間質液抽出サンプリングモジュール
【課題】小型で、かつ装着時に不快感を与えることのない間質液抽出サンプリングモジュールを提供する。
【解決手段】サンプリングモジュールはハウジングアセンブリと、ハウジングアセンブリ中に操作可能に設けられた圧縮リングアセンブリとを含む。圧縮リングアセンブリは身体の標的部位を貫通後、標的部位中に存在して間質液を抽出する貫通部材を含む。圧縮リングアセンブリは、また標的部位の第1近隣位置において身体に圧力をかける圧縮リングと、その遠位端部上に配置された接着層を有する遊動リングとを含む。サンプリングモジュールの接着層は標的部位の第2近隣位置における遊動リングの身体への接着取付けを可能とし、サンプリングモジュールの使用中の標的部位の変形に影響を与える。
【解決手段】サンプリングモジュールはハウジングアセンブリと、ハウジングアセンブリ中に操作可能に設けられた圧縮リングアセンブリとを含む。圧縮リングアセンブリは身体の標的部位を貫通後、標的部位中に存在して間質液を抽出する貫通部材を含む。圧縮リングアセンブリは、また標的部位の第1近隣位置において身体に圧力をかける圧縮リングと、その遠位端部上に配置された接着層を有する遊動リングとを含む。サンプリングモジュールの接着層は標的部位の第2近隣位置における遊動リングの身体への接着取付けを可能とし、サンプリングモジュールの使用中の標的部位の変形に影響を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に医療装置及びそれらに関連する方法に関し、詳細には、間質液を抽出する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体液(例えば、血液及び間質液[ISF])中の分析物(例えば、グルコース)を測定するための医療装置に関連して、連続的又は半連続的な測定を促進する装置及び方法の進展に向け、並びにこのような装置及び方法の単純化に向け、取り組まれている。このような装置及び方法の単純化により、自宅又は他の都合の良い場所で、ユーザが自ら分析物を測定できるようになる。
【0003】
血液グルコースの測定において、連続的又は半連続的測定装置及び方法は、血液グルコース濃度傾向に関する意識が高まる点、すなわち、血液グルコース濃度及びユーザの全体的血糖状態に対して食物及び投薬が与える効果が分かる点に、利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際には、連続的及び半連続的測定装置には欠陥がある。例えば、標的部位(例えば、ユーザの表面薄層中の標的部位)から間質液(ISF)サンプルを抽出する間、ISF流速が経時的に低下する場合がある。さらに、連続的及び半連続的測定装置は比較的大型であるため、不便であり、装着時に不快感を伴うという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、身体から間質液(ISF)を抽出するための間質液抽出サンプリングモジュールであって、ハウジングアセンブリと、前記ハウジングアセンブリ内に操作可能に設けられた圧縮リングアセンブリとを含み、前記圧縮リングアセンブリは、前記身体の標的部位を貫通後、前記標的部位中に存在して前記標的部位から間質液を抽出する貫通部材と、前記貫通部材が前記標的部位中に存在している間、前記標的部位の第1近隣位置において前記身体に圧力をかける少なくとも1つの圧縮リングと、少なくとも1つの遊動リングとを含み、前記少なくとも1つの遊動リングは、近位端部と、遠位端部と、前記遊動リングの前記遠位端部上に配置された接着層とを含み、前記接着層は、前記標的部位の第2近隣位置において、前記遊動リングを前記身体へ接着的に取付け、前記サンプリングモジュールの使用中の標的部位の変形に影響を与えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の新規な特徴については、添付の特許請求の範囲中に詳細に記載されている。本発明の特徴及び利点をより良く理解するには、実施形態を示す以下の詳細な説明を参照するとよい。これらの実施形態において、本発明の原理が用いられ、添付図面により示されている。
【0007】
図1、図2及び図3は、本発明の例示的実施形態による、ユーザの身体から間質液(ISF)を抽出するための、サンプリングモジュール100及びそのアセンブリの簡単な斜視図である。図1乃至図3は必ずしも同一縮尺では描画されていない点、留意すべきである。サンプリングモジュール100は、ハウジングアセンブリ102(特に図2を参照)と、ハウジングアセンブリ102内に操作可能に設けられた圧縮リングアセンブリ104(特に図3を参照)とを含む。
【0008】
図2を参照して、ハウジングアセンブリ102は、ロッド110a及び110b、内部Eリング112、ねじ114a、114b及び114c、外部Eリング116、キャップ118(その内部を貫通するキャップ開口部120、第1の穴122及び第2の穴124付き)、カム126(その内部の切り欠き128付き)、環ハウジング130(その内部のチャンネル132付き)、ローラ134並びにねじ136a及び136bを含む。ハウジングアセンブリ102はまた、プレート138(その内部を貫通するプレート開口部140付き)、ブラケット142、ピン144、ねじ146及びねじ148も含む。
【0009】
特に図3を参照して、圧縮リングアセンブリ104は、内部シャフト150、外部シャフト152(シャフトステップ154付き)、スプリングリテーナ156(内部にスプリングリテーナ凹部158付き)、圧力バネ160並びにポール162を含む。圧縮リングアセンブリ104はまた、貫通バネ164(これは、内部シャフト150に対して同心状に配置されている)、貫通部材キャリッジ166(貫通部材168付き、なお、当該貫通部材は図1乃至図3中には図示されず、図6、図7及び図8中には図示される)、圧縮リング170(図1乃至図3中には図示されず、図6、図7及び図8中には図示される)、並びに遊動リング172(遊動リングアーム174a及び174b並びに穴176a及び176b付き)も含む。
【0010】
図4及び図5は、それぞれ、遊動リング172の簡単な底面図及び断面側面図である。遊動リング172は、近位端部178、遠位端部180及び遊動リング開口部182を有する。図4及び図5中に示すように、遊動リング開口部182は、直径D1(すなわち、内部直径)を有し、遊動リング172は、直径D2(すなわち、外部直径)を有する。
【0011】
遊動リング172はまた、遠位端部180上に配置された接着層184も含む。接着層184は、例えば、両面感圧性アクリルベースの接着剤(3M社の製品番号9889として市販されているもの等)で形成し得る。
【0012】
接着層184により、標的部位近隣のユーザの身体へ、遊動リング172を遊動型接着取付けでき、これにより、サンプリングモジュール100使用時の標的部位の変形に影響を与える。例えば、圧縮リング170がユーザの身体に圧力を加えている間、標的部位を張力下に置く(すなわち、遊動リングと緊張状態にある標的部位との間に、標的部位及び当該領域を保持する)ことにより、遊動リングが標的部位の変形に影響を与え得る。本発明の実施形態によるサンプリングモジュールに用いられる遊動リングのこの有利な機能について、以下にさらに説明する。
【0013】
遊動リング172の近位端部は、ハウジングアセンブリ102に「遊動可能に」接続される。より詳細には、遊動リングアーム174a及び174bの最上部位上において、その穴176a及び176bは、ハウジングアセンブリ102のロッド110a及び110bと緩やかにかつ摺動可能に係合するように構成される。しかし、ロッド110a及び110bは、キャップ118の第2の穴124との相互作用を介して、拘束される。そのため、遊動リング172は、自由に移動(すなわち、「遊動」)するが、それは垂直方向であって回転方向ではない。
【0014】
遊動リング172は垂直方向に自由に遊動できるため、標的部位近隣に対し、いかなる下方向圧力も加えないが、遊動リングの質量のみに起因するごくわずかな圧力と、摩擦力によって遊動リングに(それゆえ標的部位に)実質的に伝達され得る他のサンプリングモジュールコンポーネントの質量に起因する圧力とは除かれる。換言すれば、この圧力は、圧縮リングの質量と、遊動リングを介して標的部位近隣に移送されるサンプリングモジュールの質量に関連する圧力とに起因する。よって、遊動リングの「遊動」特性は、サンプリングモジュールが後退状態にある場合に標的部位近隣のユーザの身体にかかる圧力を最小化する点において、有利である。
【0015】
図6は、圧縮リング170及び貫通部材168の一部位の簡単な断面側面図である。本発明の多様な実施形態によるサンプリングモジュールの貫通部材は、例えば、先端が湾曲した25口径のステンレススチール製中空針であればよい。ここで、湾曲した先端の支点は、針先端と針後端との間に配置される。貫通部材は、例えば射出成形樹脂で形成可能である。本発明による貫通部材用に適した針については、米国特許第6,702,791号及び米国出願第10/185,605(US2003/0060784として公開)に記載が有り、本明細書中、これらの文献を参考のために援用する。
【0016】
圧縮リング170は、近位端部186、遠位端部188及びその内部を貫通する圧縮リング開口部190を有する。さらに、圧縮リング開口部190は、圧縮リング170の遠位端部における直径D3(すなわち、内部直径)を有し、圧縮リング170自身の遠位端部の直径はD4(すなわち、外部直径、図6を参照)である。
【0017】
圧縮リング170の直径D3は例えば約4mm〜約12mmであればよく、圧縮リング170の直径D4は例えば約5mm〜約13mmであればよい。直径D4と直径D3との間の差は、例えば約1mm〜約9mmであればよい。遊動リング172の直径D1は例えば約7mm〜約18mmであればよく、直径D2は例えば約33mm〜約50mmであればよい。直径D2と直径D1との間の差は、例えば約15mm〜約43mmであればよい。以下に説明する図7及び図8から明らかなように、遊動リング172は、標的部位に対する第2近隣位置において接着される。この第2近隣位置は、圧縮リングからの圧力が付与される第1近隣位置よりも標的部位から遠位にある。
【0018】
サンプリングモジュール100の作動と、その多様なコンポーネント間の相互作用とについて、以下にさらに詳細に説明する。以下の説明から、本発明の多様な実施形態によるサンプリングモジュールの貫通部材は、ユーザの身体の標的部位(例えば、ユーザの前腕の表面薄層)に貫通した後、標的部位中に存在して当該部位中からISFを抽出するように構成されていることが、明らかとなる。
【0019】
さらに、本発明の多様な実施形態のサンプリングモジュールの圧縮リングは、前記貫通部材が標的部位中に存在している間、標的部位の第1近隣位置のユーザの身体に圧力をかけるように構成されていることも、明らかである。さらに、当業者であれば、従来のコンポーネント(例えば、ねじ及びねじの受け入れ穴)の詳細な説明は、本発明の多様な実施形態が不明瞭とならないよう、本明細書中には記載されない点、認識できるであろう。
【0020】
図7は、使用時におけるユーザの身体(B)に取り付けられた図1のサンプリングモジュール100の簡単な断面図であり、ここで、圧縮リング170及び遊動リング172は後退状態にあり、貫通部材168はユーザの身体の標的部位中に存在する。図8は、使用時にユーザの身体Bに取り付けられたサンプリングモジュール100の簡単な断面図であり、ここで、圧縮リング170及び遊動リング172は展開状態にある。図7及び図8において、ユーザの身体Bが表面薄層B’を含む様子が図示されている。サンプリングモジュール100は、例えばハウジングアセンブリ102のピン144に取り付けられたストラップ又はアームバンド(図中では不図示)を用いて、ユーザの身体Bに取り付けられ得る。
【0021】
サンプリングモジュール100の作動及びサンプリングモジュール100の多様なコンポーネントの相互作用について、図1乃至図8を参照して、以下でさらに詳細に説明する。ハウジングアセンブリ102のカム126は、環ハウジング130の周囲に摺動可能にかつ同心状に配置される。さらに、カム126の切り欠き128は、ローラ134と操作可能に相互作用するように構成(すなわち、「鍵掛け」)されている。環ハウジング130は、ねじ146を介してプレート138に取り付けられる。さらに、環ハウジング130のチャンネル132は、ローラ134の垂直移動を提供する。
【0022】
チャンネル132及び切り欠き128は、カム126が時計回り方向に回転すると、ローラ134が垂直方向上方に移動(図1乃至図3、図7及び図8の斜視図中)し、かつ、カム126が反時計回り方向に回転すると、ローラ134が垂直方向下方に移動するように、作動する。カム126は、任意の適切な手段により、例えばモータ(図示せず)により、回転し得る。ローラ134は、ねじ136a及び136bと係合するように構成される。さらに、ねじ136aは、スプリングリテーナ156のスプリングリテーナ凹部158内に拘束される。この構成により、スプリングリテーナ156は、カム126が時計回り方向に回転すると垂直方向上方に移動し、カム126が反時計回りに回転すると垂直方向下方に移動する。以下でさらに詳細に説明するよう、スプリングリテーナ156の移動は、サンプリングモジュールを(それゆえ圧縮リング170を)後退状態又は展開状態にするために用いられる。サンプリングモジュールの対向する側部上にある2つのローラ134を用いることで、サンプリングモジュールを横切る力の均等化と、サンプリングモジュールコンポーネントの不慮の傾斜の回避とを容易にできる。
【0023】
ハウジングアセンブリ102のキャップ118は、概して円板形状であり、環ハウジング130上に配置され、かつ、ねじ114a及び114bによって環ハウジング130に拘束される。キャップ118のキャップ開口部120の直径は、十分に大きく、外部シャフト152の一部位はその内部を貫通できる。ポール162は、圧力バネ160を誘導する。各ポール162の最上部位は、キャップ118の第1の穴122に固定的に取り付けられる。
【0024】
圧力バネ160は、スプリングリテーナ156に対してほぼ一定の力を及ぼすように構成される。さらに、圧力バネ160は、サンプリングモジュール100の使用時におけるバネ圧縮長さの範囲にわたって比較的一定の力を及ぼすように構成され得る。例えば、圧力バネ160は、約32mm(非圧縮時)〜約12mm(圧縮時)の範囲の圧縮長さにわたって、約2N〜約10Nの一定の力を付与し得る。
【0025】
スプリングリテーナ156は、外部シャフト152と摺動可能に係合する(例えば、図3を参照)。スプリングリテーナ156を、外部シャフト152のシャフトステップ154に到達するまで、下方方向に押圧することができる。スプリングリテーナ156がシャフトステップ154に到達すると、スプリングリテーナ156をさらに下方方向に押圧した場合、外部シャフト152も下方方向に移動することになる。
【0026】
内部シャフト150は、外部シャフト152と同心状にかつ摺動可能に係合する(例えば、図3を参照)。貫通部材キャリッジ166は、内部シャフト150の遠位端部に取り付けられる(図3を参照)。貫通バネ164は、内部シャフト150上に同心状に取り付けられ、これにより、内部シャフト150を下方方向に降下できる。外部シャフト152及び貫通部材キャリッジ166の存在により、貫通バネ164が内部シャフト150上に保持される。貫通部材キャリッジ166、内部シャフト150及び貫通バネ164の稼動可能な相互作用により、貫通部材168は、例えば約3m/s〜約10m/sの範囲の速度で、標的部位に向かって下ろすことができる。しかし、遊動リング172(接着層184付き)は、(本開示中で記載するような)緊張状態の標的部位を保持するように機能するため、これにより、標的部位の変形を低減し、貫通部材168は、標的部位を制御深さまで容易に貫通し、その際、このような遊動リングを含まないサンプリングモジュールと比較して、ユーザに対する不快感を低減させる。本開示により、当業者であれば、貫通部材168の下降開始のために多様な従来のトリガ機構を使用可能であることが認識できるであろう。
【0027】
圧縮リング170は、外部シャフト152に取り付けられ(図7及び図8を参照)、よって、カム126の回転に対応するスプリングリテーナ156の移動により、後退状態又は展開状態にされる。圧縮リング170は、任意の適切な手段(例えば、摩擦係合)により、外部シャフト152に取り付けることができる。当業者であれば、カム126、スプリングリテーナ156及び外部シャフト152は、圧縮リング後退機構及び展開機構として構成されることを認識するであろう。しかしながら、同一目的のために他の適切な機械的アセンブリも用い得ることも、当業者であれば認識できるであろう。
【0028】
サンプリングモジュール100は、ユーザの身体(B)(例えば、ユーザの前腕)へ取り付けられるように構成される。このような構成は、ブラケット142及びねじ148によってプレート138に取り付けられたピン144(図2を参照)を含む。ユーザの身体にサンプリングモジュール100を確実かつ除去可能な様態で取り付け得るように、剛性又は弾性のアームバンド(図示せず)がピン144に取り付けられる。
【0029】
サンプリングモジュール100が後退状態にある場合(図7を参照)、圧縮リング170は、貫通部材168が下降し標的部位に貫通している際も、標的部位近隣のユーザの身体(すなわち、第1近隣位置)に対して実質的にゼロの圧力を与える。カム126が時計回りに回転し、圧縮リング170は後退状態になり、これにより、ローラ134及びスプリングリテーナ156が上昇する。この後退状態において、ローラ134は、カム126の切り欠き128内のロック位置にある。ローラ134がこのようなロック位置に来るように、カム126が時計回りに回転すると、圧力バネ160は、圧縮リング170にいかなる力も加えない。この後退状態において、スプリングリテーナ156は、ハウジングアセンブリ102内の最上位置にあり、これにより、圧力バネ160は完全圧縮される。このような圧力バネ160の圧縮により、圧力バネ160がシャフトステップ154上に下方に押圧されるのが回避される。
【0030】
後退状態において、圧縮リングによって標的部位近隣にかかる圧力のみが、圧縮リングの質量及び関連したサンプリングモジュールのコンポーネント(例えば、内部シャフト150及び外部シャフト152)からの質量にのみ関連するように(まとめて実質的にゼロの圧力と称される)、圧縮リング170はハウジングアセンブリ102に遊動可能に取り付けられる。換言すれば、後退状態において圧縮リングがかける圧力は、圧縮リングアセンブリ及びハウジングアセンブリの質量のみに関連する。さらに、遊動リング172は、その遊動特性に起因する標的部位近隣にいかなる圧力も加えない(遊動リングの質量に起因するごくわずかな圧力と、遊動リングを通じて摩擦によって効果的に伝達される他のサンプリングコンポーネントの質量からの圧力とは除かれる)。よって、後退状態において、標的部位近隣のユーザの身体に最小圧力のみがかかり、これにより、サンプリングモジュールが後退状態にある際の標的部位及び近隣の回復が最大化される。このような回復は、分析物判定に適した流速(FR)でISFサンプルを成功裏に抽出することが可能な期間を最大化する点、及び分析物ISF濃度と分析物血液濃度との間のずれを軽減する点において有利であることが分かっている。
【0031】
サンプリングモジュール100が展開状態にある場合(図8を参照)、貫通部材168は、あらかじめ下降し、標的部位を貫通し、標的部位中に存在する。貫通部材168は、例えば、標的部位表面の下側(例えば、ユーザの標的部位表面薄層の表面の下側)の約1.5mm〜3mmにおける貫通深さで存在し得る。所望ならば、貫通部材168は、図8中に示す展開状態中に圧縮リング170を最初に配置する際に同時に下降させてもよい。
【0032】
サンプリングモジュール100が展開状態にある場合(再度図8を参照)、圧縮リング170は、その第1近隣位置のISFに加圧する機能を有する、標的部位の第1近隣位置の圧力をかける。圧縮リング170によって誘発される皮下圧力勾配は、貫通部材168内を流れるISFの流れ及びISF(例えば、グルコース)中の分析物を判定するための分析モジュール(図示せず)へのISFの流れを発生させる。ISFの抽出のための圧縮リングの使用に関するさらなる詳細については、本明細書中に記載の接着層及び展開/後退機構を持つ遊動圧縮リングはないものの、米国特許出願第10/652,464号(US2004/0253736として公開)、米国特許出願第10/653,023号(US2004/0249253として公開)及び米国特許出願第10/861,749号(US2004/0249254として公開)に記載されている。本明細書中、同文書全体を参考のため援用する。
【0033】
サンプリングモジュール100が展開状態にある際、貫通部材中を流れるISF流速は、圧縮リング170の存在にもかかわらず、標的部位近隣のISFの減少及び/又は標的部位の弛緩に起因して、経時的に低減する可能性が有る。しかし、標的部位の第2近隣位置において接着した遊動リング172の存在(例えば図8を参照)により、標的部位の弛緩は低減し、ISF流速の有害な低減は最小限となる。さらに、ISF流速低減の可能性は、図8の展開状態と図7の後退状態との間でサンプリングモジュール100を振動させることにより、最小限にできる。
【0034】
展開状態において、圧縮リング170によって標的部位の第1近隣位置にかかる圧力は、例えば、約6.895kPa(1psi)〜約1034.21kPa(150psi)(psi、ユーザの身体と接触している圧縮リング54の面積当たりの力として計算)の範囲であればよく、より典型的には、約206.84kPa(30psi)〜約482.63kPa(70psi)の範囲であればよい。この点について、およそ344.74kPa(50psi)の圧力が、ユーザの痛み/不快感を最小限にしつつ適切なISF流れを得る点において有益であることが分かっている。
【0035】
図8の展開状態において、カム126は、可能な範囲まで反時計回りに回転し、これにより、ローラ134は、切り欠き128の別のロック位置と固定的かつ可逆的に係合する。このカム126の反時計回り回転による効果とは、カム126が上方移動して、カム126とプレート138との間の寸法D5のすき間(図8を参照)が生じることである。カム126がプレート138から離れると、圧力バネ160は、圧縮リング170に(上述した様式で)力を及ぼす。
【0036】
後退状態において、上述したカム126とプレート138とのすき間の寸法はゼロに近づき(図7を参照)、外部Eリング116はキャップ118と接触する。外部Eリング116は、外部シャフト152に取り付けられ、外部シャフト152の最大下方移動を限定する働きをする。外部Eリング116がキャップ118によって拘束されるためである。
【0037】
図7と図8との比較から明らかなように、圧縮リング170の後退状態から展開状態への移動にともない、遊動リング172は、基本的に圧縮リング170と共に移動する。
【0038】
当業者であれば、図1乃至図8に関連する説明を通知されれば、別の実施形態によるユーザの身体から間質液(ISF)を抽出するためのサンプリングモジュールは、一般的に、ハウジングアセンブリ及び上記ハウジングアセンブリ中に稼動可能に含まれる圧縮リングアセンブリを含んでもよいことを認識する。このような実施形態の圧縮リングアセンブリは、ユーザの身体の標的部位を貫通した後、標的部位中に存在してそこからISFを抽出するように構成された貫通部材(例えば、針)を含む。圧縮リングアセンブリはまた、標的部位の第1近隣位置中のユーザの身体に圧力をかけるように構成された圧縮リングと、遠位端部上に配置された接着層を備えた遊動リングとを含む。このようなサンプリングモジュールの接着層により、標的部位の第2近隣位置中のユーザの身体への遊動リングの接着取付けが可能となり、これにより、サンプリングモジュールの使用中における標的部位の変形に影響を与える。
【0039】
本発明の実施形態によるサンプリングモジュールは、いくつかの利点を有する。第1に、接着層を備えた遊動リングの存在により、遊動リングによる加圧時の標的部位の変形において、有利な制御(すなわち、有利な影響)が得られる。遊動リングは、垂直方向の動きに対して「遊動」するため、遊動リングによって標的部位近隣にかかる下方圧力の偏向が無くなる。しかし、遊動リングの接着層は、遊動リングをユーザの身体上に保持し、これにより、圧縮リングが圧力をかけている間、標的部位を張力下に配置する。この張力は、圧縮リングの必要な移動距離を有利に短縮させ、よって、サンプリングモジュールのサイズを縮小させる。
【0040】
図9乃至図11は、本発明の多様な実施形態において用いられる接着層を備えた遊動圧縮リングの利点を簡単に示す。
【0041】
図9は、ISFを抽出するためのサンプリングモジュール200の簡単な断面図である。このサンプリングモジュール200は、後退状態において遊動リングを含まず、ユーザの身体Bに取り付けられる。サンプリングモジュール200は、ハウジングアセンブリ202(接着層204付き)、バネ212(図10に図示)、圧縮リング208、バイアス部材207及び貫通部材210を含む。サンプリングモジュール200は、接着層204及びアームバンド(図示せず)を用いて、ユーザの身体B(すなわち、ユーザの表面薄層)に固定される。圧縮リング208は後退状態にあるものの、後退状態にあるにもかかわらず圧縮リング208が圧力をかけるにつれ、ユーザの身体(B’’)の一部位が変形する。限定されること無しに、ハウジングアセンブリ202自身が圧縮リング208からの距離D9においてユーザの身体に圧力をかけ、これにより、ユーザの身体の変形が発生し、ISF抽出速度に影響が出る、と仮定される。
【0042】
図10は、図9のサンプリングモジュール200の簡単な断面図である。ここで、サンプリングモジュール200は展開状態にあり、サンプリングモジュール200のバネ212により、圧縮リング208はユーザの身体Bに圧力をかけ、これにより、ユーザの身体Bを比較的大きな距離D6だけ変形させる。サンプリングモジュール200を展開状態にするため、バイアス部材207は除去され、これによりバネ212が圧縮リング208上に下方力を及ぼす。圧縮リング208による下方力は、ハウジングアセンブリ202による対向する上方力で相殺される。ユーザの身体Bが変形すると、圧縮リング208は比較的長い距離を移動し、よって、サンプリングモジュール200のサイズは比較的大きくなる(すなわち、図10の高さH1)。しかし、ユーザの身体Bの変形は、距離D9を比較的短く(例えば、約2mm未満)することにより、最小限にし得る。
【0043】
上記議論並びに図9及び図10に基づき、本発明の実施形態において用いられる遊動リングの無いサンプリングモジュールでは、後退状態における不慮の加圧及び展開状態におけるユーザの身体の過大な変形という問題を被り得る。さらに、このような過大変形によって、ISF抽出速度が経時的に低下し得る。
【0044】
図11は、本発明の別の例示的実施形態による、ISF抽出のためのサンプリングモジュール300の簡単な断面図である。ここで、サンプリングモジュール300は、ユーザの身体Bにおける展開状態にある。サンプリングモジュール300は、ハウジングアセンブリ302(ハウジングアセンブリ接着層付き、図示せず)と、圧縮リング304と、遊動リング306(接着層308付き)と、貫通部材310と、バネ312とを含む。図11に示す実施形態において、遊動リング306及び接着層308は、圧縮リング304の加圧により(貫通部材310が貫通した)標的部位近隣において、ユーザの身体を緊張状態に保持する(すなわち、ユーザの身体中に張力を生じさせる)働きを持つ。この張力は、圧縮リング304による標的部位近隣への加圧を可能にしつつ、圧縮リングの移動距離(図11中の距離D7)を制限する。
【0045】
本発明によるサンプリングモジュールにおける、圧縮リングの移動距離及びサンプリングモジュールのサイズ(すなわち、高さ)の低減は、圧縮リングのかける圧力並びにサンプリングモジュールの他の寸法及び特性による。しかし、各バネ212及び312(図10及び図11を参照)が同一の力定数及び圧縮率特性を持つ場合、圧縮リング208は、圧縮リング304の移動距離である距離D7よりも長い距離D6を移動しなければならない。そのため、接着層308を持つ遊動リング306により、圧縮リング304が、移動距離をより小さくかつユーザの身体の変形をより小さくしつつ、効率的に加圧できる。これに関連して、高さH2は高さH1よりも小さくでき、その結果、サンプリングモジュールのサイズが小さくなり、使用時の不快感も減る。例えば、H1を20mm〜40mmの範囲、H2を10mm〜15mmの範囲とし得る。
【0046】
図12は、本発明の例示的実施形態によるユーザから間質液を抽出するための方法400における段階を示すフロー図である。方法400は、ステップ410に説明されるような標的部位(例えば、上述したような第2近隣位置)近隣のユーザの身体にサンプリングモジュールの遊動リングを接着的に取り付けるステップを含む。このように取り付けられるサンプリングモジュールは、本明細書中に記載される本発明による任意のサンプリングモジュールでよい。
【0047】
その後、ステップ420において、ユーザに対するユーザの身体から間質液を抽出するためのサンプリングモジュールは、遊動リングに取り付けられ、ユーザの身体に取り付けられる。このサンプリングモジュールを、例えば遊動リング周囲に同心状に配置されるように、取り付けることが出来る。必要に応じて、サンプリングモジュールに、サンプリングモジュール100について上述したような、遊動リングをサンプリングモジュールに摺動可能に固定するための蓋(rids)を設けてもよい。
【0048】
その後、ステップ430に説明されるように、ユーザの身体の標的部位は、サンプリングモジュールの貫通部材で貫通される。その後、標的部位の別の近隣位置(例えば、上述した第1近隣位置)に、サンプリングモジュールの圧縮リングにより圧力がかかる。その後、サンプリングモジュールの貫通部材を介して、標的部位からISFが抽出される(ステップ440及びステップ450を参照)。
【0049】
ステップ410乃至ステップ450が達成される例示的機構について、図1乃至図11を参照しながら上述してきた。例えば、圧縮リングは、上記展開状態への配置により、圧力をかけ得る。さらに及び所望ならば、サンプリングモジュールを展開状態と後退状態との間で長時間(例えば、8時間以上)反復させて、ISFの半連続的抽出を容易化してもよい。展開状態を例えば5分間行い、後退状態を例えば10分間行ってよい。このような継続時間は、展開状態を少なくとも8時間行っている間に有利なISF抽出速度である50nL/分が得られるように、決定される。
【0050】
本発明を実施する際、本明細書中に記載の本発明の実施形態に対する多様な代替例を用い得ることが理解されるであろう。特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、これらの請求項及びその均等の範囲にある方法及び構造は、これによって網羅されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の例示的実施形態による間質液(ISF)を抽出するためのサンプリングモジュールの簡単な斜視図である。
【図2】図1のサンプリングモジュールのハウジングアセンブリの簡単な分解斜視図である。
【図3】図1のサンプリングモジュールの圧縮リングアセンブリの簡単な分解斜視図である。
【図4】図1のサンプリングモジュールの遊動リングの簡単な底面図である。
【図5】図4の線A−Aで取られた図4の遊動リングの簡単な断面側面図である。
【図6】図1のサンプリングモジュールの圧縮リングの簡単な断面側面図である。
【図7】図1のサンプリングモジュールが使用中にユーザの身体に取り付けられている様子の簡単な断面図であり、その圧縮リング及び遊動リングは後退状態にある。
【図8】図1のサンプリングモジュールが使用中にユーザの身体に取り付けられている様子の簡単な断面図であり、その圧縮リング及び遊動リングは展開状態にある。
【図9】ISFを抽出するためのサンプリングモジュールの簡単な断面図であり、このサンプリングモジュールは、後退状態にある遊動リングを含まない。
【図10】ISFを抽出するためのサンプリングモジュールの簡単な断面図であり、このサンプリングモジュールは、展開状態にある遊動リングを含まない。
【図11】本発明の別の例示的実施形態による、ISFを抽出するためのサンプリングモジュールの簡単な断面図であり、このサンプリングモジュールは、展開状態にある。
【図12】本発明の一例示的実施形態による間質液抽出プロセスにおける段階を示すフロー図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に医療装置及びそれらに関連する方法に関し、詳細には、間質液を抽出する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体液(例えば、血液及び間質液[ISF])中の分析物(例えば、グルコース)を測定するための医療装置に関連して、連続的又は半連続的な測定を促進する装置及び方法の進展に向け、並びにこのような装置及び方法の単純化に向け、取り組まれている。このような装置及び方法の単純化により、自宅又は他の都合の良い場所で、ユーザが自ら分析物を測定できるようになる。
【0003】
血液グルコースの測定において、連続的又は半連続的測定装置及び方法は、血液グルコース濃度傾向に関する意識が高まる点、すなわち、血液グルコース濃度及びユーザの全体的血糖状態に対して食物及び投薬が与える効果が分かる点に、利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際には、連続的及び半連続的測定装置には欠陥がある。例えば、標的部位(例えば、ユーザの表面薄層中の標的部位)から間質液(ISF)サンプルを抽出する間、ISF流速が経時的に低下する場合がある。さらに、連続的及び半連続的測定装置は比較的大型であるため、不便であり、装着時に不快感を伴うという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、身体から間質液(ISF)を抽出するための間質液抽出サンプリングモジュールであって、ハウジングアセンブリと、前記ハウジングアセンブリ内に操作可能に設けられた圧縮リングアセンブリとを含み、前記圧縮リングアセンブリは、前記身体の標的部位を貫通後、前記標的部位中に存在して前記標的部位から間質液を抽出する貫通部材と、前記貫通部材が前記標的部位中に存在している間、前記標的部位の第1近隣位置において前記身体に圧力をかける少なくとも1つの圧縮リングと、少なくとも1つの遊動リングとを含み、前記少なくとも1つの遊動リングは、近位端部と、遠位端部と、前記遊動リングの前記遠位端部上に配置された接着層とを含み、前記接着層は、前記標的部位の第2近隣位置において、前記遊動リングを前記身体へ接着的に取付け、前記サンプリングモジュールの使用中の標的部位の変形に影響を与えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の新規な特徴については、添付の特許請求の範囲中に詳細に記載されている。本発明の特徴及び利点をより良く理解するには、実施形態を示す以下の詳細な説明を参照するとよい。これらの実施形態において、本発明の原理が用いられ、添付図面により示されている。
【0007】
図1、図2及び図3は、本発明の例示的実施形態による、ユーザの身体から間質液(ISF)を抽出するための、サンプリングモジュール100及びそのアセンブリの簡単な斜視図である。図1乃至図3は必ずしも同一縮尺では描画されていない点、留意すべきである。サンプリングモジュール100は、ハウジングアセンブリ102(特に図2を参照)と、ハウジングアセンブリ102内に操作可能に設けられた圧縮リングアセンブリ104(特に図3を参照)とを含む。
【0008】
図2を参照して、ハウジングアセンブリ102は、ロッド110a及び110b、内部Eリング112、ねじ114a、114b及び114c、外部Eリング116、キャップ118(その内部を貫通するキャップ開口部120、第1の穴122及び第2の穴124付き)、カム126(その内部の切り欠き128付き)、環ハウジング130(その内部のチャンネル132付き)、ローラ134並びにねじ136a及び136bを含む。ハウジングアセンブリ102はまた、プレート138(その内部を貫通するプレート開口部140付き)、ブラケット142、ピン144、ねじ146及びねじ148も含む。
【0009】
特に図3を参照して、圧縮リングアセンブリ104は、内部シャフト150、外部シャフト152(シャフトステップ154付き)、スプリングリテーナ156(内部にスプリングリテーナ凹部158付き)、圧力バネ160並びにポール162を含む。圧縮リングアセンブリ104はまた、貫通バネ164(これは、内部シャフト150に対して同心状に配置されている)、貫通部材キャリッジ166(貫通部材168付き、なお、当該貫通部材は図1乃至図3中には図示されず、図6、図7及び図8中には図示される)、圧縮リング170(図1乃至図3中には図示されず、図6、図7及び図8中には図示される)、並びに遊動リング172(遊動リングアーム174a及び174b並びに穴176a及び176b付き)も含む。
【0010】
図4及び図5は、それぞれ、遊動リング172の簡単な底面図及び断面側面図である。遊動リング172は、近位端部178、遠位端部180及び遊動リング開口部182を有する。図4及び図5中に示すように、遊動リング開口部182は、直径D1(すなわち、内部直径)を有し、遊動リング172は、直径D2(すなわち、外部直径)を有する。
【0011】
遊動リング172はまた、遠位端部180上に配置された接着層184も含む。接着層184は、例えば、両面感圧性アクリルベースの接着剤(3M社の製品番号9889として市販されているもの等)で形成し得る。
【0012】
接着層184により、標的部位近隣のユーザの身体へ、遊動リング172を遊動型接着取付けでき、これにより、サンプリングモジュール100使用時の標的部位の変形に影響を与える。例えば、圧縮リング170がユーザの身体に圧力を加えている間、標的部位を張力下に置く(すなわち、遊動リングと緊張状態にある標的部位との間に、標的部位及び当該領域を保持する)ことにより、遊動リングが標的部位の変形に影響を与え得る。本発明の実施形態によるサンプリングモジュールに用いられる遊動リングのこの有利な機能について、以下にさらに説明する。
【0013】
遊動リング172の近位端部は、ハウジングアセンブリ102に「遊動可能に」接続される。より詳細には、遊動リングアーム174a及び174bの最上部位上において、その穴176a及び176bは、ハウジングアセンブリ102のロッド110a及び110bと緩やかにかつ摺動可能に係合するように構成される。しかし、ロッド110a及び110bは、キャップ118の第2の穴124との相互作用を介して、拘束される。そのため、遊動リング172は、自由に移動(すなわち、「遊動」)するが、それは垂直方向であって回転方向ではない。
【0014】
遊動リング172は垂直方向に自由に遊動できるため、標的部位近隣に対し、いかなる下方向圧力も加えないが、遊動リングの質量のみに起因するごくわずかな圧力と、摩擦力によって遊動リングに(それゆえ標的部位に)実質的に伝達され得る他のサンプリングモジュールコンポーネントの質量に起因する圧力とは除かれる。換言すれば、この圧力は、圧縮リングの質量と、遊動リングを介して標的部位近隣に移送されるサンプリングモジュールの質量に関連する圧力とに起因する。よって、遊動リングの「遊動」特性は、サンプリングモジュールが後退状態にある場合に標的部位近隣のユーザの身体にかかる圧力を最小化する点において、有利である。
【0015】
図6は、圧縮リング170及び貫通部材168の一部位の簡単な断面側面図である。本発明の多様な実施形態によるサンプリングモジュールの貫通部材は、例えば、先端が湾曲した25口径のステンレススチール製中空針であればよい。ここで、湾曲した先端の支点は、針先端と針後端との間に配置される。貫通部材は、例えば射出成形樹脂で形成可能である。本発明による貫通部材用に適した針については、米国特許第6,702,791号及び米国出願第10/185,605(US2003/0060784として公開)に記載が有り、本明細書中、これらの文献を参考のために援用する。
【0016】
圧縮リング170は、近位端部186、遠位端部188及びその内部を貫通する圧縮リング開口部190を有する。さらに、圧縮リング開口部190は、圧縮リング170の遠位端部における直径D3(すなわち、内部直径)を有し、圧縮リング170自身の遠位端部の直径はD4(すなわち、外部直径、図6を参照)である。
【0017】
圧縮リング170の直径D3は例えば約4mm〜約12mmであればよく、圧縮リング170の直径D4は例えば約5mm〜約13mmであればよい。直径D4と直径D3との間の差は、例えば約1mm〜約9mmであればよい。遊動リング172の直径D1は例えば約7mm〜約18mmであればよく、直径D2は例えば約33mm〜約50mmであればよい。直径D2と直径D1との間の差は、例えば約15mm〜約43mmであればよい。以下に説明する図7及び図8から明らかなように、遊動リング172は、標的部位に対する第2近隣位置において接着される。この第2近隣位置は、圧縮リングからの圧力が付与される第1近隣位置よりも標的部位から遠位にある。
【0018】
サンプリングモジュール100の作動と、その多様なコンポーネント間の相互作用とについて、以下にさらに詳細に説明する。以下の説明から、本発明の多様な実施形態によるサンプリングモジュールの貫通部材は、ユーザの身体の標的部位(例えば、ユーザの前腕の表面薄層)に貫通した後、標的部位中に存在して当該部位中からISFを抽出するように構成されていることが、明らかとなる。
【0019】
さらに、本発明の多様な実施形態のサンプリングモジュールの圧縮リングは、前記貫通部材が標的部位中に存在している間、標的部位の第1近隣位置のユーザの身体に圧力をかけるように構成されていることも、明らかである。さらに、当業者であれば、従来のコンポーネント(例えば、ねじ及びねじの受け入れ穴)の詳細な説明は、本発明の多様な実施形態が不明瞭とならないよう、本明細書中には記載されない点、認識できるであろう。
【0020】
図7は、使用時におけるユーザの身体(B)に取り付けられた図1のサンプリングモジュール100の簡単な断面図であり、ここで、圧縮リング170及び遊動リング172は後退状態にあり、貫通部材168はユーザの身体の標的部位中に存在する。図8は、使用時にユーザの身体Bに取り付けられたサンプリングモジュール100の簡単な断面図であり、ここで、圧縮リング170及び遊動リング172は展開状態にある。図7及び図8において、ユーザの身体Bが表面薄層B’を含む様子が図示されている。サンプリングモジュール100は、例えばハウジングアセンブリ102のピン144に取り付けられたストラップ又はアームバンド(図中では不図示)を用いて、ユーザの身体Bに取り付けられ得る。
【0021】
サンプリングモジュール100の作動及びサンプリングモジュール100の多様なコンポーネントの相互作用について、図1乃至図8を参照して、以下でさらに詳細に説明する。ハウジングアセンブリ102のカム126は、環ハウジング130の周囲に摺動可能にかつ同心状に配置される。さらに、カム126の切り欠き128は、ローラ134と操作可能に相互作用するように構成(すなわち、「鍵掛け」)されている。環ハウジング130は、ねじ146を介してプレート138に取り付けられる。さらに、環ハウジング130のチャンネル132は、ローラ134の垂直移動を提供する。
【0022】
チャンネル132及び切り欠き128は、カム126が時計回り方向に回転すると、ローラ134が垂直方向上方に移動(図1乃至図3、図7及び図8の斜視図中)し、かつ、カム126が反時計回り方向に回転すると、ローラ134が垂直方向下方に移動するように、作動する。カム126は、任意の適切な手段により、例えばモータ(図示せず)により、回転し得る。ローラ134は、ねじ136a及び136bと係合するように構成される。さらに、ねじ136aは、スプリングリテーナ156のスプリングリテーナ凹部158内に拘束される。この構成により、スプリングリテーナ156は、カム126が時計回り方向に回転すると垂直方向上方に移動し、カム126が反時計回りに回転すると垂直方向下方に移動する。以下でさらに詳細に説明するよう、スプリングリテーナ156の移動は、サンプリングモジュールを(それゆえ圧縮リング170を)後退状態又は展開状態にするために用いられる。サンプリングモジュールの対向する側部上にある2つのローラ134を用いることで、サンプリングモジュールを横切る力の均等化と、サンプリングモジュールコンポーネントの不慮の傾斜の回避とを容易にできる。
【0023】
ハウジングアセンブリ102のキャップ118は、概して円板形状であり、環ハウジング130上に配置され、かつ、ねじ114a及び114bによって環ハウジング130に拘束される。キャップ118のキャップ開口部120の直径は、十分に大きく、外部シャフト152の一部位はその内部を貫通できる。ポール162は、圧力バネ160を誘導する。各ポール162の最上部位は、キャップ118の第1の穴122に固定的に取り付けられる。
【0024】
圧力バネ160は、スプリングリテーナ156に対してほぼ一定の力を及ぼすように構成される。さらに、圧力バネ160は、サンプリングモジュール100の使用時におけるバネ圧縮長さの範囲にわたって比較的一定の力を及ぼすように構成され得る。例えば、圧力バネ160は、約32mm(非圧縮時)〜約12mm(圧縮時)の範囲の圧縮長さにわたって、約2N〜約10Nの一定の力を付与し得る。
【0025】
スプリングリテーナ156は、外部シャフト152と摺動可能に係合する(例えば、図3を参照)。スプリングリテーナ156を、外部シャフト152のシャフトステップ154に到達するまで、下方方向に押圧することができる。スプリングリテーナ156がシャフトステップ154に到達すると、スプリングリテーナ156をさらに下方方向に押圧した場合、外部シャフト152も下方方向に移動することになる。
【0026】
内部シャフト150は、外部シャフト152と同心状にかつ摺動可能に係合する(例えば、図3を参照)。貫通部材キャリッジ166は、内部シャフト150の遠位端部に取り付けられる(図3を参照)。貫通バネ164は、内部シャフト150上に同心状に取り付けられ、これにより、内部シャフト150を下方方向に降下できる。外部シャフト152及び貫通部材キャリッジ166の存在により、貫通バネ164が内部シャフト150上に保持される。貫通部材キャリッジ166、内部シャフト150及び貫通バネ164の稼動可能な相互作用により、貫通部材168は、例えば約3m/s〜約10m/sの範囲の速度で、標的部位に向かって下ろすことができる。しかし、遊動リング172(接着層184付き)は、(本開示中で記載するような)緊張状態の標的部位を保持するように機能するため、これにより、標的部位の変形を低減し、貫通部材168は、標的部位を制御深さまで容易に貫通し、その際、このような遊動リングを含まないサンプリングモジュールと比較して、ユーザに対する不快感を低減させる。本開示により、当業者であれば、貫通部材168の下降開始のために多様な従来のトリガ機構を使用可能であることが認識できるであろう。
【0027】
圧縮リング170は、外部シャフト152に取り付けられ(図7及び図8を参照)、よって、カム126の回転に対応するスプリングリテーナ156の移動により、後退状態又は展開状態にされる。圧縮リング170は、任意の適切な手段(例えば、摩擦係合)により、外部シャフト152に取り付けることができる。当業者であれば、カム126、スプリングリテーナ156及び外部シャフト152は、圧縮リング後退機構及び展開機構として構成されることを認識するであろう。しかしながら、同一目的のために他の適切な機械的アセンブリも用い得ることも、当業者であれば認識できるであろう。
【0028】
サンプリングモジュール100は、ユーザの身体(B)(例えば、ユーザの前腕)へ取り付けられるように構成される。このような構成は、ブラケット142及びねじ148によってプレート138に取り付けられたピン144(図2を参照)を含む。ユーザの身体にサンプリングモジュール100を確実かつ除去可能な様態で取り付け得るように、剛性又は弾性のアームバンド(図示せず)がピン144に取り付けられる。
【0029】
サンプリングモジュール100が後退状態にある場合(図7を参照)、圧縮リング170は、貫通部材168が下降し標的部位に貫通している際も、標的部位近隣のユーザの身体(すなわち、第1近隣位置)に対して実質的にゼロの圧力を与える。カム126が時計回りに回転し、圧縮リング170は後退状態になり、これにより、ローラ134及びスプリングリテーナ156が上昇する。この後退状態において、ローラ134は、カム126の切り欠き128内のロック位置にある。ローラ134がこのようなロック位置に来るように、カム126が時計回りに回転すると、圧力バネ160は、圧縮リング170にいかなる力も加えない。この後退状態において、スプリングリテーナ156は、ハウジングアセンブリ102内の最上位置にあり、これにより、圧力バネ160は完全圧縮される。このような圧力バネ160の圧縮により、圧力バネ160がシャフトステップ154上に下方に押圧されるのが回避される。
【0030】
後退状態において、圧縮リングによって標的部位近隣にかかる圧力のみが、圧縮リングの質量及び関連したサンプリングモジュールのコンポーネント(例えば、内部シャフト150及び外部シャフト152)からの質量にのみ関連するように(まとめて実質的にゼロの圧力と称される)、圧縮リング170はハウジングアセンブリ102に遊動可能に取り付けられる。換言すれば、後退状態において圧縮リングがかける圧力は、圧縮リングアセンブリ及びハウジングアセンブリの質量のみに関連する。さらに、遊動リング172は、その遊動特性に起因する標的部位近隣にいかなる圧力も加えない(遊動リングの質量に起因するごくわずかな圧力と、遊動リングを通じて摩擦によって効果的に伝達される他のサンプリングコンポーネントの質量からの圧力とは除かれる)。よって、後退状態において、標的部位近隣のユーザの身体に最小圧力のみがかかり、これにより、サンプリングモジュールが後退状態にある際の標的部位及び近隣の回復が最大化される。このような回復は、分析物判定に適した流速(FR)でISFサンプルを成功裏に抽出することが可能な期間を最大化する点、及び分析物ISF濃度と分析物血液濃度との間のずれを軽減する点において有利であることが分かっている。
【0031】
サンプリングモジュール100が展開状態にある場合(図8を参照)、貫通部材168は、あらかじめ下降し、標的部位を貫通し、標的部位中に存在する。貫通部材168は、例えば、標的部位表面の下側(例えば、ユーザの標的部位表面薄層の表面の下側)の約1.5mm〜3mmにおける貫通深さで存在し得る。所望ならば、貫通部材168は、図8中に示す展開状態中に圧縮リング170を最初に配置する際に同時に下降させてもよい。
【0032】
サンプリングモジュール100が展開状態にある場合(再度図8を参照)、圧縮リング170は、その第1近隣位置のISFに加圧する機能を有する、標的部位の第1近隣位置の圧力をかける。圧縮リング170によって誘発される皮下圧力勾配は、貫通部材168内を流れるISFの流れ及びISF(例えば、グルコース)中の分析物を判定するための分析モジュール(図示せず)へのISFの流れを発生させる。ISFの抽出のための圧縮リングの使用に関するさらなる詳細については、本明細書中に記載の接着層及び展開/後退機構を持つ遊動圧縮リングはないものの、米国特許出願第10/652,464号(US2004/0253736として公開)、米国特許出願第10/653,023号(US2004/0249253として公開)及び米国特許出願第10/861,749号(US2004/0249254として公開)に記載されている。本明細書中、同文書全体を参考のため援用する。
【0033】
サンプリングモジュール100が展開状態にある際、貫通部材中を流れるISF流速は、圧縮リング170の存在にもかかわらず、標的部位近隣のISFの減少及び/又は標的部位の弛緩に起因して、経時的に低減する可能性が有る。しかし、標的部位の第2近隣位置において接着した遊動リング172の存在(例えば図8を参照)により、標的部位の弛緩は低減し、ISF流速の有害な低減は最小限となる。さらに、ISF流速低減の可能性は、図8の展開状態と図7の後退状態との間でサンプリングモジュール100を振動させることにより、最小限にできる。
【0034】
展開状態において、圧縮リング170によって標的部位の第1近隣位置にかかる圧力は、例えば、約6.895kPa(1psi)〜約1034.21kPa(150psi)(psi、ユーザの身体と接触している圧縮リング54の面積当たりの力として計算)の範囲であればよく、より典型的には、約206.84kPa(30psi)〜約482.63kPa(70psi)の範囲であればよい。この点について、およそ344.74kPa(50psi)の圧力が、ユーザの痛み/不快感を最小限にしつつ適切なISF流れを得る点において有益であることが分かっている。
【0035】
図8の展開状態において、カム126は、可能な範囲まで反時計回りに回転し、これにより、ローラ134は、切り欠き128の別のロック位置と固定的かつ可逆的に係合する。このカム126の反時計回り回転による効果とは、カム126が上方移動して、カム126とプレート138との間の寸法D5のすき間(図8を参照)が生じることである。カム126がプレート138から離れると、圧力バネ160は、圧縮リング170に(上述した様式で)力を及ぼす。
【0036】
後退状態において、上述したカム126とプレート138とのすき間の寸法はゼロに近づき(図7を参照)、外部Eリング116はキャップ118と接触する。外部Eリング116は、外部シャフト152に取り付けられ、外部シャフト152の最大下方移動を限定する働きをする。外部Eリング116がキャップ118によって拘束されるためである。
【0037】
図7と図8との比較から明らかなように、圧縮リング170の後退状態から展開状態への移動にともない、遊動リング172は、基本的に圧縮リング170と共に移動する。
【0038】
当業者であれば、図1乃至図8に関連する説明を通知されれば、別の実施形態によるユーザの身体から間質液(ISF)を抽出するためのサンプリングモジュールは、一般的に、ハウジングアセンブリ及び上記ハウジングアセンブリ中に稼動可能に含まれる圧縮リングアセンブリを含んでもよいことを認識する。このような実施形態の圧縮リングアセンブリは、ユーザの身体の標的部位を貫通した後、標的部位中に存在してそこからISFを抽出するように構成された貫通部材(例えば、針)を含む。圧縮リングアセンブリはまた、標的部位の第1近隣位置中のユーザの身体に圧力をかけるように構成された圧縮リングと、遠位端部上に配置された接着層を備えた遊動リングとを含む。このようなサンプリングモジュールの接着層により、標的部位の第2近隣位置中のユーザの身体への遊動リングの接着取付けが可能となり、これにより、サンプリングモジュールの使用中における標的部位の変形に影響を与える。
【0039】
本発明の実施形態によるサンプリングモジュールは、いくつかの利点を有する。第1に、接着層を備えた遊動リングの存在により、遊動リングによる加圧時の標的部位の変形において、有利な制御(すなわち、有利な影響)が得られる。遊動リングは、垂直方向の動きに対して「遊動」するため、遊動リングによって標的部位近隣にかかる下方圧力の偏向が無くなる。しかし、遊動リングの接着層は、遊動リングをユーザの身体上に保持し、これにより、圧縮リングが圧力をかけている間、標的部位を張力下に配置する。この張力は、圧縮リングの必要な移動距離を有利に短縮させ、よって、サンプリングモジュールのサイズを縮小させる。
【0040】
図9乃至図11は、本発明の多様な実施形態において用いられる接着層を備えた遊動圧縮リングの利点を簡単に示す。
【0041】
図9は、ISFを抽出するためのサンプリングモジュール200の簡単な断面図である。このサンプリングモジュール200は、後退状態において遊動リングを含まず、ユーザの身体Bに取り付けられる。サンプリングモジュール200は、ハウジングアセンブリ202(接着層204付き)、バネ212(図10に図示)、圧縮リング208、バイアス部材207及び貫通部材210を含む。サンプリングモジュール200は、接着層204及びアームバンド(図示せず)を用いて、ユーザの身体B(すなわち、ユーザの表面薄層)に固定される。圧縮リング208は後退状態にあるものの、後退状態にあるにもかかわらず圧縮リング208が圧力をかけるにつれ、ユーザの身体(B’’)の一部位が変形する。限定されること無しに、ハウジングアセンブリ202自身が圧縮リング208からの距離D9においてユーザの身体に圧力をかけ、これにより、ユーザの身体の変形が発生し、ISF抽出速度に影響が出る、と仮定される。
【0042】
図10は、図9のサンプリングモジュール200の簡単な断面図である。ここで、サンプリングモジュール200は展開状態にあり、サンプリングモジュール200のバネ212により、圧縮リング208はユーザの身体Bに圧力をかけ、これにより、ユーザの身体Bを比較的大きな距離D6だけ変形させる。サンプリングモジュール200を展開状態にするため、バイアス部材207は除去され、これによりバネ212が圧縮リング208上に下方力を及ぼす。圧縮リング208による下方力は、ハウジングアセンブリ202による対向する上方力で相殺される。ユーザの身体Bが変形すると、圧縮リング208は比較的長い距離を移動し、よって、サンプリングモジュール200のサイズは比較的大きくなる(すなわち、図10の高さH1)。しかし、ユーザの身体Bの変形は、距離D9を比較的短く(例えば、約2mm未満)することにより、最小限にし得る。
【0043】
上記議論並びに図9及び図10に基づき、本発明の実施形態において用いられる遊動リングの無いサンプリングモジュールでは、後退状態における不慮の加圧及び展開状態におけるユーザの身体の過大な変形という問題を被り得る。さらに、このような過大変形によって、ISF抽出速度が経時的に低下し得る。
【0044】
図11は、本発明の別の例示的実施形態による、ISF抽出のためのサンプリングモジュール300の簡単な断面図である。ここで、サンプリングモジュール300は、ユーザの身体Bにおける展開状態にある。サンプリングモジュール300は、ハウジングアセンブリ302(ハウジングアセンブリ接着層付き、図示せず)と、圧縮リング304と、遊動リング306(接着層308付き)と、貫通部材310と、バネ312とを含む。図11に示す実施形態において、遊動リング306及び接着層308は、圧縮リング304の加圧により(貫通部材310が貫通した)標的部位近隣において、ユーザの身体を緊張状態に保持する(すなわち、ユーザの身体中に張力を生じさせる)働きを持つ。この張力は、圧縮リング304による標的部位近隣への加圧を可能にしつつ、圧縮リングの移動距離(図11中の距離D7)を制限する。
【0045】
本発明によるサンプリングモジュールにおける、圧縮リングの移動距離及びサンプリングモジュールのサイズ(すなわち、高さ)の低減は、圧縮リングのかける圧力並びにサンプリングモジュールの他の寸法及び特性による。しかし、各バネ212及び312(図10及び図11を参照)が同一の力定数及び圧縮率特性を持つ場合、圧縮リング208は、圧縮リング304の移動距離である距離D7よりも長い距離D6を移動しなければならない。そのため、接着層308を持つ遊動リング306により、圧縮リング304が、移動距離をより小さくかつユーザの身体の変形をより小さくしつつ、効率的に加圧できる。これに関連して、高さH2は高さH1よりも小さくでき、その結果、サンプリングモジュールのサイズが小さくなり、使用時の不快感も減る。例えば、H1を20mm〜40mmの範囲、H2を10mm〜15mmの範囲とし得る。
【0046】
図12は、本発明の例示的実施形態によるユーザから間質液を抽出するための方法400における段階を示すフロー図である。方法400は、ステップ410に説明されるような標的部位(例えば、上述したような第2近隣位置)近隣のユーザの身体にサンプリングモジュールの遊動リングを接着的に取り付けるステップを含む。このように取り付けられるサンプリングモジュールは、本明細書中に記載される本発明による任意のサンプリングモジュールでよい。
【0047】
その後、ステップ420において、ユーザに対するユーザの身体から間質液を抽出するためのサンプリングモジュールは、遊動リングに取り付けられ、ユーザの身体に取り付けられる。このサンプリングモジュールを、例えば遊動リング周囲に同心状に配置されるように、取り付けることが出来る。必要に応じて、サンプリングモジュールに、サンプリングモジュール100について上述したような、遊動リングをサンプリングモジュールに摺動可能に固定するための蓋(rids)を設けてもよい。
【0048】
その後、ステップ430に説明されるように、ユーザの身体の標的部位は、サンプリングモジュールの貫通部材で貫通される。その後、標的部位の別の近隣位置(例えば、上述した第1近隣位置)に、サンプリングモジュールの圧縮リングにより圧力がかかる。その後、サンプリングモジュールの貫通部材を介して、標的部位からISFが抽出される(ステップ440及びステップ450を参照)。
【0049】
ステップ410乃至ステップ450が達成される例示的機構について、図1乃至図11を参照しながら上述してきた。例えば、圧縮リングは、上記展開状態への配置により、圧力をかけ得る。さらに及び所望ならば、サンプリングモジュールを展開状態と後退状態との間で長時間(例えば、8時間以上)反復させて、ISFの半連続的抽出を容易化してもよい。展開状態を例えば5分間行い、後退状態を例えば10分間行ってよい。このような継続時間は、展開状態を少なくとも8時間行っている間に有利なISF抽出速度である50nL/分が得られるように、決定される。
【0050】
本発明を実施する際、本明細書中に記載の本発明の実施形態に対する多様な代替例を用い得ることが理解されるであろう。特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、これらの請求項及びその均等の範囲にある方法及び構造は、これによって網羅されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の例示的実施形態による間質液(ISF)を抽出するためのサンプリングモジュールの簡単な斜視図である。
【図2】図1のサンプリングモジュールのハウジングアセンブリの簡単な分解斜視図である。
【図3】図1のサンプリングモジュールの圧縮リングアセンブリの簡単な分解斜視図である。
【図4】図1のサンプリングモジュールの遊動リングの簡単な底面図である。
【図5】図4の線A−Aで取られた図4の遊動リングの簡単な断面側面図である。
【図6】図1のサンプリングモジュールの圧縮リングの簡単な断面側面図である。
【図7】図1のサンプリングモジュールが使用中にユーザの身体に取り付けられている様子の簡単な断面図であり、その圧縮リング及び遊動リングは後退状態にある。
【図8】図1のサンプリングモジュールが使用中にユーザの身体に取り付けられている様子の簡単な断面図であり、その圧縮リング及び遊動リングは展開状態にある。
【図9】ISFを抽出するためのサンプリングモジュールの簡単な断面図であり、このサンプリングモジュールは、後退状態にある遊動リングを含まない。
【図10】ISFを抽出するためのサンプリングモジュールの簡単な断面図であり、このサンプリングモジュールは、展開状態にある遊動リングを含まない。
【図11】本発明の別の例示的実施形態による、ISFを抽出するためのサンプリングモジュールの簡単な断面図であり、このサンプリングモジュールは、展開状態にある。
【図12】本発明の一例示的実施形態による間質液抽出プロセスにおける段階を示すフロー図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体から間質液(ISF)を抽出するための間質液抽出サンプリングモジュールであって、
ハウジングアセンブリと、
前記ハウジングアセンブリ内に操作可能に設けられた圧縮リングアセンブリとを含み、
前記圧縮リングアセンブリは、
前記身体の標的部位を貫通後、前記標的部位中に存在して前記標的部位から間質液を抽出する貫通部材と、
前記貫通部材が前記標的部位中に存在している間、前記標的部位の第1近隣位置において前記身体に圧力をかける少なくとも1つの圧縮リングと、
少なくとも1つの遊動リングとを含み、
前記少なくとも1つの遊動リングは、
近位端部と、
遠位端部と、
前記遊動リングの前記遠位端部上に配置された接着層とを含み、
前記接着層は、前記標的部位の第2近隣位置において、前記遊動リングを前記身体へ接着的に取付け、前記サンプリングモジュールの使用中の前記標的部位の変形に影響を与えることを特徴とする間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項2】
前記圧縮リングが圧力をかける前記第1近隣位置は、
前記遊動リングが前記身体に接着的に取り付けられる位置である前記第2近隣位置よりも前記標的部位に近いことを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項3】
前記遊動リングは、
前記圧縮リングが前記標的部位の前記第1近隣位置において圧力をかけているとき、
前記標的部位を張力下におくことにより、前記標的部位の変形に影響を与えることを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項4】
前記圧縮リングを後退状態にする圧縮リング後退機構及び展開機構をさらに含み、
前記圧縮リングによって前記第1近隣位置にかかる圧力は、
前記圧縮リングアセンブリ及び前記ハウジングアセンブリの質量のみに関連することを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項5】
前記圧縮リング後退機構及び展開機構は、
前記圧縮リングと操作可能に係合するカムを含むことを特徴とする請求項4に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項6】
前記遊動リングは、
前記圧縮リングが後退状態にある場合、前記第2近隣位置に対し、前記遊動リングの質量のみに関連する圧力と、前記遊動リングを介して前記第2近隣位置に伝達される前記サンプリングモジュールの質量に関連する圧力とをかけることを特徴とする請求項5に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項7】
前記圧縮リングは、
内部直径が約4mm〜約12mmであり、外部直径が約5mm〜約13mmである開口部を内部に有することを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項8】
前記遊動リングは、
内部直径が約7mm〜約18mmであり、外部直径が約33mm〜約50mmである開口部を内部に有することを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項1】
身体から間質液(ISF)を抽出するための間質液抽出サンプリングモジュールであって、
ハウジングアセンブリと、
前記ハウジングアセンブリ内に操作可能に設けられた圧縮リングアセンブリとを含み、
前記圧縮リングアセンブリは、
前記身体の標的部位を貫通後、前記標的部位中に存在して前記標的部位から間質液を抽出する貫通部材と、
前記貫通部材が前記標的部位中に存在している間、前記標的部位の第1近隣位置において前記身体に圧力をかける少なくとも1つの圧縮リングと、
少なくとも1つの遊動リングとを含み、
前記少なくとも1つの遊動リングは、
近位端部と、
遠位端部と、
前記遊動リングの前記遠位端部上に配置された接着層とを含み、
前記接着層は、前記標的部位の第2近隣位置において、前記遊動リングを前記身体へ接着的に取付け、前記サンプリングモジュールの使用中の前記標的部位の変形に影響を与えることを特徴とする間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項2】
前記圧縮リングが圧力をかける前記第1近隣位置は、
前記遊動リングが前記身体に接着的に取り付けられる位置である前記第2近隣位置よりも前記標的部位に近いことを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項3】
前記遊動リングは、
前記圧縮リングが前記標的部位の前記第1近隣位置において圧力をかけているとき、
前記標的部位を張力下におくことにより、前記標的部位の変形に影響を与えることを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項4】
前記圧縮リングを後退状態にする圧縮リング後退機構及び展開機構をさらに含み、
前記圧縮リングによって前記第1近隣位置にかかる圧力は、
前記圧縮リングアセンブリ及び前記ハウジングアセンブリの質量のみに関連することを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項5】
前記圧縮リング後退機構及び展開機構は、
前記圧縮リングと操作可能に係合するカムを含むことを特徴とする請求項4に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項6】
前記遊動リングは、
前記圧縮リングが後退状態にある場合、前記第2近隣位置に対し、前記遊動リングの質量のみに関連する圧力と、前記遊動リングを介して前記第2近隣位置に伝達される前記サンプリングモジュールの質量に関連する圧力とをかけることを特徴とする請求項5に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項7】
前記圧縮リングは、
内部直径が約4mm〜約12mmであり、外部直径が約5mm〜約13mmである開口部を内部に有することを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【請求項8】
前記遊動リングは、
内部直径が約7mm〜約18mmであり、外部直径が約33mm〜約50mmである開口部を内部に有することを特徴とする請求項1に記載の間質液抽出サンプリングモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−44526(P2007−44526A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−216724(P2006−216724)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216724(P2006−216724)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】
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