関節炎を治療または予防するための薬学的組成物
【課題】 関節リウマチを治療(すなわち、関節炎を治療または予防)することを実現すること。
【解決手段】 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む薬学的組成物を提供する。または、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされるポリヌクレオチドを含む薬学的組成物を提供する。
【解決手段】 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む薬学的組成物を提供する。または、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされるポリヌクレオチドを含む薬学的組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節炎を治療または予防するための薬学的組成物、および関節炎を治療または予防する方法に関するものである。より詳細には、本発明は、関節炎を治療または予防するためのTL1Aを含む薬学的組成物、およびTL1Aを投与することを特徴とする関節炎を治療または予防する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:以下「RA」ともいう)は、多発するびらん性関節炎を主徴とするが、同時に多臓器を障害する原因不明の全身性炎症疾患である。RAは寛解と増悪とを繰り返しながら慢性に進行し、無治療で放置すると関節の破壊や変形を来し、やがて運動器の機能障害を呈してくる。時には生命をも脅かす。したがって、RA患者は身体的にも精神的にも大きな苦痛を生涯に亘って背負うことになる。RA治療(すなわち、関節炎の治療または予防)のための方法および治療剤の開発が望まれている。
【0003】
本願発明者らは、マイクロサテライトマーカーを用いた連鎖解析をRA患者およびその血縁者に対して実施することにより、関節リウマチの疾患遺伝子が位置する3カ所の遺伝子座を特定し、以下の疾患遺伝子を同定した(例えば、特許文献1を参照のこと):
(1)ヒト第1染色体の、マイクロサテライトマーカーD1S214および/またはD1S253がハイブリダイズするDNA配列から±1センチモルガン以内に位置する関節リウマチの疾患遺伝子;
(2)ヒト第8染色体の、マイクロサテライトマーカーD8S556がハイブリダイズするDNA配列から±1センチモルガン以内に位置する関節リウマチの疾患遺伝子;
(3)ヒトX染色体の、マイクロサテライトマーカーDXSl001、DXS1047、DXS1205、DXS1227および/またはDXS1232がハイブリダイズするDNA配列から±1センチモルガン以内に位置する関節リウマチの疾患遺伝子。
【0004】
本願発明者らは、前記(1)の疾患関与遺伝子に関係するマーカーD1S214およびD1S253の疾患関与遺伝子として、デスレセプター3(death receptor 3:「DR3」または「DR3遺伝子」ともいう)を挙げ、健常人とRA患者との間にDR3の制限断片長多型を確認し、DR3がRAにおける疾患関与遺伝子である可能性を示している(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
【0005】
さらに、本願発明者らは、DR3遺伝子のゲノム変異と関節リウマチ(慢性関節リウマチ)発症との関係について開示している(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0006】
DR3は、60アミノ酸残基からなるdeath domain(DD)を有し、NF−κBの活性化およびアポトーシスを誘導する(例えば、非特許文献2および3を参照のこと)。このようなアポトーシスのシグナル伝達に関与するレセプターであるDR3は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー(TNFR superfamily:TNFRSF)に属し(TNFRSF25)、TNFR1と高い相同性を有することが知られている(例えば、非特許文献2および3を参照のこと)。また、DR3は主にリンパ系組織に発現しているが、本発明者らは、DR3が滑膜細胞にも発現されていることを確認している(例えば、非特許文献4を参照のこと)。
【0007】
本発明者らは、これまでに、エクソン5とイントロン5において4つのSNPおよび/または14塩基の欠損を有する新たなDR3ハプロタイプを同定し、これらの変異によって生じるDD欠損型DR3が、正常型DR3とともに3量体を形成することによってアポトーシスを阻害することを明らかにした(未発表)。このDD欠損型DR3は、家族性RA患者において高頻度に認められ、DD欠損型DR3を有するRA患者の関節破壊は進行性であることが臨床的に示されている(未発表)。しかし、DR3が関節炎に関与することを示す直接的な証拠はなく、そのことを示すための具体的な手法も見出されていない
このようなDR3について、そのリガンドを同定することが試みられている。DR3のリガンドとして、以前はTWEAKなどが考えられていたが、TWEAKはDR3を欠損している細胞においてもNFκB活性化およびアポトーシスを引き起こすため、DR3の特異的リガンドであるとは言い難く、よって、RA治療(関節炎の治療または予防)に有効であるとは言い難い(例えば、非特許文献5および6を参照のこと)。
【0008】
現在、DR3に結合する因子の1つとしてTL1Aが同定されている(例えば、非特許文献2を参照のこと)。TL1AはTNFSFに属するTNFのひとつで、TNFSF15とも呼ばれている(例えば、非特許文献7を参照のこと)。TL1Aは、DR3とdecoyレセプター(TR6/DcR3)に対するリガンドであり、その発現はTNFまたはIL−1αによって誘導される(例えば、非特許文献2を参照のこと)。TNFおよびIL−1αは、炎症性サイトカインであり、関節炎を増悪させる。また、DR3を発現している細胞において、TL1Aは、NF−κB活性化およびアポトーシスを引き起こす(例えば、非特許文献2を参照のこと)。さらに、TR6とFcとの融合タンパク質であるTR6−Fcタンパク質は、TL1A依存的なNF−κB活性化およびアポトーシスのシグナル伝達を競合的に中和する(例えば、非特許文献2を参照のこと)。
【特許文献1】国際公開WO98/51791号(国際公開日:1998年11月19日)
【特許文献2】国際公開WO02/34912(国際公開日:2002年5月2日)
【非特許文献1】リウマチ、第39号、第2号、第444頁および第445頁(1999年)
【非特許文献2】Migone TS, et al. (2002) TL1A is a TNF-like ligand for DR3 and TR6/DcR3 and functions as a T cell costimulator. Immunity 16:479-92.
【非特許文献3】Chinnaiyan, A.M., et al. (1996) Signal transduction by DR3, a death domain-containing receptor related to TNFR-1 and CD95. Science 274:990-992
【非特許文献4】Miura Y., et al. (2004) Death Receptor 3 is specially expressed in rheumatoid synovium and TL1A, a physiological ligand for DR3, efficiently induces apoptosis in rheumatoid synovial fibroblasts that express DR3. Arthritis Rheum.50, S354
【非特許文献5】Kaptein, A. et al. (2000) Studies interaction between TWEAK and death receptor WSL1/TRAMP (DR3) . FEBS Lett. 485, 135-141
【非特許文献6】Wiley, S.R. et al. (2001) A novel TNF receptor family member binds TWEAK and is implicated in angiogenesis. Immunity 15, 837-846
【非特許文献7】Ware CF. (2004) The TNF superfamily. Cytokine Growth Factor Rev. 14:181-4.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、TL1Aは、DR3特異的なリガンドとして有力な候補である。しかしながら、DR3を発現している細胞において、TL1AがNF−κB活性化およびアポトーシスを引き起こすとはいえ、従来DR3のリガンドとして有力であったTWEAKがDR3を欠損している細胞においてもNFκB活性化およびアポトーシスを引き起こすことを考慮すると、TL1AがDR3またはTR6/DcR3に結合するからといって、TL1Aが生体内において実際にDR3特異的なリガンドとして機能するとは言い難い。さらに、アポトーシスの誘導は炎症を抑制する働きがあるが、NF−κBの活性化は細胞増殖反応および/または炎症反応を増強する働きがあり、このような相反するシグナル伝達に関与するTL1Aが実際にDR3関連関節炎を抑制および/または阻害することができるのかどうかは、これまで具体的な手段がなかったために実証することができなかった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、TL1Aが関節炎に対してアポトーシスを誘導して炎症を抑制する働きをするのか、またはNF−κBを活性化して増殖反応および/または炎症反応を高める働きをするのかをインビトロおよび/またはインビボで示し、RA治療(関節炎の治療または予防)を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリペプチド:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド、
を含むことを特徴としている。
【0012】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含むことを特徴としている。
【0013】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含むことを特徴としている。
【0014】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリペプチド:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド、
をコードするポリヌクレオチドを含みかつ(A)または(B)のポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴としている。
【0015】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含みかつ(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴としている。
【0016】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含みかつ(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴としている。
【0017】
本発明に係る関節炎を治療または予防するための方法は、上記の薬学的組成物を投与する工程を包含することを特徴としている。
【0018】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、以下の(A)または(B)のポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【0019】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0020】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0021】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、上記被験体サンプルが、末梢血単核細胞、末梢血白血球または滑膜生検組織であることが好ましい。
【0022】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程をさらに包含することが好ましい。
【0023】
本発明に係る検出キットは、DR3タンパク質発現細胞を検出するために、以下の(A)または(B)のポリペプチドを備えることを特徴としている:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【0024】
本発明に係る検出キットは、DR3タンパク質発現細胞を検出するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを備えることを特徴としている:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0025】
本発明に係る検出キットは、DR3タンパク質発現細胞を検出するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを備えることを特徴としている:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0026】
本発明に係る検出キットは、アポトーシスの誘導を検出するための試薬をさらに備えることが好ましい。
【0027】
本発明に係る診断キットは、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)および(II):
(I)以下の(A)または(B)のポリペプチド:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド;および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬
を備えることを特徴としている。
【0028】
本発明に係る診断キットは、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)および(II):
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬
を備えることを特徴としている。
【0029】
本発明に係る診断キットは、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)および(II):
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬
を備えることを特徴としている。
【0030】
本発明に係る診断方法は、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)〜(III)の工程:
(I)以下の(A)または(B)のポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド;
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞のアポトーシスの程度を比較する工程
を包含することを特徴としている。
【0031】
本発明に係る診断方法は、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)〜(III)の工程:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞のアポトーシスの程度を比較する工程
を包含することを特徴としている。
【0032】
本発明に係る診断方法は、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)〜(III)の工程:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞のアポトーシスの程度を比較する工程
を包含することを特徴としている。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る薬学的組成物を使用すれば、関節炎を治療または予防することができる。また、本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出するための検出方法および検出キットを使用すれば、関節リウマチ(RA)を罹患する被験体を同定することができ、当該被験体に本発明に係る薬学的組成物を使用することによって、RA依存的な関節炎を治療または予防することができる。さらに、本発明に係る診断(判定)キットおよび診断(判定)方法を使用することにより、関節リウマチ(RA)の診断(発症またはその発症可能性の判定)を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこの記載に限定されるものではない。
【0035】
〔1〕薬学的組成物および治療方法
本発明は、関節炎を治療または予防するための薬学的組成物を提供する。一実施形態において、本発明に係る薬学的組成物は、以下に詳述するポリペプチドを含むことが好ましい。他の実施形態において、本発明に係る薬学的組成物は、以下に詳述するポリヌクレオチドを含む細胞を含むことが好ましい。また、本発明に係る薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアを併せて含んでもよい。
【0036】
本発明はまた、関節炎を治療または予防するための方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る治療方法は、以下に詳述するポリペプチドを用いることが好ましい。また、本発明に係る治療方法は、他の工程を包含してもよい。
【0037】
本発明に係る薬学的組成物および治療方法を使用することにより、関節リウマチにおける関節炎を有意に治療(治療または予防)することができる。
【0038】
(1−a)ポリペプチド
本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチドを含む薬学的組成物を提供する。また、本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチドを用いる治療方法を提供する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用される。本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドはまた、天然供給源より単離されても、組換え生成されても、化学合成されてもよいが、天然の細胞もしくは組織由来の精製産物、化学合成手順の産物、または原核生物宿主もしくは真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生されることが好ましい。
【0040】
本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に導入して、そのポリペプチドを細胞内発現させた状態であってもよいし、発現させた細胞または組織などから単離精製されてもよい。
【0041】
用語「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然の環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質が意図される。例えば、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術によって実質的に精製されている天然または組換えのポリペプチドおよびタンパク質と同様に、単離されていると考えられる。
【0042】
上記ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するために、種々のベクターが使用され得る。ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に上記ポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと上記ポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
【0043】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含む。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、およびE.coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0044】
上記選択マーカーを用いれば、上記ポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。
【0045】
上記の宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は当分野で周知である。
【0046】
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドを昆虫で転移発現させる場合には、バキュロウイルスを用いた発現系を用いればよい。
【0047】
また、本実施形態に係るポリペプチドは、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、HisやMyc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。好ましい実施形態において、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、融合タンパク質のような改変された形態で組換え発現され得る。例えば、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドの付加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間または引き続く操作および保存の間の安定性および持続性を改善するために、ポリペプチドのN末端に付加され得る。
【0048】
遺伝子が細胞に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法などによって行うことができる。例えば、形質転換細胞からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRは、前記プラスミドを調製するために使用した条件と同様の条件で行うことができる。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動などを行い、臭化エチジウム、SYBR Green液などによって染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することによって、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素などによって標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレートなどの固相に増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応などによって増幅産物を確認する方法も採用することができる。
【0049】
ポリペプチドを精製する工程は、周知の方法(例えば、細胞または組織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)で細胞または組織から細胞抽出液(例えば、核抽出液)を調製した後、この細胞抽出液から周知の方法(例えば、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー)によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。
【0050】
一実施形態において、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチドの変異体であり得る。上記変異体は、TL1Aポリペプチド活性を有する。本明細書中で使用される場合、用語「TL1Aポリペプチド活性」は、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドが意図される。
【0051】
このような変異体は、欠失、挿入、逆転、反復、およびタイプ置換(例えば、親水性の残基の別の残基への置換、しかし通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置換しない)を含む。小さな変化、またはこのような「中性」アミノ酸置換は、一般的にほとんど活性に影響しない。本明細書中で使用される場合、ポリペプチドの活性は、DR3依存的アポトーシスを阻害することが意図される。
【0052】
1つの局面において、上記変異体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであることが好ましい。
【0053】
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
【0054】
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した変異体が所望の活性を有するか否かを容易に決定し得る。
【0055】
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または添加を有する。好ましくは、サイレント置換、添加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、TL1Aポリペプチド活性を変化させない。
【0056】
代表的に保存的置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
【0057】
上記に詳細に示されるように、どのアミノ酸の変化が表現型的にサイレントでありそうか(すなわち、機能に対して有意に有害な効果を有しそうにないか)に関するさらなるガイダンスは、Bowie, J.U.ら「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」,Science 247:1306−1310 (1990)(本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
【0058】
他の局面において、上記変異体は、配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドからなるポリペプチドであることが好ましい。
【0059】
別の局面において、上記変異体は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドからなるポリペプチドであることが好ましい。
【0060】
用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。
【0061】
本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、DR3シグナル伝達を活性化する。従って、上記ポリペプチドが所望の活性を有しているか否かは、DR3を発現する細胞に添加して、DR3シグナル伝達を活性化するか否かを調べればよい。上記ポリペプチドを上記細胞に添加する時間は、特に限定されないが、例えば、6時間〜16時間程度であればよく、12時間〜16時間が好ましい。また、比較検討の目的で、刺激を与えないコントロール細胞を用意する必要がある。
【0062】
本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、関節炎を治療または予防するための薬学的組成物だけでなく、関節リウマチを治療するための薬剤、ならびに関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するため方法およびキットに利用することができる。
【0063】
このように、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、少なくとも、TL1Aポリペプチド活性を保持するポリペプチドであればよいといえる。すなわち、当該ポリペプチドが、特定の機能(例えば、タグ)を有する任意のアミノ酸配列とからなるポリペプチドと連結されている場合もまた本発明に含まれることに留意すべきである。また、当該ポリペプチドおよび当該任意のアミノ酸配列は、それぞれの機能を阻害しないように適切なリンカーペプチドで連結されていてもよい。
【0064】
つまり、本発明の目的は、TL1Aポリペプチド活性を保持するポリペプチドを含む薬学的組成物または治療方法を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリペプチド作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得されるポリペプチドも本発明の範囲に属することに留意しなければならない。
【0065】
(1−b)ポリヌクレオチド
本発明は、上記(1−a)項において詳述したポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みかつ当該ポリペプチドを発現する細胞を含む薬学的組成物を提供する。また、本発明は、上記(1−a)項において詳述したポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みかつ当該ポリペプチドを発現する細胞を用いる治療方法を提供する。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「遺伝子配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。
【0067】
塩基配列に関して本明細書中で使用される場合、特に断らない限り、A、C、GおよびTは、アデニン、シトシン、グアニンおよびチミンの各塩基を示す。また、アミノ酸およびアミノ酸残基は、IUPACおよびIUBの定める1文字表記または3文字表記を使用する。また、転写産物とは、ゲノムが転写および翻訳される結果として生じる産物であり、たとえば、mRNA、cDNAおよびタンパク質(ポリペプチド)などが挙げられる。
【0068】
本発明において用いられるポリヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチド(例えば、本発明において使用されるTL1AポリペプチドをコードするcDNA全長からなるポリヌクレオチド)の切断フラグメントとして生成されても、化合合成されてもよい。例えば、制限エンドヌクレアーゼ切断または超音波による剪断は、種々のサイズのフラグメントを作製するために容易に使用され得る。あるいは、このようなフラグメントは、合成的に作製され得る。適切なフラグメント(オリゴヌクレオチド)が、Applied Biosystems Incorporated(ABI,850 Lincoln Center Dr.,Foster City,CA 94404)392型シンセサイザーなどによって合成される。
【0069】
本発明において用いられるポリヌクレオチドを取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド(cDNA)のうち、5’側および3’側の配列(またはその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA(またはcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明において用いられるポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。
【0070】
また本発明において用いられるポリヌクレオチドは、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
【0071】
つまり、本発明の目的は、TL1Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリヌクレオチドの作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得されるポリヌクレオチドもまた本発明の範囲に属することに留意しなければならない。
【0072】
〔2〕DR3タンパク質発現細胞を検出するための検出キットおよび検出方法
本発明は、DR3タンパク質発現細胞を検出するための検出キットを提供する。一実施形態において、本発明に係る検出キットは、(1−a)で詳述したポリペプチドを備えることが好ましい。さらなる実施形態において、本発明に係る検出キットは、アポトーシスの誘導を検出するための試薬をさらに備えることが好ましい。
【0073】
「アポトーシスの誘導を検出するための試薬」としては、公知の市販の種々の試薬を用いればよく、好ましい試薬としては、例えば、抗Caspase3抗体および抗poly(ADP−ribose) polymerase(PARP)抗体が挙げられる。また、「アポトーシスの誘導を検出するための試薬」として市販されている試薬だけでなく、公知の種々のアポトーシス検出方法に用いられる試薬もまた、「アポトーシスの誘導を検出するための試薬」に包含されることを、当業者は容易に理解する。アポトーシス検出方法としては、上記試薬(抗体)を用いたウエスタンブロット法、またははterminal deoxynucleotidyl transferase−mediated UTP nick end labeling(TUNEL)法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0074】
本発明はまた、DR3タンパク質発現細胞を検出するための検出方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る検出方法は、(1−a)で詳述したポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含することが好ましい。さらなる実施形態において、本発明に係る検出方法は、上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程をさらに包含することが好ましい。
【0075】
本発明に係る検出キットおよび検出方法を使用することにより、DR3タンパク質発現細胞の検出を高精度に行うことができる。
【0076】
〔3〕診断キットおよび診断方法
感染因子、または、代謝産物、核酸、およびタンパク質を含む病気の指標となる分子の検出および測定は、医学的疾患の診断および治療、ならびに研究における基本的な要素である。現在、多くの方法論が検出に使用されている。
【0077】
本発明は、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キットを提供する。本明細書中で使用される場合、関節リウマチの「発症可能性」とは、関節リウマチ(RA)が発生する危険度を示す指標をいい、発症可能性が高ければそれだけRAになりやすく、逆に発症可能性が低ければRAになり難いということを示す。
【0078】
一実施形態において、本発明に係る診断キットは、本発明に用いられるポリペプチドを備えることが好ましい。また、本発明に係る診断キットは、他の試薬を併せて備えてもよい。好ましい実施形態において、本発明に係る診断キットは、アポトーシスの誘導を検出するための試薬を備える。
【0079】
本発明はまた、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る診断キットは、本発明に用いられるポリペプチドを用いることが好ましい。また、本発明に係る診断方法は、他の工程を包含してもよい。好ましい実施形態において、本発明に係る診断方法は、上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程、および、上記インキュベート前後での上記細胞のアポトーシスの程度を比較する工程をさらに包含する。
【0080】
本発明に係る診断(判定)キットおよび診断(判定)方法を使用することにより、RAの診断(発症またはその発症可能性の判定)を高精度に行うことができる。
【0081】
以下、実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明するが、もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0082】
DR3の特異的リガンドとして同定されたTL1AはTNFスーパーファミリーに属し、DR3およびdecoyレセプター(TR6/DcR3)に対して作用し、DR3発現細胞においてアポトーシスおよびNF−κB活性化を誘導する。ヒトTL1A(hTL1A)は、マウスTL1A(mTL1A)と63.7%の相同性を有し、マウスリンパ球に作用することが報告されている(非特許文献2を参照のこと)。
【0083】
本発明者らは、II型コラーゲン誘発関節炎を発症させたマウスにhTL1Aを投与することによって、TL1Aが、アポトーシスを誘導して炎症を抑制するのか、または、NF−κBを活性化して炎症反応を高めるのかを検討した。
【0084】
なお、本実施例において、他で詳述しない限り、Molecular Cloning(Sambrookら、Cold Spring Harbour Laboratory Press,1989)に記載の方法に従った。
【0085】
(実施例1:hTL1A組換えタンパク質発現用プラスミドの作製)
全長hTL1A(hTL1A−full)は753bpのポリヌクレオチドからなり、251aaからなるポリペプチドをコードする。hTL1Aのアミノ酸36〜60位は膜結合部であり、可溶化型TL1Aとして同定されるsoluble hTL1A(hTL1A−sol)は、hTL1Aのアミノ酸72〜251位によってコードされていることが知られている(図1を参照のこと)(非特許文献2を参照のこと)。
【0086】
hTL1Aは主に血管内皮細胞に強く発現しているので、Rneasy Mini Kit(Quiagen)を製造業者の推奨する方法に従って使用して、ヒト臍静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cells:HUVEC)から総RNAを抽出した。
【0087】
上記RNAを逆転写して合成したcDNAをテンプレートとして、順方向プライマーF75(CTCTGCCCAGGAGTCAGAG:配列番号3)と逆方向プライマーR879(TCTCCTCCTATAGTAAGAAGGCTCC:配列番号4)またはR922(TTAGGAACTCGGTGGCAGAG:配列番号5)とを用いて、以下のようにPCRを行った:50μlの反応混合液(1μl cDNA、1×Takara LA PCR Buffer II、50mM KCl、25mM MgCl2、2.5mM dNTP、5UのLA Taq Gold (Takara)、および1μMの各オリゴヌクレオチドプライマーを含む)を、95℃で10分間加熱した後、94℃で30秒間、54℃で30秒間および72℃で2分間のサイクルを45サイクル行い、増幅産物を72℃で10分間によって完全に伸長させた。増幅産物をアガロースゲルにて電気泳動した(図2)。図2に示すように、F75とR879とを用いたPCRによって804bpのバンドを、F75とR922とを用いたPCRによって847bpのバンドを得た。
【0088】
hTL1A−fullを含むと考えられる847bpまたは804bpのバンドをゲルから抽出して、TOPO Cloning Kit(Invitrogen)を用いて、キットのクローニングベクターに連結した。得られたプラスミドを用いてTop−10(Invitrogen)を形質転換した後、アンピシリンを含有するLBプレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。
【0089】
上記プレートからピックアップしたコロニーを、アンピシリンを含有するLB培地(1.5ml)中にて37℃で一晩(約16時間)培養し、遠心分離によって収集した菌からプラスミドを回収した。このプラスミドをEcoRIを用いて消化して、所望長のインサートを有するプラスミドについて配列決定を行った。
【0090】
hTL1A−fullを含むことを確認したプラスミドをテンプレートにして、順方向プライマーF75+NdeI(CATATGCTCTGCCCAGGAGTCAGAG:配列番号6)と逆方向プライマーR877+BamHI(GGATCCTCCTATAGTAAGAAGGCTCC:配列番号7)とを用いてPCRを行って、soluble TL1Aを増幅した(図3)。順方向プライマーF75+NdeIはNdeI部位を、逆方向プライマーR877+BamHIはBamHI部位を有する。得られたフラグメントを、pET−19bベクター(Novagen)のNdeI/BamHI部位に挿入した。得られたプラスミドを用いてTop−10(Invitrogen)を形質転換した後、上述したように所望長のインサートを有するプラスミドについて配列決定を行った。
【0091】
soluble TL1Aを含むことを確認したプラスミドを用いてBL21Star(Invitrogen)を形質転換した後、アンピシリンを含有するLBプレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。次いで、アンピシリンを含有するLB培地(2ml)中にて37℃で培養した後、培養液100μlにグリセロール900μlを加えて−80℃で保存した(グリセロールストック)。
【0092】
(実施例2:E.coliにおけるhTL1A組換えタンパク質の発現に用いるIPTG濃度の検討)
実施例1で得た少量のグリセロールストックをアンピシリンを含有するLB培地(5ml)に添加して、シェーカー(200rpm)中にて37℃で一晩インキュベートした(一次培養液)。一次培養液(250μl)をアンピシリンを含有するLB培地(5ml)に添加して、OD600が0.3〜0.4になるまでシェーカー(200rpm)中にて37℃でインキュベートした。続いて、最終濃度が0.5mM、2mM、または5mMになるようにIPTGを培養液中に添加し、OD600が約1.0になるまでシェーカー(200rpm)中にて37℃でインキュベートした後、培養液を3000rpmにて4℃で15分間遠心分離して菌体を収集した。
【0093】
収集した菌体をPBSを用いて2〜3回洗浄した後、ペレットを1%Triton−Xを含有するPBS(−)中に懸濁した。この懸濁液を、氷上にて30秒間超音波処理した後、33000rpmにて4℃で1時間遠心分離した。上清を回収し、ペレットを1%Triton−Xを含有するPBS(−)中に懸濁した。上清サンプルおよびペレットサンプルをSDS−PAGEによって分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。この膜を用いて、抗TL1Aマウスモノクローナル抗体(monoclonal Anti−human VEGI/TNFSF15 Antibody (R&D SYSTEMS))によるイムノブロットを行った(図4)。
【0094】
図4に示すように、soluble hTL1A組換えタンパク質(rhTL1A−sol)の発現を確認した。rhTL1A−solの発現は、IPTGによって有意に誘導された。最終濃度0.5mMまたは2mMのIPTGを添加した場合、これらの間でrhTL1A−sol発現量にほとんど差がなかったが、最終濃度5mMのIPTGを添加した場合、発現量は増加した。しかし、大量培養を行なった場合は、いずれの濃度を用いてもrhTL1A−sol発現量にほとんど差がなかった(結果は示さず)。従って、以下の実験において、最終濃度0.5mMのIPTG濃度を用いた。
【0095】
(実施例3:hTL1A組換えタンパク質の精製条件の検討)
実施例1で得た少量のグリセロールストックをアンピシリンを含有するLB培地(150ml)に添加して、シェーカー(200rpm)中にて37℃で一晩インキュベートした(一次培養液)。一次培養液(25ml)をアンピシリンを含有するLB培地(500ml)に添加して、OD600が0.3〜0.4になるまでシェーカー(200rpm)中にて37℃でインキュベートした。続いて、最終濃度が0.5mMになるようにIPTGを培養液中に添加し、OD600が約1.0になるまでシェーカー(200rpm)中にて37℃でインキュベートした後(2〜3時間)、培養液を3000rpmにて4℃で15分間遠心分離して菌体を収集した。
【0096】
収集した菌体をPBSを用いて2〜3回洗浄した後、ペレットを25mlの緩衝液A(2mMイミダゾール、1% Triton−X100、プロテアーゼインヒビターを含むPBS(−))中に懸濁した。この懸濁液を、氷上にて30秒間×6回超音波処理した後、33000rpmにて4℃で1時間遠心分離して上清を回収した。
【0097】
この上清から、HiTrap Chelating HP(Amersham Biosciences)カラムを用いて、hTL1A組換えタンパク質(rhTL1A−sol)を精製した。
【0098】
カラムを、超純水(5ml)、0.1M NiSO4(0.5ml)、超純水(5ml)の順番で洗浄した後、緩衝液A(10ml)を用いて平衡化した。上記上清サンプルをカラムにアプライした後、カラムを緩衝液A(10ml)を用いて洗浄し、緩衝液B(50mMまたは500mMのイミダゾールを含有するPBS(−)(pH7.4))を用いて溶出し、溶出物を0.5mlずつ分画した。各画分をSDS−PAGEに供した後、ゲルを銀染色した(図5)。
【0099】
図5に示すように、緩衝液B中に含まれるイミダゾールが50mMの場合、rhTL1A−sol以外のタンパク質も溶出されたが、rhTL1A−solタンパク質は溶出されなかった。緩衝液B中に含まれるイミダゾールが100mMの場合、rhTL1A−sol以外のタンパク質とともにrhTL1A−solタンパク質が溶出された。
【0100】
そこで、上清サンプルをカラムにアプライした後、カラムを50mMイミダゾールを含む緩衝液(10ml)を用いて1mlずつ分画しながら溶出した後、500mMのイミダゾールを含む緩衝液(10ml)を用いて0.5mlずつ分画しながら溶出した。各画分をSDS−PAGEに供した後、ゲルを銀染色した(図6)。
【0101】
図6に示すように、50mMイミダゾールを含む緩衝液を用いて十分溶出を行った後に、500mMイミダゾールを含む緩衝液を用いてrhTL1A−solタンパク質を溶出すると、目的のrhTL1A−solタンパク質を高純度で精製することができることがわかった。
【0102】
続いて、上記画分7〜13をあわせた後、1×PBS(750ml)中で透析して、開始精製画分からイミダゾールを除去した。透析液を、一晩透析した後、その2時間後に交換し、上記画分をさらに2時間透析した。透析後のサンプルをSDS−PAGEに供した後、ゲルをCBB染色した(図7)。
【0103】
BSAの濃度を指標にすると、サンプル中のタンパク質濃度は50μg/mlであった。すなわち、3lの培養液から175μgのrhTL1A−solタンパク質を得た。
【0104】
(実施例4:hTL1A組換えタンパク質によるアポトーシス誘導)
浮遊細胞であるTF−1細胞株(human myelo−erythroid CD34+ leukemia cell line)は、内因性のDR3を過剰発現している。また、TF−1細胞をタンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)で前処理した後にTL1Aで刺激すると、アポトーシスが誘導される(Migone,T.S.ら、Immunity,16:479−472(2002))。
【0105】
1.5mlの10%FCSを含有するRPMI培地中に懸濁したTF−1細胞を、1×106細胞/ウェルにて6ウェルプレートに分注した。CHXを各ウェルに添加した(最終濃度10μg/ml)。37℃で1時間インキュベートした後、TL1Aを各ウェルに添加した。TL1Aとして、0.25μg/ml、0.5μg/ml、または1μg/mlのrhTL1A−solタンパク質、あるいは300ng/mlのrhTL1A(R&D社)を用いた。
【0106】
TL1A添加後、細胞を37℃で一晩インキュベートした。遠心分離によって回収したTF−1細胞を、PBS(リン酸緩衝化緩衝液)で2〜3回洗浄した後、1%Triton−Xを含有するPBSを用いて融解した。融解液を遠心分離して上清をサンプルとして回収した。各サンプルのタンパク質量を測定した後、各サンプル中のタンパク質をSDS−PAGEによって分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。この膜を用いて、抗カスパーゼ8抗体または抗PARP抗体によるイムノブロットを行った(図8)。
【0107】
図8に示すように、TL1Aのポジティブコントロールとして用いたrhTL1A(R&D社)と同様に、rhTL1A−solタンパク質によってアポトーシスのシグナル伝達が生じることがわかった。
【0108】
(実施例5:精製hTL1A組換えタンパク質サンプル中のエンドトキシンの測定)
エンドトキシンの測定試薬として、エンドスペシーLS−60セット、トキシカラーDIA−MPセット、エンドトキシン標準品ES−2(生化学工業株式会社)を、製造業者の指示書に従って使用して、rhTL1A−solタンパク質サンプル中のエンドトキシンを測定した。
【0109】
【表1】
【0110】
rhTL1A(R&D社)中のエンドトキシンと比較した結果、同レベルであることがわかった。
【0111】
(実施例6:コラーゲン誘発性関節炎(CIA)の誘発、およびCIAに対するrhTL1Aの効果)
ヒトTL1A(hTL1A)はマウスTL1A(mTL1A)とアミノ酸レベルで63.7%の相同性を有している。ヒトTL1Aをマウスに静脈内投与すると、移植片対宿主反応(GVHR:graft−versus−host−response)を増強する。またGVHRを生じたマウスの脾臓細胞を培養すると、投与していない対象群と比較して、細胞増殖、IFN−γ、GMCSFの産生増加がみられる。(非特許文献2を参照のこと)。
【0112】
コラーゲン誘発性関節炎(CIA)を発症させたマウスを作製し、当該マウスにrhTL1A−solタンパク質を投与して、CIAに対するrhTL1A−solタンパク質の効果を調べた。
【0113】
0.3%calf TypeII collagenと0.1M AcOHとを3:2の割合で混合して0.2%コラーゲン液を得た。このコラーゲン液とフロイント完全アジュバントとを1:1で氷上にて混和して、抗原液を得た。
【0114】
6週齢DBA/1J 雌(日本チャールズ・リバー)を購入し、7週齢で実験に供した。ウサギの背部〜尾部にわたって上記抗原液を200μlずつ4箇所(200μg TypeII collagen/匹)投与した(一次感作)。一次感作の3週間後に、同様に二次感作を行うことによって、ウサギにCIAを誘発させた。二次感作の3日後から3日毎にPBSまたはrhTL1A−solタンパク質を腹腔内投与して、四肢の関節炎の評価を、二次感作を行った日から連日行なった(図9)。PBSまたはrhTL1A−solタンパク質の投与終了2日後に屠殺し、四肢を切断した後にソフテックスを用いてX線撮影を行って、関節破壊を評価した(図10)。X線画像の評価を富山化学に依頼した。
【0115】
関節炎の症状およびX線画像の評価を以下の基準に基づいて行った。
関節炎症状評価(関節炎スコア(四肢で最高12点))
0:変化なし
1:1,2指関節の腫脹もしくは手根部・足根部関節のみの軽い腫脹
2:3指以上の関節に腫脹、または、手根部・足根部の明らかな腫脹
3:前肢又は後肢全体にわたって明らかな腫脹
X線像評価法 (四肢で最高105点)
・骨粗鬆スコア(四肢で最高21点)
0:変化なし
0.5:関節および関節近傍の骨粗鬆像
・骨びらんスコア(四肢で最高84点)
0:変化なし
1:関節および関節近傍の部分的な骨破壊
2:関節および関節近傍の全体的な骨破壊。
【0116】
図10は、CIA誘発マウスにおける関節腫脹スコアの経時的変化を示す。図11は、一次感作の48日後のCIA誘発マウスにおける骨破壊スコアを示す。
【0117】
一次感作の48日後の関節炎スコア(最高12点)は、PBS投与群が9.6±0.9であるのに対し、TL1A投与群は5.6±1.6であり、TL1A投与マウスにおいて関節炎の抑制が観察された(p<0.05)(図10)。一次感作の48日後の関節破壊スコア(最高105点)は、PBS投与群が32.1±10.4であるのに対し、TL1A投与群は13.6±7.6であり、TL1A投与マウスにおいて関節破壊の抑制が観察された(p<0.05)(図11)。また、個々のマウスにおいて、関節炎の程度と関節破壊の程度とはほぼ一致していた(図12)。
【0118】
以上のように、CIAマウスにおいて、DR3特異的リガンドであるTL1Aを投与することによって、関節炎が抑制された。このことは、DR3がRA関節炎の発症に重要な役割を果たすこと、および、TL1AがDR3を介してRAの治療薬または予防薬になり得ることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0119】
DR3がRA関節炎の発症に重要な役割を果たすこと、および、TL1AがDR3を介してRAの治療薬または予防薬になり得ることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、全長hTL1A(hTL1A−full)ポリペプチド、および可溶化型TL1A(soluble hTL1A(hTL1A−sol))ポリペプチドの模式図を示す。
【図2】図2は、ヒト臍静脈内皮細胞からRT−PCRを行って得たフラグメントを示すアガロースゲル電気泳動の写真である。
【図3】図3は、hTL1A−fullをテンプレートにしてPCR増幅して得た可溶化型TL1Aを示すアガロースゲル電気泳動の写真である。
【図4】図4は、大腸菌における可溶化型TL1Aポリペプチドの発現を示すイムノブロットの結果を示す写真である。
【図5】図5は、キレーティングカラムを用いる精製における、大腸菌において発現させた可溶化型TL1Aポリペプチドの溶出画分をSDS−PAGEに供した後に銀染色したゲルを示す図である。
【図6】図6は、キレーティングカラムを用いる精製における、大腸菌において発現させた可溶化型TL1Aポリペプチドの溶出画分をSDS−PAGEに供した後に銀染色したゲルを示す図である。
【図7】図7は、キレーティングカラムを用いる精製における、大腸菌において発現させた可溶化型TL1Aポリペプチドの溶出画分をSDS−PAGEに供した後にCBB染色したゲルを示す図である。
【図8】図8は、CHX処理後に可溶化型TL1Aポリペプチドで刺激したTF−1細胞におけるカスパーゼ8またはPARPの活性化を調べたイムノブロットの結果を示す写真である。
【図9】図9は、マウスにおいてコラーゲン誘発性関節炎(CIA)を発症させるプロトコルを示す図である。
【図10】図10は、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)を発症させたマウスにおける関節腫脹の経時的スコアを示すグラフである。
【図11】図11は、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)を発症させたマウスにおける一次感作の48日後の骨破壊スコアを示すグラフである。
【図12】図12は、TL1A投与マウスまたは未投与(PBS投与(対照群))マウスにおける関節炎および関節破壊の程度を示すX線写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節炎を治療または予防するための薬学的組成物、および関節炎を治療または予防する方法に関するものである。より詳細には、本発明は、関節炎を治療または予防するためのTL1Aを含む薬学的組成物、およびTL1Aを投与することを特徴とする関節炎を治療または予防する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:以下「RA」ともいう)は、多発するびらん性関節炎を主徴とするが、同時に多臓器を障害する原因不明の全身性炎症疾患である。RAは寛解と増悪とを繰り返しながら慢性に進行し、無治療で放置すると関節の破壊や変形を来し、やがて運動器の機能障害を呈してくる。時には生命をも脅かす。したがって、RA患者は身体的にも精神的にも大きな苦痛を生涯に亘って背負うことになる。RA治療(すなわち、関節炎の治療または予防)のための方法および治療剤の開発が望まれている。
【0003】
本願発明者らは、マイクロサテライトマーカーを用いた連鎖解析をRA患者およびその血縁者に対して実施することにより、関節リウマチの疾患遺伝子が位置する3カ所の遺伝子座を特定し、以下の疾患遺伝子を同定した(例えば、特許文献1を参照のこと):
(1)ヒト第1染色体の、マイクロサテライトマーカーD1S214および/またはD1S253がハイブリダイズするDNA配列から±1センチモルガン以内に位置する関節リウマチの疾患遺伝子;
(2)ヒト第8染色体の、マイクロサテライトマーカーD8S556がハイブリダイズするDNA配列から±1センチモルガン以内に位置する関節リウマチの疾患遺伝子;
(3)ヒトX染色体の、マイクロサテライトマーカーDXSl001、DXS1047、DXS1205、DXS1227および/またはDXS1232がハイブリダイズするDNA配列から±1センチモルガン以内に位置する関節リウマチの疾患遺伝子。
【0004】
本願発明者らは、前記(1)の疾患関与遺伝子に関係するマーカーD1S214およびD1S253の疾患関与遺伝子として、デスレセプター3(death receptor 3:「DR3」または「DR3遺伝子」ともいう)を挙げ、健常人とRA患者との間にDR3の制限断片長多型を確認し、DR3がRAにおける疾患関与遺伝子である可能性を示している(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
【0005】
さらに、本願発明者らは、DR3遺伝子のゲノム変異と関節リウマチ(慢性関節リウマチ)発症との関係について開示している(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0006】
DR3は、60アミノ酸残基からなるdeath domain(DD)を有し、NF−κBの活性化およびアポトーシスを誘導する(例えば、非特許文献2および3を参照のこと)。このようなアポトーシスのシグナル伝達に関与するレセプターであるDR3は、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー(TNFR superfamily:TNFRSF)に属し(TNFRSF25)、TNFR1と高い相同性を有することが知られている(例えば、非特許文献2および3を参照のこと)。また、DR3は主にリンパ系組織に発現しているが、本発明者らは、DR3が滑膜細胞にも発現されていることを確認している(例えば、非特許文献4を参照のこと)。
【0007】
本発明者らは、これまでに、エクソン5とイントロン5において4つのSNPおよび/または14塩基の欠損を有する新たなDR3ハプロタイプを同定し、これらの変異によって生じるDD欠損型DR3が、正常型DR3とともに3量体を形成することによってアポトーシスを阻害することを明らかにした(未発表)。このDD欠損型DR3は、家族性RA患者において高頻度に認められ、DD欠損型DR3を有するRA患者の関節破壊は進行性であることが臨床的に示されている(未発表)。しかし、DR3が関節炎に関与することを示す直接的な証拠はなく、そのことを示すための具体的な手法も見出されていない
このようなDR3について、そのリガンドを同定することが試みられている。DR3のリガンドとして、以前はTWEAKなどが考えられていたが、TWEAKはDR3を欠損している細胞においてもNFκB活性化およびアポトーシスを引き起こすため、DR3の特異的リガンドであるとは言い難く、よって、RA治療(関節炎の治療または予防)に有効であるとは言い難い(例えば、非特許文献5および6を参照のこと)。
【0008】
現在、DR3に結合する因子の1つとしてTL1Aが同定されている(例えば、非特許文献2を参照のこと)。TL1AはTNFSFに属するTNFのひとつで、TNFSF15とも呼ばれている(例えば、非特許文献7を参照のこと)。TL1Aは、DR3とdecoyレセプター(TR6/DcR3)に対するリガンドであり、その発現はTNFまたはIL−1αによって誘導される(例えば、非特許文献2を参照のこと)。TNFおよびIL−1αは、炎症性サイトカインであり、関節炎を増悪させる。また、DR3を発現している細胞において、TL1Aは、NF−κB活性化およびアポトーシスを引き起こす(例えば、非特許文献2を参照のこと)。さらに、TR6とFcとの融合タンパク質であるTR6−Fcタンパク質は、TL1A依存的なNF−κB活性化およびアポトーシスのシグナル伝達を競合的に中和する(例えば、非特許文献2を参照のこと)。
【特許文献1】国際公開WO98/51791号(国際公開日:1998年11月19日)
【特許文献2】国際公開WO02/34912(国際公開日:2002年5月2日)
【非特許文献1】リウマチ、第39号、第2号、第444頁および第445頁(1999年)
【非特許文献2】Migone TS, et al. (2002) TL1A is a TNF-like ligand for DR3 and TR6/DcR3 and functions as a T cell costimulator. Immunity 16:479-92.
【非特許文献3】Chinnaiyan, A.M., et al. (1996) Signal transduction by DR3, a death domain-containing receptor related to TNFR-1 and CD95. Science 274:990-992
【非特許文献4】Miura Y., et al. (2004) Death Receptor 3 is specially expressed in rheumatoid synovium and TL1A, a physiological ligand for DR3, efficiently induces apoptosis in rheumatoid synovial fibroblasts that express DR3. Arthritis Rheum.50, S354
【非特許文献5】Kaptein, A. et al. (2000) Studies interaction between TWEAK and death receptor WSL1/TRAMP (DR3) . FEBS Lett. 485, 135-141
【非特許文献6】Wiley, S.R. et al. (2001) A novel TNF receptor family member binds TWEAK and is implicated in angiogenesis. Immunity 15, 837-846
【非特許文献7】Ware CF. (2004) The TNF superfamily. Cytokine Growth Factor Rev. 14:181-4.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、TL1Aは、DR3特異的なリガンドとして有力な候補である。しかしながら、DR3を発現している細胞において、TL1AがNF−κB活性化およびアポトーシスを引き起こすとはいえ、従来DR3のリガンドとして有力であったTWEAKがDR3を欠損している細胞においてもNFκB活性化およびアポトーシスを引き起こすことを考慮すると、TL1AがDR3またはTR6/DcR3に結合するからといって、TL1Aが生体内において実際にDR3特異的なリガンドとして機能するとは言い難い。さらに、アポトーシスの誘導は炎症を抑制する働きがあるが、NF−κBの活性化は細胞増殖反応および/または炎症反応を増強する働きがあり、このような相反するシグナル伝達に関与するTL1Aが実際にDR3関連関節炎を抑制および/または阻害することができるのかどうかは、これまで具体的な手段がなかったために実証することができなかった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、TL1Aが関節炎に対してアポトーシスを誘導して炎症を抑制する働きをするのか、またはNF−κBを活性化して増殖反応および/または炎症反応を高める働きをするのかをインビトロおよび/またはインビボで示し、RA治療(関節炎の治療または予防)を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリペプチド:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド、
を含むことを特徴としている。
【0012】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含むことを特徴としている。
【0013】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含むことを特徴としている。
【0014】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリペプチド:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド、
をコードするポリヌクレオチドを含みかつ(A)または(B)のポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴としている。
【0015】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含みかつ(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴としている。
【0016】
本発明に係る薬学的組成物は、関節炎を治療または予防するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
を含みかつ(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴としている。
【0017】
本発明に係る関節炎を治療または予防するための方法は、上記の薬学的組成物を投与する工程を包含することを特徴としている。
【0018】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、以下の(A)または(B)のポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【0019】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0020】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0021】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、上記被験体サンプルが、末梢血単核細胞、末梢血白血球または滑膜生検組織であることが好ましい。
【0022】
本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出する方法は、上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程をさらに包含することが好ましい。
【0023】
本発明に係る検出キットは、DR3タンパク質発現細胞を検出するために、以下の(A)または(B)のポリペプチドを備えることを特徴としている:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【0024】
本発明に係る検出キットは、DR3タンパク質発現細胞を検出するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを備えることを特徴としている:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0025】
本発明に係る検出キットは、DR3タンパク質発現細胞を検出するために、以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを備えることを特徴としている:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0026】
本発明に係る検出キットは、アポトーシスの誘導を検出するための試薬をさらに備えることが好ましい。
【0027】
本発明に係る診断キットは、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)および(II):
(I)以下の(A)または(B)のポリペプチド:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド;および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬
を備えることを特徴としている。
【0028】
本発明に係る診断キットは、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)および(II):
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬
を備えることを特徴としている。
【0029】
本発明に係る診断キットは、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)および(II):
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬
を備えることを特徴としている。
【0030】
本発明に係る診断方法は、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)〜(III)の工程:
(I)以下の(A)または(B)のポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド;
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞のアポトーシスの程度を比較する工程
を包含することを特徴としている。
【0031】
本発明に係る診断方法は、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)〜(III)の工程:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞のアポトーシスの程度を比較する工程
を包含することを特徴としている。
【0032】
本発明に係る診断方法は、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するために、以下の(I)〜(III)の工程:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞のアポトーシスの程度を比較する工程
を包含することを特徴としている。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る薬学的組成物を使用すれば、関節炎を治療または予防することができる。また、本発明に係るDR3タンパク質発現細胞を検出するための検出方法および検出キットを使用すれば、関節リウマチ(RA)を罹患する被験体を同定することができ、当該被験体に本発明に係る薬学的組成物を使用することによって、RA依存的な関節炎を治療または予防することができる。さらに、本発明に係る診断(判定)キットおよび診断(判定)方法を使用することにより、関節リウマチ(RA)の診断(発症またはその発症可能性の判定)を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこの記載に限定されるものではない。
【0035】
〔1〕薬学的組成物および治療方法
本発明は、関節炎を治療または予防するための薬学的組成物を提供する。一実施形態において、本発明に係る薬学的組成物は、以下に詳述するポリペプチドを含むことが好ましい。他の実施形態において、本発明に係る薬学的組成物は、以下に詳述するポリヌクレオチドを含む細胞を含むことが好ましい。また、本発明に係る薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアを併せて含んでもよい。
【0036】
本発明はまた、関節炎を治療または予防するための方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る治療方法は、以下に詳述するポリペプチドを用いることが好ましい。また、本発明に係る治療方法は、他の工程を包含してもよい。
【0037】
本発明に係る薬学的組成物および治療方法を使用することにより、関節リウマチにおける関節炎を有意に治療(治療または予防)することができる。
【0038】
(1−a)ポリペプチド
本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチドを含む薬学的組成物を提供する。また、本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチドを用いる治療方法を提供する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用される。本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドはまた、天然供給源より単離されても、組換え生成されても、化学合成されてもよいが、天然の細胞もしくは組織由来の精製産物、化学合成手順の産物、または原核生物宿主もしくは真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生されることが好ましい。
【0040】
本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に導入して、そのポリペプチドを細胞内発現させた状態であってもよいし、発現させた細胞または組織などから単離精製されてもよい。
【0041】
用語「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然の環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質が意図される。例えば、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術によって実質的に精製されている天然または組換えのポリペプチドおよびタンパク質と同様に、単離されていると考えられる。
【0042】
上記ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するために、種々のベクターが使用され得る。ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に上記ポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと上記ポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
【0043】
発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含む。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、およびE.coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0044】
上記選択マーカーを用いれば、上記ポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。
【0045】
上記の宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は当分野で周知である。
【0046】
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドを昆虫で転移発現させる場合には、バキュロウイルスを用いた発現系を用いればよい。
【0047】
また、本実施形態に係るポリペプチドは、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、HisやMyc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。好ましい実施形態において、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、融合タンパク質のような改変された形態で組換え発現され得る。例えば、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドの付加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間または引き続く操作および保存の間の安定性および持続性を改善するために、ポリペプチドのN末端に付加され得る。
【0048】
遺伝子が細胞に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法などによって行うことができる。例えば、形質転換細胞からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRは、前記プラスミドを調製するために使用した条件と同様の条件で行うことができる。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動などを行い、臭化エチジウム、SYBR Green液などによって染色し、そして増幅産物を1本のバンドとして検出することによって、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素などによって標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレートなどの固相に増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応などによって増幅産物を確認する方法も採用することができる。
【0049】
ポリペプチドを精製する工程は、周知の方法(例えば、細胞または組織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)で細胞または組織から細胞抽出液(例えば、核抽出液)を調製した後、この細胞抽出液から周知の方法(例えば、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー)によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。
【0050】
一実施形態において、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチドの変異体であり得る。上記変異体は、TL1Aポリペプチド活性を有する。本明細書中で使用される場合、用語「TL1Aポリペプチド活性」は、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドが意図される。
【0051】
このような変異体は、欠失、挿入、逆転、反復、およびタイプ置換(例えば、親水性の残基の別の残基への置換、しかし通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置換しない)を含む。小さな変化、またはこのような「中性」アミノ酸置換は、一般的にほとんど活性に影響しない。本明細書中で使用される場合、ポリペプチドの活性は、DR3依存的アポトーシスを阻害することが意図される。
【0052】
1つの局面において、上記変異体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであることが好ましい。
【0053】
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
【0054】
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した変異体が所望の活性を有するか否かを容易に決定し得る。
【0055】
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または添加を有する。好ましくは、サイレント置換、添加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、TL1Aポリペプチド活性を変化させない。
【0056】
代表的に保存的置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
【0057】
上記に詳細に示されるように、どのアミノ酸の変化が表現型的にサイレントでありそうか(すなわち、機能に対して有意に有害な効果を有しそうにないか)に関するさらなるガイダンスは、Bowie, J.U.ら「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」,Science 247:1306−1310 (1990)(本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
【0058】
他の局面において、上記変異体は、配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドからなるポリペプチドであることが好ましい。
【0059】
別の局面において、上記変異体は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドからなるポリペプチドであることが好ましい。
【0060】
用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。
【0061】
本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、DR3シグナル伝達を活性化する。従って、上記ポリペプチドが所望の活性を有しているか否かは、DR3を発現する細胞に添加して、DR3シグナル伝達を活性化するか否かを調べればよい。上記ポリペプチドを上記細胞に添加する時間は、特に限定されないが、例えば、6時間〜16時間程度であればよく、12時間〜16時間が好ましい。また、比較検討の目的で、刺激を与えないコントロール細胞を用意する必要がある。
【0062】
本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、関節炎を治療または予防するための薬学的組成物だけでなく、関節リウマチを治療するための薬剤、ならびに関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するため方法およびキットに利用することができる。
【0063】
このように、本発明に係る薬学的組成物または治療方法において使用されるポリペプチドは、少なくとも、TL1Aポリペプチド活性を保持するポリペプチドであればよいといえる。すなわち、当該ポリペプチドが、特定の機能(例えば、タグ)を有する任意のアミノ酸配列とからなるポリペプチドと連結されている場合もまた本発明に含まれることに留意すべきである。また、当該ポリペプチドおよび当該任意のアミノ酸配列は、それぞれの機能を阻害しないように適切なリンカーペプチドで連結されていてもよい。
【0064】
つまり、本発明の目的は、TL1Aポリペプチド活性を保持するポリペプチドを含む薬学的組成物または治療方法を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリペプチド作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得されるポリペプチドも本発明の範囲に属することに留意しなければならない。
【0065】
(1−b)ポリヌクレオチド
本発明は、上記(1−a)項において詳述したポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みかつ当該ポリペプチドを発現する細胞を含む薬学的組成物を提供する。また、本発明は、上記(1−a)項において詳述したポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みかつ当該ポリペプチドを発現する細胞を用いる治療方法を提供する。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「遺伝子配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。
【0067】
塩基配列に関して本明細書中で使用される場合、特に断らない限り、A、C、GおよびTは、アデニン、シトシン、グアニンおよびチミンの各塩基を示す。また、アミノ酸およびアミノ酸残基は、IUPACおよびIUBの定める1文字表記または3文字表記を使用する。また、転写産物とは、ゲノムが転写および翻訳される結果として生じる産物であり、たとえば、mRNA、cDNAおよびタンパク質(ポリペプチド)などが挙げられる。
【0068】
本発明において用いられるポリヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチド(例えば、本発明において使用されるTL1AポリペプチドをコードするcDNA全長からなるポリヌクレオチド)の切断フラグメントとして生成されても、化合合成されてもよい。例えば、制限エンドヌクレアーゼ切断または超音波による剪断は、種々のサイズのフラグメントを作製するために容易に使用され得る。あるいは、このようなフラグメントは、合成的に作製され得る。適切なフラグメント(オリゴヌクレオチド)が、Applied Biosystems Incorporated(ABI,850 Lincoln Center Dr.,Foster City,CA 94404)392型シンセサイザーなどによって合成される。
【0069】
本発明において用いられるポリヌクレオチドを取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド(cDNA)のうち、5’側および3’側の配列(またはその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA(またはcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明において用いられるポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。
【0070】
また本発明において用いられるポリヌクレオチドは、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
【0071】
つまり、本発明の目的は、TL1Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリヌクレオチドの作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得されるポリヌクレオチドもまた本発明の範囲に属することに留意しなければならない。
【0072】
〔2〕DR3タンパク質発現細胞を検出するための検出キットおよび検出方法
本発明は、DR3タンパク質発現細胞を検出するための検出キットを提供する。一実施形態において、本発明に係る検出キットは、(1−a)で詳述したポリペプチドを備えることが好ましい。さらなる実施形態において、本発明に係る検出キットは、アポトーシスの誘導を検出するための試薬をさらに備えることが好ましい。
【0073】
「アポトーシスの誘導を検出するための試薬」としては、公知の市販の種々の試薬を用いればよく、好ましい試薬としては、例えば、抗Caspase3抗体および抗poly(ADP−ribose) polymerase(PARP)抗体が挙げられる。また、「アポトーシスの誘導を検出するための試薬」として市販されている試薬だけでなく、公知の種々のアポトーシス検出方法に用いられる試薬もまた、「アポトーシスの誘導を検出するための試薬」に包含されることを、当業者は容易に理解する。アポトーシス検出方法としては、上記試薬(抗体)を用いたウエスタンブロット法、またははterminal deoxynucleotidyl transferase−mediated UTP nick end labeling(TUNEL)法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0074】
本発明はまた、DR3タンパク質発現細胞を検出するための検出方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る検出方法は、(1−a)で詳述したポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含することが好ましい。さらなる実施形態において、本発明に係る検出方法は、上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程をさらに包含することが好ましい。
【0075】
本発明に係る検出キットおよび検出方法を使用することにより、DR3タンパク質発現細胞の検出を高精度に行うことができる。
【0076】
〔3〕診断キットおよび診断方法
感染因子、または、代謝産物、核酸、およびタンパク質を含む病気の指標となる分子の検出および測定は、医学的疾患の診断および治療、ならびに研究における基本的な要素である。現在、多くの方法論が検出に使用されている。
【0077】
本発明は、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キットを提供する。本明細書中で使用される場合、関節リウマチの「発症可能性」とは、関節リウマチ(RA)が発生する危険度を示す指標をいい、発症可能性が高ければそれだけRAになりやすく、逆に発症可能性が低ければRAになり難いということを示す。
【0078】
一実施形態において、本発明に係る診断キットは、本発明に用いられるポリペプチドを備えることが好ましい。また、本発明に係る診断キットは、他の試薬を併せて備えてもよい。好ましい実施形態において、本発明に係る診断キットは、アポトーシスの誘導を検出するための試薬を備える。
【0079】
本発明はまた、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る診断キットは、本発明に用いられるポリペプチドを用いることが好ましい。また、本発明に係る診断方法は、他の工程を包含してもよい。好ましい実施形態において、本発明に係る診断方法は、上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程、および、上記インキュベート前後での上記細胞のアポトーシスの程度を比較する工程をさらに包含する。
【0080】
本発明に係る診断(判定)キットおよび診断(判定)方法を使用することにより、RAの診断(発症またはその発症可能性の判定)を高精度に行うことができる。
【0081】
以下、実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明するが、もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0082】
DR3の特異的リガンドとして同定されたTL1AはTNFスーパーファミリーに属し、DR3およびdecoyレセプター(TR6/DcR3)に対して作用し、DR3発現細胞においてアポトーシスおよびNF−κB活性化を誘導する。ヒトTL1A(hTL1A)は、マウスTL1A(mTL1A)と63.7%の相同性を有し、マウスリンパ球に作用することが報告されている(非特許文献2を参照のこと)。
【0083】
本発明者らは、II型コラーゲン誘発関節炎を発症させたマウスにhTL1Aを投与することによって、TL1Aが、アポトーシスを誘導して炎症を抑制するのか、または、NF−κBを活性化して炎症反応を高めるのかを検討した。
【0084】
なお、本実施例において、他で詳述しない限り、Molecular Cloning(Sambrookら、Cold Spring Harbour Laboratory Press,1989)に記載の方法に従った。
【0085】
(実施例1:hTL1A組換えタンパク質発現用プラスミドの作製)
全長hTL1A(hTL1A−full)は753bpのポリヌクレオチドからなり、251aaからなるポリペプチドをコードする。hTL1Aのアミノ酸36〜60位は膜結合部であり、可溶化型TL1Aとして同定されるsoluble hTL1A(hTL1A−sol)は、hTL1Aのアミノ酸72〜251位によってコードされていることが知られている(図1を参照のこと)(非特許文献2を参照のこと)。
【0086】
hTL1Aは主に血管内皮細胞に強く発現しているので、Rneasy Mini Kit(Quiagen)を製造業者の推奨する方法に従って使用して、ヒト臍静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cells:HUVEC)から総RNAを抽出した。
【0087】
上記RNAを逆転写して合成したcDNAをテンプレートとして、順方向プライマーF75(CTCTGCCCAGGAGTCAGAG:配列番号3)と逆方向プライマーR879(TCTCCTCCTATAGTAAGAAGGCTCC:配列番号4)またはR922(TTAGGAACTCGGTGGCAGAG:配列番号5)とを用いて、以下のようにPCRを行った:50μlの反応混合液(1μl cDNA、1×Takara LA PCR Buffer II、50mM KCl、25mM MgCl2、2.5mM dNTP、5UのLA Taq Gold (Takara)、および1μMの各オリゴヌクレオチドプライマーを含む)を、95℃で10分間加熱した後、94℃で30秒間、54℃で30秒間および72℃で2分間のサイクルを45サイクル行い、増幅産物を72℃で10分間によって完全に伸長させた。増幅産物をアガロースゲルにて電気泳動した(図2)。図2に示すように、F75とR879とを用いたPCRによって804bpのバンドを、F75とR922とを用いたPCRによって847bpのバンドを得た。
【0088】
hTL1A−fullを含むと考えられる847bpまたは804bpのバンドをゲルから抽出して、TOPO Cloning Kit(Invitrogen)を用いて、キットのクローニングベクターに連結した。得られたプラスミドを用いてTop−10(Invitrogen)を形質転換した後、アンピシリンを含有するLBプレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。
【0089】
上記プレートからピックアップしたコロニーを、アンピシリンを含有するLB培地(1.5ml)中にて37℃で一晩(約16時間)培養し、遠心分離によって収集した菌からプラスミドを回収した。このプラスミドをEcoRIを用いて消化して、所望長のインサートを有するプラスミドについて配列決定を行った。
【0090】
hTL1A−fullを含むことを確認したプラスミドをテンプレートにして、順方向プライマーF75+NdeI(CATATGCTCTGCCCAGGAGTCAGAG:配列番号6)と逆方向プライマーR877+BamHI(GGATCCTCCTATAGTAAGAAGGCTCC:配列番号7)とを用いてPCRを行って、soluble TL1Aを増幅した(図3)。順方向プライマーF75+NdeIはNdeI部位を、逆方向プライマーR877+BamHIはBamHI部位を有する。得られたフラグメントを、pET−19bベクター(Novagen)のNdeI/BamHI部位に挿入した。得られたプラスミドを用いてTop−10(Invitrogen)を形質転換した後、上述したように所望長のインサートを有するプラスミドについて配列決定を行った。
【0091】
soluble TL1Aを含むことを確認したプラスミドを用いてBL21Star(Invitrogen)を形質転換した後、アンピシリンを含有するLBプレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。次いで、アンピシリンを含有するLB培地(2ml)中にて37℃で培養した後、培養液100μlにグリセロール900μlを加えて−80℃で保存した(グリセロールストック)。
【0092】
(実施例2:E.coliにおけるhTL1A組換えタンパク質の発現に用いるIPTG濃度の検討)
実施例1で得た少量のグリセロールストックをアンピシリンを含有するLB培地(5ml)に添加して、シェーカー(200rpm)中にて37℃で一晩インキュベートした(一次培養液)。一次培養液(250μl)をアンピシリンを含有するLB培地(5ml)に添加して、OD600が0.3〜0.4になるまでシェーカー(200rpm)中にて37℃でインキュベートした。続いて、最終濃度が0.5mM、2mM、または5mMになるようにIPTGを培養液中に添加し、OD600が約1.0になるまでシェーカー(200rpm)中にて37℃でインキュベートした後、培養液を3000rpmにて4℃で15分間遠心分離して菌体を収集した。
【0093】
収集した菌体をPBSを用いて2〜3回洗浄した後、ペレットを1%Triton−Xを含有するPBS(−)中に懸濁した。この懸濁液を、氷上にて30秒間超音波処理した後、33000rpmにて4℃で1時間遠心分離した。上清を回収し、ペレットを1%Triton−Xを含有するPBS(−)中に懸濁した。上清サンプルおよびペレットサンプルをSDS−PAGEによって分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。この膜を用いて、抗TL1Aマウスモノクローナル抗体(monoclonal Anti−human VEGI/TNFSF15 Antibody (R&D SYSTEMS))によるイムノブロットを行った(図4)。
【0094】
図4に示すように、soluble hTL1A組換えタンパク質(rhTL1A−sol)の発現を確認した。rhTL1A−solの発現は、IPTGによって有意に誘導された。最終濃度0.5mMまたは2mMのIPTGを添加した場合、これらの間でrhTL1A−sol発現量にほとんど差がなかったが、最終濃度5mMのIPTGを添加した場合、発現量は増加した。しかし、大量培養を行なった場合は、いずれの濃度を用いてもrhTL1A−sol発現量にほとんど差がなかった(結果は示さず)。従って、以下の実験において、最終濃度0.5mMのIPTG濃度を用いた。
【0095】
(実施例3:hTL1A組換えタンパク質の精製条件の検討)
実施例1で得た少量のグリセロールストックをアンピシリンを含有するLB培地(150ml)に添加して、シェーカー(200rpm)中にて37℃で一晩インキュベートした(一次培養液)。一次培養液(25ml)をアンピシリンを含有するLB培地(500ml)に添加して、OD600が0.3〜0.4になるまでシェーカー(200rpm)中にて37℃でインキュベートした。続いて、最終濃度が0.5mMになるようにIPTGを培養液中に添加し、OD600が約1.0になるまでシェーカー(200rpm)中にて37℃でインキュベートした後(2〜3時間)、培養液を3000rpmにて4℃で15分間遠心分離して菌体を収集した。
【0096】
収集した菌体をPBSを用いて2〜3回洗浄した後、ペレットを25mlの緩衝液A(2mMイミダゾール、1% Triton−X100、プロテアーゼインヒビターを含むPBS(−))中に懸濁した。この懸濁液を、氷上にて30秒間×6回超音波処理した後、33000rpmにて4℃で1時間遠心分離して上清を回収した。
【0097】
この上清から、HiTrap Chelating HP(Amersham Biosciences)カラムを用いて、hTL1A組換えタンパク質(rhTL1A−sol)を精製した。
【0098】
カラムを、超純水(5ml)、0.1M NiSO4(0.5ml)、超純水(5ml)の順番で洗浄した後、緩衝液A(10ml)を用いて平衡化した。上記上清サンプルをカラムにアプライした後、カラムを緩衝液A(10ml)を用いて洗浄し、緩衝液B(50mMまたは500mMのイミダゾールを含有するPBS(−)(pH7.4))を用いて溶出し、溶出物を0.5mlずつ分画した。各画分をSDS−PAGEに供した後、ゲルを銀染色した(図5)。
【0099】
図5に示すように、緩衝液B中に含まれるイミダゾールが50mMの場合、rhTL1A−sol以外のタンパク質も溶出されたが、rhTL1A−solタンパク質は溶出されなかった。緩衝液B中に含まれるイミダゾールが100mMの場合、rhTL1A−sol以外のタンパク質とともにrhTL1A−solタンパク質が溶出された。
【0100】
そこで、上清サンプルをカラムにアプライした後、カラムを50mMイミダゾールを含む緩衝液(10ml)を用いて1mlずつ分画しながら溶出した後、500mMのイミダゾールを含む緩衝液(10ml)を用いて0.5mlずつ分画しながら溶出した。各画分をSDS−PAGEに供した後、ゲルを銀染色した(図6)。
【0101】
図6に示すように、50mMイミダゾールを含む緩衝液を用いて十分溶出を行った後に、500mMイミダゾールを含む緩衝液を用いてrhTL1A−solタンパク質を溶出すると、目的のrhTL1A−solタンパク質を高純度で精製することができることがわかった。
【0102】
続いて、上記画分7〜13をあわせた後、1×PBS(750ml)中で透析して、開始精製画分からイミダゾールを除去した。透析液を、一晩透析した後、その2時間後に交換し、上記画分をさらに2時間透析した。透析後のサンプルをSDS−PAGEに供した後、ゲルをCBB染色した(図7)。
【0103】
BSAの濃度を指標にすると、サンプル中のタンパク質濃度は50μg/mlであった。すなわち、3lの培養液から175μgのrhTL1A−solタンパク質を得た。
【0104】
(実施例4:hTL1A組換えタンパク質によるアポトーシス誘導)
浮遊細胞であるTF−1細胞株(human myelo−erythroid CD34+ leukemia cell line)は、内因性のDR3を過剰発現している。また、TF−1細胞をタンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)で前処理した後にTL1Aで刺激すると、アポトーシスが誘導される(Migone,T.S.ら、Immunity,16:479−472(2002))。
【0105】
1.5mlの10%FCSを含有するRPMI培地中に懸濁したTF−1細胞を、1×106細胞/ウェルにて6ウェルプレートに分注した。CHXを各ウェルに添加した(最終濃度10μg/ml)。37℃で1時間インキュベートした後、TL1Aを各ウェルに添加した。TL1Aとして、0.25μg/ml、0.5μg/ml、または1μg/mlのrhTL1A−solタンパク質、あるいは300ng/mlのrhTL1A(R&D社)を用いた。
【0106】
TL1A添加後、細胞を37℃で一晩インキュベートした。遠心分離によって回収したTF−1細胞を、PBS(リン酸緩衝化緩衝液)で2〜3回洗浄した後、1%Triton−Xを含有するPBSを用いて融解した。融解液を遠心分離して上清をサンプルとして回収した。各サンプルのタンパク質量を測定した後、各サンプル中のタンパク質をSDS−PAGEによって分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。この膜を用いて、抗カスパーゼ8抗体または抗PARP抗体によるイムノブロットを行った(図8)。
【0107】
図8に示すように、TL1Aのポジティブコントロールとして用いたrhTL1A(R&D社)と同様に、rhTL1A−solタンパク質によってアポトーシスのシグナル伝達が生じることがわかった。
【0108】
(実施例5:精製hTL1A組換えタンパク質サンプル中のエンドトキシンの測定)
エンドトキシンの測定試薬として、エンドスペシーLS−60セット、トキシカラーDIA−MPセット、エンドトキシン標準品ES−2(生化学工業株式会社)を、製造業者の指示書に従って使用して、rhTL1A−solタンパク質サンプル中のエンドトキシンを測定した。
【0109】
【表1】
【0110】
rhTL1A(R&D社)中のエンドトキシンと比較した結果、同レベルであることがわかった。
【0111】
(実施例6:コラーゲン誘発性関節炎(CIA)の誘発、およびCIAに対するrhTL1Aの効果)
ヒトTL1A(hTL1A)はマウスTL1A(mTL1A)とアミノ酸レベルで63.7%の相同性を有している。ヒトTL1Aをマウスに静脈内投与すると、移植片対宿主反応(GVHR:graft−versus−host−response)を増強する。またGVHRを生じたマウスの脾臓細胞を培養すると、投与していない対象群と比較して、細胞増殖、IFN−γ、GMCSFの産生増加がみられる。(非特許文献2を参照のこと)。
【0112】
コラーゲン誘発性関節炎(CIA)を発症させたマウスを作製し、当該マウスにrhTL1A−solタンパク質を投与して、CIAに対するrhTL1A−solタンパク質の効果を調べた。
【0113】
0.3%calf TypeII collagenと0.1M AcOHとを3:2の割合で混合して0.2%コラーゲン液を得た。このコラーゲン液とフロイント完全アジュバントとを1:1で氷上にて混和して、抗原液を得た。
【0114】
6週齢DBA/1J 雌(日本チャールズ・リバー)を購入し、7週齢で実験に供した。ウサギの背部〜尾部にわたって上記抗原液を200μlずつ4箇所(200μg TypeII collagen/匹)投与した(一次感作)。一次感作の3週間後に、同様に二次感作を行うことによって、ウサギにCIAを誘発させた。二次感作の3日後から3日毎にPBSまたはrhTL1A−solタンパク質を腹腔内投与して、四肢の関節炎の評価を、二次感作を行った日から連日行なった(図9)。PBSまたはrhTL1A−solタンパク質の投与終了2日後に屠殺し、四肢を切断した後にソフテックスを用いてX線撮影を行って、関節破壊を評価した(図10)。X線画像の評価を富山化学に依頼した。
【0115】
関節炎の症状およびX線画像の評価を以下の基準に基づいて行った。
関節炎症状評価(関節炎スコア(四肢で最高12点))
0:変化なし
1:1,2指関節の腫脹もしくは手根部・足根部関節のみの軽い腫脹
2:3指以上の関節に腫脹、または、手根部・足根部の明らかな腫脹
3:前肢又は後肢全体にわたって明らかな腫脹
X線像評価法 (四肢で最高105点)
・骨粗鬆スコア(四肢で最高21点)
0:変化なし
0.5:関節および関節近傍の骨粗鬆像
・骨びらんスコア(四肢で最高84点)
0:変化なし
1:関節および関節近傍の部分的な骨破壊
2:関節および関節近傍の全体的な骨破壊。
【0116】
図10は、CIA誘発マウスにおける関節腫脹スコアの経時的変化を示す。図11は、一次感作の48日後のCIA誘発マウスにおける骨破壊スコアを示す。
【0117】
一次感作の48日後の関節炎スコア(最高12点)は、PBS投与群が9.6±0.9であるのに対し、TL1A投与群は5.6±1.6であり、TL1A投与マウスにおいて関節炎の抑制が観察された(p<0.05)(図10)。一次感作の48日後の関節破壊スコア(最高105点)は、PBS投与群が32.1±10.4であるのに対し、TL1A投与群は13.6±7.6であり、TL1A投与マウスにおいて関節破壊の抑制が観察された(p<0.05)(図11)。また、個々のマウスにおいて、関節炎の程度と関節破壊の程度とはほぼ一致していた(図12)。
【0118】
以上のように、CIAマウスにおいて、DR3特異的リガンドであるTL1Aを投与することによって、関節炎が抑制された。このことは、DR3がRA関節炎の発症に重要な役割を果たすこと、および、TL1AがDR3を介してRAの治療薬または予防薬になり得ることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0119】
DR3がRA関節炎の発症に重要な役割を果たすこと、および、TL1AがDR3を介してRAの治療薬または予防薬になり得ることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、全長hTL1A(hTL1A−full)ポリペプチド、および可溶化型TL1A(soluble hTL1A(hTL1A−sol))ポリペプチドの模式図を示す。
【図2】図2は、ヒト臍静脈内皮細胞からRT−PCRを行って得たフラグメントを示すアガロースゲル電気泳動の写真である。
【図3】図3は、hTL1A−fullをテンプレートにしてPCR増幅して得た可溶化型TL1Aを示すアガロースゲル電気泳動の写真である。
【図4】図4は、大腸菌における可溶化型TL1Aポリペプチドの発現を示すイムノブロットの結果を示す写真である。
【図5】図5は、キレーティングカラムを用いる精製における、大腸菌において発現させた可溶化型TL1Aポリペプチドの溶出画分をSDS−PAGEに供した後に銀染色したゲルを示す図である。
【図6】図6は、キレーティングカラムを用いる精製における、大腸菌において発現させた可溶化型TL1Aポリペプチドの溶出画分をSDS−PAGEに供した後に銀染色したゲルを示す図である。
【図7】図7は、キレーティングカラムを用いる精製における、大腸菌において発現させた可溶化型TL1Aポリペプチドの溶出画分をSDS−PAGEに供した後にCBB染色したゲルを示す図である。
【図8】図8は、CHX処理後に可溶化型TL1Aポリペプチドで刺激したTF−1細胞におけるカスパーゼ8またはPARPの活性化を調べたイムノブロットの結果を示す写真である。
【図9】図9は、マウスにおいてコラーゲン誘発性関節炎(CIA)を発症させるプロトコルを示す図である。
【図10】図10は、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)を発症させたマウスにおける関節腫脹の経時的スコアを示すグラフである。
【図11】図11は、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)を発症させたマウスにおける一次感作の48日後の骨破壊スコアを示すグラフである。
【図12】図12は、TL1A投与マウスまたは未投与(PBS投与(対照群))マウスにおける関節炎および関節破壊の程度を示すX線写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)または(B)のポリペプチドを含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【請求項2】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
以下の(A)または(B)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みかつ(A)または(B)のポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【請求項5】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドを含みかつ(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドを含みかつ(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、関節炎を治療または予防するための方法。
【請求項8】
以下の(A)または(B)のポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【請求項9】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
上記被験体サンプルが、末梢血単核細胞、末梢血白血球または滑膜生検組織であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のDR3タンパク質発現細胞を検出する方法。
【請求項12】
上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程をさらに包含する、請求項8〜11のいずれか1項に記載のDR3タンパク質発現細胞を検出する方法。
【請求項13】
以下の(A)または(B)のポリペプチドを備える、DR3タンパク質発現細胞を検出するためのキット:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【請求項14】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを備える、DR3タンパク質発現細胞を検出するためのキット:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項15】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを備える、DR3タンパク質発現細胞を検出するためのキット:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
アポトーシスの誘導を検出するための試薬をさらに備える、請求項13〜15のいずれか1項に記載のDR3タンパク質発現細胞を検出するためのキット。
【請求項17】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリペプチド:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド、および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬。
【請求項18】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬。
【請求項19】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬。
【請求項20】
以下の(I)〜(III)の工程を包含する、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断方法:
(I)以下の(A)または(B)のポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド;
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞において生じているアポトーシスの程度を比較する工程。
【請求項21】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞において生じているアポトーシスの程度を比較する工程。
【請求項22】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞において生じているアポトーシスの程度を比較する工程。
【請求項1】
以下の(A)または(B)のポリペプチドを含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【請求項2】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
以下の(A)または(B)のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みかつ(A)または(B)のポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【請求項5】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドを含みかつ(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドを含みかつ(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを発現する細胞を含むことを特徴とする関節炎を治療または予防するための薬学的組成物:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、関節炎を治療または予防するための方法。
【請求項8】
以下の(A)または(B)のポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【請求項9】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程を包含する、DR3タンパク質発現細胞を検出する方法:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
上記被験体サンプルが、末梢血単核細胞、末梢血白血球または滑膜生検組織であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のDR3タンパク質発現細胞を検出する方法。
【請求項12】
上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程をさらに包含する、請求項8〜11のいずれか1項に記載のDR3タンパク質発現細胞を検出する方法。
【請求項13】
以下の(A)または(B)のポリペプチドを備える、DR3タンパク質発現細胞を検出するためのキット:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド。
【請求項14】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを備える、DR3タンパク質発現細胞を検出するためのキット:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項15】
以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを備える、DR3タンパク質発現細胞を検出するためのキット:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
アポトーシスの誘導を検出するための試薬をさらに備える、請求項13〜15のいずれか1項に記載のDR3タンパク質発現細胞を検出するためのキット。
【請求項17】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリペプチド:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド、および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬。
【請求項18】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬。
【請求項19】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(II)アポトーシスの誘導を検出するための試薬。
【請求項20】
以下の(I)〜(III)の工程を包含する、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断方法:
(I)以下の(A)または(B)のポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位からなるポリペプチド、または
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列の72〜251位において1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されているポリペプチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチド;
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞において生じているアポトーシスの程度を比較する工程。
【請求項21】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位において1もしくは数個の塩基が置換、欠失もしくは付加されているポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞において生じているアポトーシスの程度を比較する工程。
【請求項22】
以下の(I)および(II)を備える、関節リウマチの発症またはその発症可能性を判定するための診断キット:
(I)以下の(A)または(B)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを、被験体サンプルから単離した細胞とインキュベートする工程:
(A)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチド、または
(B)配列番号2に示される塩基配列の117〜872位からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、DR3依存的アポトーシスを阻害するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(II)上記ポリペプチドとインキュベートした細胞におけるアポトーシスの誘導を検出する工程;および
(III)上記インキュベート前後での上記細胞において生じているアポトーシスの程度を比較する工程。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−111590(P2006−111590A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302118(P2004−302118)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年9月 ウィリーインターサイエンス発行の「関節炎とリウマチ学 第50巻 9号(増刊)」に発表
【出願人】(504156706)株式会社膠原病研究所 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年9月 ウィリーインターサイエンス発行の「関節炎とリウマチ学 第50巻 9号(増刊)」に発表
【出願人】(504156706)株式会社膠原病研究所 (13)
【Fターム(参考)】
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