説明

関心領域指定装置

【発明の詳細な説明】
〔発明の技術分野〕
本発明は濃淡ディジタル画像の画像処理装置の分野に属し、されに詳しくは、前記濃淡デジィタル画像において、連結領域であるところの関心領域(以下「ROI」と略称する)を指定する装置に関する。
〔発明の技術的背景とその問題点〕
ROI指定(設定)方法としては、例えば表示画像上にトラックボール,ジョイステック等を用いてオペレータが直接ROI座標を入力する方法、また、表示画像内(若しくはおおまかに指定されたROI内)において、オペレータが指定する濃淡範囲に含まれるすべてのピクセル(Pixel)をROIとする方法が一般的である。
ところで、前記トラックボール等を用いて、オペレータが直接ROI座標を入力する方法は、複雑な形状をもトラックボール等によって描く必要があり、この走査はオペレータにとって極めて困難である。
また、前記オペレータが指定する濃淡範囲に含まれるすべてのピクセルをROIとする方法は、特に表示画像の濃淡差の小さい領域におけるROI指定において、無関係(不必要)なピクセルまでROIに含めてしまう虞れ、さらに、ROIが連結した領域でなくなる(ROIが2以上の領域に分離する)虞れがある。
〔発明の目的〕
本発明は、前記事項に鑑みてなされたもので、表示画像上において、たとえ濃淡差の小さい領域であっても、また、形状が複雑な領域であっても正確かつ容易に連結領域であるところのROIを指定し得る関心領域指定装置を提供することを目的とする。
〔発明の概要〕
前記目的を達成するための本発明の概要は、ディスプレイ上に表示された画像に対し、関心領域を指定する関心領域指定装置において、前記ディスプレイに表示される画像の中で関心領域として設定したい領域の代表位置を設定する設定手段と、この設定手段により設定された代表位置に隣接しかつ濃淡値が前記代表位置の濃淡値とほぼ等しい値を有するピクセルを選出する手段と、この選出する手段にて選出されたピクセルで形成される連結領域の大きさを操作により任意に変更する変更手段と、前記選出する手段にて選出され及び前記変更手段にて大きさが変更されたピクセルで形成される連結領域を他と区別して認識し得るよう表示する表示手段とを備えたことを特徴とするものである。
〔発明の実施例〕
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
第1図は、本発明に係る関心領域指定装置の構成を示すブロック図である。同図において、入力手段1は、本装置においてROI指定の際、オペレータが操作するものであって、その前面パネルは、例えば第2図に示すように、拡大キー6,縮小キー7,完了キー8,トラックボール・セット・ボタン9,トラックボール・オン・ボタン10及びトラックボール11等が配置されている。そして、前記入力手段1から出力される各種指定信号は、コンピュータ2に入力されるような接続される。
一方、コンピュータ2とディスプレイ5との間には、画像メモリ3及びグラフィックメモリ4が配置される。前記画像メモリ3は、濃淡画像データを格納するものであり、また、前記グラフィックメモリ4は白黒2値のグラフィック画像データ(ROI形状等に用いられる)を格納するものであって、それぞれコンピュータ2を指令に基づいてディスプレイ5の表示に供される。
以上のように構成される関心領域指定装置の作用について、第3図のメインフローチャートを参照しながら説明する。コンピュータ2の指令に基づいて、画像メモリ3に格納されている画像データが、ディスプレイ5に表示される。オペレータが、トラックボール・オン・ボタン10を押すと、コンピュータ2は、グラフィックメモリ4を用いてディスプレイ5の画像上に点状のポターンを表示(スーパー インポーズ)する。オペレータは、トラックボール11を廻して注目する領域(ROI指定したい領域)へ前記点状のパターンを移動させる。そして、オペレータが、トラックボール・セット・ボタン9を押すと、コンピュータ2は、その時の点状のパターン位置をオペレータ指定の点として認識する。このようにして指定された点を後述するROIの暫定的近似と考える。以下、この暫定領域を説明上「Z−エリア」と称する。
次に、オペレータは、拡大キー6を押しつづけることによって、Z−エリアを徐々に拡大させ、目的とするROI指定領域に近ずける。オペレータは、拡大キー6を押しつづけながら、ディスプレイ5上に表示されているZ−エリアを常時監視し、Z−エリアが希望するROI領域と良く一致した、と判断すれば、拡大キー6を押すのを止めればよい。
しかるのち、Z−エリアと希望するROI領域との比較を行ない、前記Z−エリアが希望するROI領域より小さければ、再び拡大キー6を押してZ−エリアを拡大すれば良く、また、前記Z−エリアが希望するROI領域より大きければ、縮小キー7を押すことにより、Z−エリアを縮小することも可能である。
そして、オペレータは、再びZ−エリアと希望するROI領域とを比較し、Z−エリアと希望するROI領域とがよく一致した、と判断すれば、完了キー8を押す。コンピュータ2は、その時のZ−エリアをROI領域として認識する。
次に、本装置においてコンピュータ2が実行するアルゴリズムについて、第4図〜第7図に示すフローチャートを参照しながら説明する。
先ず、アルゴリズムの説明に用いられる主な変数として、

Z−エリア内のピクセル(画素)の集合を値とする変数,

Z−エリアに隣接するピクセルのサブセット(部分集合)を値とする変数,k1,k2:整数値をとる変数,n:Z−エリアに含まれるピクセルの数,また、Z−エリアの形状を要素とするスタック(stack)が挙げられる。
主な関数としては、K(P):ピクセルPの濃淡値を関数が挙げられる。
主な手続としては、

をスタック(stack)ヘプッシュする,

スタック(stack)をポップし、

へ入れる,

の輪郭をディスプレイ上に表示する,が挙げられる。
第4図は、第3図に示すメインフローチャート中のOP1(点の指定)のアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。先ず、トラックボール11により点の座標P0を得る(ステップ12)。次に前記点の座標P0

また、k1,k2をそれぞれ点の座標P0の濃淡値とし、さらに、スタック(stack)を空にする(ステップ13)。次に、

をプッシュし(ステップ14)、点の指定を終了する。
第5図は、第3図に示すメインフローチャート中のOP2(拡大)のアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。先ず、

に隣接するすべてのピクセルを

とし、ピクセル数n及びcをそれぞれ0とする(ステップ15)。次に、拡大キー6が押されているか否かの判別を行なう(ステップ16)。ステップ16の判別において、noと判断されたときは、本アルゴリズムの実行は終了し、また、yesと判断されたとき、すなわち、拡大キー6が押されているときは、

の任意の要素1点をセレクトし、これをPとする。そして、

から前記Pを差し引き、これを新たな

とする。(ステップ17)。次に濃淡値k1,k2と、前記Pの濃淡値との比較を行なう(ステップ18)。ステップ18の比較において、yesと判断されたときは、前記

と、前記Pとの集合和を求め、これを新たな

とする(すなわち、

を拡大する)。そして、前記拡大された

を、ディスプレイ5に表示するとともに、前記ピクセル数n及びcに、それぞれ1を加える(ステップ19)。次に、前記

が最後にスタック(stack)にプッシュされて以来、

の拡大によって増加した

のピクセル数の増加分cが、ある一定のピクセル数c0より多いか否かの判別を行なう(ステップ20)。前記ステップ20の判別において、yesと判断されたときは、そのときの

をスタック(stack)にプッシュし(後述する縮小のときに使う)、前記ピクセル数cを再び0とする(ステップ21)。次に、

が空集合φであるか否かの判別を行なう(ステップ22)。また、ステップ18の判別において、noと判断されたとき、及びステップ20の判別において、noと判断されたときも、前記ステップ22の判別を行なう。そして、ステップ22の判別において、noと判断された場合には、ステップ16の判別にもどり、また、yesと判断された場合には、Z−エリアに含まれるピクセル数nが0であるか否かの判別を行なう(ステップ23)。ステップ23の判別において、yesと判断されたとき(すなわち、当該OP2の処理で、前記ステップ18の判断結果が、すべてnoであったことを意味する)には、濃淡値k1から1を減じ、濃淡値k2に1を加え(すなわち、k1とk2との幅を広げる)た後に、ステップ15にもどる。また、前記ステップ23の判別において、noと判断されたときも、前記同様ステップ15にもどる。ここで、本アルゴリズムにおいては、常に次の関係が成立する。
P(P∈Z→k1■K(P)■k2) ……(1)
すなわち、

に含まれるいかなるピクセルも、その濃淡値はk1とk2との間にある。また、

は常に連結領域である。
第6図は、第3図に示すメインフローチャート中のOP3(縮小)のアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。先ず、スタック(stack)は空か否かの判別を行なう(ステップ25)。ステップ25の判別において、noと判断されたときは、前記OP2のステップ21で、スタック(stack)にプッシュしておいたZ−エリアをポップし、それをディスプレイ5に表示する(すなわち、最後にプッシュされたZ−エリアを再現する)。そして、一定時間待った後(ステップ27)、縮小キー7は押されているか否かの判別を行なう(ステップ28)。また、前記ステップ25の判別において、yesと判断されたときも、前記同様、一定時間待った後、ステップ28の判別を行なう。ステップ28の判別において、yesと判断されたとき、すなわち、縮小キー7が押されているとき、ステップ25の判別にもどる。また、ステップ28の判別において、noと判断されたとき、すなわち、縮小キー7が押されていないときは、本アルゴリスムの実行を終了する。
第7図は、第3図に示すメインフローチャート中のOP4(完了キーによってROIの指定を終る)のアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。完了キー8を押すことによって、

をROIとする(ステップ29)。以上でROIの指定を終了する。
このようにして指定されたROIは、例えば表示画像におけるROI内のピクセルの濃淡値分布、あるいは、ROIの面積を求めることにより、表示画面上の特定部位の性質分析に供される。
本発明は、前記実施例によって限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形例を含むのはいうまでもない。例えば、CT装置において、頭部画像の脳室質をROI指定する場合等のように、画像の中心がROI内に含まれることが予め分かっているときは、前記実施例におけるOP1(点の指定)を省略し、指定されるべき点の代りに画像の中心を用いることができる。また、拡大キー及び縮小キーは、押しつづける操作でなくても、例えば、キーをたたく操作でもよく、あるいは、キーの代りにトラックボールを具備し、トラックボールを廻しつづける操作でもよい。
本発明は、コンピュータを具備する、あるいは、コンピュータと接続されている濃淡ディスプレイ装置であれば、あらゆるものに適用可能である。
〔発明の効果〕
以上説明した本発明によれば、濃淡差が小さい領域であっても、また、複雑な形状であっても、オペレータが拡大キー、あるいは縮小キーを押す操作を行なうことにより、正確かつ容易に、目的とする部位のROI指定を行なうことを可能とならしめる関心領域指定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る関心領域指定装置を示すブロック図、第2図は第1図に示す装置の入力手段の表示パネルの一例を示す概略図、第3図は第1図に示す装置の作用を説明するためのメインフローチャート、第4図から第7図7図は第1図に示す装置のアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。
1……入力手段、2……コンピュータ、
3……画像メモリ、4……グラフィックメモリ、
5……ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ディスプレイ上に表示された画像に対し、関心領域を指定する関心領域指定装置において、前記ディスプレイに表示される画像の中で関心領域として設定したい領域の代表位置を設定する設定手段と、この設定手段により設定された代表位置に隣接しかつ濃淡値が前記代表位置の濃淡値とほぼ等しい値を有するピクセルを選出する手段と、この選出する手段にて選出されたピクセルで形成される連結領域の大きさを操作により任意に変更する変更手段と、前記選出する手段にて選出され及び前記変更手段にて大きさが変更されたピクセルで形成される連結領域を他と区別して認識し得るよう表示する表示手段とを備えたことを特徴とする関心領域指定装置。

【第7図】
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【第1図】
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【第2図】
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【第4図】
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【第3図】
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【第5図】
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【第6図】
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【公告番号】特公平7−34219
【公告日】平成7年(1995)4月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭58−117051
【出願日】昭和58年(1983)6月30日
【公開番号】特開昭60−10389
【公開日】昭和60年(1985)1月19日
【審判番号】平4−16695
【出願人】(999999999)株式会社東芝
【参考文献】
【文献】特開昭55−148536(JP,A)
【文献】実開昭55−103743(JP,U)