膝置換術)からなる群から選択される)に続く骨の形成を促進し得る。
【0024】
場合により、Notch2+MSCは分化し(上述したように)、被験者の患部に送達される。例えば、骨形成系列は、骨の疾患又は欠陥を患っている被験者に送達することができる。
【0025】
本明細書で用いられる場合、骨の疾患又は欠陥は、骨に対する健康又は完全な状態の喪失をもたらすか、それにより特徴づけられる、あらゆる骨の欠陥、疾患又は病状を意味し、骨粗鬆症、骨減少症、不完全な骨形成又は骨吸収、パジェット病、骨の破砕及び骨折、癌の骨への転位、骨化石症、骨硬化症及び骨軟骨症を含むが、これらに限定されない。骨の欠陥及び疾患には、骨折、及び先天性又は後天性の病状、例えば、骨形成不全症又は骨粗鬆症が含まれる。本明細書に開示される方法にしたがって治療及び/又は予防することのできる骨の疾患又は欠陥には、対応する病気ではない骨のものと比較して減少した骨質量によって特徴付けられる骨の疾患(例えば、骨粗鬆症、骨減少症及びパジェット病)が含まれる。軟骨の欠陥には、外相、又は、変形性関節症又はリウマチ性関節炎のような疾患により引き起こされうる関節軟骨の欠陥又は脊椎版の欠陥が含まれる。
【0026】
骨又は軟骨の欠陥若しくは疾患、又は、骨若しくは軟骨の欠陥若しくは疾患に関連する症状の治療は、発症後に、症状を遅くし、改善すること、又は、疾患若しくは症状を反転させることに積極的に介在することを包含する。本明細書で用いられる場合、治療は、骨又は軟骨の質量又は完全性を、対応する影響を受けていない骨(同じタイプの対応する骨、例えば、長い脊椎部分の骨)、又は、病気でない、若しくは、影響を受けていない状態の軟骨のものに、より近似させる方法を意味する。例として、手術後の治療の後、骨又は軟骨が、健康で外科的に影響を受けていない骨のようになる。
【0027】
Notch2+MSCは、医薬組成物の形態で投与することができる。このような組成物は、治療的有効量のMSC及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。このような担体には、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水及びそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。製剤は、投与様式に適したものとすべきである。場合により、MSC組成物は、静脈、関節内、又は椎間投与用に製剤化される。静脈投与用組成物は、例えば、無菌の等張水性バッファーによる溶液である。
【0028】
本明細書に開示された方法に用いるためのNotch2+MSCを含む組成物は、持続性及び/又は持効性製剤として製剤化することもできる。このような、持続性及び/又は持効性製剤は、持続放出手段、送達装置又は組織工学による構築物により製造することができる。組成物は、1つ以上の活性成分をゆっくりと又は持続的な放出を提供するためにのために用いることができ、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマー材料、ゲル、透過膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア又はそれらの組合せを用いて、種々の特性において所望の放出プロフィールを与えることができる。種々の適切な持続放出製剤は、本明細書に開示された組成物と一緒に用いられるために容易に選択することができる。場合により、組成物は制御放出システムにより送達することができる。例えば、組成物は、静脈内注射、移植可能な浸透圧ポンプ、リポソーム、又は他の投与法法を用いて投与することができる。制御放出システムは、標的の近くに置くことができる。例えば、マイクロポンプは、関節に直接、又は、骨若しくは軟骨に直接に制御用量を送達することができ、その結果、全身投与量の一画分のみが必要となった。(例えば、少なくともマイクロポンプに関する資料について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,vol.2,pp.115−138を参照されたい)。他の例においては、組成物は、ヒドロゲル用いて製剤化される(例えば、少なくともヒドロゲルに関する資料について、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,702,717号;第6,117,949号;第6,201,072号を参照されたい)。
【0029】
組成物を局所的に、すなわち治療を必要とする領域に投与することが望ましい。局所投与は、例えば、手術の際の点滴、局所投与、注射又はインプラントによる局所注射により達成される。インプラントは、浸透性、非浸透性、若しくはシリコン膜のような膜を含むゼリー状の材料であってもよく、骨若しくは軟骨のような組織を置換するように設計された組織再生医療構築物を含む。
【0030】
Notch2+MSCは有効量で用いられる。一般に、このような量は、体重1kgあたり少なくとも1×104MSCから体重1kgあたり3×105MSCの範囲である。場合により、MSCは、1×106MSC/体重1kgで投与される。MSCは、例えば、1日あたり1〜3回投与され、最適な効果及び薬学的用量に適合するように調整してもよい。当業者は、投与経路、受容者の年齢、性別、健康状態及び体重、症状の性質及び程度、同時に行っている治療の種類、治療の頻度及び所望の効果に基づき、投与量及び頻度を決定することができる。
【0031】
また、本発明は、本明細書に記載された1つ以上の成分(例えば、Notchシグナル経路の活性化剤、又はNotch2+MSC)で満たされた1個つ以上の容器を含む、パック又はキットを提供する。したがって、例えば、本明細書に開示されたキットは、Notch2+MSCの集団を含む。また、Notch2+MSCを分離するための組成物を含むキットが開示されている。場合により、キットは、Notch2+MSCを培養するための薬剤をさらに含む。このようなキットは、必要に応じ、又は所望であれば、溶液及びバッファーを含んでいてもよい。場合により、使用のための使用説明書が、このようなパック又はキットに関連付けられる。
【0032】
明細書を通して用いられるように、被験者は個体を意味する。したがって、被験者には、例えば、ネコ及びイヌのような家畜、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ及びヤギ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット及びモルモット)、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、霊長類、非ヒト霊長類、げっ歯類動物、鳥類、は虫類、両生類、魚類及び他の任意の動物が含まれる。被験者は、霊長類はヒトのような動物であってもよい。
【0033】
用いることができ、併せて用いることができ、製造のために用いることができ、開示される方法及び組成物の産物である、材料、組成物及び成分が開示される。これらの及びその他の材料は本明細書に開示されており、そして、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されるとき、様々な単位の各々や集合的な組み合わせと並べ替えの具体的な参照は明確に開示されないかもしれないが、それぞれが具体的に熟慮され、本明細書に記載されることが理解される。例えば、方法が開示され議論され、この方法になし得る多くの修飾が議論されているなら、方法のありとあらゆる組み合わせ及び並べ替え、可能な修飾は、そうではないと特に示されない限り、特に熟考される。同様に、これらのあらゆるサブセット又は組み合わせも、具体的に熟考され、議論される。この概念は、これらに限定されないが、MSC自体及び開示されたMSCを分離し、培養し、使用する方法の工程を含む本開示の全ての態様に当てはまる。したがって、実施可能な様々な追加の工程がある場合、これらの追加の工程のそれぞれは、開示された方法のうちの任意の特定の方法工程、又は、方法工程の組み合わせと共に実施することができ、そのような組み合わせの各々、又は、組み合わせのサブセットが特に熟考され、開示されていると考えるべきであると理解される。
【0034】
本明細書を通じて種々の出版物に言及される。これらの出版物の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
多くの態様が開示されてきた。それにもかかわらず、種々の改変をなし得ることが理解されるであろう。さらに、1つの特徴又は工程が開示されているなら、組み合わせが明確に示されていなくても、それは任意の他の特徴又は工程と組み合わせることができる。したがって、他の態様は、請求項の範囲内である。
【実施例】
【0036】
実施例1: 骨格発達の間にRBPjk依存性Notchシグナル伝達は間充織幹細胞(MSC)を維持し、増殖させる。
【0037】
材料と方法
マウス系統Rosa−NICD、Rbpjκ、及び、Prx1Creを含む全てのマウス系統は以前に説明されている(Han et al., Int. Immunol. 14:637−45 (2002)、Logan et al., Genesis 33:77−80 (2002)、及び、Murtaugh et al., PNAS 100:14290−5 (2003))。Prx1CreマウスはJackson Laboratory(Bar Harbor、メーン州)より手に入れられた。
【0038】
マウス胚の解析
マウス胚は胎生11.0日より胎生12.5日にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に回収され、10%の中性緩衝ホルマリン中において一晩室温で固定され、それから、4μmの切片を作成する前に加工されてパラフィンに包埋された。組織構造、及び、肢芽の軟骨の構成を解析するために、標準的なアルシアンブルー/オレンジG染色が行われた。In situハイブリダイゼーションが、以前に説明されたように(Hilton et al., Development 132:4339−51 (2005)、Hilton et al., Dev. Biol. 308:93−105 (2007)、及び、Hilton et al., Nat. Med. 14:306−14 (2008))、35Sで標識されたリボプローブを用いて行われた。未発表のリボプローブは次のcDNAクローンより作成された。Sox9(4165469)、Agc1(5345931)、Hes1(10469606)、Hey1(9792713)、Jag1(10699187)、Dll1(10698888)、及び、Dll4(7492828)。cDNAクローンはOpen Biosystems(Huntsville、アラバマ州)、又は、ATCC(Manassas、バージニア州)より入手可能である。Gfpプローブは強化型Gfpコーディング配列をpGEM−T Easyベクターにクローニングすることにより作成された。Notch1、Notch2、Notch3、Fgf8、及び、Fgf10のcDNAとリボプローブは説明されるとおりである(Bellusci et al., Development 124:4867−78 (1997)、Crossley and Martin, Development 121:439−51 (1995)、及び、Mitsiadis et al., J. Cell Biol. 130:407−18 (1995))。BrdU免疫染色解析のために、妊娠中の雌マウスは、回収の2時間前に0.1mg/g体重の割合でBrdUを注入された。BrdUの検出は、Zymed Laboratories(サンフランシスコ、カリフォルニア州)発売のキットを用いて、製造業者の説明書にしたがい、バラフィン切片上で行われた。増殖に関する研究は、製造業者の説明書にしたがうマウス肢芽パラフィン切片の抗Ki67免疫染色(DAKO、デンマーク)を用いて確認された。アポトーシス性のMSCの解析は、製造業の説明書にしたがうマウス肢芽パラフィン切片上の抗Cleaved Caspase−3免疫染色(Cell Signaling;Danvers、マサチューセッツ州)とTUNEL染色(Roche Cell Death In situ Kit;Roche;バーゼル、スイス)を用いて行われた。胚の全組織標本骨格染色は以前に説明されたように行われた(Hilton et al., Development 132:4339−51 (2005)、McLeod, Teratology 22:299−301 (1980))。
【0039】
肢芽MSC細胞培養、及び、C3H10T1/2細胞培養
肢芽由来MSCは胎生11.5日のCD1マウス胚より以前に説明されたように単離された(Zhang et al., Bone 34:809−17 (2004))。軟骨形成分化のため、MSCは小塊状で(10Tl中1×105細胞)1.5時間、12穴プレートに接種され、その後、標準培地、DAPT(1μM)を含む培地、又は、Hes1 shRNAレンチウィルスを含む培地が加えられた。軟骨染色(1%アルシアンブルー/3%氷酢酸)、又は、全RNA単離のために回収される前に、細胞は6時間、3日、5日、及び、7日のタイムコースで培養された。肢芽由来MSCはまた21日間単層培養され、DAPTを含む、及び、含まない骨形成性培地(10nMデキサメタゾン、50mMアスコルビン酸、10mM β−グリセロールリン酸)、又は、脂肪細胞形成性培地(Millipore;Billerica,マサチューセッツ州)のどちらかの培地で処理された。固定されたMSCは、造骨細胞分化についてはアルカリホスファターゼ染色法(ニトロブルーテトラゾリウムクロリド/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリホスフェート P−トルイジン塩)を用いて染色され、脂肪細胞分化についてはオイルレッド−O染色溶液(0.36%)を用いて染色された。全RNAは、リアルタイムRT−PCRで使用するために21日目の単層培養細胞から単離された。
【0040】
C3H10T1/2細胞は以前に説明されたように増殖させられ、実験のために単層になるようプレートに蒔かれた(Denker et al., Differentiation 64:67−76 (1999)、Haas and Tuan, Differentiation 64:77−89 (1999))。単層培養細胞は、製造業者のプロトコルで示唆されるように、Lipofectamine2000試薬(Invitrogen;Carlsbad、カリフォルニア州)を用いて500ngのCMV−Hes1、若しくは、CMV対照プラスミドで形質移入されるか、又は、対照ィルスに、若しくは、Hes1、Hey1、及び、HeyL(Sigma;セントルイス、ミズーリ州)に対するshRNAレンチウィルスで感染させられるかのどちらかであった。形質移入/感染の1日後、細胞はトリプシン処理され、12穴プレートの各穴に10Tlの培地あたり1x105細胞の密度で小塊状に再び蒔かれた。細胞はアルシアンブルー染色と全RNA単離のために5日目、10日目、及び、14日目に回収された。
【0041】
リアルタイムRT−PCR
胚性肢芽組織、又は、小塊培養物は液体窒素で凍結され、それから、25ゲージの注射針と注射筒を通してTrizol Reagent(Invitrogen;Carlsbad、カリフォルニア州)の中でホモジネート化された。全細胞性RNAが製造業者のプロトコルにしたがって抽出された。RNAはNanoDrop分光光度計(NanoDrop;Wilmington、デラウェア州)を用いて定量され、等濃度の全RNAがcDNAの合成のためにプールされた。製造業の説明書にしたがってiScriptTM cDNA合成キット(Bio−Rad; Hercules、カリフォルニア州)を使用して全RNA(1μg)が逆転写された。逆転写されたcDNAは、Sox9、Runx2、Col2a1、Agc1、Col1a1、Ap、Oc、Pparg、Jagged1、Jagged2、Delta−like1、Delta−like3、Delta−like4、Notch1、Notch2、Notch3、Notch4、Hes1、Hes3、Hes5、Hes7、Hey1、Hey2、HeyL、及び、CyclinD1に対するマウス特異的なプライマーを用いるリアルタイムRT−PCRによって解析された。プライマーはApplied Biosystemsソフトウェア(Applied Biosystems;Foster City、カリフォルニア州)を用いて設計された。配列は請求に応じて利用可能である。DNA増幅はSYBR(R) Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems;Foster City、カリフォルニア州)、及び、RotorGeneリアルタイムDNA増幅システム(Corbett Research;シドニー、オーストラリア)を使用して成し遂げられた。遺伝子発現はβ‐アクチン発現レベルに対して正規化され、その後、対照サンプルに対して正規化された。
【0042】
ウェスタンブロット解析
全タンパク質が、Golden溶解緩衝液を用いて、マウス肢芽組織全体、又は、肢芽由来MSC培養細胞のどちらかより単離された。肢芽由来MSC培養細胞は10cmのディッシュに6X106の濃度で蒔かれ、DAPT(1um)を含む、そして、含まない10%FBS DMEM培地中で一晩培養された。各単離に由来するタンパク質サンプル(〜100μg)はその後、10%SDSポリアクリルアミドで分離され、PVDF膜に転写された。NICD1とNICD2の切断されたタンパク質はbTAN20(Notch1)一次抗体、及び、C651.6DdHN(Notch2)一次抗体(0.4μg/ml)を用い、並びに、さらに適切な二次抗体(3000倍希釈)で探索されて検出された。等量のタンパク質を添加したことについて、抗β‐アクチン抗体(Sigma;セントルイス、ミズーリ州)が対照として使用された。免疫ブロットはSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate (Pierce;Rockford、イリノイ州)を用いて検出された。
【0043】
結果
インビトロとインビボのMSC分化の間に起こるNotch経路構成因子の発現
5種類のマウスNotchリガンド(Jagged1(Jag1)、Jagged2(Jag2)、Delta−like1(Dll1)、Delta−like3(Dll3)、及び、Delta−like4(Dll4))、4種類のNotchレセプター(Notch1(N1)、Notch2(N2)、Notch3(N3)、Notch4(N4))、及び、6種類のNotch標的遺伝子(Hes1、Hes5、Hes7、Hey1、Hey2、及び、HeyL)の肢芽MSC分化中の、及び、インビトロ軟骨形成中の正確な時間的発現を同定するためにリアルタイム(RT)PCRが行われた。胎生11.5日のマウス胚から肢芽MSCが単離され、小塊状で6時間、3日間、及び、7日間培養された。5種類のNotchリガンドの可能性があるものの内、Jag1、Dll1、及び、Dll4のみがかなりのレベルで検出され、Jag1は全ての時点で最も高い発現レベルを示した(図1A)。4種類のNotchレセプターの内3種類(N1、N2、及び、N3)のみが肢芽MSC分化の間に検出され、Notch2はその他のNotchレセプターと比較して各時点で劇的に高い発現レベルを示した(図1B)。肢芽MSC分化と軟骨形成に重要なNotchシグナル伝達経路の下流に位置する構成因子を判定するために、RBPjκ依存性Notch標的遺伝子の発現が調査された。6種類の標的の可能性があるものの内、Hes1、Hey1、及び、HeyLのみが同定された。Hey1とHeyLは最も大量に存在するNotch標的遺伝子で、インビトロでのMSC分化の間に増加し、各時点で同様の発現レベルを示した(図1C)。Hes1はHey1、及び/又は、HeyLと比較して低レベルの発現を示したが、Hes1の発現は初期肢芽MSCにおいて最も顕著であり、MSC分化の間に発現レベルが低下した(図1C)。これは、軟骨細胞系列へのMSCのコミットメントの初期段階の制御における潜在的な役割を示している。
【0044】
RT−PCR解析で同定されたNotchシグナル伝達分子について正確なインビボでの空間的発現パターンを同定するために、In situハイブリダイゼーション解析が胎生11.5日および胎生12.0日の肢芽切片に対して行われた。これらのデータは、NotchリガンドであるJag1、Dll1、及び、Dll4は全て、非常に異なる発現特性を持つことを示した。胎生11.5日目で、Jag1は肢芽間充織の大部分において中程度に発現されるが、頂端領域に隣接する先端部内側間充織の集中した領域で大いに発現した(図1D1)。その他の二種類のNotchリガンドのうち、胎生11.5日目でDll1は肢芽間充織を通じて散発的に発現し(図1D2)、一方、Dll4は血管構造の周りにより集中する発現パターンを示した(図1D3、高倍率挿入図)。Dll4は血管新生の制御因子で、それは、Notch1とともに血管内皮の重要な制御因子である(Hellstrom et al., Nature 445:776−80 (2007)、Shutter et al., Genes Dev. 14:1313−8 (2000))。NotchレセプターNotch1はまた、胎生11.5日目で、血管性組織の領域(図1D4、高倍率挿入図)と初期外肺葉で主に発現し、肢芽間充織のある部分ではより低レベルの発現が観察される。Notch2は同時期で肢芽の大部分においてより広範囲に発現する(図1D5)。Notch3は肢芽間充織内で散発的に、基部MSCおよび末梢MSCにおいてより高い濃度で発現する。Hes1発現のわずかな上昇が、Jag1発現が集中する領域と重なる遠位内側MSCにおいて観察されることができたが(図1D1、及び、1D7)、Notch標的遺伝子、Hes1およびHey1は、胎生11.5日目で、それぞれNotch2のそれに類似する発現パターンを有した(図1D5、1D7、及び、1D8)。胎生12.0日目から胎生12.5日目までに、ほとんどのNotch経路構成因子はin situハイブリダイゼーションにより検出することが困難である。Notch2とHes1の発現のみが軟骨形成凝集の周囲の肢芽MSCにおいて維持されたが、凝集そのものの内側においてはわずかな発現低下を示し(図1D9、及び、1D10、白黒の輪郭)、一方、Hey1のような構成因子はより広範に分布する発現パターンを維持した。
【0045】
どのNotchレセプターが肢芽間充織において活性があるのか決定するために、Notch阻害剤であるN−(3,5−ジフルオロフェニルアセチル−L−アラニル)]−S−フェニルグリシン t−ブチルエステル(DAPT,Calbiochem;サンディエゴ、カリフォルニア州)存在下、および、非存在下で培養されたMSCから、又は、野生型胎生11.5日齢の全肢芽組織から全タンパク質が直接的に単離され、前記レセプターの切断型、若しくは、活性型(NICD)を検出することができるNotch1抗体、及び、Notch2抗体を用いたウェスタンブロット解析を行った。ウェスタンブロット解析により、Notch2は胎生11.5日齢の肢芽MSCにおいて活性化される顕著なレセプターであり、培養MSCのDAPT処理は大量に存在する切断型Notch2(NICD2)を減少させることができることが明らかにされた(図1E)。Notch1(NICD1)は、100μgまでのタンパク質濃度ではほぼ検出不可能であった。それゆえ、まとめると、これらのデータは、Notch2はMSCで活性化される主要なNotchレセプターであり、一方、Notch経路のその他の構成因子(Jag1、Dll1、N3、Hes1、Hey1、及び、HeyL)はまた、肢発生の間、MSCの増殖と分化に重要なメディエーターでありうることを示唆する。
【0046】
Notchシグナル伝達はMSC分化の全般的な制御因子である。
【0047】
MSCにおけるNotchシグナル伝達の役割を判定するために、Notch機能欠損アッセイが、Notch阻害剤DAPTを用いた胎生11.5日齢の肢芽由来のMSC培養物に対して行われた。軟骨形成はまず、1mM DAPTの存在下、及び、非存在下での軟骨小結節形成を測定することにより、肢芽小塊培養物において調査された。DAPT処理は軟骨小結節形成を大いに増強した(図2A)。これは、Notch阻害がMSCの軟骨細胞系列へのコミットメントを加速することを示し、ある先行研究(Fujimaki et al., J. Bone Miner. Metab. 24:191−8 (2006))と一致する発見である。DAPTの効果はまた、軟骨形成マーカーのSox9、Col2a1、及び、Agc1の発現をリアルタイムRT−PCRによって評価された。未処理の培養物と比較すると、DAPTは培養3日目から5日目の間にSox9、Col2a1、及び、Agc1の発現(図2A)を増強したが、Agc1の発現は7日目までに大いに減少した。このことは、Notchは軟骨細胞成熟、又は、コミットした軟骨細胞表現型の維持において後期の役割を果たすことを示す。
【0048】
Notchが軟骨形成を特異的に調節するのか、又は、MSC分化を全般的に制御するのかどうか判定するために、肢芽MSC分化アッセイが骨形成性条件、及び、脂肪細胞形成性条件の両方の条件で行われた。肢芽MSCは単層に蒔かれ、そして、DAPT(1mM)の非存在下、及び、存在下、骨形成性培地において21日間培養された(図2B)。DAPT処理はMSCの正常な造骨細胞への分化を増強した。培養物は、上昇したアルカリホスファターゼ染色を示し、リアルタイムRT−PCR解析は造骨細胞マーカー遺伝子であるCol1a1、AP、及び、Ocの発現の著しい増加を示した(図2B)。最後に、肢芽MSCは単層に蒔かれ、そして、DAPT(1mM)の非存在下、及び、存在下、脂肪細胞形成性培地において21日間培養された(図2C)。DAPT処理はMSCの正常な脂肪細胞への分化を同様に増強した。培養物は上昇したオイルレッド−O染色を示し、リアルタイムRT−PCR解析は脂肪細胞マーカー遺伝子であるPpargの発現の著しい増加を示した(図2C)。これらのデータは、インビトロでのNotchシグナル伝達の阻害が肢芽MSCの軟骨細胞系列、造骨細胞系列、及び、脂肪細胞系列への分化を増強することを示すものである。これは、MSCの維持におけるNotchシグナル伝達について全般的な役割を示す。
【0049】
RBPjκ依存性Notchシグナル伝達は軟骨形成の間にMSC分化を抑制する。
【0050】
インビボで肢芽MSC分化中の、及び、軟骨形成中のNotchシグナル伝達に対する要件を評価する第一段階として、標準的なNotchエフェクターであるRbpjκがPrx1Cre導入遺伝子を用いて初期肢間充織において選択的に欠質させられる(Prx1Cre; Rbpjκf/f、“f”はfloxed対立遺伝子であることを表す。)マウスにおいて胚性マウス肢芽が解析された(図3)。Prx1Creは、発達中の肢の内部で軟骨細胞、造骨細胞、及び、結合組織細胞を生じるが、筋芽細胞、血液系譜細胞、若しくは、血管内皮細胞を生じない側板中胚葉のMSCを特異的に標的とするので、本研究においてPrx1Creマウス系列が使用された。肢芽MSCの軟骨細胞系列の細胞へのコミットメントにおける変化をアッセイするために、アルシアンブルー染色、in situハイブリダイゼーション、及び、リアルタイムRT−PCRがSox9、Col2a1、及び、Agc1に対して行われた。胎生12.5日齢のPrx1Cre; Rbpjκf/f変異(RBPjκ)肢芽は、ほとんど検出不可能なレベルのアルシアンブルー染色を示す対照と比較して、軟骨形成原基痕跡のアルシアンブルー染色の増加を示した(図3A1、及び、3A2)。in situハイブリダイゼーション解析により、RBPjκ変異体切片におけるCol2a1、及び、Agc1の両方の発現の増加が明らかになった。Col2a1陽性の変異体細胞の全てはまた、Agc1を発現した(図3A6、及び、3A8)。これは、これらの細胞はこの時点で完全にコミットした軟骨細胞であることを示す。この時期の野生型切片により、Col2a1陽性細胞のうちの中央部の芯にあたる細胞のみがAgc1を発現することが示された(図3A5、及び、3A7)。これは、軟骨細胞分化の正常な進行を強調するものである。さらに、RBPjκ変異体切片はSox9発現レベルの低下を示した。これは、前記変異体細胞が軟骨形成の最初期の段階を越えて進行したことを示唆する。胎生12.5日齢の肢芽全体より単離したmRNAに対して行われたリアルタイムRT−PCR解析は、軟骨形成マーカー遺伝子であるSox9、Col2a1、及び、Agc1の各々についてのin situハイブリダイゼーションの結果と一致する(図3B)。より初期の肢芽(胎生11.5日齢)に対して行われたリアルタイムRT−PCRでは、RBPjκ変異体サンプルから上昇した全ての軟骨形成マーカーの発現が示された。これらのデータは、RBPjκ依存性Notchシグナル伝達が肢芽MSCを正常に維持し、そして、RBPjκの欠損が、軟骨形成の過程を経ると決定されているこれらの細胞に関して軟骨形成分化を促進するということを示唆する。
【0051】
持続的Notch活性化がRBPjκ依存的な方法でMSCを維持、増殖させる。
【0052】
インビトロのNotch活性化が発生中の肢におけるMSC分化と軟骨形成を抑制することができるか、又は、遅らせることができるかどうか判定するために、Notch機能獲得型実験が行われた。マウスNotch1の細胞内ドメインとGFP(NICD−IRES−GFP)がloxP部位によって挟み込まれた転写停止配列を上流に含むRosa26レポーター遺伝子座を標的とする(Rosa−NICD−IRES−GFP)マウスモデルシステムを用いて機能獲得型実験が行われた。Cre活性化に引き続き、Creを発現する細胞集団内に特異的にNICDとGFPの発現が維持されることが確定されてきている(Murtaugh et al., PNAS 100:14920−5 (2003))。Prx1Cre導入遺伝子が、軟骨形成の前に初期肢芽MSC内でNICD発現を誘導し、持続的Notch活性を誘導するために使用された(Prx1Cre; Rosa−NICDf/+)。これより後、このマウスはNICD変異体と称される。胎生18.5日齢のNICD変異体骨格標本の解析は、Prx1Creが特異的に発現する領域の全てである肢(黒矢印)、頭蓋(星印)、及び、胸骨(灰色矢印)の正常な形成の明白な抑制を示した(図4A1、及び、4A2)。前記肢をより詳しく調査することにより、最基底部、及び、最先端部軟骨原基痕跡のうちのわずか少数がNICD変異体において発生したが、これらの単位は、遅滞した軟骨発生の証拠を有し、低形成である(図4A3〜4A6)。前記肢の表現型が軟骨形成の間のMSC分化の抑制から生じるのかどうか判定するために、同腹仔のNICD変異体と野生型対照で胎生12.5日齢の肢芽が解析された。NICD変異体肢芽の切片は凝集をほとんど示さず、対照と比較して低下したアルシアンブルー染色を示した(図4B1、及び、4B2)。変異体は常に3本の指の凝集(第1指、及び、第5指の明らかな喪失)を示し、しばしば、より先端の領域で凝集を発達させなかった。基底部の凝集が起きるとき、それらは常に低形成であり、軟骨形成分化過程において遅滞した。軟骨形成とMSC分化における混乱を評価するために、Sox9、Col2a1、及び、Agc1についてin situハイブリダイゼーションが行われた。NICD変異体切片はこれらのマーカー遺伝子のほぼ完全な抑制を示したが、形成された原基痕跡指凝集では、各マーカー遺伝子がかなりのレベルで発現したようである(図4B3〜4B8)。これらの原基痕跡凝集がNICD変異体においていったい何故起きたのか調べるために、NICD−IRES−GFP転写産物を活発に発現し、そのためにNotch活性化を有するMSCに印をつけるGFPについてin situハイブリダイゼーションが行われた。原基痕跡凝集のそれぞれは明らかなGFP発現を示さなかったが、一方、肢芽内部のその他のほとんどのMSCは強度のGFP発現を示した(図4B9、及び、4B10)。このことは、Prx1Cre導入遺伝子はこの細胞集団を効率的に標的としていなかったことを示唆する。胎生12.5日齢の肢芽全体から単離されたmRNAに対してRT−PCR解析が行われた。これらのデータはSox9、Col2a1、及び、Agc1のかなりの発現低下を示し(図4C)、前記骨形成マーカー遺伝子の各々についてのin situハイブリダイゼーションの結果と一致する。初期造骨細胞分化制御因子であるRunx2はSox9のようにNICD変異体においてかなり低下したレベルの発現を示すが、そのRunx2もまた発現した(図4C)。RBPjκ依存性Notch標的遺伝子であるHes1、Hey1、及び、HeyLの解析により、同腹仔である野生型対照と比較してNICDにおいて上昇した発現レベルが示された(図4C)。これらのデータは、おそらくRBPJκ依存的シグナル伝達機構を介して、Sox9、及び、Runx2の上流で作用する局所的で、そしておそらく細胞自律的な方法でのMSC分化をNotchシグナル伝達が抑制することを示唆する。
【0053】
持続的なNotch活性化が骨格パターン形成、及び、成長を損なった、又は、MSCのアポトーシスを大量に誘導したという可能性を排除するために、肢パターン形成制御因子の発現が解析され、細胞増殖とアポトーシスにおける変化が評価された。肢発生とパターン形成の重要な制御因子がNICDの過剰発現によってかなり影響を受けるかどうか判定するために、FGF、及び、Shhシグナル伝達分子であるFgf8、Fgf10、及び、Ptc1について、胎生11.0日齢の後肢切片に対してin situハイブリダイゼーション研究が行われた。AERのわずかな肥厚とFgf8、及び、Fgf10の発現上昇が観察された(図5A1〜5A4)が、一方、これらの動物において先に観察されたMSC分化の細胞自律的抑制をこのことで説明できるとは考えられなかった。さらに、Patched1 (Ptc1)発現はNICD切片と野生型切片の間で変化せず(図5A5、及び、5A6)、正常な指パターン形成と指アイデンティティーのために重要な不断のShh活性を示した。胎生11.0日齢の後肢切片でアポトーシスを起こしているMSCを検出するために、TUNEL標識と切断型Caspase−3免疫組織化学実験がその後に行われた。同腹仔の野生型対照と比較して、NICD変異体切片はMSCのアポトーシスについて有意な変化を示さなかった(図5B、及び、図8)。MSC分化のもっと後の時点でのアポトーシスに有意な変化は検出されなかった。最後に、持続的Notch活性化がMSC細胞増殖と肢成長に有害な効果を持つかどうか判定するために、胎生11.5日齢の後肢切片でBrdU標識実験が行われた。データは、NICD変異体切片が肢芽中でBrdU標識された細胞核のパーセンテージのかなり上昇を示すが、高増殖性の頂端領域(AZ)、又は、進行帯の近傍の領域(破線のボックス)においてそれはたいへん明白であった(図5C1〜5C3)。BrdUデータを確認するために、細胞増殖と細胞周期の制御因子であるCyclinD1について、胎生11.5日齢のNICD変異体肢芽と対照肢芽に由来するRNAを用いてRT−PCRが行われた。NICD変異体は対照と比較して30%以上のCyclinD1発現の増加を示した(図5C4)。これらのデータにより、NICD変異体における肢表現型はMSC分化の細胞自律的抑制により生じたものであるようであり、肢パターン形成の混乱、MSCアポトーシス、又は、MSC細胞増殖によるものではないようであるということが示された。さらに、これらのデータにより、肢芽MSCにおける持続的なNotch活性化がこの細胞集団を維持し、且つ、増殖させることが示される。
【0054】
MSC分化および軟骨形成のNotch抑制がもっぱらRBPjκ依存シグナル伝達機構によって仲介されたかどうか判定するために、Notchの機能獲得型の実験がRBPjκ転写エフェクターのない状態で行なわれた。Prx1Cre導入遺伝子、活性化可能Rosa−NICD対立遺伝子、及び、ホモ接合型Rbpjκ floxed対立遺伝子(Prx1Cre;Rosa−NICDf/+;Rbpjκf/f)を持つマウスが作成された(NICD;RBPjκ)。アリザリンレッドおよびアルシアンブルーで染色された胎生18.5日齢の骨格の分析により、正常な四肢、特定の頭蓋骨、及び、胸骨を欠くNICD変異体とは対照的に、NICD;RBPjκ変異体動物はこれらの単位の発生において類似の停止を示しそこなうことが示された(図6A1、6A2、及び、6A4)。より詳しく調査すると、NICD;RBPjκ変異体動物は、同腹仔の野生型と比較して短い骨格単位(矢印は脛骨の長さを強調する。)を持つRBPjκ変異体の骨格と極めて似ていた(図6A1、6A3、及び、6A4)。同腹仔の野生型、NICD変異体、及び、NICD;RBPjκ変異体に由来する胎生12.5日齢の後肢切片の詳細な組織学的、及び、分子的解析により、Notch活性化によるMSC分化の抑制にRBPjκが必要とされることがさらに示された。本実験のためにPrx1Cre;Rosa−NICDf/+;Rbpjκf/+の遺伝子型を持つNICD変異体は、先述したPrx1Cre;Rosa−NICDf/+変異体マウスと同一の表現型を示した(図4のNICD変異体と比較される図6のNICD変異体)。Rbpjκ対立遺伝子の一つを欠くNICD突然変異体は、MSC分化のほぼ完全な抑制をまたも示し、先端部に3か所だけの指凝集を備えた四肢を生じた。胎生12.5日齢のNICD肢芽切片は、先端部の3か所の指に限局される細胞内を除いて、アルシアンブルー染色の低下、及び、軟骨形成マーカー遺伝子発現(Sox9、Col2a1およびAgc1)の完全な喪失を示した(図6B2、6B5、6B8および6B11)。Gfp発現が評価されたとき、3か所の指凝集は再度、Gfp発現のほぼ不在と、それ故、持続的なNICD活性化の欠如を示した(図6B14)。両方のRbpjκ対立遺伝子を欠くNICD変異体(NICD;RBPjκ)は、MSC分化と軟骨形成の完全な救出を示した。胎生12.5日齢のNICD;RBPjκ変異体肢芽切片は、同腹仔の野生型対照と比較されるとき、わずかに拡大し、より強くなったアルシアンブルー染色を有するあらゆる軟骨形成単位の再出現を示した(図6B1、6B3)。さらに、NICD;RBPjκ変異体切片のin situハイブリダイゼーション解析は、前記二重変異体は同腹仔の野生型対照と比較して増加され拡大したSox9、Col2、及び、Agc1発現を示し、それは同腹仔のRBPjκ変異体に極めて類似した表現型であった(図6B4、6B6、6B7、6B9、6B10、及び、6B12)。NICD;RBPjκ変異体におけるMSC分化の遺伝的な救出は不完全な組換えとNICD発現の喪失のためではないということを確定するために、隣接する切片に対してGfp発現についてのin situハイブリダイゼーション解析が行われた。NICD;RBPjκ変異体は、NICD変異体切片で先に同定された領域を除外して、強度のGfp発現を、それ故、NICD活性化を示した(図6B14、6B15)。それ故、これらのデータは、MSC分化と軟骨形成のNotch抑制はRBPjκ依存的シグナル伝達機構によってのみ仲介されるということを初めて示すものである。
【0055】
RBPjκ依存的Notch標的遺伝子Hes1は軟骨形成の間のMSC分化に重要な制御因子である。
【0056】
前記データは軟骨形成のNotch制御はRBPjκ依存的Notchシグナル伝達機構によって仲介されることを示す。Hes、及び、HeyファミリーのいくつかのRBPjκ依存的Notch標的遺伝子は、いくつかの器官系において幹細胞/前駆細胞分化のNotch制御を仲介する。Hes1、Hey1、及び、HeyLは、高密度の小塊で培養される肢芽MSC、及び、C3H10T1/2間葉細胞においてかなり発現される数少ない古典的なNotch標的遺伝子である(図1B)。それ故、高密度の小塊で培養されている間に容易に形質導入可能なC3H10T1/2間葉細胞をHes1 shRNAウィルス、Hey1 shRNAウィルス、及び、HeyL shRNAウィルスで感染させることにより機能喪失型実験が行われた。肢芽MSCと同様に、多分化能間葉細胞株C3H10T1/2は、2週間の培養時間に高密度小塊で培養されると、軟骨形成を起こす(Denker et al., Differentiation 64:67−76 (1999)、及び、 Haas and Tuan, Differentiation 64:77−89 (1999))。Hey1 shRNA、又は、HeyL shRNAではなくHes1 shRNAウィルスで形質導入されたC3H10T1/2では、その他のNotch機能喪失型研究と同様にアルシアンブルー染色とSox9、Col2a1、及び、Agc1についてのリアルタイムRT−PCRによりアッセイされ、軟骨形成の促進、又は、増強が生じた(図9A1〜9A6、及び、9C)。Hey1 shRNA、及び/又は、HeyL shRNAで形質導入された培養物はアルシアンブルー染色では有意な変化を示さず、一貫性が無く比較的変化のない軟骨形成マーカー遺伝子発現を有した。さらに、一時的なCMV−Hes1過剰発現機能獲得型実験がC3H10T1/2小塊培養物で行われ、その実験はアルシアンブルー染色でアッセイすると軟骨形成のかなりの抑制を示し(図9B1〜9B6)、RT−PCR解析がその他のNotch機能獲得型研究と同様にSox9、Col2a1、及び、Agc1の軟骨形成マーカーのそれぞれについて行われた(図9D)。Hes1はC3H10T1/2細胞モデルを用いる間葉細胞分化と軟骨形成の重要な制御因子であるように見えたので、類似のHes1 shRNA機能喪失型研究が、3日間、5日間、及び、7日間、高密度小塊で培養された肢芽由来MSCを使用して行われた。Hes1発現の著しい低下により軟骨形成が促進されることとなり、Hes1 shRNA培養物においてアルシアンブルー染色が増強され(図7A1〜7A6)、軟骨形成マーカーであるSox9、Col2a1、及び、Agc1の遺伝子発現がほぼすべての時点で上昇した(図7B)。後半のタイムポイントである5日目と7日目では、Agc1発現は変化しなかった、又は、軽度に抑制された。これは、軟骨細胞の成熟の促進、又は、コミットした軟骨細胞表現型の維持におけるHes1の役割を示すものである。これは、高密度小塊で培養された肢芽由来MSCがNotch阻害剤のDAPTで処理される実験(図2A)と一致した。総体として、これらのデータにより、Hes1がMSCにおいて発現されるHes/Heyファミリーの主要なRBPjκ依存性Notch標的遺伝子であり、それは軟骨形成中のMSC分化のNotchを介した抑制に必要とされるということが示された。さらに、これらのデータは、RBPjκ依存性Notchシグナル伝達経路は骨格発達の間にMSCの維持と増殖に重要であることを示した。したがって、Notch経路の操作により、骨格修復およびMSC集団を利用する組織工学的応用を目的として、生体外でMSCの分化を維持し、増殖させ、制御する手段が提供される。
【0057】
実施例2: ヒトMSC(hMSC)のNotch制御
Notchシグナル伝達がどのようにhMSCの維持と増殖を制御するのか探求するために、Lonza Inc.(バーゼル、スイス)より購入された第1継代培養で骨髄由来のhMSCからの各Notchレセプター、及び、すべての既知のRBPjκ依存性Notch標的遺伝子(Hes1、Hes5、Hes7、Hey1、Hey2、HeyL)の発現特性(図10)。全てのNotchレセプター、および、Hes/Hey標的遺伝子のほとんどは様々なレベルで発現した。Notch2(図10A)およびHes1(図10B)は最も高発現であるhMSCのNotch構成因子として同定された。これは、初期発生中のマウス肢骨格のMSCにおけるNotch構成因子発現と機能を解析した実施例1のデータと一致した。
【0058】
hMSCをレンチウィルスコンストラクトと感染させ、Jag1をコートしたプレートによってhMSCにおけるNotchシグナル伝達を誘導する能力を示すため、いくつかの対照実験が行われた。hMSCはまず、ATCCより入手されたEF.v.CMV.GFP対照レンチウィルスコンストラクトで感染させられた。このレンチウィルスは、24時間後に、及び、細胞の多数の継代の間に感染効率を決定することを可能にするGFPを発現する。その結果は、長期にわたる培養と継代の間にhMSC成長に、又は、細胞生存に明らかな変化もなく維持される24時間以内の85%以上の感染効率を示した。5μg/ml、10μg/ml、及び、15μg/mlの濃度のJag1と10μg/mlのIgGを対照として用いる組換えJag1タンパク質で培養ディッシュをコートするプロトコルが確立された。コートされたプレート上のJag1タンパク質の抗Jag1抗体を用いる免疫染色および呈色反応により、10μg/mlの濃度の組換えJag1タンパク質で最大で均一なプレートのコーティングが達せられることが示された。それ以上高い濃度が前記培養ディッシュに結合したJag1の量を増加させるようには見えなかった。あるいは、5μg/mlの濃度により、かなり低い濃度であり、並びに、前記ディッシュの周辺部の周りにタンパク質が不均一に分布するように見えるJag1コーティングが示された。IgG対照プレートはまた、Jag1組換えタンパク質を含まないプレートについて予想されるように、呈色反応を示さなかった。次に、このJag1コーティング技法がhMSCにおいてNotchシグナル伝達を誘導することを確認するために、RBPjP依存性Notchルシフェラーゼレポーターで形質移入されたhMSCが5μg/ml、10μg/ml、及び、15μg/mlの濃度のJag1とIgGでコートされたプレート上で培養された。そのデータにより、10μg/mlのJag1タンパク質が最大ルシフェラーゼ活性を誘導することが示された。hMSCは、細胞のサイズ、形態、又は、細胞生存について明らかな変化も無くIgGコートプレート、及び、Jag1コートプレートの両方で正常に成長するように見えたことはまた注目に値する。
【0059】
Notchシグナル伝達はhMSCの「幹細胞性」の強力な制御因子なので、初期継代hMSCにおいて高発現するNotch分子(Notch2およびHes1)は、細胞が幾世代か継代するにつれ、その発現レベルを変化させ、徐々にその「幹細胞様の」特質を失うであろう。同じ合理がOct4、Sox2、及び、Nanogを含む「幹細胞性」の重要な制御因子に当てはまるであろう。それ故、RT−PCR実験が行われ、通常の培養プレート上の間充織幹細胞成長培地(MSCGMTM)(Lonza, Inc;バーゼル、スイス)中で継代されたhMSCに由来するNotch2、Hes1、Oct4、Sox2、及び、Nanogの遺伝子発現を解析した。第1継代培養(P1)、及び、第15代継代培養(P15)に引き続いてこれらの遺伝子の発現が比較された。これらのデータはNotch分子(Notch2、Hes1)と多分化能幹細胞マーカー(Oct4、Sox2、Nanog)はP15 hMSCではP1と比較して著しく減少したことを示す(図11A)。これらのデータは、これらの細胞が生体外で継代する間にhMSCの「幹細胞性」の維持においてこれらの因子の各々が持つ役割を示す。標準的なhMSC培養条件での第2継代培養、及び第10継代培養に引き続く、hMSC細胞表面マーカーCD105とNotchレセプターNotch2についてのフローサイトメトリーのデータがまた行われた(図12A、及び、12B)。
【0060】
Notchシグナル伝達が幹細胞維持の重要な制御因子を誘導することができるかどうか判定するために、第3継代培養hMSCがJag1コートプレート、及び、IgGコートプレート上で24時間培養され、リアルタイムRT−PCR解析のためにRNAが単離された(図11B)。この研究は、Jag1コートプレート(10μg/ml)は効率的にRBPjP依存性Notchシグナル伝達を誘導し、対照に対して約7倍にHes1発現を強化することを示した。さらに、Jag1はOct4、Sox2、及び、Nanogの発現を誘導したが、Oct4発現はSox2、及び、Nanogと比較して軽度に増強されただけであった。それ故、Jag1/Notchシグナル伝達は、幹細胞因子のこのネットワークによりhMSCの維持と増殖を制御した。最後に、比較的短い間隔の時間でJag1がhMSCの細胞増殖を制御できるかどうか判定するために、同じ培養系と第3継代培養hMSCが用いられた。BrdU酵素結合性免疫吸着検定法(ELISA法)が、Jag1コートプレート、及び、IgGコートプレート上で24時間培養されたhMSCに対して行われた。データは、Jag1誘導Notchシグナル伝達は、対照と比較して50%を超える値にまでBrdUの取り込みを増加させることを示した(図11C)。これはNotchシグナル伝達が生体外でのhMSCの維持と増殖の両方を制御したことを示す。
【0061】
実施例3: Notch2で選択されたhMSCにおけるJagged−1を介したNotch活性化
図13Aで示すように、Notch2で選択されたhMSCにおけるJagged−1を介したNotch活性化は幹細胞制御因子、細胞増殖、及び、幹細胞増殖を誘導した。より具体的には、Jag1コートプレート上の総hMSC培養、及び、Notch2で選択されたhMSC培養におけるNotchシグナル伝達分子(Notch2、及び、Hes1)、重要な幹細胞制御分子(Oct4、Sox2、及び、Nanog)、及び、細胞増殖のマーカー(CycD1)についてのRT−PCR遺伝子発現解析により、Notch2で選択されたhMSCにおける遺伝子発現の上昇が示された。図13Bは、Jag1コートプレート上で培養された総hMSC、Notch2陰性hMSC、及び、Notch2陽性hMSCに対し行われたBrdU ELISA検定の結果を示す。総hMSC、又は、Notch2陰性hMSCと比較して、Notch2陽性hMSCは細胞増殖の増強を示した。図13Cは、Jag1コートプレート上で培養された総hMSC、Notch2陰性hMSC、及び、Notch2陽性hMSCに対し行われたCFU−Fアッセイの結果を示す。総hMSC、又は、Notch2陰性hMSCと比較して、Notch2で選択されたhMSCは幹細胞増殖の増大を示した。
【0062】
実施例4: Notch2で選択されたhMSCは軟骨形成と骨形成の強化された特質を示す。
【0063】
図14A、及び、14Cで示されるように、Notch2で選択されたhMSCは軟骨形成と骨形成の強化された特質を示した。リアルタイムRT−PCR遺伝子発現解析により、二週間から三週間、軟骨形成性条件、又は、骨形成性条件での培養の後、総hMSC、及び、Notch2陰性hMSCと比較して、Notch2陽性hMSCにおける軟骨形成マーカー遺伝子(Sox9、Col2a1、及び、Agc1)(A)及び骨形成マーカー遺伝子(Col1a1、Ap、及び、Oc)(C)の増加が示された。軟骨形成分化に引き続く総hMSC、Notch2陰性hMSC、及び、Notch2陽性hMSC(第2継代培養)のアルシアンブルー染色が図14Bに示される。軟骨形成分化に引き続くNotch2陰性hMSC、及び、Notch2陽性hMSC(第2継代培養、及び、第5継代培養)のAP染色が図14Dに示される。hMSCは、最初、Jag1コートプレートで二週間培養された(3日から4日/継代)。
【0064】
これらの例は、Notch2及びHes1がヒト骨髄由来MSC(hMSC)において発現されるNotchシグナル伝達分子であることを示す。これらのNotch遺伝子と重要な幹細胞制御因子の発現は、hMSCが継代されるにつれ、減少した。hMSCのNotch活性化はNotch標的遺伝子の発現ばかりか重要な幹細胞制御分子を誘導することもまた示される。さらに、Notch2で選択されたhMSCは、Notch活性化の後、総hMSC,又は、Notch2陰性hMSCと比較して優れたNotch経路遺伝子と幹細胞制御分子の発現誘導、及び、優れた幹細胞増殖を示した。Notch2で選択されたhMSCはまた、例えば、Jagged1を介したhMSCの維持と増殖からはずされた後、総hMSC,又は、Notch2陰性hMSCと比較して、軟骨形成分化、及び、骨形成分化を起こす優れた能力を示した。
【0065】
実施例5: 生体外で増殖したNotch2陽性細胞集団の大腿骨同種移植モデルマウスにおける骨欠損治癒に対する効果
Notch2陽性細胞集団のインビボの効果を評価するために、本明細書に記載される新規のMSC選択法、並びに、Jagged1誘導MSC維持法、及び、増殖法を用いて十分な数のNotch2陽性マウスMSCが作り出される。Notch2で選択されたMSCと総マウスMSC(慣例にしたがって選択されたマウスMSC)が、前記細胞を生体内で捜し出すことができるRosa26LacZマウスより単離される。細胞の維持と増殖に引き続き、MSCはJagged1コートプレートよりはずされ、重大な分割型骨欠損の大腿骨同種移植モデルマウスへの移植のための失活した同種移植片に前記細胞が接種される。MSC無しの失活した同種移植片が負の対照群として働く。MSCの取り込み、骨新生、及び、同種移植骨結合過程を評価するためのX線解析、マイクロCT解析、組織学解析、免疫組織化学(IHC)解析、in situハイブリダイゼーション(ISH)解析、及び、細胞系列追跡(LacZ染色)解析に用いるため、移植後3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、及び、28日目にマウス集団(5〜8匹)から大腿骨が回収される。実験群と対照群の各々に由来する治癒しつつある骨の強度と完全性を評価するために、特定のエンドポイントで生体力学的なねじり試験もまた行われる。
【0066】
方法
骨同種移植片の失活
失活した同種移植片の提供のため、129系統の10週齢メスマウスがJackson Labsから入手される。簡単に説明すると、マウスは安楽死させられ、4mmの中央骨幹部分(大腿骨長の約20%)が回転ドレメルと注文により4mmの間隔で並行して取り付けられた2枚のダイヤモンド刃を用いる骨切断により各大腿骨から取り外される。同種移植片は25ゲージの注射針で骨髄を洗い流され、骨膜は手作業で引きはがされ、移植片は70%エタノールで少なくとも4時間、繰返し洗浄される。同種移植片は検査され、必要であれば、残っている細胞が最終的に取り除かれる。前記同種移植片は失活過程を完結するために少なくとも30日間、100%エタノール中−80℃で保存される。
【0067】
失活した同種移植片へのMSCの接種
(上述した)Jagged1を介したMSC維持と増殖に引き続き、Notch2で選択されたhMSC、及び、総MSCが失活した同種移植片に接種される。簡単に説明すると、前記失活した同種移植片は−80℃の冷凍庫から取り出され、室温に平衡化される。移植片は、5×105個のMSCの最初の接種の30分前に標準培地を含む96穴培養プレートに配置される。MSCは失活化した移植片上で、さらに30分間、37℃、5%二酸化炭素中で保温される。前記移植片は180°回転され、さらに5×105個のMSCが移植片の他方の面に接種され、MSCが完全に、且つ、均一に分布するようにされる。MSCが接種されて「再活性化した」同種移植片は37℃、5%二酸化炭素中で約1時間、保温され、細胞が前記移植片に十分に付着して同化する。MSCを受け取らない前記の失活した同種移植片は移植の前に同じ培養条件におかれる。失活した骨同種移植片、及び、MSCで再活性化した骨同種移植片のすべては、その後、C57BL/6Jレシピエントマウスに作られた4mmの区域性欠損に移植される。
【0068】
マウス大腿骨欠損の外科的再建
10週齢のメスC57BL/6Jマウスが同種移植のレシピエントとして全ての実験において用いられた。前記マウスはケタミン(60mg/kg体重)及びキシラジン(4mg/kg体重)の腹腔内注射により麻酔される。7mmから8mmの側方皮膚切開がなされ、鈍的に筋肉を切開することにより大腿骨の中軸が露出される。4mmの中央骨幹部分が上述したように骨切断により大腿骨から取り外される。22ゲージの注射針を用いて髄管が近位に、及び、遠位に切開される。前記の調製された失活した同種移植片、及び、MSCで再活性化された同種移植片が、それから、4mmの前記欠損に挿入され、髄内の髄腔を通して配置される滅菌されたチタニウムのピンによって固定される。髄内のピンは膝と臀部の両方で曲げられ、ピンが固定化される。前記切開は、最初の画像研究を考慮して断続絹糸縫合によって閉じられ、それに引き続いて、皮膚が外科用ホッチキスにより閉じられた。骨移植によって誘起されるどのような激しい疼痛をも制御するために、ブプレノルフィン(0.5mg/kg)が手術後に与えられうる。移植されたサンプルは、移植片治癒、並びに、骨形成に対するMSCの寄与の評価のため、3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、及び、28日目に回収される。
【0069】
マイクロCT骨画像解析
14日目、21日目、及び、28日目のサンプルに由来する再建された大腿骨のうちのいくつか(5サンプル)は、慎重な切開と髄内のピンの除去の後、マイクロCTシステム(VivaCT 40, Scanco Medical)を用いて画像化される。簡単に説明すると、55 kVpおよび145 iAの高解像度(10.5ミクロン)X線エネルギー設定、200ミリ秒の積分時間、及び、円錐ビーム再構築アルゴリズムを利用するプロトコルを用いて前記大腿骨がスキャンされる。移植された同種移植片上の中央部に位置する中央骨幹の約8.00mm(約800枚)の領域がスキャンされる。骨と移植片の容積、及び、骨塩量(BMD)の定量がScanco解析ソフトウェアを用いて行われる。
【0070】
生体力学的試験
マイクロCT画像化の後、標本は生理食塩水で湿らされ、生体力学的試験のために融解されるまで−20℃で凍結される。直線的な軸の配列を確保し、7mmから8mmのゲージ長を維持するために、前記大腿骨の末端は、注文生産の治具内のPMMAを用いて6.35mm平方のアルミニウムチューブホルダーに接着され、各末端で少なくとも3mmの長さがホルダーに収まるようにされる。組織の再水和とPMMAの硬化を見越して、標本はホルダーに収められた後、室温で2時間PBSに浸される。標本はEnduraTec TestBenchTMシステム(200 N.mmトルクセル;Bose Corporation)に据えられ、1°/秒の速度で破損するまでねじれ力について試験される。トルクデータは、回転ひずみ(ゲージ長で正規化され、rad/mmで表される。)に対してプロットされ、終局トルク(TUlt)、降伏トルク、ねじり剛性(TR;トルクで正規化された回転ひずみ曲線の直線部分の傾きから計算される。)、及び、ねじり破断エネルギー(トルクひずみ曲線の下の面積)が決定される。破損するまでの試験されたのち、破損の様式を検討するために、全てのサンプルはX線で調べられる。
【0071】
移植された大腿骨の組織学的、及び、分子的評価
組織学分析、及び、分子的解析に用いられる予定の大腿骨サンプルは中性緩衝ホルマリン中で3日間固定され、14%EDTA(pH7.2)の中で脱カルシウム化され、そして、パラフィン中で加工される。3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、28日目のサンプル由来のパラフィン包埋サンプル(5サンプル)は5μmの厚みの切片にされる。治癒しつつある大腿骨内の定められた深度にある、ブロックあたり何枚かの切片がオレンジG/アルシアンブルー(H&E)で染色され、軟骨、骨、及び、繊維組織の寄与が判定されるであろう。間に存在する未染色の切片は、先述したようにS−35標識されたリボプローブを用いて軟骨細胞分化の特異的なマーカー(Sox9、Col2a1、Agc1、Col10a1、及び、Mmp13)、及び、造骨細胞分化の特異的なマーカー(Col1a1、Ap、Bsp、及び、Oc)についてのin situハイブリダイゼーションを行うために使用される。前記骨組織のリモデリングがまたTRAP染色法を用いてモニターされるであろう。組織形態計測的解析、並びに、細胞染色と遺伝子発現の領域の定量がOsteoMetricsシステム、及び、OsteoMeasureソフトウェアを用いて行われる(Tiyapatanaputi et al. A novel murine segmental femoral graft model. J Orthop Res 2004;22−6:1254−60.を参照のこと。)。
【0072】
βガラクトシダーゼ染色、及び、MSC細胞系列追跡
MSC細胞系列追跡解析に使用される予定の大腿骨サンプルは、4%パラホルムアルデヒドで2時間固定され、14%EDTA(pH7.2)の中で脱カルシウム化され、15%と30%のショ糖勾配を通して加工され、O.C.T.包埋媒体中で凍結される。3日目、14日目、及び、28日目のサンプル由来の凍結サンプル(3サンプル)は8μmの厚みの切片にされるであろう。治癒しつつある大腿骨内のさまざまな深度に由来する切片が集められ、βガラクトシダーゼについて染色されるであろう。切片は以下に説明するように解析される。凍結された切片の何枚かがLacZ染色細胞の細胞系列の範囲を定めるための二重染色法に利用されるであろう。これらの切片は、まず、βガラクトシダーゼ染色にかけられ、それから直ちに、軟骨細胞系列(Col2a1、Col10a1)、及び、造骨細胞系列(Bsp、Oc)に特異的なプローブ、及び、抗体を用いるin situハイブリダイゼーション、及び/又は、免疫組織化学のために使用されるであろう。二重に標識された組織切片の染色、画像化、及び、画像解析は先に説明されたように行われた(Hilton et al., Notch signaling maintains bone marrow mesenchymal progenitors by suppressing osteoblast differentiation. Nat Med 2008;14−3:306−14を参照のこと)。
【0073】
X線法、マイクロCT法、組織学的方法、IHC法、ISH法、LacZ染色法、及び、生体力学試験法によって測定されるとき、Notch2で選択され、維持され、増殖されたマウスMSCは、慣例的に選択されたMSCを用いる再活性化された同種移植片、又は、失活した同種移植片のみよりも強力な効果を再活性化された同種移植片の取り込みに対して示すであろう。さらに、組織学的、及び、分子的解析により、Notch2で選択されたMSCで再活性化された同種移植片は軟骨形成分化での早い時期の増強とそれに引き続く造骨細胞分化の増強と骨の蓄積を示すことが示されるであろう。骨リモデリング過程は、TRAP染色で評価すると、Notch2で選択されたMSC集団と総MSC集団の両方において類似するであろう。最後に、Notch2で選択されたMSCを使用して再活性化された同種移植片に由来するβガラクトシダーゼ染色と細胞系列追跡のデータは、総MSCを使用して再活性化された同種移植片と比較して、増強された、直接ドナー細胞からの骨形成に至るより多くの軟骨形成に分化した細胞系列と骨形成に分化した細胞系列を示すであろう。
【0074】
多くの実施形態が記載されてきた。それでも、様々に改変がなされうることが理解されるであろう。したがって、その他の実施形態は、次の請求項の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年2月2日に出願された米国特許仮出願第61/300,625号の優先権の利益を主張し、その全体は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号AR057022−01及びAR059733−01の下、政府支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
MSCは、骨髄、血液、脂肪組織、滑膜、及び胎児組織を含む、種々のヒトの組織及び部分から分離することができる。ヒトのMSCは、培地中でゆっくりと増殖し、細胞の老化が進行し、増殖及び細胞通過の際に、「幹細胞様」の性質を失う傾向にある。ヒトのMSC(hMSC)集団は、通常、CD105、CD166、CD44、Stro−1を含む多くの細胞表面マーカーを発現し、CD34、CD45及びCD31を含む造血及び内皮細胞系列マーカーを発現しない。これらのマーカーの多くは、骨髄からのコロニー形成前駆細胞集団を濃縮するための使用に成功してきた。骨髄間室細胞のサブセットのみがコロニー形成性及び多分化能であり、それ故、真のMSCとして同定され得る。コロニー形成性及び多分化能MSCは、コロニー形成単位−繊維芽細胞(CFU−F)アッセイを用いて古典的に同定されてきた。貯蔵した時、又は骨髄間室細胞を低密度で培養した時に、単一の細胞−拡張コロニーを形成する。コロニー形成単位の頻度(CFU−Fs)は、骨髄間室細胞集団から分離された、コロニー形成性及び多分化能MSCの出現率を用いて直接関連づけられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書において、間充織幹細胞(MSC)の集団を被験者から分離する方法が提供される。この方法は、被験者からMSCを含む生物学的試料を得る工程、及び生物学的試料からNotch2受容体を発現するMSCを選択し、Notch2+MSCの集団を得る工程を含む。また、本発明は、Notch2受容体を発現するMSC(Notch2+MSC)の相対的に純粋な集団を提供する。
【0005】
本発明において、Notchシグナル経路の活性化剤の存在下に、MSCを培養する工程を含む、Notch2+MSCの集団を培養する方法が提供される。また、本発明は、間葉細胞系列における欠陥又は異常と関連する疾患を患っている被験者を治療する方法を提供する。この治療法は、Notch2+MSCの集団を被験者に投与することを含む。
【0006】
1つ以上の実施形態の詳細を、添付図面及び以下の詳細な説明に示す。他の特徴、目的及び利点は、詳細な説明及び図面、並びに請求項から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図1B】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図1C】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図1D】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図1E】図1Aは、胎生11.5日齢のマウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotchリガンド、Jag1、Dll1、及びDll4の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Bは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のNotch受容体、Notch1−3の相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1Cは、胎生11.5日齢マウス胎児から分離し、6時間、3日間又は7日間培養した肢芽MSC内のRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLの相対的遺伝子発現として発現するリアルタイム(RT)−PCR遺伝子発現レベルを示す。図1A〜1CのグラフのY−軸は、β−アクチンに対して標準化した相対的遺伝子発現を示し、任意の単位を表す。hr、時間:d、日。図1D1〜1D8は、Jag1(図1D1)、Dll1(図1D2)、Dll4(図1D3)、Notch1(図1D4)、Notch2(図1D5)、Notch3(図1D6)、Hes1(図1D7)及びHey1(図1D8)について胎生11.5日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのインサイチューハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。図1D9及び1D10は、Notch2(図1D9)及びHes1(図1D10)について胎生12.0日齢マウス胎児からの肢芽MSC内でのin situハイブリダイゼーション発現分析を示す顕微鏡写真である。血管の流路のブラックボックスのアウトライン領域を挿入図に示す。挿入図は、血液細胞を含む血管の高拡大図、並びにN1及びDll4について周囲の内皮細胞内での遺伝子発現を示す。図1Eは、DAPTの存在下若しくは非存在下で培養した肢芽誘導MSC(LB−MSC)、又は全肢芽(WLB)組織由来の、活性型の切断されたNotch2タンパク質(NICD2)のウェスタンブロット分析の画像である。
【図2A】図2A〜2Cは、DAPTで仲介されるNotchの阻害が、細胞系列の決定を偏らせることなく、肢芽MSC分化を促進することを示す画像及びグラフである。具体的には、図2A〜2Cは、肢芽MSC培養、それに続く、Notch阻害剤、DAPT(1μM)又は媒体による連続処理の染色及び分析を示す。図2Aは、微量の肢芽MSC軟骨結節のアルシアンブルー染色の顕微鏡写真、並びに初期の軟骨形成マーカー、Sox9、Col2a1及びAgc1のRT−PCR発現レベルのグラフを示す。図2Bは、肢芽MSC骨形成単層培養物のアルカリホスファターゼ染色の顕微鏡写真、並びに骨形成マーカー、Colla1、AP及びOcのRT−PCR遺伝子発現レベルの画像を示す。図2Cは、肢芽MSC脂肪細胞形成単層培養物のオイルレッド−O染色の顕微鏡写真、並びに脂肪細胞形成マーカー、PparγのRT−PCR遺伝子発現レベルのグラフを示す。グラフのY−軸は、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)hr、時間:d、日。
【図2B】図2A〜2Cは、DAPTで仲介されるNotchの阻害が、細胞系列の決定を偏らせることなく、肢芽MSC分化を促進することを示す画像及びグラフである。具体的には、図2A〜2Cは、肢芽MSC培養、それに続く、Notch阻害剤、DAPT(1μM)又は媒体による連続処理の染色及び分析を示す。図2Aは、微量の肢芽MSC軟骨結節のアルシアンブルー染色の顕微鏡写真、並びに初期の軟骨形成マーカー、Sox9、Col2a1及びAgc1のRT−PCR発現レベルのグラフを示す。図2Bは、肢芽MSC骨形成単層培養物のアルカリホスファターゼ染色の顕微鏡写真、並びに骨形成マーカー、Colla1、AP及びOcのRT−PCR遺伝子発現レベルの画像を示す。図2Cは、肢芽MSC脂肪細胞形成単層培養物のオイルレッド−O染色の顕微鏡写真、並びに脂肪細胞形成マーカー、PparγのRT−PCR遺伝子発現レベルのグラフを示す。グラフのY−軸は、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)hr、時間:d、日。
【図2C】図2A〜2Cは、DAPTで仲介されるNotchの阻害が、細胞系列の決定を偏らせることなく、肢芽MSC分化を促進することを示す画像及びグラフである。具体的には、図2A〜2Cは、肢芽MSC培養、それに続く、Notch阻害剤、DAPT(1μM)又は媒体による連続処理の染色及び分析を示す。図2Aは、微量の肢芽MSC軟骨結節のアルシアンブルー染色の顕微鏡写真、並びに初期の軟骨形成マーカー、Sox9、Col2a1及びAgc1のRT−PCR発現レベルのグラフを示す。図2Bは、肢芽MSC骨形成単層培養物のアルカリホスファターゼ染色の顕微鏡写真、並びに骨形成マーカー、Colla1、AP及びOcのRT−PCR遺伝子発現レベルの画像を示す。図2Cは、肢芽MSC脂肪細胞形成単層培養物のオイルレッド−O染色の顕微鏡写真、並びに脂肪細胞形成マーカー、PparγのRT−PCR遺伝子発現レベルのグラフを示す。グラフのY−軸は、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)hr、時間:d、日。
【図3A】図3A1〜3A8は、インビボにおけるRBPjκ−依存性Notchシグナルが四肢発生の際に軟骨形成を加速することを示す画像を示し、図3Bはグラフを示す。図3A1及び3A2は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rbpjκf/f (RBPjκ)胎生12.5日齢後肢のアルシアンブルー染色を示す。図3A3〜3A8は、軟骨形成マーカー遺伝子Sox9(図3A3及び3A4)、Col2a1(図3A5及び3A6)及びAgc1(図3A7及び3A8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現分析を示す。図3Bは、WT及びRBPjκ変異体胎生12.5日齢後肢の全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)
【図3B】図3A1〜3A8は、インビボにおけるRBPjκ−依存性Notchシグナルが四肢発生の際に軟骨形成を加速することを示す画像を示し、図3Bはグラフを示す。図3A1及び3A2は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rbpjκf/f (RBPjκ)胎生12.5日齢後肢のアルシアンブルー染色を示す。図3A3〜3A8は、軟骨形成マーカー遺伝子Sox9(図3A3及び3A4)、Col2a1(図3A5及び3A6)及びAgc1(図3A7及び3A8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現分析を示す。図3Bは、WT及びRBPjκ変異体胎生12.5日齢後肢の全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)
【図4A】図4A1〜4A6及び4B1〜4B10は、骨格の発達の際のMSC分化を抑制するNotchシグナルの持続的活性化を示す画像を示し、図4Cはグラフを示す。図4A1〜4A6は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)変異体胎生18.5日の全骨格(図4A1及び4A2)、前肢(図4A3及び4A4)、及び後肢(図4A5及び4A6)のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。図4B1及び4B2は、胎生12.5日におけるWT及びNICD後肢のアルシアンブルー染色を示す。図4B3〜4B8は、骨形成マーカー遺伝子Sox9(図4B3及び4B4)、Col2a1(図4B5及び4B6)及びAgc1(図4B7及び4B8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現レベルを示す。図4B9及び4B10は、WT(図4B9)及びNICD変異体(図4B10)後肢におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。図4Cは、骨形成マーカー、Sox9、Col2a1、Agc1及びRunx2、並びにRBPJκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLについての全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)。d、桁;r、半径;u、尺骨;h、上腕;s、肩甲骨;t、脛骨;fi、排骨;fe、大腿骨;il、イリウム;pu、恥骨。
【図4B】図4A1〜4A6及び4B1〜4B10は、骨格の発達の際のMSC分化を抑制するNotchシグナルの持続的活性化を示す画像を示し、図4Cはグラフを示す。図4A1〜4A6は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)変異体胎生18.5日の全骨格(図4A1及び4A2)、前肢(図4A3及び4A4)、及び後肢(図4A5及び4A6)のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。図4B1及び4B2は、胎生12.5日におけるWT及びNICD後肢のアルシアンブルー染色を示す。図4B3〜4B8は、骨形成マーカー遺伝子Sox9(図4B3及び4B4)、Col2a1(図4B5及び4B6)及びAgc1(図4B7及び4B8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現レベルを示す。図4B9及び4B10は、WT(図4B9)及びNICD変異体(図4B10)後肢におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。図4Cは、骨形成マーカー、Sox9、Col2a1、Agc1及びRunx2、並びにRBPJκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLについての全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)。d、桁;r、半径;u、尺骨;h、上腕;s、肩甲骨;t、脛骨;fi、排骨;fe、大腿骨;il、イリウム;pu、恥骨。
【図4C】図4A1〜4A6及び4B1〜4B10は、骨格の発達の際のMSC分化を抑制するNotchシグナルの持続的活性化を示す画像を示し、図4Cはグラフを示す。図4A1〜4A6は、野生型(WT)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)変異体胎生18.5日の全骨格(図4A1及び4A2)、前肢(図4A3及び4A4)、及び後肢(図4A5及び4A6)のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。図4B1及び4B2は、胎生12.5日におけるWT及びNICD後肢のアルシアンブルー染色を示す。図4B3〜4B8は、骨形成マーカー遺伝子Sox9(図4B3及び4B4)、Col2a1(図4B5及び4B6)及びAgc1(図4B7及び4B8)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現レベルを示す。図4B9及び4B10は、WT(図4B9)及びNICD変異体(図4B10)後肢におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。図4Cは、骨形成マーカー、Sox9、Col2a1、Agc1及びRunx2、並びにRBPJκ−依存性Notch標的遺伝子Hes1、Hey1及びHeyLについての全肢芽からのRT−PCR遺伝子発現のグラフを示す。グラフのY−軸は、β−アクチン及びWT対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)。d、桁;r、半径;u、尺骨;h、上腕;s、肩甲骨;t、脛骨;fi、排骨;fe、大腿骨;il、イリウム;pu、恥骨。
【図5A】図5A1〜5A6及び5C1〜5C2は、肢間充織内のNotchシグナルの持続する活性化が、肢の様式又はアポトーシスに著しく影響しないが、肢の発達の際にMSCの増殖を増大させることを示す画像であり、図5B及び5C3〜5C4はグラフを示す。図5A1〜5A6は、胎生11.0日における野生型(WT)(図5A1、5A3及び5A5)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+変異体(NICD)(図5A2、5A4及び5A6)肢芽のin situハイブリダイゼーション分析を示す。肢芽増殖及びパターニン形成マーカー:Fgf8(図5A1及び5A2)、Fgf10(図5A3及び5A4)、及びPtc1(図5A5及び5A6)について遺伝子発現パターンを分析した。図5Bは、胎生11.0日において、WT及びNICD変異体について実施したMSCアポトーシスの蛍光TUNEL染色及び統計分析を示す。胎生11.5日において、WT(図5C1)及びNCID変異体(図5C2)についてMSC増殖ののBrdU免疫組織学(図5C1及び5C2)及び統計分析(図5C3)を実施した。(*対照に対し、p<0.05)。AZ、頂端領域。破線を引いた部分は、MSC増殖について分析した領域を示す。図5C4は、NICD変異体及び対照肢芽に由来するRNAを用いた、E11.5におけるcyclinD1のRT−PCRレベルを示す。
【図5B】図5A1〜5A6及び5C1〜5C2は、肢間充織内のNotchシグナルの持続する活性化が、肢の様式又はアポトーシスに著しく影響しないが、肢の発達の際にMSCの増殖を増大させることを示す画像であり、図5B及び5C3〜5C4はグラフを示す。図5A1〜5A6は、胎生11.0日における野生型(WT)(図5A1、5A3及び5A5)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+変異体(NICD)(図5A2、5A4及び5A6)肢芽のin situハイブリダイゼーション分析を示す。肢芽増殖及びパターニン形成マーカー:Fgf8(図5A1及び5A2)、Fgf10(図5A3及び5A4)、及びPtc1(図5A5及び5A6)について遺伝子発現パターンを分析した。図5Bは、胎生11.0日において、WT及びNICD変異体について実施したMSCアポトーシスの蛍光TUNEL染色及び統計分析を示す。胎生11.5日において、WT(図5C1)及びNCID変異体(図5C2)についてMSC増殖ののBrdU免疫組織学(図5C1及び5C2)及び統計分析(図5C3)を実施した。(*対照に対し、p<0.05)。AZ、頂端領域。破線を引いた部分は、MSC増殖について分析した領域を示す。図5C4は、NICD変異体及び対照肢芽に由来するRNAを用いた、E11.5におけるcyclinD1のRT−PCRレベルを示す。
【図5C】図5A1〜5A6及び5C1〜5C2は、肢間充織内のNotchシグナルの持続する活性化が、肢の様式又はアポトーシスに著しく影響しないが、肢の発達の際にMSCの増殖を増大させることを示す画像であり、図5B及び5C3〜5C4はグラフを示す。図5A1〜5A6は、胎生11.0日における野生型(WT)(図5A1、5A3及び5A5)及びPrx1Cre/Rosa−NICDf/+変異体(NICD)(図5A2、5A4及び5A6)肢芽のin situハイブリダイゼーション分析を示す。肢芽増殖及びパターニン形成マーカー:Fgf8(図5A1及び5A2)、Fgf10(図5A3及び5A4)、及びPtc1(図5A5及び5A6)について遺伝子発現パターンを分析した。図5Bは、胎生11.0日において、WT及びNICD変異体について実施したMSCアポトーシスの蛍光TUNEL染色及び統計分析を示す。胎生11.5日において、WT(図5C1)及びNCID変異体(図5C2)についてMSC増殖ののBrdU免疫組織学(図5C1及び5C2)及び統計分析(図5C3)を実施した。(*対照に対し、p<0.05)。AZ、頂端領域。破線を引いた部分は、MSC増殖について分析した領域を示す。図5C4は、NICD変異体及び対照肢芽に由来するRNAを用いた、E11.5におけるcyclinD1のRT−PCRレベルを示す。
【図6A】図6A1〜6A4及び6B1〜6B15は、Notchシグナルが、RBP−Jκ−依存様式でMSCの分化を抑制することを示す画像である。図6A1〜6A4は、野生型(WT)、Prx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)、Prx1Cre/Rbpjκf/f(RBPjκ)、及び、Prx1Cref/Rosa−NICDf/+/Rbpjκf/f (NICD;RBPjκ)変異体胎生18.5日の全骨格のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。灰色の矢印は、WT、RBPjκ、及びNICD;RBPjκの脛骨の長さを示す。図6B1〜6B3は、胎生12.5日における、WT、NICD及びNICD;RBPjκ同腹子の後肢のアルシアンブルー染色を示す(B1〜B3)。図6B4〜6B12は、軟骨形成マーカー遺伝子Sox9(図6B4〜6B6)、Col2a1(図6B7−6B9)、及びAgc1(図6B10〜6B12)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現分析を示す。図6B13〜6B15は、WT(図6B13)、NICD変異体(図6B14)、及びNICD;RBPjκrescue(図6B15)の後肢部分におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。
【図6B】図6A1〜6A4及び6B1〜6B15は、Notchシグナルが、RBP−Jκ−依存様式でMSCの分化を抑制することを示す画像である。図6A1〜6A4は、野生型(WT)、Prx1Cre/Rosa−NICDf/+(NICD)、Prx1Cre/Rbpjκf/f(RBPjκ)、及び、Prx1Cref/Rosa−NICDf/+/Rbpjκf/f (NICD;RBPjκ)変異体胎生18.5日の全骨格のアルシアンブルー/アリザリンレッド染色を示す。黒い矢印は、NICD変異前肢及び後肢を示す。灰色の矢印は、WT、RBPjκ、及びNICD;RBPjκの脛骨の長さを示す。図6B1〜6B3は、胎生12.5日における、WT、NICD及びNICD;RBPjκ同腹子の後肢のアルシアンブルー染色を示す(B1〜B3)。図6B4〜6B12は、軟骨形成マーカー遺伝子Sox9(図6B4〜6B6)、Col2a1(図6B7−6B9)、及びAgc1(図6B10〜6B12)のin situハイブリダイゼーション遺伝子発現分析を示す。図6B13〜6B15は、WT(図6B13)、NICD変異体(図6B14)、及びNICD;RBPjκrescue(図6B15)の後肢部分におけるNICD発現及び活性を評価するために記録されたGfp発現を示す。
【図7A】図7A1〜7A6は、Hes1が、MSCの分化及び軟骨形成を制御する、RBPjκ−依存性Notch標的遺伝子であることを示す画像を、図7Bはグラフを示す。図7A1〜7A6は、微量で3、4又は7日間培養した、感染した対照(図7A1、7A3及び7A5)及び感染したHes1 shRNA infected(shHes1)(図7A2、7A4及び7A6)の肢芽MSC細胞のアルシアンブルー染色を示す。図7Bは、インビトロにおける軟骨形成、それに続くHes1のノックダウンの際の軟骨形成マーカーSox9、Col2a1、Agc1についてのRT−PCR遺伝子発現レベルを示す。グラフのY−軸は、3日における、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)d、日。
【図7B】図7A1〜7A6は、Hes1が、MSCの分化及び軟骨形成を制御する、RBPjκ−依存性Notch標的遺伝子であることを示す画像を、図7Bはグラフを示す。図7A1〜7A6は、微量で3、4又は7日間培養した、感染した対照(図7A1、7A3及び7A5)及び感染したHes1 shRNA infected(shHes1)(図7A2、7A4及び7A6)の肢芽MSC細胞のアルシアンブルー染色を示す。図7Bは、インビトロにおける軟骨形成、それに続くHes1のノックダウンの際の軟骨形成マーカーSox9、Col2a1、Agc1についてのRT−PCR遺伝子発現レベルを示す。グラフのY−軸は、3日における、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)d、日。
【図8】図8は、WT及びNICD変異体の肢間充織からの胎生11.5日齢の切片におけるアポトーシス細胞の数値を示すグラフである。活性化カスパーゼ−3免疫組織学を用い、データは、肢間充織中のNotchシグナルの持続的活性化がMSCアポトーシスに影響しないことを示す。
【図9−1】図9A1〜9A6及び9B1〜9B6は、Hes1が軟骨形成のC3H10T1/2モデルにおけるMSC分化の重要な調節因子である画像を示し、図9C及び9Dはグラフを示す。図9A1〜9A6及び9B1〜9B6は、小塊で5、10又は14日培養した、対照で感染した(図9A1、9A3及び9A5)、Hes1 shRNAで感染した(shHes1)(図9A2、9A4、及び9A6)、対照で形質移入された(図9B1、9B3及び9B5)、及び、Hes1で形質移入された(CMV−Hes1)(図9B2、9B4、及び9B6)C3H10T1/2細胞のアルシアンブルー染色を示す。図9C及び9Dは、インビトロにおける軟骨形成、それに続くHes1のノックダウン(図9C)又はHes1の過剰発現(図9D)の際の軟骨形成マーカーSox9、Col2a1、Agc1及びNotch標的遺伝子、Hes1についてのRT−PCR遺伝子発現レベルを示す。グラフのY−軸は、5日における、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)d、日。
【図9−2】図9A1〜9A6及び9B1〜9B6は、Hes1が軟骨形成のC3H10T1/2モデルにおけるMSC分化の重要な調節因子である画像を示し、図9C及び9Dはグラフを示す。図9A1〜9A6及び9B1〜9B6は、小塊で5、10又は14日培養した、対照で感染した(図9A1、9A3及び9A5)、Hes1 shRNAで感染した(shHes1)(図9A2、9A4、及び9A6)、対照で形質移入された(図9B1、9B3及び9B5)、及び、Hes1で形質移入された(CMV−Hes1)(図9B2、9B4、及び9B6)C3H10T1/2細胞のアルシアンブルー染色を示す。図9C及び9Dは、インビトロにおける軟骨形成、それに続くHes1のノックダウン(図9C)又はHes1の過剰発現(図9D)の際の軟骨形成マーカーSox9、Col2a1、Agc1及びNotch標的遺伝子、Hes1についてのRT−PCR遺伝子発現レベルを示す。グラフのY−軸は、5日における、βアクチン及び対照に対して標準化した相対的遺伝子発現を示す。(*対照に対し、p<0.05)d、日。
【図10】図10A及び10Bは、hMSC中で発現するNotch分子を示すグラフである。遺伝子発現をベータ−アクチンに対して標準化し、任意の単位で表した。
【図11】図11A〜11Cは、多分化能幹細胞マーカー及びhMSC増殖の組換えJagged1誘導を示すグラフである。図11Aは、Notch成分、及び継代1(P1)及び継代15(P15)におけるhMSC内での幹細胞多分化能の調節因子についての遺伝子発現レベルを示す。図11Bは、Notch標的遺伝子、及び対照IgG又はJag1をコーティングしたプレートで培養したhMSC内での幹細胞多分化能の調節因子についての遺伝子発現レベルを示す。全ての遺伝子発現をベータ−アクチンに対して標準化し、次いでP1対照(図11A)又はIgG対照(図11B)に対して標準化した。図11Cは、IgG対照又はJag1コーティングプレートにおいて培養したhMSCの増殖を測定するBrdU ELISAアッセイを示す。
【図12】図12A及びBは、標準的なhMSC培養条件における継代2及び10に続く、hMSC細胞表面マーカー、CD105(A)、及びNotch受容体、Notch2(B)についてのフローサイトメトリーのデータを示す。
【図13】図13A〜Cは、Notch2選択的hMSCにおける、Jag1が介在するNotch活性化が、幹細胞調節因子、細胞増殖、及び幹細胞膨張を誘導することを示す。図13Aは、Jag1コーティングプレートで培養した、全hMSC及びNotch選択的hMSC内でのNotchシグナル分子(Notch2及びHes1)、重要な幹細胞制御分子(Oct4、Sox2、及びNanog)、及び細胞増殖のマーカー(CycD1)についてのリアルタイムRT−PCR遺伝子発現分析を示す。図13Bは、Jag1コーティングプレートで培養した、全hMSC、Notch2陰性hMSC、およびNotch2陽性hMSC上で行われたBrdU ELLISAアッセイを示す。図13Bは、Jag1コーティングプレート上での培養に続いて行われた、全hMSC、Notch2陰性hMSC、およびNotch2陽性hMSC上でのCFU−Fアッセイを示す。
【図14】図14A〜Dは、Notch2−選択的hMSCが、Jag1が介在する維持及び拡張に次ぎ、軟骨形成及び骨形成の向上を示すことを示す。図14A及びCは、2又は3週間、軟骨形成又は骨形成条件で培養した後の、全Notch2−陰性及びNotch2−陽性hMSC由来の軟骨形成(Sox9、Col2a1、及びAgc1)(A)及び骨形成(Col1a1、Ap、及びOc)(C)マーカー遺伝子についてのリアルタイムRT−PCR遺伝子発現分析を示す。図14Bは、軟骨形成分化に続く、全Notch2−陰性及び陽性hMSC(継代2)のアルシアンブルー染色を示す。図14Dは、骨形成分化に続く、Notch2−陰性及び陽性hMSC(継代2及び5)のAP染色を示す。hMSCは、最初にJag1コーティングプレートで2代継代培養した(3〜4日/継代)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
間充織幹細胞(MSC)内におけるNotch経路についての作用の正確な役割及び様式を決定するため、組織特異的機能喪失(Prx1Cre;Rbpjκf/f)、機能獲得(Prx1Cre;Rosa−NICDf/+)及び遺伝子レスキューマウス(Prx1Cre;Rosa−NICDf/+;Rbpjκf/f)を生成し、初期肢発生の際のMSC増殖及び分化における欠陥について分析した。結果を以下の実施例1に示す。データは、Hes1が、MSC内で発現するHes/Heyファミリーの主要なRBPjκ−依存性Notch標的遺伝子であることを示す。さらに、これらのデータは、RBPjκ−依存Notchシグナル経路が、骨格発達の際のMSCの維持及び拡張のために重要であることを示す。したがって、Notch経路の操作は、MSC集団を利用する、骨格修復及び再生医療用途のために、MSCの分化を維持、拡張及び調節する手段を提供する。hMSCのNotch活性化の制御は、hMSCの維持及び拡張を促進するが、それらの軟骨形成、骨形成及び脂肪細胞形成分化の可能性を維持する。したがって、本明細書に開示されるものは、MSCの相対的に純粋な集団、及びMSCの分離及び培養方法を開示する。
【0009】
Notch2受容体(Notch2+MSC)を発現するMSCの相対的に純粋な集団が提供される。本明細書で用いられる場合、相対的に純粋という用語は、Notch2を発現する集団における、MSCの少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%を意味する。場合により、Notch2+MSCは、複数の継代を通じて拡張する能力を維持する。Notch2+MSCは、CD105、CD106、CD156、CD44、CD29、CD166、Stro−1、FGF10、Prx1、Oct4、Sox2、及びNanogからなる群から選択される間充織幹細胞と関連する1つ以上の追加のマーカーを発現する。場合により、Notch2+MSCは、CD105及びCD156を発現する。場合により、Notch2+MSCは、CD34、CD45、CD14及びCD31からなる群から選択される造血又は表皮細胞系列と関連する1つ以上のマーカーを発現しない。
【0010】
Notch2+MSCの比較的に純粋な集団は、非分化培養条件において安定である。本明細書で用いられる場合、非分化培養条件には、分化を促進せずに増殖を促進する培養条件が含まれるが、これに限定されない。例えば、細胞は、ウシ胎児血清、又は分化を起こさない血清を含まない代替物の存在下に、例えばDMEM、RPMI等で維持することができる。
【0011】
具体的には、被験者からMSCを分離する方法が提供される。この方法は、被験者からMSCを含む生物学的試料を得、生物学的試料からNotch2受容体を発現するMSCを選択し、Notch2+MSCの集団を得る工程を含む。また、提供される方法により製造されるNotch2+MSCの相対的に純粋な集団が提供される。MSCは、複数の継代を通じて拡張する能力を維持している。MSCは、少なくとも約5、10、15又は20回、又は5〜20回の任意の回数継代することができる。場合により、MSCは10回以上継代することができる。例えば、MSCは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20回継代することができる。
【0012】
本明細書で用いられる場合、「継代」又は「継代する」は、細胞を継代培養することを意味する。細胞を培養及び継代培養する方法及び材料は公知である。例えば、細胞は、インキュベーター内の、例えば、皿又はプレートのような培地を含む基質上で増殖させられる。継代培養の際、培地を除去し、細胞を洗浄し、次いで、基質から細胞を分離する薬剤を加える。分離した培地を懸濁し、懸濁液内の適切な数の細胞を新しい基質に移し、新しい培地を加え、新しい基質をインキュベーターに入れ、そのサイクルを再度開始する。細胞は、場合により、100%未満(増殖の対数期)であるが、密集の10%以上に維持される。細胞は、少なすぎるかあまりに密集すると死滅する。
【0013】
選択工程は、フローサイトメトリー、磁気ビーズ分離、パニング、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は親和性クロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない種々の方法の任意の1つを用いて実施される。例えば、フローサイトメトリー又はFACSは、蛍光強度、並びに細胞のサイズ及び光の散乱のようなその他のパラメータに基づき細胞集団を分離するために用いられることができる。
【0014】
選択工程は、場合により、Notch2受容体抗体又は他のNotch2受容体リガンドを用いて実施される。場合により、抗体又はリガンドは基質に結合し、例えば、基質は可動式又は固定式の固体支持体であってもよい。場合により、可動式固体支持体は蛍光ビーズである。場合により、固定式固体支持体はカラム又はプレートである。試料を基質と接触させ、Notch2+細胞を有する基質をNotch2+細胞を欠く基質から選別するか、試料中の結合MSCを、例えば競争結合工程によって基質から分離する。蛍光ラベル又は他の標識手段は、MSCを選別するために用いることができる。FACSのような選別方法を用いて、特に所望の発現プロフィールを有するMSCの種々の集団を選別することができる。
【0015】
被験者からの試料は、例えば、骨髄、脂肪組織、滑膜、骨膜、軟骨膜、軟骨、歯の組織、胎盤組織、肝臓組織、筋肉組織、肺組織、心臓組織、結合組織、及び脾臓組織からなる群から選択されるMSC含有試料から選択される。
【0016】
分離したNotch2+MSCを、例えば、細胞の生存度を維持する任意の適切な培地内に集める。場合により、培地は、収集容器、例えば、試験管に配置される。種々の培地は市販されており、それを用いてもよく、場合によりウシ胎児血清を追加していてもよい、ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩液(dPBS)、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地、Iscove培地等を含むが、これらに限定されない。
【0017】
また、Notchシグナル経路の活性化剤の存在下に、MSCを培養する工程を含む、Notch2+MSCの集団の培養法法が提供される。場合により、培養条件は、Notch2+MSCの集団が拡張される条件である。種々の培地が市販されており、MSCを培養するために用いてもよく、これらは場合によりウシ胎児血清を追加していてもよいDMEM、HBSS、dPBS、RPMI培地、Iscove培地等を含むがこれらに限定されない。
【0018】
場合により、Notchシグナル経路の活性化剤は、delta−like 1、delta−like 3、delta−like 4、Jagged 1、Jagged 2、Dlk1/Pref1、DNER、Contactin1(F3)、Contactin6(NB3)、CCN3/NOV、MAGP1、及びMAGP2からなる群から選択される。場合により、Notchシグナル経路の活性化剤は、Notch受容体の細胞内ドメインである。場合により、Notch受容体は、Notch1、Notch2、Notch3又はNotch4である。Notchシグナル経路の活性化剤は、培養皿に部分的又は完全に固定化していてもよい。また、活性化剤は培地内で可溶性であってもよい。
【0019】
Notch活性化は、Notch細胞内ドメイン(ICD)の切断及び遊離を引き起こすリガンドにより誘導され得る。NICDは核へ転位し、RBPjkと相互作用し、標的遺伝子を活性化する。MSC内でのNotchシグナルは、Notch ICDを直接発現することによっても活性化され得る。Notch ICDの発現は、細胞内でペプチドを発現させる任意の手段を用い、例えば発現ベクター(例えば、ウイルスベクター)を用いて提供することができる。Notch ICDの発現は一時的であるか、又は安定である。
【0020】
培養方法は、1つ以上の分化誘導薬の存在下にNotch2+MSCの集団を培養する工程をも含む。Notchの活性化が「停止し」、細胞の分化が可能になる。場合により、1つ以上の分化誘導薬は、軟骨形成、骨形成又は脂肪細胞形成系列への分化を選択的に誘導する。異なる培養条件下でのNotch2+MSCの培養は、所望のタイプの表現型、例えば、脂肪細胞、軟骨細胞等を有する選択細胞を濃縮する培養環境においてMSCを培養又は分化させることにより実施される。したがって、培地は、特定の系列への分化を増大させる薬剤を含んでいてもよい。例えば、軟骨形成分化は、9−グリセロールホスフェート、アスコルビン酸及びレチン酸を含む培地中でMSCを培養することにより増大させることができる(Cowanら、(2005)Tissue Engineering 11:645−658)。脂肪細胞形成分化は、例えば、デキサメタゾン、インドメタシン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)及びインスリンを含む培地中でMSCを培養し、次いでインスリンを含む培地内で維持することにより、増大させることができる。筋細胞分化は、例えば、5−アザシチジンを含む培地(Fukudaら、(2001)Artificial Organs 25:187)、又はウマ血清、デキサメタゾン及びヒドロコルチゾンを含む培地(Eunら(2004)Stem Cells 22:617−624)内で培養することにより、増大させることができる。軟骨細胞分化は、例えば、
【数1】
(Williamsら、(2003)Tissue Engineering 9(4):679)を含むか又は含まない、デキサメタゾン、アスコルビン酸2−ホスフェート、インスリン、トランスフェリン及び亜セレン酸を含む培地中で培養することにより増大させることができる。培養における分離に続き、得られた細胞を直接用いるか、例えば、MSC及び他の未分化細胞を除去するための陰性選択においてさらに分離してもよい。さらに、所望の細胞型の濃縮は、細胞に特有のマーカーの選択により、例えば、フローサイトメトリー、磁気ビーズ分離、パニング等により得られることは公知である。
【0021】
Notch2+MSCの集団を被験者に投与することを含む、間葉細胞内の欠陥又は異常に関連する疾患を患っている患者の治療方法を提供する。Notch2+MSCの集団は、同一又は異なる被験者に由来する。
【0022】
Notch2+MSCは、必要に応じて被験者に投与される。例えば、Notch2+MSCは、骨又は軟骨の異常部位又はその近くで被験者に投与され、又は被験者に全身投与される。Notch2+MSCは、意図する組織に移植され、移動し、機能的欠陥部位を再構成又は再生できるような方法で投与される。場合により、MSCの表面の標的分子は、所望の部位への適切な移動を促進するように用いられる。例えば、MSCは、軟骨、成長板、骨及び腱/靱帯、並びに自家軟骨細胞移植片を設計するために用いることができる。したがって、MSCの投与は、比較的に純粋な集団により、又は再生医療を用いて生成される構築物内で細胞を投与することにより、実施することができる。
【0023】
Notch2+MSCの投与は、骨の手術(骨の手術は、顔の形成、上顎又は下顎の再構築、骨折修復、骨移植、プロテーゼ移植、関節置換術(臀部及び膝置換術)からなる群から選択される)に続く骨の形成を促進し得る。
【0024】
場合により、Notch2+MSCは分化し(上述したように)、被験者の患部に送達される。例えば、骨形成系列は、骨の疾患又は欠陥を患っている被験者に送達することができる。
【0025】
本明細書で用いられる場合、骨の疾患又は欠陥は、骨に対する健康又は完全な状態の喪失をもたらすか、それにより特徴づけられる、あらゆる骨の欠陥、疾患又は病状を意味し、骨粗鬆症、骨減少症、不完全な骨形成又は骨吸収、パジェット病、骨の破砕及び骨折、癌の骨への転位、骨化石症、骨硬化症及び骨軟骨症を含むが、これらに限定されない。骨の欠陥及び疾患には、骨折、及び先天性又は後天性の病状、例えば、骨形成不全症又は骨粗鬆症が含まれる。本明細書に開示される方法にしたがって治療及び/又は予防することのできる骨の疾患又は欠陥には、対応する病気ではない骨のものと比較して減少した骨質量によって特徴付けられる骨の疾患(例えば、骨粗鬆症、骨減少症及びパジェット病)が含まれる。軟骨の欠陥には、外相、又は、変形性関節症又はリウマチ性関節炎のような疾患により引き起こされうる関節軟骨の欠陥又は脊椎版の欠陥が含まれる。
【0026】
骨又は軟骨の欠陥若しくは疾患、又は、骨若しくは軟骨の欠陥若しくは疾患に関連する症状の治療は、発症後に、症状を遅くし、改善すること、又は、疾患若しくは症状を反転させることに積極的に介在することを包含する。本明細書で用いられる場合、治療は、骨又は軟骨の質量又は完全性を、対応する影響を受けていない骨(同じタイプの対応する骨、例えば、長い脊椎部分の骨)、又は、病気でない、若しくは、影響を受けていない状態の軟骨のものに、より近似させる方法を意味する。例として、手術後の治療の後、骨又は軟骨が、健康で外科的に影響を受けていない骨のようになる。
【0027】
Notch2+MSCは、医薬組成物の形態で投与することができる。このような組成物は、治療的有効量のMSC及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。このような担体には、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水及びそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。製剤は、投与様式に適したものとすべきである。場合により、MSC組成物は、静脈、関節内、又は椎間投与用に製剤化される。静脈投与用組成物は、例えば、無菌の等張水性バッファーによる溶液である。
【0028】
本明細書に開示された方法に用いるためのNotch2+MSCを含む組成物は、持続性及び/又は持効性製剤として製剤化することもできる。このような、持続性及び/又は持効性製剤は、持続放出手段、送達装置又は組織工学による構築物により製造することができる。組成物は、1つ以上の活性成分をゆっくりと又は持続的な放出を提供するためにのために用いることができ、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマー材料、ゲル、透過膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェア又はそれらの組合せを用いて、種々の特性において所望の放出プロフィールを与えることができる。種々の適切な持続放出製剤は、本明細書に開示された組成物と一緒に用いられるために容易に選択することができる。場合により、組成物は制御放出システムにより送達することができる。例えば、組成物は、静脈内注射、移植可能な浸透圧ポンプ、リポソーム、又は他の投与法法を用いて投与することができる。制御放出システムは、標的の近くに置くことができる。例えば、マイクロポンプは、関節に直接、又は、骨若しくは軟骨に直接に制御用量を送達することができ、その結果、全身投与量の一画分のみが必要となった。(例えば、少なくともマイクロポンプに関する資料について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,vol.2,pp.115−138を参照されたい)。他の例においては、組成物は、ヒドロゲル用いて製剤化される(例えば、少なくともヒドロゲルに関する資料について、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,702,717号;第6,117,949号;第6,201,072号を参照されたい)。
【0029】
組成物を局所的に、すなわち治療を必要とする領域に投与することが望ましい。局所投与は、例えば、手術の際の点滴、局所投与、注射又はインプラントによる局所注射により達成される。インプラントは、浸透性、非浸透性、若しくはシリコン膜のような膜を含むゼリー状の材料であってもよく、骨若しくは軟骨のような組織を置換するように設計された組織再生医療構築物を含む。
【0030】
Notch2+MSCは有効量で用いられる。一般に、このような量は、体重1kgあたり少なくとも1×104MSCから体重1kgあたり3×105MSCの範囲である。場合により、MSCは、1×106MSC/体重1kgで投与される。MSCは、例えば、1日あたり1〜3回投与され、最適な効果及び薬学的用量に適合するように調整してもよい。当業者は、投与経路、受容者の年齢、性別、健康状態及び体重、症状の性質及び程度、同時に行っている治療の種類、治療の頻度及び所望の効果に基づき、投与量及び頻度を決定することができる。
【0031】
また、本発明は、本明細書に記載された1つ以上の成分(例えば、Notchシグナル経路の活性化剤、又はNotch2+MSC)で満たされた1個つ以上の容器を含む、パック又はキットを提供する。したがって、例えば、本明細書に開示されたキットは、Notch2+MSCの集団を含む。また、Notch2+MSCを分離するための組成物を含むキットが開示されている。場合により、キットは、Notch2+MSCを培養するための薬剤をさらに含む。このようなキットは、必要に応じ、又は所望であれば、溶液及びバッファーを含んでいてもよい。場合により、使用のための使用説明書が、このようなパック又はキットに関連付けられる。
【0032】
明細書を通して用いられるように、被験者は個体を意味する。したがって、被験者には、例えば、ネコ及びイヌのような家畜、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ及びヤギ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット及びモルモット)、哺乳動物、非ヒト哺乳動物、霊長類、非ヒト霊長類、げっ歯類動物、鳥類、は虫類、両生類、魚類及び他の任意の動物が含まれる。被験者は、霊長類はヒトのような動物であってもよい。
【0033】
用いることができ、併せて用いることができ、製造のために用いることができ、開示される方法及び組成物の産物である、材料、組成物及び成分が開示される。これらの及びその他の材料は本明細書に開示されており、そして、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されるとき、様々な単位の各々や集合的な組み合わせと並べ替えの具体的な参照は明確に開示されないかもしれないが、それぞれが具体的に熟慮され、本明細書に記載されることが理解される。例えば、方法が開示され議論され、この方法になし得る多くの修飾が議論されているなら、方法のありとあらゆる組み合わせ及び並べ替え、可能な修飾は、そうではないと特に示されない限り、特に熟考される。同様に、これらのあらゆるサブセット又は組み合わせも、具体的に熟考され、議論される。この概念は、これらに限定されないが、MSC自体及び開示されたMSCを分離し、培養し、使用する方法の工程を含む本開示の全ての態様に当てはまる。したがって、実施可能な様々な追加の工程がある場合、これらの追加の工程のそれぞれは、開示された方法のうちの任意の特定の方法工程、又は、方法工程の組み合わせと共に実施することができ、そのような組み合わせの各々、又は、組み合わせのサブセットが特に熟考され、開示されていると考えるべきであると理解される。
【0034】
本明細書を通じて種々の出版物に言及される。これらの出版物の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
多くの態様が開示されてきた。それにもかかわらず、種々の改変をなし得ることが理解されるであろう。さらに、1つの特徴又は工程が開示されているなら、組み合わせが明確に示されていなくても、それは任意の他の特徴又は工程と組み合わせることができる。したがって、他の態様は、請求項の範囲内である。
【実施例】
【0036】
実施例1: 骨格発達の間にRBPjk依存性Notchシグナル伝達は間充織幹細胞(MSC)を維持し、増殖させる。
【0037】
材料と方法
マウス系統Rosa−NICD、Rbpjκ、及び、Prx1Creを含む全てのマウス系統は以前に説明されている(Han et al., Int. Immunol. 14:637−45 (2002)、Logan et al., Genesis 33:77−80 (2002)、及び、Murtaugh et al., PNAS 100:14290−5 (2003))。Prx1CreマウスはJackson Laboratory(Bar Harbor、メーン州)より手に入れられた。
【0038】
マウス胚の解析
マウス胚は胎生11.0日より胎生12.5日にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に回収され、10%の中性緩衝ホルマリン中において一晩室温で固定され、それから、4μmの切片を作成する前に加工されてパラフィンに包埋された。組織構造、及び、肢芽の軟骨の構成を解析するために、標準的なアルシアンブルー/オレンジG染色が行われた。In situハイブリダイゼーションが、以前に説明されたように(Hilton et al., Development 132:4339−51 (2005)、Hilton et al., Dev. Biol. 308:93−105 (2007)、及び、Hilton et al., Nat. Med. 14:306−14 (2008))、35Sで標識されたリボプローブを用いて行われた。未発表のリボプローブは次のcDNAクローンより作成された。Sox9(4165469)、Agc1(5345931)、Hes1(10469606)、Hey1(9792713)、Jag1(10699187)、Dll1(10698888)、及び、Dll4(7492828)。cDNAクローンはOpen Biosystems(Huntsville、アラバマ州)、又は、ATCC(Manassas、バージニア州)より入手可能である。Gfpプローブは強化型Gfpコーディング配列をpGEM−T Easyベクターにクローニングすることにより作成された。Notch1、Notch2、Notch3、Fgf8、及び、Fgf10のcDNAとリボプローブは説明されるとおりである(Bellusci et al., Development 124:4867−78 (1997)、Crossley and Martin, Development 121:439−51 (1995)、及び、Mitsiadis et al., J. Cell Biol. 130:407−18 (1995))。BrdU免疫染色解析のために、妊娠中の雌マウスは、回収の2時間前に0.1mg/g体重の割合でBrdUを注入された。BrdUの検出は、Zymed Laboratories(サンフランシスコ、カリフォルニア州)発売のキットを用いて、製造業者の説明書にしたがい、バラフィン切片上で行われた。増殖に関する研究は、製造業者の説明書にしたがうマウス肢芽パラフィン切片の抗Ki67免疫染色(DAKO、デンマーク)を用いて確認された。アポトーシス性のMSCの解析は、製造業の説明書にしたがうマウス肢芽パラフィン切片上の抗Cleaved Caspase−3免疫染色(Cell Signaling;Danvers、マサチューセッツ州)とTUNEL染色(Roche Cell Death In situ Kit;Roche;バーゼル、スイス)を用いて行われた。胚の全組織標本骨格染色は以前に説明されたように行われた(Hilton et al., Development 132:4339−51 (2005)、McLeod, Teratology 22:299−301 (1980))。
【0039】
肢芽MSC細胞培養、及び、C3H10T1/2細胞培養
肢芽由来MSCは胎生11.5日のCD1マウス胚より以前に説明されたように単離された(Zhang et al., Bone 34:809−17 (2004))。軟骨形成分化のため、MSCは小塊状で(10Tl中1×105細胞)1.5時間、12穴プレートに接種され、その後、標準培地、DAPT(1μM)を含む培地、又は、Hes1 shRNAレンチウィルスを含む培地が加えられた。軟骨染色(1%アルシアンブルー/3%氷酢酸)、又は、全RNA単離のために回収される前に、細胞は6時間、3日、5日、及び、7日のタイムコースで培養された。肢芽由来MSCはまた21日間単層培養され、DAPTを含む、及び、含まない骨形成性培地(10nMデキサメタゾン、50mMアスコルビン酸、10mM β−グリセロールリン酸)、又は、脂肪細胞形成性培地(Millipore;Billerica,マサチューセッツ州)のどちらかの培地で処理された。固定されたMSCは、造骨細胞分化についてはアルカリホスファターゼ染色法(ニトロブルーテトラゾリウムクロリド/5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリホスフェート P−トルイジン塩)を用いて染色され、脂肪細胞分化についてはオイルレッド−O染色溶液(0.36%)を用いて染色された。全RNAは、リアルタイムRT−PCRで使用するために21日目の単層培養細胞から単離された。
【0040】
C3H10T1/2細胞は以前に説明されたように増殖させられ、実験のために単層になるようプレートに蒔かれた(Denker et al., Differentiation 64:67−76 (1999)、Haas and Tuan, Differentiation 64:77−89 (1999))。単層培養細胞は、製造業者のプロトコルで示唆されるように、Lipofectamine2000試薬(Invitrogen;Carlsbad、カリフォルニア州)を用いて500ngのCMV−Hes1、若しくは、CMV対照プラスミドで形質移入されるか、又は、対照ィルスに、若しくは、Hes1、Hey1、及び、HeyL(Sigma;セントルイス、ミズーリ州)に対するshRNAレンチウィルスで感染させられるかのどちらかであった。形質移入/感染の1日後、細胞はトリプシン処理され、12穴プレートの各穴に10Tlの培地あたり1x105細胞の密度で小塊状に再び蒔かれた。細胞はアルシアンブルー染色と全RNA単離のために5日目、10日目、及び、14日目に回収された。
【0041】
リアルタイムRT−PCR
胚性肢芽組織、又は、小塊培養物は液体窒素で凍結され、それから、25ゲージの注射針と注射筒を通してTrizol Reagent(Invitrogen;Carlsbad、カリフォルニア州)の中でホモジネート化された。全細胞性RNAが製造業者のプロトコルにしたがって抽出された。RNAはNanoDrop分光光度計(NanoDrop;Wilmington、デラウェア州)を用いて定量され、等濃度の全RNAがcDNAの合成のためにプールされた。製造業の説明書にしたがってiScriptTM cDNA合成キット(Bio−Rad; Hercules、カリフォルニア州)を使用して全RNA(1μg)が逆転写された。逆転写されたcDNAは、Sox9、Runx2、Col2a1、Agc1、Col1a1、Ap、Oc、Pparg、Jagged1、Jagged2、Delta−like1、Delta−like3、Delta−like4、Notch1、Notch2、Notch3、Notch4、Hes1、Hes3、Hes5、Hes7、Hey1、Hey2、HeyL、及び、CyclinD1に対するマウス特異的なプライマーを用いるリアルタイムRT−PCRによって解析された。プライマーはApplied Biosystemsソフトウェア(Applied Biosystems;Foster City、カリフォルニア州)を用いて設計された。配列は請求に応じて利用可能である。DNA増幅はSYBR(R) Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems;Foster City、カリフォルニア州)、及び、RotorGeneリアルタイムDNA増幅システム(Corbett Research;シドニー、オーストラリア)を使用して成し遂げられた。遺伝子発現はβ‐アクチン発現レベルに対して正規化され、その後、対照サンプルに対して正規化された。
【0042】
ウェスタンブロット解析
全タンパク質が、Golden溶解緩衝液を用いて、マウス肢芽組織全体、又は、肢芽由来MSC培養細胞のどちらかより単離された。肢芽由来MSC培養細胞は10cmのディッシュに6X106の濃度で蒔かれ、DAPT(1um)を含む、そして、含まない10%FBS DMEM培地中で一晩培養された。各単離に由来するタンパク質サンプル(〜100μg)はその後、10%SDSポリアクリルアミドで分離され、PVDF膜に転写された。NICD1とNICD2の切断されたタンパク質はbTAN20(Notch1)一次抗体、及び、C651.6DdHN(Notch2)一次抗体(0.4μg/ml)を用い、並びに、さらに適切な二次抗体(3000倍希釈)で探索されて検出された。等量のタンパク質を添加したことについて、抗β‐アクチン抗体(Sigma;セントルイス、ミズーリ州)が対照として使用された。免疫ブロットはSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate (Pierce;Rockford、イリノイ州)を用いて検出された。
【0043】
結果
インビトロとインビボのMSC分化の間に起こるNotch経路構成因子の発現
5種類のマウスNotchリガンド(Jagged1(Jag1)、Jagged2(Jag2)、Delta−like1(Dll1)、Delta−like3(Dll3)、及び、Delta−like4(Dll4))、4種類のNotchレセプター(Notch1(N1)、Notch2(N2)、Notch3(N3)、Notch4(N4))、及び、6種類のNotch標的遺伝子(Hes1、Hes5、Hes7、Hey1、Hey2、及び、HeyL)の肢芽MSC分化中の、及び、インビトロ軟骨形成中の正確な時間的発現を同定するためにリアルタイム(RT)PCRが行われた。胎生11.5日のマウス胚から肢芽MSCが単離され、小塊状で6時間、3日間、及び、7日間培養された。5種類のNotchリガンドの可能性があるものの内、Jag1、Dll1、及び、Dll4のみがかなりのレベルで検出され、Jag1は全ての時点で最も高い発現レベルを示した(図1A)。4種類のNotchレセプターの内3種類(N1、N2、及び、N3)のみが肢芽MSC分化の間に検出され、Notch2はその他のNotchレセプターと比較して各時点で劇的に高い発現レベルを示した(図1B)。肢芽MSC分化と軟骨形成に重要なNotchシグナル伝達経路の下流に位置する構成因子を判定するために、RBPjκ依存性Notch標的遺伝子の発現が調査された。6種類の標的の可能性があるものの内、Hes1、Hey1、及び、HeyLのみが同定された。Hey1とHeyLは最も大量に存在するNotch標的遺伝子で、インビトロでのMSC分化の間に増加し、各時点で同様の発現レベルを示した(図1C)。Hes1はHey1、及び/又は、HeyLと比較して低レベルの発現を示したが、Hes1の発現は初期肢芽MSCにおいて最も顕著であり、MSC分化の間に発現レベルが低下した(図1C)。これは、軟骨細胞系列へのMSCのコミットメントの初期段階の制御における潜在的な役割を示している。
【0044】
RT−PCR解析で同定されたNotchシグナル伝達分子について正確なインビボでの空間的発現パターンを同定するために、In situハイブリダイゼーション解析が胎生11.5日および胎生12.0日の肢芽切片に対して行われた。これらのデータは、NotchリガンドであるJag1、Dll1、及び、Dll4は全て、非常に異なる発現特性を持つことを示した。胎生11.5日目で、Jag1は肢芽間充織の大部分において中程度に発現されるが、頂端領域に隣接する先端部内側間充織の集中した領域で大いに発現した(図1D1)。その他の二種類のNotchリガンドのうち、胎生11.5日目でDll1は肢芽間充織を通じて散発的に発現し(図1D2)、一方、Dll4は血管構造の周りにより集中する発現パターンを示した(図1D3、高倍率挿入図)。Dll4は血管新生の制御因子で、それは、Notch1とともに血管内皮の重要な制御因子である(Hellstrom et al., Nature 445:776−80 (2007)、Shutter et al., Genes Dev. 14:1313−8 (2000))。NotchレセプターNotch1はまた、胎生11.5日目で、血管性組織の領域(図1D4、高倍率挿入図)と初期外肺葉で主に発現し、肢芽間充織のある部分ではより低レベルの発現が観察される。Notch2は同時期で肢芽の大部分においてより広範囲に発現する(図1D5)。Notch3は肢芽間充織内で散発的に、基部MSCおよび末梢MSCにおいてより高い濃度で発現する。Hes1発現のわずかな上昇が、Jag1発現が集中する領域と重なる遠位内側MSCにおいて観察されることができたが(図1D1、及び、1D7)、Notch標的遺伝子、Hes1およびHey1は、胎生11.5日目で、それぞれNotch2のそれに類似する発現パターンを有した(図1D5、1D7、及び、1D8)。胎生12.0日目から胎生12.5日目までに、ほとんどのNotch経路構成因子はin situハイブリダイゼーションにより検出することが困難である。Notch2とHes1の発現のみが軟骨形成凝集の周囲の肢芽MSCにおいて維持されたが、凝集そのものの内側においてはわずかな発現低下を示し(図1D9、及び、1D10、白黒の輪郭)、一方、Hey1のような構成因子はより広範に分布する発現パターンを維持した。
【0045】
どのNotchレセプターが肢芽間充織において活性があるのか決定するために、Notch阻害剤であるN−(3,5−ジフルオロフェニルアセチル−L−アラニル)]−S−フェニルグリシン t−ブチルエステル(DAPT,Calbiochem;サンディエゴ、カリフォルニア州)存在下、および、非存在下で培養されたMSCから、又は、野生型胎生11.5日齢の全肢芽組織から全タンパク質が直接的に単離され、前記レセプターの切断型、若しくは、活性型(NICD)を検出することができるNotch1抗体、及び、Notch2抗体を用いたウェスタンブロット解析を行った。ウェスタンブロット解析により、Notch2は胎生11.5日齢の肢芽MSCにおいて活性化される顕著なレセプターであり、培養MSCのDAPT処理は大量に存在する切断型Notch2(NICD2)を減少させることができることが明らかにされた(図1E)。Notch1(NICD1)は、100μgまでのタンパク質濃度ではほぼ検出不可能であった。それゆえ、まとめると、これらのデータは、Notch2はMSCで活性化される主要なNotchレセプターであり、一方、Notch経路のその他の構成因子(Jag1、Dll1、N3、Hes1、Hey1、及び、HeyL)はまた、肢発生の間、MSCの増殖と分化に重要なメディエーターでありうることを示唆する。
【0046】
Notchシグナル伝達はMSC分化の全般的な制御因子である。
【0047】
MSCにおけるNotchシグナル伝達の役割を判定するために、Notch機能欠損アッセイが、Notch阻害剤DAPTを用いた胎生11.5日齢の肢芽由来のMSC培養物に対して行われた。軟骨形成はまず、1mM DAPTの存在下、及び、非存在下での軟骨小結節形成を測定することにより、肢芽小塊培養物において調査された。DAPT処理は軟骨小結節形成を大いに増強した(図2A)。これは、Notch阻害がMSCの軟骨細胞系列へのコミットメントを加速することを示し、ある先行研究(Fujimaki et al., J. Bone Miner. Metab. 24:191−8 (2006))と一致する発見である。DAPTの効果はまた、軟骨形成マーカーのSox9、Col2a1、及び、Agc1の発現をリアルタイムRT−PCRによって評価された。未処理の培養物と比較すると、DAPTは培養3日目から5日目の間にSox9、Col2a1、及び、Agc1の発現(図2A)を増強したが、Agc1の発現は7日目までに大いに減少した。このことは、Notchは軟骨細胞成熟、又は、コミットした軟骨細胞表現型の維持において後期の役割を果たすことを示す。
【0048】
Notchが軟骨形成を特異的に調節するのか、又は、MSC分化を全般的に制御するのかどうか判定するために、肢芽MSC分化アッセイが骨形成性条件、及び、脂肪細胞形成性条件の両方の条件で行われた。肢芽MSCは単層に蒔かれ、そして、DAPT(1mM)の非存在下、及び、存在下、骨形成性培地において21日間培養された(図2B)。DAPT処理はMSCの正常な造骨細胞への分化を増強した。培養物は、上昇したアルカリホスファターゼ染色を示し、リアルタイムRT−PCR解析は造骨細胞マーカー遺伝子であるCol1a1、AP、及び、Ocの発現の著しい増加を示した(図2B)。最後に、肢芽MSCは単層に蒔かれ、そして、DAPT(1mM)の非存在下、及び、存在下、脂肪細胞形成性培地において21日間培養された(図2C)。DAPT処理はMSCの正常な脂肪細胞への分化を同様に増強した。培養物は上昇したオイルレッド−O染色を示し、リアルタイムRT−PCR解析は脂肪細胞マーカー遺伝子であるPpargの発現の著しい増加を示した(図2C)。これらのデータは、インビトロでのNotchシグナル伝達の阻害が肢芽MSCの軟骨細胞系列、造骨細胞系列、及び、脂肪細胞系列への分化を増強することを示すものである。これは、MSCの維持におけるNotchシグナル伝達について全般的な役割を示す。
【0049】
RBPjκ依存性Notchシグナル伝達は軟骨形成の間にMSC分化を抑制する。
【0050】
インビボで肢芽MSC分化中の、及び、軟骨形成中のNotchシグナル伝達に対する要件を評価する第一段階として、標準的なNotchエフェクターであるRbpjκがPrx1Cre導入遺伝子を用いて初期肢間充織において選択的に欠質させられる(Prx1Cre; Rbpjκf/f、“f”はfloxed対立遺伝子であることを表す。)マウスにおいて胚性マウス肢芽が解析された(図3)。Prx1Creは、発達中の肢の内部で軟骨細胞、造骨細胞、及び、結合組織細胞を生じるが、筋芽細胞、血液系譜細胞、若しくは、血管内皮細胞を生じない側板中胚葉のMSCを特異的に標的とするので、本研究においてPrx1Creマウス系列が使用された。肢芽MSCの軟骨細胞系列の細胞へのコミットメントにおける変化をアッセイするために、アルシアンブルー染色、in situハイブリダイゼーション、及び、リアルタイムRT−PCRがSox9、Col2a1、及び、Agc1に対して行われた。胎生12.5日齢のPrx1Cre; Rbpjκf/f変異(RBPjκ)肢芽は、ほとんど検出不可能なレベルのアルシアンブルー染色を示す対照と比較して、軟骨形成原基痕跡のアルシアンブルー染色の増加を示した(図3A1、及び、3A2)。in situハイブリダイゼーション解析により、RBPjκ変異体切片におけるCol2a1、及び、Agc1の両方の発現の増加が明らかになった。Col2a1陽性の変異体細胞の全てはまた、Agc1を発現した(図3A6、及び、3A8)。これは、これらの細胞はこの時点で完全にコミットした軟骨細胞であることを示す。この時期の野生型切片により、Col2a1陽性細胞のうちの中央部の芯にあたる細胞のみがAgc1を発現することが示された(図3A5、及び、3A7)。これは、軟骨細胞分化の正常な進行を強調するものである。さらに、RBPjκ変異体切片はSox9発現レベルの低下を示した。これは、前記変異体細胞が軟骨形成の最初期の段階を越えて進行したことを示唆する。胎生12.5日齢の肢芽全体より単離したmRNAに対して行われたリアルタイムRT−PCR解析は、軟骨形成マーカー遺伝子であるSox9、Col2a1、及び、Agc1の各々についてのin situハイブリダイゼーションの結果と一致する(図3B)。より初期の肢芽(胎生11.5日齢)に対して行われたリアルタイムRT−PCRでは、RBPjκ変異体サンプルから上昇した全ての軟骨形成マーカーの発現が示された。これらのデータは、RBPjκ依存性Notchシグナル伝達が肢芽MSCを正常に維持し、そして、RBPjκの欠損が、軟骨形成の過程を経ると決定されているこれらの細胞に関して軟骨形成分化を促進するということを示唆する。
【0051】
持続的Notch活性化がRBPjκ依存的な方法でMSCを維持、増殖させる。
【0052】
インビトロのNotch活性化が発生中の肢におけるMSC分化と軟骨形成を抑制することができるか、又は、遅らせることができるかどうか判定するために、Notch機能獲得型実験が行われた。マウスNotch1の細胞内ドメインとGFP(NICD−IRES−GFP)がloxP部位によって挟み込まれた転写停止配列を上流に含むRosa26レポーター遺伝子座を標的とする(Rosa−NICD−IRES−GFP)マウスモデルシステムを用いて機能獲得型実験が行われた。Cre活性化に引き続き、Creを発現する細胞集団内に特異的にNICDとGFPの発現が維持されることが確定されてきている(Murtaugh et al., PNAS 100:14920−5 (2003))。Prx1Cre導入遺伝子が、軟骨形成の前に初期肢芽MSC内でNICD発現を誘導し、持続的Notch活性を誘導するために使用された(Prx1Cre; Rosa−NICDf/+)。これより後、このマウスはNICD変異体と称される。胎生18.5日齢のNICD変異体骨格標本の解析は、Prx1Creが特異的に発現する領域の全てである肢(黒矢印)、頭蓋(星印)、及び、胸骨(灰色矢印)の正常な形成の明白な抑制を示した(図4A1、及び、4A2)。前記肢をより詳しく調査することにより、最基底部、及び、最先端部軟骨原基痕跡のうちのわずか少数がNICD変異体において発生したが、これらの単位は、遅滞した軟骨発生の証拠を有し、低形成である(図4A3〜4A6)。前記肢の表現型が軟骨形成の間のMSC分化の抑制から生じるのかどうか判定するために、同腹仔のNICD変異体と野生型対照で胎生12.5日齢の肢芽が解析された。NICD変異体肢芽の切片は凝集をほとんど示さず、対照と比較して低下したアルシアンブルー染色を示した(図4B1、及び、4B2)。変異体は常に3本の指の凝集(第1指、及び、第5指の明らかな喪失)を示し、しばしば、より先端の領域で凝集を発達させなかった。基底部の凝集が起きるとき、それらは常に低形成であり、軟骨形成分化過程において遅滞した。軟骨形成とMSC分化における混乱を評価するために、Sox9、Col2a1、及び、Agc1についてin situハイブリダイゼーションが行われた。NICD変異体切片はこれらのマーカー遺伝子のほぼ完全な抑制を示したが、形成された原基痕跡指凝集では、各マーカー遺伝子がかなりのレベルで発現したようである(図4B3〜4B8)。これらの原基痕跡凝集がNICD変異体においていったい何故起きたのか調べるために、NICD−IRES−GFP転写産物を活発に発現し、そのためにNotch活性化を有するMSCに印をつけるGFPについてin situハイブリダイゼーションが行われた。原基痕跡凝集のそれぞれは明らかなGFP発現を示さなかったが、一方、肢芽内部のその他のほとんどのMSCは強度のGFP発現を示した(図4B9、及び、4B10)。このことは、Prx1Cre導入遺伝子はこの細胞集団を効率的に標的としていなかったことを示唆する。胎生12.5日齢の肢芽全体から単離されたmRNAに対してRT−PCR解析が行われた。これらのデータはSox9、Col2a1、及び、Agc1のかなりの発現低下を示し(図4C)、前記骨形成マーカー遺伝子の各々についてのin situハイブリダイゼーションの結果と一致する。初期造骨細胞分化制御因子であるRunx2はSox9のようにNICD変異体においてかなり低下したレベルの発現を示すが、そのRunx2もまた発現した(図4C)。RBPjκ依存性Notch標的遺伝子であるHes1、Hey1、及び、HeyLの解析により、同腹仔である野生型対照と比較してNICDにおいて上昇した発現レベルが示された(図4C)。これらのデータは、おそらくRBPJκ依存的シグナル伝達機構を介して、Sox9、及び、Runx2の上流で作用する局所的で、そしておそらく細胞自律的な方法でのMSC分化をNotchシグナル伝達が抑制することを示唆する。
【0053】
持続的なNotch活性化が骨格パターン形成、及び、成長を損なった、又は、MSCのアポトーシスを大量に誘導したという可能性を排除するために、肢パターン形成制御因子の発現が解析され、細胞増殖とアポトーシスにおける変化が評価された。肢発生とパターン形成の重要な制御因子がNICDの過剰発現によってかなり影響を受けるかどうか判定するために、FGF、及び、Shhシグナル伝達分子であるFgf8、Fgf10、及び、Ptc1について、胎生11.0日齢の後肢切片に対してin situハイブリダイゼーション研究が行われた。AERのわずかな肥厚とFgf8、及び、Fgf10の発現上昇が観察された(図5A1〜5A4)が、一方、これらの動物において先に観察されたMSC分化の細胞自律的抑制をこのことで説明できるとは考えられなかった。さらに、Patched1 (Ptc1)発現はNICD切片と野生型切片の間で変化せず(図5A5、及び、5A6)、正常な指パターン形成と指アイデンティティーのために重要な不断のShh活性を示した。胎生11.0日齢の後肢切片でアポトーシスを起こしているMSCを検出するために、TUNEL標識と切断型Caspase−3免疫組織化学実験がその後に行われた。同腹仔の野生型対照と比較して、NICD変異体切片はMSCのアポトーシスについて有意な変化を示さなかった(図5B、及び、図8)。MSC分化のもっと後の時点でのアポトーシスに有意な変化は検出されなかった。最後に、持続的Notch活性化がMSC細胞増殖と肢成長に有害な効果を持つかどうか判定するために、胎生11.5日齢の後肢切片でBrdU標識実験が行われた。データは、NICD変異体切片が肢芽中でBrdU標識された細胞核のパーセンテージのかなり上昇を示すが、高増殖性の頂端領域(AZ)、又は、進行帯の近傍の領域(破線のボックス)においてそれはたいへん明白であった(図5C1〜5C3)。BrdUデータを確認するために、細胞増殖と細胞周期の制御因子であるCyclinD1について、胎生11.5日齢のNICD変異体肢芽と対照肢芽に由来するRNAを用いてRT−PCRが行われた。NICD変異体は対照と比較して30%以上のCyclinD1発現の増加を示した(図5C4)。これらのデータにより、NICD変異体における肢表現型はMSC分化の細胞自律的抑制により生じたものであるようであり、肢パターン形成の混乱、MSCアポトーシス、又は、MSC細胞増殖によるものではないようであるということが示された。さらに、これらのデータにより、肢芽MSCにおける持続的なNotch活性化がこの細胞集団を維持し、且つ、増殖させることが示される。
【0054】
MSC分化および軟骨形成のNotch抑制がもっぱらRBPjκ依存シグナル伝達機構によって仲介されたかどうか判定するために、Notchの機能獲得型の実験がRBPjκ転写エフェクターのない状態で行なわれた。Prx1Cre導入遺伝子、活性化可能Rosa−NICD対立遺伝子、及び、ホモ接合型Rbpjκ floxed対立遺伝子(Prx1Cre;Rosa−NICDf/+;Rbpjκf/f)を持つマウスが作成された(NICD;RBPjκ)。アリザリンレッドおよびアルシアンブルーで染色された胎生18.5日齢の骨格の分析により、正常な四肢、特定の頭蓋骨、及び、胸骨を欠くNICD変異体とは対照的に、NICD;RBPjκ変異体動物はこれらの単位の発生において類似の停止を示しそこなうことが示された(図6A1、6A2、及び、6A4)。より詳しく調査すると、NICD;RBPjκ変異体動物は、同腹仔の野生型と比較して短い骨格単位(矢印は脛骨の長さを強調する。)を持つRBPjκ変異体の骨格と極めて似ていた(図6A1、6A3、及び、6A4)。同腹仔の野生型、NICD変異体、及び、NICD;RBPjκ変異体に由来する胎生12.5日齢の後肢切片の詳細な組織学的、及び、分子的解析により、Notch活性化によるMSC分化の抑制にRBPjκが必要とされることがさらに示された。本実験のためにPrx1Cre;Rosa−NICDf/+;Rbpjκf/+の遺伝子型を持つNICD変異体は、先述したPrx1Cre;Rosa−NICDf/+変異体マウスと同一の表現型を示した(図4のNICD変異体と比較される図6のNICD変異体)。Rbpjκ対立遺伝子の一つを欠くNICD突然変異体は、MSC分化のほぼ完全な抑制をまたも示し、先端部に3か所だけの指凝集を備えた四肢を生じた。胎生12.5日齢のNICD肢芽切片は、先端部の3か所の指に限局される細胞内を除いて、アルシアンブルー染色の低下、及び、軟骨形成マーカー遺伝子発現(Sox9、Col2a1およびAgc1)の完全な喪失を示した(図6B2、6B5、6B8および6B11)。Gfp発現が評価されたとき、3か所の指凝集は再度、Gfp発現のほぼ不在と、それ故、持続的なNICD活性化の欠如を示した(図6B14)。両方のRbpjκ対立遺伝子を欠くNICD変異体(NICD;RBPjκ)は、MSC分化と軟骨形成の完全な救出を示した。胎生12.5日齢のNICD;RBPjκ変異体肢芽切片は、同腹仔の野生型対照と比較されるとき、わずかに拡大し、より強くなったアルシアンブルー染色を有するあらゆる軟骨形成単位の再出現を示した(図6B1、6B3)。さらに、NICD;RBPjκ変異体切片のin situハイブリダイゼーション解析は、前記二重変異体は同腹仔の野生型対照と比較して増加され拡大したSox9、Col2、及び、Agc1発現を示し、それは同腹仔のRBPjκ変異体に極めて類似した表現型であった(図6B4、6B6、6B7、6B9、6B10、及び、6B12)。NICD;RBPjκ変異体におけるMSC分化の遺伝的な救出は不完全な組換えとNICD発現の喪失のためではないということを確定するために、隣接する切片に対してGfp発現についてのin situハイブリダイゼーション解析が行われた。NICD;RBPjκ変異体は、NICD変異体切片で先に同定された領域を除外して、強度のGfp発現を、それ故、NICD活性化を示した(図6B14、6B15)。それ故、これらのデータは、MSC分化と軟骨形成のNotch抑制はRBPjκ依存的シグナル伝達機構によってのみ仲介されるということを初めて示すものである。
【0055】
RBPjκ依存的Notch標的遺伝子Hes1は軟骨形成の間のMSC分化に重要な制御因子である。
【0056】
前記データは軟骨形成のNotch制御はRBPjκ依存的Notchシグナル伝達機構によって仲介されることを示す。Hes、及び、HeyファミリーのいくつかのRBPjκ依存的Notch標的遺伝子は、いくつかの器官系において幹細胞/前駆細胞分化のNotch制御を仲介する。Hes1、Hey1、及び、HeyLは、高密度の小塊で培養される肢芽MSC、及び、C3H10T1/2間葉細胞においてかなり発現される数少ない古典的なNotch標的遺伝子である(図1B)。それ故、高密度の小塊で培養されている間に容易に形質導入可能なC3H10T1/2間葉細胞をHes1 shRNAウィルス、Hey1 shRNAウィルス、及び、HeyL shRNAウィルスで感染させることにより機能喪失型実験が行われた。肢芽MSCと同様に、多分化能間葉細胞株C3H10T1/2は、2週間の培養時間に高密度小塊で培養されると、軟骨形成を起こす(Denker et al., Differentiation 64:67−76 (1999)、及び、 Haas and Tuan, Differentiation 64:77−89 (1999))。Hey1 shRNA、又は、HeyL shRNAではなくHes1 shRNAウィルスで形質導入されたC3H10T1/2では、その他のNotch機能喪失型研究と同様にアルシアンブルー染色とSox9、Col2a1、及び、Agc1についてのリアルタイムRT−PCRによりアッセイされ、軟骨形成の促進、又は、増強が生じた(図9A1〜9A6、及び、9C)。Hey1 shRNA、及び/又は、HeyL shRNAで形質導入された培養物はアルシアンブルー染色では有意な変化を示さず、一貫性が無く比較的変化のない軟骨形成マーカー遺伝子発現を有した。さらに、一時的なCMV−Hes1過剰発現機能獲得型実験がC3H10T1/2小塊培養物で行われ、その実験はアルシアンブルー染色でアッセイすると軟骨形成のかなりの抑制を示し(図9B1〜9B6)、RT−PCR解析がその他のNotch機能獲得型研究と同様にSox9、Col2a1、及び、Agc1の軟骨形成マーカーのそれぞれについて行われた(図9D)。Hes1はC3H10T1/2細胞モデルを用いる間葉細胞分化と軟骨形成の重要な制御因子であるように見えたので、類似のHes1 shRNA機能喪失型研究が、3日間、5日間、及び、7日間、高密度小塊で培養された肢芽由来MSCを使用して行われた。Hes1発現の著しい低下により軟骨形成が促進されることとなり、Hes1 shRNA培養物においてアルシアンブルー染色が増強され(図7A1〜7A6)、軟骨形成マーカーであるSox9、Col2a1、及び、Agc1の遺伝子発現がほぼすべての時点で上昇した(図7B)。後半のタイムポイントである5日目と7日目では、Agc1発現は変化しなかった、又は、軽度に抑制された。これは、軟骨細胞の成熟の促進、又は、コミットした軟骨細胞表現型の維持におけるHes1の役割を示すものである。これは、高密度小塊で培養された肢芽由来MSCがNotch阻害剤のDAPTで処理される実験(図2A)と一致した。総体として、これらのデータにより、Hes1がMSCにおいて発現されるHes/Heyファミリーの主要なRBPjκ依存性Notch標的遺伝子であり、それは軟骨形成中のMSC分化のNotchを介した抑制に必要とされるということが示された。さらに、これらのデータは、RBPjκ依存性Notchシグナル伝達経路は骨格発達の間にMSCの維持と増殖に重要であることを示した。したがって、Notch経路の操作により、骨格修復およびMSC集団を利用する組織工学的応用を目的として、生体外でMSCの分化を維持し、増殖させ、制御する手段が提供される。
【0057】
実施例2: ヒトMSC(hMSC)のNotch制御
Notchシグナル伝達がどのようにhMSCの維持と増殖を制御するのか探求するために、Lonza Inc.(バーゼル、スイス)より購入された第1継代培養で骨髄由来のhMSCからの各Notchレセプター、及び、すべての既知のRBPjκ依存性Notch標的遺伝子(Hes1、Hes5、Hes7、Hey1、Hey2、HeyL)の発現特性(図10)。全てのNotchレセプター、および、Hes/Hey標的遺伝子のほとんどは様々なレベルで発現した。Notch2(図10A)およびHes1(図10B)は最も高発現であるhMSCのNotch構成因子として同定された。これは、初期発生中のマウス肢骨格のMSCにおけるNotch構成因子発現と機能を解析した実施例1のデータと一致した。
【0058】
hMSCをレンチウィルスコンストラクトと感染させ、Jag1をコートしたプレートによってhMSCにおけるNotchシグナル伝達を誘導する能力を示すため、いくつかの対照実験が行われた。hMSCはまず、ATCCより入手されたEF.v.CMV.GFP対照レンチウィルスコンストラクトで感染させられた。このレンチウィルスは、24時間後に、及び、細胞の多数の継代の間に感染効率を決定することを可能にするGFPを発現する。その結果は、長期にわたる培養と継代の間にhMSC成長に、又は、細胞生存に明らかな変化もなく維持される24時間以内の85%以上の感染効率を示した。5μg/ml、10μg/ml、及び、15μg/mlの濃度のJag1と10μg/mlのIgGを対照として用いる組換えJag1タンパク質で培養ディッシュをコートするプロトコルが確立された。コートされたプレート上のJag1タンパク質の抗Jag1抗体を用いる免疫染色および呈色反応により、10μg/mlの濃度の組換えJag1タンパク質で最大で均一なプレートのコーティングが達せられることが示された。それ以上高い濃度が前記培養ディッシュに結合したJag1の量を増加させるようには見えなかった。あるいは、5μg/mlの濃度により、かなり低い濃度であり、並びに、前記ディッシュの周辺部の周りにタンパク質が不均一に分布するように見えるJag1コーティングが示された。IgG対照プレートはまた、Jag1組換えタンパク質を含まないプレートについて予想されるように、呈色反応を示さなかった。次に、このJag1コーティング技法がhMSCにおいてNotchシグナル伝達を誘導することを確認するために、RBPjP依存性Notchルシフェラーゼレポーターで形質移入されたhMSCが5μg/ml、10μg/ml、及び、15μg/mlの濃度のJag1とIgGでコートされたプレート上で培養された。そのデータにより、10μg/mlのJag1タンパク質が最大ルシフェラーゼ活性を誘導することが示された。hMSCは、細胞のサイズ、形態、又は、細胞生存について明らかな変化も無くIgGコートプレート、及び、Jag1コートプレートの両方で正常に成長するように見えたことはまた注目に値する。
【0059】
Notchシグナル伝達はhMSCの「幹細胞性」の強力な制御因子なので、初期継代hMSCにおいて高発現するNotch分子(Notch2およびHes1)は、細胞が幾世代か継代するにつれ、その発現レベルを変化させ、徐々にその「幹細胞様の」特質を失うであろう。同じ合理がOct4、Sox2、及び、Nanogを含む「幹細胞性」の重要な制御因子に当てはまるであろう。それ故、RT−PCR実験が行われ、通常の培養プレート上の間充織幹細胞成長培地(MSCGMTM)(Lonza, Inc;バーゼル、スイス)中で継代されたhMSCに由来するNotch2、Hes1、Oct4、Sox2、及び、Nanogの遺伝子発現を解析した。第1継代培養(P1)、及び、第15代継代培養(P15)に引き続いてこれらの遺伝子の発現が比較された。これらのデータはNotch分子(Notch2、Hes1)と多分化能幹細胞マーカー(Oct4、Sox2、Nanog)はP15 hMSCではP1と比較して著しく減少したことを示す(図11A)。これらのデータは、これらの細胞が生体外で継代する間にhMSCの「幹細胞性」の維持においてこれらの因子の各々が持つ役割を示す。標準的なhMSC培養条件での第2継代培養、及び第10継代培養に引き続く、hMSC細胞表面マーカーCD105とNotchレセプターNotch2についてのフローサイトメトリーのデータがまた行われた(図12A、及び、12B)。
【0060】
Notchシグナル伝達が幹細胞維持の重要な制御因子を誘導することができるかどうか判定するために、第3継代培養hMSCがJag1コートプレート、及び、IgGコートプレート上で24時間培養され、リアルタイムRT−PCR解析のためにRNAが単離された(図11B)。この研究は、Jag1コートプレート(10μg/ml)は効率的にRBPjP依存性Notchシグナル伝達を誘導し、対照に対して約7倍にHes1発現を強化することを示した。さらに、Jag1はOct4、Sox2、及び、Nanogの発現を誘導したが、Oct4発現はSox2、及び、Nanogと比較して軽度に増強されただけであった。それ故、Jag1/Notchシグナル伝達は、幹細胞因子のこのネットワークによりhMSCの維持と増殖を制御した。最後に、比較的短い間隔の時間でJag1がhMSCの細胞増殖を制御できるかどうか判定するために、同じ培養系と第3継代培養hMSCが用いられた。BrdU酵素結合性免疫吸着検定法(ELISA法)が、Jag1コートプレート、及び、IgGコートプレート上で24時間培養されたhMSCに対して行われた。データは、Jag1誘導Notchシグナル伝達は、対照と比較して50%を超える値にまでBrdUの取り込みを増加させることを示した(図11C)。これはNotchシグナル伝達が生体外でのhMSCの維持と増殖の両方を制御したことを示す。
【0061】
実施例3: Notch2で選択されたhMSCにおけるJagged−1を介したNotch活性化
図13Aで示すように、Notch2で選択されたhMSCにおけるJagged−1を介したNotch活性化は幹細胞制御因子、細胞増殖、及び、幹細胞増殖を誘導した。より具体的には、Jag1コートプレート上の総hMSC培養、及び、Notch2で選択されたhMSC培養におけるNotchシグナル伝達分子(Notch2、及び、Hes1)、重要な幹細胞制御分子(Oct4、Sox2、及び、Nanog)、及び、細胞増殖のマーカー(CycD1)についてのRT−PCR遺伝子発現解析により、Notch2で選択されたhMSCにおける遺伝子発現の上昇が示された。図13Bは、Jag1コートプレート上で培養された総hMSC、Notch2陰性hMSC、及び、Notch2陽性hMSCに対し行われたBrdU ELISA検定の結果を示す。総hMSC、又は、Notch2陰性hMSCと比較して、Notch2陽性hMSCは細胞増殖の増強を示した。図13Cは、Jag1コートプレート上で培養された総hMSC、Notch2陰性hMSC、及び、Notch2陽性hMSCに対し行われたCFU−Fアッセイの結果を示す。総hMSC、又は、Notch2陰性hMSCと比較して、Notch2で選択されたhMSCは幹細胞増殖の増大を示した。
【0062】
実施例4: Notch2で選択されたhMSCは軟骨形成と骨形成の強化された特質を示す。
【0063】
図14A、及び、14Cで示されるように、Notch2で選択されたhMSCは軟骨形成と骨形成の強化された特質を示した。リアルタイムRT−PCR遺伝子発現解析により、二週間から三週間、軟骨形成性条件、又は、骨形成性条件での培養の後、総hMSC、及び、Notch2陰性hMSCと比較して、Notch2陽性hMSCにおける軟骨形成マーカー遺伝子(Sox9、Col2a1、及び、Agc1)(A)及び骨形成マーカー遺伝子(Col1a1、Ap、及び、Oc)(C)の増加が示された。軟骨形成分化に引き続く総hMSC、Notch2陰性hMSC、及び、Notch2陽性hMSC(第2継代培養)のアルシアンブルー染色が図14Bに示される。軟骨形成分化に引き続くNotch2陰性hMSC、及び、Notch2陽性hMSC(第2継代培養、及び、第5継代培養)のAP染色が図14Dに示される。hMSCは、最初、Jag1コートプレートで二週間培養された(3日から4日/継代)。
【0064】
これらの例は、Notch2及びHes1がヒト骨髄由来MSC(hMSC)において発現されるNotchシグナル伝達分子であることを示す。これらのNotch遺伝子と重要な幹細胞制御因子の発現は、hMSCが継代されるにつれ、減少した。hMSCのNotch活性化はNotch標的遺伝子の発現ばかりか重要な幹細胞制御分子を誘導することもまた示される。さらに、Notch2で選択されたhMSCは、Notch活性化の後、総hMSC,又は、Notch2陰性hMSCと比較して優れたNotch経路遺伝子と幹細胞制御分子の発現誘導、及び、優れた幹細胞増殖を示した。Notch2で選択されたhMSCはまた、例えば、Jagged1を介したhMSCの維持と増殖からはずされた後、総hMSC,又は、Notch2陰性hMSCと比較して、軟骨形成分化、及び、骨形成分化を起こす優れた能力を示した。
【0065】
実施例5: 生体外で増殖したNotch2陽性細胞集団の大腿骨同種移植モデルマウスにおける骨欠損治癒に対する効果
Notch2陽性細胞集団のインビボの効果を評価するために、本明細書に記載される新規のMSC選択法、並びに、Jagged1誘導MSC維持法、及び、増殖法を用いて十分な数のNotch2陽性マウスMSCが作り出される。Notch2で選択されたMSCと総マウスMSC(慣例にしたがって選択されたマウスMSC)が、前記細胞を生体内で捜し出すことができるRosa26LacZマウスより単離される。細胞の維持と増殖に引き続き、MSCはJagged1コートプレートよりはずされ、重大な分割型骨欠損の大腿骨同種移植モデルマウスへの移植のための失活した同種移植片に前記細胞が接種される。MSC無しの失活した同種移植片が負の対照群として働く。MSCの取り込み、骨新生、及び、同種移植骨結合過程を評価するためのX線解析、マイクロCT解析、組織学解析、免疫組織化学(IHC)解析、in situハイブリダイゼーション(ISH)解析、及び、細胞系列追跡(LacZ染色)解析に用いるため、移植後3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、及び、28日目にマウス集団(5〜8匹)から大腿骨が回収される。実験群と対照群の各々に由来する治癒しつつある骨の強度と完全性を評価するために、特定のエンドポイントで生体力学的なねじり試験もまた行われる。
【0066】
方法
骨同種移植片の失活
失活した同種移植片の提供のため、129系統の10週齢メスマウスがJackson Labsから入手される。簡単に説明すると、マウスは安楽死させられ、4mmの中央骨幹部分(大腿骨長の約20%)が回転ドレメルと注文により4mmの間隔で並行して取り付けられた2枚のダイヤモンド刃を用いる骨切断により各大腿骨から取り外される。同種移植片は25ゲージの注射針で骨髄を洗い流され、骨膜は手作業で引きはがされ、移植片は70%エタノールで少なくとも4時間、繰返し洗浄される。同種移植片は検査され、必要であれば、残っている細胞が最終的に取り除かれる。前記同種移植片は失活過程を完結するために少なくとも30日間、100%エタノール中−80℃で保存される。
【0067】
失活した同種移植片へのMSCの接種
(上述した)Jagged1を介したMSC維持と増殖に引き続き、Notch2で選択されたhMSC、及び、総MSCが失活した同種移植片に接種される。簡単に説明すると、前記失活した同種移植片は−80℃の冷凍庫から取り出され、室温に平衡化される。移植片は、5×105個のMSCの最初の接種の30分前に標準培地を含む96穴培養プレートに配置される。MSCは失活化した移植片上で、さらに30分間、37℃、5%二酸化炭素中で保温される。前記移植片は180°回転され、さらに5×105個のMSCが移植片の他方の面に接種され、MSCが完全に、且つ、均一に分布するようにされる。MSCが接種されて「再活性化した」同種移植片は37℃、5%二酸化炭素中で約1時間、保温され、細胞が前記移植片に十分に付着して同化する。MSCを受け取らない前記の失活した同種移植片は移植の前に同じ培養条件におかれる。失活した骨同種移植片、及び、MSCで再活性化した骨同種移植片のすべては、その後、C57BL/6Jレシピエントマウスに作られた4mmの区域性欠損に移植される。
【0068】
マウス大腿骨欠損の外科的再建
10週齢のメスC57BL/6Jマウスが同種移植のレシピエントとして全ての実験において用いられた。前記マウスはケタミン(60mg/kg体重)及びキシラジン(4mg/kg体重)の腹腔内注射により麻酔される。7mmから8mmの側方皮膚切開がなされ、鈍的に筋肉を切開することにより大腿骨の中軸が露出される。4mmの中央骨幹部分が上述したように骨切断により大腿骨から取り外される。22ゲージの注射針を用いて髄管が近位に、及び、遠位に切開される。前記の調製された失活した同種移植片、及び、MSCで再活性化された同種移植片が、それから、4mmの前記欠損に挿入され、髄内の髄腔を通して配置される滅菌されたチタニウムのピンによって固定される。髄内のピンは膝と臀部の両方で曲げられ、ピンが固定化される。前記切開は、最初の画像研究を考慮して断続絹糸縫合によって閉じられ、それに引き続いて、皮膚が外科用ホッチキスにより閉じられた。骨移植によって誘起されるどのような激しい疼痛をも制御するために、ブプレノルフィン(0.5mg/kg)が手術後に与えられうる。移植されたサンプルは、移植片治癒、並びに、骨形成に対するMSCの寄与の評価のため、3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、及び、28日目に回収される。
【0069】
マイクロCT骨画像解析
14日目、21日目、及び、28日目のサンプルに由来する再建された大腿骨のうちのいくつか(5サンプル)は、慎重な切開と髄内のピンの除去の後、マイクロCTシステム(VivaCT 40, Scanco Medical)を用いて画像化される。簡単に説明すると、55 kVpおよび145 iAの高解像度(10.5ミクロン)X線エネルギー設定、200ミリ秒の積分時間、及び、円錐ビーム再構築アルゴリズムを利用するプロトコルを用いて前記大腿骨がスキャンされる。移植された同種移植片上の中央部に位置する中央骨幹の約8.00mm(約800枚)の領域がスキャンされる。骨と移植片の容積、及び、骨塩量(BMD)の定量がScanco解析ソフトウェアを用いて行われる。
【0070】
生体力学的試験
マイクロCT画像化の後、標本は生理食塩水で湿らされ、生体力学的試験のために融解されるまで−20℃で凍結される。直線的な軸の配列を確保し、7mmから8mmのゲージ長を維持するために、前記大腿骨の末端は、注文生産の治具内のPMMAを用いて6.35mm平方のアルミニウムチューブホルダーに接着され、各末端で少なくとも3mmの長さがホルダーに収まるようにされる。組織の再水和とPMMAの硬化を見越して、標本はホルダーに収められた後、室温で2時間PBSに浸される。標本はEnduraTec TestBenchTMシステム(200 N.mmトルクセル;Bose Corporation)に据えられ、1°/秒の速度で破損するまでねじれ力について試験される。トルクデータは、回転ひずみ(ゲージ長で正規化され、rad/mmで表される。)に対してプロットされ、終局トルク(TUlt)、降伏トルク、ねじり剛性(TR;トルクで正規化された回転ひずみ曲線の直線部分の傾きから計算される。)、及び、ねじり破断エネルギー(トルクひずみ曲線の下の面積)が決定される。破損するまでの試験されたのち、破損の様式を検討するために、全てのサンプルはX線で調べられる。
【0071】
移植された大腿骨の組織学的、及び、分子的評価
組織学分析、及び、分子的解析に用いられる予定の大腿骨サンプルは中性緩衝ホルマリン中で3日間固定され、14%EDTA(pH7.2)の中で脱カルシウム化され、そして、パラフィン中で加工される。3日目、7日目、10日目、14日目、21日目、28日目のサンプル由来のパラフィン包埋サンプル(5サンプル)は5μmの厚みの切片にされる。治癒しつつある大腿骨内の定められた深度にある、ブロックあたり何枚かの切片がオレンジG/アルシアンブルー(H&E)で染色され、軟骨、骨、及び、繊維組織の寄与が判定されるであろう。間に存在する未染色の切片は、先述したようにS−35標識されたリボプローブを用いて軟骨細胞分化の特異的なマーカー(Sox9、Col2a1、Agc1、Col10a1、及び、Mmp13)、及び、造骨細胞分化の特異的なマーカー(Col1a1、Ap、Bsp、及び、Oc)についてのin situハイブリダイゼーションを行うために使用される。前記骨組織のリモデリングがまたTRAP染色法を用いてモニターされるであろう。組織形態計測的解析、並びに、細胞染色と遺伝子発現の領域の定量がOsteoMetricsシステム、及び、OsteoMeasureソフトウェアを用いて行われる(Tiyapatanaputi et al. A novel murine segmental femoral graft model. J Orthop Res 2004;22−6:1254−60.を参照のこと。)。
【0072】
βガラクトシダーゼ染色、及び、MSC細胞系列追跡
MSC細胞系列追跡解析に使用される予定の大腿骨サンプルは、4%パラホルムアルデヒドで2時間固定され、14%EDTA(pH7.2)の中で脱カルシウム化され、15%と30%のショ糖勾配を通して加工され、O.C.T.包埋媒体中で凍結される。3日目、14日目、及び、28日目のサンプル由来の凍結サンプル(3サンプル)は8μmの厚みの切片にされるであろう。治癒しつつある大腿骨内のさまざまな深度に由来する切片が集められ、βガラクトシダーゼについて染色されるであろう。切片は以下に説明するように解析される。凍結された切片の何枚かがLacZ染色細胞の細胞系列の範囲を定めるための二重染色法に利用されるであろう。これらの切片は、まず、βガラクトシダーゼ染色にかけられ、それから直ちに、軟骨細胞系列(Col2a1、Col10a1)、及び、造骨細胞系列(Bsp、Oc)に特異的なプローブ、及び、抗体を用いるin situハイブリダイゼーション、及び/又は、免疫組織化学のために使用されるであろう。二重に標識された組織切片の染色、画像化、及び、画像解析は先に説明されたように行われた(Hilton et al., Notch signaling maintains bone marrow mesenchymal progenitors by suppressing osteoblast differentiation. Nat Med 2008;14−3:306−14を参照のこと)。
【0073】
X線法、マイクロCT法、組織学的方法、IHC法、ISH法、LacZ染色法、及び、生体力学試験法によって測定されるとき、Notch2で選択され、維持され、増殖されたマウスMSCは、慣例的に選択されたMSCを用いる再活性化された同種移植片、又は、失活した同種移植片のみよりも強力な効果を再活性化された同種移植片の取り込みに対して示すであろう。さらに、組織学的、及び、分子的解析により、Notch2で選択されたMSCで再活性化された同種移植片は軟骨形成分化での早い時期の増強とそれに引き続く造骨細胞分化の増強と骨の蓄積を示すことが示されるであろう。骨リモデリング過程は、TRAP染色で評価すると、Notch2で選択されたMSC集団と総MSC集団の両方において類似するであろう。最後に、Notch2で選択されたMSCを使用して再活性化された同種移植片に由来するβガラクトシダーゼ染色と細胞系列追跡のデータは、総MSCを使用して再活性化された同種移植片と比較して、増強された、直接ドナー細胞からの骨形成に至るより多くの軟骨形成に分化した細胞系列と骨形成に分化した細胞系列を示すであろう。
【0074】
多くの実施形態が記載されてきた。それでも、様々に改変がなされうることが理解されるであろう。したがって、その他の実施形態は、次の請求項の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の継代を通して能力を維持する間充織幹細胞(MSC)の集団を、被験者から分離する方法であって、
(a)前記被験者からMSCを含む生物学的試料を得ること;及び
(b)前記生物学的試料からNotch2受容体を発現するMSCを選択し、Notch2+MSCの集団を得ることを含む方法。
【請求項2】
工程(b)を、Notch2受容体抗体を用いて実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)を、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は親和性クロマトグラフィーを用いて実施する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記Notch2受容体抗体が基質と結合している、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記基質が可動式固体支持体である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記可動式固体支持体が蛍光ビーズである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記基質が固定式固体支持体である、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記固定式固体支持体がカラムである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記固定式固体支持体がプレートである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記Notch2+MSCの集団が、間充織幹細胞と関連する1つ以上の追加のマーカーを発現する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の追加のマーカーが、CD73、CD90、CD105、CD106、CD156、CD44、CD29、CD166、Stro−1、FGF10、Prx1、Oct4、Sox2、及びNanogからなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記Notch2+MSCの集団が、CD11b、CD34、CD45、CD14、及びCD31からなる群から選択される造血又は内皮細胞系列と関連する1つ以上のマーカーを発現しない、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記Notch2+MSCの集団が、CD105及びCD156を発現する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記被験者からの試料が、骨髄、脂肪組織、滑膜、骨膜、軟骨膜、軟骨、歯の組織、胎盤組織、肝臓組織、筋肉組織、肺組織、心臓組織、結合組織、及び脾臓組織からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記試料が骨髄である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
Notchシグナル経路の活性化剤の存在下に、MSCを培養することを含む、請求項1記載の方法に由来するNotch2+MSCの集団を培養する方法。
【請求項17】
前記Notchシグナル経路の活性化剤がJagged 1である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記Notchシグナル経路の活性化剤が、delta−like 1、delta−like 3、delta−like 4、Jagged 2、Dlk1/Pref1、DNER、Contactin1(F3)、Contactin6(NB3)、CCN3/NOV、MAGP1、及びMAGP2からなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記Notchシグナル経路の活性化剤が、Notch受容体の細胞内ドメインである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記Notch受容体が、Notch1、Notch2、Notch3、又はNotch4である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記Notch2+MSCの集団が拡張する、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記Jagged 1が、培養皿に少なくとも部分的に固定化されている、請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の分化誘導薬の存在下にNotch2+MSCの集団を培養することをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の分化誘導薬が、軟骨形成、骨原性又は脂肪細胞形成系列への分化を選択的に誘導する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記Notch2+MSCの集団を被験者に投与することを含む、間葉細胞系列における欠陥又は異常と関連する障害を患っている被験者を治療する方法。
【請求項26】
前記Notch2+MSCの集団が、同一又は異なる被験者に由来する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記Notch2+MSCの集団が、同一の被験者に由来する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記被験者が、骨又は軟骨の異常を有している、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記骨の異常が骨折骨粗鬆症である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記軟骨の異常が関節軟骨の異常である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記骨又は軟骨の異常部位又はその近くで、被験者にNotch2+MSCを投与する、請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記Notch2+MSCを被験者に全身投与する、請求項25記載の方法。
【請求項33】
Notch2受容体(Notch2+MSC)を発現する、MSCの相対的に純粋な集団。
【請求項34】
前記Notch2+MSCが、複数の継代を通して拡張する能力を維持している、請求項30記載のNotch2+MSC。
【請求項35】
前記Notch2+MSCが、CD105及びCD156を発現する、請求項30記載のNotch2+MSC。
【請求項36】
前記Notch2+MSCが、CD105、CD106、CD156、CD44、CD29、CD166、Stro−1、FGF10、Prx1、Oct4、Sox2、及びNanogからなる群から選択される、間充織幹細胞と関連する1つ以上のマーカーを発現する、請求項30記載のNotch2+MSC。
【請求項37】
前記Notch2+MSCが、CD34、CD45、CD14及びCD31からなる群から選択される、造血及び内皮細胞系列と関連する1つ以上のマーカーを発現しない、請求項30記載のNotch2+MSC。
【請求項38】
請求項1〜16のいずれか1項記載の方法により製造された、Notch2+MSCの相対的に純粋な集団。
【請求項39】
請求項30記載のNotch2+MSCを被験者に投与することを含む、被験者における骨又は軟骨の異常の治療方法。
【請求項40】
前記骨又は軟骨の異常部位又はその近くで、被験者にNotch2+MSCを投与する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記Notch2+MSCを被験者に全身投与する、請求項39記載の方法。
【請求項1】
複数の継代を通して能力を維持する間充織幹細胞(MSC)の集団を、被験者から分離する方法であって、
(a)前記被験者からMSCを含む生物学的試料を得ること;及び
(b)前記生物学的試料からNotch2受容体を発現するMSCを選択し、Notch2+MSCの集団を得ることを含む方法。
【請求項2】
工程(b)を、Notch2受容体抗体を用いて実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)を、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は親和性クロマトグラフィーを用いて実施する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記Notch2受容体抗体が基質と結合している、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記基質が可動式固体支持体である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記可動式固体支持体が蛍光ビーズである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記基質が固定式固体支持体である、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記固定式固体支持体がカラムである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記固定式固体支持体がプレートである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記Notch2+MSCの集団が、間充織幹細胞と関連する1つ以上の追加のマーカーを発現する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の追加のマーカーが、CD73、CD90、CD105、CD106、CD156、CD44、CD29、CD166、Stro−1、FGF10、Prx1、Oct4、Sox2、及びNanogからなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記Notch2+MSCの集団が、CD11b、CD34、CD45、CD14、及びCD31からなる群から選択される造血又は内皮細胞系列と関連する1つ以上のマーカーを発現しない、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記Notch2+MSCの集団が、CD105及びCD156を発現する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記被験者からの試料が、骨髄、脂肪組織、滑膜、骨膜、軟骨膜、軟骨、歯の組織、胎盤組織、肝臓組織、筋肉組織、肺組織、心臓組織、結合組織、及び脾臓組織からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記試料が骨髄である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
Notchシグナル経路の活性化剤の存在下に、MSCを培養することを含む、請求項1記載の方法に由来するNotch2+MSCの集団を培養する方法。
【請求項17】
前記Notchシグナル経路の活性化剤がJagged 1である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記Notchシグナル経路の活性化剤が、delta−like 1、delta−like 3、delta−like 4、Jagged 2、Dlk1/Pref1、DNER、Contactin1(F3)、Contactin6(NB3)、CCN3/NOV、MAGP1、及びMAGP2からなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記Notchシグナル経路の活性化剤が、Notch受容体の細胞内ドメインである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記Notch受容体が、Notch1、Notch2、Notch3、又はNotch4である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記Notch2+MSCの集団が拡張する、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記Jagged 1が、培養皿に少なくとも部分的に固定化されている、請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の分化誘導薬の存在下にNotch2+MSCの集団を培養することをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の分化誘導薬が、軟骨形成、骨原性又は脂肪細胞形成系列への分化を選択的に誘導する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記Notch2+MSCの集団を被験者に投与することを含む、間葉細胞系列における欠陥又は異常と関連する障害を患っている被験者を治療する方法。
【請求項26】
前記Notch2+MSCの集団が、同一又は異なる被験者に由来する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記Notch2+MSCの集団が、同一の被験者に由来する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記被験者が、骨又は軟骨の異常を有している、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記骨の異常が骨折骨粗鬆症である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記軟骨の異常が関節軟骨の異常である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
前記骨又は軟骨の異常部位又はその近くで、被験者にNotch2+MSCを投与する、請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記Notch2+MSCを被験者に全身投与する、請求項25記載の方法。
【請求項33】
Notch2受容体(Notch2+MSC)を発現する、MSCの相対的に純粋な集団。
【請求項34】
前記Notch2+MSCが、複数の継代を通して拡張する能力を維持している、請求項30記載のNotch2+MSC。
【請求項35】
前記Notch2+MSCが、CD105及びCD156を発現する、請求項30記載のNotch2+MSC。
【請求項36】
前記Notch2+MSCが、CD105、CD106、CD156、CD44、CD29、CD166、Stro−1、FGF10、Prx1、Oct4、Sox2、及びNanogからなる群から選択される、間充織幹細胞と関連する1つ以上のマーカーを発現する、請求項30記載のNotch2+MSC。
【請求項37】
前記Notch2+MSCが、CD34、CD45、CD14及びCD31からなる群から選択される、造血及び内皮細胞系列と関連する1つ以上のマーカーを発現しない、請求項30記載のNotch2+MSC。
【請求項38】
請求項1〜16のいずれか1項記載の方法により製造された、Notch2+MSCの相対的に純粋な集団。
【請求項39】
請求項30記載のNotch2+MSCを被験者に投与することを含む、被験者における骨又は軟骨の異常の治療方法。
【請求項40】
前記骨又は軟骨の異常部位又はその近くで、被験者にNotch2+MSCを投与する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記Notch2+MSCを被験者に全身投与する、請求項39記載の方法。
【図4C】
【図10A】
【図10B】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図10A】
【図10B】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9−1】
【図9−2】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−518588(P2013−518588A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552039(P2012−552039)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023369
【国際公開番号】WO2011/097242
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(507245021)ユニバーシティー オブ ロチェスター (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023369
【国際公開番号】WO2011/097242
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(507245021)ユニバーシティー オブ ロチェスター (9)
【Fターム(参考)】
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