説明

間隙水圧測定装置、それを用いた軟弱地盤の改良工法、地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法、及び盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法

【課題】何度も再利用可能な間隙水圧測定装置、それを用いた軟弱地盤改良工法、地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法、及び盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法を提供する。
【解決手段】上端側21aが地上まで延びて配置される管体21と、前記管体21の開放された下端側21bに設けたフィルタ部22と、前記上端側に取り付けた圧力センサー24とを備えており、前記管体の上端側21aには前記フィルタ部を通して管内に入り込んだ地盤内の間隙水の水面との間に空気溜23が形成されるようになっており、前記管体の上端側21aに形成される空気溜23内には圧力センサー24の受圧部24aが露出するように配置されており、この圧力センサー24の受圧部24aによって地盤内の間隙水圧の変動によって変化する前記管内に入り込んだ間隙水の水位の上昇又は降下による前記空気溜23内の空気圧の変化を測定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隙水圧測定装置、それを用いた軟弱地盤の改良工法、地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法、及び盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法に関する。詳細には、簡単に施工することができ、しかも高価な圧力センサーは、埋め殺しをせずに何度も再利用することができる間隙水圧測定装置、それを用いた軟弱地盤の改良工法、地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法、及び盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば軟弱地盤上に家屋、上下水道、擁壁あるいは舗装道路などの構造物を設置する場合、これら構造物を地盤の沈下が完全に終了する前に設置すると、該軟弱地盤はその支持力がきわめて弱いことから、これら構造物の荷重を支えきれずに不等沈下を生じ、この結果、軟弱地盤上の構造物が損壊してしまうことになる。これは単なる構造物の損壊に止まらず、人命をも巻き込んだ大災害に発展する恐れもある。
【0003】
このため、軟弱地盤上への構造物の設置は、地盤の沈下が完全に終了するのを待って行われていた。この際、軟弱地盤の沈下終了は、沈下計の挙動を測定して判断していた。また確実を期すため、ボーリングによって資料を採取し、強度試験などの分析を行って、この分析結果も合わせて終了判断を行うこともあった。
【0004】
ところが、沈下計の挙動を測定することのみで、軟弱地盤の沈下終了を判断する場合、その測定には人為的な誤差が含まれてしまい正確な測定を行うことは難しく、適正な沈下終了の判断を行うことができず、しかも軟弱地盤といっても種類は様々であり、その深度も地層も異なっていることから、例えば沈下量が小さくなったなどの沈下計の挙動だけから、終了判断するのは余りに無謀であり、危険でもあった。
【0005】
ボーリングによる資料の採取、分析は、軟弱地盤の沈下終了を判断する上で大変に有効な手段ではある。しかしながら、ボーリングによる資料の採取、分析には、多額の費用を要するので、ボーリング調査できる箇所も限られていた。
【0006】
このような事情から、軟弱地盤上に構造物を設置する場合には、安全を期して予め支持杭などを地盤中に打設し、その上に構造物や盛土を設置するという方法が採られていた。
【0007】
このような技術的課題を鑑み、本発明者は、軟弱地盤の動態を高い精度で把握することで、正確な軟弱地盤の沈下終了の判断を下せるようにした軟弱地盤の動態把握システムを提供している(例えば特許文献1参照)。
【0008】
そのシステムは、軟弱地盤に対する上積荷重を把握する手段と、上積荷重による地盤の沈下量を把握する手段と、地盤の沈下に伴う圧密水の排水量を把握する手段と、地盤より排水された水の温度を把握する手段とからなることを特徴とするものである。
【0009】
このシステムにおいて、発明者は、軟弱地盤に対する上積荷重の把握手段として、図6に示すように、軟弱地盤Aの表層を覆う気密シート14と、軟弱地盤A中に予め設置しておいた真空ポンプ13に接続する通水管11と、軟弱地盤A中に所定の間隔をおいて打設され、前記通水管11に上端が接続するドレーン材12と、軟弱地盤A中に設置された圧力センサーRとからなるものを提案しており、これにより、気密シート14で覆われ、真空ポンプ13に接続する通水管11及びドレーン材12を介して負圧状態におかれた軟弱地盤A中及びまたは軟弱地盤表層の真空度を前記圧力センサーRによって測定するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平09−125355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上記システムにおいて、軟弱地盤に対する上積荷重の把握手段として使用する圧力センサーは大変に高価であり、正確を期すためには改良する地盤内であって地盤深くにいくつも設置する必要があり、しかもその圧力センサーは施工後、埋め殺しとされるため、軟弱地盤内に圧力センサーを設置して上積荷重の把握手段とするには、大変に多くの手間と費用とを要していた。また、従来のシステムでは、施工後、圧力センサーを地盤内に埋め殺しとしていたため、圧力センサーのキャリブレーションは埋設前に行うだけであり、しかも該センサーが故障した場合、対処不能であった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、簡単に施工することができ、しかも高価な圧力センサーは、埋め殺しをせずに何度も再利用することができる新規な間隙水圧測定装置、それを用いた軟弱地盤の改良工法、地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法、及び盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、地盤内の間隙水圧を測定する装置であって、
地盤内の所定深さ位置に配置される共に上端側が地上まで延びて配置される管体と、 前記管体の開放された下端側に設けたフィルタ部と、
前記管体の閉鎖された上端側に取り付けられる圧力センサーと、
を備えており、前記管体の上端側には前記フィルタ部を通して管内に入り込んだ地盤内の間隙水の水面との間に空気溜が形成されるようになっており、
前記管体の上端側に形成される空気溜内には圧力センサーの受圧部が露出するように配置されており、この圧力センサーの受圧部によって前記地盤内の間隙水圧の変動によって変化する前記管内に入り込んだ間隙水の水位の上昇又は降下による前記空気溜内の空気圧の変化を測定するようにしたことを特徴とする間隙水圧測定装置をその要旨とした。
【0014】
請求項2記載の発明は、地盤内の所定深さ位置に複数の管体が間隔を置いて配置され、前記複数の管体の上端側が1つの圧力センサーにまとめて取り付けられており、前記1つの圧力センサーによって前記複数の各管体の上端側に形成される空気溜内の空気圧が測定されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の間隙水圧測定装置をその要旨とした。
【0015】
請求項3記載の発明は、改良する軟弱地盤内に真空圧を利用して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、前記軟弱地盤中の間隙水を排水することで、該軟弱地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、前記軟弱地盤に対する上積荷重を把握するために該地盤内に配置される間隙水圧測定手段として用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置をその要旨とした。
【0016】
請求項4記載の発明は、地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤内の地下埋設物近傍に配置され、前記地盤の変動に伴う間隙水圧の変動を測定するために用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置をその要旨とした。
【0017】
請求項5記載の発明は、盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤内に配置され、前記地盤の変動に伴う間隙水圧の変動を測定するために用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置をその要旨とした。
【0018】
請求項6記載の発明は、改良する軟弱地盤内に真空圧を利用して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、前記軟弱地盤中の間隙水を排水することで、該軟弱地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、
前記軟弱地盤に対する上積荷重を把握するために請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置を用いたことを特徴とする軟弱地盤の改良工法をその要旨とした。
【0019】
請求項7記載の発明は、地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤内の地下埋設物近傍に配置され、前記地盤の変動に伴う間隙水圧の変動を測定するために請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置を用いたことを特徴とする地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法をその要旨とした。
【0020】
請求項8記載の発明は、盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤内に配置され、前記地盤の変動に伴う間隙水圧の変動を測定するために請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置を用いたことを特徴とする盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法をその要旨とした。
【発明の効果】
【0021】
本発明の間隙水圧測定装置にあっては、管体を地盤内の所定深さ位置に配置する共に上端側が地上まで延びて配置したとき、前記管体の開放された下端側に設けたフィルタ部を通して地盤内の間隙水が該管体内に入り込み、前記管体の閉鎖された上端側に該管体内に入り込んだ地盤内の間隙水の水面との間に空気溜が形成されるようになっている。
【0022】
そして、前記地盤内の間隙水圧の変動によって変化する前記管内に入り込んだ間隙水の水位の上昇又は降下による前記空気溜内の空気圧の変化を前記空気溜内に露出するように配置される圧力センサーの受圧部によって測定するようになっているのである。このため、従来の軟弱地盤の動態把握システムのように、軟弱地盤深くにいくつもの圧力センサーを設置する必要が無く、簡単に施工することができる。また、圧力センサーは、管体の閉鎖された上端側に配置されるため、埋め殺しをせずに何度も再利用することができる。このため、圧力センサーのキャリブレーションを常時行うことができ、より正確な間隙水圧の測定ができるようになっている。また、圧力センサーを埋め殺しにしないため、該センサーが故障した場合、いつでも簡単に対処が可能である。
【0023】
本発明の間隙水圧測定装置は、上記作用効果を奏するものであり、軟弱地盤の改良工法における上積荷重の把握手段として、地下埋設物の地盤変動に伴う損傷の未然察知手段として、或いは盛土構造物の地盤変動に伴う損傷の未然察知手段として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の間隙水圧測定装置を軟弱地盤の改良工法における上積荷重の把握手段として適用した例であって、該間隙水圧測定装置を地盤内に配置した状態を示す模式図。
【図2】図1に示す間隙水圧測定装置を示す拡大模式図。
【図3】本発明の間隙水圧測定装置を軟弱地盤の改良工法における上積荷重の把握手段として適用した別例を示す模式図。
【図4】地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷するのを未然に察知する手段として本発明の間隙水圧測定装置を適用した例を示す模式図。
【図5】盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷するのを未然に察知する手段として本発明の間隙水圧測定装置を適用した例を示す模式図。
【図6】従来の軟弱地盤の改良工法における上積荷重の把握手段として適用した例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の間隙水圧測定装置、それを用いた軟弱地盤の改良工法、地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法、及び盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法をさらに詳しく説明する。本発明の間隙水圧測定装置(以下、単に装置という)は、硬質地盤へと改良される軟弱地盤、電話線や上水道などのパイプやケーブルといった地下埋設物が埋設される地盤、高速道路、堤防道路、鉄道、滑走路などの盛土構造物が造成される地盤、法面背後の地盤、或いはトンネル周囲の地盤内に配置されて、該地盤内の間隙水圧を測定する装置である。
【0026】
図1及び図2に示すように、本発明の装置20は、地盤A内の所定深さ位置に配置される共に上端側21aが地上まで延びて配置される管体21と、前記管体21の開放された下端側21bに設けたフィルタ部22と、前記管体21の閉鎖された上端側に取り付けられる圧力センサー24とを備えている。
【0027】
管体21は、間隙水が自由に出入り可能なチューブ状物であって、地盤A内にマンドレルなどの装置によって圧入でき、かつ地盤の圧力に対抗できる程度の剛性を備えたものが好ましい。具体的には塩ビ管などのフレキシブル管を挙げることができる。また、管の補強または保護を目的として管周りに樹脂層を設けたり、剛性枠や鞘管で覆ったりした二重管構造のものも管体21として用いることができる。
【0028】
管体21の下端側21bは開放されており、該管体21を地盤A内の所定深さ位置に配置したとき、管体21内には地盤A内の間隙水が入り込み、その間隙水の水面は圧力に従って地下水高さまで上昇するようになっている。
【0029】
また、管体21の開放された下端側21bにはフィルタ部22が設けられており、管体21内に土砂等の進入が阻止されるようになっている。フィルタ部22としては、例えばポーラスストーンや籠などを挙げることができ、その表面を布や透水性シートで覆うことでフィルタ部22の目詰まりを防ぐようにすることもできる。
【0030】
管体21の上端側21aは地上まで延びて配置される。そして、管体21の下端側21bのフィルタ部22を通して間隙水圧に従って押し上げられた前記間隙水の水面との間に空気溜23が形成されるように長さが調整されるようになっている。この管体21の上端側21aにはキャップ25が取り付けられて閉塞されるようになっている。尚、図1に示す例では、管体21の上端側21aは、地盤Aと盛土との境界に沿って側方まで延ばされた後、地盤A上面から立ち上げるように配置される。
【0031】
この管体21の上端側21aには開口(図示しない)が設けられており、この開口(図示しない)を覆うように圧力センサー24が取り付けられている。圧力センサー24の受圧部24aは、前記開口(図示しない)の位置に配されて、該受圧部24aが空気溜23内に露出するようになっている。そして、地盤A内の間隙水圧が変動すると、その圧力に従って地盤A内に配置された管体21内に入り込んだ間隙水の水位が上昇又は降下する。地盤A内の間隙水圧の変動に伴って間隙水の水位が上昇又は降下すると、これに従って空気溜23内の空気の圧力が高くなったり低くなったりする。空気溜23内に露出するように配されている圧力センサー24の受圧部24aはこの空気圧の変化を捉えるのである。すなわち地盤A内の間隙水圧の変動は、管体21内の間隙水の水位の上昇又は降下として現れ、その間隙水の水位の上昇又は降下は、空気溜23内の空気を膨張又は収縮させ、空気溜23内の空気圧を変化させるので、この空気圧の変化を測定することで、地盤A内の間隙水圧の変動を把握することができるのである。尚、圧力センサーとしては、特に限定されず、市販されているものを用いることができる。
【0032】
図1に示す例では、圧力センサー24によって測定される空気溜23内の空気圧の変化を電気信号に変換し、無線で管理用コンピュータ26に送信されるようにしており、これにより、地盤A内の間隙水圧の変動がリアルタイムでコンピュータ管理できるようになっている。
【0033】
尚、間隙水中に溶存する空気は、空気溜23内の空気が収縮すると、同時に管体21内の間隙水中の溶存空気が脱気され、管体21の上端側21aの空気溜23内に集まるようになるので、間隙水中の溶存空気が、間隙水圧の変動の把握に悪影響を与えることはない。また、管体21の上端側21aは、地上に配置されるため、その空気溜23内の空気は、太陽熱などの影響を受けて膨張又は収縮することが考えられる。しかし、空気溜23内の空気量は少ないため、測定結果に直接影響する恐れはない。より精度の高い測定を行うためには、管体21の上端側21aを断熱材などで覆うことが望ましい。
【0034】
次に、図3に示す形態について説明する。間隙水圧の測定は、地盤A内の所定深さ位置に複数の管体21を間隔を置いて配置するなど、測定点を多くすればするほど、より精度の高い測定結果を得ることができ、信頼性はより高まる。しかし、管体21毎に圧力センサー24を取り付け場合、測定点の数だけの圧力センサーが必要となり、その分コストも高くなる。
【0035】
図3に示す形態は、地盤A内の所定深さ位置に複数の管体21を間隔を置いて配置し、これら複数の管体21の各上端側21aを1つの圧力センサー24にまとめて取り付けることで、1つの圧力センサー24で複数の各管体21の上端側21aに形成される空気溜(図示しない)内の空気圧の変化を測定できるようにしたものである。図3に示すように、複数の管体21の各上端側21aを1つの圧力センサー24にまとめて取り付けた場合、使用する圧力センサーの数は大幅に削減できるというメリットがある。尚、このような態様に使用する圧力センサーとしては、例えば複数の各管体21の上端側21aに形成される空気溜(図示しない)内の空気圧の変化を各管体21毎に順に繰り返して測定し、データ化できるようにしたものなどを挙げることができる。
【0036】
次に、本発明の装置を軟弱地盤の改良工法に適用した例について説明する。図1に示す改良工法は、改良する軟弱地盤(改良地盤)A中に真空圧を負荷することで、前記改良地盤A中に改良地盤周辺部Bと隔離された減圧領域を造り出すものであり、複数の鉛直ドレーン材31を上端部を残して地盤A中に所定の間隔をおいて打設することにより地盤A中に多数の鉛直排水壁を造成し、前記鉛直ドレーン材31の上端部と接触するように真空タンク33を介して真空ポンプ34に連結した水平ドレーン材32を配置し、次いで、地盤A上を前記鉛直ドレーン材31の上端部及び水平ドレーン材32とともに気密シート35で覆い、この後、前記真空ポンプ34を作動させる工程からなる。
【0037】
真空ポンプ34からの真空圧は真空タンク33を経てこれに接続する水平ドレーン材32へと伝達され、改良地盤Aの表層は負圧状態となる。さらに改良地盤Aの表層が負圧状態となることで、改良地盤A中の間隙水圧との間には差が生じ、この圧力差によって鉛直ドレーン材31によって軟弱地盤A中に造成された鉛直排水壁を通して地盤A中の水と空気とが地盤A表層へと吸い出され、地盤A外へ排出される。この結果、改良地盤A中も負圧状態となり、真空度が高くなる。
【0038】
こうして略真空となった改良地盤Aを大気圧が荷重となって抑え付けることになるため、この荷重によって変動する改良地盤A中の間隙水圧を測定することで、改良地盤Aに加わる上載荷重が把握できるのである。地盤Aの沈下は、該地盤Aに加わる上載荷重により生じることから、荷重の大小を把握することで、地盤Aの沈下終了を判断する材料を得ることができるのである。尚、地盤Aの沈下終了を判断する材料には、地盤に対する上積荷重のほかに、地盤の沈下量や間隙水の排水量があり、これらを総合して地盤の沈下終了を判断することになる。
【0039】
尚、図1に示す例では、間隙水圧の測定点が、地盤Aの最深部、中間部、表層部となるように、管体21の長さを調整して配置している。また、地盤A内の所定深さ位置に複数の管体21を間隔を置いて配置し、図3に示すように複数の管体21の各上端側21aを1つの圧力センサー24にまとめて取り付けることで、コストの低減化を図ると共により精度の高い測定結果を得ることができるようになっている。
【0040】
次に、地下埋設物が埋設される地盤や盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法に本発明の装置を適用した例について説明する。近年、地下水の過剰揚水によって地下水位が低下し、地盤の沈下を引き起こす例が数多く報告されている。沈下を引き起こした地盤中に例えば電話線や上水道などのパイプやケーブルといった地下埋設物が埋設されていたならば、或いはその地盤上に高速道路、堤防道路、鉄道、滑走路などの盛土構造物が造成されていたならば、これら地下埋設物や盛土構造物が大きな損傷を受け、その機能が失われた場合、国民生活に多大な被害を与えることになる。
【0041】
このため、これら地下埋設物が埋設される地盤や盛土構造物を造成する地盤は、埋設前又は造成前に十分に地盤の調査がなされるが、地下水の過剰揚水による地下水位の低下に伴う地盤の沈下など、事後的に生じる地盤の沈下は予測困難である。
【0042】
そこで、そのような地盤内には圧力センサーを設置して該地盤の沈下量を測定することで、地下埋設物や盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知できる監視システムが提案されている。ところが、圧力センサーの設置場所を電話線や上水道などの地下埋設物が埋設される地盤内や高速道路などの盛土構造物を造成する地盤内であって、地盤の変動、沈下によって被害が予想される場所に限ったとしても、そのエリヤは広く、そのようなシステムを導入するには、圧力センサーの設置作業など、莫大な費用が予測される。
【0043】
本発明の装置を採用した場合、低コストでその監視システムを実現することができる。図4は、地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷するのを未然に察知する手段として本発明の装置を適用した例を示すものである。装置20は、地盤A内の地下埋設物41近傍に配置される。地下水の低下を原因として地盤Aの変動が生じた場合、管体21内に入り込む間隙水の水位の上昇又は降下として現れる。間隙水の水位の上昇又は降下は、図2に示すように空気溜23内の空気を膨張又は収縮させ、空気圧の変化させる。このため、この空気圧の変化を測定することで、地盤A内の間隙水圧の変動を把握でき、地下埋設物41が地盤Aの変動に伴って損傷するのを未然に察知することができるのである。
【0044】
図4に示す例では、管体21の上端側に設けた圧力センサー24によって測定される空気溜内の空気圧の変化が電気信号に変換され、無線で管理用コンピュータ26に送信される。この結果、地盤Aの変動がリアルタイムでコンピュータ管理できるようになっている。
【0045】
尚、図4に示す例では、間隙水圧の測定点が、地盤Aの最深部、中間部、表層部となるように、管体21の長さを調整し配置している。また、地盤A内の所定深さ位置に複数の管体21を間隔を置いて配置し、図3に示すように複数の管体21の各上端側21aを1つの圧力センサー24にまとめて取り付けることで、コストの低減化を図ると共により精度の高い測定結果を得ることができるようにしている。
【0046】
図5は、盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷するのを未然に察知する手段として本発明の装置を適用した例を示すものである。図5に示す例では、道路51下の地盤A内に複数の管体21を間隔を置いて、また深さを変えて配置している。また図4に示す例と同じく、複数の管体21の各上端側21aを1つの圧力センサー24にまとめて取り付けることで、コストの低減化を図ると共により精度の高い測定結果を得ることができるようにしている。
【0047】
図4に示す例と同様に、地下水の低下を原因として地盤Aの変動が生じた場合、管体21内に入り込む間隙水の水位の上昇又は降下として現れる。間隙水の水位の上昇又は降下は、図2に示すように空気溜23内の空気を膨張又は収縮させ、空気圧の変化させる。このため、この空気圧の変化を測定することで、地盤A内の間隙水圧の変動を把握でき、道路51(盛土構造物)が地盤Aの変動に伴って損傷するのを未然に察知できるようにしている。
【0048】
図5に示す例では、管体21の上端側に設けた圧力センサー24によって測定される空気溜内の空気圧の変化が電気信号に変換され、無線で管理用コンピュータ26に送信される。この結果、地盤Aの変動がリアルタイムでコンピュータ管理できるようになっている。
【0049】
尚、本発明は、図面に示した例に限定されず、例えば本発明の装置とGPSを組み合わせて、各測定点における絶対沈下量を測定するなど、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
21 ・・・管体
21a ・・・上端側
21b ・・・下端側
22 ・・・フィルタ部
23 ・・・空気溜
24 ・・・圧力センサー
41 ・・・地下埋設物
51 ・・・盛土構造物
A ・・・地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内の間隙水圧を測定する装置であって、
地盤内の所定深さ位置に配置される共に上端側が地上まで延びて配置される管体と、 前記管体の開放された下端側に設けたフィルタ部と、
前記管体の閉鎖された上端側に取り付けられる圧力センサーと、
を備えており、前記管体の上端側には前記フィルタ部を通して管内に入り込んだ地盤内の間隙水の水面との間に空気溜が形成されるようになっており、
前記管体の上端側に形成される空気溜内には圧力センサーの受圧部が露出するように配置されており、この圧力センサーの受圧部によって前記地盤内の間隙水圧の変動によって変化する前記管内に入り込んだ間隙水の水位の上昇又は降下による前記空気溜内の空気圧の変化を測定するようにしたことを特徴とする間隙水圧測定装置。
【請求項2】
地盤内の所定深さ位置に複数の管体が間隔を置いて配置され、前記複数の管体の上端側が1つの圧力センサーにまとめて取り付けられており、前記1つの圧力センサーによって前記複数の各管体の上端側に形成される空気溜内の空気圧が測定されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の間隙水圧測定装置。
【請求項3】
改良する軟弱地盤内に真空圧を利用して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、前記軟弱地盤中の間隙水を排水することで、該軟弱地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、前記軟弱地盤に対する上積荷重を把握するために該地盤内に配置される間隙水圧測定手段として用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置。
【請求項4】
地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤内の地下埋設物近傍に配置され、前記地盤の変動に伴う間隙水圧の変動を測定するために用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置。
【請求項5】
盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤内に配置され、前記地盤の変動に伴う間隙水圧の変動を測定するために用いられることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置。
【請求項6】
改良する軟弱地盤内に真空圧を利用して改良地盤周辺部と隔離された減圧領域を造り出し、前記軟弱地盤中の間隙水を排水することで、該軟弱地盤を硬質地盤へと改良する軟弱地盤の改良工法において、
前記軟弱地盤に対する上積荷重を把握するために請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置を用いたことを特徴とする軟弱地盤の改良工法。
【請求項7】
地下埋設物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤内の地下埋設物近傍に配置され、前記地盤の変動に伴う間隙水圧の変動を測定するために請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置を用いたことを特徴とする地下埋設物が埋設される地盤の動態把握方法。
【請求項8】
盛土構造物が地盤の変動に伴って損傷を受けるのを未然に察知するために、前記地盤内に配置され、前記地盤の変動に伴う間隙水圧の変動を測定するために請求項1又は2のいずれかに記載の間隙水圧測定装置を用いたことを特徴とする盛土構造物が造成される地盤の動態把握方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−231568(P2011−231568A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104813(P2010−104813)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(595107508)丸山工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】