説明

間接加熱型濃縮乾燥装置

【課題】間接加熱型濃縮乾燥装置において、ケーシングの排出側の底部に設けた排出口から固形分をスムーズに排出しながら、液状原料を効率的に濃縮乾燥できるようにすることである。
【解決手段】横長のケーシング2と、ケーシング2を水平方向に貫通しケーシング2に回転自在に取り付けられた一対のスクリュー4とを備え、ケーシング2の長手方向一端側に供給口6を設け、長手方向他端側の底部に排出口7を設けた間接加熱型濃縮乾燥装置1において、排出口7の手前にケーシング2の下部内面2aから上方に突出する堰板8を設け、ケーシング2の底部にある固形分をかき上げる攪拌爪11を、堰板8の供給側側面に隣接するようにスクリュー4に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状原料を伝導加熱により濃縮乾燥して、液状原料中の溶剤や固形分を回収する間接加熱型濃縮乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
間接加熱型濃縮乾燥装置として、例えば、横長のケーシングと、そのケーシングの外側に設けたジャケットと、前記ケーシングを水平方向に貫通しケーシングに回転自在に取り付けられた一対の中空のスクリューとを備え、その両スクリューを互いに噛み合うように配置した2軸噛合い型スクリュー式乾燥機がある(例えば、特許文献1参照)。この2軸噛合い型スクリュー式乾燥機は、前記ケーシングの長手方向一端側の上部に供給口と排気口が設けられ、長手方向他端側の下部に排出口が設けられている。排出口は、ケーシングの底面の短手方向中央部に開口している。
【0003】
また、各スクリューは、長手方向一端側から他端側の排出口の位置まで螺旋状に延びるリードが形成されており、各リードが相手側のリードと噛み合うとともに、各リードとケーシングの下部内面との間隔が小さく設定され、セルフクリーニング機能が得られるようになっている。
【0004】
上記のように構成された2軸噛合い型スクリュー式乾燥機は、両スクリューを互いに逆方向に回転させることにより、ケーシングの供給口から供給された液状原料がスクリューのリードに押されて排出口へ向かって移送される。
【0005】
このとき、液状原料は、ジャケットや各スクリューの内部に通される水蒸気等の熱媒体から間接的に熱が伝導され、液状原料中の溶媒や溶剤が気化して濃縮乾燥される。液状原料から溶媒や溶剤が気化すると、液状原料中から固形樹脂などの固形分が生成し、この固形分がケーシングの下部内面に沿って移送されて排出口から排出される。また、液状原料中から気化した溶媒や溶剤はケーシングの排気口から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−227842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記2軸噛合い型スクリュー式乾燥機は、液状原料の供給量が多くなったり、液状原料中の溶媒や溶剤の割合が多くなったりすると、溶媒や溶剤の一部が気化せずに固形分とともに排出されるという問題があった。これは、ある程度乾燥された固形分は、ケーシングの下部内面に沿って移動するようになると、スクリューからの伝熱が少なくなるので、運転条件が厳しくなると装置を大型化しない限りケーシング内の滞留時間では溶媒や溶剤を十分に気化させることができない場合が多くなるからである。
【0008】
また、濃縮乾燥する液状原料が、液体→粘調体→粉・固形物へと相変化する(例えば、アクリルエマルジョン樹脂等)場合、液状原料中から生成した固形樹脂が溶媒や溶剤を内包した状態で排出口から排出されることがある。固形樹脂のフレーク内部は、外部よりも蒸気圧が高いので、平衡蒸気圧温度も高くなり、フレークに内包された溶媒や溶剤が気化しにくくなり、減率乾燥期間では著しく乾燥効率が低下する。このため、固形樹脂とともに排出口から排出される溶媒や溶剤の量が5%以下となるような高度な濃縮乾燥には、装置を大型化するか、粉砕後再度、乾燥工程を設ける必要があった。
【0009】
これに対して、装置を大型化することなく、固形分とともにケーシングの排出口から排出される溶剤や溶媒の量を少なくするために、排出口の手前にケーシングの底部内面から上方に突出する堰板を設けることにより、固形分が排出口の手前で一時的に堰き止められるようにして、液状原料のケーシング内での滞留時間を長くすることが考えられる。
【0010】
しかし、通常は、排出口がケーシングの底面に開口しているので、この排出口の手前に前記堰板を設けると、スクリューによりケーシングの下部内面に沿って移送されてきた固形分が排出口の手前で堰板に押し付けられた状態となり、固形分を排出口から排出することが困難となってしまう。
【0011】
そこで、この発明の課題は、間接加熱型濃縮乾燥装置において、ケーシングの排出側の底部に設けた排出口から固形分をスムーズに排出しながら、液状原料を効率的に濃縮乾燥できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明は、横長のケーシングと、ケーシングを水平方向に貫通しケーシングに回転自在に取り付けられ、螺旋状に延びるリードを有する一対のスクリューとを備え、前記ケーシングの長手方向一端側に供給口を設け、長手方向他端側の底部に排出口を設け、前記ケーシングの供給口から供給された液状原料を前記スクリューの回転によりケーシングの排出口へ向けて移送しながら、伝導加熱により前記液状原料中の溶媒または溶剤を気化させて、前記ケーシングの排出口から液状原料中の固形分を排出する間接加熱型濃縮乾燥装置において、前記排出口の手前に前記ケーシングの底部内面から上方に突出する堰板を設け、その堰板の供給側側面に隣接するように前記ケーシングの底部にある固形分をかき上げる攪拌爪を前記スクリューに設けたのである。
【0013】
このようにすると、堰板によって固形分が堰き止められることにより、装置を大型化させずに液状原料の滞留時間を長くすることができるので、多量多湿の液状原料を効率よく濃縮乾燥することができる。また、堰板の手前で滞留した固形分を攪拌爪で上方へかき上げるので、固形分が堰板を乗り越えやすくなり、固形分を排出口からスムーズに排出することができる。
【0014】
前記攪拌爪を、前記スクリューの軸方向中間部にも設けるようにしてもよい。このようにすると、ある程度乾燥された原料がスクリューの軸方向中間部に移送されてきた段階でフレーク状の固形分が解枠されるので、固形分の表面積が大きくなった状態でケーシング内の滞留時間を長くすることができる。このため、固形分に内包されていた溶媒や溶剤をさらに効率的に気化させることができる。
【0015】
前記スクリューは、前記軸方向中間部の攪拌爪の位置よりも排出側のリードをセルフクリーニング機能のないリードとすると好ましい。このようにすると、スクリューの軸方向中間部の攪拌爪の位置よりも後方部では、スクリューどうし間の空間が大きくなるので、より多くの液状原料を保持することができる。このため、排出される固形分の乾燥度を維持しつつ、より多くの液状原料を濃縮乾燥することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ケーシングの排出口の手前に設けた堰板により固形分を堰き止めるので、装置を大型化させずに液状原料の滞留時間を長くすることができ、多量多湿の液状原料を効率よく濃縮乾燥することができる。しかも、堰板の手前で滞留した固形分をスクリューに設けた攪拌爪でかき上げるようにしたので、固形分が堰板を乗り越えることができ、固形分を排出口からスムーズに排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施形態の間接加熱型濃縮乾燥装置を示す縦断面図
【図2】図1のII-II線に沿った断面図
【図3】図1のIII-III線に沿った断面図
【図4】図1のスクリューの攪拌爪近傍の部分拡大平面図
【図5】図1の攪拌爪を示す斜視図
【図6】この発明の実施形態の変形例を示す縦断面図
【図7】図6のVII-VII線に沿った縦断面図
【図8】図6のスクリューの攪拌ディスク近傍の拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態の間接加熱型濃縮乾燥装置を図面に基づいて説明する。間接加熱型濃縮乾燥装置1は、液状原料中の水分を蒸発させ固形分を粉状製品として回収したり、樹脂を溶剤で溶かした液状原料から溶剤と固形樹脂を回収したりするためのもので、図1、図2に示すように、横長のケーシング2と、ケーシング2の外側に設けたジャケット3と、ケーシング2を水平方向に貫通しケーシング2に回転自在に取り付けられた一対の中空のスクリュー4、4とを備えている。
【0019】
ケーシング2は、長手方向一端側の上部と長手方向他端側の上部に排気口5、5が設けられ、長手方向一端側の下部に供給口6が設けられている。また、長手方向他端側の下部には排出口7が設けられている。この排出口7は、断面四角形状に形成されており、ケーシング2の下部内面2aの短手方向中央部に開口している。
【0020】
また、ケーシング2には、排出口7の手前に底部内面2aから上方に突出する堰板8が設けられている。具体的に言うと、堰板8は、図1、図3に示すように、その前側面7aに沿って固定される四角形平板状の基部8aと、基部8aと一体に形成され、前側面7aの開口縁7bから上方に突出する平板状の堰止部8bとからなる。
【0021】
基部8aは、図示省略の補強板および押さえ板を基部8aに重ね合わせた状態でボルトにより固定されている。堰止部8bは、排出口7の開口縁7bからケーシング2の内面中間部2bに至る範囲でケーシング2の内面に沿って接触するとともに、両スクリュー4、4の下側外周に沿って近接するように略W字状に形成されている。
【0022】
各スクリュー4は、図1、図4に示すように、外周に軸方向一端側から他端側の排出口7近傍まで螺旋状に延びるリード9を有し、各リード9、9が互いに噛み合うようにケーシング2に配置されるとともに、リード9とケーシング2の下部内面2aとの間隔が小さく設定され、セルフクリーニング機能が得られるようになっている。
【0023】
また、各スクリュー4には、リード9の最終端よりも後方部でかつ堰板8の供給側側面に隣接する位置に円筒状に形成されたフラットパドル10、10が挿嵌固定されており、フラットパドル10が一体に回転するようになっている。
【0024】
フラットパドル10は、図2、図5に示すように、その外周面から突出する攪拌爪11を、軸方向の2箇所において円周方向に等間隔に4つずつ、計8つ備えている。
【0025】
攪拌爪11は、径方向断面が略三角形状に形成されており、その先端に軸方向に延びる刃部が設けられている。この刃部12は、ステライトなどの耐摩耗性の材料で形成すると好ましい。
【0026】
また、図3に示すように、攪拌爪11の回転方向側の側面には、スクリュー4の軸方向に対して平行かつ垂直な角度をなす載面13が形成されている。
【0027】
このフラットパドル10は、図3、図4に示すように、各攪拌爪11が他方のフラットパドル10の攪拌爪11と軸方向に交互に位置するようにスクリュー4に配置されており、攪拌爪11が半径方向と軸方向に微小隙間を介して噛み合うとともに、攪拌爪11とケーシング2の下部内面2aとの間隔が小さく設定され、セルフクリーニング機能が得られるようになっている。
【0028】
次に、このように構成された間接加熱型濃縮乾燥装置1の動作について説明する。
【0029】
まず、図1、図3に示すように、両スクリュー4を互いに逆方向に回転させた状態で、ケーシング2の供給口6から樹脂を溶剤で溶かした液状原料を供給すると、液状原料がスクリュー4のリード9に押されて排出口7へ向かって移送される。
【0030】
このとき、液状原料は、ジャケット3の内部や各スクリュー4の内部に通される水蒸気等の熱媒体から間接的に熱が伝導され、液状原料中の溶剤が気化して、濃縮乾燥される。気化した溶剤は、排気口5、5から排出される。
【0031】
液状原料中から溶剤が気化すると、液状原料中から固形樹脂が生成し、その固形樹脂がセルフクリーニング機能によってスクリュー4から剥離してケーシング2の下部内面2aに落下する。落下した固形樹脂は、スクリュー4のリード9によりケーシング2の下部内面2aに沿って排出口7に向かって移送される。
【0032】
フラットパドル10の位置まで固形樹脂が移送されると、その固形樹脂は、フレーク状になったものもフラットパドル10の攪拌爪11の刃部12の回転により粉砕されて微細化される。そして、微細化された固形樹脂は、堰板8により堰き止められる。これにより、固形樹脂のケーシング2内での滞留時間を確保している。滞留する固形樹脂が増えてくると、攪拌爪11の刃部12により、ケーシング2の下部内面2aにある固形樹脂を掻き取りながら攪拌爪11の載面13に載せ、攪拌爪11の回転により上方へ巻上げる。この上方への巻上げにより、固形樹脂が堰板8を乗り越えて排出口7から排出される。
【0033】
間接加熱型濃縮乾燥装置1は、液状原料中から生成した固形樹脂がフラットパドル10の攪拌爪11で粉砕されて微細化されるので、固形樹脂の表面積が大きくなる。このため、熱媒体からの伝導加熱により固形樹脂の温度の高い部分が多くなり、固形樹脂に付着している溶剤を効率的に気化させることができる。また、固形樹脂がフレーク状になる場合でも、攪拌爪11によりフレーク状の固形樹脂が解枠されて微細化されるので、固形樹脂に内包されていた溶媒や溶剤を効率的に気化させることができる。
【0034】
上記実施形態では、フラットパドル10は、スクリュー4のリード9の最終端よりも後方部でかつ堰板8の手前に設けたが、図6に示すように、スクリュー4の軸方向中間部にさらに設けると好ましい。このようにすると、固形樹脂がスクリュー4の軸方向中間部のフラットパドル10の位置で微細化されるので、上記のように固形樹脂が堰板8の手前で微細化される場合と比べて、固形樹脂の表面積が大きくなった状態でのケーシング2内の滞留時間が長くなる。このため、固形樹脂に付着している溶剤をより効率的に気化させることができる。
【0035】
また、スクリュー4の中間部にフラットパドル10を設ける場合、このフラットパドル10の位置よりも後方部のリード9は、セルフクリーニング機能のないリードとしてもよい。セルフクリーニング機能のないリード9として、例えば、図7、図8に示すように、扇状に形成された攪拌ディスク14(栗本鐵工所社製、CDドライヤタイプ)を挙げることができる。
【0036】
この攪拌ディスク14は、回転方向の前端面が送り方向に傾斜する送りカット面15に形成され、後端面に攪拌羽根16が設けられたものであり、各スクリュー4、4に等間隔に複数配置されている。また、攪拌ディスク14は、攪拌羽根16と攪拌ディスク14の側面との間隔、および、攪拌羽根16とケーシング2の下部内面2aとの間隔を大きく設定することにより、セルフクリーニング機能が得られないようになっている。
【0037】
このようにすると、スクリュー4の軸方向中間部のフラットパドル10の位置よりも後方部では、攪拌羽根16と攪拌ディスク14の側面との間隔、および、攪拌羽根16とケーシング2の下部内面2aとの間隔を大きくしているので、ケーシング2内の攪拌ディスク14の位置に、より多くの液状原料を保持することができる。このため、排出される固形樹脂の乾燥度を維持しつつ、より多くの液状原料を濃縮乾燥することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 間接加熱型濃縮乾燥装置
2 ケーシング
2a 下部内面
4 スクリュー
6 供給口
7 排出口
8 堰板
9 リード
10 フラットパドル
11 攪拌爪
14 攪拌ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長のケーシング(2)と、ケーシング(2)を水平方向に貫通しケーシング(2)に回転自在に取り付けられ、軸方向に螺旋状に延びるリード(9)を形成した一対のスクリュー(4)とを備え、前記ケーシング(2)の長手方向一端側に供給口(6)を設け、長手方向他端側の底部に排出口(7)を設け、前記ケーシング(2)の供給口(6)から供給された液状原料を前記スクリュー(4)の回転によりケーシング(2)の排出口(7)へ向けて移送しながら、伝導加熱により前記液状原料中の溶媒または溶剤を気化させて、前記ケーシング(2)の排出口(7)から液状原料中の固形分を排出する間接加熱型濃縮乾燥装置(1)において、
前記排出口(7)の手前に前記ケーシング(2)の底部内面(2a)から上方に突出する堰板(8)を設け、前記ケーシング(2)の底部にある固形分をかき上げる攪拌爪(11)を、前記堰板(8)の供給側側面に隣接するように前記スクリュー(4)に設けたことを特徴とする間接加熱型濃縮乾燥装置。
【請求項2】
前記攪拌爪(11)を前記スクリュー(4)の軸方向中間部にも設けた請求項1に記載の間接加熱型濃縮乾燥装置。
【請求項3】
前記スクリュー(4)は、前記軸方向中間部のフラットパドル(10)の位置よりも後方部のリードをセルフクリーニング機能のないリード(14)とした請求項2に記載の間接加熱型濃縮乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−206963(P2011−206963A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75204(P2010−75204)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】