説明

関節リウマチ診断における抗シトルリン化コラーゲン・タイプIコラーゲンの利用

【課題】 RAの発症と進展に関わる抗シトルリン化ペプチド抗体の自己抗原を特定し、RAの病態解明と診断、治療のための新たな手段を提供すること。
【解決手段】 検体中の抗シトルリン化コラーゲン・タイプI抗体を検出することを特徴とする、in vitroにおける関節リウマチの病態検査方法、およびそのためのキット。 免疫学的方法が、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、およびRIA法から選ばれるいずれか1つの方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチ(RA)の診断に関する。より詳しくは、抗シトルリン化コラーゲン・タイプI抗体の検出を特徴とする関節リウマチの診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は関節の滑膜組織を病変の主座とする慢性炎症性疾患であり、有病率が人口の約1%を占める疾患である。RAは、初期には滑膜炎を来し、次第に軟骨や骨が侵され、進行すると関節が破壊され変形する。症状の経過は、関節炎の寛解・再燃を繰り返し、完治する例や急速に進行する例など多彩であるが、早期発見と早期治療がRA患者の生活の質を改良する上からも重要である。
【0003】
RAの診断は主に症状によってなされるが、早期診断にはRA患者の血中に見出される自己抗体の検出が今のところ有用である。そのような自己抗体としては、例えば、リウマトイド因子、抗Sa蛋白抗体、抗perinuclear factor抗体、抗ケラチン抗体、抗フィラグリン抗体、抗環状シトルリン化ペプチド抗体(anti-CCP)などが知られている(非特許文献1参照)。
【0004】
抗シトルリン化ペプチド抗体はRA患者血清の約76%から検出されるが、リウマチ様症状を呈するがRAとは判定されない患者血清からは約4%しか検出されない、RAに極めて特異性の高い自己抗体である(非特許文献2および3参照)。また、RA患者の滑膜にはシトルリン化されたタンパクが検出されることから、シトルリンを含むエピトープのRAの病原性への関与が指摘されている(非特許文献4および5参照)。
【0005】
ペプチジルシトルリンはタンパク内のアルギニン残基がペプチジルアルギニン・デイミナーゼ(以下、「PADI」という。)で変換されて生ずるアミノ酸である。ヒトゲノム中には、5種のPADI(PADI 1〜4,6)が同定されているが、これらは染色体1p36上にあり、関節リウマチ(RA)に対する感受性を付与する候補領域として知られている(非特許文献6参照)。発明者らは、一塩基変異多型(SNP)を用いた大規模全ゲノム・ケースコントロール研究によって、PADI4遺伝子やそのハプロタイプがRAと密接に関連していることを実証した(非特許文献7参照)。しかしながら、PADIによってシトルリン化される自己抗原は未だ特定されていない。
【0006】
Hagiwaraらは、HistonesおよびNucleophosmin/B23が PADI4の基質となることを報告している(非特許文献8参照)。また、RAとの関連よく知られているフィブリノーゲンやフィラグリンが組換えヒトPADI4およびPADI2で修飾され、シトルリン化されたフィブリン(フィブリノーゲン)やシトルリン化フィブリノーゲンに対する自己抗体が、それぞれRA患者の滑液やAKA陽性血清中にしばしば観察されることが報告されている(非特許文献5参照)。しかしながら、これらのタンパクがRAの自己抗原であるのか、またRAの進展機構に関係しているのかは明らかでない。
【0007】
【非特許文献1】Martinus A.M. et al., Arthritis Research (2002) 4(2), p87-93
【非特許文献2】Gerard A. Schellekens, et al., The Journal of Clinical Investigation (1998) 101(1), p273-281
【非特許文献3】ZhiJie Zhou, and Henri-Andre Menard, Current Opinion in Rheumatology (2002) 14(3), p250-253
【非特許文献4】Walter J van Venrooij and Ger J.M. Pruijn, Arthritis Research (2000) 2(4), p249-251
【非特許文献5】Christine Masson-Bessie, et al., Journal of Immunology (2001) 166(6), p4177-4184
【非特許文献6】Vossenaar ER, et al., Bioessays (2003) 25, p1106-1118
【非特許文献7】Suzuki A., et al., Nature Genetics (2003) 24, p395-402
【非特許文献8】Hagiwara T., et al., Biochem Biophys Res Commun (2002) 290, p979
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、RAの発症と進展に関わる抗シトルリン化ペプチド抗体の自己抗原を特定し、RAの病態解明と診断、治療のための新たな手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、PADI4によって修飾されるタンパクがRAの発症と進展に関わる自己抗原である可能性が高いと考えた。そして、PADI4の新しい基質を特定するため、抗シトルリン抗体を用いてRA滑膜細胞のcDNA発現ライブラリーを免疫スクリーニングし、陽性クローンの1つとしてコラーゲン・タイプI(CI)を特定した。また、発明者らは、CIおよび他のコラーゲンがPADI4および/またはPADI2によってシトルリン化されること、血清中のシトルリン化されたコラーゲン・タイプIに対する抗体がRA患者に極めて特異的であることを確認した。
【0010】
すなわち、本発明は、検体中の抗シトルリン化コラーゲン・タイプI(CI)抗体を検出することを特徴とする、in vitroにおける関節リウマチの病態検査方法に関する。
【0011】
本発明の病態検査方法において、抗シトルリン化CI抗体は、シトルリン化CIを用いた免疫学的方法によって検出することができる。そのような免疫学的方法としては、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、およびRIA法等を挙げることができる。また、検体としては、単離された血液(特に血漿)または滑液を用いることができる。
【0012】
本発明にかかる抗シトルリン化CI抗体はPADI2またはPADI4の触媒作用によって生じるシトルリン化CIを自己抗原として生じる。従って、本発明の病態検査方法は、PADI2またはPADI4、特にPADI4の機能異常が関与する関節リウマチ病態の検査に好適である。
【0013】
本発明はまた、本発明のRAの病態検査方法のためのキットを提供する。該キットは、シトルリン化CIを必須の構成要素とし、必要に応じて、抗シトルリン抗体または抗修飾シトルリン抗体、その二次抗体、および他の測定用試薬を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、RAの発症・進展機構の解明はもとより、RAの早期診断、予防、治療に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
1.ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ
本発明にかかるペプチジルアルギニン・デイミナーゼ(以下、「PADI」という。)はペプチジル・アルギニンのシトルリンへの翻訳後修飾を触媒する酵素で、ヒトでは、PADI 1〜4、6の5つのアイソフォームが知られている。
【0016】
このうち、PADI4(PADI4)遺伝子は関節リウマチ(RA)と密接に関連していることが確認されており、RA滑膜中に高い頻度で発現すると考えられている。PADI2はこのPADI4とよく似た修飾活性を有し、ウサギ骨格筋由来PADI2がよく研究されている。
【0017】
ヒトPADI4のゲノムDNA配列は、公共データベースであるGenBankに、Accession No.gi:15042937として登録されており、そのcDNA配列はAccession No.NM_012387.1として登録されている。また、ヒトPADI4タンパク質のアミノ酸配列も、GenBankにAccession No.NP_036519.として登録されている。
【0018】
また、ヒトPADI2のゲノムDNA配列は、公共データベースであるGenBankに、Accession No.gi:15042937として登録されており、そのcDNA配列はAccession No.
NM_007365.1として登録されている。また、ヒトPADI2タンパク質のアミノ酸配列も、GenBankにAccession No.NP_031391として登録されている。
【0019】
2.PADI遺伝子と組換えPADIタンパクの調製
本発明にかかるPADI遺伝子は、常法に従い、上記塩基配列に基づいて設計したプライマーあるいはプローブを用いてヒトcDNAライブラリーあるいはゲノムライブラリーより容易にクローニングすることができる。クローニングしたPADI遺伝子は、必要であればサブクローニングを行い、適宜増幅して使用することができる。
【0020】
また、PADIタンパク質(組換えPADIタンパク質)は、常法に従い(例えば、(Molecular Cloning,A Laboratory Manual”Maniatis,T.,Fritsch,E.F.,Sambrook,J.(1982)Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)、クローニングされたPADI cDNA配列をプラスミドやウイルス等のベクターに連結(挿入)し、適当な宿主細胞で発現させればよい。組換えタンパクの作製については、後述する抗体作製の記載を参照されたい。
【0021】
3.RA病態におけるシトルリン化CIとPADIの関与
本研究により、CIがin vitroでPADI4およびPADI2によってシトルリン化されることが確認された。
CIIとRAの関係についてはすでに知られているが、これまでCIとRAの関係を示す証拠は報告されていない。今回、RA患者と非RA患者における抗CII抗体レベルは健常対照者よりも有意に高かったが、抗CI抗体レベルに差異はなかった。しかし、抗シトルリン化CI抗体の力価は、健常対照者あるいは非RA患者に比べてRA患者で有意に高かった。このことから、抗シトルリン化CIがRAに特異的であり、CIがPADIによるシトルリン化を経てRA病態に関与しうる可能性が実証された。
【0022】
免疫組織化学的解析の結果、滑膜内、主として滑膜毛細血管および滑膜深部におけるCIとPADI4の共存が確認された。また、PADI2も滑液および滑膜組織(データは示されていない)に存在が確認された。このことから、PADI2およびPADI4はRA患者の各組織でシトルリン化に関係している可能性が示唆された。
【0023】
以上より、シトルリン化CIはRAの自己抗原として、RAの進展に重要な役割を担っており、RA患者に特異的に検出される抗シトルリン化CI抗体は、RA病態の発症、進展を示す1種のマーカーとして利用できることが確認された。
【0024】
4.抗シトルリン化CI抗体のRA診断、治療への応用
(1) RAの病態検査方法
PADIによるCIのシトルリン化と、それに伴う抗シトルリン化CI抗体の発現は、RA病態の特異的マーカーとなりうることが確認された。すなわち、抗シトルリン化CI抗体の検出は、RA、特にPADI4やPADI2の機能異常を伴うRAの病態検査、診断に有用である。
【0025】
(2) RA治療薬の評価方法
また、PADIによるCIのシトルリン化プロセスを標的として、RA病態に伴う新たな関節リウマチ治療薬の評価を行うことができる。そのような関節リウマチ治療薬は、被験物質の存在下と非存在下における、CIのシトルリン化レベルを測定することによって評価できる。
【0026】
(3) 抗シトルリン化CI抗体の検出
抗シトルリン化CI抗体はシトルリン化CIを用いた免疫学的方法、例えば、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、RIA法等により検出できる。
【0027】
(4) シトルリン化CIの調製
本発明で用いられるシトルリン化CIは、市販のヒトCIあるいは常法により調製したヒトCIを、前述の組換えPADI、特にPADI2またはPADI4を用いてシトルリン化することにより得られる。得られたシトルリン化CIは、必要に応じて、後述する抗体の精製に準じて、アフィニティークロマトグラフィー、SDS-PAGE等により精製して使用する。
【0028】
(5) 抗体の調製
本発明で用いられる抗体は、常法により(例えば、新生化学実験講座1、タンパク質1、p.389-397、1992)、検出すべきタンパク、あるいはそのアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを用いて動物を免疫し、該動物生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein,Nature 256,495-497,1975、Kennet,R.ed.,Monoclonal Antibody p.365-367,1980,Prenum Press,N.Y.)にしたがって、目的とする抗体を産生する抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを樹立し、このハイブリドーマから得られるモノクローナル抗体を用いてもよい。
【0029】
抗体作製用の抗原としては、目的タンパクまたはその少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいはこれらに任意のアミノ酸配列や担体を付加した誘導体を用いることができる。検出すべきタンパクのN末端に、キーホールリンペットヘモシアニンを担体として結合させたものも好適に用いることができる。
【0030】
抗原ペプチドは、常法に従い、適当な宿主細胞で産生させてもよい。例えば、抗原ペプチドを発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して発現させる。
【0031】
宿主細胞としては、原核細胞であれば、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)等が挙げられる。目的の遺伝子をこれらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。該ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与しうる配列を有するものが好ましい。
【0032】
例えば、大腸菌であれば、K12株等がよく用いられ、ベクターとしては、一般にpBR322やpUC系のプラスミドが用いられるが、これらに限定されず、公知の各種菌株やベクターを使用できる。また、大腸菌で用いられるプロモーターとしては、例えば、トリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン・ラクトース(tac)プロモーター、リポプロテイン(lpp)プロモーター、ポリペプチド鎖伸張因子Tu(tufB)プロモーター等を挙げることができる。
【0033】
枯草菌であれば、207-25株が好ましく、ベクターとしてはpTUB228(Ohmura,K.et al.(1984)J.Biochem.95,87-93)等が用いられるが、限定されるものではない。なお、ベクターに枯草菌のα−アミラーゼのシグナルペプチド配列をコードするDNA配列を連結することにより、菌体外での分泌発現も可能となる。
【0034】
真核細胞の宿主細胞としては、脊椎動物、昆虫、酵母等の細胞が挙げられる。脊椎動物細胞としては、COS細胞(Gluzman,Y.(1981)Cell 23,175-182、ATCC CRL-1650)、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)やそのジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G.and Chasin,L.A.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77,4126-4220)等を用いることができる。また、昆虫細胞であれば、鱗翅類ヤガ科のSpodoptera frugiperdaの卵巣細胞由来株化細胞(Sf-9またはSf-21)やTrichoplusia niの卵細胞由来High Five細胞(Wickham,T.J.et al,(1992)Biotechnol.Prog.i:391-396)等を用いることができる。
【0035】
脊椎動物細胞の発現ベクターには、通常発現させようとする遺伝子の上流に適当なプロモーター、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列等を配置する。さらに、必要により複製起点を有していてもよい。前期発現ベクターの例としては、サイトメガロウイルス初期プロモーターを有するPCR3.1(Invitrogen社製)、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani,S.et al.(1981)Mol.Cell.Biol.1,854-864)等のほか、レトロウィルスベクターpLCNX(Clontech,K1060-1)等を用いることができる。
【0036】
COS細胞を宿主細胞として用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自立増殖が可能であり、さらに、転写プロモーター、転写終結シグナル、およびRNAスプライス部位を備えたものを好適に用いることができる。該発現ベクターは、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman, H.and Magnusson,G.(1983)Nucleic Acids Res,11,1295-1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham,F.L.and van der Eb,A.J.(1973)Virology 52,456-457)、および電気パルス穿孔法(Neumann,E.et al.(1982)EMBO J.1,841-845)等によりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。
【0037】
CHO細胞や293細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターと共に、抗生物質G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えば、pRSVneo(Sambrook,J.et al.(1989):“Molecular Cloning A Laboratory Manual“Cold Spring Harbor Laboratory,NY)やpSV2neo(Southern,P.J.and Berg,P.(1982)J.Mol.Appl.Genet.1,327-341)等をコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することにより、目的のポリペプチドを安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。
【0038】
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとしてバキュロウイルストランスファーベクターである、オートグラファ核多角体ウイルス(AcNPV)のポリヘドリン蛋白質のプロモーターを利用したpVL1392/1393がよく用いられる(Kidd,i.M.and V.C.Emery(1993)The use of baculoviruses as expression vectors.Applied Biochemistry and Biotechnology 420,137-159)。この他にも、バキュロウイルスのP10や同塩基性蛋白質のプロモーターを利用したベクターも使用できる。さらに、AcNPVのエンベロープ表面蛋白質GP67の分泌シグナル配列を目的蛋白質のN末端側に繋げることにより、組換え蛋白質を分泌蛋白質として発現させることも可能である(Zhe-mei Wang,et al.(1998)Biol.Chem.,379,167-174)。
【0039】
真核微生物を宿主細胞とした発現系としては、酵母が一般によく知られており、その中でもサッカロミセス属酵母、例えば、パン酵母Saccharomyces cerevisiaeや石油酵母Pichia pastorisが好ましい。該酵母等の真核微生物の発現ベクターとしては、例えば、アルコール脱水素酵素遺伝子のプロモーター(Bennetzen,J.L.and Hall,B.D.(1982)J.Biol.Chem.257,3018-3025)や酸性フォスファターゼ遺伝子のプロモーター(Miyanohara,A.et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80,1-5)等が好適である。また、分泌型蛋白質として発現させる場合には、分泌シグナル配列と宿主細胞の持つ内在性プロテアーゼあるいは既知のプロテアーゼの切断部位をN末端側に持つ組換え体として発現させることも可能である。例えば、トリプシン型セリンプロテアーゼのヒトマスト細胞トリプターゼを石油酵母で発現させた系では、N末端側に酵母のαファクターの分泌シグナル配列と石油酵母の持つKEX2プロテアーゼの切断部位をつなぎ発現させることにより、活性型トリプターゼが培地中に分泌されることが知られている(Andrew,L.Niles,et al.(1998)Biotechnol.Appl.Biochem.28,125-131)。
【0040】
上記のようにして得られる宿主細胞は、常法にしたがって培養することにより、その細胞内、または細胞外に目的のタンパクを産生する。培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択できる。
【0041】
産生された組換えタンパクは、その物理的性質や化学的性質等を利用した公知の分離操作法により、分離・精製することができる。そのような方法としては、例えば、タンパク沈殿剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、を単独あるいは組合せて利用できる。また、発現させる組換えタンパクに6残基からなるヒスチジンを繋げれば、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することもできる。目的とするタンパクは、以上に記載した方法を適宜組み合わせることにより、容易に高収率、高純度で製造できる。
【0042】
(6) その他
前記シトルリン化CI、抗シトルリン抗体、該抗体に対する二次抗体、および他の免疫学的測定に必要な試薬等は、本発明のRAの病態検査方法のためのキットとして有用である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0044】
1.材料および方法
(1) ヒト血清および滑膜組織
ヒトの血清を、American Rheumatism Associationの基準に従い、インフォームド・コンセントを得た119人のRA患者および18人の健常人から採取した。血清中の抗CCPレベルをDIASTATTM Anti-CCPキット(株式会社医学生物学研究所)を用いて測定した。RA患者の平均年齢は61.1歳(範囲、20〜83歳)で、66%がリウマチ因子について陽性であった。また、26人の非RA血清(他の疾患)はすべて抗CCP抗体陰性であった。滑膜組織のサンプルは関節形成術を受けたRA患者から採取した。
【0045】
(2) ヒト組換えPADI4(hPADI4)の精製
His標識ヒトPADI4(GenBank Accession No.NM_012387.1)はE.coli,BL21-SIで発現させ、HiTrap protein purification system(Amersham Biosciences Corp.)を用いて精製した。
【0046】
(3) 免疫スクリーニング
シトルリン化タンパクの免疫スクリーニングは、λ-ZAP(Stratagene)のヒトRA滑膜細胞cDNAライブラリーと抗MC(anti-modified citrulline)検出キット(Upstate)を用いて行った。タンパクの発現誘導は製造業者の説明書に従って行った。hPADI4によるシトルリン化反応は、0.075U/ml hPADI4、10mM Tris-HCl(pH7.6)、20mM CaCl2、5mM DTT含むPVDF膜(Bio-Rad)上で、37℃ 1時間行った。陽性クローンをプラスミドpBluescript II SK (+)にクローニングし、そのDNA配列をABI PRISM 3700 Sequencer(Applied Biosystems)で決定した。
【0047】
(4) ウエスタンブロット法によるシトルリン化の確認
酸抽出したI型コラーゲン(CI)およびII型コラーゲン(CII)(Becton, Dickinson and Company)を0.1M Tris-HCl(pH8.0)で中和し、Lammini緩衝液を加えた。これをSDS-PAGEで分離し、hPADI4またはウサギPADI2(Sigma)によるシトルリン化反応を、0.075U/ml hPADI4 or PADI2 0.075U/ml、10mM Tris-HCl(pH7.6)、20mM CaCl2、5mM DTTを含むPVDF膜(Bio-Rad)上にて、37℃または50℃で12時間行った。反応後、シトルリン化コラーゲンを抗MC検出キット(Upstate)を用いて検出した。
【0048】
(5) LC/MS/MSによるヒトCIのシトルリン化部位の特定
ヒトCIを25mM Tris-HCl(pH7.6)、20mM CaCl2、5mM DTTを含む反応緩衝液中、ウサギPADI2 0.5U/mlとともに50℃で12時間インキュベートした。ウサギPADI2処理または未処理のヒトCI 1μgをSDS-PAGEで分離し、クーマシー・ブリリアント・ブルー染色されたバンドを切り取り、トリプシンで消化した。消化されたペプチドの混合物をLC/MS/MS(Q-TOF2マススペクトロメーター(Micromass)、CapLCクロマトグラフィー・システム(Waters)、Develosil ODS カラム(Nomura Chemical))により解析した。
【0049】
(6) ドットブロット
RA患者または健常対照者のヒトIgG(0.01mg/ml、10% BL21-SI lysateを加えた5%脱脂乳を含むT-TBS)でプローブし、検出を行った(検出は次項参照)。
【0050】
(7) ヒト血清を用いたウエスタンブロッティング
タンパクを7.5%から15%グラジエントのポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEで分離し、PVDF膜(Bio-Rad)の上に移した。膜を上記に準じてウサギPADI2で処理後、ヒト血清(1:20)を含むブロッキング緩衝液を加え、ヤギ抗ヒトIgGペルオキシダーゼ共役抗体を加え、ECL Western blotting reagents(Amersham)を用いてペルオキシダーゼ活性をみた。
【0051】
(8) ELISAによるCIおよびCIIのシトルリン化の検出
5μg/mlの酸抽出ヒトCIおよびヒトCIIを含む0.01M酢酸で、96ウェルのELISA用プレート(Corning)を覆い(1ウェル当たり100μl)、室温で2時間放置した。同様にして、PBSで5μg/mlに希釈したヒトフィブリノーゲン(American Diagnostica Inc.)でELISA用プレートを覆った。上記コラーゲンまたはフィブリノーゲン被覆プレートを、37℃で0.05U hPADI4または50℃でウサギ筋肉由来PADI2(SIGMA)0.05Uと反応させた。プレートをT-PBSで洗浄後、0.1% オブアルブミンを加え、プレートを1%グルタルアルデヒド(in PBS)で処理した。次いで、プレートを0.2M Tris-塩酸(pH7.8)、蒸留水で洗浄し、シトルリン化されたコラーゲンを脱イミノ化し、抗MC検出キット(Upstate)を用いて検出した。
【0052】
(9) ELISAによるRA患者および正常血清中の抗シトルリン化抗体の検出
hPADI4またはPADI2による被覆および脱イミノ化後、シトルリン化コラーゲン被覆プレートを5%脱脂乳を含むT-TBSでブロックし、希釈血清100μlを加え、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、1:20000に希釈したヤギ抗ヒトF(ab’)2AP(Biosource)100μlを加え、室温で1時間インキュベートした。室温でプレートに1ウェル当たり100μlのpNPP基質(SIGMA)を添加し、プレート・リーダーFusion(PerkinElmer)を用いて405nmで吸光度を測定した。データは、常に標準的な対照血清の解析も行った。すべての試験は3回繰り返して行った。平均値間の有意差検定にはスチューデントのt検定(Microsoft Excel)を用いた。
【0053】
(10) 自己抗体の精製
シトルリン化コラーゲンに対する自己抗体は、抗シトルリン化コラーゲン抗体力価の高い4種のRA抗血清を併せたものからProtein Gカラム(HiTrap Protein G; Amersham Biosciences)を用いてIgGを単離し、アフィニティ・クロマトグラフィーで精製した。このIgG(PBS中1.5mg/ml)を1.25UウサギPADI2を含む反応緩衝液2.5mlで処理し、コラーゲン被覆ビーズ・カラム(PLA Beads Column、石原バイオサイエンス株式会社、)にかけた。4℃ オーバーナイトでインキュベート後、ビーズをPBSで洗浄し、結合した抗体を0.1Mグリシン塩酸(pH 3.0)で溶出し、1M Tris-HCl(pH 9.0)で中和後、PBSに透析した。
【0054】
(11) 免疫組織化学
ホルマリン固定、パラフィン埋包された組織を6μmの切片に切断した。対照として、市販の正常な成人皮膚組織のパラフィン・スライド(BIOCHAIN)を用意した。キシレンで組織切片からパラフィンを除き、エタノールで再水和した。ヒトCIに対するマウスのモノクローナル抗体(100ng/切片、第一ファインケミカル株式会社)で滑膜組織をプローブし、VECTASTAIN ABCキット(VECTOR LABORATORIES)で視覚化した。また、RA患者の血清から精製した抗シトルリン化CI抗体で正常成人皮膚組織をプローブし、製造業者の説明書に従ってVECTASTAIN ABC Universalキットで視覚化した。hPADI4に対するウサギポリクローナル抗体(100ng/切片)を用いて滑膜組織をプローブし、3,3’-ジアミノベンジンを基質としてVECTASTAIN ABC Universalキットで視覚化した。抗MC抗体ついては、前記したように、シトルリン残基の修飾後に抗体を使用した。すべての切片はヘマトキシリンで対比染色した。
【0055】
陰性対照は、いずれも正常IgGに対応するものを使用し、抗MC抗体についてはシトルリン修飾工程を省略した。
【0056】
2.結果
(1) 滑膜細胞中のシトルリン化タンパクの同定および確認
RA患者の滑膜細胞から作製した約106 pfuのλ-ZAP cDNA発現ライブラリーを用いた免疫スクリーニングの結果(図1A)、hPADI4でシトルリン化される基質として、3つの陽性クローンが得られた。これらは、配列決定によりCI α1遺伝子と同一であることが確認された。
【0057】
ウエスタンブロッティングにより、CIがPADI4でシトルリン化されていることが確認された(図1B)。さらに、抗MC抗体を用いたELISAによりシトルリン化コラーゲンが検出された(図1、CおよびD、フィブリノーゲンを用いたこの検定システムの確認:図5、AおよびB)。シトルリン化タンパクは抗体の希釈率および酵素反応時間に応じて増加した。
【0058】
LC/MS/MSを用いてウサギPADI2によるCI中のシトルリン化部位を調べた。われわれはCIタンパクのα1でのシトルリン化部位17箇所およびα2でのシトルリン化部位27箇所を同定したが、ペプチジルアルギニンをペプチジルシトルリンに変換する標的アルギニン残基を認識するためのPADI2の配列特異性を見つけることはできなかった。
【0059】
(2) RA患者の血清から得たIgGのヒトシトルリン化CIに対する反応性
RA患者において、抗シトルリン化コラーゲン抗体の存在が確認された。抗CCP力価の高い3つのRA血清をプールしたものから精製したIgGを用いてドットブロットを行った(図2A)。脱イミノ化により、CIはRA血清から精製されたIgGとよく反応するようになったが、正常血清から得たIgGとは反応しなかった。
【0060】
RA患者の抗CCP高力価血清(図2B)および健常対照者からの抗CCP陰性血清(図2C)を用いて、ELISAにより抗シトルリン化CIの検出を行った。RA患者からの血清はシトルリン化CIとよく反応したが、健常対照者からの血清は反応しなかった。PADI4反応の経時的変化(図2D)のパターンは、抗MCで検出されたシトルリン化の経時的変化とほぼ一致した(図1D)。
【0061】
シトルリン化および非シトルリン化CIの反応性を、RA血清および正常対照血清を用いて、ウエスタンブロット法で解析した(表1)。非シトルリン化CIに対する反応性はRA患者群と正常対照群との両方に認められた。シトルリン化CIに対する反応性はRA患者群にのみ特異的に観察された。
【0062】
【表1】

【0063】
(3) PADI2によるコラーゲンの修飾
シトルリン化について、ウサギPADI2はヒトPADI4と類似していることから、ウサギPADI2がコラーゲンをシトルリン化できるかどうかを検討した。われわれはELISAを用いてコラーゲンがウサギPADI2でシトルリン化されること(図6、CおよびD)およびPADI4によってシトルリン化コラーゲンのタイプIを認識したRA患者の血清がウサギPADI2によってシトルリン化されたCIを検出することを立証したが、健常対照者の血清は経時的観察においてシトルリン化CIを検出しなかった(図6F)。
【0064】
CIIについては、RAモデル・マウスとしてCIA(Collagen Induced Arthritis)マウスが存在するように、RAとの関係が知られている。そこで、CIIがPADIでシトルリン化されるか否かを調べたところ、CIIもウサギPADI2でシトルリン化されることが確認された(図6E)。
【0065】
(4) 高力価の抗シトルリン化コラーゲン抗体のRA血清中特異的存在
RA患者、非RA患者および健常対照者が抗シトルリン化コラーゲンに対する抗体を有するどうかを調べるために、RA患者、非RA患者および健常対照者の血清をELISAを用いてシトルリン化コラーゲンについて解析した。
【0066】
まず、抗コラーゲン抗体のレベルを測定した。RA患者の抗CIIの相対的レベルは健常対照者のそれよりも有意に高く(図3B、p=0.026)、RA患者からの56血清中22(39%)および健常対照者からの9血清中1(11%)が抗CII抗体に対して陽性であった。しかし、非RA患者の抗CIIの相対的レベルは健常対照者より有意に高く(図3B、p=0.00014)、非RA患者からの13血清中の8(62%)が抗CII抗体について陽性であった。これに対し、抗CI抗体のレベルはRA患者、非RA患者および健常対照者間で差がなく(図3A、RA対健常対照者、p=0.52、非RA対健常対照者、p=0.46)、RA患者からの119血清中2(2%)、非RA患者からの26血清中0(0%)および健常対照者からの18血清中1(5.6%)が抗CI抗体に対して陽性であった。
【0067】
次に、RA血清、非RA血清および健常対照者血清の抗シトルリン化コラーゲンの相対的レベルを測定した(図3、CおよびD)。RA患者の抗シトルリン化CIの相対的レベルは健常対照者または非RA患者よりも有意に高かった(図3C、p=0.013、p=0.010)。RA患者からの119血清中20(17%)、非RA患者からの26血清中0(0%)および健常対照者からの18血清中0(0%)が抗シトルリン化CI抗体に対して陽性であった。これに対して、RA患者と健常対照者、または非RA患者との間では有意差がなかった。RA患者からの56血清中37(66%)、非RA患者からの13血清中7(54%)および健常対照者からの9血清中0(0%)が抗シトルリン化CII抗体に対してそれぞれ陽性であった。
【0068】
さらに、抗シトルリン化コラーゲン抗体の相対的レベルと抗CCP抗体のレベルとの間の相関を調べた(図4、BおよびD)。結果として、抗CCP抗体レベルと抗シトルリン化CI抗体との間の相関は抗CCP抗体と抗シトルリン化CII抗体の相関よりも高かった。また抗CCPのレベルを抗コラーゲン抗体と比較したところ、抗CII抗体または抗CI抗体と抗CCP抗体との間の相関は弱いかあるいは認められなかった(図4、AおよびC)。さらに、抗シトルリン化CI抗体は抗シトルリン化CII抗体と弱い相関関係にあることが確認された(図4C)。これは、抗シトルリン化CI抗体の一部がシトルリン化CIIと交差反応するためではないかと推測された。
【0069】
(5) RA滑膜およびヒト正常皮膚組織の免疫組織化学的解析
RA患者の滑膜組織中のCI、PADI4、PADI2およびシトルリン化ペプチドの分布を決定するために、それぞれに対する抗体を用いて免疫組織化学的解析を行った(図5、A-C)。CIは、特に滑膜毛細血管の内皮細胞の表面(データは示されていない)および滑膜組織深部に認められた(図5A)。PADI4は滑膜組織に広く分布していた(図5B)。抗MC抗体に反応するシトルリン化ペプチドは滑膜組織深部で認められた(図5C)。
【0070】
シトルリン化CIに対する精製された自己抗体は、シトルリン化CIIと交差反応するが、非シトルリン化CIおよびCIIとは反応しなかった。この抗シトルリン化CI自己抗体を用いた免疫組織化学的解析の結果、CIは主として真皮に存在し、表皮の基底層に弱く発現していた(図5D)。ヒトの表皮の角質層および基底層でも抗シトルリン化CI抗体との反応が認められた(図5E)。
【0071】
3.考察
本研究により、CIおよびCIIがin vitroでPADI4およびウサギPADI2によってシトルリン化されることが確認された(図1)。
【0072】
前述のとおり、CIIとRAの関係についてはすでに知られているが、これまでCIとRAの関係を裏付ける証拠は示されていなかった。今回、RA患者と非RA患者における抗CII抗体レベルは健常対照者よりも有意に高かったが、抗CI抗体レベルに差異はなかった(図3)。しかし、抗シトルリン化CI抗体の力価は、健常対照者あるいは非RA患者に比べてRA患者で有意に高かった。このことから、抗シトルリン化CIがRAに特異的であり、CIがPADIによるシトルリン化を経てRA病態に関与しうる可能性が示された。
【0073】
抗CCPと抗シトルリン化CIまたは抗シトルリン化CIIとの間の相関を調べた結果、抗シトルリン化CIと抗CCPとの強い相関が確認された。このことから、抗シトルリン化コラーゲンは抗CCP抗体の一部である可能性が示唆された。
【0074】
免疫組織化学的解析の結果、滑膜内、主として滑膜毛細血管および滑膜深部におけるCIとPADI4の共存が確認された。PADI2も滑液および滑膜組織(データは示されていない)に存在が確認された。このことから、PADI2およびPADI4はRA患者の各組織でシトルリン化に関係している可能性が示唆された。
【0075】
RA患者における、PADIによるタンパクのシトルリン化とその機構は明らかでない。しかし、PADIは細胞外領域にも存在し、そこで活性化する可能性もある。すなわち、抗シトルリン化コラーゲン抗体に対する自己抗原の産生は滑膜以外の他の組織で起こる可能性も考えられる。
【0076】
本研究は、シトルリン化CIがRAの自己抗原として、RAの進展に重要な役割を担っていることを強く示唆するものである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、RAの病態解明はもとより、RAの診断、予防、治療あるいは創薬の新たな手段として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、組換えヒトPADI4によって修飾されたシトルリン化CIの同定および確認結果を示す。(A)λ-ZAP cDNA発現ライブラリーを用いた抗MC(1:1000)による免疫スクリーニングの結果、(B)ウエスタンブロット法によるPADI4処理後のシトルリン化CIの検出結果、(C)抗MCを用いたELISAによるシルトリン化CIの検出結果(四角はPADI4との反応を示し、三角はPADI4および33mM EDTAとの反応を示す)、(D)PADI4によるヒトCIのシトルリン化の経時的変化
【図2】図2は、シトルリン化CIが検出されたRA患者の血清の解析結果を示す。(A)抗CCP陽性IgG(3個体)および正常対照IgG(3個体)を有する血清のシトルリン化および非シトルリン化CIのドットブロット解析結果、(B)および(C)ELISAによるシトルリン化コラーゲンの検出結果、(D)Bと同じ患者の血清を用いたシトルリン化CIの経時的変化
【図3】図3は、RA患者の血清および健常対照者の血清中の抗コラーゲン抗体および抗シトルリン化コラーゲン抗体の解析結果(血清抗体価の相対値)を示す。(A)抗CI抗体(B)シトルリン化CI抗体(C)抗CII抗体(D)シトルリン化CII抗体の力価(AおよびC:119人のRA患者血清、26人の非RA患者および18人の正常個体の血清、BおよびD:56人のRA患者の血清、13人の非RA患者の血清および9人の正常個体の血清)
【図4】図4は、RA血清中の抗CCPの力価の比較および抗シトルリン化コラーゲンの相対レベルの解析結果を示す。(A)は、抗CI(三角)または抗シトルリン化CI(丸)のレベルをRA血清中の抗CCPと比較した結果を示す。(B)は、抗CII(三角)および抗シトルリン化CII(丸)のレベルをRA血清中の抗CCPレベルと比較した結果を示す。y:回帰直線、R2:相関係数
【図5】図5は、RA患者および正常な皮膚の滑膜組織内のコラーゲンの分布を示す画像(×10)である。RA滑膜組織(A〜C)および正常な成人の皮膚(DおよびE)を抗ヒトCI(AおよびD)、抗PADI4(B)、抗MC(C)、およびRA血清からの抗シトルリン化CI(E)で染色した。
【図6】図6は、ELISAを用いたウサギPADI2によるタンパクのシトルリン化を示すグラフである。(AおよびB)シトルリン化フィブリノーゲン、(CおよびD)シトルリン化コラーゲンのタイプIおよび(E)シトルリン化CII(四角はPADI2処理、三角は陰性対照(緩衝液))(F)PADI2で修飾されたシトルリン化CI(四角はRA患者の血清、三角は健常対照者の血清)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の抗シトルリン化コラーゲン・タイプI抗体を検出することを特徴とする、in vitroにおける関節リウマチの病態検査方法。
【請求項2】
シトルリン化コラーゲン・タイプIを用いた免疫学的方法によって抗シトルリン化コラーゲン・タイプI抗体を検出することを特徴とする、請求項1に記載の病態検査方法。
【請求項3】
免疫学的方法が、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、およびRIA法から選ばれるいずれか1つの方法である、請求項2に記載の病態検査方法。
【請求項4】
検体が、単離された血液または滑液である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の病態検査方法。
【請求項5】
関節リウマチが、ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ2またはペプチジルアルギニン・デイミナーゼ4の機能異常を伴うものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の病態検査方法。
【請求項6】
関節リウマチが、ペプチジルアルギニン・デイミナーゼ4の機能異常を伴うものである、請求項5に記載の病態検査方法。
【請求項7】
シトルリン化コラーゲン・タイプIを含む、関節リウマチの病態検査用キット。
【請求項8】
さらに、抗シトルリン抗体または抗修飾シトルリン抗体、もしくは、抗シトルリン抗体または抗修飾シトルリン抗体とその二次抗体を含む、請求項7記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−133181(P2006−133181A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325301(P2004−325301)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】