説明

間質性膀胱炎診断用カテーテル

間質性膀胱炎診断用カテーテル1は、電流知覚閾値検査装置4に接続されて間質性膀胱炎を診断する。カテーテル本体11は、軟質可撓材料からなり、膀胱内留置先端区分Aおよび先端区分Aに隣接しかつ基端側にある診断区分Bを有する。心材12は、硬質可撓材料からなり、診断区分までカテーテル本体11内に挿入される。伸縮自在バルーン13は、カテーテル本体11の膀胱内留置先端区分Aの外周に装着される。1対の電極14は、カテーテル本体11の診断区分Bの外周に設けられる。導線15は、心材内に挿入されていて一端が電極14に接続されかつ他端がカテーテル本体11の基端部から外部に導出されて電流知覚閾値検査装置4に接続される。流体供給通路16は、カテーテル本体11内に設けられていて先端がバルーン13の内部に連通し、S基端が注入部17に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、間質性膀胱炎診断用カテーテルに関し、さらに詳しく言えば、間質性膀胱炎診断に用いる電極付きバルーン・カテーテルに関する。
【背景技術】
電極付きバルーン・カテーテルは周知であり、神経因性膀胱炎、尿失禁等の診断または治療のために広く用いられている。しかし、このカテーテルが間質性膀胱炎の診断に用いられた例はない。従来の電極付きバルーン・カテーテルは露出電極が硬く、尿道から膀胱側へ挿入するには適していない。
近年、抹消神経の異常を診断するために開発された電流知覚閾値検査装置(「CPT」(Current Perception Threshold)検査装置)がある。この検査装置は、皮膚に1対の電極を貼り付け、微弱な交流電流を流し、被検者が知覚できる最低レベル電流刺激量を評価する。このCPT検査装置は、治療効果測定(麻酔科)、障害部位測定(形成外科)、糖尿性末梢神経障害の評価(内科)、知覚神経の定量的評価(神経科)、神経障害によるインポテンツと心因性インポテンツの区別診断(泌尿器科)、外傷および知覚の評価(歯科)、薬理効果の定量測定(薬理学)等に広く利用されている。
上記CPT検査装置は、泌尿器科でも用いられているが、体外からの診断であって、間質性膀胱炎の診断には用いられていない。間質性膀胱炎は、最近になってその存在が明らかになってきた疾患である。潜在患者が多いのにもかかわらず、いまだに確定的な診断方法が見出されていない。
間質性膀胱炎は、20−60歳代の女性に多く見られる。その症状は、恥骨上部の痛み、頻尿、尿意切迫感として現れることが多い。典型的な粘膜所見としては、膀胱粘膜に線状に現れる潰瘍である。より軽い症状でも、点出血が膀胱粘膜のかなり広い領域に現れる。一般の炎症は、組織が傷を負って修復するに至るまでに起こる現象である。しかし、間質性膀胱炎では、組織修復が継続する。
間質性膀胱炎は、その病像がいまだ明らかになっていないので、統一的な診断基準が提示されていない。間質性膀胱炎の一般的な診断法としては、膀胱境による内視検査、水圧拡張により膀胱内観察、炎症部組織を外部に取り出して検査する膀胱生検等がある。しかし、いずれの診断法も簡便正確なものとはいえない。
【発明の開示】
間質性膀胱炎の初期の症状は、尿道膀胱の知覚過敏である。従来の簡便な検査方法として、KClを膀胱に注入する方法が広く行われている。しかし、この方法は痛みを誘発し、KCl注入後もその痛みが持続し、低浸襲性検査とは言えない。このKClはC−fiberの充填により減じる間質性膀胱炎に対してより低襲性検査が重要になる。
本発明の目的は、間質性膀胱炎の診断を簡便正確に行うことができかつ被検者に苦痛を与えない間質性膀胱炎診断用カテーテルを提供することにある。
本発明の間質性膀胱炎診断用カテーテルは、電流知覚閾値検査装置に接続されて間質性膀胱炎を診断する。そのカテーテルは、軟質可撓材料からなり、膀胱内留置先端区分および該先端区分に隣接しかつ基端側にある診断区分を有するカテーテル本体と、硬質可撓材料からなり、診断区分までカテーテル本体内に挿入された心材と、カテーテル本体の膀胱内留置先端区分外周に装着された伸縮自在バルーンと、カテーテル本体の診断区分外周に設けられた1対の電極と、心材内に挿入されていて一端が電極に接続されかつ他端がカテーテル本体の基端部から外部に導出されて電流知覚閾値検査装置に接続される導線と、カテーテル本体内に設けられていてバルーンに連通する流体供給通路とからなる。
電極は、カテーテル本体の直径方向に離間して設けられるか、カテーテル本体の軸方向に離間して設けられるか、カテーテル本体の円周方向に連続したリング状電極が直径方向に離間して設けられることが好ましい。
膀胱内留置先端区分に装着されたバルーンは膨張後膀胱内に留置され、カテーテル本体外周上に設けた1対の電極に電流が流される。カテーテルは、その先端からバルーンまでを尿道より挿入されるため、柔らかい構造になっている。カテーテルの電極端から基端までは、電極の接続部分の断線や導線自体の断線を防ぐため、ならびに、カテーテルを膀胱内に確実に挿入可能にするために二重構造になっている(導線が心材の内腔を通るため、通常使用するカテーテル用スタイレットが使用できない。)。
また、使用する電極は粘膜に刺激の少ない可撓牲のある素材が望ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明にもとづく間質性膀胱炎診断用カテーテルの一実施例の概略縦断面図である。
図2は、図1のII−II線から見たカテーテルの横断面図である。
図3は、図1のIII−III線から見たカテーテルの横断面図である。
図4は、図1のIV−IV線から見たカテーテルの横断面図である。
図5は、本発明に係るカテーテルの電極の各種変更例を示す部分平面図である。
図6本発明に係るカテーテルを間質性膀胱炎診断に用いた一例の概略説明図である。
図7は、電流知覚閾値測定装置の表示部に現れた間質性膀胱炎診断結果のグラフであって、(A)は正常値を、(B)は間質性膀胱炎による異常値をそれぞれ表す。
【発明を実施するための最良の形態】
図1−5を参照して本発明の間質性膀胱炎診断用カテーテル1の実施例について説明する。図1に示すように、本発明の間質性膀胱炎診断用カテーテル1は、電流知覚閾値検査装置(CPT装置)4(図6)に接続されて間質性膀胱炎を診断するために使用される。
本発明の間質性膀胱炎診断用カテーテル1は主として、カテーテル本体11、心材12、伸縮自在バルーン13、1対の電極14、導線15、流体供給通路16からなる。
カテーテル本体11は、軟質可撓材料(例えば、シリコンゴム)からなり、膀胱内留置先端区分Aおよび先端区分Aに隣接しかつ基端側にある診断区分Bを有する。心材12は、硬質可撓材料(例えば、テフロン)からなり、診断区分までカテーテル本体11内に挿入される。伸縮自在バルーン13は、カテーテル本体11の膀胱内留置先端区分Aの外周に装着される。
1対の電極14は、カテーテル本体11の診断区分Bの外周に設けられる。導線15は、心材内に挿入されていて一端が電極44に接続されかつ他端がカテーテル本体11の基端部から外部に導出されて電流知覚閾値検査装置4に接続される。
流体供給通路16は、カテーテル本体11内に設けられていて先端がバルーン13の内部に連通し、基端が注入部17に連通する。注入部17からは、流体(例えば、空気、水等)が通路16をかいしてバルーン13に供給されてバルーン13を膨張する。
電極14は、図5に示すように、カテーテル本体11の直径方向に離間して設けられるか(A)、カテーテル本体11の軸方向に離間して設けられるか(B)、カテーテル本体11の円周方向に連続したリング状電極が直径方向に離間して設けられる(C)ことが好ましい。
【実施例】
図6、7を参照して、本発明のカテーテル1を用いた間質性膀胱炎の診断例について説明する。
図6に示すように、カテーテル1を患者の膀胱2内に挿入し、カテーテル1のバルーン13を膨張させ、カテーテル本体11の膀胱留置区分Aを膀胱2内に留置する。このとき、カテーテル本体11の診断区分Bは膀胱2の入口付近の患部に位置する。カテーテル1の基端から延びる導線3を電流知覚閾値検査装置4の入力端子41に接続する。
電流知覚閾値検査装置4からカテーテル1の導線3に所定周波数( Hz)の微弱な交流電流を流す。電流はカテーテル1の電極14から膀胱2の患部に流れる。患者が通電を意識したときの電流レベルが表示部42に表示される。この通電意識レベルの表示結果の一例を図7に示す。(A)図は正常値を、(B)図は間質性膀胱炎による異常値をそれぞれ表す。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、構造簡単で安価なカテーテルによって間質性膀胱炎の診断を簡便正確に行うことができる。しかも、被検者に対しては検査中に苦痛を与えない。本発明のカテーテルは、過敏性大腸症候群(Irritable bowel syndrome)の診断にも有効である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流知覚閾値検査装置に接続されて間質性膀胱炎を診断するためのカテーテルであって、
軟質可撓材料からなり、膀胱内留置先端区分および該先端区分に隣接しかつ基端側にある診断区分を有するカテーテル本体と、
硬質可撓材料からなり、前記診断区分まで前記カテーテル本体内に挿入された心材と、
前記カテーテル本体の膀胱内留置先端区分外周に装着された伸縮自在バルーンと、
前記カテーテル本体の診断区分外周に設けられた1対の電極と、
前記心材内に挿入されていて一端が前記電極に接続されかつ他端が該カテーテル本体の基端部から外部に導出されて前記電流知覚閾値検査装置に接続される導線と、
前記カテーテル本体内に設けられていて前記バルーンに連通する流体供給通路と、
からなる間質性膀胱炎診断用カテーテル。
【請求項2】
前記電極はカテーテル本体の直径方向に離間して設けられている、請求項1に記載の間質性膀胱炎診断用カテーテル。
【請求項3】
前記電極はカテーテル本体の軸方向に離間して設けられている、請求項1に記載の間質性膀胱炎診断用カテーテル。
【請求項4】
前記電極はカテーテル本体の円周方向に連続したリング状電極が直径方向に離間して設けられている、請求項1に記載の間質性膀胱炎診断用カテーテル。

【国際公開番号】WO2004/043260
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【発行日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551180(P2004−551180)
【国際出願番号】PCT/JP2002/011881
【国際出願日】平成14年11月14日(2002.11.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(591129025)株式会社塚田メディカル・リサーチ (8)
【Fターム(参考)】