説明

関節炎における疾患および/または症状を治療するための薬学的組成物

【課題】関節炎における疼痛、炎症の治療方法の提供。
【解決手段】カンナビジオール(CBD)またはカンナビジバリン(CBDV)およびデルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(THC)またはテトラヒドロカンナビノバリン(THCV)から選択されるカンナビノイドの組み合わせ。前記カンナビノイドは、CBDまたはCBDV対THCまたはTHCVが19:1であるかそれ未満の所定の重量比で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節炎における疼痛、炎症の治療および/または疾患修飾のためのカンナビ
ノイドの組み合わせの使用に関する。好ましくは、前記カンナビノイドは、カンナビジオ
ール(CBD)またはカンナビジバリン(CBDV)およびデルタ−9−テトラヒドロカ
ンナビノール(THC)またはテトラヒドロカンナビノバリン(THCV)から選択され
る。さらに好ましくは、前記カンナビノイドは、CBDまたはCBDV 対 THCまた
はTHCVが、19:1であるかそれ未満の所定の重量比で存在する。
【背景技術】
【0002】
関節炎は、関節が痛む状態である。種々の疾患タイプがあるが、すべてが関節の疼痛お
よび炎症を生じさせ、多くの場合、本質的に変性性である。関節炎の最も一般的なタイプ
の一部は、変形性関節症および関節リウマチである。
【0003】
変形性関節症は、50歳より高齢の人の10人に約8人の関節を侵す疾患である。変形
性関節症の原因は、時が経つにつれて薄くなり、平坦でなくなってくる、また一部のケー
スでは完全に磨耗することもある関節軟骨にある。関節の磨耗に加えて、関節軟骨が薄く
なってくることがあり、その結果、産生される関節液の量が増す。そしてまた、これに起
因して関節が腫脹する。罹患領域において骨棘が生長することもあり、これがその罹患組
織における炎症の原因となる。変形性関節症は、身体のすべての関節に影響するが、最も
一般的には指、膝、股関節および脊椎で見られる。
【0004】
関節リウマチは、体全体を侵す可能性のある、および関節炎の最も一般的な形態である
全身性疾患である。これは、関節の内面を覆っている膜の炎症を特徴とし、それに起因し
て、その領域に疼痛、硬直、暖かみ、赤みおよび腫脹が生じる。指および手の小関節が最
も重度に侵されるが、その状態が広がって、手首、肘、肩および他の関節に影響する。炎
症を起こした関節内層は、骨および軟骨を消化することができる酵素が炎症性細胞によっ
て放出されると、骨および軟骨に侵入し、損傷させる。炎症を起こした関節は、その形お
よび配列を喪失し得、その結果、疼痛および運動喪失が生じる。これは典型的には慢性で
あり、時々再発することがある。
【0005】
罹患関節において生じる疼痛および炎症に加えて、関節リウマチは、食欲不振、体重減
少、嗜眠、筋肉痛、腱の痛み、発熱、皮下の塊(リウマチ性結節)および重度の目の炎症
を引き起こすことがある。貧血、心膜炎、血管炎およびレイノー現象をはじめとする多数
の合併症がある。
【0006】
関節リウマチの原因は未だ不明である。しかし、関節リウマチが自己免疫疾患であるこ
とは公知である。身体の自然免疫系が、正常に機能せず、その結果、その免疫系が健康な
関節組織を攻撃し、炎症およびその後の関節損傷を生じさせる。この疾患は、抗原−抗体
免疫複合体の有害な集合体を形成させるように免疫系を刺激する疾患についての遺伝的傾
向を有する一部の人々では、感染によって誘発されることがある。
【0007】
この疾患の初期に、人々は、一般的な疲労、痛み、硬直およびうずきに気づくことがあ
る。身体の両側にある同じ関節で疼痛および腫脹が発生することがあり、これらは、通常
、手または足で始まるであろう。手首および多数の手関節が関節リウマチに侵されるが、
通常、(親指を除く)指の爪に最も近い関節は侵されない。肘、肩、首、膝、股関節およ
び足首が関節リウマチに侵される場合もある。長期にわたって持続する傾向があり、炎症
を起こした関節は、時が経つにつれて、損傷してくることがある。
【0008】
関節リウマチの治療は、安静、炎症を起こした関節の固定、理学療法ならびに抗炎症薬
および鎮痛薬の使用といった手段による炎症の制御および疼痛寛解に限られる。これらの
治療法は、疼痛寛解、炎症の軽減、関節損傷の停止または遅速、および患者の快適さの向
上に焦点を合わせている。
【0009】
関節リウマチに罹患している患者に提供される現行の薬物は、次の2つのグループに分
けることができる:
1.対症薬物、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、アスピリン、鎮痛薬
およびコルチコステロイド。これらの薬は、関節疼痛、硬直および腫脹の軽減に役立つ。
対症薬物は、疾患修飾性抗リウマチ薬と併用することができる。
2.疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)。これには、低用量のメトトレキセート、
レフルノミド、D−ペニシラミン、スルファサラジン、金療法薬、ミノサイクリン、アザ
チオプリン、ヒドロキシクロロキン(および他の抗マラリア薬)、シクロスポリンおよび
生物薬が挙げられる。
【0010】
薬物療法に加えて、治療は、最も多くの場合、運動、安静、関節保護、ならびに理学療
法および作業療法の何らかの組み合わせを含む。外科手術は、重度に損傷した、激しく痛
む関節のための1つの選択肢であり得る。安静と運動のバランスが、エネルギーの維持な
らびに関節の一定範囲の動作および使用の維持に役立つ。
【0011】
医薬品としての大麻の使用は長く知られており、19世紀中、大麻の製剤は、ヒステリ
ー、せん妄、癲癇、神経性不眠症、偏頭痛、疼痛および月経困難の治療に有用である催眠
性鎮痛薬として推奨されていた。
【0012】
最近まで、患者への大麻の投与は、エタノール中での煎じ出しによる大麻の調製(その
後、それを飲み下すことができる)によって、または患者が、乾燥植物材料を喫煙するこ
とにより大麻の蒸気を吸入することによってしか達成することができなかった。最近の方
法は、患者にカンナビノイドを送達する新たな方法を見出そうと努めるものであり、そう
した方法には、胃を迂回し、それに随伴して肝臓の初回通過効果を回避する方法が挙げら
れ、これは、有効摂取用量の90%までを除去することができ、ならびに患者が有害なタ
ールおよび随伴発癌性物質を肺に吸入する必要を回避することができる。
【0013】
そうした投薬形態としては、カンナビノイドの舌下または口腔粘膜への投与、蒸気療法
または噴霧療法によるカンナビノイド蒸気の吸入、浣腸または固体剤形、例えばゲル、カ
プセル、錠剤、香錠およびロゼンジが挙げられる。
【0014】
1988年、様々なカンナビノイドおよびカンナビノイド前駆体の鎮痛活性および抗炎
症活性を判定するために、ある研究が行われた。CBDの経口投与は、マウスにおけるP
BQ誘発苦悶症状(writhing)の抑制に最も有効であることが判明した。THCおよびC
BNは、鎮痛および炎症の減少に対する有効性が最も低いことが判明した(Formukong et
al., 1988)。
【0015】
ホールドクロフト(Holdcroft)らは、カンナビノイドが、鎮痛性および可能性のある
抗炎症性を有し得ることを証明した。地中海熱に罹患している患者に50mgのTHCを
投与した結果、患者が求める鎮痛の量が、極めて有意に低減した(Holdcroft et al., 19
97a)。
【0016】
同著者による後続出版物では、大麻油の経口投与が考察されている。5.75% TH
C、4.73% CBDおよび2.42% CBNを含有するカプセルを、家族性地中海
熱に罹患している患者に投与した。3週間の動的治療中に、患者が要求する逃避薬(モル
ヒネ)の量が減少した(Holdcroft et al., 1997b)。測定された炎症性マーカーに変化
はなかった。
【0017】
純粋なCBDを使用して、関節リウマチまたはクローン病などの炎症性疾患を治療する
ことができることは、以前にフェルドマン(Feldmann)らによって証明されている(国際
特許出願公開パンフレット第99/52524号)。炎症性疾患は、インターロイキン、
TNF−αおよび窒素酸化物などの幾つかの成分の間の複雑な相互作用を伴う。フェルド
マンらにより提示されたデータは、CBDによるTNF−αおよび窒素酸化物生産の抑制
を表している。このカンナビノイドは、マウスのコラーゲン誘発関節炎モデルにおいて用
量依存的に関節炎を抑制することも証明された。
【0018】
大麻の構成成分の免疫修飾作用に関する文献は多数あり、クライン(Klein)はこれら
の再調査に着手した(Klein, 1998)。
【0019】
種々の疾患および状態の治療における種々の比率のカンナビノイド、例えばTHCもし
くはCBDまたはそれらのプロピル変異体、テトラヒドロカンナビノバリン(THCV)
およびカンナビジバリン(CBDV)の使用は、以前に本出願人が本出願人の英国特許出
願第GB2377633号に記載している。
【0020】
特定の比率のTHCとCBDまたはTHCVとCBDVが、特定の疾患または病状の治
療または管理に有用であることを報告した。以下の表は、これらの分野の一部を詳述する
ものである。
製品群 THC:CBD比 ターゲット治療分野
高THC >95:5 癌性疼痛;偏頭痛;食欲刺激
等比率 50:50 多発性硬化症;脊髄損傷;末梢神経疾患;神経原性疼

広いCBD比 <25:75 関節リウマチ;炎症性腸疾患
高CBD <5:95 精神病性障害(統合失調症);癲癇;運動障害;卒中
;頭部外傷;関節リウマチおよび他の炎症性状態における疾患修飾;食欲抑制
【0021】
特定の決定された比率のカンナビノイドを含有する調合物は、純粋な合成カンナビノイ
ドから、または製薬用担体および賦形剤と組み合わせて大麻植物由来の抽出物から調合す
ることができる。
【0022】
関節炎を治療するために現在利用することができる薬物療法に伴う主要な不利益は、患
者が、疼痛および随伴する炎症などの疾患の症状を治療するために、多くの場合、薬物の
組み合わせを摂取しなければならず、また同時に、その患者が、その疾患を修飾するため
に薬物を摂取しなければならないことである。
【0023】
現在、疼痛および炎症の症状を治療し、同時に疾患修飾性抗リウマチ薬として作用する
医薬品は、知られていない。
【0024】
驚くべきことに、ほぼ同量のカンナビノイド デルタ−9−テトラヒドロカンナビノー
ル(THC)およびカンナビジオール(CBD)を含有する大麻系薬物抽出物は、関節リ
ウマチ疾患の修飾と、その疾患によって生じる疼痛および炎症の症状の治療の両方に使用
できることが判明した。
【0025】
本発明に記載する薬物を使用することの重要な利点は、同じ薬物によって疾患とその疾
患の症状の両方を治療することができることである。これは、言い換えると、患者にとっ
てのより大きな自由度、例えば、厳守しなければならない薬剤投与計画が然程厳格でない
であろうこと、をはじめとする非常に多数の利点を有し、併用される薬物療法間に有害な
相互作用が存在する可能性がより低いであろうから、患者が然程副作用を経験しない可能
性も高い。
【発明の開示】
【0026】
本発明の第一の態様によると、関節炎の治療に使用するための薬学的調合物の製造にお
けるカンナビノイドxとカンナビノイドyの組み合わせを提供し、この場合、xは、カン
ナビジオール(CBD)およびカンナビジバリン(CBDV)から成る群より選択され、
yは、デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(THC)およびテトラヒドロカンナビ
ノバリン(THCV)から成る群より選択され、ならびにx:yの重量比は、19:1で
あるかそれ未満である。
【0027】
好ましくは、前記関節炎の治療は、変形性関節炎または関節リウマチの治療である。
【0028】
本発明の1つの実施形態は、関節炎における疼痛、炎症または睡眠不足の症状の1つま
たはそれ以上の治療に使用するためのカンナビノイドの組み合わせを提供する。好ましく
は、関節炎における疾患修飾に使用するためのカンナビノイドの組み合わせを提供する。
さらに好ましくは、関節炎における1つまたはそれ以上の症状の治療および疾患修飾に使
用するためのカンナビノイドの組み合わせを提供する。
【0029】
1つの実施形態において、カンナビノイドx:yの比は、19:1であるかそれ未満で
あり、さらに好ましくはx:yの比は、2の整数値で、17:1であるかそれ未満から3
:1であるかそれ未満である。さらに好ましくは、x:yの比は、0.25の整数値で、
2.5:1であるかそれ未満から1.25:1であるかそれ未満である。最も好ましくは
、x:yの比は、実質的に1:1、特に0.93:1である。
【0030】
カンナビノイドの好ましい組み合わせとしては、CBD:THC、CBDV:THCV
、CBDV:THCおよびCBD:THCVが挙げられる。あるいは、CBD、CBDV
、THCおよびTHCVを含む組み合わせを用いてもよい。
【0031】
本発明のさらなる実施形態は、ゲル、錠剤、液体、カプセルの形態での、または蒸気療
法用の形態での送達のために包装されている薬学的調合物として使用することができるカ
ンナビノイドの組み合わせを提供する。さらに好ましくは、薬学的調合物として使用する
ことができる前記カンナビノイドの組み合わせは、舌下または口腔内送達用に、好ましく
は舌下または口腔内スプレーとして包装される。この薬学的調合物は、1つまたはそれ以
上の担体溶媒をさらに含む点で有利である。好ましくは、前記担体溶媒は、エタノールお
よび/またはプロピレングリコールである。さらに好ましくは、エタノールのプロピレン
グリコールに対する比率は、4:1と1:4の間である。さらに好ましくは、この比率は
、1:1である。
【0032】
好適には、用量は、患者が用量を調節(titrate)することができるように調合される
。用量範囲は、好ましくは各カンナビノイドについて5mgと25mgの間の範囲内、さ
らに好ましくは各カンナビノイドについて10から20mgの範囲内、好ましくは各カン
ナビノイドについて12から14mgの範囲内、さらに好ましくは、各カンナビノイドに
ついて12.5から13.5mgの範囲内である。
【0033】
THCとCBDなどのカンナビノイドの組み合わせの投与は、両方同時に患者に投与し
てもよく、この場合、それらのカンナビノイドは、同じ調合物の中に含有されているであ
ろう。カンナビノイドを別の時点で投与してもよく、例えば、THCの一部の副作用(C
BDにより改善されることが知られている)を改善するために、THCを含有する調合物
の前に、決められた時点で、CBDを含有する調合物を患者に投与してもよく、逆もまた
同じである。必要な場合には、2つのカンナビノイドを逐次的に患者に投与してもよい。
【0034】
好ましくは、本発明は、1つまたはそれ以上の大麻系薬物抽出物(CBME)として存
在するカンナビノイドの組み合わせを提供する。1つの実施形態において、前記CBME
は、超臨界または臨界未満CO2を用いた抽出により製造される。追加の実施形態におい
て、前記CBMEは、加熱ガスを用いた蒸発による植物材料からの抽出によって製造され
る。好ましくは、前記CBMEは、その植物材料中のすべての天然カンナビノイドを含有
する。あるいは、カンナビノイドの合成または高精製単離体を使用することができる。
【0035】
本発明の第二の態様によると、関節炎に罹患している被験者を治療する方法を提供し、
この方法は、カンナビノイドxとカンナビノイドyの組み合わせを前記被験者に投与する
ことを含み、この場合、xは、カンナビジオール(CBD)およびカンナビジバリン(C
BDV)から成る群より選択され、yは、デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(T
HC)およびテトラヒドロカンナビノバリン(THCV)から成る群より選択され、なら
びにx:yの重量比は、19:1であるかそれ未満である。
【0036】
単なる例として、添付の図面を参照しながら、本発明の一定の態様をさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
大麻系薬物抽出物(CBME)は、実施例1に略述するように調製し、ほぼ同量のカン
ナビノイドTHCおよびCBDを含有するものであった。これを、慢性関節リウマチに罹
患しており二次的な症状として疼痛を有する患者に投与した。カンナビノイドのこの組み
合わせの投与により、関節リウマチに起因する疼痛および炎症を軽減することができる可
能性があったが、意外なことに、ほぼ同量のTHCおよびCBDを含有する大麻系薬物抽
出物も、関節リウマチに罹患している患者において疾患修飾効果を生じた。
【0038】
添付の図面と共に以下の実施例を参照することにより、本発明の特徴をさらに図示する

図1は、CBD含有大麻系薬物抽出物(CBME)のHPLCクロマトグラフプロフィ
ールを示すものである。
【0039】
図2は、THC含有大麻系薬物抽出物(CBME)のHPLCクロマトグラフプロフィ
ールを示すものである。
【0040】
図3は、実質的に同量のCBDとTHCを含有する大麻系薬物抽出物(CBME)のH
PLCクロマトグラフプロフィールを示すものである。
【実施例1】
【0041】
大麻系薬物抽出物(CBME)の調製
国際公開パンフレット第02/064109号(実施例15)に開示されている方法を
参照して、薬用大麻を製造および調製した。得られた植物材料を、下のフローチャートに
記載するように処理した。高THCまたは高CBD大麻系薬物抽出物の製造プロセスを記
載する。
薬用大麻(高THCまたは高CBD)

大体2〜3mmに切り刻む

酸性形態のカンナビノイドを脱カルボキシル化して中性カンナビノイドを生成するた
めに充分な時間、100〜150℃で加熱する

6から8時間にわたって特定体積の液体二酸化炭素で抽出する

減圧によりCO2を除去して、粗製抽出物を回収する

脱ろうし、その後、冷却(−20℃/48時間)して、望ましくないろうを沈殿させ


低温濾過によって望ましくないろう質物質を除去する

その濾液から、減圧下での薄膜蒸発により、エタノールを除去する
【0042】
得られた抽出物は、大麻系薬物抽出物と呼ばれ、また米国食品医薬品局の植物製剤に関
する業界向けガイダンス(US Food and Drug Administration Guidance for Industry Bo
tanical Drug Products)に従って植物原薬(Botanical Drug Substance)とも分類され
る。
【0043】
CBME中のカンナビノイドの量は、国際公開パンフレット第02/064109号(
実施例16)に開示されている方法を参照して、HPLCによる測定によって正確に評価
することができる。
【0044】
CO2で抽出した高CBD薬用大麻植物を使用して製造したCBD含有CBMEのHP
LCクロマトグラムの一例を図1に示す。CO2で抽出した高THC薬用大麻植物を使用
して製造したTHC含有CBMEのHPLCクロマトグラムの一例を図2に示す。適切な
比率のTHCとCBDを含有するCBMEのHPLCクロマトグラムの一例を図3に示す

【0045】
THCおよびCBDを参照して本発明を例示してきたが、THCとTHCVの間および
CBDとCBDVの間に薬理学的類似性があり、例えば、カンナビノイド THCVおよ
びCBDVを、THCおよびCBDの代わりにまたはTHCおよびCBDに加えて使用す
ると、類似した結果が生じ得ることは、当業者には明らかである。
【実施例2】
【0046】
ヒト関節リウマチ患者における臨床試験による大麻系薬物抽出物の有効性の評価
関節リウマチにおける疼痛に対する大麻系薬物抽出物の有効性を評定するために、7週
間、多施設において、二重盲検による、無作為化した、並行群試験を行った。この大麻系
薬物抽出物は、エタノール:プロピレングリコール(50:50)賦形剤中、27mg/
mLの濃度でデルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(THC)および25mg/mL
の濃度でカンナビジオール(CBD)を含有するものであった。THC(2.7mg)お
よびCBD(2.5mg)を含有する100μLの噴霧剤を起動ごとに送達するポンプ動
作スプレーに前記大麻系薬物抽出物を入れた。
【0047】
この試験における被験者を大麻系薬物抽出物またはプラセボのいずれかに無作為に等し
く割り付けた。プラセボは、活性調合物の外観、臭いおよび味に匹敵するものであったが
、エタノール:プロピレングリコール(50:50)賦形剤中に活性成分を含有しないも
のであった。再び、100μLの噴霧剤を起動ごとに送達するポンプ動作スプレーにこの
プラセボを入れた。
【0048】
患者を第1訪問の時にスクリーニングして適格性を判定し、この時点で基線評価を行っ
た。患者は、2週間後、第2訪問のために再来し、この時点で彼らを前記2つの群のうち
の一方にランダムに割り付けた。試験薬物は夕刻の用量としてのみ投与し、最適な効率を
達成するまで用量を調節するように患者に求めた。
【0049】
薬物の用量を2週間調節した後、患者は第3訪問のために再来し、この時点で、患者は
、この試験の残り3週間に摂取すべき用量を確認した。
【0050】
各患者が摂取した薬物の用量は、様々であったが、THCおよびCBD、各々、5〜2
5mgの範囲内であり、大部分の患者が、THCおよびCBDの各々を10mgと20m
gの間で摂取した。各患者が調節した平均用量は、13.5mgのTHCおよび12.5
mgのCBDであった。
【0051】
試験薬物を用いて5週間後、患者は、第4訪問をするために再来した。すべての基線評
価をこの段階で繰り返した。
【0052】
有効性評価は、この試験の一部と考えた。各患者は、安静時および運動時の朝の疼痛、
朝の硬直および睡眠の質について、日誌カード式自己評価を毎日記録した。疼痛の強度の
変化、現時点での疼痛の強度、現時点での疼痛および変化の全般的印象を比較するために
、第1訪問時および第4訪問時に短い形式のMcGill質問表のすべての項目について
記入してもらった。
【0053】
第1訪問時および第4訪問時の疾患活動性スコアを、28関節数(28 joint count)、
赤血球沈降速度および全般的疾患活動性スコアから算定した。
【0054】
あらゆる変化を検討するため、第1訪問時および第4訪問時に救援鎮痛(rescue analg
esia)の使用、有害事象、血液化学および生命徴候の評価をすべて記録してもらった。
【0055】
結果:
この試験から収集したデータの一部を以下に記載する。
【0056】
27mg/mLの濃度のTHCおよび25mg/mLの濃度のCBDを含有する大麻系
薬物抽出物を投与したときの、関節リウマチに罹患している患者における安静時の朝の疼
痛の比較
大麻系薬物抽出物の有効性は、上で説明したように評価し、安静時の朝の疼痛度は、毎
日、自己評価によって記録してもらった。データを照合し、統計学的解析を行った。患者
は、0(痛みなし)から10(極めて激しい痛み)の尺度で安静時の朝の疼痛を評価した
。表1および2は、その結果を示すものである。
【表1】




【0057】
このデータの統計的解析を表2に示す。
【表2】

【0058】
LS平均値は、基線調整スコアからの平均変化であり、負の差は、有効であることを示
す。
表1および2は、関節リウマチにおける疼痛に苦しむ患者へのTHC:CBD(27m
g/mL:25mg/mL)の投与が、プラセボと比較したとき、安静時の朝の疼痛を統
計学的に有意に軽減させることを実証している。
【0059】
27mg/mLの濃度のTHCおよび25mg/mLの濃度のCBDを含有する大麻系
薬物抽出物を投与したときの、関節リウマチに罹患している患者における睡眠の質の比較
大麻系薬物抽出物の有効性は、上で説明したように評価し、患者が経験した睡眠の質は
、毎日、自己評価によって記録してもらった。データを照合し、統計学的解析を行った。
患者は、0(非常に良好)から10(非常に不良)の尺度で睡眠の質を評価した。表3お
よび4は、その結果を示すものである。
【表3】



【0060】
このデータの統計的解析を表4に示す。
【表4】

【0061】
LS平均値は、基線調整スコアからの平均変化であり、負の差は、有効であることを示
す。
表3および4は、関節リウマチにおける疼痛に苦しむ患者へのTHC:CBD(27m
g/mL:25mg/mL)の投与が、プラセボと比較したとき、睡眠の質の改善を生じ
させることを実証している。
【0062】
27mg/mLの濃度のTHCおよび25mg/mLの濃度のCBDを含有する大麻系
薬物抽出物を投与したときの、関節リウマチに罹患している患者における疾患活動性スコ
アの比較
大麻系薬物抽出物の有効性は、上で説明したように評価し、各患者についての疾患活動
性スコアは、第1訪問時および第4訪問時に判定した。データを照合し、統計学的解析を
行った。表5および6は、その結果を示すものである。
【表5】

【0063】
このデータの統計的解析を表6に示す。
【表6】

【0064】
LS平均値は、基線調整スコアからの平均変化であり、負の差は、有効であることを示
す。
表5および6は、関節リウマチにおける疼痛に苦しむ患者へのTHC:CBD(27m
g/mL:25mg/mL)の投与が、プラセボと比較したとき、改善された疾患活動性
スコアをもたらすことを実証している。
【0065】
THCとCBDの混合物(この場合、前記カンナビノイドは、ほぼ同量で存在する)の
使用は、関節リウマチに随伴する疼痛を有する患者に提供したとき、その結果として、安
静時の朝の疼痛を軽減した。同量のTHCとCBDの混合物を提供された患者が経験した
睡眠の質も改善を示した。本薬物を提供された患者は、質問表からの記録のとおり、現時
点での疼痛の軽減も経験した。すべての中で最も有意なのは、患者の疾患活動性スコアに
関する本薬物の効果であった。
【0066】
この疾患活動性スコアは、患者が経験した関節リウマチの程度を測るために用いられる
方法である。これは、28の異なる関節がどのように腫脹しているか、どのように圧痛が
あるかの判定を含む。この疾患活動性スコアの一部として、血液検査を用いて、赤血球沈
降速度も測定した。この速度は、炎症に対する急性期応答を判定するための検査室手法で
ある。患者がどのように感じているかに基づく全般的疾患活動性スコアは、算定される全
ての値にも寄与する。3.7より大きい複合スコアは、高いとみなされる。
【0067】
THCとCBDの約1:1の組み合わせの使用により、関節リウマチに罹患している患
者における疾患活動性スコアを低下させることができるという本発明の知見の有意性は、
顕著である。
【0068】
参考文献:
Formukong E. A., Evans A. T. and Evans F. J. (1988) Analgesic and Antiinflamma
tory activity of constituents of Cannabis sativa L. Inflammation 12 (4), 361-371
Holdcroft A. et al. (1997a) Pain relief with oral cannabinoids in familial Med
iterranean fever. Anaesthesia 52 (5), 483-6
Holdcroft A. et al . (1997b) Clinical trial experience with cannabinoids. Phar
m. Sci. 3, 546-550
Klein T. W., Newton C. and Friedman H. (1998) Immunol. Today 19, 373-380
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】CBD含有大麻系薬物抽出物の特性を表すHPLCクロマトグラフプロフィールを示す図である。
【図2】THC含有大麻系薬物抽出物の特性を表すHPLCクロマトグラフプロフィールを示す図である。
【図3】実質的に同量のCBDとTHCを含む大麻系薬物抽出物の特性を表すHPLCクロマトグラフプロフィールを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節炎の治療に使用するための薬学的調合物の製造におけるカンナビノイドxとカンナ
ビノイドyの組み合わせ[この場合、
xは、カンナビジオール(CBD)およびカンナビジバリン(CBDV)から成る群よ
り選択され;
yは、デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(THC)およびテトラヒドロカンナ
ビノバリン(THCV)から成る群より選択され;ならびに
x:yの重量比は、19:1であるかそれ未満である]
の使用。
【請求項2】
変形性関節症の治療に使用するための薬学的調合物の製造における、請求項1に記載の
カンナビノイドの使用。
【請求項3】
関節リウマチの治療に使用するための薬学的調合物の製造における、請求項1に記載の
カンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項4】
関節炎における疼痛の治療に使用するための薬学的調合物の製造における、前記請求項
のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項5】
関節炎における炎症の治療に使用するための薬学的調合物の製造における、前記請求項
のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項6】
関節炎における睡眠の質の改善に使用するための薬学的調合物の製造における、前記請
求項のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項7】
関節炎の疾患修飾に使用するための薬学的調合物の製造における、前記請求項のいずれ
かに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項8】
関節炎における1つまたはそれ以上の症状の治療におよび疾患修飾に使用するための薬
学的調合物の製造における、前記請求項のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせ
の使用。
【請求項9】
前記1つまたはそれ以上の症状が、疼痛、炎症または睡眠不足である、請求項8に記載
のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項10】
前記カンナビノイドx:yの比が、5:1であるかそれ未満である、前記請求項のいず
れかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項11】
前記カンナビノイドx:yの比が、3:1であるかそれ未満である、前記請求項のいず
れかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項12】
前記カンナビノイドx:yの比が、2.5:1であるかそれ未満である、前記請求項の
いずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項13】
前記カンナビノイドx:yの比が、2:1であるかそれ未満である、前記請求項のいず
れかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項14】
前記カンナビノイドx:yの比が、1.5:1であるかそれ未満である、前記請求項の
いずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項15】
前記カンナビノイドx:yの比が、実質的に1:1である、前記請求項のいずれかに記
載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項16】
前記カンナビノイドx:yの比が、0.93:1である、前記請求項のいずれかに記載
のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項17】
前記カンナビノイドxが、CBDであり、前記カンナビノイドyが、THCである、前
記請求項のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項18】
前記カンナビノイドxが、CBDVであり、前記カンナビノイドyが、THCVである
、前記請求項のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項19】
前記カンナビノイドxが、CBDVであり、前記カンナビノイドyが、THCである、
前記請求項のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項20】
前記カンナビノイドxが、CBDであり、前記カンナビノイドyが、THCVである、
前記請求項のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項21】
前記薬学的調合物が、舌下送達または口腔内送達用に包装される、前記請求項のいずれ
かに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項22】
前記薬学的調合物が、ゲルまたはゲルスプレー、錠剤、液体、カプセルの形態であるか
、蒸気療法用の形態である、前記請求項のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせ
の使用。
【請求項23】
前記調合物が、1つまたはそれ以上の担体溶媒をさらに含む、前記請求項のいずれかに
記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項24】
前記担体溶媒(単数/複数)が、エタノールおよび/またはプロピレングリコールであ
る、請求項23に記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項25】
前記エタノールとプロピレングリコールの比が、4:1と1:4の間である、請求項2
4に記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項26】
前記エタノールとプロピレングリコールの比が、1:1である、請求項24または26
に記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項27】
前記調合物が、用量調節可能剤形(titratable dosage form)である、前記請求項のい
ずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項28】
患者によって摂取される用量が、各カンナビノイドについて1日当たり5〜25mgの
範囲内である、前記請求項のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項29】
前記カンナビノイドxが、前記カンナビノイドyと別に、同時にまたは逐次的に投与さ
れる、前記請求項のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項30】
前記カンナビノイドが、大麻系薬物抽出物(CBME)として存在する、前記請求項の
いずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項31】
前記カンナビノイドが、1つまたはそれ以上のCBMEから誘導される、前記請求項の
いずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項32】
前記調合物が、
a)その抽出物中の全カンナビノイド含有量の90%より多くTHCを含む、大麻系薬
物抽出物;および
b)その抽出物中の全カンナビノイド含有量の90%より多くCBDを含む、大麻系薬
物抽出物
の組み合わせを含む、請求項30に記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項33】
前記CBME(単数/複数)が、超臨界または臨界未満CO2を用いた抽出により製造
される、請求項30から32のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項34】
前記CBME(単数/複数)が、植物材料を、その植物材料中の1つまたはそれ以上の
カンナビノイドを蒸発させるために充分な100℃より高い温度の加熱ガスと接触させて
、蒸気にすること、およびその蒸気を凝縮して抽出物にすることにより製造される、請求
項30から32のいずれかに記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項35】
前記CBME(単数/複数)が、前記植物(単数/複数)中のすべての天然カンナビノ
イドを含む、請求項30から32に記載のカンナビノイドの組み合わせの使用。
【請求項36】
前記カンナビノイドが、実質的に純粋である、請求項1に記載のカンナビノイドの組み
合わせの使用。
【請求項37】
前記カンナビノイドが、合成カンナビノイドである、請求項1に記載のカンナビノイド
の組み合わせの使用。
【請求項38】
CBD含有CBMEが、下に図示するようなクロマトグラフプロフィール:
【化1】

(この場合、CBDの保持時間は、5.4分と6.4分の間である)
により特性付けられる、請求項30から32に記載のカンナビノイドの組み合わせの使用

【請求項39】
THC含有CBMEが、下に図示するようなクロマトグラフプロフィール:
【化2】

(この場合、THCの保持時間は、9.6分と10.6分の間である)
により特性付けられる、請求項30から32に記載のカンナビノイドの組み合わせの使用

【請求項40】
THCおよびCBDを含有するCBMEが、下に図示するようなクロマトグラフプロフ
ィール:
【化3】

により特性付けられる、請求項30から32に記載のカンナビノイドの組み合わせの使用

【請求項41】
カンナビノイドxとカンナビノイドyの組み合わせ[この場合、
xは、カンナビジオール(CBD)およびカンナビジバリン(CBDV)から成る群よ
り選択され、
yは、デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(THC)およびテトラヒドロカンナ
ビノバリン(THCV)から成る群より選択され、ならびに
x:yの重量比は、19:1であるかそれ未満である]
の治療有効量をその必要がある被験者に投与することを含む、関節炎に罹患している被験
者を治療する方法。
【請求項42】
前記カンナビノイドxとカンナビノイドyの組み合わせが、請求項1から40のいずれ
か一項に記載の薬学的調合物中に存在する、請求項41に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−51925(P2012−51925A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230897(P2011−230897)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【分割の表示】特願2007−526537(P2007−526537)の分割
【原出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(508368987)ジーダブリュー・ファーマ・リミテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】GW PHARMA LIMITED
【Fターム(参考)】