説明

間隙率を求める装置及び方法

【課題】所定の圧力及び所定の温度に加圧された部屋に配置した基板に形成されている物質(特に、薄膜)の間隙率を求める装置及び非破壊方法に関する。
【解決手段】ガス物質(例えば、トルエン蒸気)が部屋1に導入され、所定時間後、部屋に配置した基板2に形成されている薄膜の間隙率が、少なくとも偏光解析測定によって求められる。特に、偏光解析器6から得られる光学的特性は、薄膜の間隙(ポア)に凝縮されたガス物質の量を求めるために利用される。その量は、薄膜の間隙率を計算するために利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された層又は層の一部の間隙率を求める装置を非破壊方法に関する。間隙率(特に、間隙の大きさの分布)は、多孔質材料の機械的・熱的・化学的特性を規定する。例えば、間隙の大きさの分布を知ることで、集積回路又は液晶ディスプレイの製造プロセスに対する上記層の適合性の明確な指標となる。
【背景技術】
【0002】
高度に複雑な多層金属層を有する集積回路を小型化するため及び上記集積回路を高速化するために、特に金属間誘電層として使用される低誘電材料が必要である。従来、金属間誘電体としてシリコン二酸化物を有する金属製の相互連結部材(主に、アルミニウム層)が利用されているが、この従来の方法は上述した傾向によって齎される厳格な仕様を満足できないものである。したがって、回路上の遅延の大部分が相互連結構造における抵抗及び容量により生じるという問題を解消するために、使用する誘電体の誘電率を低下させなければならない。そのことは多くの文献(例えば、低ε誘電体:CVDフッ素処理されたシリコン二酸化物」R.K.ラックスマン、表1、セミコンダクタ・インターナショナル、1995年5月、71〜74頁)で述べられている。したがって、小型化するためには、新たな低K材料について多大な研究が必要となる。低ε材料、低K材料、及び低誘電率材料は、少なくとも本明細書の目的上、低誘電定数を有する材料についての異なる表現である。
【0003】
新規な低K材料の研究の一部は、蒸着されるシリコン酸化物の特性を変更することに向けられた。また、シリコン酸化物の特性を偏向することに焦点が向けられ、新たな低K材料の研究が進行中である。これらのうち、新規な材料は、2.5〜3の範囲のK値を有する有機質のスピンオン材料と、一般には1.5以下のK値を有する無機質低K材料(例えば、キセロゲル)である。これら新規な材料の重要な特徴は、それらの間隙率(すなわち、間隙の体積)と間隙の大きさの分布である。相対間隙体積は誘電値を直接的に定義するもので、分光器による偏向解析法を用いた誘電定数の測定値と間隙率/密度のシュミレーション(例えば、ティー・ラモス等、「低誘電定数材料」、Mater.Res.Soc.Proc.443、ピッツバーグ、ペンシルベニア洲、1997年、第91頁)により評価できる。しかし、間隙の大きさの分布を測定することは非常に難しい。間隙の大きさの分布は、多孔質材料の機械的・熱的・化学的特性を決めるものである。したがって、間隙の大きさの分布を知ることにより、集積回路の製造プロセスに対する材料の適合性の明確な指標が得られる。間隙が開放されている場合、間隙の大きさの分布に関する情報は、吸収空隙測定法により得られる。
【0004】
吸着空隙測定法は、毛管凝縮と多孔質吸着剤から出る蒸気の脱着との過程に現れるヒステリシスループの有名な現象に基づく。毛管凝縮の理論(S.J.グレッグとS.W.シング、「吸着、表面積、及び空隙率」、Acad.Pr.,ニューヨーク、1982年)は、液体の凹状メニスカス上の平衡蒸気圧の変化によってヒステリシスの出現を説明している。蒸気はその相対圧力が単位の値以下でもソリッド基板の間隙に凝縮し得る、すなわち、蒸気圧が大気圧以下でも凝縮する。メニスカス曲面に作用する相対圧力の依存性がケルビン式で表される。
In(P/P0)=−2γVL(rmRT)
ここで、P/P0は、液体(液体表面は曲率rmのメニスカスを有する。)に対する平衡状態における相対蒸気圧、γとVLはそれぞれ表面張力と吸着剤のモル容積である。吸着−脱着のヒステリシスは、凝縮液のメニスカスの曲率半径が吸着により変化したときに現れる。すべてのP/P0値は、特定のrmに対応する。回転楕円状のメニスカスだけが、吸着中に形成される。これに対し、吸着は、回転楕円状のメニスカスと円筒状のメニスカスのいずれにも生じる。そのため、円筒メニスカスに対し平衡な間隙の有効サイズを求めるため脱着等温線を利用するのが好都合である。
【0005】
広範囲に適用される方法は、液体窒素を利用した吸着間隙測定法である。S.J.グレッグ等、「吸着、表面積、及び間隙率」、Acad.Pr.,ニューヨーク、1982年)。しかしながら、この最新の方法は、蒸気吸着及び脱着の際の試料を重量を計測することに基づくものであるため、大量の試料を分析する場合にのみ適用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、この非破壊法は、基板上に形成された薄層を分析するには不適当である。時に、上述した最新の方法を用いて空隙の大きさの分布を特徴付けるために、数十個の基板のフィルムを傷つける必要がある。また、窒素を用いた間隙測定法に必要な極めて低い温度を形成しなければならないことから別の問題を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、基板上に形成された部材の間隙率を求める方法を開示するものである。上記基板は、所定圧力で所定温度の加圧された部屋に配置される。上記方法は、上記部屋にガス物質を導入する工程と、所定時間後、少なくとも一つの偏向解析法により上記部材の間隙率を求める工程を有する。
【0008】
例えば、ガス物質は蒸気、又はガス、若しくはそれらの混合物である。適当なガス物質は、所定温度及び所定圧力(好ましくは、上記ガス物質の平衡蒸気圧以下の圧力)で、ガス物質と凝縮されたガス物質との両方で存在する物質である。上記ガス物質は、凝縮されたガス物質と薄膜との間の相互の影響が出来るだけ少ないものを選択するのが好ましい。また、上記所定温度は、室温であるのが好ましい。上記基板上に形成される部材の例としては薄膜、特に低誘電定数を有する有機材料又は無機材料からなる薄膜である。
【0009】
本発明の実施形態において、上記所定時間は、上記部屋において、上記ガス物質と凝縮された状態の上記ガス物質との間に平衡状態が形成されるように選択される。
【0010】
本発明の実施形態において、基板上に形成された部材の間隙率を求める方法は、
上記基板上に形成された部材の露出面に進入可能なガス物質を選択する工程と、
上記部屋の圧力を第1の所定値に設定する工程と、
上記部屋に上記ガス物質を導入する工程であって、上記ガス物質の温度は上記所定の一定温度にほぼ等しく、上記部屋の圧力値を測定する所定時間後、偏向解析測定を行なって上記部材の光学的特性を求める工程と、
上記部屋の圧力を段階的に変化させ、これにより、各段階後、及び所定の時間後、偏向解析測定によって上記光学的特性が求められる工程と、
少なくとも上記測定された光学的特性を用いて間隙率を計算する工程とを有する。
【0011】
本発明の他の形態において、基板上に形成された部材の間隙率を求める装置でが開示されており、この装置は、
内部に上記基板を配置可能な加圧可能な部屋と、
上記部屋の温度を所定値に固定する温度制御要素と、
上記部屋の圧力を変化させるポンプと、
ガス物質を導入する供給部と、
上記部屋に上記部材が配置されているとき、上記部材の光学的特性を求める偏向解析器と、
少なくとも第1の制御可能な要素と、少なくとも第2の制御可能な要素とを有し、上記第1の要素は上記ポンプと上記部屋との間に配置されて上記部屋の圧力を正確に調整でき、上記第2の要素は上記供給部と上記部屋との間に配置されて上記部屋に導入される上記ガス物質の量を正確に制御できるものである。
【0012】
本発明の他の形態において、装置はまた、制御要素と記録要素を有する。制御要素は、第1と第2の要素を制御する。記録要素により、部屋の圧力と、光学特性と、吸着−脱着曲線が記録され、これにより部材の間隙率が計算できる。
【0013】
本発明の他の形態には、基板上に形成された部材の間隙率を求める装置が開示されている。該装置において、第2の制御可能なよそは、少なくとも第1の材料と少なくとも第2の材料とならなるマイクロバルブである。上記第1の材料は導電性であり、上記第2の材料は弾性を有し、上記第1の材料と第2の材料は実質的に異なる熱膨張係数を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】基板上に形成された部材の間隙率を非破壊的に求める本発明の装置を概略図である。
【図2】部屋の中のトルエンの流れを制御するために使用する制御可能なマイクロバルブの本発明の一実施形態の概略図である。
【図3】トルエン蒸気の吸着−脱着サイクル中におけるSiO2(32)とキセロゲル(31)に対する偏向角を偏向解析器を用いて測定したグラフである。点(a)は相対圧力P/P0=0に対応し、点(b)は相対圧力P/P0=1に対応している。
【図4a】マイクロバランス法(41)と本発明の方法(42)を用いて求めた、間隙率20%のSiO2フィルムの吸着−脱着等温線を示す。
【図4b】マイクロバランス法(41)と本発明の方法(42)を用いて求めた、間隙率20%のSiO2フィルムの間隙の大きさの分布を示す。
【図5a】本発明の方法を用いて求めた、間隙率70%のキセロゲルフィルムの吸着−脱着等温線を示す。
【図5b】本発明の方法を用いて、間隙率70%のキセロゲルフィルムの間隙の大きさの分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照し、本発明を以下に詳細に説明する。複数の実施形態が開示されている。しかし、当業者は、本発明の他の等価な複数の実施形態や本発明を実施する別の方法を想到し得るが、本発明の精神及び範囲は、添付の請求項の用語によってのみ限定されるものである。
【0016】
本発明の一実施形態において、基板に形成された部材(エレメント)の間隙率(空隙率)を求める装置が記載さている。この装置は、
内部に上記基板(2)を配置できる加圧チャンバ(部屋)(1)と、
上記チャンバ内の温度を所定の値に固定する温度制御要素と、
上記チャンバ内の圧力を変化させるポンプ(3)と、
ガス物質を導入する供給部(4)と、
上記チャンバ内の圧力を測定する圧力計(マノメータ)(5)と、
上記部材(エレメント)の光学的特性、特に屈折率と厚さを求める偏向解析器(6)と、
少なくとも第1の制御可能な要素(制御部)(7)と少なくとも一つの第2の制御可能な要素(制御部)(8)とを有する。上記第1の要素は、上記ポンプと上記チャンバとの間に配置され、上記チャンバ内の圧力を正確に制御する。上記第2の要素は、上記供給部と上記チャンバとの間に配置され、上記チャンバに導入される上記ガス物質の流れを正確に制御する。上記間隙率は、少なくとも上記屈折率と上記厚さからの値を利用して計算される。特に、上記第2の要素は、図2に示すマイクロバルブが好ましい。ガス物質は、マイクロバルブに形成された入力キャビティ(21)に導入される。マイクロバルブの大部分は、導電材料(22)で構成されている。特に、耐腐食性金属(例えば、耐腐食性スチール)を利用するのが好ましい。入力キャビティは、弾性材料からなる薄膜(25)によって出力キャビティ(23)から分離されている。この弾性材料の熱膨張係数は、上記導電材料の熱膨張係数と実質的に異なる。特に、上記弾性材料は、テフロンであってもよい。この薄膜は、加熱要素(24)に熱的に接続されている。薄膜の温度が上昇すると、上記薄膜が膨張し、狭い溝(チャンネル)(26)が、上記薄膜と導電材料との間に形成される。したがって、溝の幅は温度に応じて変化し、加熱部材を制御することで制御可能である。上記溝が形成されると、上記出力キャビティは本発明の装置の加圧された部屋に接続されているので、ガス物質は入力キャビティから出力キャビティに流れ得る。その流れは、チャンネルの幅に応じて変化する。本発明の他の実施形態では、上記第2の要素は商業的に利用可能なマイクロバルブである。
【0017】
本発明の他の実施形態では、図1に示すように、装置はまた、制御要素(制御部)と記録要素(記録部)(9)を有する。制御要素は、第1と第2の要素を制御する。記録要素により、チャンバ内の圧力、部材の屈折率、部材の厚さ、及び吸着−脱着曲線が記録され、これにより部材の間隙率が計算できる。
【0018】
本発明の他の実施形態において、基板上に形成された部材の間隙率、特に間隙の大きさの分布を求める装置と方法が開示されている。これらの実施形態は、基板上に形成された薄膜である。基板は、任意の導電材料、半導体材料、または絶縁材料からなるウェーハ又はプレート(例えば、シリコンウェーハ、ガラス板)である。この方法は、ウェーハスケールに適用可能な非破壊法で、所定の温度での吸着−脱着ヒステリシスループの測定と現位置偏向解析に基づくものである。
【0019】
吸着−脱着等音声を求めるためにまず必要なことは、適当なガス物質を選択することである。ガス物質は、蒸気、ガス、それらの混合物のいずれでもよい。適当なガス物質は、所定の温度(特に、上記所定温度で、ガス物質の平衡蒸気圧以下の圧力)でガス物質と凝縮されたガス物質の両方の状態となる物質である。凝縮されたガス物質は、基板上に形成された部材である薄層中の開放間隙を充填するものである。また、吸着−脱着等温線を求めるために、薄膜を担持する基板は、所定の圧力弁で加圧されたチャンバに導入されなければならない。ガス物質は、上記チャンバに導入され、圧力と温度に応じて、凝縮して薄膜の中に部分的に入る。ガスと凝縮された物質とが平衡状態になると、薄膜内の間隙に凝縮したガス物質の量が正確に求められる。
【0020】
ガス物質は、凝縮されたガス物質と薄膜との間の相互の影響が出来るだけ限られる(少ない)ように選択するのが好ましい。また、ガス物質は、摂氏21℃の室温で加圧室に導入可能で、凝縮温度が摂氏25℃から100℃、10〜100トールの間で平衡圧となるものが好ましい。後者の場合、測定は室温で行なうことができる。従来の研究(M.R.バクラノフ、F.N.デュルセフ、及びS.M.レピンスキー、Poverkhnost、11、1445、1988年、ロシア)では、ある種の有機溶剤を、ガス物質として利用できることが示されている。永久双極分子モーメントの無い非極性溶剤が好ましい。本実施形態において説明した実施例によれば、複数の溶剤の中でトルエンが選択されている。換言すれば、蒸発状態のトルエンがガス物質として利用される。そのような物質が選択される理由の一つは、トルエンが特定の表面積を求めるために溶剤としてしばしば利用されるからである。その結果、この溶剤に対する基準データが利用可能である。
【0021】
基板上に形成される部材(特に、薄膜)の間隙率を求めるために、装置(図1)が利用される。この装置は、
上記基板を配置できる、加圧される部屋(チャンバ)と、
上記部屋の温度を所定の値に固定する温度制御要素(温度制御部)と、
上記部屋の圧力を変化させるポンプと、
ガス物質を導入する供給部と、
上記部屋内の圧力を測定する圧力計(マノメータ)と、
上記部材の屈折率と厚さを求める偏向解析器と、
少なくとも第1のマイクロバルブと少なくとも第2のマイクロバルブを制御する制御要素(制御部)とを有し、
上記第1のマイクロバルブは上記ポンプと上記部屋との間に配置されて上記部屋の圧力を正確に制御し、上記第2のマイクロバルブは上記供給部と上記部屋との間に配置されて上記部屋への上記ガス物質の流れを正確に制御し、
上記装置はまた、上記部屋の圧力と、上記部材の屈折率と、上記部材の厚さと、吸着−脱着曲線を記録し、これにより上記部材の間隙率を計算を可能とする記録要素(記録部)とを有する。
【0022】
特に、原位置偏向解析器は、とりわけ屈折率の変化(n)と薄膜の厚さ(d)の変化より、薄膜に吸着されたガス物質/凝縮されたガス物質の量を求めるために利用される。本発明の方法に係る偏向解析式間隙率測定は、上述したローレンツ−ローレンツ式によって説明されるように、屈折率と薄膜の密度との間の関係に基づく。
【0023】
また、本発明の実施形態によれば、本発明の装置と方法は、例えば、低温/低圧化学蒸着(CVD)によってシリコンウェーハに蒸着されたシリコン二酸化フィルムや、ゾル−ゲル法によってシリコンウェーハ上に形成されたキセロゲルにおける間隙率、特に、間隙(ポア)の大きさの分布を求めるために適用できる。薄膜を有するシリコンウェーハは、室温状態で、装置の加圧された部屋に配置される。その圧力は、第1の所定の値に設定される。この値は、実質的に、室温(P0)におけるトルエンの平衡蒸気圧以下である。ガス物質としてのトルエン蒸気は、室温で加圧された部屋に導入される。トルエン蒸気の温度は、ほぼ室温に等しい。所定時間後、部屋内の圧力がマノメータを用いて測定され、偏向解析測定器が動作する。この所定時間は、ガス物質(トルエン蒸気)と薄膜の開放間隙(ポア)に凝縮されたトルエンとの間が、部屋の中で平衡に達するように選択される。その後、部屋内の圧力が段階的に変化され、これにより、各段階で、所定時間後、圧力(P)が部屋内で測定され、偏向解析測定が行なわれる。測定された値は、本装置の記録要素を用いて記録される。特に、圧力は、相対圧力(P/P0)が約ゼロの初期値から相対圧が約1の値まで、そしてその逆に変化し、吸着−脱着等温線を記録する。
【0024】
偏向解析器の測定技術は、「オプティックス・ソース・ブック」、編集者シビル.P.パーカー、1988年、マグローヒルに概説されている。偏向解析測定法は、波長632.8nmで、偏向解析器を用いて行なわれる。偏向解析とは、偏向光を利用した反射実験で、入射面に垂直な選択方向と平行な選択方向における反射率と、その反射率に関連した位相差を求めるものである。これらのデータから偏向角が得られる。これらの角度を知ることで、屈折率及びフィルム(部材)の厚さが求められる。したがって、特に、本発明の実施形態によれば、偏向角と部屋の圧力(P)との変化が記録される。トルエンの吸着と脱着の際の偏向角ΔとΨの変化が、キセロゲルフィルム(31)とシリコン二酸化フィルム(32)の両方について示してある。矢印は、トルエンの相対蒸気圧がゼロから1、また逆に1から「0」に変化するときの偏向角の変化を示す。初期の点(点a)は、相対圧力がゼロに対応しており、最終の点(点b)が相対圧力「1」に対応している。試料に対する光の入射角が70°の場合における依存性が記録されている。CVD法によるSiO2の場合、偏向特性の変化は比較的小さいことが分かる。これらの変化は、偏向率の変化によってのみ定義される。しかし、10°における角度Ψの変化は、信頼性に優れたデータ解析(偏向解析器の感度は、0.01°以上であるのがよい。)を実行するために十分大きなものである。キセロゲルのフィルムの場合、偏向解析特性の大きな変化が観察された。これらのデータを評価するために、実験データに貴重な説明を提供し得る複数の妥当な光学モデルを用いてシミュレーションを行なった。フィルムの厚さと間隙率は共に偏向解析特性の変化の範囲を補償するものであることが分かった。フィルムの厚さ(d)があまり変化しない(10%の範囲)と過程した一つのモデルについて実験曲線と計算曲線との間の最良の一致が見られた。主なる変化は、屈折率(n)の変化に関係していた。
【0025】
SiO2とキセロゲルフィルムについて本発明の分光偏向解析を用いて計算した間隙率の値は、それぞれ約20%と約70%であった。CVD法によるSiO2とキセロゲルフィルムの厚さは、約300nmと約500nmであった。分光測定器から計算された間隙の大きさの分布に関するデータを、マイクロバランス(微量天秤)間隙測定で得られた結果と比較した。M.R.バクラノフ、L.L.バシリエバ、T.A.ガブリロバ、F.N.デゥトセフ、K.P.モギルニコフ、及びL.A.ネナシェバの薄肉ソリッドフィルム、171、43(1989年)に記載の水晶式マイクロバランス技術を用いることにより、吸着間隙測定は、水晶共振器上に蒸着された薄膜について、10-8g/Hzの感度で実行できた。CVD法によるSiO2フィルムは、上記目的のために予備校正された水晶共振器の上部に蒸着された。実際、このマイクロバランス法は、フィルムを有する基板はその後の処理に利用できないことから、破壊的である。したがって、この方法は、シリコン基板上に蒸着されたフィルムについて利用できない。
【0026】
また、本実施形態の実施例に関し、図4aは、本発明の方法に係る偏向解析測定から計算された、CVD法によるSiO2フィルムに凝縮されたガス物質(すなわち、トルエン)の量の依存性(42)と、相対圧力に対する、水晶マイクロバランスにより得られた吸着されたトルエン蒸気/凝縮されたトルエン蒸気の相対量を示す。マイクロバランス測定を行なうためには、水晶共振器の上部に設けた実施例のSiO2フィルムと同一条件のCVD法により、同様のSiO2フィルムが蒸着されている。また、本発明の方法とマイクロバランス法を用いて得られる結果を比較することができるように、すべてのデータは標準化され、相対的な単位で与えられている。図4bに示すように、両方法は近似した間隙の大きさの分布を示した。本発明の偏向解析法では、幾分過大評価の値が得られた。しかし、行なわれた数多くの間隙率測定において、観察された違いは10%を超えなかった。
【0027】
図4と同様に、図5aは吸着−脱着等温線を示し、図5bは間隙の大きさの分布を示すが、それはSiO2フィルムに代わりキセロゲルフィルムに関するものである。これらのデータは、キセロゲルフィルムが、主として、4〜6nmの間の半径を有する中位の大きさのポア(間隙)を含むことを示す。コンピュータのシュミレーションは、蒸気吸着中の偏向特性の変化が単層光学モデルによって説明されている。これは、キセロゲルフィルムの「ウェテリング(湿気)」が均一に生じたことを意味する。したがって、吸着−脱着実験の結果及びそれらの解析から、フィルム中のポア(間隙)は相互に連結されていると結論づけることができる。
【0028】
好適な実施形態について本発明を説明したが、請求の範囲に記載の発明の範囲から逸脱することなく、当業者が形式及び細部に種々改変を加えることができるものと理解される。
【符号の説明】
【0029】
1:加圧チャンバ(部屋)
2:基板
3:ポンプ
4:供給部
5:圧力計(マノメータ)
6:偏向解析器
7:第1の制御可能な要素(制御部)
8:第2の制御可能な要素(制御部)
21:入力キャビティ
22:導電材料
23:出力キャビティ
24:加熱要素
25:薄膜
26:溝(チャンネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定圧力及び所定温度の加圧可能な部屋に配置された基板上に形成されている部材の間隙率を求める方法において、
上記部屋にガス物質を導入する工程と、
少なくとも一つの偏向解析測定を行ない、上記所定の圧力及び上記所定の温度における光学的特性を求める工程と、
上記部材の間隙率を計算する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
上記ガス物質は、上記所定の圧力及び上記所定の温度で、ガス物質と凝縮されたガス物質として存在する物質である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記加圧された部屋における上記圧力は、上記所定温度の上記ガス物質からなる平衡蒸気圧以下の値を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記所定時間は、上記ガス物質と上記ガス物質の凝縮した形のものとの間で上記部屋において平衡状態が得られるように選択されている請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
上記方法がさらに、
上記基板上に形成された部材の露出面に進入可能なガス物質を選択する工程と、
上記部屋の圧力を第1の所定値に設定する工程と、
上記部屋に上記ガス物質を導入する工程であって、上記ガス物質の温度は上記所定の一定温度にほぼ等しく、上記部屋の圧力値を測定する所定時間後、偏向解析測定を行なって上記部材の光学的特性を求める工程と、
上記部屋の圧力を段階的に変化させ、これにより、各段階後、及び所定の時間後、偏向解析測定によって上記光学的特性が求められる工程と、
少なくとも上記測定された光学的特性を用いて間隙率を計算する工程とを有する請求項1の方法。
【請求項6】
基板上に形成された部材の間隙率を求める装置であって、
内部に上記基板を配置可能な加圧可能な部屋と、
上記部屋の温度を所定値に固定する温度制御要素と、
上記部屋の圧力を変化させるポンプと、
ガス物質を導入する供給部と、
上記部屋に上記部材が配置されているとき、上記部材の光学的特性を求める偏向解析器と、
少なくとも第1の制御可能な要素と、少なくとも第2の制御可能な要素とを有し、上記第1の要素は上記ポンプと上記部屋との間に配置されて上記部屋の圧力を正確に調整でき、上記第2の要素は上記供給部と上記部屋との間に配置されて上記部屋に導入される上記ガス物質の量を正確に制御できる装置。
【請求項7】
上記装置は、制御要素と記録要素を有し、上記制御要素は少なくとも上記第1と第2の要素を制御し、上記記録要素は上記部屋の圧力、上記光学的特性、及び吸着−脱着曲線を記録でき、これにより、上記部材の間隙率が計算される請求項6の装置。
【請求項8】
上記制御要素は、上記第1と第2の要素を制御することによって複数のバルブの任意の一つで、上記部屋の圧力を設定するようにしてある請求項7の装置。
【請求項9】
上記第2の制御可能な要素は、少なくとも第1の材料と第2の材料からなるマイクロバルブであり、上記第1の材料は導電材であり、上記第2の材料は弾性材(熱可塑性材料)であり、上記第1の材料と上記第2の材料は実質的に異なる熱膨張係数を有する請求項7の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【公開番号】特開2011−237411(P2011−237411A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−81804(P2011−81804)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【分割の表示】特願2000−567934(P2000−567934)の分割
【原出願日】平成11年8月27日(1999.8.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(500194522)センター・フォー・アドヴァンスト・テクノロジーズ・テクノコム (1)
【Fターム(参考)】