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間葉系前駆細胞(MPC)の増殖および/または生存を増強させる方法
説明

間葉系前駆細胞(MPC)の増殖および/または生存を増強させる方法

【課題】間葉系前駆細胞(MPC)、および/またはそれに由来する子孫の増殖および/または生存をin vitroもしくはin vivoで増強させる方法の提供。
【解決手段】間葉系前駆細胞(MPC)もしくは子孫をケモカイン間質細胞由来因子-1(SDF-1)またはその類似体に曝すことを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系前駆細胞(MPC)および/またはそれに由来する前駆細胞を含む組成物、ならびにこれらの細胞の増殖および/または生存をin vitroもしくはin vivoで増強させる方法に関する。本発明はまた、哺乳動物において骨をex vivoまたはin vivoで形成する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
骨再構築とは、骨吸収に次いで新しい骨形成が起こり、機械的強度および構造が維持される、成人の骨格中で起こる連続的な生理プロセスである。この連動したプロセスを司っている骨細胞には、骨再吸収細胞(単球/マクロファージ系統の造血細胞に由来する破骨細胞)および骨形成細胞(間葉由来の骨芽細胞)が含まれる。骨吸収プロセスは、RAおよび他の炎症性関節炎疹における局限的骨破壊または浸食、ならびに骨粗鬆症において遭遇するびまん性骨損失など、リウマチ専門家の研究に関連する数多くの臨床状況に関与している。
【0003】
破骨細胞活性化は、関節リウマチ(RA)における浸食または全身的な骨損失などの病理的骨吸収の重要な細胞プロセスである。過剰の破骨細胞活性を始動させる多くの因子のうち、IL-1または腫瘍壊死因子(TNF)-αなどのサイトカインが中心的な役割を果たす。より最近では、ケモカイン間質細胞由来因子-1(SDF-1)がヒト破骨細胞の化学走性動員、発達および生存を促進することが示されている(Wright他, Bone 36:840-853, 2005; Zannettino他, Cancer Res 65(5): 1700-1709, 2005; Grassi他, J. Cell. Physiol. 199:244-251, 2004)。
【0004】
ケモカインとは、様々な生物学的応答を調節する化学誘引物質タンパク質のスーパーファミリーであり、これらは複数系統の白血球およびリンパ球の身体器官組織への動員を促進する。ケモカインは、タンパク質中の最初の2個のシステイン残基の相対的な位置に応じて2つのファミリーに分類し得る。一方のファミリーは、最初の2個のシステインは1個のアミノ酸残基によって隔てられているCXCケモカインであり、他方のファミリーは、最初の2個のシステインが隣接しているCCケモカインである。ヒトにおいて、CXCケモカインの遺伝子は4番染色体上にクラスタリングされており(10番染色体上に局在化されているSDF-1遺伝子を除く)、CCケモカインの遺伝子は17番染色体上にクラスタリングされている。
【0005】
ケモカインの分子標的は細胞表面受容体である。このような受容体の1つは、以前はLESTR(Loetscher他, (1994) J. Biol. Chem, 269: 232-237, 1994)、HUMSTR(Federsppiel他, Genomics 16, 707-712, 1993)およびフーシン(Feng他, Science 272: 872-877, 1996)と呼ばれていた、G1に連結した、7回膜貫通タンパク質であるCXCケモカイン受容体4(CXCR4)である。CXCR4は造血由来の細胞上に広く発現され、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)に対するCD4+を有する主要な補助受容体である(Feng他, Science 272: 872-877, 1996)。
【0006】
現在、CXCR4の知られている唯一の天然リガンドはSDF-1である。間質細胞由来因子-1α(SDF-1α)および間質細胞由来因子-1β(SDF-1β)は密接に関わりのあるタンパク質である(本明細書中では一緒にしてSDF-1と呼ぶ)。SDF-1αおよびSDF-1βのネイティブアミノ酸配列は知られており、これらのタンパク質をコードしているゲノム配列も知られている(米国特許第5,563,048号および米国特許第5,756,084号)。
【0007】
SDF-1の三次元結晶学的構造が記載されている(Crump他, EMBO J. 16: 6996-7007, 1997)。SDF-1の構造-活性解析により、N末端残基1〜8または1〜9は受容体結合に関与しているが、1〜8および1〜9ペプチドは単独では受容体結合の指標であるin vitro活性を示さなかったことが示されており、これは、これらのペプチドが、受容体への結合に必要なコンホメーションをとらないという報告されている結論を支持している。この結果は、タンパク質骨格の残り、および/またはタンパク質中の他の箇所にある様々なコンセンサス受容体結合部位が、受容体へのN末端結合のコンホメーション要件の媒介に重要であることを示唆している(Crump他, EMBO J. 16: 6996-7007, 1997)。これらの結果に基づいて、CXCR4に結合するSDF-1について、残基1〜17中の2つの結合部位、N末端部位および上流RFFESH部位を含む2部位モデルが提案されている(Crump他, EMBO J. 16: 6996-7007, 1997)。2つの推定上の結合部位は、CXCケモカインファミリー全体を特徴付けるCXCモチーフによって結合されている。これら2つの推定上の結合領域は、他のCCおよびCXCケモカインにおいて重要であると同定されている(Crump他, EMBO J. 16: 6996-7007, 1997)。このことは、様々なケモカインのN末端領域が受容体活性化に重要であるが、SDF-1以外のケモカインのN末端ペプチドは受容体結合活性を欠いていると報告されており、受容体アゴニストではないという発見と矛盾しない(Crump他, EMBO J. 16: 6996-7007, 1997)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
出産後ヒト骨髄間質幹細胞(BMSSC)または間葉系前駆細胞(MPC)は、免疫無防備状態のマウス内に移植した場合に、造血支援骨髄器官および関連する骨梁を再生する能力を有する(Friedenstein他Exp Hematol. 6: 440-444, 1978; Kuznetsov他J Bone Miner Res. 12: 1335-1347, 1997; Pittenger他Science 284: 143-147, 1999; Bianco他, Stem Cells 19: 180-192, 2001; Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003)。最近の研究では、BMSSCは、骨髄支持間質、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋芽細胞、肝細胞、心筋細胞、神経細胞などの多様な細胞系統へと発達するその能力により、最初に理解されていたよりも形成性があることも報告されている(Liechty他Nat Med. 6: 1282-1286, 2000; Zhao他Exp Neurol. 174: 11-20, 2002; Verfaillie他Ann N Y Acad Sci. 996: 231-234, 2003)。これらの発達は、ex vivoで増殖させたBMSSC集団を骨再生のために使用する可能性の調査を促進した。しかし、このような研究の進行は、ヒト分化多能性BMSSCの成長および生存ならびにこれらの細胞が最終的に骨へと発達することを調節する重要な因子の理解の欠如が原因で、大部分が制限されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは今回、SDF-1を、培養前に精製したBMSSCによって高度に発現されている、示差的に発現される遺伝子として同定した。特に、本発明者らは、in vitroで培養した未熟な前骨形成細胞が、骨芽細胞および骨細胞/骨裏打ち細胞が代表的である成熟細胞種と比較した場合に、SDF-1をより高いレベルで発現したことを見出した。さらに、SDF-1の発現はBMSSCを骨誘導条件下で培養した場合に迅速にダウンレギュレーションされた。
【0010】
BMSSCは、機能的な細胞表面SDF-1受容体(CXCR4)を発現することも示されている。高レベルのSDF-1を分泌する形質導入されたBMSSC系は、対照BMSSC系と比較して、in vivoで異所性の骨を形成する能力の増強を示した。さらに、SDF-1を高度に発現するBMSSCは、細胞の成長およびインターロイキン-4誘導性アポトーシスに対する保護の能力の増加を示した。同様に、線維芽細胞コロニー形成単位(CFU-F)も、in vitroで血小板由来成長因子BB(PDGF-BB)およびSDF-1と相乗作用して、成長の増加およびα-インターフェロン-2a誘導性アポトーシスに対する耐性を示した。
【0011】
これらの発見は、ケモカインSDF-1が未熟BMSSC集団の増殖、生存、および骨形成能力において役割を果たすことを示している。
【0012】
したがって、本発明は、間葉系前駆細胞(MPC)もしくは子孫をSDF-1またはその類似体に曝すことを含む、MPCもしくはそれに由来する子孫の増殖および/または生存を増強させる方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、
MPCもしくは子孫の増殖および/または生存を増強させるために、MPCもしくはそれに由来する子孫をSDF-1またはその類似体と接触させるステップと、
増殖させた集団を、MPCまたはそれに由来する子孫の分化を特異的な組織種に偏らせる条件に供するステップと
を含む、組織特異的分化能確定細胞集団を発生させる方法も提供する。
【0014】
本発明はまた、SDF-1またはその類似体を過剰発現するように遺伝子改変した、MPCまたはそれに由来する前駆細胞も提供する。
【0015】
本発明はまた、本発明の遺伝子導入されたMPC集団を含む組成物も提供する。
本発明はまた、MPCまたはそれに由来する子孫およびSDF-1またはその類似体を含む組成物も提供する。
【0016】
本発明はまた、対象中のMPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝すことを含む、対象において骨を産生する方法も提供する。
【0017】
本発明はまた、本発明の組成物を対象に、所望の骨産生部位で投与することを含む、対象において骨を産生する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1−1】培養したMPCに由来するSTRO-1briまたはSTRO-1dim発現細胞の遺伝子発現プロフィールを示す図である。ex vivoで拡大させた骨髄MPCの単細胞懸濁液をトリプシン/EDTA処理によって調製した。STRO-1抗体を用いて細胞を染色し、次いでこれをヤギ-抗ネズミIgM-フルオレセインイソチオシアネートと共にインキュベーションすることによって表示させた。全細胞RNAは、蛍光活性化細胞分取の後のSTRO-1dimまたはSTRO-1bri発現細胞の精製した集団から調製した(A)。RNAzolB抽出方法、および標準の手順を用いて、全RNAを各部分集団から単離し、cDNA合成の鋳型として用いた。様々な転写物の発現は、以前に記載されている標準プロトコルを用いて、PCR増幅によって評価した(Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003)。この研究で用いたプライマー組を表2に示す。増幅後、各反応混合物を1.5%アガロースゲル電気泳動によって解析し、臭化エチジウム染色によって可視化した(B)。
【図1−2】ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現を参照として、ImageQantソフトウェアを用いて、それぞれの細胞マーカーの相対的な遺伝子発現を評価した(C)。
【図2−1】骨髄MPCに由来するex vivoで拡大させた細胞の免疫形質発現パターンを示す図である。骨髄MPCに由来するex vivoで拡大させた細胞の単細胞懸濁液をトリプシン/EDTA処理によって調製し、次いで、広範な細胞系統関連マーカーを同定する抗体と組み合わせたSTRO-1抗体と共にインキュベーションを行った。STRO-1はヤギ抗ネズミIgM-フルオレセインイソチオシアネートを用いて同定したが、すべての他のマーカーはヤギ抗マウスまたは抗ウサギIgG-フィコエリスリンのどちらかを用いて同定した。細胞内抗原を同定する抗体では、細胞調製物をまずSTRO-1抗体で標識し、冷70%のエタノールで固定して細胞膜の透過処理を行い、その後、細胞内抗原に特異的な抗体と共にインキュベーションを行った。アイソタイプが一致した対照抗体を同一条件下で用いた。COULTER EPICSフローサイトメーターを用いて2色フローサイトメトリー解析を行い、リストモードのデータを収集した。ドットプロットは5,000回のリストモードの事象を表し、これは、各系統の細胞マーカーの蛍光強度レベル(y軸)およびSTRO-1(x軸の)を示す。垂直および水平の象限は、アイソタイプが一致した陰性対照抗体を参照として確立した。
【図2−2】骨髄MPCに由来するex vivoで拡大させた細胞の免疫形質発現パターンを示す図である(図2の続き)。
【図2−3】骨髄MPCに由来するex vivoで拡大させた細胞の免疫形質発現パターンを示す図である(図2の続き)。
【図2−4】骨髄MPCに由来するex vivoで拡大させた細胞の免疫形質発現パターンを示す図である(図2の続き)。
【図2−5】骨髄MPCに由来するex vivoで拡大させた細胞の免疫形質発現パターンを示す図である(図2の続き)。
【図3】in vitroでの脂肪生成の発達を示す図である。単細胞懸濁液を、ex vivoで拡大させた細胞の二次培養物から、STRO-1bri/VCAM-1+分別骨髄細胞に由来するトリプシン/EDTA消化によって作製した。その後、図1Aに示すように単色蛍光活性化細胞分取を用いて、そのSTRO-1の発現に従って、拡大させた細胞を単離した。その後、STRO-1briおよびSTRO-1dim分別MPCに由来する細胞を、終夜、6ウェルプレート内に、1×105個の細胞/ウェルの密度、通常の増殖培地下で植え付けた。翌日、方法に記載したように培地を脂肪生成誘導培地で置き換えた。その後、週に2回、合計3週間の期間、培養物に培地を与え、その後、細胞を固定してオイルレッドOで染色した。接着間質層全体にわたって散乱した脂肪細胞を含む脂質のオイルレッドO染色を表した低倍率拡大(4×)および高倍率拡大(20×)を示す。STRO-1dim培養物における7±2個の脂肪細胞(単位面積あたり、20×、n=9の視野)と比較した場合、STRO-1bri培養物において平均して22±5個のオイルレッドO陽性脂肪細胞が同定された(単位面積あたり、20×、n=9の視野)。
【図4】in vitroにおける骨形成の発達を示す図である。単細胞懸濁液を、STRO-1bri/VCAM-1+分別骨髄細胞に由来するex vivoで拡大させた細胞の二次培養物からのトリプシン/EDTA消化によって作製した。その後、図1Aに示すように単色蛍光活性化細胞分取(FACS)を用いて、拡大させた細胞をそのSTRO-1の発現に従って単離した。その後、STRO-1briおよびSTRO-1dimFACS単離細胞を終夜、48ウェルプレート内に、0.3×105個の細胞/ウェルの密度、通常の増殖培地下で植え付けた(1条件あたり4つの同型)。翌日、方法に記載したように培地を骨形成誘導培地で置き換えた。その後、週に2回、合計3週間の期間、培養物に培地を与え、その後、細胞を洗浄し、0.6NのHCLで処理して石灰化した堆積物内のカルシウムを抽出した。試料をo-クレゾール-フタレイン-コンプレキソンと反応させ、比色反応を570nmで読み取った。絶対カルシウム濃度は、カルシウムの検量線に従って決定した。(A)カルシウム測定により、STRO-1dim培養物と比較した場合にSTRO-1bri培養物が有意により多くの鉱物合成したことが示された(*;p<0.05;t検定)。同型培養物を固定し、アリザリンレッド染色について染色を行い、これは、STRO-1bri(B)およびSTRO-1dim(C)培養物の接着層中の石灰化した堆積物の典型的なレベルを表す。
【図5】in vitroにおける軟骨形成の発達を示す図である。単細胞懸濁液を、STRO-1bri/VCAM-1+分別骨髄細胞に由来するex vivoで拡大させた細胞の二次培養物からのトリプシン/EDTA消化によって作製した。その後、図1Aに示すように単色蛍光活性化細胞分取(FACS)を用いて、拡大させた細胞をそのSTRO-1の発現に従って単離した。その後、STRO-1briおよびSTRO-1dimFACS単離細胞をポリプロピレンチューブ内に2.5×105個の細胞/チューブの密度でペレット化し、軟骨形成誘導培地中で培養した。その後、週に2回、合計3週間の期間、培養物に培地を与えた。細胞ペレットを回収し、方法に記載したように組織学的な検査または全RNAの調製用に用いた。STRO-1bri(A)およびSTRO-1dim(B)細胞集団はどちらも、軟骨細胞様細胞を含む細胞ペレットを形成する能力を有していた。RT-PCR解析により、STRO-1bri(SB)集団は、STRO-1dim(SD)細胞集団(C)と比較した場合に、より高いレベルの軟骨関連遺伝子X型コラーゲンおよびアグリカンを表示することが示された。
【図6】STRO-1Bri細胞がSTRO-1dim細胞の増殖を誘発させることを示す図である。ex vivoで拡大させた骨髄MPCの単細胞懸濁液をトリプシン/EDTA処理によって調製した。細胞をSTRO-1抗体で染色し、図1に記載のようにSTRO-1dimまたはSTRO-1briを発現する培養細胞集団の集団へと分別した。方法に記載したように細胞をCFSEで標識した。未標識細胞を用いて陰性対照(自己蛍光)を確立した。Colcemid(登録商標)(100ng/ml)を用いて細胞分裂を阻害して入力標識指数(産生0)を提供した。次いで、以下の比で未標識STRO-1brightをCFSE標識したSTRO-1dim細胞に加えた:(A)0個のSTRO-1bri細胞:1×105個のSTRO-1dim細胞(0%);(B)0.05×105個のSTRO-1bri細胞:0.95×105個のSTRO-1dim細胞(5%);(C)0.1×105個のSTRO-1bri細胞:0.9×105個のSTRO-1dim細胞(10%);(D)0.2×105個のSTRO-1bri細胞:0.8×105個のSTRO-1dim細胞(20%);(E)0.5×105個のSTRO-1bri細胞:0.5×105個のSTRO-1dim細胞(50%)。添加混合物を7日間の間培養し、収集し、方法に記載したようにフローサイトメトリーによって解析した。細胞増殖をwin 32用ModFit LT(バージョン2.0)を用いて解析した。STRO-1bri細胞(R1)はSTRO-1dim細胞の増殖を用量依存的な様式で刺激することが見出された。
【図7】サイトカインおよび骨向性剤は培養物中のSTRO-1bri細胞の数を増加させることを示す図である。MPCの確立された培養物を、10%のFCS(A)、または、1×10-8Mの1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D)(B)、10ng/mlの血小板由来成長因子(PDGF)(C)、10ng/mlの腫瘍壊死因子-α(TNF-α)(D);10ng/mlのインターロイキン-1β(IL-1β)(E)および30ng/mlの間質由来因子1-α(SDF-1α)(F)を含めた様々な因子を添加した基底培地中で5日間培養し、STRO-1 mAbで染色し、上述のように解析した。これらの因子はSTRO-1briMPCの数を増加させることが見出された。示した結果は3つの独立した実験の代表的な例である。
【図8】左前下行枝(LAD)冠状動脈の結紮を行い、48時間後に生理食塩水、1×106個のヒトStro-1dim細胞、1×106個のヒトStro-1bri細胞または1×106個のヒトStro-1-除去骨髄単核細胞を注射した無胸腺症ヌードラットを示す図である。2週間後、動物を屠殺し、心臓組織を固定して2つのモノクローナル抗体で同時に染色した:1つ目はラットと選択的に反応性を有するがヒトのKi67抗原との反応性は有さず、2つ目は心筋細胞マーカーのトロポニンIと反応性を有する。増殖中のラット心筋細胞の指標である二重に染色された細胞は、免疫ペルオキシダーゼ技術によって検出した。生理食塩水または1×106個のStro-1dimヒト細胞を受ける対照動物と比較して、1×106個のStro-1briヒト細胞を受ける動物は、2.5〜5倍高い数の増殖中のラット心筋細胞を示した(p<0.05)。
【図9】無胸腺症ヌードラットにVEGFを構成的に分泌するラット膠芽細胞腫腫瘍細胞を皮下注射した図である。2週間後、ラットに生理食塩水、0.5×106個のヒトStro-1dim細胞または0.5×106個のヒトStro-1bri細胞の腫瘍内注射を与えた。1週間後、動物を屠殺し、腫瘍組織を固定して2つのモノクローナル抗体で同時に染色した:1つ目は平滑筋細胞によって発現されるα-平滑筋アクチン抗原と反応性を有し、2つ目は血管内皮細胞によって発現されるvWF抗原と反応性を有する。内皮および平滑筋をどちらも含む細動脈ならびに動脈の指標である二重に染色された構造は、免疫ペルオキシダーゼ技術によって検出した。0.5×106個のStro-1briヒト細胞を受ける動物は、腫瘍内の細胞注射部位において生理食塩水または1×106個のStro-1dimヒト細胞を受ける対照動物と比較して、3.5〜8倍高い数の細動脈および動脈を示した(p<0.05)。ヒト細胞を注射した位置から遠位の部位では差異が見られなかった。
【図10】IL-1βがMPCから拡大させた細胞の増殖能力を増大させることを示す図である。方法に記載したように細胞をCFSEで標識した。次いで、細胞を10ng/mlのIL-1βの存在下で5日間培養し、STRO-1およびALK PHOS mAb染色し、上述のように解析した。(A)未処理(NT)および(B)IL-1βで処理した培養物は、STRO-1bri/ALP陽性細胞の数の増加を示す。このSTRO-1発現の増加には、未処理の培養物が4回の細胞分裂を受けた際に(C)に示す細胞増殖の増加が伴い、一方で(D)IL-1βで処理した培養物はSTRO-1bri骨前駆細胞の数を増加させることによって細胞分裂数の増加を示す。示した結果は3つの独立した実験の代表的な例である。1,25D、PDGF-BB、TNF-α、IL-1β、およびSDF-1αを用いてMPCを刺激した場合にも同様の結果が得られた。
【図11】IL-1βがMPCの増殖を刺激し、骨誘導剤であるデキサメタゾンの存在下でその骨形成能力も増強することを示す図である。ヒトの(A)ex vivoで拡大させたMPCの子孫を96ウェルプレートに、2,000個の細胞/ウェルの細胞密度で播種し、α-MEM-10中で培養した。培養物に示した濃度のIL-1βを添加し、方法に記載したように7日目にWST-1を用いて細胞数および生存度を定量した。0.01ng/mlの濃度のIL-1βは、未処理の対照培養物の136.6±1.2%まで細胞数を有意に増加させた(D、P=0.000003、スチューデントt検定)。0.1ng/mlを超える濃度でプラトーな効果が得られた。値は、各濃度の3つ組培養物の平均±SEMを表す。(BおよびC)ex vivoで拡大させたMPCの子孫を24ウェルプレートに5×104個/ウェルの細胞密度、3つ組で播種し、方法に記載したように骨誘導条件で培養した。細胞を10ng/mlの濃度のIL-1βで処理し、培養物に週1回、IL-1βを含む新鮮な培地を「与えた」。マトリックスからの遊離カルシウムの放出は、方法に記載したように接着細胞層を酸性条件下で処理することによって達成された。試料をo-クレゾール-フタレイン-コンプレキソンと反応させ、比色反応を570nmで読み取った。絶対カルシウム濃度は、カルシウムの検量線に従って決定した。結果により、未処理の細胞(B)と比較してIL-1βで処理した細胞(C)において鉱物堆積が増加していたことが示された。IL-1βで処理した細胞中のカルシウムレベルは、4週間目(**P=0.00009、スチューデントt検定)および6週間目(**P=0.00004、スチューデントt検定)(D)のどちらにおいても、未処理の細胞のそれよりも有意に高かった。示した結果は、3人の異なるドナー由来の間質細胞を、用いた3つの独立した実験の代表的な例である。
【図12】IL-1βが増殖およびSTRO-1briMPCを刺激し、一方でデキサメタゾンはアルカリホスファターゼ(ALP)発現を誘発させる図である。ヒトMPCの確立した培養物を、24ウェルプレートに、3×104個/ウェルの細胞密度で、(A)添加なし(NT)、(B)10ng/mlのIL-1βまたは(C)1×10-8Mのデキサメタゾンならびに(D)10ng/mlのIL-1βおよび1×10-8Mのデキサメタゾンを添加した完全培地中で播種した。方法に記載したように細胞を21日間培養した。結果は、IL-1βの分裂促進的作用がSTRO-1briMPCの数を増加させる役割を果たし(B)、立ち代ってこれがSTRO-1dim細胞の増殖を刺激することを示唆している(図6参照)。さらに、MPCは、増殖培地中に存在するFCSおよびアスコルビン酸-2-リン酸に応答してALPの発現を獲得し、これは副腎皮質ステロイドであるデキサメタゾン(dex)に応答して増強される(D)。IL-1βおよびdexの合わせた作用が、図11に見られるように骨形成を増強させる役割を果たす。実験は3回行い、3人の異なるドナー由来のMPCで同様の傾向が観察された。
【図13】in vivoにおける骨形成に対するPDGFの効果を示す図である。STRO-1bri/VCAM-1+分別骨髄細胞に由来するex vivoで拡大させた細胞の半コンフルエントな二次培養物を、PDGF-BB(10ng/ml)を存在させてまたは存在させずに5日間培養した。トリプシン/EDTA消化によって単細胞懸濁液を作製し、その後、40mgのハイドロキシアパタイト/リン酸三カルシウム粒子(HA/TCP)と共にインキュベーションを行い、方法に記載したように免疫無防備状態のマウス内に移植した。8週間後、収集した移植片を固定し、組織学的検査用に処理した。新しい骨形成の解析は、Scion Imagingソフトウェアを用いて、3つの同型移植からの表面積(20×)で決定した(A)。PDGF-BBで前処理した培養物は、未処理の対照培養物と比較して、有意に(*;p<0.05;t検定)より異所性の高い骨形成を示すことが示された。未処理(B)およびPDGFで処理した(C)移植片のヘマトキシリン/エオシン染色した異所性骨の断面図を表す典型的なイメージを示す。
【図14】BMSSCは高レベルのSDF-1を発現することを示す図である。(A)MACSで単離したSTRO-1+BMMNCの調製物を、FACSを用いて領域、すなわちSTRO-1briおよびSTRO-1dullに従って様々なSTRO-1部分組へと分配した。それぞれのSTRO-1部分集団から全RNAを調製し、これを用いて「材料および方法」に記載のようにSTRO-1briサブトラクションハイブリダイゼーションライブラリーを構築した。(B〜C)STRO-1briのサブトラクションを行ったcDNAで形質転換させた細菌クローンから増幅した代表的なPCR産物をブロッティングした、複製ニトロセルロースフィルターを示す図である。その後、[32P]デオキシシチジン三リン酸(dCTP)で標識したSTRO-1bri(B)またはSTRO-1dull(C)のサブトラクションを行ったcDNAのどちらかを用いて、フィルターのプロービングを行った。矢印は、ヒトSDF-1に対応するcDNA断片を含む1つのクローンの示差的発現を示す。(D)培養前にMACS/FACSで新鮮単離したBMMNC STRO-1集団から調製した全RNA中のSDF-1およびグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)転写物の相対的な発現を実証する逆転写酵素(RT)-PCR解析である。bpは塩基対を表す。
【図15】未熟なBMSSCはより成熟した集団よりもSDF-1を高いレベル発現することを示す図である。(A)ドットプロットは、標準の培地中で培養したのちにSTRO-1およびAP抗原の細胞表面発現を調査した、ex vivoで増殖させたBMSSCの単種細胞懸濁液の二重フローサイトメトリー解析を表す。分別した様々なSTRO-1/AP部分集団は、分別領域R1、R2、R3、およびR4に応じてFACSによって単離した。(B)グラフは、分別していない、そのSTRO-1およびAPの細胞表面発現に応じてFACSで単離した培養BMSSC集団から調製した全RNAにおける、ハウスキーピング遺伝子GAPDHと比較したSDF-1の相対的な発現の半定量的RT-PCR解析を示す。最も未熟な骨形成前駆体集団(STRO-1+/AP-)が前骨芽細胞(STRO-1+/AP+)よりも高いレベルで発現され、次いでより成熟した骨芽細胞(STRO-1-/AP+)および骨細胞(STRO-1-/AP-)集団であった。データは、2人の異なる健康な骨髄ドナーから確立した二次BMSSC培養物を用いた、2つの独立した実験の平均値±標準誤差を表す。
【図16】SDF-1は骨誘導後にBMSSCによってダウンレギュレーションされることを示す図である。(A)GAPDHに対するSDF-1発現の、骨誘導培地の存在下における培養BMSSCによる経時的な半定量的RT-PCRである。平均値±標準誤差は4つの独立した実験を表す。骨誘導条件対対応する対照は、各時点において有意値(*)P<0.05を用いた対応のあるt検定を使用して解析した。(B)ドットプロットは、STRO-1およびアルカリホスファターゼ抗原の細胞表面発現に基づいた、48時間、骨形成誘導培地の存在下で培養したex vivoで増殖させたBMSSCの単種細胞懸濁液の2色フローサイトメトリー解析を表す。
【図17】BMSSCが機能的SDF-1受容体を発現することを示す図である。(A)初代BMSSC培養物またはヒト骨肉腫細胞系であるMG63のどちらかから単離した全RNA中における、CXCR4およびGAPDH転写物の相対的な発現を実証するRT-PCR解析である。(B)培養BMSSCの単種細胞懸濁液を、マウス抗ヒトCXCR4抗体またはアイソタイプが一致した対照抗体である1A6.11のどちらかと共に、次いでヤギ抗マウスIgG1FITCコンジュゲート抗体と共にインキュベーションを行った。代表的なヒストグラムは、フローサイトメトリー解析によって評価した、対照試料(点線)に対するBMSSCによるCXCR4(実線)の細胞表面発現レベルを示す。(C)このグラフは、ヒト組換えSDF-1α(30ng/mL)を加えた後の、初代BMSSC培養物中で経時的に測定した細胞内カルシウムのレベルを実証している。
【図18】BMSSCによるSDF-1の強制発現がその骨形成能力を増強させることを示す図である。(A)レトロウイルスパッケージング系PT67を使用して、ヒトSDF-1 cDNAまたはベクター単独のどちらかを含むpLNCX2構築体を用いて、3つの異なる骨髄吸引液に由来する二次BMSSC培養物の形質導入を行った。安定した複数コロニー由来の高SDF-1発現性BMSSCおよび対応する対照系をG418選択後に作製した。市販のELISAキットを用いて、組織培養物上清の3つ組試料をSDF-1αレベルについて評価した。データは、3つの異なる高SDF-1発現性BMSSC細胞系対対応する対照から作成した平均値±標準誤差を表す。(B)形質導入したBMSSC系のそれぞれの単種細胞懸濁液をハイドロキシアパタイト(HA/TCP)粒子と混合し、その後、NOD/SCIDマウスの皮下に移植した。イメージは、ヘマトキシリン&エオシンで染色した、高SDF-1発現性BMSSC(SDF-1)および対照細胞系(LNCX2)によって形成された新しい骨(b)の8週齢の収集した移植片の断面図を表す(×200)。イメージは、Olympus製D11デジタルカメラを備えたOlympus BX50光学顕微鏡(Olympus、東京)でキャプチャーした。倍率×200。(C)各グラフは、様々な高SDF-1発現性BMSSC系および3人の異なる骨髄ドナーに由来する対応する対照細胞系を表す。新しい骨形成のレベルは、Scion Imagingソフトウェアを用いて12個の代表的な組織切片から解析した全組織の表面積の割合として表す。データは2つ組の移植片からの平均値±標準誤差を表す。SDF-1高発現性BMSSC系と対応する対照との間の統計的差異(*)P<0.05は、対応のないt検定を用いて決定した。
【図19】BMSSCによるSDF-1の強制発現が細胞の生存を向上させることを示す図である。(A)高SDF-1発現性BMSSCおよびベクター対照細胞系を3つ組ウェル中に、5×103個の細胞/ウェルの密度で、96ウェルプレート、通常の増殖培地中、5日間植え付けることによって、増殖の研究を行った。その後、トリプシン/EDTA消化によって単種細胞懸濁液を調製し、細胞の全数を評価するために計数した。(B)インターロイキン4(IL-4;30ng/mL)の存在下で平行した培養物を確立し、トリパンブルー排除を用いることによってアポトーシス細胞の割合を測定した。(C)このヒストグラムは、IL-4の存在下で培養したアイソタイプが一致した対照抗体(点線)と比較した、対照細胞系による細胞表面アネキシンV染色のレベル(実線)を表す。生細胞のin situ蛍光染色の強度の代表的なイメージを示す(×100)。(D)このヒストグラムは、IL-4の存在下で培養したアイソタイプが一致した対照(点線)と比較した、高SDF-1発現性BMSSC系による細胞表面アネキシンV染色のレベル(実線)を表す。生細胞のin situ蛍光染色の強度の代表的なイメージを示す(×100)。データは、3つ組の実験の平均値±標準誤差を表す。SDF-1高発現性BMSSC系と対応する対照との間の統計的差異(*)P<0.05は、対応のないt検定を用いて決定した。
【図20】SDF-1がCFU-Fの成長および生存を促進することを示す図である。様々なサイトカインの組合せの存在下で無血清培地中に植え付けた、MACS/FACSで単離したSTRO-1briBMMNCに由来する、CFU-Fコロニーの全数を数えた。組換えヒトPDGF-BB、SDF-1α、およびα-インターフェロン2aを、それぞれ最適濃度5ng/mL、30000IU/mL、および30ng/mLで用いた。データは、3つ組のウェルの平均値±標準誤差を表す。3つの異なる骨髄吸引液を用いることによって同様の結果が得られた。統計的有意性(P<0.01)は、すべての処理において一方向ANOVAを用いることによって決定した。その後、フィッシャー試験を用いてすべてのグループ間の差異を決定した。PDGF-BB単独(*)と比較してすべての処理間で、およびPDGF+IFN(インターフェロン)対PDGF+SDF-1+IFN(**)において有意度P<0.05で、有意な差異(P<0.05)が判明した。
【図21】SDF-1がIFN-αのアポトーシス効果に対して、用量依存的の様式でCFU-F形成を保護することを示す図である。STRO-1 MACSで選択したヒト骨髄単核細胞を、PDGF(5ng/ml)単独またはPDGFおよびIFN-α(30,000i.u./ml)またはPDGFおよびIFN-αおよびSDF-1(0.1〜100ng/ml)のいずれかの存在下で、血清除去培地中に植え付けた。14日間の培養ののち、プレートを固定し、CFU-Fコロニーの計数方法に記載したように染色した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者らは、ケモカインSDF-1が未熟なBMSSC集団の増殖、生存、および骨形成能力に役割を果たすという驚くべき発見を行った。
【0020】
したがって、本発明は、MPCもしくは子孫をSDF-1またはその類似体に曝すことを含む、間葉系前駆細胞(MPC)もしくはそれに由来する子孫の増殖および/または生存を増強させる方法を提供する。
【0021】
本明細書中で使用するMPCとは、多数の分化多能性細胞コロニーを形成する能力を有する非造血性前駆細胞である。
【0022】
本発明の好ましい例では、MPCは、STRO-1bright、VCAM-1bright、THY-1bright、CD146brightおよびSTRO-2brightからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーについて陽性である。
【0023】
本明細書中で使用する用語「bright」とは、検出可能に標識した場合に比較的高いシグナルが生じる細胞表面上のマーカーをいう。理論に限定されることを望まないが、「明」細胞は、試料中の他の細胞よりも標的マーカータンパク質(たとえばSTRO-1によって認識される抗原)を多く発現すると提案されている。たとえば、FITCコンジュゲートSTRO-1抗体で標識し、FACS解析で決定した場合に、STRO-1bright細胞は非明細胞(STRO-1dull/neg)よりも大きな蛍光シグナルを生じる。好ましくは、「bright」細胞は、出発試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%を構成する。他の実施形態では、「明」細胞は、出発試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞の少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、または少なくとも約2%を構成する。好ましくは、「bright」細胞はSTRO-1bright、VCAM-1bright、THY-1bright、STRO-2brightおよび/またはCD146bright細胞である。国際公開公報WO01/04268号に記載のように、STRO-1bright細胞など、標識強度に基づいて選択された細胞の部分集団は、細胞マーカーの陽性/陰性の同定のみで選択された部分集団よりも高い割合のMPCを有する。
【0024】
本発明のさらに好ましい例では、MPCは、STRO-1bri、LFA-3、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、P-セレクチン、L-セレクチン、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD18、CD61、β-1インテグリン、6-19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGF-R、FGF-R、レプチン-R、(STRO-2=レプチン-R)、RANKLおよびCD146またはこれらのマーカーの任意の組合せからなる、間葉系前駆細胞に特異的な表面マーカーの群から選択される少なくとも2つのマーカーを保有する。
【0025】
本発明のさらに好ましい例では、MPCは、CD34、CD14、CD45、CBFA-1、II型コラーゲン、PPARγ2、およびグリコホリンAからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーについて陰性である。
【0026】
MPC濃縮集団の調製方法は、国際公開公報WO01/04268号および国際公開公報WO2004/085630号に記載されている。
【0027】
in vitro状況下では、MPCが完全に純粋な調製物として存在することは稀であり、一般的に組織特異的分化能確定細胞(Tissue specific committed cells:TSCC)である他の細胞と共に存在する。国際公開公報WO01/04268号は、骨髄からこのような細胞を約0.1%〜90%の純度レベルで収集することについて言及している。代替の収集方法の結果、より低いレベルで存在するMPCの割合がもたらされ得る。
【0028】
本発明の方法を適用するMPCを含む集団は、組織供給源から直接収集するか、あるいは既にex vivoで増殖させた集団であり得る。
【0029】
たとえば、本発明の方法を、それらが存在する集団の全細胞の少なくとも約0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80または95%を含む、収集した、増殖していない、実質的に精製したMPC集団に適用し得る。このレベルは、たとえば、STRO-1bright、VCAM-1bright、THY-1bright、CD146brightおよびSTRO-2brightからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーについて陽性である細胞について選択することによって達成し得る。
【0030】
MPCは、国際公開公報WO01/04268号もしくは国際公開公報WO2004/085630号に記載の任意の1つまたは複数の組織種、すなわち骨髄、歯髄細胞、脂肪組織および皮膚に、あるいはより広範に脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛嚢、腸管、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靱帯、骨髄、腱および骨格筋に由来し得る。
【0031】
このような細胞の好ましい供給源はヒトであるが、本発明が、ウシ、ヒツジ、ブタなどの農業動物、イヌおよびネコの家畜、マウス、ラット、ハムスターおよびウサギなどの実験動物、またはウマなどのスポーツに用いられる動物を含めた動物にも適用可能であることが予測される。
【0032】
本明細書中で使用する用語「子孫」とは、MPCに由来する細胞をいうことを意図する。子孫は前駆細胞または完全に分化した細胞(骨細胞など)であり得る。
好ましい一実施形態では、子孫は前駆細胞である。
【0033】
本明細書中で使用するMPCに由来する「前駆細胞」とは、分裂して分化細胞を生じさせる、部分的に特殊化した細胞または組織特異的分化能確定細胞(Tissue specific committed cells:TSCC)である。前駆細胞は1つの分化経路に分化能確定しているが、これは一般に、成熟した完全に分化した細胞のマーカーを発現したりそのように機能したりしない。したがって、前駆細胞は、関連する種類の細胞を生じさせるが、その正常な状態では幅広い細胞種を作製しない。前駆細胞は1つの細胞または組織の系統種に分化能確定する傾向にあるが、二分化能性であり得る、すなわち、2つの異なる細胞または組織種へとさらに分化する能力を有しうる。
【0034】
前駆細胞が分化能確定(committed)され得る系統の非限定的な例には、骨前駆細胞;胆管上皮細胞および肝細胞への分化多能性を有する肝細胞前駆体;オリゴデンドロサイトおよび星細胞へと進行するグリア細胞前駆体を生じることができる神経制限細胞(neural restricted cell);ニューロンへと進行する神経前駆体;心筋および心筋細胞の前駆体、グルコース応答性インスリン分泌膵臓β細胞系が含まれる。他の分化能確定前駆細胞には、それだけには限定されないが、軟骨細胞、象牙芽細胞、象牙質産生および軟骨細胞、ならびに以下のものの前駆細胞が含まれる:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトなどの皮膚細胞、樹状細胞、毛嚢細胞、腎管上皮細胞、平滑筋および骨格筋細胞、精巣前駆体、血管内皮細胞、腱、靱帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、血管、上皮、グリア、神経、星細胞およびオリゴデンドログリア細胞。前駆細胞には、脂肪、乳輪、骨、軟骨、弾性および線維性の結合組織を含めた結合組織を特異的にもたらす細胞も含まれる。
本発明の好ましい例では、前駆細胞は骨前駆細胞である。
【0035】
本明細書中で使用する「骨前駆細胞」とは、骨芽細胞へと分化または増殖する能力を有する任意の細胞である。好ましい骨前駆細胞には骨前駆細胞および前骨芽細胞が含まれる。
【0036】
本発明の方法によって達成される増強された増殖は、未刺激の対照と比較して10、20、30、40または50%を超えるMPC数の増加をもたらし得る。あるいは、増加は1倍、2倍またはそれ以上であり得る。
【0037】
本発明の好ましい例では、SDF-1類似体はCXCR4シグナル伝達を活性化するリガンドである。SDF-1類似体は、たとえば、天然に存在するSDF-1の生物活性断片、変異体または誘導体であり得る。
【0038】
本発明のさらに好ましい例では、SDF-1類似体は、HIV-1コーティングタンパク質gp120、AMD3100(AnorMED Inc、カナダ、ブリティッシュコロンビア州)およびALX40-4C(Allelix Biopharmaceuticals Inc、カナダ)からなる群から選択される。
【0039】
本発明のさらに好ましい例では、MPCまたはそれに由来する子孫を、外来血小板由来成長因子(PDGF)、幹細胞因子(SCF)、fit3リガンド(FL)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)およびインターロイキン-1β(IL-1β)からなる群から選択される刺激因子にも曝す。
【0040】
本発明の方法は、たとえば新鮮収集したまたはex vivoで増殖させた培養物に関して、細胞のin vitro培養に適用性を有することが一般に企図されるが、本発明は、MPCまたはそれに由来する子孫が体組織部位にin situであり、外来SDF-1またはその類似体を当該部位に送達する場合にも適用性を有し得る。このような送達は1回で十分であり得るが、時間的に間隔をおいた送達により、より促進したまたはより大きな利点がもたらされ得る。
【0041】
外来SDF-1またはその類似体は、ポリペプチドの形態または発現させてポリペプチドを生じさせることができる核酸の形態で対象に投与し得る。たとえば、外来SDF-1またはその類似体は、核酸含有組成物の形態またはSDF-1もしくはその類似体を過剰発現するように遺伝子改変した宿主細胞の形態で投与し得る。
【0042】
in vivo送達の状況下では、MPCまたはそれに由来する子孫を含む組成物を(SDF-1もしくはその類似体と同時に)送達することも望ましい場合がある。たとえば、骨、心筋、血管組織または内皮細胞中の病変の場合、送達する子孫は、少なくとも部分的には関連細胞種(たとえば骨芽細胞、心筋細胞または内皮細胞)に分化能確定していることが好ましい。これらは、混合前駆細胞培養物の一部として、またはより精製された形態、たとえば、組織特異的分化能確定細胞種上に存在することが知られているマーカーについて分別した形態で提供し得る。あるいは、またはそれに加えて、送達する組成物は、組成物中に存在する、または1つもしくは複数の目的組織種の標的部位にin situで存在するMPCを分化させるために、1つまたは複数の分化刺激因子を含み得る。
【0043】
本発明はまた、
MPCもしくは子孫の増殖および/または生存を増強させるために、MPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝すこと、ならびに
増殖させた集団を、MPCまたはそれに由来する子孫の分化を特異的な組織種に偏らせる条件に供すること
を含む、組織特異的分化能確定細胞集団を発生させる方法も提供する。
【0044】
組織種は、心筋、血管組織、骨芽細胞、象牙芽細胞、骨細胞、骨裏打ち細胞および内皮細胞からなる群から選択され得る。これらの組織種のin vitroの発達およびこれらの組織種のin vivoの促進のための例示的な条件は、当業者に周知であろう。
【0045】
上記方法は、骨格筋、心筋、骨、歯、もしくは血管組織の産生または修復に適用し得る。特に、この方法は、心筋、心筋細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、象牙芽細胞、象牙質産生軟骨細胞、骨細胞、骨裏打ち細胞、骨格筋細胞、血管内皮細胞、髄間質、破骨細胞および造血支援間質、心筋、骨格筋、内皮細胞ならびに血管細胞からなる群から選択される細胞もしくは組織の産生または修復に適用し得る。
【0046】
具体的な一例では、本発明は、
MPCもしくは子孫の増殖および/または生存を増強させるために、MPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝すこと、ならびに
増殖させた集団を、MPCの分化を骨前駆細胞に偏らせる条件、または骨前駆細胞の分化を骨に偏らせる条件に供すること
を含む、骨をex vivoで産生させる方法を提供する。
【0047】
MPCまたはそれに由来する骨前駆細胞の骨への分化を偏らせる条件は、たとえば、10%のFCS、100μMのL-アスコルビン酸-2-リン酸、デキサメタゾン10-7Mおよび3mMの無機リン酸塩を添加したαMEM中で培養することを含み得る。これらの条件は、ヒトBM間質細胞がin vitroで石灰化骨基質を発生するように誘導することが示されている(Gronthos他、Blood. 84:4164-73, 1994)。
【0048】
代替例では、この方法は、骨前駆細胞をI型コラーゲン、フィブリノーゲン、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、オステオカルシン、またはオステオネクチンの存在下で培養することによって、骨前駆細胞を骨芽細胞へと分化させることを含み得る。具体的な一例では、骨前駆細胞をI型コラーゲン、フィブリノーゲン、およびフィブリンの存在下で培養する。代替例では、骨前駆細胞をI型コラーゲン、フィブリノーゲン、フィブリン、オステオカルシン、およびオステオネクチンの存在下で培養する。この方法の状況下では、I型コラーゲン、フィブリノーゲン、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、オステオカルシン、もしくはオステオネクチンは、単独で、または成長因子の存在下で用い得る。本段落中上記に記載の化合物の任意の組合せが本発明によって企図されることを理解されたい。
【0049】
本発明はまた、単離したMPCもしくはそれに由来する子孫およびSDF-1またはその類似体を含む組成物も提供する。
【0050】
好ましい例では、組成物は、組成物の全細胞の少なくとも約0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80または95%を構成する、実質的に精製したMPCまたは子孫を含む。
【0051】
さらに好ましい例では、SDF-1もしくはその類似体は、約0.1nM〜0.1M、0.1nM〜0.05M、0.05nM〜15μMまたは0.01nM〜10μMの濃度で組成物中に存在する。
【0052】
本発明はまた、SDF-1を過剰発現するように遺伝子改変したMPCまたはそれに由来する前駆細胞も提供する。
【0053】
一例では、MPCまたはそれに由来する前駆細胞は、SDF-1をコードしているポリヌクレオチドを導入されている。
【0054】
別の例では、MPCまたはそれに由来する前駆細胞のゲノムは、SDF-1タンパク質の過剰発現をもたらすように改変されている。一例では、SDF-1タンパク質の過剰発現がもたらされるようにMPCまたはそれに由来する前駆細胞のSDF-1遺伝子の調節領域を改変する。
本発明はまた、本発明の遺伝子導入されたMPC集団を含む組成物も提供する。
【0055】
本発明の組成物は、1つまたは複数の追加の刺激因子をさらに含み得る。たとえば、追加の刺激因子は、PDGF、SCF、FL、G-CSF、IL-3、IL-6、1,25D、TNF-αおよびIL-1βからなる群から選択され得る。
【0056】
本発明には、選択された組織種、たとえば損傷組織をコロニー形成させるために本発明の組成物(たとえば遺伝子改変したMPCを含む組成物)を全身投与または局所投与する送達系が包含される。たとえば、本発明の組成物を標的組織内に直接注射し得る。注射部位は、好ましくは傷害部位または損傷組織の周辺である。あるいは、SDF-1を発現する遺伝子改変したMPCおよび特異的な組換えリガンドまたは受容体を対象に導入し、その後、標的組織中で同族結合パートナーの発現を誘導することによって細胞を所望の標的組織の標的とさせ得る。
【0057】
本発明の組成物が、組織の、たとえば、虚血性もしくは再灌流関連傷害によりアポトーシスが起こる心筋細胞;骨、靱帯、腱もしくは軟骨の外傷傷害後の軟骨細胞;またはアルコール誘発性肝硬変における肝細胞の修復あるいは再生で用いる、移植したMPCまたはそれに由来する細胞の生存を増強させるために有用であることは、理解されよう。
【0058】
具体的な一例では、本発明の組成物は、骨の修復または再生で用いる移植したMPCもしくはそれに由来する細胞の生存を増強させるために有用である。したがって、本発明の組成物は、吸収性ゼラチン、セルロースまたはコラーゲンなどのマトリックスをさらに含み得る。組成物はスポンジ、ストリップ、パウダー、ゲルまたはウェブの形態で用いることができる。
【0059】
本発明はまた、対象中のMPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝すことを含む、対象において骨を産生する方法も提供する。
【0060】
本発明はまた、本発明の組成物を対象に、所望の骨産生部位で投与することを含む、対象において骨を産生する方法も提供する。
【0061】
この方法は、たとえば骨の修復で用いてよく、したがって、本発明の組成物および任意選択で適切な担体を、骨形成を必要としている部位内に導入し得る。したがって、たとえば骨傷害または腫瘍に感染した骨切片の除去によって生じた骨格欠損は、本発明の組成物を欠損部位内に移植することによって修復し得る。そのような欠損には、たとえば、分節骨欠損、癒着不能、変形融合もしくは遷延治癒、嚢胞、腫瘍、壊死または発生学的異常が含まれる。関節再構築、整形再形成(cosmetic reconstruction)または脊椎固定もしくは関節融合などの骨融合等の骨の増強を必要とする他の条件は、増強を必要としている骨の部位内に本発明の組成物を投与することによって個体において治療し得る。組成物は、そこからの骨形成を補強するのに十分な程度に、たとえば、ゼラチン、セルロースもしくはコラーゲン系媒体などの再吸収性バイオポリマーと組み合わせるか、またはリン酸カルシウムセラミックビヒクル中であり得る。再吸収性バイオポリマーはパウダーまたはスポンジの形態であることができ、好ましくはブタ皮膚由来ゼラチンである。セラミックビヒクルは、粒子形態であるか、または構造的に安定した三次元移植片の形態であることができる。構造的に安定した三次元移植片は、たとえば、立方体、シリンダー、ブロックまたは適切な解剖学的形態であることができる。また、組成物は、新しい組織の形成に近似した速度で分解、再吸収または再構築される1つもしくは複数の他の成分を含んでいることもできる。適切な方法および技術には、Caplan他、米国特許第5,226,914号および米国特許第5,837,539号を参照されたい。
【0062】
この方法は、人工装具を固定する補助としても用い得る。したがって、股関節、膝および肩の置換で用いられるものなどの人工装具の表面を、移植前に本発明の組成物でコーティングし得る。その後、組成物中のMPCまたはそれに由来する子孫が骨形成細胞に分化して、それにより骨質の内植および人工装具の取込みのプロセスが加速され得る(Caplan他、米国特許第5,226,914号および米国特許第5,837,539号参照)。
【0063】
上記方法は、個体に、MPCもしくはそれに由来する子孫が骨形成系統へと分化することを誘導または加速する少なくとも1つの生物活性因子を投与することをさらに含み得る。生物活性因子は、たとえば、デキサメタゾンなどの合成糖質コルチコイド、またはBMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-6もしくはBMP-7などの骨形態形成タンパク質であることができる。骨形態形成タンパク質は、筋肉内、静脈内、髄内または関節内注射に適した液状もしくは半固体状の担体中であることができる。
【0064】
本発明はまた、対象中のMPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝すことを含む、対象において血管組織を産生する方法も提供する。
【0065】
本発明はまた、本発明の組成物を対象に所望の血管組織の産生部位で投与することを含む、対象において血管組織を産生する方法も提供する。
【0066】
本発明はまた、対象中のMPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝すことを含む、対象において心筋または平滑筋を産生する方法も提供する。
【0067】
本発明はまた、本発明の組成物を対象に心筋または平滑筋の産生部位で投与することを含む、対象において心筋または平滑筋を産生する方法も提供する。
【0068】
本明細書全体にわたって、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形とは、記載した要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を包含することを暗示するが、任意の他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を排除することを暗示するわけではないことを理解されたい。
【0069】
間質由来因子-1およびその類似体
間質由来因子-1(SDF-1)は、当分野ではケモカインCXCモチーフリガンド12(CXCL12)および前B細胞成長刺激因子(PBSF)とも呼ばれている。間質細胞由来因子1-αおよび1-βは、そのメンバーが白血球を活性化させ、しばしばリポ多糖、TNFまたはIL-1などの炎症誘発性刺激によって誘発されるインタークリンファミリーに属する小さなサイトカインである。インタークリンは、2つのジスルフィド結合を形成する4つの保存されたシステインの存在によって特徴付けられている。これらは2つのサブファミリーに分類することができる。CCサブファミリーでは、システイン残基は互いに隣接している。CXCサブファミリーでは、これらは介在アミノ酸によって隔てられている。SDF-1タンパク質は後者のグループに属する。
【0070】
上述のように、SDF-1には少なくとも2つの既知のアイソフォームが存在し、これらはSDF-1αおよびSDF-1βとして知られている。Shirozu他(Genomics, 28:495, 1995)は、ヒトSDF-1ゲノムクローンを同定し、αおよびβアイソフォームが単一遺伝子の選択的スプライシングの結果であることを示した。α型はエクソン1〜3に由来し、一方でβ型はエクソン4由来の付加配列を含む。ヒト遺伝子全体は約10kbであり、染色体10q11.1に位置する。
【0071】
別段に記述しない限りは、本明細書中で使用する用語「SDF-1」とは、少なくともαおよび/またはβアイソフォームをいう。この用語には、本発明の方法に有用であるように少なくとも一部の活性を保っている、天然に存在する分子の生物活性断片、変異体および誘導体も含まれる。好ましい実施形態では、本発明はαアイソフォームの使用に関する。
【0072】
ヒト、ラット、マウス、およびネコを含めたいくつかの異なるネイティブ哺乳動物SDF-1αおよび/またはβタンパク質のアミノ酸配列が知られている(たとえば、Shirozu他, Genomics, 28:495, 1995; Tashiro他, Science 261:600, 1993; Nishimura他, Eur. J. Immunogenet. 25:303, 1998);およびGenBank寄託番号AF189724参照)。ヒトαアイソフォームのアミノ酸配列を配列番号1として提供し、ヒトβアイソフォームのアミノ酸配列を配列番号2として提供する。SDF-1タンパク質の好ましい形態は、前述の哺乳動物SDF-1タンパク質のうちの1つ、または他の種から得たその相同分子種と同一のアミノ酸配列を有する精製ネイティブSDF-1タンパク質である。
【0073】
1つもしくは複数の特定のモチーフおよび/またはドメイン、あるいは任意の大きさ、たとえば、長さが少なくとも5、10、25、50、または75個のアミノ酸に対応するSDF-1生物活性断片は本発明の範囲内にある。断片を産生し(組換えまたは化学合成によって)、ネイティブSDF-1タンパク質の類似体として機能できるペプチジル断片を同定するために試験することができる。
【0074】
SDF-1変異体は、ネイティブSDF-1タンパク質とは1つまたは複数のアミノ酸が異なるペプチド配列を有する。そのような変異体のペプチド配列は、ネイティブSDF-1タンパク質の1つもしくは複数のアミノ酸の欠失、付加、または置換を特長とすることができる。アミノ酸の挿入は、好ましくは約1〜4個の連続的なアミノ酸の挿入であり、欠失は、好ましくは約1〜10個の連続的なアミノ酸の欠失である。
【0075】
SDF-1変異体は、当分野で知られている様々な技術により産生することができる。たとえば、SDF-1変異体は、別々の点突然変異(もしくは複数の点突然変異)を導入することによって、または切断によってなど、突然変異誘発によって産生することができる。突然変異は、ネイティブSDF-1タンパク質と実質的に同一の機能的活性を有するSDF-1変異体を生じさせることができる。特に、ネイティブSDF-1タンパク質の機能的活性の1つまたは複数を構成的に発現する、タンパク質の作用形態を産生し得る。産生することができる他のSDF-1タンパク質変異体には、たとえばプロテアーゼの標的配列を変更する突然変異によって、タンパク質分解的切断に耐性のあるものが含まれる。ペプチドのアミノ酸配列の変化によりネイティブSDF-1タンパク質の1つまたは複数の機能的活性を有する変異体がもたらされるかどうかは、ネイティブSDF-1タンパク質の機能的活性について変異体の試験を行うことによって、たとえば、本明細書中に記載のように変異体がMPCの増殖を刺激する能力を試験することによって、容易に決定することができる。
【0076】
点突然変異または切断によって作製したコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、および特定の特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための広範な技術が、当分野で知られている。そのような技術は、一般に、SDF-1遺伝子変異体のコンビナトリアル突然変異誘発によって作製した遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適用可能であろう。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための最も幅広く使用されている技術は、典型的には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクター内にクローニングすること、生じたベクターライブラリーを用いて適切な細胞を形質転換させること、および、所望の活性の検出により、その産物が検出された遺伝子をコードしているベクターの、比較的容易な単離が促進される条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させることが含まれる。
【0077】
現在、SDF-1は、G結合7回膜貫通CXCR4受容体の唯一の知られている天然に存在するアゴニストである(当分野でフーシンまたはLESTRとしても知られている)。さらに、MPCはCXCR4受容体を発現することが示されている(ヒト分子は配列番号3として提供する)。したがって、本明細書中に記載のSDF-1の生物学的効果は、ケモカイン受容体CXCR4によって媒介される可能性が最も高い。したがって、本発明の方法に有用なSDF-1類似体はCRCX4アゴニストでもあり得る。しかし、本発明は、MPCが、本明細書中に記載の生物活性がそれによって完全に、またはCRCX4などの別の受容体と一緒になって、CXCR4以外の受容体を発現する可能性を排除しない。
【0078】
本明細書中で使用する用語「SDF-1類似体」とは、SDF-1に構造的または機能的に関連しており、本発明の方法での使用に適した任意の分子をいう。好ましくは、SDF-1類似体はSDF-1のCXCR4結合に対するアンタゴニストである。SDF-1類似体には、上述の天然に存在するSDF-1の生物活性断片、変異体および誘導体が含まれる。
【0079】
SDF-1類似体の例には、US20050065064号、US20050059584号、およびPelus他, Exp. Hematol. 33:295, 2005に記載の分子が含まれる。さらに、証拠により、HIV-1コーティングタンパク質gp120がSDF-1類似体として作用することが示唆されている(Tran他, J. Neuroimmunol. 160,68 2005)。さらに、研究により、AMD3100(AnorMED Inc、カナダ、ブリティッシュコロンビア州)およびALX40-4C(Allelix Biopharmaceuticals Inc、カナダ)がCXCR4受容体のアゴニストとして作用しうることが示されている(Zhang他, J. Biol. Chem. 277,24515 2002)。
【0080】
慣用技術を利用して、様々なペプチドまたは模倣体(ペプチド模倣体を含む)SDF-1タンパク質類似体を産生することができる。たとえば、SDF-1に結合する受容体(CXCR4など)に対する抗体または抗体断片を産生し、その後、ネイティブSDF-1タンパク質の類似体として作用するものを同定するためにスクリーニングすることができる。さらに、CXCR4などのSDF-1タンパク質受容体に結合するものを同定することによる、他の分子(小さな有機または無機分子など)のライブラリーをスクリーニングすることによって、SDF-1類似体を同定することができる。同定されたものは、それらが細胞内で誘導または妨げるシグナルの種類に応じて、アゴニストとしてさらに特徴付けることができる。
【0081】
本発明の方法に有用なSDF-1類似体は、CXCR4 Receptor Agonist Redistribution(商標)アッセイ(BioImage A/S、デンマーク、Soeberg)を用いて同定および/または確認することができる。
【0082】
SDF-1類似体のさらなる例は、SDF-1の様々な領域または部分に対応する構造を含む化合物である。一実施形態では、類似体はリンカーが結合したN末端領域およびC末端領域を含む。他の実施形態では、SDF-1のアミノ酸残基が、たとえば、リシンおよびセリン残基のエーテル化によって、または当分野で知られている他の手段によって、環化されている。さらに他の実施形態では、SDF-1類似体は野生型ケモカイン配列に由来するアミノ酸配列を含むが、システインのうちの1つまたは複数が別のアミノ酸で置き換えられている。他の実施形態には、N末端領域を含むケモカイン類似体、3つまでの逆平行βシートを含む内部領域、αヘリックス構造を含むC末端領域、直接一緒に連結されたN末端およびC末端領域の組合せ、N末端および内部領域の組合せ、もしくは内部領域およびC末端領域の組合せ、または究極的にはN末端領域、内部領域およびC末端領域の組合せが含まれる。N末端領域、内部領域およびC末端領域から選択された領域の長さは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、20、25、30、35、40、41、または45個のアミノ酸であり得る。
【0083】
本発明の方法に有用なSDF-1類似体には、C末端ヒドロキシメチル誘導体、O修飾誘導体(たとえばC末端ヒドロキシメチルベンジルエーテル)、アルキルアミドおよびヒドラジドなどの置換アミドを含めたN末端修飾誘導体、ならびにC末端フェニルアラニン残基がフェネチルアミド類似体で置き換えられている化合物(たとえば、トリペプチドSer-Ile-Pheの類似体としてのSer-Ile-フェネチルアミド)、グリコシル化ケモカイン誘導体、ポリエチレングリコール修飾誘導体、またはビオチン標識誘導体などの誘導体が含まれ得る。
【0084】
本発明の方法に有用なSDF-1類似体は、少なくとも1つの修飾基に直接または間接的に連結していてよい。用語「修飾基」とは、ペプチド構造に直接付着した構造(たとえば共有結合または共有カップリングによる)、ならびにペプチド構造に間接的に付着した構造(たとえば、安定した非共有結合またはリンカーを介した追加のアミノ酸残基への共有カップリングによる)を含むことを意図する。用語「修飾基」は、SDF-1核ペプチド構造に隣接し得るその模倣体、類似体または誘導体を指してもよい。たとえば、修飾基は、SDF-1ペプチド構造のアミノ末端もしくはカルボキシ末端、または核構造に隣接するペプチド領域もしくはペプチド模倣体領域にカップリングしていてもよい。あるいは、修飾基は、SDF-1ペプチド構造の少なくとも1つのアミノ酸残基の側鎖、または核ドメインに隣接するペプチド領域もしくはペプチド模倣体領域にカップリングしていてもよい(たとえば、リジル残基(もしくは複数の残基)のεアミノ基を介して;アスパラギン酸残基(もしくは複数の残基)またはグルタミン酸残基(もしくは複数の残基)のカルボキシル基を介して;チロシル残基(もしくは複数の残基)、セリン残基(もしくは複数の残基)またはスレオニン残基(もしくは複数の残基)のヒドロキシ基を介して;あるいはアミノ酸側鎖上の任意の他の適切な反応基)。ペプチド構造に共有カップリングしている修飾基は、たとえば、アミド、アルキルアミノ、スルフィド、カルバミン酸または尿素結合を含めた化学構造を連結させるための当分野で周知の手段および方法を用いて付着させることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、修飾基は環状、複素環式または多環式基を含み得る。本明細書中で使用する用語「環状基」には、3〜10個;4〜8個;または5、6、もしくは7個の炭素原子を有する、環状の飽和または不飽和(すなわち芳香族)基が含まれる。例示的な非芳香族環状基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチルが含まれる。用語「複素環式基」には、1つもしくは複数の骨格原子が酸素、窒素、硫黄、またはその組合せである、任意選択で置換された、飽和または不飽和の、3〜8員の環状構造が含まれる。環状基または複素環式基は、未置換であるか、または1つもしくは複数の環上の位置で置換されていてよい。環状基は、たとえば、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホン酸、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、スルホン酸、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、-CF3、-CNで置換されていてよい。また、環状基は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、複素環、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスホン酸、ホスフィン、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、チオエーテル、スルホニル、スルホン酸、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、-CF3、-CNなどの置換基に、1、2、3、4、5、6、7、8、もしくはそれ以上の炭素原子の飽和または不飽和鎖によって連結されていてもよく;さらには、炭素原子の1つまたは複数が酸素、窒素、もしくは硫黄原子で置き換えられていてもよい。
【0086】
本発明の方法に有用なSDF-1類似体は、ポリエチレングリコール(PEG)の付加によって修飾し得る。PEG修飾は、循環時間の向上、溶解度の向上、タンパク質分解耐性の向上、抗原性および免疫原性の軽減、生体利用度の向上、毒性の軽減、安定性の向上、およびより容易な配合をもたらし得る。PEG化は、生物活性の相当な減少ももたらし得る。
【0087】
本発明の方法に有用なSDF-1類似体は、化合物自体はSDF-1類似体として作用しないが、in vitroおよび/またはin vivoで代謝された際にSDF-1類似体へと変換される能力を有する「プロドラッグ」形態で調製し得る。たとえば、この種の化合物では、修飾基は、活性SDF-1類似体の形態へと代謝された際に変換される能力を有するプロドラッグ形態で存在することができる。修飾基のこのようなプロドラッグ形態は、本明細書中では「二次修飾基」と呼ぶ。ペプチド系薬物の活性型の送達を最適化するために代謝を制限するペプチドプロドラッグを調製するための様々な戦略が、当分野で知られている。
【0088】
上記の個々のセクションで参照した本発明の様々な特長および実施形態は、必要に応じて他のセクションにも適用される。特に、必要に応じて、1つのセクションで特定した特長を他のセクションで特定した特長と組み合わせてもよい。
【0089】
遺伝子改変した細胞の産生
本発明のさらなる態様では、SDF-1またはそのペプチド類似体を産生させるために、MPCまたはそれに由来する前駆細胞の遺伝子改変を行う。典型的には、SDF-1またはそのペプチド類似体が細胞から分泌されるように、細胞の遺伝子改変を行う。
【0090】
遺伝子改変した細胞は、改変した細胞の増殖を支持するのに十分な量の少なくとも1つのサイトカインの存在下で培養することができる。その後、改変した細胞を選択し、これによりコードされたポリペプチドが過剰発現される。このようにして得られた遺伝子改変した細胞は、すぐに使用する(たとえば移植片において)、in vitroで培養するもしくは増殖させる、またはのちに使用するために貯蔵し得る。改変した細胞は、当分野で周知の方法、たとえば液体窒素中で凍結することによって貯蔵し得る。
【0091】
本明細書中で使用する遺伝子改変とは、外来性もしくは異質ポリヌクレオチドをMPCもしくはそれに由来する前駆細胞に導入することを含む、またはMPCもしくはそれに由来する前駆細胞内の内在遺伝子を改変することを含む任意の遺伝子改変方法が包含される。遺伝子改変には、それだけには限定されないが、形質導入(in vitroまたはin vivoのどちらかにおける、宿主もしくはドナーからレシピエントへの宿主DNAのウイルス媒介性転移)、遺伝子導入(単離したウイルスDNAゲノムを用いた細胞の形質転換)、リポソーム媒介性の転移、電気穿孔、リン酸カルシウムトランスフェクションあるいは共沈殿などが含まれる。形質導入方法には、細胞および産生細胞を直接同時培養すること(Bregni他、Blood 80:1418-1422, 1992)または適切な成長因子およびポリカチオンを用いてもしくは用いずに、ウイルス上清のみと共に培養すること(Xu他、Exp. Hemat. 22:223-230, 1994)が含まれる。
【0092】
SDF-1またはそのペプチド類似体をコードしているポリヌクレオチドは典型的には、好ましくはベクター中で宿主細胞に導入する。ベクターには、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要な要素が含まれることが好ましい。このようなベクターを構築するために用いる方法は当分野で周知である。たとえば、適切な発現ベクターを構築する技術は、Sambrook他、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y. (3rd Ed., 2000);およびAusubel他、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York (1999)に詳述されている。
【0093】
ベクターには、それだけには限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、および単純ヘルペスウイルスなどのウイルスベクター;コスミド;プラスミドベクター;合成ベクター;ならびに当分野で典型的に用いられる他の組換えビヒクルが含まれ得る。プロモーターとポリヌクレオチドをその内部に動作可能に連結することができるクローニング部位とをどちらも含むベクターは、当分野で周知である。そのようなベクターはRNAをin vitroまたはin vivoで転写する能力を有しており、Stratagene(カリフォルニア州La Jolla)およびPromega Biotech(ウィスコンシン州Madison)などの供給業者から市販されている。具体的な例には、StratageneのpSG、pSV2CAT、pXtl;ならびにPharmaciaのpMSG、pSVL、pBPVおよびpSVK3が含まれる。
【0094】
好ましいベクターにはレトロウイルスベクターが含まれる(Coffin他、"Retrovirus", 第9章ページ437-473, Cold Springs Harbor Laboratory Press, 1997参照)。本発明において有用なベクターは、当分野で周知の手順によって、組換えによって産生することができる。たとえば、国際公開公報WO94/29438号、国際公開公報WO97/21824号および国際公開公報WO97/21825号は、レトロウイルスパッケージングプラスミドおよびパッキング細胞系(packing cell lines)の構築について記載している。例示的なベクターには、pCMV6bおよびpCMV6c(Chiron Corp.)、pSFFV-Neo、ならびにpBluescript-Sk+などのpCMV哺乳動物発現ベクターが含まれる。有用なレトロウイルスベクターの非限定的な例は、ネズミ、トリまたは霊長類レトロウイルスに由来するものである。一般的なレトロウイルスベクターには、モロニーネズミ白血病ウイルス(MoMLVベクター)に基づくものが含まれる。他のMoMLV由来ベクターには、Lmily、LINGFER、MINGFRおよびMINT(Chang他、Blood 92:1-11, 1998)が含まれる。さらなるベクターには、ギボン類人猿白血病ウイルス(GALV)およびモロニーネズミ肉腫ウイルス(MOMSV)および脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)に基づくものが含まれる。ネズミ幹細胞ウイルス(MESV)に由来するベクターには、MESV-MiLy(Agarwal他、J. of Virology, 72:3720-3728, 1998)が含まれる。また、レトロウイルスベクターにはレンチウイルスに基づくベクターが含まれ、非限定的な例にはヒト免疫不全ウイルス(HIV-1およびHIV-2)に基づくベクターが含まれる。
【0095】
レトロウイルスベクター構築体を産生するにあたって、ウイルスのgag、polおよびenv配列をウイルスから除去して、異質DNA配列を挿入するための場所を空けることができる。異質DNAによってコードされている遺伝子は通常、末端反復配列(LTR)中の強力なウイルスプロモーターの制御下で発現される。適切な制御調節配列の選択は用いる宿主細胞に依存し、選択は当業者の技術範囲内にある。LTRのプロモーターに加えて、数多くのプロモーターが知られている。非限定的な例には、ファージλPLプロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)即時型プロモーター;モロニーネズミ肉腫ウイルス(MMSV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、または脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)のU3領域プロモーター;グランザイムAプロモーター;およびグランザイムBプロモーターが含まれる。誘導性要素または複数制御要素をさらに用い得る。適切なプロモーターの選択は当業者に明らかであろう。
【0096】
このような構築体は、パッキング細胞系によってgag、polおよびenvの機能がトランスで提供された場合、ウイルス粒子内に効率的にパッキングすることができる。したがって、ベクター構築体がパッケージング細胞内に導入された際、細胞によって産生されたgag-polおよびenvタンパク質がベクターRNAと会合して感染性ビリオンが産生され、これが培地中に分泌される。このようにして産生したウイルスは標的細胞に感染してそのDNA内に組み込まれることができるが、必須のパッケージング配列を欠いているので感染性ウイルス粒子が産生されない。現在使用されているパッキング細胞系のほとんどは、それぞれが必要なコード配列の1つを含む個別のプラスミドを導入されているので、複製能力を有するウイルスを産生することができるまでに複数の組換え事象が必要である。あるいは、パッケージング細胞系はプロウイルスを保有する。プロウイルスは、感染性ウイルスを組み立てるのに必要なすべてのタンパク質を産生し得るが、それ自体のRNAをウイルス内にパッケージングできないように破損させられている。その代わりに、組換えウイルスから産生されたRNAがパッケージングされる。したがって、パッケージング細胞から放出されるウイルスストックは組換えウイルスのみを含む。レトロウイルスパッケージング系の非限定的な例には、PA12、PA317、PE501、PG13、PSI.CRIP、RDI 14、GP7C-tTA-G10、ProPak-A(PPA-6)、およびPT67が含まれる。Miller他、Mol. Cell Biol. 6:2895, 1986; Miller他、Biotechniques 7:980, 1989; Danos他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6460, 1988; Pear他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8392-8396, 1993;およびFiner他、Blood 83:43-50, 1994を参照されたい。
【0097】
他の適切なベクターには、アデノウイルスベクター(Frey他、Blood 91:2781, 1998;および国際公開公報WO95/27071号参照)およびアデノ関連ウイルスベクターが含まれる。これらのベクターはすべて当分野で周知であり、たとえば、Chatterjee他、Current Topics in Microbiol. And Immunol., 218:61-73, 1996; Stem Cell Biology and Gene Therapy, Quesenberry他編, John Wiley & Sons, 1998;ならびに米国特許第5,693,531号および第5,691,176号に記載されている。アデノウイルス由来ベクターは非分裂細胞に感染することができないので、その使用は特定の状況下で有利であり得る。レトロウイルスDNAとは異なり、アデノウイルスDNAは標的細胞のゲノム内に組み込まれない。さらに、異質DNAを保有する容量はレトロウイルスベクターよりもアデノウイルスベクターがはるかに大きい。アデノ関連ウイルスベクターは、別の有用な送達系である。このウイルスのDNAは非分裂細胞内に組み込んでもよく、アデノ関連ウイルスベクターを用いて様々な細胞種内にいくつかのポリヌクレオチドを導入することが成功している。
【0098】
いくつかの実施形態では、構築体またはベクターには、2つ以上の異種ポリヌクレオチド配列、すなわち、a)SDF-1またはそのペプチド類似体をコードしている核酸配列、およびb)1つまたは複数の追加の核酸配列が含まれる。好ましくは、追加の核酸配列は、選択マーカー、構造遺伝子、治療遺伝子、CXCR4受容体、またはさらなるサイトカイン/ケモカイン遺伝子をコードしているポリヌクレオチドである。
【0099】
遺伝子改変の成功を監視するため、およびDNAが組み込まれた細胞を選択するために、選択マーカーを構築体またはベクターに含め得る。非限定的な例には、G148またはハイグロマイシンなどの薬物耐性マーカーが含まれる。さらに、たとえばマーカーがHSV-tk遺伝子である場合には、陰性選択を用い得る。この遺伝子は、細胞にアシクロビルおよびガンシクロビルなどの薬剤に対する感受性を与える。NeoR(ネオマイシン/G148耐性)遺伝子が一般的に用いられるが、その遺伝子配列が既に標的細胞中に存在しない任意の好都合なマーカー遺伝子を用い得る。さらなる非限定的な例には、低親和性神経成長因子(NGFR)、増強蛍光緑色タンパク質(EFGP)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)、細菌hisD遺伝子、ネズミCD24(HSA)、ネズミCD8a(lyt)、プロマイシンまたはフレオマイシンに対する耐性を与える細菌遺伝子、およびβ-ガラクトシダーゼが含まれる。
【0100】
追加のポリヌクレオチド配列(もしくは複数の追加のポリヌクレオチド配列)は、SDF-1またはそのペプチド類似体をコードしているポリヌクレオチド配列と同じベクター上で宿主細胞内に導入するか、または追加のポリヌクレオチド配列は第2のベクター上で宿主細胞内に導入し得る。好ましい実施形態では、SDF-1またはそのペプチド類似体をコードしているポリヌクレオチドと同じベクターに選択マーカーを含める。
【0101】
本発明はまた、内在遺伝子の発現がアップレギュレーションされ、その結果、野生型MPCまたはそれに由来する前駆細胞と比較してSDF-1の産生の増大がもたらされるように、内在SDF-1遺伝子のプロモーター領域の遺伝子改変を行うことを包含する。
【0102】
間質由来因子-1(SDF-1)およびその類似体の投与
本発明の方法は、MPCもしくはそれに由来する子孫のin situにおける増殖および/または生存を増強させるために、SDF-1またはその類似体を対象に投与することを含み得る。
【0103】
これらの方法は、SDF-1もしくはその類似体を、局所的、全身的、またはインプラントもしくはデバイス内など局在的に投与することを含み得る。
【0104】
特定の一実施形態では、本発明は、SDF-1またはその類似体を対象に全身投与することによる、それを必要としている対象においてMPCもしくはそれに由来する子孫の増殖および/または生存を増強させる方法を提供する。たとえば、SDF-1もしくはその類似体を皮下または筋肉内注射によって投与し得る。
【0105】
本発明のこの実施形態は、特定の組織におけるMPCの増殖および/または生存の増強が望ましい全身性変性疾患の治療に有用であり得る。この方法で治療することができる全身性変性疾患の例には、骨粗鬆症もしくは骨折、軟骨変性疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患または心血管病などが含まれる。
【0106】
したがって、本発明によれば、治療上または予防上有効な量のSDF-1またはその類似体を含む組成物を、自己免疫疾患、急性慢性炎症、癌、心血管病、感染症、ならびに関節リウマチ、慢性炎症性腸疾患、慢性炎症性骨盤疾患、多発性硬化症、喘息、骨関節炎、アテローム性動脈硬化症、乾癬、鼻炎、自己免疫、および器官移植片拒絶を含めた炎症性障害からなる群から選択された疾患または障害の治療に用い得る。一例では、このような組成物には、組織特異的細胞の産生の刺激を支援するための使用に十分な治療上または予防上有効な量のSDF-1または類似体が含まれる。
【0107】
「治療上有効な量」とは、MPCもしくはそれに由来する子孫の増殖および/または生存の増強を達成するのに必要な用量および期間における、有効な量をいう。
【0108】
「予防上有効な量」とは、必要な用量でかつ必要な期間の間、MPCもしくはそれに由来する子孫の死を予防または阻害することなどの、所望の予防的結果を達成するために有効な量をいう。
【0109】
特定の実施形態では、SDF-1もしくはその類似体の治療上または予防上有効な量の好ましい範囲は、0.1nM〜0.1M、0.1nM〜0.05M、0.05nM〜15μMまたは0.01nM〜10μMであり得る。用量の値は、緩和させる状態の重篤度に応じて変動し得ることに留意されたい。任意の特定の対象について、具体的な用量レジメンは、個体の要求および組成物を投与する人または投与を監督する人の専門的判断に従って、経時的に調節し得る。本明細書中に記載した用量範囲は例示的のみで記載し、医療従事者によって選択され得る用量範囲を制限しない。
【0110】
組成物中のSDF-1またはその類似体の量は、個体の病状、年齢、性別、および重量などの要素に応じて変動し得る。最適な治療反応をもたらすために用量レジメンを調節し得る。たとえば、単一のボーラスを投与するか、いくつかの分割した用量を経時的に投与するか、または、治療状況の緊急度によって示されるように容量を比例的に減少もしくは増加し得る。投与を容易にし、用量を均一にするために、非経口組成物を単位剤形で配合することが有利であり得る。本明細書中で使用する「単位剤形」とは、治療する対象の単一の単位用量として適した、物理的に区別された単位をいう。それぞれの単位は、所望の治療効果を生じるように計算された事前に決定された量の活性化合物を、必要な製薬担体と一緒に含む。
【0111】
SDF-1またはその類似体は、製薬上許容される担体または賦形剤を含む組成物の形態で投与し得ることが理解されよう。
【0112】
本明細書中で使用する「製薬上許容される担体」または「賦形剤」には、任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などの、生理的適合性のあるものが含まれる。一実施形態では、担体は非経口投与に適している。あるいは、担体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、舌下または経口投与に適していることができる。製薬上許容される担体には、滅菌した水溶液または分散液、および滅菌した注射用溶液または分散液を即時調製するための滅菌したパウダーが含まれる。製薬活性物質用のこのような媒体および薬剤の使用は、当分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合でない限りは、本発明の薬剤組成物中におけるその使用が企図される。補助的な活性化合物も組成物中に取り込ませることができる。
【0113】
非経口投与用の製薬配合物にはリポソームが含まれ得る。リポソームおよび乳剤は、疎水性薬物に特に有用な送達ビヒクルまたは担体の周知の例である。治療試薬の生物安定性次第では、タンパク質を安定化させる追加の戦略を用い得る。さらに、標的化薬物送達系、たとえば標的に特異的な抗体をコーティングしたリポソーム中で薬物を投与し得る。リポソームは標的タンパク質に結合し、標的タンパク質を発現する細胞によって選択的に取り込まれる。
【0114】
治療組成物は、典型的には製造および貯蔵の条件下で無菌的かつ安定であるべきである。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高薬物濃度に適した他の秩序構造として配合し得る。担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であることができる。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングを用いることによって、分散液の場合は必要な粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。多くの場合、等張化剤、たとえば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。さらに、SDF-1またはその類似体は、徐放性配合物中、たとえば徐放性ポリマーが含まれる組成物中で投与し得る。活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル封入送達系を含めた徐放性配合物などの、化合物を迅速な放出から保護する担体と共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびポリ乳酸ポリグリコール酸コポリマー(PLG)などの生分解性、生体適合性ポリマーを用いることができる。このような配合物を調製するための多くの方法が特許されているか、または当業者に一般に知られている。
【0115】
さらに、本発明の化合物の懸濁液を注射用の適切な油状懸濁液として調製し得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油;またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル;またはリポソームが含まれる。注射用に用いる懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を上昇させる物質も含み得る。任意選択で、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にする適切な安定化剤または化合物の溶解度を増加させる薬剤も含み得る。
【0116】
滅菌した注射用溶液は、所要量の活性化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて上に列挙した成分の1つまたは組合せと共に取り込ませ、次いで濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒および上に列挙したものから必要な他の成分を含む滅菌したビヒクル中に取り込ませることによって調製する。滅菌した注射用溶液を調製するための滅菌したパウダーの場合は、好ましい調製方法は、活性成分と既に滅菌したその濾過溶液からの任意の追加の所望の成分とのパウダーが得られる、真空乾燥および凍結乾燥である。本発明の代替態様に従って、SDF-1またはその類似体は、SDF-1またはその類似体の溶解度を高める1つまたは複数の追加の化合物と共に配合し得る。
【0117】
本発明の化合物を吸入によって投与する場合は、加圧パックまたは噴霧器から、適切な噴霧剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切な気体の使用と一緒に、エアロゾルスプレーの提示の形態でこれを好都合に送達し得る。加圧エアロゾルの場合は、計量された量を送達するための弁を備えることによって単位容量を決定し得る。化合物とデンプンまたはラクトースなどの適切な粉末基材とのパウダー混合物を含む、吸入器中で用いるためのたとえばゼラチン製のカプセルおよびカートリッジを配合し得る。
【0118】
本発明の細胞性組成物の投与
MPCおよび/またはそれに由来する子孫を含む本発明の細胞性組成物は、骨、軟骨、腱、靱帯、筋肉、皮膚、および他の結合組織、ならびに神経、心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、脳、および他の器官の組織を含めた様々な種類の組織の再生に有用であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物を、たとえば、MPCおよび/またはそれに由来する子孫を支持し、骨、軟骨、筋肉、神経、表皮および/または他の結合組織が増殖する表面を提供するための適切なマトリックスと組み合わせて投与し得る。マトリックスは従来のマトリックス生体材料の形態であり得る。マトリックスは、発現されたタンパク質および分化した細胞の徐放性ならびに/またはそれを提示するために適切な環境を提供し得る。いくつかの実施形態では、様々なコラーゲン性および非コラーゲン性タンパク質がアップレギュレーションされ、MPCまたはそれに由来する子孫から分泌されると予測される。この現象は、マトリックスの堆積を増強することによって組織の再生を加速させる。また、マトリックスタンパク質は、遺伝子操作した細胞中で発現させ、移植した細胞が移植領域内に生着および付着することを増強させることもできる。
【0120】
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、表面的外見および界面特性に基づく。細胞に基づいた組成物の具体的な用途により適切な配合が定義される。組成物の潜在的なマトリックスは、生分解性かつ化学的に定義されている硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ酸無水物であり得る。他の潜在的な材料は、骨または皮膚コラーゲンなど、生分解性かつ生物学的によく定義されている。さらなるマトリックスは純粋なタンパク質または細胞外基質成分からなる。他の潜在的なマトリックスは、焼結ハイドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミネート、または他のセラミックなど、非生分解性かつ化学的に定義されている。マトリックスは、ポリ乳およびハイドロキシアパタイトまたはコラーゲンおよびリン酸三カルシウムなどの上述の材料種の任意の組合せからなり得る。バイオセラミックは、カルシウム-アルミン酸-リン酸など組成を変更してもよく、また、孔径、粒子径、粒子形状、および生分解性を変更するために加工を変更してもよい。
【0121】
疾患もしくは外傷または組織の正常な発達の失敗の結果生じる軟骨もしくは骨組織の修復または置換を要する患者を治療するために、あるいは整形的(cosmetic)機能を提供するために、顔面特長または身体の他の特長を増補するために、本発明の細胞性組成物を用い得る。治療は、新しい軟骨組織または骨組織を産生させるための本発明の細胞の使用を必要とし得る。たとえば、未分化または軟骨形成分化誘導性の前駆細胞を含む組成物を用いて、軟骨状態、たとえば、関節リウマチまたは骨関節炎または軟骨の外傷性もしくは外科性の傷害を治療し得る。別の例として、骨前駆細胞を含む組成物を用いて、代謝性および非代謝性の骨疾患を含めた骨状態を治療し得る。骨状態の例には、半月板断裂、脊椎固定、脊椎板除去、脊髄再構築、骨折、骨/脊髄変形、骨肉腫、骨髄腫、骨異形成、脊柱側弯症、骨粗鬆症、歯周病、歯骨損失、骨軟化症、くる病、線維性骨炎、腎性骨ジストロフィー、および骨パジェット病が含まれる。
【0122】
本発明の細胞性組成物は、単独で、または他の細胞との混合物として投与し得る。本発明の組成物と併せて投与し得る細胞には、それだけには限定されないが、他の多能性もしくは分化多能性細胞または軟骨細胞、軟骨芽細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨裏打ち細胞、幹細胞、もしくは骨髄細胞が含まれる。様々な種類の細胞を投与の直前もしくは少し前に本発明の組成物と混合するか、またはこれらを投与前に一定期間、一緒に同時培養し得る。
【0123】
本発明の細胞性組成物は、他の有益な薬物または生体分子(成長因子、栄養素)と共に投与し得る。MPCおよび/またはそれに由来する子孫を他の薬剤と共に投与する場合、それらを単一の薬剤組成物中で同時に、あるいは個別の薬剤組成物中で、同時にまたは他の薬剤と逐次的に(他の薬剤を投与する前もしくは後に)投与し得る。同時投与し得る生物活性因子には、抗アポトーシス剤(たとえば、EPO、EPO模倣体、TPO、IGF-IおよびIGF-II、HGF、カスパーゼ阻害剤);抗炎症剤(たとえば、p38 MAPK阻害剤、TGF-β阻害剤、スタチン、IL-6およびIL-1阻害剤、ペミロラスト、トラニラスト、REMICADE、シロリムス、およびNSAID(非ステロイド性抗炎症薬;たとえば、テポキサリン、トルメチン、スプロフェン);免疫抑制剤/免疫調節剤(たとえば、シクロスポリン、タクロリムスなどのカルシニュリン阻害剤;mTOR阻害剤(たとえば、シロリムス、エベロリムス);抗増殖性(たとえば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);副腎皮質ステロイド(たとえば、プレドニソロン、ヒドロコルチゾン);モノクローナル 抗IL-2Rα受容体抗体(たとえば、バシリキシマブ、ダクリツマブ)、ポリクローナル抗T細胞抗体(たとえば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)などの抗体;抗リンパ球グロブリン(ALG);モノクローナル抗T細胞抗体OKT3));抗血栓剤(たとえば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)、抗トロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤、および血小板阻害剤);抗酸化剤(たとえば、プロブコール、ビタミンA、アスコルビン酸、トコフェロール、補酵素Q-10、グルタチオン、L-システイン、N-アセチルシステイン)、ならびに局所麻酔剤が含まれる。別の例として、細胞を、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,827,735号に記載の瘢痕阻害因子と同時に投与し得る。
【0124】
一実施形態では、本発明の細胞性組成物を未分化細胞として、すなわち増殖培地中で増殖したままで投与する。あるいは、細胞性組成物を所望の表現型、たとえば骨形成の表現型への分化を刺激する条件に培養物中で曝した後に投与し得る。
【0125】
本発明の細胞性組成物は、修復または補強を必要としている部位に、外科的に植え込む、注射する、送達する(たとえばカテーテルもしくはシリンジによって)、または他の方法で直接もしくは間接的に投与し得る。細胞はマトリックス(たとえば三次元スキャフォールド)によって投与し得る。細胞は従来の製薬上許容される担体と共に投与し得る。本発明の細胞もしくは組成物またはその成分(たとえば、ECM、細胞溶解液、馴化培地)の投与経路には、筋肉内、眼、非経口(静脈内を含む)、動脈内、皮下、経口、および経鼻の投与が含まれる。特定の非経口投与経路には、それだけには限定されないが、筋肉内、皮下、腹腔内、脳内、脳室内、側脳室内、くも膜下腔内、嚢内、脊髄内および/または脊椎周辺の投与経路が含まれる。
【0126】
細胞を半固体または固体状デバイス中で投与する場合、典型的には体内の正確な位置への外科的植込みが適切な投与手段である。しかし、液状または流体状の薬剤組成物を、それらがたとえば化学シグナルに応答してそこから特定の位置へと遊走する、より全体的な位置(たとえば、散在性の患部全体にわたって)に投与し得る。
【0127】
他の実施形態は、細胞成分(たとえば、細胞溶解液もしくはその成分)または生成物(たとえば、細胞外基質、栄養素もしくは遺伝子改変によって産生させた他の生物学的因子)を含む薬剤組成物を投与することによる治療方法を包含する。
【0128】
本明細書中に記載の細胞性組成物を投与するための剤形およびレジメンは、個々の患者の状態、たとえば、治療する状態の性質および程度、年齢、性別、体重および一般的病状、ならびに医療従事者に知られている他の因子を考慮して、正しい医療慣行に従って開発する。したがって、患者に投与する薬剤組成物の有効量は、当分野で知られているとおりのこのような考慮事項によって決定する。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の細胞性組成物を用いた治療の開始前に患者の免疫抑制を行うことが必要または望ましい場合がある。したがって、同種、またはさらには異種のMPCまたはそれに由来する子孫を用いた移植がいくつかの例では許容され得る。
【0130】
しかし、他の例では、細胞治療を開始する前に患者の薬理学的な免疫抑制を行うことが望ましいまたは適切であり得る。これは、全身性もしくは局所的免疫抑制剤を使用することによって成すか、または細胞をカプセル封入したデバイス中で送達することによって成し得る。MPCまたはそれに由来する子孫は、細胞が必要とする栄養素および酸素ならびに細胞の治療因子を透過するが、免疫液性因子および細胞を透過しないカプセル中にカプセル封入し得る。好ましくは、カプセル材料は低アレルギー性であり、容易かつ安定に標的組織中に配置され、植込み構造体に保護の追加を提供する。移植した細胞に対する免疫応答を軽減または排除するためのこれらおよび他の手段は、当分野で知られている。代替方法として、MPCまたはそれに由来する子孫の遺伝子改変を行ってその免疫原性を軽減させ得る。
【0131】
生きた患者内に移植したMPCまたはそれに由来する子孫の生存は、様々なスキャン技術、たとえば、コンピュータ軸方向断層撮影(CATもしくはCT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)または陽電子放射断層撮影(PET)スキャンを用いることで決定することができる。また、移植片の生存の決定は、死後に標的組織を取り出し、視覚的にまたは顕微鏡で検査することによっても決定することができる。あるいは、特定の系統の細胞に特異的な染料を用いて細胞を処理することができる。移植した細胞は、ローダミンもしくはフルオレセインで標識したミクロスフェア、fast blue、ビスベンズアミド、第二鉄微粒子、またはβ-ガラクトシダーゼもしくはβ-グルクロニダーゼなどの遺伝子導入したレポーター遺伝子の産物などのトレーサー色素を事前に取り込ませておくことによっても同定することができる。
【0132】
対象内に移植したMPCまたはそれに由来する子孫の機能的組込みは、損傷したまたは疾患状態となった機能の修復、たとえば関節もしくは骨の機能の修復、または機能の増強を検査することによって評価することができる。
【0133】
本発明の細胞性組成物には、たとえば、それだけには限定されないが、成長因子、分化誘導因子、カスパーゼ阻害剤などの細胞生存因子、p38キナーゼ阻害剤などの抗炎症剤、またはVEGFもしくはbFGFなどの血管形成因子などの1つもしくは複数の生物活性因子が含まれ得る。生物活性因子のいくつかの例には、PDGF-bb、EGF、bFGF、IGF-1、およびLIFが含まれる。
【0134】
あるいは、このような成長因子、抗酸化剤、抗アポトーシス剤、抗炎症剤、または血管形成因子が発現されるように移植するMPCまたはそれに由来する子孫の遺伝子操作を行い得る。
【0135】
本発明の薬剤組成物はMPCまたはそれに由来する子孫の同種もしくは異種の集団、その細胞外基質または細胞溶解液、あるいはその馴化培地を、製薬上許容される担体中に含み得る。本発明の細胞の製薬上許容される担体には、本発明の細胞もしくは組成物またはその成分と有害に反応しない、適切な有機または無機担体物質が含まれる。それらが生体適合性である限りは、適切な製薬上許容される担体には、水、塩溶液(リンゲル液など)、アルコール、油、ゼラチン、およびラクトース、アミロース、またはデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ならびにポリビニルピロリジンが含まれる。このような調製物を滅菌することができ、所望する場合は、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、および着色剤などの補助剤と混合することができる。本発明での使用に適した製薬担体は当分野で知られており、たとえば、そのそれぞれが本明細書中に参考として組み込まれているPharmaceutical Sciences(第17版、Mack Pub. Co.、ペンシルバニア州Easton)および国際公開公報WO96/05309号に記載されている。
【0136】
1種もしくは複数種の当分野で知られているコラーゲンなどの選択された細胞外基質成分、ならびに/または成長因子、血小板に富んだ血漿、および薬物を含めた1つまたは複数の他の成分を移植した細胞に加え得る。あるいは、本発明の細胞の遺伝子操作を行って成長因子を発現かつ産生させ得る。本発明の細胞の遺伝子改変についての詳細は本明細書中に提供されている。
【0137】
非限定的な実施形態では、骨組織などの新しい組織の産生が所望される部位に直接投与するために、本発明の細胞を含む配合物を調製する。たとえば、限定するものではないが、MPCまたはそれに由来する子孫を注射用のヒドロゲル溶液に懸濁させ得る。本発明で使用する適切なヒドロゲルの例には、RAD16などの自己集合ペプチドが含まれる。あるいは、植込み前に、細胞を含むヒドロゲル溶液を、たとえば型内で硬化させて、内部に細胞が分散したマトリックスを形成し得る。あるいは、マトリックスが硬化したのち、植込み前に、細胞が有糸分裂によって拡大されるように細胞形成体を培養し得る。ヒドロゲルとは、共有結合、イオン結合、または水素結合によって架橋結合されて三次元の開格子構造が作製される有機ポリマー(天然もしくは合成)であり、水分子を捕捉してゲルを形成する。ヒドロゲルを形成するために用いることができる材料の例には、アルギン酸およびその塩などの多糖類、ペプチド、ポリホスファジン、およびイオン結合によって架橋結合されているポリアクリレート、またはそれぞれ温度もしくはpHによって架橋結合されているポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマーなどのブロックポリマーが含まれる。いくつかの実施形態では、MPCまたはそれに由来する子孫用の支持体は生分解性である。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態では、配合物は、たとえば米国特許出願第2002/0022676号; Anseth他、J. Control Release, 78(1-3): 199-209 (2002); Wang他、Biomaterials, 24(22):3969-80 (2003)に記載のin situで重合可能なゲルを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、帯電した側基を有し、水、緩衝塩溶液、または水性アルコール溶液などの水溶液中に少なくとも部分的に可溶性であるか、またはその一価のイオン性塩である。陽イオンと反応させることができる酸性側基を有するポリマーの例は、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、およびスルホン化ポリスチレンなどのスルホン酸ポリマーである。アクリル酸またはメタクリル酸とビニルエーテル単量体またはポリマーとの反応によって形成される酸性側基を有するコポリマーも用いることができる。酸性基の例は、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくはフッ化)アルコール基、フェノール性OH基、および酸性OH基である。
【0140】
陰イオンと反応させることができる塩基性側基を有するポリマーの例は、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、およびいくつかのイミノ置換ポリホスファゼンである。ポリマーのアンモニウム塩または第四級塩も、主鎖の窒素またはペンダントのイミノ基から形成することができる。塩基性側基の例はアミノ基およびイミノ基である。
【0141】
アルギネートを二価陽イオンと、水中、室温で、イオン結合により架橋結合してヒドロゲルマトリックスを形成することができる。このような緩和な条件により、アルギネートは、たとえばLimの米国特許第4,352,883号に記載のハイブリドーマ細胞カプセル封入に最も一般的に用いられるポリマーであった。Limの方法では、カプセル封入する生体材料を含む水溶液を水溶性ポリマーの溶液中に懸濁させ、懸濁液を液滴の形にし、多価陽イオンと接触させることによってこれから別個のマイクロカプセルを形成し、その後、マイクロカプセルの表面をポリアミノ酸と架橋結合させて、カプセル封入した材料の周りに半透膜を形成させる。
【0142】
ポリホスファゼンとは、交互する単結合および二重結合によって隔てられた窒素とリンとからなる主鎖を有するポリマーである。それぞれのリン原子が2本までの側鎖と共有結合している。
【0143】
架橋結合に適したポリホスファゼンは、その側鎖基の大多数が酸性であり、かつ二価または三価の陽イオンを共に塩橋を形成する能力を有する。好ましい酸性側基の例はカルボン酸基およびスルホン酸基である。加水分解に安定なポリホスファゼンは、Ca2+またはAl3+などの二価または三価の陽イオンによって架橋結合されたカルボン酸側基を有する単量体から形成される。イミダゾール、アミノ酸エステル、またはグリセロール側基を有する単量体を取り込ませることによって、加水分解によって分解するポリマーを合成することができる。たとえば、ポリアニオンポリ[ビス(カルボキシラトフェノキシ)]ホスファゼン(PCPP)を合成することができ、これを室温以下で水性媒体中に溶かした多価陽イオンと架橋結合させてヒドロゲルマトリックスを形成させる。
【0144】
生分解性ポリホスファゼンは、少なくとも2種の異なる側鎖、すなわち、多価の陽イオンと塩橋を形成する能力を有する酸性側基、ならびにin vivo条件下で加水分解する側基、たとえば、イミダゾール基、アミノ酸エステル、グリセロールおよびグルコシルを有する。
【0145】
側鎖の加水分解によりポリマーの浸食がもたらされる。加水分解性側鎖の例は、未置換および置換のイミダゾールならびにアミノ結合によってその基がリン原子に結合されているアミノ酸エステル(両方のR基がこの様式で結合しているポリホスファゼンポリマーは、ポリアミノホスファゼンとして知られている)である。ポリイミダゾールホスファゼンでは、ポリホスファゼン主鎖上の「R」基の一部は、環窒素原子によって主鎖中のリンに結合しているイミダゾール環である。他の「R」基は、メチルフェノキシ基またはAllcock他、Macromolecule 10:824 (1977)の科学論文中に示されている他の基などの、加水分解に関与しない有機残基であることができる。ヒドロゲル材料の合成方法およびそのようなヒドロゲルの調製方法は当分野で知られている。
【0146】
それだけには限定されないが、以下のうちの任意のもの、すなわち、(1)適切なpHおよび等張性をもたらす緩衝液;(2)潤滑剤;(3)たとえばアルギネート、寒天および植物ゴムを含めた、細胞を投与部位にまたはその周辺に保持するための粘稠物質;ならびに(4)たとえば、組織の形成もしくはその物理化学的特徴の増強または改変、あるいは細胞の生存、または炎症もしくは拒絶の阻害の支援としてなど、投与部位において所望の効果を生じ得る他の細胞種を含めた他の成分も、配合物中に含めてよい。細胞が部位から離れることを防ぐために、細胞を適切な創傷被覆材によって覆い得る。このような創傷被覆材は当業者として知られている。
【0147】
骨組織パッチの配合
事前に形成したウェル中でMPCまたはそれに由来する子孫を培養または同時培養することにより、事前に決定した厚さおよび体積の組織パッチの製造が可能となる。その結果生じる組織パッチの体積は、ウェルの体積およびウェル中のMPCまたはそれに由来する子孫数に依存する。事前に決定した最適な体積の組織は、前述のパラメータの一方または双方を変更することによって、日常的な実験によって調製し得る。
【0148】
ウェルの細胞接触表面を、MPCまたはそれに由来する子孫が細胞接触表面に接着することを阻止する分子でコーティングし得る。好ましいコーティング試薬には、ケイ素系試薬、すなわちジクロロジメチルシランまたはポリテトラフルオロエチレン系試薬、すなわちテフロンが含まれる。物質をケイ素系試薬、具体的にはジクロロジメチルシランでコーティングする手順は当分野で周知である。たとえば、その開示が本明細書中に参考として組み込まれているSambrook他(1989) "Molecular Cloning A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。細胞がウェルの表面に付着することを阻止する他の生体適合性試薬が本発明の実施に有用であり得ることを理解されたい。
【0149】
あるいは、細胞の付着自体を許容しない柔軟なまたは成形用の生体適合性材料からウェルを鋳造し得る。そのような細胞付着を妨げる好ましい材料には、それだけには限定されないが、アガロース、ガラス、未処理の細胞培養プラスチックおよびポリテトラフルオロエチレン、すなわちテフロンが含まれる。未処理の細胞培養プラスチック、すなわち、静電気的帯電を有する材料で処理していない、またはそれから作製していないプラスチックは市販されており、たとえば、Falcon Labware、Becton-Dickinson、ニュージャージー州Lincoln Parkから購入し得る。しかし、前述の材料は限定することを意図しない。本質的にMPCまたはそれに由来する子孫の付着を妨げる任意の他の柔軟なまたは成形用の生体適合性材料が本発明の実施に有用であり得ることを理解されたい。
【0150】
懸濁させたMPCまたはそれに由来する子孫を事前に形成したウェル中に播種して培養し得る。MPCまたはそれに由来する子孫は、ウェル内の培養中に軟骨形成もしくは骨形成の表現型に分化するように誘導を行うか、またはウェル中に播種する前に分化の誘導を行っていてもよい。培地を約1×105〜1×109個の細胞/ミリリットルの細胞密度まで加えることによって細胞を希釈し得る。
【0151】
細胞は細胞凝集プラグを形成し得る。細胞凝集プラグをウェルから取り出し、組織欠損内に外科的に植え込み得る。未分化MPCまたはそれに由来する子孫がin situで分化して、in vivoで組織を形成し得ることが期待される。
【0152】
骨欠損は、コンピュータ支援断層撮影(CATスキャン);X線検査、磁気共鳴画像法(MRI)、滑液もしくは血清マーカーの解析または当分野で知られている任意の他の手順を用いることによって推定的に同定し得る。哺乳動物における欠損も、関節鏡検査中または関節の切開手術中に、容易に視覚的に同定可能である。欠損の治療は、本明細書中に開示した方法および組成物を用いて、関節鏡検査または切開手術処置中に達成することができる。
【0153】
したがって、欠損が同定された後、欠損を以下のステップ、すなわち(1)事前に決定した部位に本明細書中に記載の方法によって調製した組織パッチを外科的に植え込むステップと、(2)組織パッチが事前に決定した部位内に組み込まれることを許容するステップとによって治療し得る。
【0154】
組織パッチは、最適には、パッチが欠損内に植え込まれた際、植え込まれた組織の端が欠損の端と直接接触するような大きさおよび形状を有する。さらに、組織パッチは外科的処置中に定位置に固定し得る。これは、生分解性縫合糸を用いてパッチを欠損内に外科的に固定することによって、かつ/またはパッチと欠損との界面領域に生体接着剤を塗布することによって、達成することができる。
いくつかの例では、組織パッチを植え込む前に損傷組織を外科的に切除し得る。
【0155】
スキャフォールドを用いたMPCまたはそれに由来する子孫の移植
本発明の細胞性組成物またはその同時培養物を三次元スキャフォールド上もしくはそれ内に播種してin vivoで植え込んでもよく、播種した細胞はここでフレームワーク上に増殖して、患者の細胞と協力して骨組織などの置換組織をin vivoで形成する。
【0156】
たとえば、限定するものではないが、スキャフォールド構造が、(1)その後の分解なしに播種した細胞を支持する;(2)播種時から組織移植片が宿主組織によって再構築されるまでの間、細胞を支持する;(2)播種した細胞が付着し、増殖し、in vitroで自身を支持するために十分な機械的完全性を有する組織構造体へと発達することを可能にし、この時点でスキャフォールドが分解するように、スキャフォールドを設計し得る。スキャフォールド設計の総説は、Hutmacher, J. Biomat. Sci. Polymer Edn., 12(1):107-124 (2001)によって提供されている。
【0157】
本発明のスキャフォールドは、任意の1つあるいは複数の成長因子、細胞、たとえば幹細胞、骨髄細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨裏打ち細胞、もしくはそれらの前駆体、薬物、または、組織形成を刺激するか、他の様式で本発明の実施を増強もしくは改善する上述の他の成分と組み合わせて投与することができる。スキャフォールド上に播種するMPCまたはそれに由来する子孫は、成長因子または薬物を発現するように遺伝子操作されていてもよい。
【0158】
本発明の細胞を用いて新しい組織をin vitroで産生させることができ、その後これを患者の組織の修復、置換もしくは補強を要する部位内に植え込む、移植する、または他の方法で挿入することができる。
【0159】
非限定的な実施形態では、本発明の細胞を用いて三次元組織構築体をin vitroで産生させ、その後これをin vivoで植え込む。三次元組織構築体の産生例としては、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第4,963,489号を参照されたい。たとえば、本発明の細胞を三次元フレームワークもしくはスキャフォールド上に接種または「播種」し、in vitroで増殖または成長させて、in vivoで植え込むことができる生組織を形成し得る。
【0160】
本発明の細胞を培養容器中でコンフルエント未満またはコンフルエントまで自由に増殖させ、培養を止め、三次元フレームワーク上に接種することができる。高濃度の細胞、たとえば約106〜5×107個の細胞/ミリリットルで三次元フレームワークを接種する結果、比較的短い期間内で三次元支持体の確立がもたらされる。
【0161】
本発明で用い得るスキャフォールドの例には、不織マット、多孔性泡沫、または自己集合ペプチドが含まれる。不織マットは、たとえば、商標名VICRYL(Ethicon, Inc.、ニュージャージー州Somerville)の下で販売されている、グリコール酸および乳酸(PGA/PLA)合成吸収性コポリマーからなる繊維を用いて形成し得る。たとえば、米国特許第6,355,699号に記載の凍結乾燥(freeze-drying)などの加工によって形成したまたは凍結乾燥した(lyophilized)ポリ(ε-カプロラクトン)/ポリ(グリコール酸)(PCL/PGA)コポリマーからなる泡沫も、可能なスキャフォールドである。自己集合ペプチド(たとえばRAD16)などのヒドロゲルも用い得る。これらの材料は、しばしば組織の増殖支持体として用いられている。
【0162】
三次元フレームワークは、それだけには限定されないが、リン酸のモノ-、ジ-、トリ-、α-トリ-、β-トリ-、およびテトラ-カルシウム塩、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウムカルシウム、バイオガラス(フロリダ大学、フロリダ州Gainesville)などの生物活性ガラス、ならびにそれらの混合物を含めたセラミック材料から作製し得る。市場には現在利用可能ないくつかの適切な多孔性生体適合性セラミック材料、たとえばSURGIBON(Unilab Surgibone, Inc.、カナダ)、ENDOBON(Merck Biomaterial France、フランス)、CEROS(Mathys, A.G.、スイスBettlach)、およびINTERPORE(Interpore、米国カリフォルニア州Irvine)など、ならびにHEALOS(Orquest, Inc.、カリフォルニア州Mountain View)およびVITOSS、RHAKOSS、CORTOSS(Orthovita、ペンシルバニア州Malvern)などの石灰化コラーゲン骨移植製品が存在する。フレームワークは、天然および/または合成材料の混合物、混和物もしくは複合体であり得る。いくつかの実施形態では、スキャフォールドはケージの形態である。好ましい実施形態では、スキャフォールドをコラーゲンでコーティングする。
【0163】
好ましい実施形態によれば、フレームワークは、生体吸収性材料、たとえば、PGA、PLA、PCLコポリマーもしくは混合物、またはヒアルロン酸から作製する多繊維糸からなることができるフェルトである。糸は、クリンプ加工、切断、梳毛およびニードリングからなる標準織物加工技術を用いてフェルトにする。
【0164】
別の好ましい実施形態では、本発明の細胞を、複合体構造であり得る泡沫スキャフォールド上に播種する。さらに、三次元フレームワークを、耳の外部部分、骨、関節または修復、置き換えもしくは補強する身体内の他の具体的な構造などの有用な形状に成形し得る。
【0165】
別の好ましい実施形態では、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第6,200,606号に記載のように、患者内に植え込むための人工装具を含むフレームワーク上に細胞を播種する。それに記載されているように、様々な臨床的に有用な人工装具が、骨および軟骨の移植手順で使用するために開発されている。(たとえば、Bone Grafts and Bone Substitutions. M. B. Habal & A. H. Reddi編, W. B. Saunders Co., 1992参照)。たとえば、有効な膝および股関節置換デバイスが臨床環境において幅広く使用され続けている。これらのデバイスの多くは、体内で安全に機能する、免疫原性活性の低い様々な無機物質を用いて作製されている。試験かつ証明された合成材料の例には、チタン合金、リン酸カルシウム、セラミックハイドロキシアパタイト、ならびに様々なステンレス鋼およびコバルト-クロム合金が含まれる。これらの材料は構造的な支持をもたらし、その内部で宿主の血管化および細胞遊走が起こることができる足場材料を形成することができる。
【0166】
細胞の付着を増強するために、本発明の細胞を接種する前にフレームワークを処理し得る。たとえば、本発明の細胞を用いた接種の前にナイロンマトリックスを0.1モーラーの酢酸で処理し、ナイロンのコーティングを行うためにポリリシン、PBS、および/またはコラーゲン中でインキュベーションを行うことができる。硫酸を用いてポリスチレンも同様に処理することができる。
【0167】
さらに、細胞の付着または成長および組織の分化を改善するために、フレームワークを血漿でコーティングすることによって、あるいは1つもしくは複数のタンパク質(たとえば、コラーゲン、弾性線維、細網線維)、糖タンパク質、グリコサミノグリカン(たとえば、ヘパリン硫酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸)、細胞マトリックス、ならびに/またはそれだけには限定されないが、とりわけゼラチン、アルギネート、寒天、アガロース、および植物ゴムなどの他の材料を加えることなどによって、三次元フレームワークの外部表面を改変し得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、スキャフォールドは、それを抗血栓性にする材料からなる、またはそのような材料で処理する。このような処理および材料は、内皮成長、遊走、および細胞外基質の堆積も促進ならびに持続させ得る。このような材料および処理の例には、それだけには限定されないが、ラミニンおよびIV型コラーゲンなどの基底膜タンパク質等の天然材料、ePTFEなどの合成材料、ならびにPURSPAN(The Polymer Technology Group, Inc.、カリフォルニア州Berkeley)などのセグメント化ポリウレタンウレアケイ素が含まれる。スキャフォールドを抗血栓性にするために、これらの材料をさらに処理することができる。そのような処理には、ヘパリンなどの抗血栓剤、および血漿コーティングなどの材料の表面帯電を変更する処理が含まれる。
【0169】
いくつかの実施形態では、スキャフォールドの表面に織り目をつける。たとえば、本発明のいくつかの態様では、スキャフォールドに溝および山のパターンを与える。溝は、好ましくは約500ミクロン未満、より好ましくは約100ミクロン未満、最も好ましくは約10ナノメートル〜10ミクロンである。このような「微小溝」により、細胞が表面の溝によって導かれてアラインメントされかつ/または遊走することが可能となる。
【0170】
いくつかの実施形態では、in vivoでの植込みまたはin vitroでの使用前に本発明の細胞が成長する程度を変動させ得るように、培養中にin vivoで見つかる細胞微小環境を再作成することが重要である。さらに、MPCもしくはそれに由来する子孫またはその同時培養物による分化および組織形成を始動するための細胞の接種の前、その間、あるいはそれに次いで、成長因子、軟骨形成分化誘導剤、骨形成誘導剤、ならびに血管形成因子を培地に加え得る。
【0171】
細胞成長およびそれ上の組織産生が増強されるように、または移植片拒絶の危険性が軽減されるように、三次元フレームワークを改変し得る。したがって、それだけには限定されないが、抗炎症剤、免疫抑制剤または成長因子を含めた1つもしくは複数の生物活性化合物をフレームワークに加え得る。
【0172】
細胞外基質または細胞溶解液の治療的使用
本発明の細胞、またはそれから産生させた生組織の植込みの代替方法として、組織の修復、置換、または補強を必要としている対象は、細胞外基質(ECM)もしくはこれらの細胞によって産生された細胞溶解液などの、MPCまたはそれに由来する子孫の成分または産物(特にこれらが遺伝子改変されている場合)を投与することによって利益を得る可能性がある。
【0173】
いくつかの実施形態では、所望量のECMがフレームワーク上に分泌されるように、たとえば本明細書中に記載の三次元スキャフォールド系を用いることによって本発明の細胞をin vitroで培養した後。ECMがフレームワーク上に分泌された後、細胞を除去し得る。ECMは、さらなる使用のため、たとえば注射用調製物として加工し得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、細胞を死滅させ、細胞細片(たとえば細胞膜)をフレームワークから除去する。このプロセスは、いくつかの異なる方法によって実施し得る。たとえば、低温保存なしに生組織を液体窒素中で瞬間冷凍するか、または細胞が浸透圧に応答して破裂するように組織を滅菌した蒸留水に浸すことができる。細胞を死滅させたのち、細胞膜を破壊し、EDTA、CHAPSまたは双性イオン性洗剤などの洗剤で穏やかにすすぐ処理によって細胞細片を除去し得る。洗剤での穏やかなすすぎを用いる利点は、しばしば抗原性の高い膜結合タンパク質をこれが溶解することである。
【0175】
あるいは、組織を酵素的に消化するかつ/または細胞膜を分解する試薬で抽出することができる。そのような酵素の例には、それだけには限定されないが、ヒアルロニダーゼ、ディスパーゼ、プロテアーゼ、ならびにヌクレアーゼ(たとえば、デオキシリボヌクレアーゼおよびリボヌクレアーゼ)が含まれる。洗剤の例には、たとえば、アルキルアリールポリエーテルアルコール(TRITON(商標)X-100)、オクチルフェノキシポリエトキシ-エタノール(Rohm and Haas、ペンシルバニア州Philadelphia)、BRIJ-35、ポリエトキシエタノールラウリルエーテル(Atlas Chemical Co.、カリフォルニア州San Diego)、ポリソルベート20(TWEEN 20(商標))、ポリエトキシエタノールソルビタンモノラウレート(Rohm and Haas)、ポリエチレンラウリルエーテル(Rohm and Haas)などの非イオン性洗剤;ならびに、たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム、硫酸化高級脂肪族アルコール、7〜22個の炭素原子を有する分枝鎖または非分枝鎖のスルホン酸化アルカンおよびスルホン酸化アルキルアレーンなどのイオン性洗剤が含まれる。
【0176】
ECMを含むスキャフォールドを上述のように治療に用い得る。あるいは、ECMをスキャフォールドから収集し得る。ECMの収集は、たとえばスキャフォールドが生分解性であるか非生分解性であるかに応じて、様々な方法によって達成することができる。たとえば、フレームワークが非生分解性である場合は、フレームワークを超音波処理、高圧水流、機械的掻爬、または洗剤もしくは酵素を用いた穏やかな処理、あるいは上述の方法の任意の組合せに供することによって、ECMを除去することができる。
【0177】
フレームワークが生分解性である場合は、ECMは、たとえば、フレームワークを分解させるまたは溶液中に溶解させることによって収集することができる。あるいは、生分解性フレームワークが、それ自体をECMと共に注射することができる材料からなる場合は、フレームワークおよびECMを全部、その後の注射用に加工することができる。あるいは、ECMは、ECMを非生分解性フレームワークから収集するための上述した方法のうちの任意のものによって、生分解性フレームワークから除去することができる。すべての収集プロセスは、本発明の細胞によって産生されたECMまたは細胞溶解液を変性しないように設計されていることが好ましい。
【実施例】
【0178】
以降、本発明の実施形態を以下の非限定的な例を参照として詳述する。
実施例
材料および方法
対象および細胞培養物
骨髄(BM)吸引液を、インフォームドコンセントののち、Royal Adelaide Hospital、南オーストラリア州の倫理員会によって認可された手順に従って健康な成人ボランティア(19〜35歳)の後部腸骨稜から得た。骨髄単核細胞(BMMNC)を以前に記載のように調製した(Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003)。初代BMSSC培養物は、以前に記載のように20%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン、および100μMのL-アスコルビン酸-2-リン酸を添加したα-MEM(最小必須培地)中で確立させた(Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003)。BMSSCクローン細胞系は、増殖、RT-PCR、免疫組織化学、および発生学的研究のための血清充満培地中での継代培養ののち、以下に記載のようにSTRO-1bri/VCAM-1+分別細胞に由来する14日目のコロニーからの限界希釈によって作製した。
【0179】
磁気活性化細胞分別(MACS)
これは、以前に記載されているように行った(Gronthos他、Isolation, Purification and In Vitro Manipulation of Human Bone Marrow Stromal Precursor Cells. In Marrow Stromal Cell Culture. Owen M.およびBeresford J.N.編 Cambridge University Press UK, 第3章, ページ26-42, 1998; GronthosおよびSimmons, Blood 85(4): 929-940, 1995)。手短に述べると、STRO-1上清、抗IgM-ビオチン、ストレプトアビジンマイクロビーズおよび最後にストレプトアビジンFITC(Caltag Laboratories、カリフォルニア州Burlingame)を用いて約1〜3×108個の正常なヒト骨髄単核細胞の逐次的なインキュベーションを行ったのちに、製造者の指示に従ってMini MACS磁気カラム(Miltenyi Biotec Inc.、カリフォルニア州Auburn)上で分離した。
【0180】
蛍光活性化細胞分別(FACS)
STRO-1+MACS単離細胞をストレプトアビジンコンジュゲートFITCで標識し、その後、精製した抗CD106(VCAM-1)抗体6G10もしくは抗CD146(MUC-18)抗体またはアイソタイプ対照1B5(10μg/ml)のいずれかと共に、30分間、氷上でインキュベーションを行い、洗浄し、フィコエリスリン(PE)コンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体(1/50; Southern Biotechnology Associates、アラバマ州Birmingham)と共にさらに20分間、氷上でインキュベーションを行った。FACStarPLUSフローサイトメーター(Becton Dickinson、カリフォルニア州Sunnyvale)を用いて細胞を分別した。STRO-1bri/CD106+またはSTRO-1bri/CD146+細胞を20%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン、アスコルビン酸-2-リン酸(100μM)を添加したα-変法イーグル培地中で培養して、5%のCO2中、37℃の加湿雰囲気中で初代培養を開始させた。
【0181】
間接免疫蛍光を用いた2色のフローサイトメトリー解析
この手順は以前に報告されている(Gronthos他、Isolation, Purification and In vitro Manipulation of Human Bone Marrow Stromal Precursor Cells. In Marrow Stromal Cell Culture. Owen M.およびBeresford J.N.編 Cambridge University Press UK, 第3章, ページ26-42, 1998)。手短に述べると、MPCの初代培養またはMPCに由来する細胞をトリプシン/EDTA消化によって遊離させ、その後、30分間、氷上でインキュベーションを行った。約2×105個の細胞を洗浄し、その後、200μlの一次抗体カクテル中に1時間、氷上で再懸濁させた。一次抗体カクテルは、各チューブ中、飽和濃度のマウスIgMモノクローナル抗体STRO-1およびマウスIgGモノクローナル抗体またはウサギIgG(表1)からなっていた。細胞内抗原と反応性を有する抗体を用いた染色には、細胞をまずPBSで洗浄し、その後、氷上で10分間、70%のエタノールで処理することによって透過処理し、その後、染色前に洗浄した。マウスアイソタイプIgMおよびIgG陰性対照Mabを同一条件下で処理した。一次抗体とのインキュベーションののち、細胞を洗浄し、飽和レベルのヤギ抗マウスIgMμ鎖特異的-FITC(1/50の希釈率)とヤギ抗マウスIgGγ特異的-PE(1/50の希釈率)または抗ウサギIg特異的-PE(1/50の希釈率)(Southern Biotechnology Associates)のどちらかと、最終体積100μlで曝した。45分間、氷上で細胞のインキュベーションを行い、2回洗浄し、その後、FAX FIX(1%(v/v)、2%(w/v)D-グルコース、0.01%のアジ化ナトリウムを添加したPBS)に固定した。その後、細胞をEpics(登録商標)-XL-MCLフローサイトメーター(Beckman Coulter、フロリダ州Hialeah)で解析した。
【0182】
カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)標識
細胞透過性フルオレセイン系色素CFSEを用いて、MPCに由来する細胞の発達中における分裂関連の表現型および機能の変化を研究した。CFSEは細胞の細胞質成分に共有結合して均一な明るい蛍光をもたらし、これは、細胞分裂時に娘細胞に等しく分配される。この技術により、最大8サイクルまでの細胞分裂のフローサイトメトリーによる分解が可能となる。ex vivoで拡大させたMPCに由来する細胞の単細胞懸濁液を1回洗浄し、1mlのPBS/0.1%のBSAに再懸濁させ、2μlの5mMのCFSE(最終10μM)を加えたのち、37℃で10分間、インキュベーションを行った。染色は、5倍体積の氷冷培地α-MEM-10を加えて氷上で5分間インキュベーションを行うことによって停止させた。細胞を培地中で3回洗浄し、その後、1×105の低密度で培養フラスコ(T-25)に植え付けた。様々な時点で、トリプシン-EDTAによって細胞を剥離し、フローサイトメトリー解析によって解析した。
【0183】
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)解析
初代MPCに由来する培養物をトリプシン/EDTA処理によって遊離させ、その後、上述のようにSTRO-1上清で染色した。洗浄後、細胞をフィコエリスリン(PE)コンジュゲートヤギ抗マウスIgM抗体(1/50; Southern Biotechnology Associates、アラバマ州Birmingham)と共に20分間、氷上でインキュベーションを行った。FACStarPLUSフローサイトメーター(Becton Dickinson、カリフォルニア州Sunnyvale)を用いて細胞を分別した。全細胞RNAを2×106個のSTRO-1briまたはSTRO-1dimのどちらかの分別初代細胞、軟骨細胞ペレットおよび他の誘導培養物から調製し、RNAzolB抽出方法(Biotecx Lab. Inc.、テキサス州Houston)を用いて、製造者の提案に従って溶解した。その後、各部分集団から単離したRNAを、First-strand cDNA合成キット(Pharmacia Biotech、スウェーデンUppsala)を用いて調製したcDNA合成の鋳型として用いた。様々な転写物の発現は、以前に記載されている標準プロトコル(Gronthos他、J. Bone and Min. Res. 14:48-57, 1999)を用いて、PCR増幅によって評価した。この研究で用いたプライマー組を表2に示す。増幅後、各反応混合物を1.5%アガロースゲル電気泳動によって解析し、臭化エチジウム染色によって可視化した。RNAの完全性はGAPDHの発現によって評価した。
【0184】
in vitroでのCFU-Fの分化
本発明者らは、10%のFCS、100μMのL-アスコルビン酸-2-リン酸、10-7Mのデキサメタゾンおよび3mMの無機リン酸塩を添加したαMEM中で培養中に、ヒトBM間質細胞がin vitroで石灰化骨基質を発生するように誘導する条件を以前に報告している(Gronthos他、Blood. 84: 4164-4173, 1994)。鉱物の堆積は陽性フォンコッサ染色によって同定した。脂肪生成は、0.5mMのメチルイソブチルメチルキサンチン、0.5μMのヒドロコルチゾン、および60μMのインドメタシンの存在下で、以前に記載のように誘導した(Gimble, J. M. Marrow stromal adipocytes. Marrow stromal cell culture. Owen M.およびBeresford J.N.編 Cambridge: Cambridge University Press UK. 第5章, ページ67-87, 1998)。オイルレッドO染色を用いて脂質を持った脂肪細胞を同定した。軟骨形成の分化は、記載のように10ng/mlのTGF-β3で処理した凝集培養物中で評価した(Pittenger他、Science, 284:143-147, 1999)。
【0185】
骨形成のin vivoアッセイ
2〜3継代目のSTRO-1bri/VCAM-1+細胞に由来する接着細胞をトリプシン処理し、40mgのハイドロキシアパタイト/リン酸三カルシウムセラミック粒子(Zimmer Corporation、インディアナ州Warsaw)と混合し、その後、以前に記載のように2カ月齢のSCIDマウスの背側表面の皮下ポケット内に移植した(Gronthos他、Proceedings of the National Academy of Sciences (USA), 97 (25): 13625-13630, 2000)。これらの手順は、認可された動物プロトコルの規定に従って行った(Adelaide University AEC# M/079/94)。6〜8週間後に植込みを回収し、4%のパラホルムアルデヒドで2日間固定し、その後、さらに10日間、10%のEDTA中で脱灰化したのち、パラフィンに包埋した。組織学的解析には、植込みの5μm切片を調製し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した(Gronthos他、Proceedings of the National Academy of Sciences (USA), 97 (25): 13625-13630, 2000)。
【0186】
神経組織の発達:単層培養物を、神経芽細胞A培地(Invitrogen/GIBCO)+5%のウマ血清、1%のウシ胎児血清、L-グルタミン(2mM)、トランスフェリン(100μg/ml)、インスリン(2μg/ml)、0.5mMのレチノイン酸、脳由来神経栄養因子(10ng/ml)中で増殖させた。
【0187】
脂肪の発達:単層培養物を、10%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン、アスコルビン酸-2-リン酸(100μM)、0.5mMのメチルイソブチルキサンチン、0.5mMのヒドロコルチゾン、60mMのインドメタシンを添加したα-変法イーグル培地(JRH)中で増殖させた。
【0188】
軟骨の発達:ポリプロピレンチューブ中のペレット培養物を、1%のウシ血清アルブミン、トランスフェリン(100μg/ml)、インスリン(2μg/ml)、L-グルタミン(2mM)、アスコルビン酸-2-リン酸(100μM/ml)、デキサメタゾン(10-8M)、およびBMP-7(50ng/ml)、TGFβ3(10ng/ml)を添加したα-変法イーグル培地中で増殖させた。
【0189】
骨格/心筋の発達:単層培養物を、10%のウシ胎児血清、L-グルタミン(2mM)、アスコルビン酸-2-リン酸(100μM/ml)、および5-アザシトシン(5μM/ml)を添加したα-変法イーグル培地中で増殖させた。
【0190】
上皮の発達:単層培養物を、ウシ下垂体抽出物(50μg/ml)、表皮成長因子(10ng/ml)、ヒドロコルチゾン(0.5μg/ml)、インスリン(5μg/ml)を添加したケラチノサイト基底培地(Clontenics)中で増殖させた。
【0191】
骨芽細胞、腱、靱帯または象牙芽細胞の発達:単層培養物を、10%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン、アスコルビン酸-2-リン酸(100μM)、デキサメタゾン(10-7M)およびBMP-2(50ng/ml)を添加したα-変法イーグル培地中で増殖させた。
【0192】
周皮細胞または平滑筋細胞の発達:20,000個のex vivoで培養したMPC/ウェルの培養物を、10%のウシ胎児血清、2mMのL-グルタミン、アスコルビン酸-2-リン酸(100μM)、200lのマトリゲルに懸濁させた血小板由来成長因子-BB(10ng/ml)を添加したα-変法イーグル培地中、48-ウェルプレート中で増殖させた。
【0193】
一次抗体
本研究で用いた一次抗体は以下のとおりであった:STRO-1(マウスIgM[免疫グロブリンM])(Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003)、抗ヒトアルカリホスファターゼ抗体(B4-78、マウスIgG1;Hybridoma Studies Bank、アイオワ大学、Ames)、抗ヒトCXCR4抗体(マウスIgG2b; Chemicon International、カリフォルニア州Temecula)、および抗ヒトアネキシンV抗体(マウスIgG1;Chemicon)を、それぞれ1:2に希釈した組織培養物上清として、または10μg/mLの精製した免疫グロブリンのどちらかとして用いた。本研究で用いたアイソタイプが一致した対照マウスモノクローナル抗体には、1A6.12(IgM)、1B5(IgG1)、および1A6.11(IgG2b)が含まれる(L.K. Ashman教授、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州、ニューキャッスル大学の好意により提供)。
【0194】
BMSSCの精製
これは、本質的に以前に記載のように行った(Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003; GronthosおよびSimmons, Blood. 85: 929-940, 1995)。手短に述べると、ブロッキング緩衝液(1%のヒト血清、1%のウシ血清アルブミン、および5%のウシ胎児血清を添加したハンクス平衡塩類溶液[HBSS])を用いて約1〜3×108個の成人ヒトBMMNCのインキュベーションを行い、その後、STRO-1上清、抗IgM-ビオチン、ストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec、カリフォルニア州Auburn)、および最後にストレプトアビジンフルオレセインイソチオシアネート(FITC; Caltag Laboratories、カリフォルニア州Burlingame)を用いて逐次的なインキュベーションを行ったのちに、製造者の提案に従ってMini磁気活性化細胞分別(MACS)磁気カラム(Miltenyi Biotec)上で分離した。次いで、FACStarフローサイトメーター(Becton Dickinson、カリフォルニア州Sunnyvale)を用いることによって、その高い(STRO-1 bright)または低い(STRO-1 dull)STRO-1発現に基づいて、MACSで単離したSTRO-1+骨髄単核細胞の分別を行った(図1A)。
【0195】
STRO-1/アルカリホスファターゼBMSSC部分集団の単離
ヒトBMSSCの二次培養物を単種細胞懸濁液と同様にトリプシン/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)消化によって調製し、その後、Gronthos他, J Bone Miner Res. 14: 47-56, 1999に記載のように、STRO-1および骨関連抗原アルカリホスファターゼ(AP)、B4-78を同定する抗体と共にインキュベーションを行った。約2×107個の細胞を、STRO-1およびアルカリホスファターゼ(B4-78)に反応性を有する抗体と共に、1時間、氷上でインキュベーションを行った。複製チューブを、対応する単色かつ陰性の対照抗体と共にインキュベーションを行った。洗浄後、試料を二次検出剤としてヤギ抗マウスIgG1-FITCおよびIgM-PE(フィコエリスリン)抗体(Southern Biotechnology Associates、アラバマ州Birmingham)と共に、45分間、氷上でインキュベーションを行った。洗浄後、引き続き4つのSTRO-1/AP BMSSC部分集団に基づいたFACStarフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いた二重分別によって、細胞を純粋になるまで分別した(Gronthos他, J Bone Miner Res. 14: 47-56, 1999; Pan他, Bone 34(1):112-23, 2004;およびAtkins他, J Bone Miner Res. 18(6):1088-98, 2003)。
【0196】
カルシウムフラックスアッセイ
トリプシンで剥離した二次BMSSC培養物の単種細胞懸濁液を、1%のウシ胎児血清(FCS)および1.25mMのCaCl2を添加したHBSS中で、1×106個の細胞/mLの濃度まで再懸濁させた。細胞を、2μMのfura-2-AM(fura-2アセトキシメチルエステル;Molecular Probes、オレゴン州Eugene)と共に30分間、37℃でインキュベーションを行った。細胞を2回洗浄することによって過剰のfura-2-AMを除去し、細胞を1%のFCSおよび1.25mMのCaCl2を含む2mLのHBSSに、1×106個の細胞/mLの最終濃度まで再懸濁させた。分光蛍光光度計(LS55発光分光計; Perkin Elmer、マサチューセッツ州Boston)を用いて、340および380nmの交互する励起ならびに510nmの蛍光発光で、[Ca2+]iを測定した。[Ca2+]iのベースラインレベルを確立したのち、細胞を30ng/mLのSDF-1αで処理した。SDF-1αに応答して安定した[Ca2+]iのピークが達成されたあと、0.1mMのジギトニンを用いてBMSSCの透過処理を行い、エチレングリコール四酢酸(EGTA)を最終濃度5mMまで加えた。以前に記載のように、ジギトニンおよびEGTAの測定値を用いて、較正式を用いて各試料におけるfura 2-AM蛍光に関して[Ca2+]iの較正を行った(Grynkiewicz他, J Biol Chem. 260: 3440-3450, 1985)。
【0197】
コロニー効率アッセイ
MACS/FACSで単離したSTRO-1bright BMMNCを用いてコロニー形成アッセイを行い、その後、以前に記載のように血清除去条件下で5×104個/ウェルの密度で24ウェルプレートに植え付けた(Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003; GronthosおよびSimmons, Blood. 85: 929-940, 1995)。細胞を様々なサイトカインの組合せの存在下で植え付けた。本研究で用いた成長因子には、α-インターフェロン2a(30000IU/mL; F Hoffmann-La Roche、スイス、Basel)、血小板由来成長因子-BB(5ng/mL)、インターロイキン-4(30ng/mL)、および間質由来因子-1(30ng/mL; CytoLab/PeproTech、イスラエル、Rehovot)が含まれていた。培養を14日目に停止し、1%のパラホルムアルデヒド中に0.1%(重量/体積)のトルイジンブルーで染色したのちにCFU-Fの数を数えた。50個を超える細胞の集合体をCFU-F由来コロニーとしてスコア付けした。
【0198】
フローサイトメトリー解析
BMSSC培養物をトリプシン/EDTA消化によって調製し、その後、ブロッキング緩衝液中に30分間再懸濁させた。その後、単種細胞懸濁液を、10μg/mLの濃度の抗CXCR4抗体または1A6.11のどちらかと共に、1時間、氷上でインキュベーションを行った。同様に、高SDF-1発現性BMSSCおよびベクター対照細胞系をトリプシン/EDTA処理によって調製し、ブロッキングし、その後、抗アネキシンV抗体またはアイソタイプが一致した対照抗体、1D4.5のどちらかと共にインキュベーションを行った。洗浄後、細胞を、二次検出試薬であるヤギ抗マウスIgG1-またはIgG2b-FITC-コンジュゲート抗体(1/50; Southern Biotechnology Associates)と共に、45分間、氷上でインキュベーションを行った。洗浄後、Epics-XL-MCLフローサイトメーター(Beckman Coulter、フロリダ州Hialeah)を用いて試料を分析した。
【0199】
RT-PCR解析
RNA STAT-60システム(TEL-TEST、テキサス州Friendswood)を用いて、全RNAを2×104個のSTRO-1bright、STRO-1dull、およびSTRO-1negativeで分別した骨髄単核細胞;培養BMSSC STRO-1/アルカリホスファターゼで分別した部分集団;またはヒト骨肉腫細胞系、MG63から調製した。その後、各部分集団から単離した全RNAを、First-strand cDNA合成キット(Pharmacia Biotech、スウェーデンUppsala)を用いて調製したcDNA合成の鋳型として用いた。様々な転写物の発現は、以前に記載のように標準プロトコルを用いて、PCR増幅によって評価した。本研究で用いた5組のプライマーは以下のとおりであった:SDF-1(順方向、5'-gacccgcgctcgtccgcc-3';逆方向、5'-gctggactcctactgtaaggg-3');CXCR4(順方向、5'-tctggagaaccagcggttac-3';逆方向、5'-gacgccaacatagaccacct-3');GAPDH(順方向、5'-catggagaaggctggggctc-3';逆方向、5'-cactgacacgttggcagtgg-3')。増幅産物は1.5%アガロースゲル電気泳動によって分析し、臭化エチジウム染色によって可視化した。ImageQantソフトウェア(Molecular Dynamics、カリフォルニア州Sunnyvale)を用いて、転写物存在度の半定量分析をGAPDH発現について評価した。
【0200】
形質導入したBMSSC系の産生
レトロウイルス発現構築体を、それぞれXhoIおよびNotI(太字)制限部位を用いて構築したPCR順方向(5'-aataactcgagacccgcgctcgtccgcc-3')および逆方向(5'-aattaagcggccgctggactcctactgtaaggg-3')プライマー組(下線)を用いて増幅した、完全長のヒトSDF-1 cDNAをコードしているレトロウイルスベクターpLNCX2(Clontech Laboratories、カリフォルニア州Palo Alto)で作製した。Fugene-6-試薬(Boehringer Mannheim、ドイツ、Mannheim)を用いてパッケージング細胞系PT67にSDF-1含有構築体またはpLNCX2ベクター単独のどちらかを導入し、その後、800μg/mLのG418(Sigma、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州Castle Hill)を用いて選択した。安定したPT67系由来の感染性粒子を含む収集した上清を用いて、5μg/mLのポリブレン(Sigma)の存在下で培養BMSSCの形質導入を行った。800μg/mLのG418を用いた選択ののち、高レベルのSDF-1αを発現する安定した複数コロニー由来BMSSCおよび対照細胞系を確立させた。標準のSDF-1酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを用いて、製造者の仕様書に従って(R&D Systems、ミネソタ州Minneapolis)、分泌されたSDF-1αの濃度を0.2μmフィルターで濾過した上清から測定した。
【0201】
BMSSC cDNAサブトラクションハイブリダイゼーションライブラリーの構築
予備研究では、「BMSSCの精製」に記載のようにMACS/FACS手順によってSTRO-1dull発現髄細胞(グリコホリン-A+有核赤血球)およびSTRO-1bright発現細胞(CFU-F集団)を単離した。全RNAは、RNA STAT-60システム(TEL-TEST)を用いて、5つの異なる髄試料(2人の男性および3人の女性、19〜32歳)からプールしたSTRO-1brightならびにSTRO-1dull細胞から調製した。第一鎖の合成は、SMART cDNA合成キット(Clontech Laboratories)を用いて行った。生じたmRNA/一本鎖cDNAハイブリッドを、遠距離PCR(Advantage 2 PCRキット;Clontech)によって、最初のRTプロセス中に形成された3'および5'プライム末端における特異的プライマー部位を用いて、製造者の仕様書に従って増幅した。STRO-1brightcDNAのRsaI消化ののち、2つのアリコートを用いて、Clontech PCR-Select cDNAサブトラクションキットを用いて様々な特異的アダプターオリゴヌクレオチドのライゲーションを行った。2回のサブトラクションハイブリダイゼーションを、STRO-1bright(テスター)およびSTRO-1dull(ドライバー)cDNAならびにその逆を用いて、製造者のプロトコルに従って行った。この手順は、STRO-1brightドライバーcDNAに対してハイブリダイズさせたSTRO-1dullテスターcDNAを用いて、逆方向でも行った。
【0202】
BMSSCサブトラクションライブラリーの示差的スクリーニング
STRO-1brightBMSSC集団に独特に発現される遺伝子を同定するために、STRO-1明サブトラクションcDNAをT/Aクローニングベクター(AdvaTAge PCRクローニングキット;Clontech)内にライゲーションさせ、その後、DH5α大腸菌内に形質転換させた。200個の無作為に選択したアンピシリン耐性細菌クローンを、Clontech PCR-Select示差的スクリーニングキットを用いて、製造者の仕様書に従って、PCRによって増幅した。手短に述べると、cDNAを用いて、製造者に推奨されるようにBRL Hybri-dot96ウェル様式の多様真空システムを用いて、複製低密度マイクロアレイフィルター(ζ-プローブGT膜;BioRad、カリフォルニア州Hercules)を構築した。サブトラクションを行ったSTRO-1brightcDNAおよびサブトラクションを行ったSTRO-1dull cDNAを95℃で変性させ、その後、クレノウ酵素(エキソ-;5U)を40分間、37℃で用いて、50μCi(1.85MBq)のα-[32P]dCTP(3000Ci[1.85MBq]/mmol;ICN Radiochemicals、カリフォルニア州Irvine)で標識した。Clontech Express Hybを用いて、DNAプローブを複製フィルターに終夜、72℃でハイブリダイズさせた。フィルターを2×標準クエン酸添加生理食塩水(SSC)/0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で4回、0.2×SSC/0.5%のSDSで2回、68℃で洗浄し、その後、PhosphoImagerを用いてスクリーニングし、ImageQuantソフトウェア(Molecular Dynamics)を用いて分析した。
【0203】
CFU-Fのin vitroでの分化
本発明者らは、10%のFCS、100μMのL-アスコルビン酸-2-リン酸、10-7Mのデキサメタゾン、および3mMの無機リン酸塩を添加したαMEM中で培養中に、ヒトBM間質細胞がin vitroで石灰化骨基質を発生するように誘導する条件を以前に報告している(Gronthos他, Blood. 84: 4164-4173, 1994)。
【0204】
異所性骨形成アッセイ
以前に記載のように、2〜3継代目のSTRO-1bright分別骨髄単核細胞に由来する接着細胞をトリプシン処理し、40mgのハイドロキシアパタイト/リン酸三カルシウムセラミック粒子(Zimmer、インディアナ州Warsaw)と混合し、8週齢の非肥満糖尿病性/重篤混合免疫不全(NOD/SCID)マウスの背側表面上の皮下ポケット内に移植した(Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003)。これらの手順は、認可された動物プロトコルの規定に従って行った(アデレード大学AEC M29/2002号)。8週間後に移植片を回収し、4%のパラホルムアルデヒド中で2日間固定し、その後、さらに10日間、10%のEDTA中で脱灰したのちに、パラフィンに包埋した。それぞれの移植片を2つの小片に切断し、切断表面を下にしてパラフィン包埋した。組織学的解析には、移植片の5μm切片を調製し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、各移植片の中心とどちらかの末端との代表的な長さは約3〜4mmであった。新しい骨形成の量は、12個の組織切片中に存在する全表面積の割合として計算した。新しい骨形成の測定値は、以前に記載のようにScion Imagingソフトウェア(メリーランド州Frederick)を用いて評価した(Shi他Nat Biotechnol. 20: 587-591, 2002)。
【0205】
統計
スチューデントt検定を用いて、示したように対による比較を行った。統計的有意性は0.05未満のPで与えられた。示したように、複数の比較について分散の一方向解析(ANOVA)を用いた。フィッシャーを用いたグループ間の統計的有意性により、0.05未満のPで最小有意差検定が提示された。
【0206】
実施例1:
Stro-1dim培養細胞は分化能がより強く確定しており、一方でStro-1bri細胞は分化能確定がより弱い前駆細胞である
本発明者らは、表現型STRO-1bri/VCAM-1(CD106)+またはSTRO-1bri/MUC-18(CD146)+に基づいて分化多能性の間葉系前駆細胞(MPC)を成人ヒト骨髄単核細胞から精製できることを、以前に報告している(Gronthos他J. Cell Sci 116:1827-1835, 2003; ShiおよびGronthos JBMR 18(4): 696-704, 2003; PCTAU2004/000416号)。MPC集団は、in vitroの定義された培養条件下で容易に拡大することができる(Gronthos他J. Cell Sci 116:1827-1835, 2003)。本発明者らは今回、mRNAレベルおよびタンパク質レベルの両方において、それぞれ逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)およびフローサイトメトリー解析を用いて、ex vivoで拡大させたMPC子孫を様々な細胞系統に関連したマーカーに基づいて特徴付けるデータを提示する。すべての新鮮単離した骨髄MPCはSTRO-1を高レベルで発現するが(Stro-1bri)、細胞の大多数はex vivoでの拡大後にSTRO-1の発現のダウンレギュレーションを行う(Stro-1dim)(Gronthos他J. Cell Sci 116:1827-1835, 2003)。最初の一連の実験では、半定量的RT-PCR解析を用いて、STRO-1dimまたはSTRO-1bri集団によって発現され、蛍光活性化細胞分取によって単離した様々な系統に関連する遺伝子の遺伝子発現プロフィールを検査した(図1A)。ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現を参照として、ImageQantソフトウェアを用いて、それぞれの細胞マーカーの相対的な遺伝子発現を評価した(図1B、C)。さらに、2色フローサイトメトリー解析を用いて、STRO-1抗体と組み合わせたより広範囲の細胞系統関連マーカーのその発現に基づいて、ex vivoで拡大させたMPCのタンパク質発現プロフィールを検査した(図2)。STRO-1dimおよびSTRO-1bri培養細胞の遺伝子ならびにタンパク質発現に基づいた一般的な表現型の要約を表3に示す。データは、ex vivoで拡大させたSTRO-1briMPCが、アンジオポイエチン-1、VCAM-1、SDF-1、IL-1β、TNFα、およびRANKLを含めた血管周囲細胞関連マーカーが示差的により高い発現を示すことを示唆している。逆に、STRO-1dimのex vivoで拡大させた細胞は、ネスチン、GFAP、オステリックス、オステオカルシン、SOX9、GATA-4、レプチン、および平滑筋ミオシン重鎖をより高いレベルで発現した。したがって、ex vivoで拡大させたSTRO-1briMPCは、軟骨芽細胞、骨芽細胞、脂肪芽細胞、上皮細胞、神経前駆体および心筋芽細胞を含めた分化能がより確定した前駆細胞種の表現型特徴を示すSTRO-1dim細胞と比較して、より未熟かつ血管周囲様の表現型を示すと考えられる。STRO-1dimとSTRO-1bri培養細胞とのタンパク質および遺伝子発現プロフィールの比較を表3ならびに4に要約する。
【0207】
実施例2:
STRO-1dimおよびSTRO-1bri培養細胞のin vitroで分化する示差的能力
本発明者らは次に、STRO-1dimとSTRO-1bri培養細胞との遺伝子およびタンパク質発現プロフィールで観察された差異が、複数の細胞系統へと分化するその能力における任意の機能的差異を反映しているかどうかを検査した。ex vivoで拡大させたSTRO-1bri/CD146+に由来する細胞の培養物は、上述のようにそのSTRO-1抗原の発現に基づいたFACSによって単離した。次いで、FACSで単離したSTRO-1dimおよびSTRO-1bri培養細胞を、脂肪(図3)、骨(図4)および軟骨(図5)形成の誘導条件下で植え付けた。すべての場合で、STRO-1bri培養細胞は、STRO-1dim培養細胞と比較した場合に、特定した条件下で脂肪、骨および軟骨を形成する能力がより高いことが示された。これらの実験からのデータは、上記より得た遺伝子およびタンパク質の発現結果を実証しており、STRO-1bri培養細胞は、適切な培養条件下で任意の特定した細胞系統に向かって分化するよう影響を与えることができる、分化能確定がより弱い前駆細胞を高い割合で含む原始集団であり(図3、4、5)、MPCと呼び得ることを明示している。逆に、STRO-1dim培養細胞は様々な系統を表す分化能確定細胞を高い割合で含み、TSCCと呼び得る。Stro-1dim集団は異質性であり、様々な組織種の範囲に個別に分化能確定した細胞を含むことが提案される。
【0208】
実施例3:
STRO-1bri細胞は組織特異的分化能確定細胞の成長の能力をin vitroおよびin vivoで改変することができる
異なる発生学的段階を表す2つの異なるex vivoで拡大させたMPCに由来する細胞集団の同定は、臨床治療のためのStro-lbri細胞に由来する全培養調製物の使用において顕著な意味をもつ。最初の研究は、原始的な、分化能確定がより弱いSTRO-1bri培養MPCがより成熟した、分化能確定したSTRO-1dim培養TSCCの成長に与える影響を検査するように設計した。実験は、単離したSTRO-1bri培養MPCを増加させながら、事前に蛍光タグCFSEで標識したFACSで単離したSTRO-1dim培養TSCCと共に加えるように設計した。図6は、標識されたSTRO-1dim細胞の増殖が未標識STRO-1bri細胞の存在によって成されることを示している。CFSEで標識した細胞が分裂する際、2つの娘細胞は親細胞の蛍光の半分を含む。したがって、娘細胞の様々な世代は比例して減少し続ける蛍光強度を有する蛍光分布として表され、ここで、ヒストグラムの一番右の曲線(垂直線が交わっている)は最初のSTRO-1dim集団の点を表す(図6)。データにより、その増殖速度を増加させるためにより高い割合のSTRO-1dim細胞を刺激することが実証され、5%を超えるSTRO-1bri細胞を加えた後により多くの細胞が少なくとも3〜4回の分裂を行うことが示された。したがって、未分画MPCに由来する細胞の持続可能かつ効率的なex vivo拡大を得るためには、培養物は5%を超えるSTRO-1bri細胞が集団内に存在することを必要ということになる。
【0209】
より原始的な、分化能確定がより弱いSTRO-1bri培養MPCもTSCCの増殖能力にin vivoで影響を与えることができるかどうかを決定するために、さらなる調査を行った。この問題を扱うために2つのin vivoモデルを用いた。第1のモデルでは、左前下行枝(LAD)冠状動脈の結紮を受け、48時間後に生理食塩水、FACSで単離した培養したヒトSTRO-1dimおよびSTRO-1bri細胞ならびにSTRO-1除去骨髄単核細胞の新鮮な吸引液を注射した無胸腺症ヌードラットを用いた(図7)。2週間後、動物を屠殺し、心臓組織を固定して2つのモノクローナル抗体で同時に染色した:1つ目はラットと選択的に反応性を有するがヒトのKi67抗原との反応性は有さず、2つ目は心筋細胞マーカーのトロポニンIと反応性を有する。増殖中のラット心筋細胞の指標である二重に染色された細胞は、免疫ペルオキシダーゼ技術によって検出した。STRO-1briヒト細胞を受ける動物は、生理食塩水またはSTRO-1dimヒト細胞を受ける対照動物と比較して、2.5〜5倍高い数の増殖中のラット心筋細胞を示した(図7)。
【0210】
第2のモデルでは、VEGFを構成的に分泌するラット膠芽細胞腫腫瘍細胞を皮下注射した無胸腺症ヌードラットを利用した。2週間後、ラットに生理食塩水、FACSで単離したヒトSTRO-1dimまたはSTRO-1briヒト細胞のいずれかの腫瘍内注射を与えた(図8)。1週間後、動物を屠殺し、腫瘍組織を固定して2つのモノクローナル抗体で同時に染色した:1つ目は平滑筋細胞によって発現されるα-平滑筋アクチン抗原と反応性を有し、2つ目は血管内皮細胞によって発現されるvWF抗原と反応性を有する。内皮および平滑筋をどちらも含む細動脈ならびに動脈の指標である二重に染色された構造は、免疫ペルオキシダーゼ技術によって検出した。STRO-1briヒト細胞を受ける動物は、生理食塩水またはSTRO-1dimヒト細胞を受ける対照動物と比較して、腫瘍内の細胞注射部位において3.5〜8倍高い数の細動脈および動脈を示した(図8)。ヒト細胞を注射した位置から遠位の部位では差異が見られなかった。
【0211】
実施例4:
STRO-1陽性細胞に由来する細胞培養物中のSTRO-1briMPCの数の増加
STRO-1bright培養MPCがより多くのTSCCの増殖を増大させる能力を実証したのち、本発明者ら次に、様々な成長因子がex vivoで拡大させたSTRO-1briMPCの割合を増加させる効果について検査した(図9)。STRO-1bri/CD146+単離骨髄細胞に由来する確立された培養物を、10%のFCS(A)、または、1×10-8Mの1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D)(B)10ng/mlの血小板由来成長因子(PDGF)(C)、10ng/mlの腫瘍壊死因子-α(TNF-α)(D);10ng/mlのインターロイキン-1β(IL-1β)(E)および30ng/mlの間質由来因子1-α(SDF-1α)(F)を含めた様々な因子、を添加した基底培地中で5日間増殖させ、STRO-1 mAbで染色した。(図9)。これらの因子はSTRO-1briMPCの数の数をin vitroで大きく増強させることが見出された。
【0212】
これらの因子がex vivo拡大ののちにどのようにSTRO-1bri発現細胞の割合を増強させたかの機構を調査するために、方法に記載したように培養したStro-1briをCFSEで標識し、その後、様々な因子に曝した。図10は、方法に記載したようにIL-1βがCFSEで標識したMPCの増殖能力を増加させた代表的な実験を示す。細胞を10ng/mlのIL-1βの存在下で5日間培養し、STRO-1 mAbで染色し、上述のように解析した。IL-1βは、明STRO-1+骨前駆細胞の数を増加させることによってMPCの分裂の数を増強させることが見出された。1,25D、PDGF-BB、TNF-α、IL-1β、およびSDF-1αを用いてMPCを刺激した場合にも同様の結果が得られた。
【0213】
実施例5:
Stro-1bri細胞の増殖の増大はStro-1dim細胞の数も増加させる
様々な因子の存在下でSTRO-1bri培養MPCの割合を増強させる能力は、Stro-1dim細胞数の増加とも相関していた。たとえば、STRO-1bri/Alk Phos+細胞(図10B)は骨芽前細胞に一致する表現型である(Gronthos他、J Bone Miner Res. 14: 47-56, 1999; Pan他、Bone 34(1):112-23, 2004)。したがって、本発明者らは、この表現型の変化も誘導したSTRO-1briMPCが骨形成細胞である骨芽細胞へと分化する能力の増大と相関していたかどうかを検査した。図11は、IL-1βはSTRO-1陽性MPCの増殖を刺激しただけでなく、骨誘導剤であるデキサメタゾンの存在下でその骨形成能力も増強したことを示している。0.01ng/mlの濃度のIL-1βは、未処理の対照培養物のMPC数を136.6±1.2%まで有意に増加させた(図11A)。0.1ng/mlを超える濃度でプラトーな効果が得られた。方法に記載したように、ex vivoで拡大させたMPCの子孫を骨誘導条件の存在下で24ウェルプレートに播種した。細胞を10ng/mlの濃度のIL-1βでも処理し、培養物にIL-1βを含む新鮮な培地を週1回「与えた」。絶対細胞外基質カルシウム濃度を方法に従って決定した。結果により、未処理の細胞と比較して(図11B)IL-1βで処理した細胞において鉱物堆積が増加していたことが示された(図11C)。4週間目および6週間目のどちらにおいても、IL-1βで処理した細胞中のカルシウムレベルは未処理の細胞のそれよりも有意に高かった。
【0214】
図12に示すデータは、IL-1βが増殖およびSTRO-1BriMPCを刺激し、その結果オエトプロジェニターの拡大がもたらされ、一方、二次分化剤であるデキサメタゾンを後に加えることにより、アルカリホスファターゼ(ALP)発現およびSTRO-1発現の損失が有効に誘導されて機能的骨芽細胞の数がin vitroで増強されたことを示唆している。様々な因子が拡大してSTRO-1BriMPC集団を調節することができるという概念をin vivoでさらに試験した。Stro-1briMPCからex vivoで拡大させた半コンフルエントな二次培養物を、ex vivoで拡大させたSTRO-1briMPCの数を増強させることが知られているさらなる因子であるPDGF-BB(10ng/ml)を存在させてまたは存在させずに培養した(図9C参照)。次いで、方法に記載したように、PDGFで誘導した細胞調製物および誘導していない細胞調製物を、免疫無防備状態のマウス内に、ハイドロキシアパタイト/リン酸三カルシウム粒子(HA/TCP)と共に同時移植した。8週間後、収集した移植片の検査により、Scion Imagingによって定量することで(図13A)、PDGF-BBで前処理した培養物(図13C)は、未処理の対照培養物(図13B)と比較して有意に異所性の高い骨形成を示すことが示された。
【0215】
実施例6:
精製ヒトBMSSCは高レベルのSDF-1を発現する
サブトラクションハイブリダイゼーションは、以前は稀な細胞集団において示差的に発現される遺伝子の頻度を増加させるために用いられていた(Xu他, 癌 Res. 60: 1677-1682, 2000; Kingsley他, Dev Growth Differ. 43: 133-143, 2001)。本研究では、以前に記載のMACS/FACS組合せ法を用いて、STRO-1dull(グリコホリン-A+有核赤血球)およびマイナーな画分STRO-1bright発現髄細胞(これにはすべてのコロニー形成BMSSCが含まれる)を単離した(Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003)(図14A)。それぞれの分別したSTRO-1集団について、全RNAを5人の個別の骨髄ドナーから調製してプールした。第一鎖の合成に次いで、STRO-1brightおよびSTRO-1dullcDNAを「材料および方法」に記載のように一連のサブトラクションハイブリダイゼーションステップに供した。STRO-1brightBMSSC集団によって独自に発現される遺伝子を同定するために、STRO-1brightのサブトラクションを行ったcDNAを用いて、T/Aクローニングベクター内にライゲーションしたSTRO-1brightのサブトラクションを行ったcDNAで形質転換させた200個の無作為に選択した細菌クローンを含む、複製低密度マイクロアレイフィルターを構築した。次いで、マイクロアレイを、[32P]dCTPで標識したSTRO-1brightまたはSTRO-1dullのサブトラクションを行ったcDNAのどちらかでプロービングを行った(図14B〜C)。示差的スクリーニングにより合計44個のクローンが同定され、これらはSTRO-1dullおよびSTRO-1bright部分集団の間で高度に示差的に発現されていた。すべての示差的に発現されたクローンのDNA配列決定により、1つのクローンのみが既知の間質細胞マイトジェン、すなわち血小板由来成長因子(PDGF)を表していることが明らかとなった(GronthosおよびSimmons, Blood. 85: 929-940, 1995)。興味深いことに44個のクローンのうち6個が、ケモカインの間質由来因子-1(SDF-1)に対応するDNA挿入物を含むことが判明した。ヒトBMSSCにおけるSDF-1転写物の高い存在度は、新鮮に分別したSTRO-1bright、STRO-1dull、およびSTRO-1negative骨髄部分集団から調製した全RNAの半定量的RT-PCRによって確認された(図14D)。
【0216】
実施例7:
SDF-1はin vitroで未熟な間質集団によって優先的に発現される
本発明者らは次に、SDF-1の発現がin vitroにおいてBMSSCの発生学的段階に関連しているかどうかを検査した。SDF-1の発現レベルは、様々な間質集団において、骨形成分化の確立されたin vitroモデルを用いることによって、STRO-1およびアルカリホスファターゼ(AP)の細胞表面発現に基づいて評価した(Gronthos他, J Bone Miner Res. 14: 47-56, 1999; Stewart他, J Bone Miner Res. 14: 1345-1356, 1999; Pan他, Bone. 34(1):112-23, 2004)。二色FACSを用いて、図15Aに示した分別領域(R1〜R4)に従って様々なBMSSC STRO-1/AP部分画分を分配した。99.9%を超える純度を得るためにそれぞれのSTRO-1/AP部分画分を二重に分別した。次いで、SDF-1発現を検査する半定量的RT-PCRを、それぞれのSTRO-1/AP分別集団から単離した全RNAで行った。解析により、ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して正規化した場合、最も未熟な間質集団STRO-1+/AP-(骨前駆体)、次いでSTRO-1+/AP+(前骨芽細胞)が、最も成熟した細胞集団STRO-1-/AP+(骨芽細胞)およびSTRO-1-/AP-(骨細胞、骨裏打ち細胞)と比較して、SDF-1をより高いレベルで発現したことが明らかとなった(図15B)。
【0217】
平行した実験では、骨形成誘導培地(L-アスコルビン酸-2-リン酸、デキサメタゾン、および無機リン酸塩を添加)を添加したBMSSCの二次培養物は、時間依存的な様式でSDF-1発現の低下を示した(図16A)。データにより、骨形成誘導培地を用いた48時間の刺激ののちに、より低いSDF-1発現レベルがより高い割合の前骨芽細胞様細胞(STRO-1+/AP+)に関連していることが明らかとなった(図16B)。
【0218】
実施例8:
BMSSCはSDF-1受容体、CXCR4を発現する
SDF-1が自己分泌因子として作用できるかどうかを決定するために、RT-PCR解析を用いた予備実験により、BMSSCが実際にSDF-1受容体、CXCR4を発現することが確認された(図17A)。正常な培養BMSSCおよびヒト骨肉腫細胞系MG63のCXCR4発現の検査により、予測された568塩基対のPCR産物および第2のより大きなバンドの様々な発現が明らかとなった。DNA配列解析により、より低いバンドが正常なヒトCXCR4アイソフォームに対応することが確認され、より大きなバンドは以前に報告された選択的スプライシング変異体に対応していた(GuptaおよびPillarisetti, J Immunol. 163: 2368-2372, 1999)。フローサイトメトリー解析によって示されるように、BMSSCは低レベルのCXCR4タンパク質を細胞表面で構成的に発現することも示されている(図17B)。BMSSCによって発現されたCXCR4が機能的に活性を有するかどうかを決定するためにカルシウム流動研究を実施した。FURA-2を負荷したBMSSCに30ng/mLの組換えヒトSDF-1α(rhSDF-1α)を与え、その結果、SDF-1/CXCR4シグナル伝達に特徴的な細胞内カルシウムレベルの迅速かつ頑強な増加がもたらされた(図17C)。
【0219】
実施例9:
SDF-1の過剰発現はBMSSCがin vivoで異所性骨を形成する能力を増強させる
SDF-1が間質細胞の発達においていくらかでも機能的役割を有していたかどうかを決定するために、「材料および方法」に記載のように完全長のヒトSDF-1 cDNAを含むレトロウイルス発現構築体を用いてパッケージング細胞系PT67への導入を行った。その後、感染性粒子を含む収集した上清を用いて高レベルのSDF-1αを発現する安定した複数コロニー由来BMSSC細胞系を産生し、対応する対照細胞系を空のpLNCX2ベクターで形質導入した(図18A)。
【0220】
3つの個別の骨髄吸引液に由来する細胞系を、免疫無防備状態のマウス内に、「材料および方法」に記載のようにハイドロキシアパタイト/リン酸三カルシウム粒子と組み合わせて移植した。収集した移植片からの組織学的切片のScion Imaging解析により、高SDF-1発現性BMSSC系を含む移植片において、ベクター対照と比較して有意に高い面積あたりの異所性骨形成レベル(P<0.05、t検定)が示された(図18C)。
【0221】
観察されたSDF-1媒介性の増強された骨形成能力の潜在的な機構を同定するために平行した研究を行った。驚くべきことに、本発明者らは、高SDF-1発現性BMSCがハイドロキシアパタイトの石灰化した堆積物をin vitroで形成する、ベクター対照細胞系を超える能力において、統計的差異を検出することができなかった(データ示さず)。さらに、本発明者らは、様々な骨関連遺伝子(BMP2、BMP4、CBFA1、オステリックス、オステオカルシン、アルカリホスファターゼ[AP])の発現において、高SDF-1発現性BMSSC系と一致したベクター対照BMSSC系との間に一貫した差異を検出することができなかった(データ示さず)。まとめると、これらのデータは、SDF-1がin vivoで骨形成に間接的な効果を与えたことを示唆している。
【0222】
実施例10:
SDF-1はBMSSCの成長および生存を媒介する
本発明者ら次に、SDF-1の過剰発現が形質導入したBMSSCに有利な成長または生存をもたらし得る可能性を検査した。この概念は、高SDF-1発現性BMSSCが、その成長能力においてBMSSCベクター対照細胞系を超える、中等度であるが顕著ではない増大を示したことを実証する増殖研究によって支持されている(図19A)。さらに、SDF-1を過剰発現するBMSSC系は、以前にin vitroでBMSSCの成長を阻害することが示されている(GronthosおよびSimmons, Blood. 85: 929-940, 1995)炎症性サイトカインIL-4のアポトーシス誘導効果に対してより高い耐性も示し、これはトリパンブルー取込み法によって評価した(図19B)。これらの発見に従って、SDF-1を過剰発現するBMSSCの生培養物では、IL-4を与えた場合に、初期アポトーシスマーカーであるアネキシンVの細胞表面染色の低下も示された(図19C〜D)。
【0223】
次いで、正常なBMSSCの成長に対する外来SDF-1の効果を決定するために比較実験を行った。精製STRO-1陽性骨髄細胞を、最も初期の同定可能な間葉系前駆細胞(CFU-F;線維芽細胞コロニー形成単位)の形成を増強させることが以前に示されている血清除去条件下、血清充満培養に匹敵するレベルのPDGF-BBの存在下で培養した(Gronthos他J Cell Sci. 116: 1827-1835, 2003; GronthosおよびSimmons, Blood. 85: 929-940, 1995)。外来rhSDF-1αは、単独ではコロニー産生を刺激する固有の能力を示さなかったが、PDGF-BBと組み合わせるとCFU-F数の増加が観察された(図20)。さらに、既知の強力なCFU-F阻害剤、α-インターフェロン2aを加えることにより(GronthosおよびSimmons, Blood. 85: 929-940, 1995; Wang他, Am J Hematol. 40: 81-85. 1992)、PDGF-BB誘導性コロニー形成の典型的な減少が実証され、これはSDF-1の存在下で部分的に可逆的であることが示された。SDF-1の存在下における観察された応答は、0.1〜100ng/mLの濃度範囲にわたって30ng/mLで最適であることが判明した(図21)。まとめると、これらのデータは、SDF-1がBMSSCの自己複製および生存能力の促進において役割を果たすことを示唆している。
【0224】
考察
本研究は、ヒト骨髄吸引液から直接単離した最も初期の検出可能なBMSSCが、培養前にSDF-1を高レベルで発現することを初めて実証した。本発明者らは以前に、分化多能性BMSSCが、大きな血管の血管周囲細胞に混じった骨髄微小環境内に局在化していることを報告している(ShiおよびGronthos, J Bone Miner Res. 18: 696-704, 2003)。これらの観察はヒト骨髄におけるSDF-1の発表されている分布パターンに対応しており、ここで、最も高いレベルのSDF-1が動脈周辺領域および骨の毛細血管を含めた血管を取り囲む細胞によって、ならびに初期骨髄造血およびBリンパ球の発達の部位における骨内膜付近のいくつかの骨髄間質細胞によって発現される(Ponomaryov他, J Clin Invest. 106: 1331-1339, 2000; Petit他, Nat Immunol. 3: 687-694, 2002; Salvucci他, Blood 99: 2703-2711, 2002)。重要なことに、骨の表面に位置する成熟骨形成細胞集団、または骨基質内の骨細胞は、in situにおいてSDF-1発現を欠くと考えられる(Ponomaryov他, J Clin Invest. 106: 1331-1339, 2000)。
【0225】
Stewart他(Stewart他, J Bone Miner Res. 14: 1345-1356, 1999)および本発明者らの研究室(Gronthos他, J Bone Miner Res. 1999;14: 47-56, 1999; Pan他, Bone. 34(1):112-23, 2004)による以前の研究により、初期の前骨形成細胞は、間葉幹細胞マーカーSTRO-1を発現するが骨芽細胞関連マーカーアルカリホスファターゼの発現を欠く正常な間質培養物中に存在することが示されている。成熟かつ機能的な骨芽細胞表現型に向かったこれらの前駆細胞集団の進行は、STRO-1発現の損失およびAPの細胞表面発現の獲得に関連している(Gronthos他, J Bone Miner Res. 1999;14: 47-56, 1999; Stewart他, J Bone Miner Res. 14: 1345-1356, 1999)。この骨形成細胞分化のin vitroモデルを用いて、本発明者らは、分化能確定骨形成集団を表す培養BMSSC細胞が、より未熟なSTRO-1+BMSSC画分と比較した場合にSDF-1レベルの低下を示したことを実証した。さらに、BMSSCを骨形成誘導培地で処理したのちにSDF-1発現が有意に減少し、これは、高いSDF-1の発現がより原始的な、前骨形成分化の分化能確定がより弱い段階に関連していることのさらなる証拠を提供している。まとめると、本発明者らのデータは、SDF-1が、SDF-1/CXCR4の相互作用を混乱させるように作用し得る環境的合図に応答して増殖して分化する必要があるまで、その血管周囲の適所内に原始的な分化能未確定のBMSSC集団を局在化させるように作用し得ることを示唆している。
【0226】
SDF-1は正常な造血、炎症、および様々な腫瘍の転移に重要であると考えられているが、BMSSCの成長または分化におけるSDF-1の役割についてはほとんど分かっていない。
【0227】
SDF-1は、その受容体、すなわちGタンパク質結合分子ファミリーに属する膜貫通糖タンパク質であるCXCR4を介してその効果が媒介され、CXCR4は1型ヒト免疫不全ウイルスの主な補助受容体としても作用する(Bleul他, Nature 382: 829-833, 1996; Oberlin他, Nature 382: 833-835, 1996; Ma他, Proc Natl Acad Sci U S A. 95: 9448-9453, 1998)。興味深いことに、本発明者らは、正常な培養BMSSCおよびヒト骨肉腫細胞系MG63のどちらにおいても2つのCXCR4スプライシング変異体を観察した。DNA配列解析により、より小さなスプライシング変異体がエクソン1および2にわたる正常なヒトCXCR4のcDNAに対応することが確認され、その豊富な形態は正常なBMSSC中に見つかる。対照的に、MG63細胞中で非常に豊富であることが判明しているより大きなスプライシング変異体は、交差イントロンから転写されたDNA配列を含めることによって産生された、以前に記載されている選択的スプライシング変異体に対応しており、その結果、さらに9個のアミノ酸が付加されている(Gupta他, J Immunol. 163: 2368-2372, 1999)。組織分布研究により、より小さな転写物は正常組織中に見つかる優勢のCXCR4アイソフォームであり、より大きな転写物は様々な白血病細胞系および癌細胞系において高度に発現されることが実証された(Gupta他, J Immunol. 163: 2368-2372, 1999)。どちらのスプライシング変異体も活性であるが、より大きなCXCR4転写物の機能的有意性は未だ決定されていない。しかし、これは、胚性の発達中にCXCR4スプライシングにおいて起こり得るすべての誤差を補う機構としての、発達におけるSDF-1/CXCR4の重要性に関連している可能性がある。
【0228】
本研究では、本発明者らは、フローサイトメトリー解析およびカルシウム流動研究に示されるように、BMSSCが機能的CXCR4タンパク質を低い細胞表面レベルで構成的に発現したことを実証した。したがって、SDF-1/CXCR4シグナル伝達は、BMSSCの成長および遊走の調節において重要な役割を果たし得る。
【0229】
本研究では、本発明者らは、ex vivoで増殖させたBMSSCの大多数が部分的な骨形成分化を受け始めることも示し、これは、SDF-1発現の低下に関連していた。この成熟は、アポトーシスを誘導する因子に対するBMSSCの感受性を増強させると考えられる。本発明者らの研究により、SDF-1を過剰発現するBMSSC系が、以前にBMSSCの成長をin vitroで阻害することが示されているIL-4のアポトーシス効果に対する保護の増大を示したことが示されている(GronthosおよびSimmons, Blood. 85: 929-940, 1995)。同様の実験により、高SDF-1発現性BMSSC系は、IL-4の存在下で初期アポトーシスの誘導に対してより高い耐性を有することが実証された。
【0230】
本研究により、最も初期の同定可能な間葉系前駆細胞、すなわちCFU-F集団を含む新鮮単離したSTRO-1bright骨髄細胞に対してSDF-1によって与えられる生存および成長の利点が確認された。外来rhSDF-1αは、単独ではコロニー産生を刺激する固有の能力を示さなかったが、PDGF-BBと組み合わせて加えた場合にCFU-F数の増加が観察された。様々なBMSSC集団間の成長速度に対するSDF-1の様々な効果は、新鮮単離した原始BMSSC対より成熟したex vivoで増殖させた間質細胞の発生学的段階の差異が原因であり得る。したがって、PDGFおよびSDF-1は、BMSSCの自己複製および生存能力の促進において相乗作用し得る。
【0231】
本明細書中に含めた文書、行為、材料、デバイス、論文などのすべての考察は、本発明の脈絡を提供する目的だけのものである。これらの事項のうちの任意のもの、もしくはすべては、本出願のそれぞれの特許請求の範囲の優先日の前に存在していたが、従来技術基盤の一部を形成する、または本発明に関連する分野において一般的な知識であるとは容認されるべきでない。
【0232】
幅広く記載した本発明の精神または範囲から逸脱せずに、具体的な実施形態に示すように数々の変形および/または改変を本発明に行い得ることは、当業者には理解されよう。したがって、本実施形態は、すべての観点において、例示的であり制限するものとみなされるべきでない。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉系前駆細胞(MPC)もしくは子孫をSDF-1またはその類似体に曝すことを含む、MPCもしくはそれに由来する子孫の増殖および/または生存を増強させる方法。
【請求項2】
前記MPCがSTRO-1bright、VCAM-1bright、THY-1bright、CD146brightおよびSTRO-2brightからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーについて陽性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MPCが、STRO-1bright、LFA-3、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、P-セレクチン、L-セレクチン、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD18、CD61、β-1インテグリン、6-19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGF-R、FGF-R、レプチン-R、RANKLおよびCD146またはこれらのマーカーの任意の組合せからなる、間葉系前駆細胞に特異的な表面マーカーの群から選択される少なくとも2つのマーカーを保有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記MPCが、CBFA-1、II型コラーゲン、PPARγ2およびグリコホリンAからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーについて陰性である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記MPCが濃縮組成物中にin vitroで存在し、かつ組成物の全細胞の少なくとも1%を構成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記MPCがin situである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記MPCが、骨髄、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、歯、歯髄、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛嚢、腸管、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靱帯、腱および骨格筋からなる群から選択される組織に由来する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記子孫が、肝細胞前駆体、神経制限細胞(neural restricted cell)、心筋、心筋細胞、グルコース応答性インスリン分泌膵臓β細胞、軟骨細胞、象牙芽細胞、象牙質産生軟骨細胞、網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、皮膚細胞、樹状細胞、毛嚢細胞、腎管上皮細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、精巣前駆体、血管内皮細胞、腱細胞、靱帯細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、心筋細胞、周皮細胞、血管細胞、上皮細胞、グリア細胞、神経細胞、星細胞またはオリゴデンドログリア細胞の前駆体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記子孫が骨前駆細胞である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記SDF-1類似体が、CXCR4シグナル伝達を活性化するリガンドである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記SDF-1類似体が、HIV-1コーティングタンパク質gp120、AMD3100およびALX40-4Cからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記MPCまたはそれに由来する子孫も、血小板由来成長因子(PDGF)、幹細胞因子(SCF)、fit3リガンド(FL)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)およびインターロイキン-1β(IL-1β)からなる群から選択される外来刺激因子に曝す、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
MPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝して、前記MPCもしくは子孫の増殖および/または生存を増強させること、ならびに
増殖させた集団を、前記MPCまたはそれに由来する子孫の分化を特異的な組織種に偏らせる条件に供すること
を含む、組織特異的分化能確定細胞集団を発生させる方法。
【請求項14】
前記組織種が、心筋組織、血管組織、骨組織、神経組織および内皮組織からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
単離したMPCまたはそれに由来する子孫およびSDF-1またはその類似体を含む組成物。
【請求項16】
前記組成物の全細胞の少なくとも約0.1%を構成する実質的に精製したMPCまたは子孫を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
SDF-1もしくはその類似体を0.1nM〜10μMの濃度で含む、請求項15または請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
PDGF、SCF、FL、G-CSF、IL-3、IL-6、1,25D、TNF-αおよびIL-1βからなる群から選択される追加の刺激因子を含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
I型コラーゲン、フィブリノーゲン、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、オステオカルシンおよびオステオネクチンまたはそれらの任意の組合せからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項15から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
マトリックスをさらに含む、請求項15から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記マトリックスが吸収性ゼラチン、セルロースまたはコラーゲンである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
スポンジ、ストリップ、パウダー、ゲルまたはウェブの形態にある、請求項15から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
SDF-1もしくはその類似体を過剰発現するように遺伝子改変した、MPCまたはそれに由来する前駆細胞。
【請求項24】
SDF-1をコードしているポリヌクレオチドを導入されている、請求項23に記載のMPCまたはそれに由来する前駆細胞。
【請求項25】
前記SDF-1タンパク質の過剰発現がもたらされるように前記MPCまたはそれに由来する前駆細胞のゲノムを改変する、請求項23に記載のMPCまたはそれに由来する前駆細胞。
【請求項26】
請求項23から25のいずれか一項に記載の遺伝子改変したMPCの集団を含む組成物。
【請求項27】
PDGF、SCF、FL、G-CSF、IL-3、IL-6、1,25D、TNF-αおよびIL-1βからなる群から選択される追加の刺激因子を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
I型コラーゲン、フィブリノーゲン、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、オステオカルシンおよびオステオネクチンまたはそれらの任意の組合せからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項26または請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
マトリックスをさらに含む、請求項26から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記マトリックスが吸収性ゼラチン、セルロースまたはコラーゲンである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
スポンジ、ストリップ、パウダー、ゲルまたはウェブの形態にある、請求項26から30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
対象中のMPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝すことを含む、対象において骨を産生する方法。
【請求項33】
前記SDF-1類似体が、CXCR4シグナル伝達を活性化するリガンドである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記SDF-1類似体が、HIV-1コーティングタンパク質gp120、AMD3100およびALX40-4Cからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象に、血小板由来成長因子(PDGF)、幹細胞因子(SCF)、fit3リガンド(FL)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)およびインターロイキン-1β(IL-1β)からなる群から選択される外来刺激因子を投与することをさらに含む、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象に、I型コラーゲン、フィブリノーゲン、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、オステオカルシンおよびオステオネクチンまたはそれらの任意の組合せからなる群から選択される化合物を投与することをさらに含む、請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象に合成糖質コルチコイドおよび/または骨形態形成タンパク質を投与することをさらに含む、請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記合成糖質コルチコイドがデキサメタゾンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記骨形態形成タンパク質がBMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-6またはBMP-7である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
対象に請求項15から22または26から31のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、対象において骨を産生する方法。
【請求項41】
対象中のMPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝すことを含む、対象において血管組織を産生する方法。
【請求項42】
前記SDF-1類似体が、CXCR4シグナル伝達を活性化するリガンドである、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記SDF-1類似体が、HIV-1コーティングタンパク質gp120、AMD3100およびALX40-4Cからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記対象に、血小板由来成長因子(PDGF)、幹細胞因子(SCF)、fit3リガンド(FL)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)およびインターロイキン-1β(IL-1β)からなる群から選択される外来刺激因子を投与することをさらに含む、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
対象に請求項15から22または26から31のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、対象において血管組織を産生する方法。
【請求項46】
対象中のMPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝すことを含む、対象において心筋または平滑筋を産生する方法。
【請求項47】
前記SDF-1類似体が、CXCR4シグナル伝達を活性化するリガンドである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記SDF-1類似体が、HIV-1コーティングタンパク質gp120、AMD3100およびALX40-4Cからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記対象に、血小板由来成長因子(PDGF)、幹細胞因子(SCF)、fit3リガンド(FL)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)およびインターロイキン-1β(IL-1β)からなる群から選択される外来刺激因子を投与することをさらに含む、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
対象に請求項15から22または26から31のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、対象において心筋または平滑筋を産生する方法。
【請求項51】
MPCもしくはそれに由来する子孫を外来SDF-1またはその類似体に曝して、前記MPCもしくは子孫の増殖および/または生存を増強させること、ならびに
増殖させた集団を、前記MPCの分化を骨前駆細胞に偏らせる条件、または骨前駆細胞の分化を骨に偏らせる条件に供すること
を含む、骨をex vivoで産生する方法。
【請求項52】
前記分化を偏らせる条件が、前記細胞を、FCS、L-アスコルビン酸-2-リン酸、デキサメタゾンおよび無機リン酸塩を添加したαMEM中で培養することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記分化を偏らせる条件が、前記細胞を、I型コラーゲン、フィブリノーゲン、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、オステオカルシンおよびオステオネクチンまたはそれらの任意の組合せからなる群から選択される化合物の存在下で培養することを含む、請求項51に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−99347(P2013−99347A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6269(P2013−6269)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2007−532722(P2007−532722)の分割
【原出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507092274)メソブラスト,インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】