説明

間接活線工法用クリップ

【課題】間接活線作業に際しての作業性および安全性の向上を図ること。
【解決手段】支点部103において回動可能に連結され、一端部101a、102aどうしおよび他端部101b、102bどうしを接離させるように支点部103を支点として揺動可能に設けられた一対のクリップ片101、102と、一対のクリップ片101、102の一端部101a、102aどうしが当接するように一対のクリップ片101、102を付勢する付勢部材と、一対のクリップ片101、102の他端部101b、102bに設けられ、他端部101b、102bを把持した状態で支点部103を中心として一対のクリップ片101、102を揺動させる外力を加える所定の間接活線工具401の先端401aを保持する保持部材104と、を備えた間接活線工法用クリップ100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気設備に対する間接活線作業に際して用いる間接活線工法用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電した状態の高圧配電線(電線)に対して作業をおこなう間接活線作業は、絶縁ヤットコなどの間接活線工具を用いておこなう。間接活線作業に際しては、たとえば、電線を仮固定したり、電線の充電部分に絶縁シートを被せて充電部分を覆い隠したりする作業をともなう場合がある。
【0003】
このような作業に際しては、間接活線工法用クリップ(間接工法用のシート挟み用器具)を用いて電線や絶縁シートを把持し、この間接活線工法用クリップを絶縁ヤットコなどの間接活線工具を用いて操作する場合がある。従来、具体的には、たとえば、図14および図15に示した間接活線工法用クリップがあった。
【0004】
図14および図15は、従来の間接活線工法用クリップの一例を示す説明図である。図14においては、従来の間接活線工法用クリップを、一方向から見た状態を示している。図15においては、従来の間接活線工法用クリップを、前記一方向に直交する他方向から見た状態を示している。図14および図15において、従来の間接活線工法用クリップ1400は、一対のクリップ片1401、1402を備えている。
【0005】
一対のクリップ片1401、1402は、支点部1403において連結されている。また、一対のクリップ片1401、1402は、一端部1401a、1402aどうしあるいは他端部1401b、1402bどうしが当接するように、支点部1403を支点としてそれぞれ揺動可能に設けられている。
【0006】
従来の間接活線工法用クリップ1400において、一対のクリップ片1401、1402は、当該一対のクリップ片1401、1402における一端部1401a、1402aどうしが当接することによって一対のクリップ片1401、1402が閉じた状態となるように、図示を省略するバネなどの付勢部材によって付勢されている。
【0007】
このような構成の従来の間接活線工法用クリップ1400の使用に際しては、絶縁ヤットコなどの間接活線工具を用いて一対のクリップ片1401、1402の他端部1401b、1402bを把持し、この状態で一対のクリップ片1401、1402の他端部1401b、1402bどうしが当接するように、当該一対のクリップ片1401、1402の他端に対してバネの付勢力に抗する方向へ外力を加える。
【0008】
これにより、一対のクリップ片1401、1402の他端部1401b、1402bどうしが当接する方向に一対のクリップ片1401、1402が支点部1403を中心として揺動し、一対のクリップ片1401、1402の先端部1401a、1402aどうしが離間する。このような従来の間接活線工法用クリップ1400を用いることにより、先端部1401a、1402aどうしを離間させた一対のクリップ片1401、1402の間に電線や絶縁シートなどを挟みこむことができる。
【0009】
また、従来の間接活線工法用クリップ1400には、絶縁ヤットコなどの間接活線工具によって把持される部分すなわち一対のクリップ片1401、1402の他端部1401b、1402bに凹凸1501を設け、絶縁ヤットコなどの間接活線工具と一対のクリップ片1401、1402の他端との摩擦抵抗を大きくすることにより、絶縁ヤットコなどの間接活線工具から落下することを防止するようにした技術があった。
【0010】
また、従来の間接活線工法用クリップとしては、具体的には、たとえば、一対のクリップ片における互いに相対する部分に緩やかに湾曲した大小の凹部を設けるとともに、一対のクリップ片がバネの付勢力によって閉じた状態にある場合に一対のクリップ片の他端における絶縁ヤットコなどの間接活線工具によって把持される部分がほぼ平行になるように構成した技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照)。
【0011】
下記特許文献1には、一対のクリップ片の他端に凹凸を設けた技術と同様に、絶縁ヤットコなどの間接活線工具からの落下を防止するために、一対のクリップ片の他端における絶縁ヤットコなどの間接活線工具によって把持される部分にアヤ目状の凹凸を設けることによって滑り止め加工を施す技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−27209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した特許文献1を含む従来の技術は、一対のクリップ片の他端に設けられた凹凸やアヤ目状の加工部分が、一対のクリップ片の他端における一部にしか設けられていない。このため、上述した特許文献1を含む従来の技術は、間接活線工具が一対のクリップ片の他端を把持した位置によっては、間接活線工具からの間接活線工法用クリップの落下防止効果を十分に得ることができず、間接活線工具からの間接活線工法用クリップの落下防止対策が不十分であるという問題があった。万一、間接活線工法用クリップが間接活線工具から落下した場合、地上で作業をおこなう作業者や歩行者あるいは車両などに当たり、多大な被害や損害が生じる。
【0014】
また、上述した特許文献1を含む従来の技術は、特に、雨天時などのように、間接活線工法用クリップと間接活線工具とが滑りやすくなっている状況においては、落下防止効果を十分に得ることができず、間接活線工具からの間接活線工法用クリップの落下防止対策が不十分であるという問題があった。雨天時において、万一、間接活線工法用クリップが間接活線工具から落下して、地上で作業をおこなう作業者や歩行者あるいは車両などに当たった場合、より一層多大な被害や損害が生じる。
【0015】
また、上述した特許文献1を含む従来の技術は、間接活線工法用クリップにおける一対のクリップ片の他端(に設けられた凹凸やアヤ目状の加工)に対する向き(角度)によっては十分な落下防止効果を得ることができないため、使用条件が制限され、多様な作業環境に対する柔軟性に劣るという問題があった。
【0016】
また、上述した特許文献1を含む従来の技術は、間接活線工具による間接活線工法用クリップの把持が不十分である場合、間接活線工法用クリップを十分に活用することができないという問題があった。具体的には、間接活線工具による間接活線工法用クリップの把持が不十分である場合、たとえば、電線の仮固定が不安定な状態となったり、電線の充電部分に被せた絶縁シートの位置が不安定な状態となったりすることがあった。
【0017】
たとえば、電線の仮固定が不安定な状態である場合、仮固定した電線が外れて作業者などに接触し、作業者が感電する事故につながる。また、たとえば、電線の充電部分に被せた絶縁シートの位置が不安定な状態である場合、電線の充電部分が露出し、露出した充電部分に作業者が感電する事故につながる。
【0018】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、間接活線作業に際しての作業性および安全性の向上を図ることができる間接活線工法用クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる間接活線工法用クリップは、支点部において回動可能に連結され、一端部どうしおよび他端部どうしを接離させるように前記支点部を支点として揺動可能に設けられた一対のクリップ片と、前記一対のクリップ片の前記一端部どうしが当接するように前記一対のクリップ片を付勢する付勢部材と、前記一対のクリップ片の前記他端部に設けられ、前記他端部を把持した状態で前記支点部を中心として前記一対のクリップ片を揺動させる外力を加える所定の間接活線工具の先端を保持する保持部材と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる間接活線工法用クリップは、上記の発明において、前記保持部材が、前記一対のクリップ片の前記他端部における当該他端部どうしが当接する当接位置とは反対側に設けられ、前記所定の間接活線工具の先端を挿入可能な開口を備え、当該開口に挿入された前記所定の間接活線工具の先端を収容可能な空間を形成するカバー状の部材であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる間接活線工法用クリップは、上記の発明において、前記開口が、前記空間に対する前記所定の間接活線工具の先端の挿入角度の調整ができる程度に前記所定の間接活線工具の先端の大きさよりも大きく開口していることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる間接活線工法用クリップは、上記の発明において、前記他端部における前記所定の間接活線工具によって把持される部分に設けられたスポンジ状部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
この発明にかかる間接活線工法用クリップによれば、間接活線作業に際しての作業性および安全性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの構成を示す説明図(その1)である。
【図2】この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの構成を示す説明図(その2)である。
【図3】この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの構成を示す説明図(その3)である。
【図4】この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図(その1)である。
【図5】この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図(その2)である。
【図6】この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図(その3)である。
【図7】この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図(その4)である。
【図8】この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図(その5)である。
【図9】この発明にかかる間接活線工法用クリップの変形例を示す説明図である。
【図10】従来の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図(その1)である。
【図11】従来の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図(その2)である。
【図12】従来の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図(その3)である。
【図13】従来の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図(その4)である。
【図14】従来の間接活線工法用クリップの一例を示す説明図(その1)である。
【図15】従来の間接活線工法用クリップの一例を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる間接活線工法用クリップの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
(間接活線工法用クリップの構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの構成について説明する。図1、図2および図3は、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップの構成を示す説明図である。
【0027】
図1においては、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップを、一方向から見た状態を示している。図2においては、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップを、前記一方向に直交する他方向から見た状態を示している。図3においては、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップを、一部内部が分かる状態で示している。
【0028】
図1、図2および図3において、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100は、一対のクリップ片101、102を備えている。一対のクリップ片101、102は、それぞれ、絶縁材料を用いて形成されている。これにより、一対のクリップ片101、102は、外部に対して絶縁されている。
【0029】
一対のクリップ片101、102は、具体的には、たとえば、プラスチックなどと称される高分子材料を用いて形成することができる。より具体的には、一対のクリップ片101、102は、たとえば、ポリエチレンなどの絶縁性の高い高分子材料を用いて形成することができる。
【0030】
また、一対のクリップ片101、102は、たとえば、一対のクリップ片101、102の芯材を金属材料を用いて形成し、当該芯材の表面を絶縁材料によって被覆することによって、外部に対して絶縁されるものであってもよい。一対のクリップ片101、102の芯材を金属材料を用いて形成することにより、一対のクリップ片101、102の強度を高めることができる。金属材料を用いて形成された芯材を被覆する絶縁材料は、具体的には、たとえば、ポリエチレンやビニールなどを用いることができる。
【0031】
一対のクリップ片101、102は、支点部103において、互いに相対的に回動可能に連結されている。支点部103は、図1において表裏方向に延出する軸であり、一対のクリップ片101、102は、支点部103を中心として当該支点部103の軸心周りに一方のクリップ片101(またはクリップ片102)を他方のクリップ片102(またはクリップ片101)に対して相対的に回動する。
【0032】
これにより、一対のクリップ片101、102の一端部101a、102aどうし、および、一対のクリップ片101、102の他端部101b、102bどうしが接離するように、一対のクリップ片101、102が支点部103を支点として相対的に揺動する。
【0033】
間接活線工法用クリップ100は、図示を省略する付勢部材を備えている。付勢部材は、一対のクリップ片101、102の一端部101a、102aどうしが当接するように、当該一対のクリップ片101、102を付勢する。付勢部材は、たとえば、コイルスプリングによって実現することができる。
【0034】
付勢部材をコイルスプリングによって実現する場合、当該コイルスプリングは、針金状の金属材料を、支点部103を実現する軸を軸心として螺旋状に巻回することによって形成することができる。また、付勢部材をコイルスプリングによって実現する場合、当該コイルスプリングは、たとえば、当該コイルスプリングによる付勢方向が、クリップ片101、102の他端部101b、102bどうしが互いに離反する方向となるように、当該コイルスプリングの両端をクリップ片101、102の他端部101b、102bに当接させる。
【0035】
また、付勢部材は、コイルスプリングによって実現されるものに限らない。付勢部材は、コイルスプリングに代えて、あるいは加えて、たとえば支点部103よりも一端部101a、102a側に設けられた引っ張りバネによって実現してもよい。また、付勢部材は、コイルスプリングに代えて、あるいは加えて、たとえば支点部103よりも他端部101b、102b側に設けられた圧縮バネによって実現するようにしてもよい。
【0036】
また、付勢部材は、コイルスプリングに代えて、たとえば、略C字形状をなし、両端が一対のクリップ片101、102の外側から当接するようにして設けられる弾性部材によって実現してもよい。このような付勢部材を用いた場合、間接活線工法用クリップ100は、いわゆる「洗濯ばさみ」状に構成される。具体的には、この場合、付勢部材は、一対のクリップ片101、102の一端部101a、102aどうしが離間する方向に揺動した場合に、一対のクリップ片101、102によって押されるようにして、略C字形状を維持しながら両端の間隔が開くように変形する。
【0037】
略C字形状をなす弾性部材によって実現される付勢部材の付勢力は、両端の間隔が開くように変形するほど、付勢部材を形成する弾性材料が有する弾性によって、取り付け時の形状を維持する方向すなわち一対のクリップ片101、102の一端部101a、102aどうしが当接する方向へ、当該一対のクリップ片101、102をより強く付勢する。付勢部材は、たとえば金属材料あるいは所定の弾性を備えた樹脂材料を用いて形成することができる。
【0038】
一対のクリップ片101、102の他端部101b、102bには、保持部材104が設けられている。保持部材104は、所定の間接活線工具の先端を保持する。所定の間接活線工具は、たとえば、ヤットコなどと称され、一対のクリップ片101、102の他端部101b、102bを把持する(図4および図6を参照)。また、所定の間接活線工具は、一対のクリップ片101、102の他端部101b、102bを把持した状態で、支点部103を中心として一対のクリップ片101、102を揺動させる外力を加える。
【0039】
付勢部材は、絶縁カバー105によって覆われており、外部と絶縁されている。絶縁カバー105は、たとえば、ゴムやシリコンなどの絶縁材料を用いて形成することができる。絶縁カバー105は、一対のクリップ片101、102の揺動にともなってクリップ片101、102に対する位置が変わることがないように、一対のクリップ片101、102を締め付けるような弾性を有していることが好ましい。これによって、一対のクリップ片101、102が揺動した場合にも、付勢部材を外部と絶縁することができる。
【0040】
保持部材104は、一対のクリップ片101、102の他端部101b、102bにおける当該他端部101b、102bどうしが当接する当接位置101c、102cとは反対側に設けられている。また、保持部材104は、所定の間接活線工具の先端を挿入可能な開口106、301を備えている。
【0041】
保持部材104は、各クリップ片101、102の他端部101b、102bにおいて、当接位置101c、102cとは反対側に設けられた脚部104aと、脚部104aによって支持される蓋部104bと、を備えている。蓋部104bは、脚部104aによって支持されることにより、各クリップ片101、102の他端部101b、102bに対して所定の間隔を空けて対向している。
【0042】
脚部104aおよび蓋部104bは、各クリップ片101、102の他端部101b、102bにおいて所定の工具によって把持される部分を覆うカバー状の部材であって、所定の間接活線工具の先端を収容可能な空間を形成する。この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100において、開口106は、クリップ片101、102の長さ方向に直交する方向(幅方向)における一端部に設けられている。
【0043】
また、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100において、開口301は、クリップ片101、102の長さ方向における端部に設けられている(図3を参照)。すなわち、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100において、開口106、301は、クリップ片101、102の長さ方向における端部と、幅方向における一端部と、の2箇所に設けられている。
【0044】
開口106、301は、脚部104aの間に形成される。より具体的には、開口106、301は、脚部104aの間、蓋部材104bの端面、他端部101b、102bの端面によって囲まれる貫通孔によって実現することができる。また、開口106、301は、所定の間接活線工具の先端の大きさよりも大きく開口している。これにより、脚部104aおよび蓋部104bによって形成される空間107に対する所定の間接活線工具の先端の挿入角度を調整することができる。
【0045】
空間107に対する所定の間接活線工具の先端の挿入角度は、たとえば、クリップ片101、102の長さ方向と、間接活線工具の先端の挿入方向と、によって示すことができる。空間107に対する間接活線工具の挿入方向は、具体的には、たとえば、一対のクリップ片101、102の長さ方向と直交する方向や、当該長さ方向に対して傾斜する方向などとすることができる。
【0046】
保持部材104は、絶縁材料を用いて形成されている。これにより、保持部材104は、外部に対して絶縁されている。保持部材104は、具体的には、たとえば、プラスチックなどと称される高分子材料を用いて形成することができる。より具体的には、保持部材104は、たとえば、ポリエチレンなどの絶縁性の高い高分子材料を用いて形成することができる。
【0047】
また、保持部材104は、たとえば、保持部材104の芯材を金属材料を用いて形成し、当該芯材の表面を絶縁材料によって被覆することによって、外部に対して絶縁されるものであってもよい。保持部材104の芯材を金属材料を用いて形成することにより、保持部材104の強度を高めることができる。金属材料を用いて形成された芯材を被覆する絶縁材料は、具体的には、たとえば、ポリエチレンやビニールなどを用いることができる。
【0048】
保持部材104は、クリップ片101、102に対して、それぞれ別体で設けられた部材によって実現することができる。この場合、保持部材104は、クリップ片101、102に対して、着脱可能とされていてもよい。あるいは、保持部材104は、クリップ片101、102と一体化されて形成されていてもよい。
【0049】
各クリップ片101、102の他端部101b、102bには、スポンジ状部材108が設けられている。スポンジ状部材108は、保持部材104によって形成される空間の内側であって、他端部101b、102bにおける所定の間接活線工具によって把持される部分に設けられている。
【0050】
スポンジ状部材108は、シート状あるいは薄い平板形状をなし、多孔質であって内部に無数の細かな孔を備えている。また、スポンジ状部材108は、柔軟性を有し、かつ、自身に加えられた外力に応じて変形するとともに加えられた外力から解放された場合に元の形状に復帰する弾性を有している。
【0051】
スポンジ状部材108は、内部に無数の細かな孔を備えているため、雨水に触れた場合など液体に接触した場合は、接触した液体と孔内の空気とを置換するようにして当該液体を吸い取ることができる。液体を吸い取った状態のスポンジ状部材108は、当該スポンジ状部材108を圧縮する外力が加えられた場合に、吸い取った液体を放出する。これにより、雨水などの液体を吸い取る機能を繰り返し発揮させることができる。
【0052】
(間接活線工法用クリップ100の使用例)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100の使用例について説明する。図4、図5、図6、図7および図8は、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100の使用例を示す説明図である。
【0053】
図4および図5においては、この発明にかかる実施の形態の間接活線工具の先端を開口106に挿入した状態における、間接活線工法用クリップ100と間接活線工具との関係を示している。図4、図5、図6、図7および図8において、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100の使用に際しては、ヤットコなどと称される間接活線工具401を用いる。
【0054】
ヤットコなどと称される間接活線工具401は、ペンチなどと同様の機能を備えた工具の一種であって、先端どうし噛み合う構造の2つの金属部材を同一の軸で結合し、2つの金属部材の先端どうしの距離を接離させるように開閉可能に構成されている。間接活線工具401は、単体でヤットコとして構成された間接活線工具に限らず、たとえば操作棒と操作棒の先端に取り付けた所定の先端工具とによって構成された間接活線工具であってもよい。
【0055】
間接活線工法用クリップ100の使用に際して、作業者は、間接活線工具401における2つの金属部材の先端どうしの間に、クリップ片101、102の他端部101b、102bを挟み込むようにして間接活線工法用クリップ100を把持する。間接活線工法用クリップ100を把持する際は、間接活線工具401の先端401aを、開口106や開口301に挿入する。
【0056】
間接活線工具401の先端を開口106に挿入するか、開口301に挿入するかは、たとえば、作業対象箇所と作業者の立ち位置との関係などに応じて、適宜調整する。より具体的には、作業対象箇所に対する作業者の立ち位置は、たとえば、電線(活線)400の位置や、当該電線(活線)400の引き回し位置などに応じて調整する。
【0057】
具体的には、たとえば、作業者が一人で作業をおこなう場合、間接活線工具401を操作しながら作業対象箇所を目視にて確認できるように、図4や図5に示すように、間接活線工具401の先端401aを開口106に挿入することが好ましい。この場合、開口106に対する間接活線工具104の先端401aの挿入方向は、間接活線工具401の長さ方向に直交した状態とされる。
【0058】
図6および図7においては、間接活線工具401の先端401aを開口301に挿入した状態における間接活線工法用クリップ100と間接活線工具401との関係を示している。図6および図7に示すように、たとえば、作業者から作業対象箇所までの距離をできるだけ長く確保したい場合、間接活線工法用クリップ100の先端部101a、101bと作業者との距離がもっとも長くなるように、間接活線工具401の先端401aを開口301に挿入してもよい。この場合、開口301に対する間接活線工具401の先端401aの挿入方向は、間接活線工具401の長さ方向と平行な状態とされる。
【0059】
図8においては、図4および図5に示した状態とは異なる方向から、間接活線工具401の先端401aを開口106に挿入した状態を示している。図8に示すように、たとえば、作業対象箇所と作業者の立ち位置との関係によって、図4および図5に示す状態であっても図6および図7に示す状態であっても、作業対象箇所へのアプローチが困難である場合は、開口106に対する間接活線工具401の先端401aの挿入方向が、間接活線工具401の長さ方向に対して傾斜するようにして、間接活線工具401の先端401aを開口106に挿入することができる。開口106は、間接活線工具401の先端401aの大きさよりも大きく開口しているため、開口106に対する間接活線工具401の先端401aの挿入角度を調整することができる。
【0060】
間接活線工法用クリップ100が備えるスポンジ状部材108は、間接活線工具401に把持された状態において、間接活線工具401におけるスポンジ状部材108との接触面の形状にあわせて変形する。これにより、クリップ片101、102や間接活線工具401が硬い材料を用いて形成されている場合にも、間接活線工具401と間接活線工法用クリップ100の他端部101b、102bとの接触面積を広くし、間接活線工具401と間接活線工法用クリップ100の他端部101b、102bとの摩擦抵抗を大きくして、間接活線工法用クリップ100を安定かつ確実に保持することができる。そして、これによって、間接活線工法用クリップ100が間接活線工具401から落下することを防止することができる。
【0061】
また、スポンジ状部材108は、多孔質であり、雨水などの液体を吸収するため、たとえば雨天時に作業をおこなう場合にも、間接活線工具401と間接活線工法用クリップ100の他端部101b、102bとを確実に接触させることができる。これによって、雨天時に間接活線工法用クリップ100を用いた作業をおこなう場合にも、間接活線工法用クリップ100が間接活線工具401から落下することを防止することができる。
【0062】
スポンジ状部材108が吸収した雨水などの液体は、スポンジ状部材108を布や紙などで拭ったり、自然乾燥させたりすることによって除去することができる。これによって、雨天時に間接活線工法用クリップ100を用いた作業をおこなった場合にも、間接活線工法用クリップ100が濡れたことによる当該間接活線工法用クリップ100の性能が低下することを防止し、長期にわたり安定した性能を発揮させることができる。
【0063】
図9は、この発明にかかる間接活線工法用クリップ100の変形例を示す説明図である。上記の実施の形態においては、クリップ片101、102の長さ方向における端部と、幅方向における一端部と、の2箇所に開口106、301を設けた間接活線工法用クリップ100について説明したが、開口の位置はこれに限るものではない。
【0064】
たとえば、図9に示したように、各クリップ片101、102の長さ方向における端部と、長さ方向に直交する方向における両方の端部と、の3箇所に開口901、902、903を設けるようにしてもよい(図4を参照)。また、この発明にかかる間接活線工法用クリップ100において、開口は、各クリップ片101、102の長さ方向における端部の1箇所のみに設けられていてもよい。この場合、開口は、図9における符号902で示した開口のみとされる。
【0065】
(従来の間接活線工法用クリップの使用例)
図10、図11、図12および図13は、従来の間接活線工法用クリップの使用例を示す説明図である。図10、図11、図12および図13においては、上述した図14および図15に示した従来の間接活線工法用クリップ1400の使用例を示している。
【0066】
図10、図11、図12および図13において、従来の間接活線工法用クリップ1400の使用に際しては、まず、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100の場合と同様に、絶縁ヤットコなどの間接活線工具401を用いて一対のクリップ片1401、1402の他端部1401b、1402bを把持する。
【0067】
そして、間接活線工具401を用いて一対のクリップ片1401、1402の他端部1401b、1402bを把持した状態で、一対のクリップ片1401、1402の他端部1401b、1402bどうしが当接するように、当該一対のクリップ片1401、1402の他端に対して付勢部材(図示を省略する)の付勢力に抗する方向へ外力を加える。
【0068】
従来の間接活線工法用クリップ1400を把持する場合、作業者は、一対のクリップ片1401、1402の他端部1401b、1402bどうしが当接する方向に、外力を加え続ける必要があった。このため、作業時間が長くなるなどして作業者が疲労することによって作業者の握力が低下すると、従来の間接活線工法用クリップ1400を把持する力も低下する。
【0069】
従来の間接活線工法用クリップ1400を用いた場合、図10および図12に示した状態で作業をしている際に把持する力が低下すると、間接活線工具401に対する従来の間接活線工法用クリップ1400の位置がずれ、図11および図13に示すような状態となる。このような状態では、作業対象箇所に対する作業がしにくくなるとともに、従来の間接活線工法用クリップ1400を開閉操作するためにより大きな握力を要する。
【0070】
このため、作業者は、間接活線工具401に対する従来の間接活線工法用クリップ1400の位置がずれないように、常時継続して間接活線工具401を握りしめていなくてはならず、疲労しやすい。また、間接活線工具401に対する従来の間接活線工法用クリップ1400の位置がずれた場合は、作業を中断して間接活線工具401に対する従来の間接活線工法用クリップ1400の位置を直さなくてはならず、煩雑である。
【0071】
さらに、電線(活線)400を挟んだ状態で間接活線工具401に対する従来の間接活線工法用クリップの位置がずれた場合は、不自然な状態のまま作業を継続しなくてはならず、作業効率が著しく低下するとともに、作業者の疲労の蓄積を一層促進することになる。
【0072】
これに対し、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100によれば、間接活線工具401に対する間接活線工法用クリップ100の位置ずれを確実に防止することができるので、安定した作業環境で作業をおこなうことができる。これによって、作業効率の向上を図るとともに、作業者の疲労軽減を図ることができる。
【0073】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100は、支点部103において回動可能に連結され、一端部101a、102aどうしおよび他端部101b、102bどうしを接離させるように支点部103を支点として揺動可能に設けられた一対のクリップ片101、102と、一対のクリップ片101、102の一端部101a、102aどうしが当接するように一対のクリップ片101、102を付勢する付勢部材と、一対のクリップ片101、102の他端部101b、102bに設けられ、他端部101b、102bを把持した状態で支点部103を中心として一対のクリップ片101、102を揺動させる外力を加える所定の間接活線工具401の先端401aを保持する保持部材104と、を備えたことを特徴としている。
【0074】
この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100によれば、間接活線工法用クリップ100を把持するとともに当該間接活線工法用クリップ100の開閉操作をおこなう間接活線工具401を、保持部材104によって保持することにより、間接活線工法用クリップ100が間接活線工具401から落下することを防止することができる。これによって、間接活線工法用クリップ100を用いた間接活線作業を安定かつ確実におこなうことができるので、作業者の負担軽減を図るとともに、作業精度の向上を図ることができる。
【0075】
また、作業精度の向上を図ることにより、たとえば、電線(活線)400の仮固定をともなう作業に際して、電線(活線)400の仮固定が不用意に外れることを防止することができる。これによって、間接活線工法用クリップ100を用いた間接活線作業に際しての安全性の向上を図ることができる。
【0076】
また、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100は、保持部材104が、一対のクリップ片101、102の他端部101b、102bにおける当該他端部101b、102bどうしが当接する当接位置101c、102cとは反対側に設けられ、間接活線工具401の先端401aを挿入可能な開口106、301を備え、当該開口106、301に挿入された間接活線工具401の先端401aを収容可能な空間107を形成するカバー状の部材であることを特徴としている。
【0077】
この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100によれば、簡易な構成によって間接活線工法用クリップ100が間接活線工具401から落下することを防止することができる。
【0078】
また、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100は、開口106が、空間107に対する間接活線工具401の先端401aの挿入角度の調整ができる程度に間接活線工具401の先端401aの大きさよりも大きく開口していることを特徴としている。
【0079】
この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100によれば、作業対象箇所と作業者の立ち位置との位置関係などの作業環境に応じて、間接活線工具401が把持する間接活線工法用クリップ100の姿勢を調整することができる。これによって、作業環境に左右されることなく、間接活線工法用クリップ100が間接活線工具401から落下することを防止することができる。
【0080】
また、この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100は、他端部101b、102bにおける間接活線工具401によって把持される部分に設けられたスポンジ状部材108を備えたことを特徴としている。
【0081】
この発明にかかる実施の形態の間接活線工法用クリップ100によれば、雨天時、降雪時あるいは作業対象箇所付近に積雪がある場合にも、間接活線工具401によって間接活線工法用クリップ100を確実に把持し、把持した姿勢を維持することができる。これによって、作業環境に左右されることなく、間接活線工法用クリップ100が間接活線工具401から落下することを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、この発明にかかる間接活線工法用クリップは、電気設備に対する間接活線作業に際して用いる間接活線工法用クリップに有用であり、特に、雨天時など、間接活線工法用クリップを把持する間接活線工具との間にすべりが生じやすい環境で使用する間接活線工法用クリップに適している。
【符号の説明】
【0083】
100 間接活線工法用クリップ
101、102 クリップ片
103 支点部
104 保持部材
106、301 開口
108 スポンジ状部材
401 間接活線工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支点部において回動可能に連結され、一端部どうしおよび他端部どうしを接離させるように前記支点部を支点として揺動可能に設けられた一対のクリップ片と、
前記一対のクリップ片の前記一端部どうしが当接するように前記一対のクリップ片を付勢する付勢部材と、
前記一対のクリップ片の前記他端部に設けられ、前記他端部を把持した状態で前記支点部を中心として前記一対のクリップ片を揺動させる外力を加える所定の間接活線工具の先端を保持する保持部材と、
を備えたことを特徴とする間接活線工法用クリップ。
【請求項2】
前記保持部材は、前記一対のクリップ片の前記他端部における当該他端部どうしが当接する当接位置とは反対側に設けられ、前記所定の間接活線工具の先端を挿入可能な開口を備え、当該開口に挿入された前記所定の間接活線工具の先端を収容可能な空間を形成するカバー状の部材であることを特徴とする請求項1に記載の間接活線工法用クリップ。
【請求項3】
前記開口は、前記空間に対する前記所定の間接活線工具の先端の挿入角度の調整ができる程度に前記所定の間接活線工具の先端の大きさよりも大きく開口していることを特徴とする請求項2に記載の間接活線工法用クリップ。
【請求項4】
前記他端部における前記所定の間接活線工具によって把持される部分に設けられたスポンジ状部材を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の間接活線工法用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−200089(P2012−200089A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63000(P2011−63000)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】