説明

間隙埋め込み用組成物、それを用いた間隙埋め込み方法及び半導体素子の製造方法

【課題】半導体基板のダブルパターニング技術に適用される反転材料として特に適した組成物を提供する。
【解決手段】表面上に形成された感光性樹脂からなるパターン形状の間隙に埋め込む組成物であって、少なくともアリールオキシシラン原料の加水分解縮合物と、溶媒として芳香族化合物を有することを特徴とする間隙埋め込み用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の加工等に用いられる間隙埋め込み用組成物、それを用いた間隙埋め込み方法及び半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の構造の微細化及び緻密化は、当該産業分野の継続的な取り組み課題である。近年、特にその開発競争は熾烈さを増し、素子の高集積化による性能向上、つまり動作速度の向上および低消費電力化に向けた取り組みが加速的に進められている。かかる高集積化の可能性は、その製造技術の開発に委ねられているといっても過言ではなく、新興国を交えた各国・各企業において新規な製造方法や製造材料の研究開発が精力的になされている。
【0003】
半導体基板の加工にはフォトリソグラフィー法が広く適用されている。これは、感光性樹脂(レジスト)を塗布したベース基板上に配線マスク(フォトマスク)を重ねて露光し、現像、エッチング、レジスト除去などの工程を経て所定の加工を施していくものである。そして、素子の高集積化・微細化が進行するにつれ、配線加工のためのマスクパターンの間隙幅は数十ナノメートルレベルと非常に狭くなってきている。単純にフォトレジストマスクをパターニングして、その間隙をエッチングするだけは、精度の良い加工が難しい状況にまで至っている。
【0004】
このような点を考慮し、最近、ダブルパターニング技術と呼ばれる半導体加工法が提案されている(非特許文献1参照)。この技術における加工手順の概略を図1に示した。この例では、まず、シリコンウェハ3に被加工物膜2を形成し、その上側に感光性樹脂のパターン(PRパターン)1を形成している(図1(a))。次いで、感光性樹脂パターン1の上側から反転材料を適用し反転材料膜4を形成する(図1(b))。このとき、反転材料は感光性樹脂パターン1の間隙hに埋め込まれる。この間隙hはホール(孔)であってもトレンチ(溝)であってもよい。さらに、反転材料膜4の表面をエッチバックして平坦化反転材料膜(反転材料パターン)41とし、上記感光性樹脂パターン1が露出する状態とする(図1(c))。その後、感光性樹脂パターン1を除去し、反転材料パターンに間隙kができた状態を作出する(図1(d))。この反転材料パターン41をレジストとしてエッチングを行うことで被加工物膜21に間隙kに対応した溝ないし孔k’を形成し、所望の形状に加工された加工膜21を形成することができる(図1(e))。上記非特許文献1ではこの反転材料として、Si材料をメチルイソブチルカルビノール(MIBC)溶媒に含有させたものを用いることを提案している。
【0005】
また、特許文献1では、アルキルアルコキシシランをアルコール等の溶媒中で加水分解させ、分子量1000前後に調整した加水分解縮合物を用いる例が開示されている。ここでは、上記加水分解に用いた溶媒を加水分解縮合物の溶解に再度使用し、この溶液を反転レジスト材料として適用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−287176
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yasushi Sakaidaら、“Development of reverse materials for Double patterning process” Proc. Of SPIE Vol.7639 pp.76391Z−1〜9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、上記非特許文献や特許文献のものとは異なる成分で構成された埋め込み用組成物を探索した。これにより、埋め込み組成物の材料種を豊富化し適用対象や条件の多様化に対するニーズに応えるとともに、新規材料による特有の効果の発現が期待される。
そこで本発明は、半導体基板のパターニング技術に適用される反転材料として特に適した新規組成物の提供を目的とする。具体的には、新規な成分組成で構成され、感光性樹脂パターンに形成された間隙への埋め込み性が良く、またその塗布性・平坦性に優れ、該感光性樹脂パターンへのダメージが抑制され、さらにこれに対する高いアッシング選択比が実現される間隙埋め込み用組成物の提供を目的とする。さらには、EUV露光の感光性樹脂と組み合わせたときに上記の項目について特に高い効果を発揮する組成物の提供を目的とする。また、上記組成物を用いた間隙埋め込み方法及び半導体素子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は以下の手段により達成された。
(1)表面上に形成された感光性樹脂からなるパターン形状の間隙に埋め込む組成物であって、少なくともアリールオキシシラン原料の加水分解縮合物と、溶媒として芳香族化合物を有することを特徴とする間隙埋め込み用組成物。
(2)前記溶媒がメシチレン、クメン、キシレン、トルエン、及びベンゼンから選択される化合物である(1)に記載の組成物。
(3)前記加水分解化合物がポリフェニルシロキサン(PPSQ)であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)前記加水分解縮合物の平均分子量が1000〜50000であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の組成物。
(5)前記加水分解に用いるアリールオキシシランを溶解させる溶媒が、前記加水分解縮合物を含有させる溶媒とは異なる(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組成物。
(6)前記パターン形状をなす感光性樹脂を除去して、その間隙部分に残された加水分解縮合物の硬化膜をレジストとして、半導体基板をエッチング加工するパターニング技術に用いる(1)〜(5)のいずれか1項に記載の組成物。
(7)前記感光性樹脂からなるパターン形状の間隙の幅が32nm以下であり、該間隙のアスペクト比(深さ/幅)が1.5以上であることを特徴とする(6)に記載の組成物。
(8)前記感光性樹脂がEUV露光による感光性の樹脂であることを特徴とする(6)又は(7)記載の組成物。
(9)半導体基板の表面上に形成された感光性樹脂からなるパターン形状の間隙に、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の組成物を塗布して埋め込む間隙埋め込み方法。
(10)前記組成物を埋め込む前に感光性樹脂のパターンを加熱硬化する工程を経ることを特徴とする(9)記載の間隙埋め込み方法を用いた半導体素子の製造方法。
(11)半導体基板の表面上に形成された感光性樹脂からなるパターン形状の間隙に、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の組成物を塗布して埋め込み、その後、前記パターン形状をなす感光性樹脂を除去して、その間隙部分に残された加水分解縮合物の硬化膜をレジストとして前記半導体基板をエッチング加工する半導体素子の製造方法。
(12)前記感光性樹脂がEUV露光による感光性の樹脂であることを特徴とする(11)記載の製造方法。
(13)前記埋め込み用組成物を塗布する前に、
アルコキシシラン原料を有機溶媒中で加水分解により縮合させ、重量平均分子量が3000〜50000である加水分解縮合物とし、前記有機溶媒を切り替えて、前記総炭素数7〜9のエーテル化合物及び/又は総炭素数6〜9のアルキルアルコール化合物を溶媒として含む埋め込み用組成物を調製することを特徴とする(10)〜(12)のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、半導体基板のパターニング技術に適用される反転材料として特に適した性能を発揮する。具体的には、新規な成分組成で構成され、感光性樹脂パターンに形成された間隙への埋め込み性が良く、またその塗布性・平坦性に優れ、該感光性樹脂パターンへのダメージが抑制され、さらにこれに被加工物に対する高いアッシング選択比を実現することができる。さらには、EUV露光の感光性樹脂と組み合わせたときに上記の項目について特に高い効果を発揮する。また、上記組成物を用いた間隙埋め込み方法及び半導体素子の製造方法によれば、上記利点により微細加工を要する半導体素子製造の生産性及び製造品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】パターニング半導体基板加工技術について半導体基板の断面図により模式的に説明する工程説明図である。
【図2】感光性樹脂パターンの終端付近におけるトレンチ埋め込み用組成物の状態を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の間隙埋め込み用組成物は、(a)少なくともアリールオキシシラン原料の加水分解縮合物と、(b)溶媒として芳香族化合物を有する。これにより、半導体製造に有用な埋め込み用組成物の種類が豊富化され、しかも、表面上に形成された感光性樹脂からなるパターン形状の間隙に埋め込む組成物として用いたとき、半導体製造に特に適した良好な性質が発揮される。以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0013】
<間隙埋め込み用組成物>
本発明の間隙埋め込み用組成物は、基板表面上に形成された感光性樹脂パターンの間隙への塗布埋め込みに好適に使用することができる。間隙の形状や大きさは特に限定されないが、孔(ホール)状の間隙であっても、溝(トレンチ)状の間隙であってもよい。感光性樹脂パターンの間隙の寸法としては半導体基板加工の微細化に対応することを考慮すると、間隙幅は32nm以下であることが好ましく、22nm以下であることがより好ましい。下限値は特に限定されないが、10nm以上であることが実際的である。ここで感光性樹脂パターンの間隙幅とは、図1でいうとwを指し、孔ないし溝の断面における空間の幅である。この幅が深さ方向で一定でないときは、その平均値を言う。間隙のアスペクト比(深さ/幅)は1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。上限値は特に限定されないが、10以下であることが実際的であり、6以下であることがより実際的である。アスペクト比を算出するための深さは図1のtで評価でき、通常、感光性樹脂パターンの膜厚さと同義である。幅は上述した間隙幅wと同義である。
【0014】
感光性樹脂パターンを除去した後に、反転材料パターンに形成される間隙kの間隙幅vとしては特に限定されないが、上記同様に微細化を考慮すると、反転材料パターン41の間隙幅kは32nm以下であることが好ましく、22nm以下であることがより好ましい。下限値は特に限定されないが、10nm以上であることが実際的である。なお、幅に関する定義は間隙幅wと同義である。
【0015】
反転材料パターンを残して感光性樹脂パターンを除去するときのアッシング速度比(感光性樹脂のアッシング速度/反転材料のアッシング速度)が4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。これにより、感光性樹脂の残分がなく、良好な形状の反転材料パターンを形成することができる。上限は特にないが、アッシング速度比が15以下であることが通常である。
【0016】
<アリールオキシシラン原料>
(アリールオキシシラン)
本発明において加水分解縮合物を製造するために、出発原料として、少なくともアリールオキシシラン原料が使用される。なお、本明細書において、アリールオキシシラン原料の加水分解縮合物とは、アリールオキシシランの加水分解縮合物の他、これとアルキルアルコキシシラン等との複合縮合物であってもよい。
【0017】
アリールオキシシランとしては、ケイ素原子に一つのアリール基と3つのアルコキシ基が結合する有機ケイ素化合物であることが好ましく、下記の式(A)で表すこともできる。
式(A):RSi(OR
(Rはアリール基を表わし、Rはアルキル基を表す。)
【0018】
前記アリール基(式(A)中のR)は特に制限されないが、得られる発明の効果が優れる点および入手が容易である点から、炭素数6〜14のものが好ましく、6〜10がより好ましい。具体的には、フェニル基、トリル基、メシチル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基などが挙げられる。また、その中で最も好ましいのはフェニル基である。
【0019】
前記アルコキシ基は特に制限されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。より具体的には、式(A)中のRとしては、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。なかでも、得られる発明の効果が優れる点から、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。特に、加水分解速度の制御が容易である点から、式(A)中のRがエチル基である、エトキシ基が好ましい。
【0020】
上記のような好ましいアリールオキシシラン化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどが挙げられる。なお、アリールトリアルコキシシランとしては、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記アリールオキシシラン原料のうち、アルコキシシランの総量に対してアリールオキシシランが50質量%以上であることが好ましく、75〜100質量%であることがより好ましい。含有量が前記下限値以上であることで、塗布性、塗布溶媒溶解性という点で有利である。
【0022】
(その他のアルコキシシラン)
アリールオキシシラン原料としては上記のアリールオキシシラン以外に、他のアルコキシシランを使用することができる。例えば、下記のアルキルトリアルコキシシランやテトラアルコキシシランが挙げられる。
【0023】
アルキルトリアルコキシシランとは、ケイ素原子に一つのアルキル基と3つのアルコキシ基が結合する有機ケイ素化合物であり、下記の式(1)で表すこともできる。
式(1):R11Si(OR12
(R11およびR12は、それぞれ独立にアルキル基を表す。)
【0024】
アルキルトリアルコキシシランのアルキル基(式(1)中のR11)は特に制限されないが、得られる発明の効果が優れる点および入手が容易である点から、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。なかでも、得られる発明の効果が優れる点から、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜3がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。また、その中で最も好ましいのはメチル基である。
【0025】
アルキルトリアルコキシシランのアルコキシ基は特に制限されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。より具体的には、式(1)中のR12としては、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。なかでも、得られる発明の効果が優れる点から、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。特に、加水分解速度の制御が容易である点から、式(1)中のR12がエチル基である、エトキシ基が好ましい。
【0026】
テトラアルコキシシランとは、ケイ素原子に4つのアルコキシ基が結合する有機ケイ素化合物であり、下記の式(2)で表すこともできる。
式(2):Si(OR23
(R23はアルキル基を表す。)
【0027】
テトラアルコキシシランのアルコキシ基は特に制限されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。より具体的には、式(2)中のR23としては、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。なかでも、得られる発明の効果が優れる点から、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。特に、加水分解速度の制御が容易である点から、式(2)中のR23がエチル基である、エトキシ基が好ましい。
【0028】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランなどが挙げられる。なかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好適に用いられる。
なお、テトラアルコキシシランとしては、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
アリールオキシシラン原料中におけるアルキルトリアルコキシシランの含有量は特に制限されないが、塗布性、塗布溶媒溶解性という観点から、50質量%以下が好ましく、0を超え25質量%以下であることがより好ましい。テトラアルコキシシランの含有量も特に制限はないが、塗布性、塗布溶媒溶解性という観点から、50質量%以下が好ましく、0を超え25質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
<加水分解縮合物>
本発明の間隙埋め込み用組成物中に含まれる加水分解縮合物は、上述したアリールオキシシラン原料を用いて、加水分解反応および縮合反応を介して得られる化合物である。より具体的には、該化合物は、アリールオキシシラン等の一部または全部のアルコキシ基が加水分解してシラノール基に変換し、生成したシラノール基の少なくとも一部が縮合してSi−O−Si結合を形成したものをいう。
加水分解反応および縮合反応としては公知の方法を使用することができ、必要に応じて、酸または塩基などの触媒を使用してもよい。触媒としてはpHを変更させるものであれば特に制限がなく、具体的には、酸(有機酸、無機酸)としては、例えば硝酸、シュウ酸、酢酸、蟻酸など、アルカリとしては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどが挙げられる。使用する量は、加水分解縮合物が所定の分子量を満たせば、特に限定されない。
【0031】
加水分解反応および縮合反応の反応系には、必要に応じて、溶媒を加えてもよい。溶媒としては加水分解反応および縮合反応が実施できれば特に制限されないが、芳香族炭化水素類[例えばベンゼン、トルエン、キシレン等]、ハロゲン化炭化水素類[例えば塩化メチレン、クロロホルム等]、エーテル類[例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,4−ジオキサン等]、ケトン類[例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等]、エステル類[例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等]、アルコール類[例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等]、脂肪族炭化水素類[例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等]、含窒素類[例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等]、水等が例示され、これら溶媒は単独で又は二種以上混合して使用することができる。
なかでも、ここでは、後述する加水分解縮合物を含有させる溶媒とは異なる溶媒を適用することが好ましく、炭素数1〜5のアルコール化合物又は炭素数2〜6のエーテル化合物を用いることがより好ましい。
【0032】
加水分解反応および縮合反応の条件(温度、時間、溶媒量)は使用される材料の種類に応じて、適宜最適な条件が選択される。
【0033】
本発明で使用される加水分解縮合物の重量平均分子量は、1000〜50000である。なかでも、3000〜45000が好ましく、4500〜25000がより好ましく、5000〜25000が特に好ましい。重量平均分子量を上記範囲とすることにより、特に優れた間隙内部への埋め込み性を実現しうる点で好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上の場合、基板に対する塗布性が特に良く、塗布後の面状が良好に維持され好ましい。重量平均分子量が上記上限値以下の場合、埋め込み性が良好に実現され好ましい。
なお、重量平均分子量は、公知のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定し、標準ポリスチレンに換算したときの値である。特に断らない限り、GPC測定においては、カラムとしてWaters2695およびShodex製GPCカラムKF−805L(カラム3本を直結)を使用し、カラム温度40℃、試料濃度0.5質量%のテロラヒドロフラン溶液を50μl注入し、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流量でフローさせ、RI検出装置(Waters2414)およびUV検出装置(Waters2996)にて試料ピークを検出することでおこなった。
【0034】
本発明の組成物中における上記加水分解縮合物の含有量は、全組成物質量に対して、2.5質量%超15質量%以下であることが好ましく。なかでも、2.5質量%超10質量%以下がより好ましく、3〜8質量%が特に好ましい。含有量が上記下限値以上の場合、間隙内にボイドを発生させず埋め込み性が特に良い。含有量が上記上限値以下の場合、膜厚が十分に厚くなりクラック等の発生原因とならず実用性に富む。なお、組成物中における加水分解縮合物以外の成分としては、例えば、上述した溶媒などが挙げられる。溶媒の含有量としては特に制限はないが、通常、70質量%以上97.5質量%未満であることが好ましい。
【0035】
<溶媒>
溶媒としては反転材料として使用する目的から、上記加水分解縮合物の溶解性もしくは分散性が高く、一方で、感光性樹脂(レジスト)の溶解性が低いものであることが好ましい。さらに、本発明においては、従来のアルキルアルコキシシラン原料による加水分解縮合物ではない、上記アリールオキシシラン原料の加水分解縮合物が採用されている。これに適合し上記良好な性能を発揮することに鑑み、本発明の間隙埋め込み用組成物には、溶媒として芳香族化合物を用いる。総炭素数6〜9の芳香族化合物が用いられることが好ましく、総炭素数7〜9の芳香族化合物がより好ましい。上記の観点から、加水分解縮合物の合成に用いた溶媒から、上記反転材料として好適な溶媒へと切り替えることが好ましい。溶媒切り替えの手法は、この種の技術に通常適用される方法によればよい。なお、上記芳香族化合物は置換基を有していてもよいが、その置換基が炭素原子を有する場合には、分子全体として上記総炭素数の範囲内であることを意味する。
【0036】
上記有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられるが、好ましくは、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アリール基、カルボキシル基、アルコキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシル基、イミド基、シリル基が挙げられる。更に好ましくは、置換基が無いほう方がよい。
【0037】
前記芳香族化合物としては、組成物を使用する処理温度(20〜40℃)で液体であることが好ましい。具体的には、上記置換基を有するベンゼン化合物が挙げられ、その置換基としては中でも、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの低級アルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が好ましく、メチル基、1−メチルエチル基がより好ましい。ベンゼン環状の置換基の数は特に限定されないが、0を超え4個以下であることが好ましく、1〜3個であることがより好ましい。前記芳香族化合物としては、メシチレン、クメン、キシレン、トルエン、及びベンゼンが挙げられる。
【0038】
本発明の間隙埋め込み用組成物において、適用される溶媒中に上記芳香族化合物以外の成分が含有されていてもよい。溶媒中の上記芳香族化合物は、80〜100質量%であることが好ましく、85〜100質量%であることがより好ましい。当該化合物の量が上記下限値以上の場合、塗布性が良好となり好ましい。上記上限値以下の場合も同様に塗布性が良好となり好ましい。とりわけ、上述のように高分子量の加水分解縮合物を含有させて塗布性及び埋め込み性を維持する観点から、上記特定の範囲で有機溶媒を適用することが好ましい。
【0039】
<半導体基板>
半導体基板を構成する材料としては特に制限されず、シリコン、炭化シリコン、金属(金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムなど)、金属窒化物(窒化シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステンなど)、ガラス(石英ガラス、ホウ酸ガラス、ソーダガラスなど)、樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなど)、絶縁膜(酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムなど)が挙げられる。なお、本発明において半導体基板というときには、シリコンウェハのみならず、そこに所定の材料等が加工・適用された状態のものを含み、これらの材料からなる層が積層した積層構造であってもよい。なお、図1に示した例において被加工物膜2は、シリコンウェハ3上に配設された、上述したような絶縁膜、半導体膜、導体膜などとすることができる。また、図示したものとは異なる形態としてもよく、前記被加工物膜と感光性樹脂によるレジストパターンの間の層に、有機反射防止膜等の機能性の材料を適用したものとしてもよい。
【0040】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズ、DUV−40シリーズ、日産化学社製のARC20/90シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。また、本発明の形態においては、有機膜型が好ましい。
【0041】
<感光性樹脂>
・感光性樹脂材料
本発明において感光性樹脂は半導体基板の加工に用いられる通常のフォトレジストを適用することができる。レジストの種類は特に限定されることは無く、目的に応じて選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、及びエポキシ系樹脂などが挙げられ、具体的には例えば、特開2000−319396、特開2001−92154、特開2002−372784、特開2002−244280、特開2003−57826、特開2005−220066、特開2007−212863、特開2008−250191、特開2008−268915、特開2009−35745、特開2009−96991などに記載の感光性樹脂が挙げられるが、これらに限定されることはないが、アクリル系樹脂が好ましい。
【0042】
・パターン形成
上記感光性樹脂により基板上にパターンを形成する方法は特に限定されず、通常半導体基板の加工に適用される方法によればよい。一般的なフォトリソグラフィーによるのであれば、上記感光性樹脂を基板上にスピンコーターなどにより塗布し、ステッパーによりレチクルを解して露光し、感光性樹脂を所望のパターンに硬化させる態様が挙げられる。その後、感光性樹脂の未硬化分を洗浄ないしアッシングにより除去し、所望のパターンの間隙(孔、溝)が形成された感光性樹脂パターンが形成される。パターニング技術として、通常の方式の他、液浸方式、あるいはダブルパターニング技術を用いても良い。
・露光波長
本発明の露光工程の波長源として、KrF、ArF、EUV、電子線又はX線を適用することができる。特に、EUVが好ましい。以下に、ArF、EUV感光性の樹脂について少し詳しく説明する。
【0043】
本実施形態の感光性樹脂は、(A)酸の作用により分解してアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する樹脂、(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物、(C)塩基性化合物、及び、(D)有機溶剤を含有する組成物であって、該組成物中の全固形分の濃度が1.0〜4.5質量%であり、かつ全固形分中の(B)の活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の割合が10〜50質量%であることを特徴とする。
【0044】
〔1〕酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂(A)
本実施形態のポジ型レジスト組成物に用いられる酸により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」ともいう)は、樹脂の主鎖又は側鎖、或いは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(酸分解性基)を有する樹脂である。この内、酸分解性基を側鎖に有する樹脂がより好ましい。
【0045】
酸分解性基として好ましい基は、−COOH基、−OH基などのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。本実施形態においては、酸分解性基は、アセタール基又は3級エステル基が好ましい。これら酸で分解し得る基が側鎖として結合する場合の母体樹脂は、側鎖に−OHもしくは−COOH基を有するアルカリ可溶性樹脂である。例えば、後述するアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。これらアルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解速度は、レジスト膜として形成した場合、0.261Nテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)で測定(23℃)して80Å/秒以上が好ましい。特に好ましくは160Å/秒以上である。
【0046】
酸分解性樹脂は、芳香族基を有する繰り返し単位を含有することが好ましく、特に、ヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する酸分解性樹脂(以下、「樹脂(A1)」ともいう)であることが好ましい。更に好ましくはヒドロキシスチレン/酸分解基で保護されたヒドロキシスチレン共重合体、ヒドロキシスチレン/(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルが好ましい。
【0047】
酸で分解し得る基の含有率は、樹脂中の酸で分解し得る基の数(B)と酸で脱離する基で保護されていないアルカリ可溶性基の数(S)をもって、B/(B+S)で表される。含有率は、好ましくは0.01〜0.7、より好ましくは0.05〜0.50、更に好ましくは0.05〜0.40である。
【0048】
樹脂(A1)として、特に下記一般式(II)で表される繰り返し単位及び一般式(III)で表される繰り返し単位を有する樹脂が好ましい。
【0049】
【化1】

【0050】
一般式(II)及び(III)に於いて、
01は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはアルコキシカルボニル基を表す。
及びLは、同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアラルキル基を表す。
Mは、単結合または2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、シクロアルキル基、アリールオキシ基、もしくはヘテロ原子を含んでいてもよい脂環基またはヘテロ原子を含んでいてもよい芳香環基を表す。
Q、M、Lの少なくとも2つが結合して5員または6員環を形成しても良い。
Aは、複数ある場合は各々独立に、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基を表す。
m及びnは各々独立に0〜4の整数を表す。但し、mとnは同時に0でないことが好ましい。
【0051】
一般式(II)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは5〜60モル%、より好ましくは10〜50モル%、特に好ましくは10〜40モル%である。
一般式(III)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂を構成する全繰り返し単位中、好ましくは40〜90モル%、より好ましくは45〜80モル%、特に好ましくは50〜75モル%である。
【0052】
樹脂(A1)の合成は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合のいずれの方法を用いても重合することが出来る。共重合反応制御の観点からラジカル重合法が好ましい。また分子量、分子量分布制御の観点からリビングラジカル重合法が好ましい。具体的にはニトロキシド化合物、原子移動重合法系、RAFT剤から選ばれる化合物とラジカル重合開始剤(アゾ系、過酸化物系)とを併用する方法が挙げられる。酸分解性保護基の導入は、酸分解性保護基をもつモノマーを共重合する方法、フェノール性水酸基等のアルカリ可溶性水酸基もしくはカルボキシル基を持つ樹脂に対して保護基を導入する方法のいずれでも可能である。また、欧州特許254853号、特開平2−258500号、3−223860号、4−251259号に記載されているような、アルカリ可溶性樹脂に酸で分解しうる基の前駆体を反応させる方法、もしくは、酸で分解しうる基を有するモノマーを種々のモノマーと共重合する方法など公知の合成法により合成することができる。合成された樹脂は、通常、高分子合成で一般的な再沈・洗浄等の方法により、所望の性能に悪影響を与えうる未反応モノマー等の不純物を精製した上でレジスト組成物に用いられる。
【0053】
樹脂(A1)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、15000以下が好ましく、より好ましくは1,000〜10,000、更に好ましくは1、500〜5,000であり、特に好ましくは、2,000〜3,000である。
樹脂(A1)の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0が好ましく、より好ましくは1.05〜2.0であり、更により好ましくは1.1〜1.7である。
また、樹脂(A1)は、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0054】
樹脂(A1)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0055】
【化2】

【0056】
上記具体例において、tBuはt−ブチル基を表す。
【化3】

【0057】
本実施形態のポジ型レジスト組成物において、酸分解性樹脂の組成物中の配合量は、組成物の全固形分中、45〜90質量%が好ましく、より好ましくは55〜85質量%、更により好ましくは60〜80質量%である。
【0058】
〔2〕活性光線又は放射線の照射により、酸を発生する化合物(酸発生剤)(B)
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0059】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0060】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0061】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0062】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0063】
【化4】

【0064】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
は、非求核性アニオンを表す。
【0065】
としての非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸ア
ニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等を挙げることができる。
【0066】
非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。これによりレジストの経時安定性が向上する。
【0067】
スルホン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなどが挙げられる。
【0068】
カルボン酸アニオンとしては、例えば、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなどが挙げられる。
【0069】
脂肪族スルホン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボニル基、ボロニル基等を挙げることができる。
【0070】
芳香族スルホン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0071】
脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。脂肪族スルホン酸アニオン及び芳香族スルホン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基の置換基としては、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましく
は炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基としてさらにアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を挙げることができる。
【0072】
脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位としては、脂肪族スルホン酸アニオンおけると同様のアルキル基及びシクロアルキル基を挙げることができる。
【0073】
芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、芳香族スルホン酸アニオンにおけると同様のアリール基を挙げることができる。
【0074】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数6〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0075】
脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン及びアラルキルカルボン酸アニオンにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基の置換基としては、例えば、芳香族スルホン酸アニオンにおけると同様のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基等を挙げることができる。
【0076】
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
【0077】
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基等を挙げることができ、フッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
【0078】
その他の非求核性アニオンとしては、例えば、弗素化燐、弗素化硼素、弗素化アンチモン等を挙げることができる。
【0079】
の非求核性アニオンとしては、スルホン酸のα位がフッ素原子で置換された脂肪族
スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくは炭素数4〜8のパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオン、更により好ましくはノナフロロブタンスルホン酸アニオン、パーフロロオクタンスルホン酸アニオン、ペンタフロロベンゼンスルホン酸アニオン、3,5−ビス(トリフロロメチル)ベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0080】
201、R202及びR203としての有機基としては、例えば、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0081】
尚、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般
式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0082】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0083】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
【0084】
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基又はシクロアルキル基でもよい。
【0085】
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0086】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。アリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基としては、例えば、ピロール残基(ピロールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、フラン残基(フランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、チオフェン残基(チオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)、インドール残基(インドールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾフラン残基(ベンゾフランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾチオフェン残基(ベンゾチオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)等を挙げることができる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
【0087】
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐アルキル基及び炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0088】
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0089】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
【0090】
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
【0091】
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖又は分岐2−オキソアルキル基である。
【0092】
201〜R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。アルキル基として、より好ましくは2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基を挙げることができる。シクロアルキル基として、より好ましくは、2−オキソシクロアルキル基を挙げることができる。
【0093】
2−オキソアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
2−オキソシクロアルキル基は、好ましくは、上記のシクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0094】
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
【0095】
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0096】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0097】
【化5】

【0098】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0099】
1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
【0100】
Zcは、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZと同様の非求核性アニオンを挙げることができる。
【0101】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個のアルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えば炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
【0102】
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
【0103】
好ましくは、R1c〜R5cの内のいずれかが直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐もしくは環状アルコキシ基であり、更に好ましくは、R1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0104】
及びRとしてのアルキル基及びシクロアルキル基は、R1c〜R7cおけると同様のアルキル基及びシクロアルキル基を挙げることができ、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基がより好ましい。
【0105】
2−オキソアルキル基及び2−オキソシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基及びシクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
【0106】
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cおけると同様のアルコキシ基を挙げることができる。
【0107】
及びRは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基又はシクロアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基又はシクロアルキル基である。
【0108】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0109】
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。R204〜R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基としては、例えば、ピロール残基(ピロールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、フラン残基(フランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、チオフェン残基(チオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)、インドール残基(インドールから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾフラン残基(ベンゾフランから水素原子が1個失われることによって形成される基)、ベンゾチオフェン残基(ベンゾチオフェンから水素原子が1個失われることによって形成される基)等を挙げることができる。
【0110】
204〜R207におけるアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
【0111】
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0112】
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZの非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0113】
使用することができる活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0114】
【化6】

【0115】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar及びArは、各々独立に、アリール基を表す。
208、R209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0116】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内でより好ましくは、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物である。
また、活性光線又は放射線の放射により酸を発生する化合物として、スルホン酸基又はイミド基を1つ有する酸を発生する化合物が好ましく、さらに好ましくは1価のパーフルオロアルカンスルホン酸を発生する化合物、または1価のフッ素原子またはフッ素原子を含有する基で置換された芳香族スルホン酸を発生する化合物、または1価のフッ素原子またはフッ素原子を含有する基で置換されたイミド酸を発生する化合物であり、更により好ましくは、フッ化置換アルカンスルホン酸、フッ素置換ベンゼンスルホン酸又はフッ素置換イミド酸のスルホニウム塩である。使用可能な酸発生剤は、発生した酸のpKaがpKa=−1以下のフッ化置換アルカンスルホン酸、フッ化置換ベンゼンスルホン酸、フッ化置換イミド酸であることが特に好ましく、感度が向上する。
【0117】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の中で、特に好ましい例を以下に挙げる。
【0118】
【化7】

【0119】
【化8】

【0120】
【化9】

【0121】
【化10】

【0122】
酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態において、酸発生剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、10〜50質量%であり、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは22〜50質量%、更に好ましくは25〜50質量%、特に好ましくは25〜40質量%である。
【0123】
ArFやKrF露光では、レジストに入射した光エネルギーを光酸発生剤が吸収し、励起状態になった光酸発生剤が分解して酸を発生する。したがって、入射光の吸収率は光酸発生剤の分子吸光係数や光酸発生剤の濃度で決まることになる、一方、パターン形状の観点では、レジストの光吸収率が高くなって透過率が約7割を下回るようになるとレジストパターン形状が悪化することが知られているため、おのずから光酸発生剤の濃度には制約があった。
これに対して、EUV或いはEB露光においては、入射1光子あるいは1電子あたりのエネルギーが従来のArFやKrF露光などと比べて非常に高く、そのエネルギーの吸収率はレジストの化学構造にほとんど依存しないため、透過率からの光酸発生剤濃度の制約はないと考えられる。
一方、光酸発生剤濃度が高まると光酸発生剤同士の凝集が起こり、酸発生効率の低下や安定性の劣化が生じることが分かってきた。本実施形態では従来のArFやKrF用のレジストでは透過率や光酸発生剤の凝集が問題となり実質上使用できなかった高濃度の光酸発生剤でも固形分濃度を最適化することにより有効に使用できることを見出した。これは、まったく予想外の効果であったが、レジスト液の状態で光酸発生剤の濃度を適切に保つこと(この点は、後述する「全固形分濃度」に関係する)により、レジスト膜にした後も安定な分散状態が保たれるようになったものと考えられる。
【0124】
〔3〕塩基性化合物(C)
本実施形態のレジスト組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。塩基性化合物は、露光により発生した酸による脱保護反応をクエンチする役割を果たし、その拡散性や塩基性度が実質的な酸拡散性に影響する。
【0125】
好ましい構造として、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する塩基性化合物を挙げることができる。
【0126】
【化11】

【0127】
ここでR250、R251及びR252は、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜20)であり、ここでR250とR251は互いに結合して環を形成してもよい。
これらは置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基及びシクロアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基又は炭素数3〜20のアミノシクロアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は炭素数3〜20のヒドロキシシクロアルキル基が好ましい。
また、これらはアルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含んでも良い。
【0128】
式中、R253、R254、R255及びR256は、各々独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜6)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜6)を示す。
【0129】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジンを挙げることができ、置換基を有していてもよい。更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0130】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等があげられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンなどがあげられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシドなどがあげられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等があげられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0131】
更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物から選ばれる少なくとも1種類の含窒素化合物を挙げることができる。
【0132】
アミン化合物は、1級、2級、3級のアミン化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であることがより好ましい。アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。
また、アミン化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CHCHO−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH)CHO−もしくは−CHCHCHO−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0133】
アンモニウム塩化合物は、1級、2級、3級、4級のアンモニウム塩化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアンモニウム塩化合物が好ましい。アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。
アンモニウム塩化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CHCHO−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH)CHO−もしくは−CHCHCHO−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、ハロゲン原子、スルホネート、ボレート、フォスフェート等が挙げられるが、中でもハロゲン原子、スルホネートが好ましい。ハロゲン原子としてはクロライド、ブロマイド、アイオダイドが特に好ましく、スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、炭素数1〜20のアルキルスルホネート、アリールスルホネートが挙げられる。アルキルスルホネートのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えばフッ素、塩素、臭素、アルコキシ基、アシル基、アリール基等が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的にはメタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。アリールスルホネートのアリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基として、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。他の置換基としては炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0134】
フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物とは、アミン化合物又はアンモニウム塩化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、置換基を有していてもよい。フェノキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、アラルキル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。置換基の置換位は、2〜6位のいずれであってもよい。置換基の数は、1〜5の範囲で何れであってもよい。
【0135】
フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CHCHO−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH)CHO−もしくは−CHCHCHO−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0136】
スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、スルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物に於ける、スルホン酸エステル基としては、アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキル基スルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルのいずれであっても良く、アルキルスルホン酸エステルの場合にアルキル基は炭素数1〜20、シクロアルキルスルホン酸エステルの場合にシクロアルキル基は炭素数3〜20、アリールスルホン酸エステルの場合にアリール基は炭素数6〜12が好ましい。アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルは置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基が好ましい。
【0137】
スルホン酸エステル基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CHCHO−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH)CHO−もしくは−CHCHCHO−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0138】
フェノキシ基を有するアミン化合物は、フェノキシ基を有する1または2級アミンとハロアルキルエーテルを加熱して反応させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル、クロロホルム等の有機溶剤で抽出することにより得ることができる。または、1または2級アミンと末端にフェノキシ基を有するハロアルキルエーテルを加熱して反応させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラアルキルアンモニウム等の強塩基の水溶液を添加した後、酢酸エチル、クロロホルム等の有機溶剤で抽出することにより得ることができる。
【0139】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上で用いられる。
塩基性化合物の分子量は、250〜1000であることが好ましく、より好ましくは250〜800、更に好ましくは400〜800である。
塩基性化合物の含有量は、該組成物の全固形分に対して、1.0〜8.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜5.0質量%、更に好ましくは2.0〜4.0質量%である。
【0140】
〔4〕固形分濃度および溶剤(D)
本実施形態のレジスト組成物は、上記の成分を溶剤に溶解して、調製する。
レジスト組成物は、冷蔵、室温等で保存され、保存期間内で性能変化がないことが望まれるが、保存後では、感度変動が生じてしまう問題があった。
本実施形態の構成において、レジスト組成物中の全固形分濃度を1.0〜4.5質量%に調整することで感度変動を著しく抑制できることを見出した。
レジスト組成物中の全固形分濃度は、好ましくは2.0〜4.0質量%、更に好ましく
は2.0〜3.0質量%である。
全固形分とは、組成物から溶剤を除いたものに相当し、組成物から形成される、乾燥後の塗膜の質量に相当する。
【0141】
レジスト組成物の調製のための溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等などの有機溶剤が好ましく、更に好ましくは、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルであり、特に好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
溶剤は、1種単独でも2種以上を混合した混合溶剤であってもよい。
全溶剤量のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルを50質量%以上含有することが特に好ましく、50〜80質量%含有することが最も好ましい。プロピレングリコールモノメチルエーテルと併用する溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチルが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが最も好ましい。
【0142】
本実施形態のレジスト組成物には、上記成分のほかに、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(E)、酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(F)、必要に応じてさらに染料、可塑剤、上記(E)成分以外の界面活性剤、光増感剤、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物等を含有させることができる。
【0143】
〔8〕パターン形成方法
本実施形態のレジスト組成物は、基板など支持体上に塗布され、レジスト膜を形成する。このレジスト膜の膜厚は、0.02〜0.1μmが好ましい。
基板上に塗布する方法としては、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
【0144】
例えば、レジスト組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、レジスト膜を形成する。なお、予め公知の反射防止膜を塗設することもできる。
当該レジスト膜に、電子線、X線またはEUVを照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。埋め戻し組成物の塗布によるレジストダメージを一層効果的に防止するために、パターンを形成したレジスト膜に加熱硬化処理(ポストベーク)を施してもよい。
【0145】
現像工程では、アルカリ現像液を次のように用いる。レジスト組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
【0146】
上記で説明したEUV露光感光性の樹脂については、特願2009−145677号明細書(特開2010−085971号公報)を参照することができる。なお、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0147】
<反転材料>
本実施形態の間隙埋め込み用組成物は、パターニング技術の反転材料として用いることが好ましい(図1参照)。反転材料として、感光性樹脂パターンに間隙埋め込み用組成物を塗布する方法は特に限定されないが、適宜の公知の塗布方法を適用することができる。例えば、スピンコート法、ディップコート法、ローラーブレード法、スプレー法などを適用することができる。必要に応じて、塗布された塗膜には加熱処理などを施し、塗膜中に含まれる溶媒を除去することが好ましい。
【0148】
塗布量としては、膜厚として好ましくは20〜1000nmなる条件であり、より好ましくは25〜200nmであればよい。
【0149】
<間隙埋め込み用組成物の処理>
間隙埋め込み用組成物を反転材料として半導体基板上に適用し、その後に、溶媒を除去することが好ましい。そのために、塗布後の塗膜を好ましくは60〜200℃、より好ましくは100〜150℃の条件下に、好ましくは1〜10分、より好ましくは1〜5分放置することにより行う。なお、該溶媒除去は、異なる条件で2回以上にわたって実施してもよい。
【0150】
本実施形態において、上記塗布された反転材料(間隙埋め込み用組成物)は、加熱し、さらに硬化させることが好ましい。このようにすることで、その後の半導体基板のエッチングにおいて良好なレジストパターンとして機能し好ましい(図1(d)、(e)参照)。その加熱温度は塗膜が硬化すれば特に制限されないが、通常、150〜400℃であることが好ましい。なかでも、150〜250℃が好ましく、125〜225℃がより好ましい。上記加熱条件であれば、塗膜が十分に硬化し、優れた膜とすることができる。加熱時間としては特に制限されないが、1〜60分であることが好ましく、1〜30分であることがより好ましい。加熱の方法としては特に制限されず、ホットプレート、オーブン、ファーネス等による加熱を適用することができる。
【0151】
加熱の際の雰囲気としては特に制限されず、不活性雰囲気、酸化性雰囲気などを適用することができる。不活性雰囲気は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより実現できる。酸化性雰囲気は、これら不活性ガスと酸化性ガスの混合ガスにより実現することができる他、空気を利用してもよい。酸化性ガスとしては、例えば、酸素、一酸化炭素、二窒化酸素などを挙げることができる。加熱工程は、加圧下、常圧下、減圧下または真空中のいずれの圧力でも実施することができる。
【0152】
上記加熱処理により得られる反転材料パターン(硬化膜)(図1 符号41参照)は、主に有機酸化ケイ素(SiOC)により構成されている。これにより、必要により、例えば40nmを切るような微細パターンであっても、被加工膜を精度良くエッチング加工することができ、最先端の半導体素子の製造工程にも好適に対応することができる。
【0153】
<アッシング>
アッシングは、公知のドライプラズマ装置を用いて行うことができる。また、ドライアッシング時のソースガスとしては、被エッチ膜の元素組成にもよるが、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、H、NHのガス等を使用することができる。尚、これらのガスは混合して用いることもできる。
【実施例】
【0154】
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1・比較例1)
フェニルトリエトキシシランと必要によりメチルトリエトキシシランを用いて、加水分解・縮合反応を行った。このときに用いた溶媒はエタノールである。得られた加水分解縮合物について、下記の表2に示す加水分解縮合物の含有量となるように塗布用溶媒中に含有させ間隙埋め込み用組成物を調製した。溶媒の組合せについては、表3に示している。アリールオキシシラン成分の溶媒中での含有量は、すべての試料において、組成物中5質量%とした。また、アリールオキシシラン化合物は重量平均分子量約5000のものとして組成物中に含有させた。なお、上記重量平均分子量は先に説明の手順に沿ってGPCにより確認した。
【0155】
(合成例)樹脂(RB−1)の合成
p−アセトキシスチレン、(4‘−ヒドロキシフェニル)メタクリレートを60/40の割合(モル比率)で仕込み、テトラヒドロフランに溶解し、固形分濃度20質量%の溶液100mLを調製した。この溶液に、メルカプトプロピオン酸メチル3mol%、および和光純薬工業(株)製重合開始剤V−65を4mol%加え、これを窒素雰囲気下、4時間かけて60℃に加熱したテトラヒドロフラン10mLに滴下した。滴下終了後、反応液を4時間加熱、再度V−65を1mol%添加し、4時間攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、ヘキサン3Lに晶析、析出した白色粉体をろ過により集めた。
13NMRから求めたポリマーの組成比は58/42であった。また、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は2200、分散度(Mw/Mn)は1.30であった。
得られた樹脂を真空乾燥した後、脱水THF(テトラヒドロフラン)100mlに溶解させた。そこへシクロヘキシルビニルエーテル10mlを添加、攪拌したところへ、p−トルエンスルホン酸100mgを添加し、3時間反応させた。
反応液にトリエチルアミン1mlを添加し中和した後、酢酸エチル200mlを添加、さらに蒸留水500mlを加えて分液、洗浄を3回繰り返した。酢酸エチル層をヘキサン再沈して目的の樹脂RB−1(組成モル比(43/15/32/10)、重量平均分子量2500、分散度1.30を得た。そのガラス転移温度をDSCにて測定したところ110℃を示した。
また、そのほかの樹脂についても、同様の方法で合成した。
【0156】
<レジスト調製>
下記表1に示した成分を、同表に示した混合溶剤に溶解させ、これを0.1μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して表1に示す全固形分濃度(質量%)のポジ型レジスト溶液を調製し、下記のとおり評価を行った。表1に記載した各成分の固形分濃度(質量%)は、全固形分を基準とする。界面活性剤の添加量は、レジスト組成物の全固形分中0.1質量%である。樹脂の固形分濃度は、レジスト組成物の全固形分量から光酸発生剤、塩基性化合物、界面活性剤を除いた量である。
【0157】
〔酸分解性樹脂〕
以下に実施例に用いた酸分解性樹脂の構造および、分子量、分散度を示す。
【0158】
【化12】

【0159】
【化13】

【0160】
〔酸発生剤〕
表1に示す酸発生剤は、先に例示したものに対応する。
〔塩基性化合物〕
【0161】
【化14】

【0162】
〔界面活性剤〕
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
【0163】
〔溶剤〕
A1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
B1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0164】
【表1】

【0165】
シリコンウェハ上にSiOの被加工物膜をスピンコートにより100nmの厚さで形成した。その上に、間隙幅及びアスペクト比が下記表3のようになるように、上記のEUV感光用レジスト試料を用いて、レジストパターンの壁状部の幅(図1の幅vに相当)が約22nmのレジストパターンを作製した。具体的には、平面視において線状の溝が多数延びるよう上記レジストパターンを形成した。ただし、このときに照射した電子線はEUV(リソテックジャパン社製、波長13nm)とした。これらの幅や深さ等の寸法は、必要な断面で試験体を切断し、走査型電子顕微鏡により観察して測定した。
【0166】
得られた埋め込み用組成物(表2)を適用した基板試験体に対し、下記の項目について評価を行った。
[塗布性]
上記埋め込み用組成物を塗布した基板試験体(加熱処理前)を光学顕微鏡で観察した。結果を下記に区分して判定した。
AA:ムラがないもの
A: 若干ムラがあるが許容できるもの
B: ムラが目立つもの
C: ムラを超えハジキが生じているもの
【0167】
[レジスト膜へのダメージ性]
レジスト膜を塗布溶媒(表3)に1分間浸漬した場合の残膜率によって評価した。その結果を下記に区分して判定した。
AA: 残膜率95%以上
A: 残膜率95%未満90%以上
B: 残膜率90%未満85%以上
C: 残膜率85%未満70%以上
D: 残膜率70%未満
一般的な使用においては本評価で「B」以上が望ましいが、特定の使用条件においては「C」であっても適合する。「D」は半導体素子製造上の要求性能を満たさない。
【0168】
[埋込性]
上記埋め込み用組成物を適用した半導体基板試料(加熱処理後)について、各溝部の断面が露出するように切断し、これを操作型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を下記に区分して判定した。
AA:ボイドがないもの
A: 直径5nm未満のボイドが確認されたもの
B: 直径5nm以上10nm未満のボイドが確認されたもの
C: それ以上のボイドがあるもの
【0169】
[平坦性]
上記埋め込み用組成物を適用した半導体基板試料(加熱処理後)について、レジストパターン粗(iso)/密(dense)部周辺で各溝部の断面が露出するように切断し、その断面をSEMで観察した。その結果を下記に区分して判定した。なお、図2はiso/dense部周辺の状態を模式的に示したものであり、その膜厚差eが小さいほど好ましい。
AA:膜厚差(e)が5nm以下のもの
A: 膜厚差(e)が5nmを超え10nm以下のもの
B: 膜厚差(e)が10nmを超え15nm以下のもの
C: 膜厚差(e)がそれを超えるもの
【0170】
[アッシング選択比]
レジスト膜に対するアッシング選択比を測定し、その結果を表3に記載した。
以下の条件でアッシング処理を行った。
ドライエッチング装置(日立ハイテクノロジーズ社製、U−621[商品名])にて、RFパワー:600W、アンテナバイアス:100W、ウエハバイアス:0W、チャンバーの内部圧力:1.0Pa、基板温度:20℃、混合ガスのガス種及び流量をO:25mL/min.、Ar:500mL/min.とし、22秒のアッシング処理を実施した。
【0171】
[表2]
―――――――――――――――――――――――――――
組成物 MTES PhTES PhTES
質量% 質量% 重量平均分子量
―――――――――――――――――――――――――――
1−1 0 100 3,000
1−2 0 100 5,000
1−3 0 100 10,000
1−4 0 100 20,000
1−5 0 100 50,000
c1 100 0 −
2−1 25 75 5,000
―――――――――――――――――――――――――――
PhTES: フェニルトリエトキシシラン
MTES : メチルトリエトキシシラン
【0172】
【表3】

【0173】
上記の結果から分かるとおり、本発明の埋め込み用組成物によれば、EUV感光性のレジストを用いた場合にも、そのレジストパターンの間隙に埋め込み組成物として用いたとき、間隙埋め込み性、塗布性、平坦性、感光性樹脂パターンのダメージ抑制性、高アッシング選択比が実現されることが分かる。
【0174】
(実施例2・比較例2)
上記実施例1と同様にして、EUVレジストR1,R4〜10についても同様に埋め込み組成物を適用した反転プロセス試験を行なった。これらのEUVレジストに対しても本発明の埋め込み組成物及び方法によれば、間隙埋め込み性、塗布性、平坦性、感光性樹脂パターンのダメージ抑制性、高アッシング選択比において優れた性能が発揮されることを確認した。
【0175】
(参考比較例)
特開2008−287176の実施例1に沿って、以下のようにして、樹脂組成物を調製した。無水マレイン酸0.42gを水18.2gに加熱溶解させてマレイン酸水溶液を調製した。次に、メチルトリエトキシシラン30.5g及び4−メチル−2−ペンタノール50.8gをフラスコに入れた。このフラスコに、冷却管と予め調製しておいたマレイン酸水溶液を入れた滴下ロートとをセットし、オイルバスにて100℃で加熱した後、マレイン酸水溶液をゆっくり滴下し、100℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを放冷してからエバポレータにセットし、反応中生成したエタノールを除去して反応生成物(ポリシロキサン:重量平均分子量 1400)を得た。その後、上記のようにして得られたポリシロキサン26.7gを有機溶剤(4−メチル−2−ペンタノール)23.3gに溶解した。次いで、この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、実施例1のパターン反転用樹脂組成物を得た(s1)。
【0176】
この組成物試料s1を用いて上記と同様の項目の評価を行なった。結果は下記のとおりとなった。なお、この比較例で採用した幅−ARは22−2であった。
レジストダメージ性:D
埋め込み性 :−
平坦性 :−
アッシング選択比 :−
【符号の説明】
【0177】
1 感光性樹脂パターン(レジストパターン)
2 被加工物膜
3 シリコンウェハ
4 反転材料
41 反転材料パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に形成された感光性樹脂からなるパターン形状の間隙に埋め込む組成物であって、少なくともアリールオキシシラン原料の加水分解縮合物と、溶媒として芳香族化合物を有することを特徴とする間隙埋め込み用組成物。
【請求項2】
前記溶媒がメシチレン、クメン、キシレン、トルエン、及びベンゼンから選択される化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記加水分解化合物がポリフェニルシロキサン(PPSQ)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記加水分解縮合物の平均分子量が1000〜50000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記加水分解に用いるアリールオキシシランを溶解させる溶媒が、前記加水分解縮合物を含有させる溶媒とは異なる請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記パターン形状をなす感光性樹脂を除去して、その間隙部分に残された加水分解縮合物の硬化膜をレジストとして、半導体基板をエッチング加工するパターニング技術に用いる請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記感光性樹脂からなるパターン形状の間隙の幅が32nm以下であり、該間隙のアスペクト比(深さ/幅)が1.5以上であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記感光性樹脂がEUV露光による感光性の樹脂であることを特徴とする請求項6又は7記載の組成物。
【請求項9】
半導体基板の表面上に形成された感光性樹脂からなるパターン形状の間隙に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物を塗布して埋め込む間隙埋め込み方法。
【請求項10】
前記組成物を埋め込む前に感光性樹脂のパターンを加熱硬化する工程を経ることを特徴とする請求項9記載の間隙埋め込み方法を用いた半導体素子の製造方法。
【請求項11】
半導体基板の表面上に形成された感光性樹脂からなるパターン形状の間隙に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物を塗布して埋め込み、その後、前記パターン形状をなす感光性樹脂を除去して、その間隙部分に残された加水分解縮合物の硬化膜をレジストとして前記半導体基板をエッチング加工する半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記感光性樹脂がEUV露光による感光性の樹脂であることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
前記埋め込み用組成物を塗布する前に、
アルコキシシラン原料を有機溶媒中で加水分解により縮合させ、重量平均分子量が3000〜50000である加水分解縮合物とし、前記有機溶媒を切り替えて、前記総炭素数7〜9のエーテル化合物及び/又は総炭素数6〜9のアルキルアルコール化合物を溶媒として含む埋め込み用組成物を調製することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−185496(P2012−185496A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32100(P2012−32100)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】