説明

間接活線作業の共用操作棒

【課題】間接活線作業用の工具を接続部に接続した状態で回転させても固定部が接続部側に変位することなく、作業員が遠隔から間接活線作業用工具で操作することにより間接活線作業用の先端工具を締め付けて確実に固定することが可能な固定部を備えた間接活線作業用の共用操作棒を提供する。
【解決手段】共用操作棒1は、棒状部材2と先端工具5を接続可能な接続部3と先端工具5をロックするための固定部4とを有し、固定部4は、傾斜部412と傾斜部413とが算盤珠状に連接された芯部分41と、この芯部分41の軸方向に沿ってスライドして先端工具5に当接することができるスライド部材42とで構成され、スライド部材42は、芯部分41の側面に当接する複数の当部422aを備えた押圧部422を有し、押圧部422の各当部422aは、芯部分41の径方向にて芯部分41を押していると共にスライド部材42の径方向外側には操作部423が突出形成されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多種多様な間接活線作業用の先端工具を接続するための接続部と、接続部に接続された先端工具を固定する固定部とを有する共用操作棒に関し、特に共用操作棒の固定部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、作業現場周囲の停電を回避するために、高圧配電線を充電したまま作業員は充電部から距離を採って作業を行う間接活線工事が採用されるようになってきており、このような間接活線工事では、例えば特許文献1等に示されるように、多種多様な先端工具をその先端に接続することが可能な共用操作棒(絶縁操作棒やホットスティック等とも称する。)が用いられる。
【0003】
特許文献1に示される共用操作棒の先端に設けられた先端工具と接続するための接続部は、その頂部に共用操作棒の軸線上に位置する孔が形成され、この孔にコイルスプリングで付勢された凸型部材が孔部から出没可能に収納されると共に、その側周面には係止用突起が相互に離間して突出形成されたものとなっている。そして、接続部の基端側には短筒状の固定ネジから成る固定部が配置されており、この固定ネジの内周側には共用操作棒の棒状部材の接続部側部位に形成された雄ネジと噛み合う雌ネジが形成されている。これにより、先端工具を接続部に装着した際に先端工具にガタツキがある場合には、固定ネジを回転させて固定ネジを共用操作棒の棒状部材の先端側に移動させることにより、固定ネジは先端工具のアダプタと当接し、接続部が先端工具のアダプタ内に不必要に進入するのが規制され、係止用突起のアダプタの溝内での動きも規制されるので、先端工具の接続部への固定が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−79432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、固定ネジの先端工具のアダプタへの当接・締め付けが緩いと、接続部に接続された先端工具がガタついてしまい、先端工具に対し下方から力が加わることにより先端工具が外れて落下し、作業員が怪我をするおそれがある。また、先端工具が間接活線作業中にガタツキを生ずると、ケーブル等の重い部材を先端工具で持つ際に、作業員は共用操作棒の棒状部材のうちの持ち手の上限を定める安全限界ツバよりも上側の部位を持ってしまい、感電などの事故を生ずるおそれもある。このため、先端工具にガタツキがあれば先端工具の締め付け直しを行う必要があるが、特許文献1に示される固定ネジの構成では、先端工具のアダプタへの当接・締め付けを行うためには、作業員が手で固定ネジの回転操作を行う必要があるので、作業を中止し共用操作棒の先端を手元に引き寄せなければならず、先端工具の締め付け直しの作業が煩雑となるという不具合を生ずる。
【0006】
また、先端工具自体を回転させることにより電線を保持する機能を有する一方で作業完了後に共用操作棒を外さないといけない先端工具を共用操作棒の接続部に接続するときには、特許文献1に示される固定ネジの構成では、先端工具の回転に伴って固定ネジも先端工具側に回転して、先端工具に当接し意図に反して先端工具を締め付けてしまうことがあり、この場合には先端工具の共用操作棒からの取り外しができなくなり、先端工具を回転前に戻して作業をやり直すという不都合を有する。しかも、作業のやり直しのために先端工具を外す際に、先端工具が充電している場合には放電させる必要もあるので、間接活線工事全般がより煩雑化することとなる。
【0007】
そこで、本発明は、間接活線作業用の工具を接続部に接続した状態で回転させても固定部が接続部側に変位することなく、作業員が遠隔から操作することにより間接活線作業用の工具を締め付けて確実に固定することが可能な固定部を備えた間接活線作業用の共用操作棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る間接活線作業用の共用操作棒は、直線状に延びる棒状部材と、この棒状部材の一方端に設けられて間接活線作業に使用する工具を接続可能な接続部と、前記接続部に接続された工具を固定するための固定部とを有し、前記固定部は、前記棒状部材の一部を構成する芯部分と、この芯部分の軸方向に沿ってスライドし、前記接続部側にスライドした際に前記工具に当接可能なスライド部材とで少なくとも構成され、前記スライド部材は、前記芯部分の側面に当接する複数の当部を備えた押圧部を有し、前記押圧部の各当部は、前記芯部分の径方向にて前記芯部分を押していると共に、前記スライド部材の径方向外側には操作部が突出形成されていることを特徴としている(請求項1)。そして、前記スライド部材の押圧部は、弾性機構により前記当部を前記芯部分側に向けて付勢していることを特徴としている(請求項2)。ここで間接活線作業に使用する工具とは例えばカットアウト接続器具、バインド打器等の多種多様な先端工具である。押圧部の当部の数は3つ以上でスライド部材の円周方向に均等に配置されていれば良い。スライド部材の径方向外側に突出形成された操作部の数は1つでも、2つでも、更には4つ以上であっても良い。また、弾性機構は、例えばコイルスプリングである。
【0009】
これにより、スライド部材が芯部分において共用操作棒の接続部とは反対側に位置しているとき及びスライド部材が芯部分において共用操作棒の接続部側に位置しているときには、押圧部の各当部が芯部分の側面を押圧するので、スライド部材の押圧部全体による芯部分に対する周囲からの締め付けが行われ、スライド部材は固定される。
【0010】
また、前記芯部分は、前記接続部側に進むに従い径方向の外側に向けて拡がるように傾斜した第1の傾斜部と、この第1の傾斜部より前記接続部側に形成され、前記接続部側に進むに従い径方向の内側に向けて窄まるように傾斜した第2の傾斜部とを連接して成ることを特徴としている(請求項3)。
【0011】
これにより、スライド部材の操作部を押し上げて共用操作棒の接続部とは反対側の位置から接続部側にスライドさせた際には、芯部分の第1の傾斜部と第2の傾斜部との境界の突部を越えた後においては、接続部側に進むに従い窄むように傾斜した傾斜面を備えた第2の傾斜部に移るので、スライド部材が接続部側に向かう力が発生する。また、スライド部材の操作部を引き下げて共用操作棒の接続部とは反対側にスライドさせた際には、芯部分の第1の傾斜部と第2の傾斜部との境界の突部を越えた後においては、接続部とは反対側に進むに従い窄むように傾斜した傾斜面を備えた第1の傾斜部に移るので、スライド部材が接続部とは反対側に向かう力が発生する。
【0012】
更に、前記芯部分は、径寸法が変化しない直線状部分が前記第1の傾斜部に連接し、この直線状部分の軸方向寸法は少なくとも前記スライド部材の軸方向寸法と同じ幅であると共に、前記第2の傾斜部は前記棒状部材の接続部側端まで形成されていることを特徴としている(請求項4)。
【0013】
これにより、スライド部材が共用操作棒の接続部とは反対側にある直線状部に位置したときには、スライド部材に対して接続部とは反対側に向かう力が働かず、スライド部材が共用操作棒の接続部側では、接続部側端まで窄まる傾斜面を備えた第2の傾斜部となっているためスライド部材に対し接続部側に向かう力が働き続けるので、接続部に接続された状態の間接活線作業用の工具に当接するまでスライド部材は自然にスライドする。
【0014】
更にまた、前記スライド部材は、前記スライド部材のスライドする範囲を前記芯部分の径方向外側から覆うカバー部材を有し、このカバー部材には前記操作部が外部に突出するための操作部挿通部が形成されていることを特徴としている(請求項5)。そして、前記カバー部材は、前記操作部挿通部の接続部側の端部とこの接続部側とは反対側の端部とに第1の磁石が配されていると共に、前記スライド部材の操作部は、前記カバー部材の第1の磁石と吸着する第2の磁石が配されていることを特徴としている(請求項6)。第1及び第2の磁石は例えは強力な磁力を有する永久磁石である。また、操作部挿通部は、接続部とは反対側が閉じ接続部側が開放された切欠き部であっても、接続部側と接続部とは反対側との双方が閉じられた孔部であっても良い。更に、操作部挿通部の接続部側の端位とは、例えば操作部挿通部が切欠き部の場合には芯部分と平行に延びる内周面の最も接続部側の部位を示し、操作部挿通部の接続部とは反対側の端位とは、例えば操作部挿通部が切欠き部の場合には芯部分と平行に延びる内周面の最も接続部とは反対側の部位を示す。更にまた、操作部挿通部の接続部側の端位とは、例えば操作部挿通部が孔部の場合には芯部分と平行に延びる内周面の最も接続部側の部位又は孔部の接続部側を閉じる内周面を示し、操作部挿通部の接続部とは反対側の端位とは、例えば操作部挿通部が孔部の場合には芯部分と平行に延びる内周面の最も接続部とは反対側の部位又は孔部の接続部とは反対側を閉じる内周面を示す。
【0015】
これにより、スライド部材はカバー部材により保護されると共に、スライド部材が共用操作棒の接続部とは反対側に位置しているとき及びスライド部材が共用操作棒の接続部側に位置しているときには、カバー部材の操作部挿通部の接続部側の端部とこの接続部側とは反対側の端部とに配された第1の磁石とスライド部材の操作部に配された第2の磁石とが吸着するので、スライド部材はより確実に固定される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、請求項1から請求項6に記載の発明によれば、スライド部材が共用操作棒の接続部とは反対側に位置している場合には、スライド部材の各当部は芯部分のうち第1の傾斜部の最も径寸法が小さい部位が直線状部の側面を押圧するため、スライド部材の押圧部全体による芯部分に対する周囲からの締め付けが行われ、スライド部材は固定された状態になり、このスライド部材に対する固定はスライド部材の回転による影響を受けない。このため、接続部に接続された間接活線作業用の工具を回転してもスライド部材が作業員の意図に反して接続部側に変位して、間接活線作業用の工具をロックしてしまうのを防止することができる。
【0017】
また、請求項1から請求項6に記載の発明によれば、スライド部材が共用操作棒の接続部に位置している場合には、スライド部材の各当部は芯部分のうち第2の傾斜部の最も径寸法が小さい部位の側面を押圧するため、スライド部材の押圧部全体による芯部分に対する周囲からの締め付けが行われ、スライド部材は固定された状態になるので、スライド部材は間接活線作業用の工具と当接した状態を維持することから、接続部に接続された間接活線作業用の工具がガタつくことがない。このため、間接活線作業用の工具が落下したり、作業員が共用操作棒の上限を定める安全限界ツバよりも接続部側を持ってしまい感電したりすることもない。
【0018】
更に、請求項1から請求項6に記載の発明によれば、スライド部材を接続部側に変位させるためにスライド部材を回転させる操作を不要とし、スライド部材の操作部を押し上げたり、引き下げたりすることによりスライド部材を接続部側に変位させることが可能であるので、スライド部材による間接活線作業用の工具のロックとロックの解除とについても間接活線作業として行うことができる。
【0019】
特に請求項3に記載の発明によれば、スライド部材が共用操作棒の接続部とは反対側に位置しているとき及びスライド部材が共用操作棒の接続部側に位置しているときには、スライド部材は、スライド部材に工具等が当たった程度の力では芯部分の第1の傾斜部と第2の傾斜部との境界の突部を越えることがないため、スライド部材は共用操作棒の接続部とは反対側又は共用操作棒の接続部側の位置に維持されるので、スライド部材の固定がより確実に行われる。
これに対し、スライド部材の操作部を押して共用操作棒の接続部とは反対側の位置から接続部側にスライドさせた際には、芯部分の第1の傾斜部と第2の傾斜部とで形成された突部を越えた後においては、接続部側に進むに従い窄まるように傾斜した傾斜面を備えた第2の傾斜部に移るため、スライド部材が接続部側に向かう力が発生するので、スライド部材を円滑に接続部側までスライドさせることが可能となり、間接活線作業用の工具をロックすることができる。
また、また、スライド部材の操作部を引き下げて共用操作棒の接続部とは反対側にスライドさせた際には、芯部分の第1の傾斜部と第2の傾斜部との境界の突部を越えた後においては、接続部とは反対側に進むに従い窄まるように傾斜した傾斜面を備えた第1の傾斜部に移るため、スライド部材が接続部とは反対側に向かう力が発生するので、スライド部材を円滑に接続部とは反対側までスライドさせることが可能となり、間接活線作業用の工具のロックを解除することができる。
【0020】
特に請求項4に記載の発明によれば、スライド部材が共用操作棒の接続部とは反対側にある直線状部に位置したときには、スライド部材に対し接続部とは反対側に向かう力が働かずスライド部材を静止状態とすることができる。また、スライド部材が共用操作棒の接続部側に位置したときには、接続部側に進むに従い窄まるように傾斜した傾斜面を備えた第2の傾斜部となっているため、スライド部材に対し接続部側に向かう力が働き続ける。このため、接続部に接続された状態の間接活線作業用の工具に当接するまでスライド部材は変位するので、間接活線作業用の工具のアダプタの規格がバラバラであってもスライド部材は間接活線作業用の工具に確実に当接することができる。更に、スライド部材は間接活線作業用の工具に当接した状態を維持し続けるので、間接活線作業用の工具のガタつきを確実に防止することができる。
【0021】
特に請求項5、6に記載の発明によれば、スライド部材が共用操作棒の接続部とは反対側に位置しているとき及びスライド部材が共用操作棒の接続部側に位置しているときには、カバー部材の操作部挿通部の接続部側の端部とこの接続部側とは反対側の端部とに配された第1の磁石とスライド部材の操作部に配された第2の磁石とが吸着するので、スライド部材をより確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、この発明に係る間接活線作業用の共用操作棒の接続部及び固定部の構成を示す説明図であり、図1(a)は共用操作棒の固定部を構成するカバー部材の外観を簡略に示す外観図、図1(b)はこの固定部のカバー部材内の構成を簡略に示す断面図である。
【図2】図2は、上記共用操作棒を構成するスライド部材の構成を示す説明図であり、図2(a)は図2(b)のA−A線断面図、図2(b)はスライド部材の押圧部の構成が良く分かる様に示した平面図である。
【図3】図3は、上記共用操作棒の固定部を構成する芯部分の構成と、スライド部材が配置された位置とを示す断面図であって、スライド部材の押圧部が芯部分の突部よりも接続部とは反対側に位置する状態を示す説明図である。
【図4】図4は、上記共用操作棒の固定部を構成する芯部分の構成と、スライド部材が配置された位置とを示す断面図であって、スライド部材の押圧部が芯部分の突部よりも接続部側に位置する状態を示す説明図である。
【図5】図5は、上記共用操作棒の固定部を構成する芯部分の構成と、スライド部材が配置された位置とを示す断面図であって、スライド部材の押圧部の当部が芯部分の突部の頂に位置する、スライド部材のスライド途中の状態を示す説明図である。
【図6】図6は、スライド部材を、間接活線作業用の一環として、バインド器具でスライドさせる操作方法を示す説明図であって、図6(a)はスライド部材の操作部をバインド器具のフックの背で押し上げる方法を示し、図6(b)はスライド部材の操作部にバインド器具を引き掛けて引き下げる方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1及び図6において、この発明に係る間接活線作業用の共用操作棒1の長手方向の一方側の部分が示されている。この共用操作棒1は、直線状に延びる操作棒本体2と、この操作棒本体2の一方端に設けられた接続部3と、接続部3に接続された間接活線作業用の先端工具5(図3から図5で1点鎖線にて示す。)をロックするための固定部4とで構成されている。
【0025】
操作棒本体2は、絶縁素材で形成された長尺の円筒状のもので、その中間部位には、図示しないが、間接活線作業において感電事故を防止するべく、作業者が握ってよい位置と握ってはいけない位置とを区別するための安全限界ツバが外嵌されている。また、この安全限界ツバよりも接続部3側には、図示しないが、雨水の流下を防止するための水切りツバが外嵌されている。そして、操作棒本体2の接続部3側とは反対側端から安全限界ツバまでの範囲が作業員の手で握るグリップ部となっている。
【0026】
接続部3は、先端工具5のアダプタと接続するためのもので、頭部31と、この頭部31の頂面に配された突起部32と、頭部31の側面から対称な位置となるように突出した側方突起部33、303とを有して構成されている。このうち、突起部32は、頭部31の内部に収納されたコイルスプリング等の弾性機構(図示せず。)により外方に向けて付勢されて、頭部31の頂面から突出したり頭部31の頂面内に没入したりすることが可能となっている。
【0027】
先端工具5のアダプタは、公知のため図示しないが、接続部3の頭部31を挿入可能な孔部を有する有底の筒状の部材であり、側面には2つのスリットが略対称となる位置に形成されている。各スリットは、例えば前記孔部の開口端から孔部の軸方向に沿って側面の途中まで延びた後に、前記孔部の径方向の両側に向かって延びる略T字状の形状をなしている。すなわち、この場合のスリットは、前記孔部の軸方向に延びる縦スリット部分と、前記孔部の径方向に延びる横スリット部分とを有しており、更に横スリット部分の延出方向側には前記孔部の開口端側に若干延びた延長スリット部分を有している。
【0028】
このような共用操作棒1の接続部3の構成と先端工具5のアダプタの構成とすることにより、先端工具5は共用操作棒1の接続部3に対して以下の手順にて接続される。
【0029】
まず、先端工具5のアダプタの前述した有底の孔部に接続部3の頭部31を挿入する。その際、頭部31の側方突起部33、33がアダプタの前述したスリットのうち縦スリット部分と一致するように、接続部3の頭部31の向きを調整する。先端工具5のアダプタの孔部に接続部3の頭部31を挿入し続けると、頭部31の突起部32が孔部の底面に当接し、更に先端工具5のアダプタの孔部に接続部3の頭部31を挿入し続けることで、頭部31の突起部32は弾性機構の付勢力に抗して頭部31内に没入していき、最終的には頭部31の頂面が直接にアダプタの孔部の底面に当接する。このとき、頭部31の側方突起部33はアダプタのスリットの縦スリット部分と横スリット部分とが交差する部位にある。そこで、接続部3を回転させて側方突起部33がアダプタのスリットの横スリット部分内を移動するようにする。そして、アダプタのスリットの横スリット部分と延長スリット部分とが交差する箇所まで側方突起部33が達すると、頭部31の突起部32が弾性機構の付勢力によりアダプタの孔部の底面を押す作用が働き、側方突起部33がアダプタのスリットの延長スリット部分の延出方向端側に移動することで、接続部3の頭部31はアダプタの孔部の軸方向に沿ってこの孔部の開口端に向かって移動するが、側方突起部33がアダプタのスリットの延長スリット部分の延出方向端に突当することで、側方突起部33のそれ以上の移動が規制される。これにより、先端工具5は共用操作棒1の接続部3に接続される。
【0030】
固定部4は、この実施例では、図1、図3から図5に示されるように、操作棒本体2の一部でもある芯部分41と、この芯部分41の軸方向に沿ってスライドするスライド部材42と、スライド部材42のスライドする範囲を芯部分41の径方向外側から覆うカバー部材43とで構成されている。
【0031】
芯部分41は、図3から図5に示されるように、この実施例では接続部3とは反対側から見て、直線状部411、傾斜部412、傾斜部413の3つの部位が順次連接して構成されている。このうち、直線状部411は、この直線状部411の一方端から他方端まで径方向寸法が均等な円柱状となっており、その軸方向に沿った寸法は後述するスライド部材42の軸方向寸法と略同じか、それよりも大きくなっている。また、傾斜部412は、直線状部411側から接続部3側に向かうに従い徐々に芯部分41の径方向外側に拡がるように直線状に傾斜した傾斜側面を有する略円錐台状となっている。そして、傾斜部413は、傾斜部412側から接続部3側に向かうに従い徐々に芯部分41の径方向内側に窄まるように直線状に傾斜した傾斜側面を有する略円錐台状となっている。
【0032】
傾斜部412と傾斜部413とで見た場合には、略算盤珠の形状をなしている一方で、傾斜部412の傾斜角度の方が傾斜部413の傾斜角度よりも大きくなっている。そして、傾斜部413は、直線状部411のような径方向寸法が均等な円柱状の部位と連接しておらず、接続部3との境界となる操作棒本体2の接続部3側端まで延びたものとなっている。
【0033】
スライド部材42は、図2に示されるように、円環状部421と、押圧部422と、操作部423とで基本的に構成されている。
【0034】
円環状部421は、円状の貫通孔421aを有しており、貫通孔421aの内径寸法は、芯部分41に外挿したかたちで芯部分41の長手方向に沿ってスライドすることが可能なように、芯部分41の最大外径寸法となる傾斜部412と傾斜部413との境界の突部よりも若干大きくなっている。
【0035】
押圧部422は、芯部分41を周囲から締め付けるもので、この実施例では、芯部分41の側面に当接することが可能な4つの弾丸状の当部422aと、当部422aを芯部分41側に対し芯部分41の径方向に沿って付勢するための4つのコイルスプリング422bとを円環状部421の円周方向に沿って均等に有して構成されている。但し、押圧部422が有する当部422a及びコイルスプリング422bの数はこれに限定されず、芯部分41を周囲から締め付けることが可能であれば、3つでも、5つでも、更には6つ以上であっても良い。また、当部422aを付勢する手段はコイルスプリング422bに限定されず、当部422aを付勢することが可能な弾性機構であればいずれのものでも良い。
【0036】
そして、当部422a及びコイルスプリング422bは、円環状部421に貫通孔421aの内周面から径方向外側に延びる有底の装着孔421bを形成し、この装着孔421bの底面にコイルスプリング422bの当部422aが連結された側とは反対側の端部を固定することで、円環状部421に設けられたものとなっている。装着孔421bの底面までの深度は、コイルスプリング422bが最も収縮した際に当部422aが装着孔421b内に完全に没入することができると共に、コイルスプリング422bが最も拡がった際に当部422aの頭が装着孔421bから出て芯部分41の直線状部411に当接し押圧することができる寸法となっている。尚、コイルスプリング422bは相対的に大きな付勢力が発生する強化スプリングなどが用いられる。
【0037】
操作部423は、この実施例では、円環状部421の外周面から均等な間隔で4つ突出形成されている。もっとも、操作部423の数は4つに限定されず、1から3の数であっても、5つ以上であっても良い。
【0038】
各操作部423は、図2に示されるように、円環状部421の径方向に延びる棒状部分423aと、この棒状部分423aの延出方向端に設けられた円板状の頭部423bとで構成され、頭部423bは棒状部分423aの外径寸法より大きな外径寸法を有している。そして、棒状部分423aは、下記するカバー部材43内にスライド部材42を装着した際に、カバー部材43の外面から突出し、そのカバー部材43からの突出量もバインド打器等の間接活線作業用の工具で押したり、引き掛けたりすることができるものとなっている。更に、棒状部分423aは、この実施例では、円環状部421側となる延出方向の基部において磁石44を有している。この磁石44は、図示されるように棒状部分423a内に収められていても、図示しないが棒状部分423aの側面の外側に配置されていても良い。
【0039】
尚、操作部423と押圧部422とは、図2(b)に示されるように別個のものであり、連動するようにはなっていない。
【0040】
カバー部材43は、共用操作棒1の操作棒本体2と一体に形成されているもので、芯部分41の直線状部411よりも接続部3とは反対側の部位から操作棒本体2の径方向に延びた後、接続部3側に向けて芯部分41の軸方向に沿って延びる板状のものであり、その延出方向の先端は、この実施例では接続部3の突起部32とは反対側端まで達している。すなわち、カバー部材43は、スライド部材42がスライドする範囲を芯部分41の径方向外側から覆うものとなっている。
【0041】
そして、カバー部材43の操作棒本体2の径方向に延びる寸法は、芯部分41にスライド部材42を装着した際における、芯部分41の直線状部411の周面から円環状部421の外周面までの寸法より若干大きくなっており、スライド部材42がカバー部材43内を円滑に動くことができるようになっている。
【0042】
また、カバー部材43の芯部分41の軸方向に沿って延びる部位には、スライド部材42の操作部423の数と同じ数の操作部挿通部431が形成されている。この操作部挿通部431は、スライド部材42の操作部423の棒状部分423aが挿通可能な短手方向寸法を有すると共に、その長手方向寸法は操作部423の棒状部分423aが芯部分41の軸方向に沿って変位する範囲に合ったものとなっている。操作部挿通部431は、この実施例では、スライド部材42の着脱を容易にするため、接続部3側が開放された切欠き部となっているが、必ずしもこれに限定されず、接続部3側と接続部3とは反対側の双方が閉じられた孔部であっても良い。そして、カバー部材43は、操作部挿通部431の長手方向の接続部3側の端部と接続部3とは反対側の端部とにそれぞれ磁石45が配置されている。これらの磁石45は、スライド部材42が接続部3側のスライド限界域又は接続部3とは反対側のスライド限界域に至ったときに、操作部423の棒状部分423aが有する磁石44と相互に吸着することができるように、操作部423の磁石44とは異なる極同士にて対峙するように配置されている。
【0043】
以上の共用操作棒1の固定部4の構成に基づき、固定部4が先端工具5をロックしない状態にある場合と、固定部4が先端工具5をロックした状態にある場合と、固定部4が先端工具5をロックし又はそのロックを解除するためにどのようになるかにつき、図3から図5を用いて説明する。
【0044】
図3において、固定部4が先端工具5をロックしない状態又は先端工具5に対するロックが解除された状態が示されている。この状態において、スライド部材42は、芯部分41の直線状部411の位置にあり、押圧部422の当部422aは、直線状部411の芯部分41の軸方向に沿って延びる側面を四方から芯部分41の径方向に押圧している。そして、芯部分41の直線状部411よりも接続部3側には相対的に傾斜角度が大きな傾斜部412が配置されており、スライド部材42がこの傾斜部412の側面に当部422aが接しながら接続部3側にスライドするには、コイルスプリング422bを縮小させるための大きな力を必要とする。更には、スライド部材42の操作部423の棒状部分423aが有する磁石44は、カバー部材43のスリット部431が接続部3とは反対側端に有する磁石45と吸着されている。
【0045】
よって、スライド部材42は、カバー部材43内にて直線状部411に留まり、固定された状態にあるので、接続部3に接続された先端工具5について回転させる等の操作を行っても、スライド部材42が接続部3側に不用意にスライドして、先端工具5をロックしてしまうことが防止される。
【0046】
図4において、スライド部材42が先端工具5のアダプタに当接して固定部4が先端工具5をロックした状態が示されている。この状態において、スライド部材42は、芯部分41の傾斜部413の位置にあり、押圧部422の当部422aは、傾斜部413の芯部分41の軸心側に向かって窄むように傾斜する傾斜面を四方から芯部分41の径方向に押圧している。このため、スライド部材42には接続部3側に向かう力が働き、スライド部材42は接続部3側にスライドし続けようとするので、スライド部材42は接続部3に接続されたアダプタに強く当接する。そして、スライド部材42が傾斜部413の側面に当部422aが接しながら接続部3とは反対側にスライドするには、コイルスプリング422bを縮小させるための大きな力を必要とする。更には、スライド部材42の操作部423の棒状部分423aが有する磁石44は、スライド部材42が先端工具5のアダプタに当接した状態でカバー部材43のスリット部431が接続部3側端に有する磁石45と吸着されている。
【0047】
よって、スライド部材42は接続部3に接続された先端工具5のアダプタに当接した状態を維持するので、スライド部材42とアダプタとの間に隙間がある等して、先端工具5がガタつくことがなく、先端工具5が接続部3から外れて落下したり、作業員が不用意に共用操作棒1の安全限界ツバよりも接続部3側を持って感電したりすることもない。
【0048】
そして、スライド部材42が図3に示されるように芯部分41の直線状部411にある位置から図4に示される芯部分41の傾斜部413に移行することで先端工具5のロックが行われ、反対に、スライド部材42が図4に示されるように芯部分41の傾斜部413にある位置から図3に示される芯部分41の直線状部411に移行することで先端工具5のロックが解除されるところ、図5に示されるように、スライド部材42が芯部分41の傾斜部412と傾斜部413との境界の突部(芯部分41の最も径方向に突出した部分)に至ったときには、スライド部材42に対し芯部分41の軸方向に向けて相対的に大きな力を加えることで、押圧部422のコイルスプリング422bは最も収縮された状態となり、これに伴い、押圧部422の当部422aはスライド部材42の円環状部421の装着孔421b内に収納されるので、スライド部材42は芯部分41の傾斜部412と傾斜部413との境界の突部を越えることができる。
【0049】
そして、スライド部材42に対し芯部分41の軸方向に向けて相対的に大きな力を加える方法としては、スライド部材42を接続部3側にスライドさせる場合には、図6(a)に示されるように、例えば間接活線作業用工具であるバインド打器6のフック61の背で操作部423の棒状部分423aを矢印方向に押し上げる方法を採ることが可能である。また、スライド部材42を接続部3とは反対側にスライドさせる場合には、図6(b)に示されるように、同上のバインド打器6のフック61を操作部423の棒状部分423aに引き掛けて、スライド部材42を引き下げる方法を採ることが可能である。よって、共用操作棒1の接続部3に接続された先端工具5のロックとロックの解除も作業員が間接活線作業用工具を利用して遠方から操作する間接活線作工法として行うことが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 共用操作棒
2 操作棒本体(棒状部材)
3 接続部
31 頭部
32 突起部
33 側方突起部
4 固定部
41 芯部分
411 直線状部
412 傾斜部(第1の傾斜部)
413 傾斜部(第2の傾斜部)
42 スライド部材
421 円環状部
421a 貫通孔
421b 装着孔
422 押圧部
422a 当部
422b コイルスプリング
423 操作部
423a 棒状部分
423b 頭
43 カバー部材
431 操作部挿通部
44 磁石
45 磁石(第1の磁石、第2の磁石)
5 先端工具(間接活線作業用の工具)
6 バインド打器
61 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に延びる棒状部材と、この棒状部材の一方端に設けられて間接活線作業に使用する工具を接続可能な接続部と、前記接続部に接続された工具を固定するための固定部とを有し、
前記固定部は、前記棒状部材の一部を構成する芯部分と、この芯部分の軸方向に沿ってスライドし、前記接続部側にスライドした際に前記工具に当接可能なスライド部材とで少なくとも構成され、
前記スライド部材は、前記芯部分の側面に当接する複数の当部を備えた押圧部を有し、前記押圧部の各当部は、前記芯部分の径方向にて前記芯部分を押していると共に、前記スライド部材の径方向外側には操作部が突出形成されていることを特徴とする間接活線作業用の共用操作棒。
【請求項2】
前記スライド部材の押圧部は、弾性機構により前記当部を前記芯部分側に向けて付勢していることを特徴とする請求項1に記載の間接活線作業用の共用操作棒。
【請求項3】
前記芯部分は、前記接続部側に進むに従い径方向の外側に向けて拡がるように傾斜した第1の傾斜部と、この第1の傾斜部より前記接続部側に形成され、前記接続部側に進むに従い径方向の内側に向けて窄まるように傾斜した第2の傾斜部とを連接して成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の間接活線作業用の共用操作棒。
【請求項4】
前記芯部分は、径寸法が変化しない直線状部分が前記第1の傾斜部に連接し、この直線状部分の軸方向寸法は少なくとも前記スライド部材の軸方向寸法と同じ幅であると共に、前記第2の傾斜部は前記棒状部材の接続部側端まで形成されていることを特徴とする請求項3に記載の間接活線作業用の共用操作棒。
【請求項5】
前記スライド部材は、前記スライド部材のスライドする範囲を前記芯部分の径方向外側から覆うカバー部材を有し、このカバー部材には前記操作部が外部に突出するための操作部挿通部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の間接活線作業用の共用操作棒。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記操作部挿通部の接続部側の端部とこの接続部側とは反対側の端部とに第1の磁石が配されていると共に、前記スライド部材の操作部は、前記カバー部材の第1の磁石と吸着する第2の磁石が配されていることを特徴とする請求項5に記載の間接活線作業用の共用操作棒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−102629(P2013−102629A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245122(P2011−245122)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)