説明

関節のためのサポート器具

【課題】着用者を深刻な怪我から保護し、固有受容部材が、望ましくない動作に抵抗する体の能力を最大にする解剖学的位置に配置された関節サポート器具を提供する。
【解決手段】足首用のサポート器具10は、足首の周りに配置された内側部分103と外側部分105、および内面108を有する本体100;本体100の内側部分103内のキャビティ内に配置された内側サポート部材および100本体の外側部分105内のキャビティ内に配置された外側サポート部材の少なくとも一方;本体100の近位部分101上に配置されたストラップ300であって、足首に直接近接した下肢の前方に第1のレベルの圧力を生じ、足首に直接近接した下肢の後方に第2のレベルの圧力を生じるように適合された留め具手段を有するストラップ300;および本体100の内面108に配置された1つ以上の固有受容部材400を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くサポート器具に関し、より詳しくは、人体の関節のためのサポート器具に関する。
【背景技術】
【0002】
運動の様々な動作によって、足首、膝、肘、または手首を含むが、これらに限られない人体の様々な関節に極端な力が作用することがある。例えば、バスケットボールやテニスの競技者が行う素早い横方向の動作により、競技者の靴、足、および足首の全体に亘り極端な力が伝達されることがよくある。動作の方向により、これらの力が、靴のソールが内側面に向かって内側に捻られる足首の過剰な内反、または靴のソールが外側面に向かって外側に捻られる足首の過剰な外反の原因となることがある。
【0003】
人体の関節とその周囲の解剖学的構造(anatomy)も、コンタクトスポーツにおいて極端な力にさらされる。例えば、フットボールの競技者の手首と膝は、相手をブロックしたときや、相手にタックルされたときに、極端な力にさらされる。その衝撃の性質に応じて、これらの力は、痛みのある過進展、過屈曲、または様々な他の関節の怪我の原因となり得る。
【0004】
行われるスポーツまたは怪我の特定の原因にかかわらず、体の関節の一時的な望ましくない変位により、関節に外傷性損傷が生じ得る。そのような望ましくない変位やその結果としての怪我のリスクは、関節とその周囲の解剖学的構造の動作を部分的に制限し、それらを外部の衝撃から保護することによって、大幅に減少させることができる。上述したリスクを減少させるための公知の試行方法としては、関節のテーピングやラッピング、または関節の周りに高剛性サポート器具を配置することが挙げられる。
【0005】
弾性バンドによる競技者の関節のテーピングやラッピングは、時間がかかり、かつ比較的高くつく手法となることがある。一般に、この手法は競技者自身により実施できない。テーピングやラッピングは典型的に、アスレチック・トレーナーや、関節を適切かつ効果的に固定するための特別な知識を持った他人によって実施する必要がある。ある場合には、単純なテープとバンドは、制御動作で本当には効果的ではないかもしれず、競技者にとっての精神的な支えに過ぎないこともよくある。さらに、これらの器具は、関節表面を外的衝撃から保護することはほとんどなく、テープは、使用してほんの数分で弱まる傾向にある。
【0006】
より剛性の高いサポート器具が使用される場合、典型的に、堅いサポート部材が可撓性スリーブおよび/または単純なストラップと結合される。そのような器具は、潜在的に、テープやバンドよりもいくぶん改善された安定性を提供するが、不快で、かなり余分な重さが加わることが多い。さらに、そのような器具は、競技者の性能が損なわれたり妨げられたりする程度に、ある方向における関節の自然な動作範囲を制限することがよくある。その上、これらの器具の堅い部材の外形と配置は、関節や周囲の解剖学的構造に与えられる極端な衝撃力の作用を緩和するというよりむしろ、増幅させる傾向がよくある。
【0007】
これまでに記載された関節サポート器具は、関節とその周りの人体構造を機械的に固定化することだけを目的としている。より進歩した関節サポート器具は、関節をサポートする作用に寄与するために体自体を刺激するための手段を備えることもある。ある関節サポート器具は、体の固有受容応答(proprioceptive response)を刺激することを意図した要素を備えており、この要素は、筋肉、腱、靱帯、および関節皮膜区域内に配置された受容体(receptor)により作動される。
【0008】
固有受容体(proprioceptive receptor)は、これらの受容体の近傍にある皮膚の部分間の相対運動、または皮膚部分上の他の触感を検出した後に関連する筋肉内に適切な緊張を開始させることができる。関節サポート器具を着用中にこれらの受容体を作動させる感度を増加させるために、皮膚に対する摩擦係数が比較的高い要素を、皮膚と接触するサポート器具の内面に配置することができる。これらの高摩擦要素のために、それを取り囲むサポート器具の関節の動きによる揺動が、サポートすべき関節の周りの皮膚の表面に直接伝達されやすい。これらの高摩擦要素の正確な位置が、どの受容体が作動されるか(よって、どの筋肉が緊張させられるか)を決定する。それゆえ、固有受容応答を用いて、望ましくない関節の変位に抵抗する(または少なくともその速度を遅くさせる)のを補助するより迅速な筋肉反応を開始させることができる。
【0009】
関節サポート器具内に固有受容部材を組み込む公知の方法には、多くの欠点がある。多くの場合、固有受容部材は、競技に参加している間、サポート器具を扱いにくくしすぎて着用できなくする他の構造要素と対にされる。その上、固有受容部材を収容する関節サポート器具の本体は、着用者をさらに深刻な怪我から保護できないかもしれない。さらに、多くの固有受容部材は、望ましくない動作に抵抗する体の能力を最大にする解剖学的位置に配置されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、上述した制限の1つ以上を克服できる関節サポート器具が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施の形態は、足首のためのサポート器具に関し、このサポート器具は、足首の周りに配置される内側(medial)部分と外側(lateral)部分、および内面を有する本体;本体の内側部分内のキャビティに配置された内側サポート部材および本体の外側部分内のキャビティに配置された外側サポート部材の内の少なくとも一方;本体の近位(proximal:体の中心に近い)部分上に配置されたストラップであって、足首に対して直接的に近位の下肢の前側に第1のレベルの圧力を生じ、足首に対して直接的に近位の下肢の後側に第2のレベルの圧力を生じるように適合された留め具手段を有するストラップ;および本体の内面に配置された1つ以上の固有受容部材を備えている。
【0012】
本発明の実施の形態は、足首のためのサポート器具に関し、このサポート器具は、足首の周りに配置される内側部分と外側部分、および内面を有する本体;本体の内側部分内のキャビティに配置された内側サポート部材および本体の外側部分内のキャビティに位置された外側サポート部材の内の少なくとも一方;本体の近位部分上に配置されたストラップ;および足首の周りの本体の内面の内側部分と足首の周りの本体の内面の外側部分に配置された固有受容部材を備えている。
【0013】
本発明の実施の形態は、さらに、足首のための組込式サポート器具を有する履物に関し、この履物は、足首の周りに配置された内側部分と外側部分を有するアッパー;アッパーの下に配置されたソール;アッパーの内側部分内のキャビティに配置された内側サポート部材およびアッパーの外側部分内のキャビティに配置された外側サポート部材の内の少なくとも一方;アッパーの近位部分上に配置されたストラップ;およびアッパーの内面に配置された1つ以上の固有受容部材を備えている。
【0014】
本発明の実施の形態は、さらにまた、足首のためのサポート器具に関し、このサポート器具は、内面を有する本体であって、中に内側キャビティが形成された内側部分と、中に外側キャビティが形成された外側部分と、外側部分から延在するタブとを有し、タブが、タブの内面と外面に配置された留め具手段を有している本体;内側キャビティに配置された内側サポート部材;外側キャビティに配置された外側サポート部材;本体の内側部分に取り付けられた固定端と自由端を有するストラップであって、固定端でストラップの外面に配置された外部留め具手段と、自由端で内面に配置された内部留め具手段とを有し、内側タブ留め具手段が外部ストラップ留め具手段に動作可能に連結され、外部タブ留め具手段が内部ストラップ留め具手段に動作可能に連結されているストラップ;および足首上の本体の内面の内側部分と、足首上の本体の内面の外側部分に配置された固有受容部材を備えている。
【0015】
本発明のさらに別の実施の形態、特徴および利点、並びに本発明の様々な実施の形態の構造および動作が、添付の図面を参照して、以下に詳しく記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
ここに包含され、明細書の一部を構成する添付の図面は、制限としてではなく例として本発明のいくつかの実施の形態を図解しており、その説明と共に、本発明の原理を説明し、当業者に本発明を実施させ、使用させる働きをする。
【0017】
本発明の特定の実施の形態に関して、右または左の関節サポート器具のみが記載されている限り、本体の反対側の対応する関節に適したサポート器具は、具体的に記載されていないが、記載されたサポート器具の鏡像を含むことが当業者には明らかであろう。
【図1】本発明のある実施の形態による足首のためのサポート器具の外側図
【図2】本発明のある実施の形態による足首のためのサポート器具の内側図
【図3】本発明のある実施の形態による足首のためのサポート器具の背面図
【図4】本発明のある実施の形態による足首のためのサポート器具の正面図
【図5】本発明のある実施の形態による、可撓性前側部分が取り外され、ストラップの一部が取り外され、関節サポート部が開かれた、足首のためのサポート器具の内面の正面図
【図6A】本発明のある実施の形態による第1のサポート部材の正面図
【図6B】本発明のある実施の形態による図6Aに示された第1のサポート部材の側面図
【図7】本発明のある実施の形態による足首のためのサポート器具の本体の内側部分の断面図
【図8A】本発明のある実施の形態による関節サポート器具の本体から取り外されたストラップの内面図
【図8B】本発明のある実施の形態による関節サポート器具の本体から取り外されたストラップの外面図
【図9】本発明のある実施の形態による足首のための組込式サポート器具を有する履物の内側図
【図10】本発明のある実施の形態によるインテリジェント関節サポート器具のブロック図
【図11】本発明のある実施の形態による関節サポート器具の本体の一部分の正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を、添付の図面に図解された実施の形態を参照して、ここに詳しく説明する。特定の構成および配置が論じられているが、これは、例示目的のためだけに行われることが理解されよう。「ある実施の形態」、「1つの実施の形態」、「別の実施の形態」などへの言及は、記載された実施の形態が、特別な特性、構造、または特徴を含んでよいことを示すが、全ての実施の形態が、その特別な特性、構造、または特徴を必ずしも含まなくてもよい。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施の形態を称しているものではない。またさらに、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、他の構成および配置を使用して差し支えないことが当業者には理解されよう。
【0019】
本発明のある実施の形態による関節のためのサポート器具10は、関節の周りに配置された本体100を含む。第1のサポート部材203を収容する第1のキャビティ211が、本体100の第1の部分124内に配置されている。第2のサポート部材205を収容する第2のキャビティ213が、本体100の第2の部分126内の第1のキャビティ211の反対に配置されている。ストラップ300が本体100の近位部分101に配置されており、1つ以上の固有受容部材400が本体100の内面108に配置されている。
【0020】
本発明のサポート器具10の実施の形態は、人体の様々な関節をサポートするために用いてよい。図1〜5には、足関節を収容するように特別に設計されたサポート器具10の例が一般的に示されている。しかしながら、以下に限られないが、膝、股関節、肘、または手首を含む1つ以上の他の関節に使用するためのサポート器具10が、本発明の範囲および精神に含まれるものと考えられる。
【0021】
図1〜4に示されるような本発明の1つの実施の形態において、本体100はスリーブの形態をとっている。しかしながら、以下に限られないが、シート、カプセル、グローブ、または履物を含む、対象となる関節の形状に一般に適応できる他の適切な構造を用いてもよいと考えられる。
【0022】
本体100は、1つの材料または複数の材料から構成されてもよい。異なる材料が、重ねられて層状に接合されてもよく、またはその材料は、以下に限られないが、縫付けや接着を含む様々な手段によって、パッチワーク配置で縁と縁とで接合されてもよい。本体100の構成に適した材料としては、以下に限られないが、様々な天然または合成の織物、皮革、プラスチック、またはゴムが挙げられる。より可撓性であることが望ましい本体100の部分は、比較的柔軟な織物または材料を含んでよいのに対し、より剛性であることが望ましい本体100の部分は、それほど柔軟ではない織物または材料を含んでよい。
【0023】
図3および4に示されるような本発明の1つの実施の形態において、本体100は、互いに向かい合って配置された第1と第2の部分124および126を備えている。本発明の1つの実施の形態において、第1と第2の部分124および126は、本体100の他の部分に対してそれほど柔軟ではない材料から構成される。第1と第2の部分124および126の縁は、関節サポート器具10の本体100を形成するように、互いに向かい合って配置された、より柔軟な第3と第4の部分128および130の縁に接合されている。この構成において、対象の関節の動作の一方向の制限範囲が達成される一方で、それでも、別の方向の動きは比較的自由にできる。
【0024】
図1〜4に示されるような、足首に適合されたサポート器具10の実施の形態において、内側部分103(第1の部分124に対応)および外側部分105(第2の部分126に対応)は、足関節を横切って互いに向かい合って配列されている。内側部分103および外側部分105は、本体100の他の部分に対して、それほど柔軟ではない。後方部分102(第3の部分128に対応するむ)および前方部分104(第4の部分130に対応する)は、足関節を横切って互いに反対に配置されており、よって、図1〜4に示されるように、内側、外側、後側および前側の部分103、105、102および104が互いに接合されて、本体100を形成している。後側部分102および前側部分104は、内側部分103および外側部分105よりも、柔軟である。この配列によって、内反と外反の足首の怪我を防ぐとき(この場合、足首の回転速度を遅くすることが望ましい)に有用であるが、ランニングやジャンプなどの運動動作の性能にとって、足首の屈曲と伸展が比較的抑制されていない必要がある。例えば、バスケットボールやテニスの競技者は、そのような特性を備えた足首の固定具を着用することにより恩恵を受けるであろう。
【0025】
図1〜5に示されるようなある実施の形態において、本体100は、足裏の底を包む下側部分132をさらに備えている。下側部分132は、内側部分103および外側部分105と一体であっても、または下側部分132は、その縁が内側部分103および外側部分105に接合された別個の材料片であってもよい。足首のためのサポート器具10における下側部分132は、特定の方向における関節の動作を制限するのに役立つこともある。例えば、足首のためのサポート器具10の下側部分132は、足が体重を支えていないときに、上向きの圧縮力を生じ、足関節における自然な隙間を閉じるように、少なくとも部分的に踵骨の下で、踵領域に向かって足下に位置している。ある実施の形態において、この構成は、様々な望ましくない足首の変位を防ぐのに役立つように適合される。
【0026】
図1および2に最もよく示されているような本発明の1つの実施の形態において、サポート器具10は、第1と第2の部分124および126などの、本体100の他の比較的剛性の部分の境界内に局部的伸縮性部分106を備えている。伸縮性部分106は、本体100に局部的な可撓性を与えるので、伸縮性部分106は、特定の着用者の関節とその周りの解剖学的構造によりよいフィット感を提供し、望ましい方向におけるより大きい関節の動作が可能になる。
【0027】
本発明のある実施の形態において、伸縮性部分106は、熱可塑性ウレタン(TPU)の薄いバンドで被覆された弾性合成層から製造される。しかしながら、第1と第2の部分124および126などの、本体100の比較的より剛性の部分よりも柔軟な他の適切な材料を用いてもよいと考えられる。ある実施の形態において、伸縮性部分は、関節サポート器具10の総質量を減少させる軽量材料、または対象の関節とその周りの解剖学的構造の皮膚の通気性を考慮した材料から構成されている。伸縮性部分106のサイズ、色、および形状は、サポート器具10の全体の外観に寄与するように変えられる。さらに、1つの伸縮性部分106または複数の伸縮性部分106を本体100に含めてもよい。
【0028】
本体100に連結したときに、第1と第2のサポート部材203および205は、特定の方向の動作に対する機械抵抗を与えることによって、関節が望ましくなく変位するのを防ぐように働く。第1と第2のサポート部材203および205は、例えば、サポート部材203または205の表面全体に亘る局部的な衝撃により生じる力を分散させることによって、関節を衝撃から保護する働きもする。
【0029】
図6Aおよび6Bにより最もよく示されているような第1のサポート部材203は、本体100の第1の部分124内に形成された第1のキャビティ211により収容される。第2のサポート部材205は、本体100の第2の部分126内の第1のキャビティ211の反対に形成された第2のキャビティ213により収容される。本発明の1つの実施の形態において、第1と第2の部分124および126は、上述した本体100の比較的剛性の部分から構成される。第1のサポート部材203および第2のサポート部材205の所望の位置は、特定の関節の解剖学的構造および避けるべき変位および/または怪我の特定のタイプに応じて様々である。
【0030】
図1〜4に示されるような、主に足首における内反および外反の怪我を減少させるために設計されたサポート器具10の実施の形態において、第1と第2のサポート部材203および205の内の一方は、足首の内側踝近くの本体100の内側部分103に配置され、一方で、他方のサポート部材は、踵の外側踝近くの本体100の外側部分105に配置される。
【0031】
主に手首における過剰な橈骨−尺骨の偏りを減少させるために適合された実施の形態において、第1と第2のサポート部材203および205は、内側部分と外側部分に配置される。手首の過剰な屈曲と伸展を減少させるために適合された手首サポートの実施の形態において、第1と第2のサポート部材203および205は、背側および腹側(または手のひら側)の位置に配置される。
【0032】
第1と第2のサポート部材203および205は、以下に限られないが、プラスチック、金属、複合材、またはそれらの組合せを含む、いくつの適切な材料から製造されてもよい。本発明のある実施の形態において、第1と第2のサポート部材203および205は、ポリエチレン、または、例えば、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド、および/またはTPUなどの類似の材料を射出成形することによって形成される。どの材料を使用するとしても、第1と第2のサポート部材203および205は、過剰な関節変位を防ぎ、外部からの衝撃力を緩和するほど十分に剛性であるが、所望の方向における可撓性が見込まれるほど十分に柔軟であることが望ましいであろう。このようにして、サポート器具10は、特定の活動に要求される動作の比較的正常な自由を可能にしながら、関節を保護する。
【0033】
第1と第2のサポート部材203および205は、特定の関節の解剖学的構造および避けることが望ましい怪我および/または関節の変位の特定のタイプに応じて、様々な異なる形状とサイズで形成してよい。一般に、第1と第2のサポート部材203および205は、サポートすべき関節およびその周りの解剖学的構造の形状に適応し、かつ関節および/またはその周りの解剖学的構造の望ましくない変位または動きを防ぐように設計される。関節の反対側はわずかに異なる幾何学形状を有することが多いので、第1と第2のサポート部材203および205のサイズ、形状および位置は、互いに異なるものであってよい。ある実施の形態において、関節の反対側が比較的似ている場合には、第1と第2のサポート部材203および205は同一であってもよい。ある実施の形態において、同一の第1と第2のサポート部材203および205を使用することにより、製造コストを減少させ、互換性を増してもよく、一方で、異なる第1と第2のサポート部材203および205を使用することにより、より良好にフィットさせてもよい。
【0034】
図6Aおよび6Bに示したようなある実施の形態において、第1と第2のサポート部材は、略平面状であり、一方向において長いものである。このようにして、サポート部材は、関節の望ましくない動きを減少させ、関節自体を外部の衝撃から保護する。一般に、内側サポート部材202などの平面状の第1と第2のサポート部材203および205は、比較的広い区域に亘り関節への任意の外部衝撃を分散させ、より狭いサポートにより生じるかもしれない圧点を制限するという利点も提供する。図6Aおよび6Bに示したように、内側サポート部材202は、この関節を外部の衝撃から保護することのできる足関節の下にある内果に相当する区域において比較的広い平面構造を有する。
【0035】
他の実施の形態において、第1と第2のサポート部材203および205は、以下に限られないが、様々な多角形または湾曲形状、または棒型、管型、ブロック型などの非平面構造、もしくは対象とする関節をサポートし、保護することのできる任意の他の形状を含む、他の適切な構造を有していてもよい。
【0036】
図6Aおよび6Bに示したような1つの実施の形態において、サポート部材202は、サポート部材の先端にある端部216を含む。端部216は、固定すべき関節に対して直接的に近位と遠位の解剖学的構造部分と間接的に接触して配置される。この接触は、一般に、サポート部材が本体100のキャビティに収容される程度に間接的である。第1と第2のサポート部材203および205の端部216を、固定すべき関節に対して直接的に近位と遠位の解剖学的構造部分と間接的に接触して配置することによって、サポートを、この関節を取り囲むより大きい下にある骨格の強度と安定性に依存させることができる。
【0037】
例えば、本発明の1つの実施の形態による内側サポート部材202が図6Aおよび6Bに示されている。内側サポート部材202は、足首の内反を遅くし、防ぐことによって、足首の内側をサポートする。内側サポート部材202の端部216の一方は、足関節に対して直接的に近位の下肢の内側に間接的に接触し、他方の端部216は、足関節に対して直接的に遠位の踵領域の内側に間接的に接触する。この幾何学形状と配向性のために、内側サポート部材202は、足首の内反に対する抵抗性を提供することができる。
【0038】
より詳しくは、下にある脛骨を含む下肢の内側と、下にある踵骨を含む踵領域の内側の、足関節の周りの互いに対して内反する可能性は、その端部216が、これらの解剖学的構造の表面に対して間接的に押し付けられ、その中央部分がかなりの曲げに対しても抵抗性を示すサポート部材の存在によって、減少されるか、またはなくなるであろう。
【0039】
本発明のある実施の形態において、サポートすべき関節およびその周りの解剖学的構造の形状に精確に適応する必要性のために、第1と第2のサポート部材203および205が、関節における下にある骨または他の構造に適応するための、それら表面における突出部または湾曲領域を含むことになるであろう。図6Aおよび6Bはその一例を示しており、ここで、内側サポート部材202は、足首の内果の形状により精密に適応するように、その中心から外方に突出する湾曲部分208を備えている。他の実施の形態において、様々な骨または他の解剖学的構造に適応するために、同様の突出部または湾曲部材を用いてもよい。
【0040】
本発明のある実施の形態において、第1と第2のサポート部材203および205は、関節サポート器具10の特定の着用者のために、その着用者から得られる情報またはデータに基づいて、特注生産されてもよい。着用者の関節およびその周りの解剖学的構造の寸法、並びに着用者の任意の他の要件または嗜好が、着用者または別の個人により記録され、第1と第2のサポート部材203および205の製造業者に提供されてもよい。フィット感に関連するパラメータを得るために、以下に限られないが、定規、メジャー、2次元または3次元スキャナ、圧力センサ、写真、ビデオ、または他の類似の手段を含む従来の測定技法を用いてよい。特注生産の挿入物の製造技法としては、所望のパラメータを実現するために、機械加工、熱成形、または加圧成形が挙げられる。特注生産プロセスは、望ましくない圧点を減らしまたはなくし、下にある関節のものに似た、より自然な曲げ特徴を提供し、全体的なデザインの美観を増すようなサポート部材を提供するために適合されてよい。
【0041】
ある実施の形態において、第1と第2のサポート部材203および205は、性能および/または外観を変えるための構造的特徴を1つ以上備えていてもよい。図6Aおよび6Bに示したような1つの実施の形態において、内側サポート部材202は、内側サポート部材202の長手方向に沿って近位−遠位方向に延在する一連の溝206を備えている。溝206は、一方向において追加の強度を与えるために方向付けられている。このようにして、例えば、関節サポート器具10は、足首の内反または外反に対する抵抗を提供しても、ランニングまたはジャンプ中に足首が屈曲および伸展することを可能にする。以下に限られないが、うね、隆起、窪み、または穴を含む他の構造的特徴も、本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0042】
図1〜5に示したような本発明のある実施の形態において、第1と第2のサポート部材203および205は、第1と第2のキャビティ211および213内に配置されている。上述したように、サポート部材およびそれらの対応するキャビティの所望の位置(すなわち、それぞれ、本体100の第1の部分124および第2の部分126)は、特定の関節の解剖学的構造および避けることが望ましい怪我および/または関節の変位の特定のタイプに応じて、様々である。
【0043】
第1と第2のキャビティ211および213は、本体100内に第1と第2のサポート部材203および205を収容するための受入部として働く。第1と第2のキャビティ211および213は、一般に、本体100の外面110と内面108との間の空間として定義される。ある実施の形態において、第1と第2のサポート部材203および205は、それぞれ、第1と第2のキャビティ211および213により少なくとも部分的に収容されているが、その中に完全に含まれなくてもよい。ある実施の形態において、サポート部材は、それらのそれぞれのキャビティ内に完全に含まれてもよい。
【0044】
本発明のある実施の形態において、第1と第2のキャビティ211および213は、サポート部材が取り外せないように密閉されていてもよい。本発明の別の実施の形態において、第1と第2のキャビティ211および213は、関節サポート器具10の製造が完了した後、第1と第2のサポート部材203および205、または他の要素が、まだ、キャビティから取り外せるか、またはキャビティに加えられる程度に、開かれたままである。このようにして、第1と第2のサポート部材203および205は、先に記載したように、サポート部材の互換性または特注生産されたサポート部材の挿入が望ましい程度まで、取り外せるおよび/または交換できるものであってよい。
【0045】
図7に示すように、第1と第2のキャビティ211および213は、第1と第2のサポート部材203および205と共に、追加の緩衝材すなわちパッド214を備えてもよい。パッド214は、本体100の第1の部分124の内面と第1のサポート部材203との間、および/または本体100の第2の部分126の内面108と第2のサポート部材205との間に配置されていてよい。パッド214は、より良好でより快適なフィット感を着用者に提供し、全体のデザインにそれほど質量を加えずにそのようにするであろう。その上、パッド214は、衝撃力を分散させるのに役立つであろう。
【0046】
図1〜4に示したような本発明のある実施の形態において、第1と第2のキャビティ211および213の外部を形成する本体100の外面110は、1つ以上の窓114を備えてもよい。窓114により、第1と第2のサポート部材203および205の少なくとも一部分が、本体100の外側から少なくとも部分的に見ることができる。本発明のある実施の形態において、窓114はメッシュ材料から製造される。しかしながら、半透明または透明な中実表面などの他のタイプの窓114も本発明の範囲および精神に含まれると考えられる。
【0047】
さらに、窓114は、フレーム112により取り囲まれている。フレーム112は、本体100の外面110上で窓を適所に保持しても、または単に窓に隣接して配置されてもよい。フレーム112および窓114は、接着、縫付け、または他の従来の手段によって、互いにおよび/または本体100に固定されていてよい。さらに、多数の別個の窓114が、サポート部材の各々の近くに配置されていてもよい。
【0048】
窓114により、サポート部材の少なくとも一部分が本体の外側から見ることができるので、サポート部材の着用者は、例えば、お気に入りの色、お気に入りのチームロゴやチームカラー、または他の個別化された個人の印をキャビティ内に配置することによって、サポート部材をさらに特別仕様にすることを選択できる。着用者は、サポートの様々なレベル、材料の組成、または様々な他のパラメータを選択することもできる。
【0049】
内側と外側のキャビティ210および212内に配置された内側と外側のサポート部材202および204の両方を、本発明の特定の実施の形態について説明してきた点では、ある状況下で、上述したサポート器具10の片側のみに、サポート部材と対応するキャビティを含むことが望ましいかもしれないことが当業者には明白であろう。言い換えれば、一方の側のみに1つのサポート部材を有する関節サポート器具10が、本発明の精神と範囲内に含まれると考えられる。
【0050】
図5により最もよく示されるような本発明のある実施の形態において、サポートすべき関節に対して近位に位置するストラップ300が本体100の部分101上に配置されている。本体100に連結されると、ストラップ300は、本体100の近位部分101を関節とその直接的に近位の解剖学的構造に固定する。ある場合には、ストラップ300は、サポートされる関節に直接的に近位の解剖学的構造の主要骨格にほぼ平行に延在する軸の周りの関節の回転を抑制するように働く。遠位部分などの、本体100の他の部分に追加のストラップを配置してもよい。
【0051】
図1および2に最もよく示されるような特定の構成において、ストラップ300は、本体100の外面110の一部分とも重複し、第1または第2のサポート部材203または205の近位端部216を覆う。この場合、ストラップ300は、第1または第2のサポート部材203または205およびその周囲の本体100を補強し、固定すべき関節に固定するように働く。第1または第2のサポート部材203または205がこのようにして固定されたときに、関節サポート器具10の全体の効果が増すであろう。
【0052】
本発明のある実施の形態において、ストラップ300は、ストラップの固定端306で本体100の近位部分101にしっかりと取り付けられ、ストラップの自由端308に取外し可能に取り付けられる。ストラップ300は、本体100および固定すべき関節の周りに巻き付けることができる。例えば、面ファスナーなどの固定手段318により、ストラップ300を本体100に固定する。以下に限られないが、スナップ、フック、留め具、ボタン、またはジッパーを含む他の適切な固定手段318を用いてもよい。
【0053】
ある実施の形態において、ストラップは、固定される関節に直接的に近位の下にある解剖学的構造を含む、本体100の近位部分101の周りに巻き付けられる。例えば、足首のために設計された関節サポート部材について、ストラップ300は、本体100の近位部分101の少なくとも部分的に周りに巻き付けることができ、一方で、足首に直接的に近位の着用者の下肢の一部分は、本体100の近位部分101の境界内に含まれる。
【0054】
図1〜5、8Aおよび8Bに示したような、ある実施の形態において、ストラップ300は、ストラップ300を本体100に固定するための2区域(two-zone)留め具システムを有していてもよい。この2区域は、同じストラップ上に位置する2つの別個の留め具手段318を有することによって作製できる。留め具手段318の一方は、ストラップ300が本体100に固定して接続された地点から、第1の留め具手段318が本体100に接続された地点まで、ストラップ300の長手方向に沿って、本体100の周りに張力を生じ、本体100に圧縮力を与えることができる。他方の留め具手段318は、第1の留め具手段318が本体100に接続された地点から、第2の留め具手段318が本体100に接続された地点まで、ストラップ300の長手方向に沿って、本体100の周りに張力を生じる、本体100に圧縮力を与えることができる。
【0055】
図8Aおよび8Bに示したような、1つの実施の形態において、ストラップ300は、ストラップ内面302およびストラップ外面304を備えている。ストラップ外面304は、ストラップ300の固定端306の近くに位置する外面ストラップ留め具手段310を有する。ストラップ内面302は、ストラップ300の自由端308近くに位置する内面ストラップ留め具手段312を有している。
【0056】
それに対応して、図4および5に示されるように、本体100は、本体100の近位部分101から延在するタブ320を備えている。タブ320は、内面に内面タブ留め具手段314を、外面に外面タブ留め具手段316を有している。タブ320が枝分れした地点に最も近い本体100の近位部分101の区域は、ストラップスロット118も備えている。ストラップスロット118は、ストラップ300の一部分がその中を通ることのできる本体100の開口である。本体100は、ストラップ300が関節の周りに巻き付けられたときに、そのストラップを案内するための、図1〜3に示したような、追加のストラップガイド120を備えてもよい。
【0057】
サポートすべき関節およびその直ぐ周りの解剖学的構造の周りにストラップ300を締め付けるために、ストラップ300は、本体100の近位部分の周りに巻き付けられ、一方で、外面と内面のストラップ留め具手段310および312は、内面と外面のタブ留め具手段314および316に接続される。
【0058】
例えば、右骨根関節をサポートするように設計され、図1〜5、8Aおよび8Bに示したようなストラップ構造を備えた本発明のある実施の形態の動作をここに説明する。この実施の形態において、ストラップ内面302が骨根関節に向かって内側に面している状態で、ストラップ300の自由端308が、骨根関節の前側の周りに巻き付けられ、ストラップスロット118を通される。ストラップ300がストラップスロット118を通してピンと引っ張られると、外面ストラップ留め具手段を担持するストラップ外面304は、一般に、骨根関節の上の前方外側位置で終わる。外面ストラップ留め具手段310のある部分は、ストラップスロット118を通して引っ張られてもよい。ストラップ300がピンと引っ張られる間、タブ320は、内面タブ留め具手段314が、外面ストラップ留め具手段310の一部分と係合するように、折り重ねられてもよい。それゆえ、ストラップ300は、本体100の前側と下にある骨根関節の周りに張力を生じ、それに圧縮力を与える。
【0059】
ストラップ300は、今度は、本体100の近位の後方部分102の周りに再びピンと引っ張られるストラップ300の自由端308は、本体100の近位後方部分102の周りに導くために、後方のストラップスロット118に通されてもよい。ある実施の形態において、ストラップが足首の周りに巻き付けられる方向に追加の利点があるであろう。内側から外側に巻き付けることによって、着用者は、より良好な機械的利点を達成することができる。これは、反対方向に巻き付ける自然の傾向とは対照的である。
【0060】
次いで、ストラップ300は、本体100の近位内側部分103の周りに巻き付けられ、次いで、骨根関節の前方に巻き戻されるように最終的にピンと引っ張られ、よって、ストラップ300の自由端308の一部分が固定端306の一部分と重複する。この時点で、内面ストラップ留め具手段312は、外面ストラップ留め具手段310と係合される。タブ320は外面ストラップ留め具手段310の一部分上に折り重ねられて、外面タブ留め具手段316がサポート器具の外面に露出されるので、内面留め具手段312の一部分も、外面タブ留め具手段316と係合される。それゆえ、ストラップは、本体100の後側とその下にある骨根関節の周りに張力を生じ、それに圧縮力を与える。
【0061】
上述した2区域留め具システムを採用した例示の実施の形態において、張力と圧縮力の2つの別個の区域が形成される。これには、近接する周囲またはその周りの解剖学的構造の周りに張力および圧縮力をより均一に分布させる効果があるであろう。それゆえ、そのような配置により、従来のストラップ留め具配置において生じるであろう、不快さの締付け源または他の源が減少するか、なくなるであろう。
【0062】
図5に示すような、本発明のある実施の形態において、本体100の内面108に1つ以上の固有受容部材400が配置されている。本体100に結合されたときに、固有受容部材400は、体の固有受容応答を選択的に刺激して、望ましくない関節の動きに抵抗するまたはその速度を遅くするのを補助するために特定の筋肉の張力を増加させるように機能する。したがって、固有受容部材400は、怪我の可能性を減らすために、関節サポート器具の他の要素(第1と第2のサポート部材203および205などの)により提供される初期抵抗と協働するように機能する。
【0063】
体の皮膚、筋肉、靱帯、および腱のまさに下に、固有受容体として知られる受容体がある。当業者に明らかなように、固有受容体は、これらの受容体の近傍にある皮膚の部分の間の相対運動を検知した後、またはその上の他の触感を検出した後、それらに関連する筋肉における増加した緊張を開始することができる。
【0064】
関節サポート器具を着用している間にこれらの受容体を活性化させる感度を増加させるために、皮膚に対して比較的高い摩擦係数を有する固有受容部材400を、皮膚と接触する関節サポート器具10の本体100の内面108に配置してもよい。これらの高摩擦要素のために、関節の動きによるその周りのサポート器具10の摂動が、サポートすべき関節の周りの皮膚の表面に、直接伝達され易い。
【0065】
本発明のある実施の形態において、固有受容部材400は、TPUから製造されてよい。しかしながら、以下に限られないが、皮革、ゴム、プラスチック、または複合材を含む、本体100の内面を構成する他の材料の大半よりも、皮膚に対する摩擦係数がより高い他の適切な材料を用いてもよいと考えられる。
【0066】
固有受容部材400は、様々な形状、サイズ、およびパターンで形成してもよい。本発明のある実施の形態において、固有受容部材400は、TPUの実質的に平面状の多角形シートであってよい。本発明の別の実施の形態において、固有受容部材400は、一連の接近して間隔がおかれたTPUリブであってよい。これらのリブは、皮膚と十分な摩擦を生じるのに実質的に十分であるが、着用者に関節サポート器具の使用を思いとどまらせるような不快さを生じるほどは大きくないように適合される。
【0067】
固有受容部材400は、縫付け、接着、射出成形、塗装、または任意の他の適した手段によって、本体100の内面108に取り付けてよい。
【0068】
固有受容部材400の数と位置により、どの受容体が活性化されるのか(それゆえ、どの筋肉が緊張するのか)が決まる。固有受容部材400が適切に配置された場合、適切な筋肉が作動されて、所定の望ましくない関節の動きを最良に妨げる。ある場合には、要求される反応を開始するのに、1つの固有受容部材で十分であるであろう。他の場合には、複数の固有受容部材によって、より良好な結果が生じるであろう。
【0069】
図5に示すような右の骨根関節をサポートするために設計された本発明の1つの実施の形態において、2つの別個の固有受容部材400が用いられる。この実施の形態において、固有受容部材400は、足首の上の本体100の内面の近位外側部分101,105と、足首の上の近位内側部分101,103に位置している。内側と外側の部分103および105に配置された固有受容部材は、それぞれ、腓骨筋、下腿三頭筋、および前脛骨筋を作動させるように位置している。
【0070】
本発明のある実施の形態において、本体100は、気体または液体を収容できる袋(bladder)に結合させてもよい。袋は、関節サポート器具10の本体100中のどこに位置していてもよく、または袋は、本体100に対して外部に取り付けられてもよい。袋は、本体の内面108または外面110上、または本体100の内面と外面との間に位置していてもよい。袋が内面108と外面110との間に位置している実施の形態において、袋は、第1または第2のキャビティ211または213内に位置していても、またはそれらの外に位置していてもよい。袋が第1または第2のキャビティ211または213内に位置している場合、袋自体が、第1または第2のサポート部材203または205として機能してもよい。本発明のある実施の形態において、袋は、液体を充填でき、それゆえ、袋が、冷却要素またはアイスパックとして働かせてもよい。袋は、怪我による腫れを減少させるのに役立てるために、または使用前に筋肉を暖めるために、加熱されても、加熱要素を収容してもよい。
【0071】
袋は、以下に限られないが、ゴムまたはプラスチックを含む、気体または液体を保持できるどのような適切な物質から製造されていてもよい。袋は、本体100内に永久的に収容されていても、取外し可能、すなわち、交換可能であってもよい。袋は、本体100内に収容される前に、気体か液体が予め充填されていても、後の時点で充填可能または補充可能であってもよい。袋が充填される場合、その袋は、ノズル、オリフィス、または他の適切な充填要素を備えている。袋は、充填を容易にするためのポンプをさらに備えていてもよい。本体100内に、1つの袋または複数の袋が含まれていてもよい。
【0072】
本発明のある実施の形態において、関節の安定化とサポートを補助するために、関節サポート器具10の本体100に1つ以上の圧縮バンド134を加えてもよい。圧縮バンド134は、本体の内面108または外面110に含まれていてもよい。圧縮バンド134は、関節サポート器具の本体100に、関節、その直ぐ周りの解剖学的構造、およびその下にある筋肉の自然な屈曲、膨張および収縮をよりよくサポートさせることができる。本発明のある実施の形態において、圧縮バンド134は高弾性TPUバンドである。TPUバンドは、本体100上に積層、吹付け塗装、印刷、接着されていても、またはそれに縫い付けられていてもよい。図11に示したように、圧縮バンド134は、様々な形状とサイズで供給されてもよい。図11に示した例示の実施の形態において、「X」および「V」形のTPU圧縮バンド134が、足首用のサポート器具10の前側部分104の表面上に積層されている。
【0073】
骨根関節をサポートするように設計された本発明の実施の形態において、足首用のサポート器具10は、競技用シューズなどの、別個の履物500と共に着用されてもよい。あるいは、足首用のサポート器具10は、履物500中に永久的にまたは取外し可能に組み込まれてもよい。図9に示されるように、本発明の1つの実施の形態による足首用の一体型サポート器具10を有する履物500は、足首の周りに配置されたアッパー502およびアッパー502の下に配置されたソール504を備えている。内側サポート部材202を収容する内側キャビティ210が、アッパー502の内側部分103内に配置されている。外側には(図9には示されていない)、外側サポート部材204を収容する外側キャビティ212が、アッパー502の外側部分105内の内側キャビティ210の反対に配置されている。ストラップ300がアッパー502の近位部分101に配置されており、1つ以上の固有受容部材400(図9には示されていない)がアッパー502の内面108に配置されている。足首用の一体型サポート器具10を有する履物500の構造的特徴および機能性は、本発明による単純な関節サポート器具10のいくつかの実施の形態の構造的特徴および機能性に類似している。
【0074】
ある実施の形態において、アッパー502は、本発明の様々な実施の形態による関節サポート器具10の本体100と同じ機能の多くを果たすことができる。ある実施の形態において、別個の本体100をアッパー502と一体化してもよい。本発明の別の実施の形態において、アッパー502または本体100は、フィット感と快適さを改善するために、流体充填可能袋を組み込んでいてもよい。当業者に理解されるように、流体充填可能袋システムは、例えば、その開示がここに引用される、マーヴィン(Marvin)等の米国特許第6785985号明細書に開示されているような、ポンプに動作可能に連結される袋を含んでもよい。
【0075】
本発明のある実施の形態において、関節サポート器具10は「インテリジェント」関節サポートシステム600を備え、よって、調節可能なサポート制御素子608が、着用者の必要性および/または環境に応じて、所望のレベルのサポートを提供するように動的に操作されてもよい。
【0076】
図10に示すような1つの実施の形態において、マイクロプロセッサ604およびセンサ606を含む制御装置602が、関節サポート器具10内に配置されたサポート制御素子608に動作可能に連結されている。センサ606は、例えば、着用者またはサポート器具自体に関連するデータを提供するために、サポート器具10のキャビティ211または213内、下側部分132内、もしくは他の適切な部分内に位置していてもよい。以下に限られないが、圧力センサ、力変換器、ホール効果センサ、歪みゲージ、圧電素子、ロードセル、近接センサ、光センサ、加速度計、ホール素子またはセンサ、キャパシタンスセンサ、インダクタンスセンサ、超音波振動子および受信器、高周波エミッタおよび受信器、磁気抵抗素子、または巨大時期抵抗素子を含むセンサ606を用いてよい。センサ606は、例えば、サポート器具10に作用するねじれ力または圧縮力などの、1つ以上の性能状況の値を検出するものであってよい。
【0077】
センサ606が、モニタされた状況に関する値を検出すると、マイクロプロセッサ604内に記憶された命令が、サポート制御素子608によって、その状況に対する所望の反応を示す。例えば、センサ606が、足首の内反が生じていることを示す関節位置を検出した場合、マイクロプロセッサ604は、内側面に向かう足裏の内向きへの回転に対する抵抗の増加が要求されることを決定する。
【0078】
次いで、マイクロプロセッサ604は、サポート制御素子作動手段610に命令を出し、次に、この手段が、サポートが増加するようにサポート制御素子608内の調節可能素子612を作動させる。作動手段610は、調節可能素子612を作動させるための機械式、電気機械式、水圧式、または他の適切な手段を備えている。この調節可能素子は、第1または第2のサポート部材203または205、袋、ストラップ300、またはサポート器具10の他の適切な構成要素であってもよい。
【0079】
フィードバック・ループ614が、制御装置602に、サポート制御素子608の減少についての情報を更新し、関節サポート器具10の性能状況が連続的にモニタされてもよい。
【0080】
1つの実施の形態において、例えば、電池などの電源616が、インテリジェント関節サポートシステム600に動作可能に接続されている。電源616は、関節サポート器具10内またはその上に配置され、関節サポート器具10から取外し可能であってもよく、またはインテリジェント関節サポートシステム600に選択的に接続される外部電源であってもよい。ある実施の形態において、ユーザインターフェース618が、インテリジェント関節サポートシステム600に動作に接続されている。ユーザインターフェース618は、所望の動作モード(例えば、抵抗の少ないランニングモードまたは抵抗の大きいバスケットボールモード)を選択するため、またはマイクロプロセッサ604に所望の命令を入力するために使用してもよい。ユーザインターフェース618は、特定のデータまたは状況の出力をユーザに提供してもよい。当業者に理解されるように、例えば、その開示をここに引用する、ディベネデット(DiBenedetto)等の米国特許第7188439号明細書に開示されたものを含む、「インテリジェント」サポートシステムの他の特徴を組み込んでもよい。
【0081】
本発明の広がりと範囲は、上述した例示の実施の形態のいずれによっても制限されるものではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの同等物によってしか定義されない。
【符号の説明】
【0082】
10 関節サポート器具
100 本体
203,205 サポート部材
300 ストラップ
400 固有受容部材
500 履物
502 アッパー
504 ソール
600 インテリジェント関節サポートシステム
602 制御装置
604 マイクロプロセッサ
608 サポート制御素子
610 作動手段
612 調節可能素子
614 フィードバック・ループ
616 電源
618 ユーザインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足首用のサポート器具において、
前記足首の周りに配置された内側部分と外側部分、および内面を有する本体、
前記本体の内側部分内のキャビティ内に配置された内側サポート部材および該本体の外側部分内のキャビティ内に配置された外側サポート部材の少なくとも一方、
前記本体の近位部分上に配置されたストラップであって、前記足首に対して直接的に近位の下肢の前方に第1のレベルの圧力を生じ、該足首に対して直接的に近位の下肢の後方に第2のレベルの圧力を生じるように適合された留め具手段を有するストラップ、および
前記本体の内面に配置された1つ以上の固有受容部材、
を備えたことを特徴とする足首用のサポート器具。
【請求項2】
前記本体が、互いに反対側に配置された可撓性前側部分および可撓性後側部分をさらに備え、該前側部分および該後側部分の縁が、前記内側部分および前記外側部分の縁に連結されていることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項3】
前記内側部分および前記外側部分の各々が、その中に配置された伸縮性部分を有することを特徴とする請求項2記載の足首用のサポート器具。
【請求項4】
前記内側サポート部材および前記外側サポート部材の少なくとも一方の一部分が、前記本体の外面を通して少なくとも部分的に目に見えることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項5】
前記内側サポート部材および前記外側サポート部材の少なくとも一方がそのキャビティから取り外せることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項6】
前記内側サポート部材および前記外側サポート部材の少なくとも一方の上に配置された複数の溝をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項7】
前記内側サポート部材および前記外側サポート部材の少なくとも一方が、前記本体の下にある前記足首の関節の形状に適応するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項8】
前記内側サポート部材および前記外側サポート部材の少なくとも一方が、前記足首用のサポート器具の着用者のために、該着用者から得た情報に基づいて特注生産されることを特徴とする請求項7記載の足首用のサポート器具。
【請求項9】
前記本体が流体充填可能な袋に連結されていることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項10】
前記内側サポート部材および前記外側サポート部材の少なくとも一方と、その下にある前記足首の関節との間に配置されたパッドをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項11】
前記本体の表面上に配置された1つ以上の圧縮バンドをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項12】
値を検出するためのセンサをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項13】
前記センサから得られる前記値が、マイクロプロセッサにより処理されることを特徴とする請求項12記載の足首用のサポート器具。
【請求項14】
前記センサが、動的に操作され得る調節可能なサポート制御素子に連結されていることを特徴とする請求項12記載の足首用のサポート器具。
【請求項15】
前記ストラップの前記留め具手段が、該ストラップの反対側に配置された外面と内面のストラップ留め具手段を含み、前記本体が、前記外面と内面のストラップ留め具手段と操作可能に繋がるように適合された留め具手段を有することを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項16】
前記1つ以上の固有受容部材が、前記本体の内面の内側部分、および該本体の内面の外側部分の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項17】
前記1つ以上の固有受容部材が複数のTPUリブを含むことを特徴とする請求項1記載の足首用のサポート器具。
【請求項18】
足首用のサポート器具において、
前記足首の周りに配置された内側部分と外側部分、および内面を有する本体、
前記本体の内側部分内のキャビティ内に配置された内側サポート部材および該本体の外側部分内のキャビティ内に配置された外側サポート部材の少なくとも一方、
前記本体の近位部分上に配置されたストラップ、および
前記足首の周りの前記本体の内面の内側部分、および該足首の周りの前記本体の内面の外側部分に配置された複数の固有受容部材、
を備えたことを特徴とする足首用のサポート器具。
【請求項19】
前記内側サポート部材および前記外側サポート部材の少なくとも一方が、前記足首の関節の踝の突出部に適応するように形成されていることを特徴とする請求項18記載の足首用のサポート器具。
【請求項20】
前記ストラップが、前記足首の関節に対して直接的に近位の下肢の前方部分および後方部分に異なるレベルの圧力を生じることのできる留め具手段を有することを特徴とする請求項18記載の足首用のサポート器具。
【請求項21】
足首用の一体型サポート器具を有する履物において、
前記足首の周りに配置された内側部分と外側部分を有するアッパー、
前記アッパーの下に配置されたソール、
前記アッパーの内側部分内のキャビティ内に配置された内側サポート部材および該アッパーの外側部分のキャビティ内に配置された外側サポート部材の少なくとも一方、
前記アッパーの近位部分に配置されたストラップ、および
前記アッパーの内面に配置された1つ以上の固有受容部材、
を備えたことを特徴とする履物。
【請求項22】
前記ストラップが、前記足首の関節に対して直接的に近位の下肢の前方部分および後方部分に異なるレベルの圧力を生じることのできる留め具手段を有することを特徴とする請求項21記載の履物。
【請求項23】
前記1つ以上の固有受容部材が、前記アッパーの内面の近位部分に配置されていることを特徴とする請求項21記載の履物。
【請求項24】
足首用のサポート器具において、
内面を有する本体であって、
中に内側キャビティが形成された内側部分、
中に外側キャビティが形成された外側部分、および
前記外側部分から延在するタブであって、該タブの内面と外面に配置された留め具手段を有するタブ、
を有する本体と、
前記内側キャビティ内に配置された内側サポート部材と、
前記外側キャビティ内に配置された外側サポート部材と、
前記本体の内側部分に取り付けられた固定端と自由端とを有するストラップであって、前記固定端で該ストラップの外面に配置された外面留め具手段と前記自由端で内面に配置された内面留め具手段とを有し、前記タブの内面の留め具手段が前記ストラップの外面留め具手段と操作可能に繋がれ、前記タブの外面の留め具手段が前記ストラップの内面留め具手段と操作可能に繋がれるものであるストラップと、
前記足首の周りの前記本体の内面の内側部分、および該足首の周りの前記本体の内面の外側部分に配置された複数の固有受容部材と、
を備えたことを特徴とする足首用のサポート器具。
【請求項25】
前記ストラップの内面留め具手段が、該ストラップの外面留め具手段と操作可能に繋がれることを特徴とする請求項24記載の足首用のサポート器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−63877(P2010−63877A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−181297(P2009−181297)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(503052173)アディダス インターナショナル マーケティング ベー ヴェー (23)
【氏名又は名称原語表記】adidas International Marketing B.V.
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】