説明

関節炎及び関連疾病を評価及び治療するためのマトリックスマーカーモデル及び方法

本発明は、マトリックスに提示されたRAの負の転帰と相関することが知られている2〜数個の特徴に基づいて、RAに対する治療の有効性を決定する方法、並びに、放射線学的進行と有意に相関する2〜数個の共変量を含むマトリックス表の作成に基づいて、RAに対する治療の有効性を決定する方法に関し、ここでは、マトリックスが、この特徴のプロファイル又は共変量を、それぞれの選択的潜在的治療に基づく負の転帰の確率(リスク)に関連づけ、この選択的潜在的治療は、例えば臨床反応の他の肉眼的測定値が顕在化する前に被験者に対して行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックス中に提示されたRAの負の転帰と相関することが知られている2〜数個の特徴に基づいて、RAに対する治療の有効性を決定する方法に関する。本発明はまた、放射線学的進行と有意に相関する2〜数個の共変量を含むマトリックス表の作成に基づいてRAに対する治療の有効性を決定する方法に関する。マトリックスは、この特徴又は共変量のプロファイルをそれぞれの選択的潜在的治療下における負の転帰の確率(リスク)に関連づける。これは、例えば、臨床反応の他の肉眼的測定値が顕在化する前に、被験者に対して行うことができる。
【背景技術】
【0002】
医師は、個々の患者に向かい合い、日々個人に合わせた意思決定を行い、疾患の転帰が悪くなる危険性を抑えるために治療を行う。治療の効果は、その潜在的な有害性及び費用を比較検討しなければならず、治療用の医療設備が増加するにつれて、適当な患者に適当な治療を選択することが課題となる。疾患の挙動は患者毎に異なるため、「適切な治療」もまた各患者毎に異なる。理想的には、医師は、ある患者が治療を必要としているかどうか、及び特定の治療が特定の患者で有効であるかどうかを、事前に知りたい。実際には、これは、疾患の転帰が悪くなる確率(又はリスク)及びある薬物によってある患者をうまく治療できる確率を知るということに帰着する。
【0003】
ほぼ間違いなく、医学分野で最も広く用いられているリスクモデルは、心臓学で用いられているリスクチャートであり、これは性別、年齢、収縮期血圧、総コレステロール及び喫煙状態を組み合わせて、心臓血管疾患に起因する10年死亡リスクを予測するものである(www.escardio.org/Prevention)。心臓血管疾患の別々の危険因子をモデルに組み込むことにより、それは個々の患者の転帰が悪くなる(死の)危険性を推定するための理想のツールとなる。更に、患者の教育にとって理想的なのは、このモデルが単純であることであり、それは一次治療から三次治療で広く用いられる。しかしながら、モデルは、ユーザーに、リスクの予防における治療の差別的効果について情報を提供しはしない。
【0004】
免疫介在性炎症性疾病(IMID)は、進行性の不可逆的損傷を特徴とする。疾患の進行は、それに罹患している様々な患者で異なり、様々な治療により異なる程度にこの損傷を予防することができる。それ故、このようなIMIDに罹患している不均質な患者集団に対する転帰を予測できるモデルは、大きな価値がある。この明細書の残りの部分では、特定の関節リウマチにおけるある1種のIMID疾患及びこの疾患の放射線学的進行における転帰のある1つの特定の測定値に焦点を当てる。
【0005】
関節リウマチ(RA)は、軟骨の破壊及び軟骨下骨のびらんを導く関節の炎症を特徴とする。最近、RA集団における放射線学的関節損傷及び機能的傷害の進行の遅れが見られ、これは疾患修飾性抗リウマチ薬(disease modifying anti-rheumatic drug)をより有効に用いることにより大部分は説明されるようである。DMARDのより有効な使用は、より広範囲に、より早期に使用することからなる(Finkh et al. Ann Rheum Dis、2006年;65巻:1192〜1197頁)。最近の、DMARDの早期開始と晩期開始を比較した12の研究のメタ解析では、DMARDをより早期に開始したことに起因する進行速度の低下は、晩期に開始した患者と比べると著しく異なっていた。このような薬物を早期に開始することの効果は、全ての治療の効果の大きさの半分に相当し得る。著者らは、更に、より侵攻性である疾患の患者が、より早期の治療によって、より大きな利益を得たことを観察した(Finkh et al. Arthritis Rheum、2006年;56巻6号:864〜872頁)。
【0006】
より強力な治療を早期に導入することは、臨床及び放射線学的転帰を更に改善させる。未処置の早期RA集団における、3種のDMARD及び高用量コルチコステロイド(CS)とDMARDのスルファサラジン(SSZ)とを比較した研究(COBRA治験)の1年後の結果は、併用療法が、疾患活性及び放射線学的進行の抑制に対してより有効であることを示した(Boers et al. Lancet、1997年;350巻:309〜318頁)。この研究の5年追跡調査報告は、強力な併用療法の6ヶ月周期後に施される抗リウマチ療法に依存して、放射線学的進行の速度の抑制が持続していたことを示した(Landewe Arthritis Rheum、2002年;46巻2号:309〜318頁)。早期治療と晩期治療、及び集中治療と単独療法を比較したとき、放射線学的進行速度の発散傾斜(diverging slope)は、より早期の集中介入が疾患の経過を変化させ得ることを示す(Finkh et al. Arthritis Rheum、2006年;56巻6号:864〜872頁、Landewe Arthritis Rheum、2002年;46巻2号:309〜318頁)。
【0007】
2003年に刊行された無作為化プラシーボ対照試験の系統的レビューでは、RAの放射線学的進行の予防における薬剤介入の有効性及び順位を調査した。合計3907人のRA患者による25の研究では、インフリキシマブ(IFX)、シクロスポリン、SSZ、レフルノミド、メトトレキサート(MTX)、非経口金、CS、オーラノフィン及びインターロイキン1受容体拮抗薬は、びらんスコアの変化の観点で、プラシーボより統計的に良好であった。全ての剤は、IFXを除いて統計的に等価であり、IFXは終わりの5種の剤より優れていた(Jones Rheumatology、2003年;42巻1号:6〜13頁)。IFXの有効性は、放射線学的進行の抑制の観点では、MTXによる治療に失敗した罹病期間の長い(established)RA患者で最初に確立され(Lipsky et al. N Engl J Med、2000年;343巻:1594〜1602頁)、後に、治療にかかった時間がDMARD及びIFXで治療された患者群と同じであった、DMARD未処置の早期RA集団における大規模無作為化実薬対照研究で確認された(StClair et al. Arthritis Rheum、2004年;50巻:3432〜3443頁)。同様の結果が、腫瘍壊死因子アルファを中和する他の生物剤(抗TNF)でも報告されている(Genovese et al. Arthritis Rheum.2002年6月;46巻6号:1443〜50頁、Breedveld 2006年;54巻1号:26〜37頁)。
【0008】
これらの研究から得られる確率プロットは、MTX単独療法と比較したとき、生物学的治療の放射線学的進行に対する差異化された治療効果に関する詳細な洞察を提供する。要約記述統計は、全体として治療群を比較したとき、統計的に有意な結果を示すが、これらのプロットは、放射線学的損傷の進行が個々の患者の一部のみの問題であることを明らかに示している(van der Heijde Arthritis Rheum.2005年1月;52巻1号:49〜60号)。不可逆的損傷を導くいずれかの疾患と同様に、放射線学的追跡の問題は、一旦損傷が見られると、治療的介入を行うには既に遅すぎることを意味することである。特に、放射線学的悪化が急速に生じているRA患者では、極めて有効な治療の開始が遅れることは有害である場合がある。放射線学的進行の予測は重要であると思われ、臨床医がそれを予防するのを可能にするべきである。生物学的研究のサブ解析は、関節損傷の進行を示すであろう患者の同定のためのベースライン特徴の値を示している(Breedveld et al.2004年;63巻:149〜55頁、Smolen et al. Arthritis Rheum、2005年;52巻:1020〜30頁、Smolen et al. Arthritis Rheum、2006年;54巻3号:702〜710頁、Landewe Arthritis Rheum.2002年;46巻2号:347〜56頁、Landewe Arthritis Rheum、2006年;54巻10号:3119〜3125頁)。これらの研究とは別に、多くの臨床報告が、放射線学的進行の予測における、広範囲の臨床的、生物学的及び遺伝学的マーカーの有用性について記載している。現時点では、日々の臨床行為における(速やかな)X線進行を予測するためのモデルの使用は制限されている。疾患の転帰のより優れた予測モデルが、(早期)RAにおいてより良好な治療法の決定を行うために必要とされている(de Vries-Bouwstra J et al.2006年;33巻9号:1747〜53頁)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、関節リウマチ(RA)の診断及び治療方法の開発において有用なマーカーを同定、特徴付け、及びモデル化する必要性が存在する。
【0010】
我々は、RAの転帰の予測を助け、それを、用いることができる治療レジメンと関連づけるモデルを発明した。被験者の、少なくとも1つの関節リウマチ関連疾患の治療の予後又は診断評価するための方法であって、
a)それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの放射線学的進行と有意に相関する2つ又はそれ以上の共変量のセットを含むマトリックス表を作成する工程と、
b)この選択的治療と、対応する臨床転帰の負の確率との統計的比較を実施する工程と、
c)最低の負の臨床転帰確率に基づいて1つ又はそれ以上のこの選択的治療を選択する工程と、を含む方法を提供する。モデルは、RAにおいて負の転帰と相関することが知られている多数の特徴を組み合わせるマトリックス表からなる。マトリックス表は、この特徴のプロファイルを、それぞれの治療可能性下での悪い転帰の確率(リスク)と関連づける。モデルの用途として、我々は、MTX単独療法又はMTX+TNF拮抗薬のいずれかで治療された関節リウマチの急速な放射線学的進行のリスクの予測のためのこのモデルの使用について分析した。
【0011】
モデルのマトリックスは、容易に読み取り可能な方式でいくつかの因子を組み合わせ、医師が個々の患者を治療するために選択できる治療レジメンに対する転帰を予測する。モデルは、治療ガイダンス及び患者の教育のためのツールである。
【0012】
本発明は、したがって、RAにおいて負の転帰と相関することが知られている2〜数個の特徴を同定及び使用することにより、RA及び/若しくは関連疾患若しくは疾病を、診断並びに/又は治療し、負の転帰の確率を最低限に抑える治療を決定する方法に関する。特定の実施形態では、本発明は、マトリックス表中に提示されたRAにおいて負の転帰と相関することが知られている2〜数個の特徴に基づいてRAに対する治療の有効性を決定する方法を含む。マトリックス表は、この特徴のプロファイルを、それぞれの治療可能性下での悪い転帰の確率(リスク)に関連づける。これは、例えば、臨床反応の他の肉眼的測定値が顕在化する前に、被験者に対して行うことができる。1つの実施形態での、RAにおいて負の転帰と相関することが知られている2〜数個の特徴のマトリックスをモデル化する方法。
【0013】
1つの実施形態では、被験者の、少なくとも1つの関節リウマチ関連疾病の治療の予後又は診断評価のための方法であって、
(a)それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの放射線学的進行と有意に相関する2つ又はそれ以上の共変量のセットを作成する工程と、
(b)この選択的治療と、対応する臨床転帰の負の確率との統計的比較を実施する工程と、
(c)最低の負の臨床転帰の確率に基づいて1つ又はそれ以上のこの選択的治療を選択する工程と、を含む方法を提供する。
【0014】
別の実施形態では、RAに関連する特徴的なプロファイル及び治療プロファイルが、予後又は診断目的のためにマトリックスで提供され、方法は、
(a)それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの負の転帰と相関することが知られている2つ又はそれ以上の特徴のセットを作成する工程と、
(b)この選択的治療と、対応する臨床転帰の負の確率との統計的比較を実施する工程と、
(c)最低の負の臨床転帰の確率に基づいて1つ又はそれ以上のこの選択的治療を選択する工程と、を含む。
【0015】
このような方法には、被験者が関節リウマチに罹患している又は関節リウマチを発現する可能性を有し、患者が関節リウマチの治療を受ける前、受けている間又は受けた後に工程(a)〜(c)が実施されるものを挙げることができる。
【0016】
このような方法には、患者が関節リウマチの治療を受けている間及び治療の開始から約1〜30週間後に工程(a)〜(c)が実施されるものを挙げることができる。
【0017】
このような方法には、この共変量が、年齢、疼痛関節数、腫脹関節数、赤血球沈降速度(ESR)、リウマチ因子(RF)陽性、又は血清C反応性タンパク質(CRP)レベル、及び関節損傷のうち少なくとも1つから選択されるものを挙げることができる。
【0018】
このような方法には、治療が、抗リウマチ剤、TNF拮抗薬、筋弛緩剤、睡眠薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤及び麻酔薬のうち少なくとも1つから選択されるものを挙げることができる。
【0019】
このような方法には、この抗リウマチ剤が、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド又はスルファサラジン(sulfasalzine)から選択される少なくとも1つであるものを挙げることができる。
【0020】
このような方法には、このTNF拮抗薬が少なくとも1つのTNFの生物活性を阻害する小分子又は生物製剤から選択されるものを挙げることができる。
【0021】
このような方法には、このTNF拮抗薬生物製剤がTNF抗体又はTNF受容体融合タンパク質であるものを挙げることができる。
【0022】
このような方法には、このTNF拮抗薬生物製剤が、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト(enteracept)又はゴリムマブから選択されるものを挙げることができる。
【0023】
代替実施形態では、本発明は、このような疾患若しくは疾病を調節する候補剤及び/又は標的を、同定並びに使用することにより、RA及び/又は関連疾患若しくは疾病を診断するための、並びに、それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの負の転帰と相関することが知られている2つ又はそれ以上の特徴に基づいてRA及び/又は関連疾患若しくは疾病に対する治療の有効性を決定するためのキットを含む。
【0024】
1つの態様では、RA関連拮抗薬は、RA関連産物に特異的に結合する抗体である。このような抗体の具体的な利点は、抗体が、その作用を妨げる方法でRA関連産物に結合できる点である。本発明の方法は、したがって、ヒト又は非ヒト患者における、種々のRA関連疾病に付随する病状の治療的及び予防的処置に対して理想的に適した状態にする所望の中和特性を有する抗体を使用する。したがって、本発明は、ある量の中和RA関連産物抗体を患者に投与して、RA関連疾患又は状態を阻害することを含む、このような治療を必要とする患者のRA又は関連疾患若しくは状態を治療する方法を目的とする。
【0025】
別の態様では、本発明は、細胞内での活性又は発現が調節されるように、RA関連遺伝子パネルのメンバーの活性又は発現を調節(阻害又は増強)する剤(例えば、拮抗薬又は作用薬)と細胞を接触させることを含む、RA関連のメンバーの活性を調節する方法を提供する。好ましい実施形態では、剤は、RA関連遺伝子パネルに特異的に結合する抗体である。他の実施形態では、修飾因子はペプチド、ペプチド模倣薬又は他の小分子である。
【0026】
本発明はまた、RA関連遺伝子パネルの量又は活性を調節することにより、疾病を寛解させることができる、RA又は関連疾病に罹患している被験者を治療する方法を提供する。本発明はまた、RA関連産物の活性の修飾因子であるか、又はRA関連遺伝子パネルの発現の修飾因子である剤を被験者に投与することにより、RA関連産物又はそれをコードするポリヌクレオチドの1つの異常な活性を特徴とする疾病に罹患している被験者を治療する方法を提供する。
【0027】
1つの態様では、修飾因子はポリペプチド又は小分子化合物である。別の実施形態では、修飾因子はポリヌクレオチドである。特定の実施形態では、RA関連拮抗薬は、細胞によるRA関連の産生を防ぐことができるsiRNA分子、shRNA分子、アンチセンス分子、リボザイム、又はDNAザイムである。
【0028】
本発明は更に、本明細書に記載する任意の発明を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、マトリックスに提示されたRAの負の転帰に相関することが知られている2〜数個の特徴に基づいて、RAに対する治療の有効性を決定する方法に関する。本発明はまた、放射線学的進行と有意に相関する2〜数個の共変量を含むマトリックス表の作成に基づいて、RAに対する治療の有効性を決定する方法に関する。マトリックスは、この特徴又は共変量のプロファイルを、それぞれの選択的潜在的治療に基づく負の転帰の確率(リスク)に関連づける。これは、例えば、臨床反応の他の肉眼的測定値が顕在化する前に、被験者に対して行うことができる。
【0030】
被験者の、少なくとも1つの関節リウマチ関連疾病の治療の予後又は診断評価のための方法であって、
d)それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの放射線学的進行と有意に相関する2つ又はそれ以上の共変量のセットを含むマトリックス表を作成する工程と、
e)この選択的治療と、対応する臨床転帰の負の確率との統計的比較を実施する工程と、
f)最低の負の臨床転帰の確率に基づいて1つ又はそれ以上のこの選択的治療を選択する工程と、を含む方法を提供する。モデルは、RAにおいて負の転帰と相関することが知られている多数の特徴を組み合わせるマトリックス表からなる。マトリックス表は、この特徴のプロファイルを、それぞれの治療可能性下での悪い転帰の確率(リスク)と関連づける。モデルの用途として、我々は、MTX単独療法又はMTX+TNF拮抗薬のいずれかで治療された関節リウマチの急速な放射線学的進行のリスクの予測のための使用について分析した。
【0031】
モデルのマトリックスは、容易に読み取ることができる方式でいくつかの因子を組み合わせて、医師が個々の患者を治療するために選択できる治療レジメンに対する転帰を予測する。モデルは、治療ガイダンス及び患者の教育のためのツールである。
【0032】
本発明は、したがって、RAにおいて負の転帰と相関することが知られている2〜数個の特徴を同定及び使用することにより、RA及び/又は関連疾患若しくは疾病を診断並びに/あるいは治療し、負の転帰の確率を最低限に抑える治療を決定する方法に関する。特定の実施形態では、本発明は、マトリックス表中に提示されたRAにおいて負の転帰と相関することが知られている2〜数個の特徴に基づいて、RAに対する治療の有効性を決定する方法を含む。マトリックス表は、この特徴のプロファイルを、それぞれの治療可能性下での悪い転帰の確率(リスク)に関連づける。これは、例えば、臨床反応の他の肉眼的測定値が顕在化する前に、被験者に対して行うことができる。1つの実施形態での、RAにおいて負の転帰と相関することが知られている2〜数個の特徴のマトリックスをモデル化する方法。
【0033】
1つの実施形態では、被験者の、少なくとも1つの関節リウマチ関連疾病の治療の予後又は診断評価のための方法であって、
(a)それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの放射線学的進行と有意に相関する2つ又はそれ以上の共変量のセットを作成する工程と、
(b)この選択的治療と、対応する臨床転帰の負の確率との統計的比較を実施する工程と、
(c)最低の負の臨床転帰の確率に基づいて1つ又はそれ以上のこの選択的治療を選択する工程と、を含む方法を提供する。
【0034】
別の実施形態では、RAに関連する特徴的なプロファイル及び治療プロファイルが、予後又は診断目的のためにマトリックスに提供され、方法は、
(a)それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの負の転帰と相関することが知られている2つ又はそれ以上の特徴のセットを作成する工程と、
(b)この選択的治療と、対応する臨床転帰の負の確率との統計的比較を実施する工程と、
(c)最低の負の臨床転帰の確率に基づいて1つ又はそれ以上のこの選択的治療を選択する工程と、を含む。
【0035】
このような方法には、被験者が関節リウマチに罹患している又は関節リウマチを発現する可能性を有し、患者が関節リウマチの治療を受ける前、受けている間又は受けた後に工程(a)〜(c)が実施されるものを挙げることができる。
【0036】
このような方法には、患者が関節リウマチの治療を受けている間及び治療の開始から約1〜30週間後に工程(a)〜(c)が実施されるものを挙げることができる。
【0037】
このような方法には、この共変量が、年齢、疼痛関節数、腫脹関節数、赤血球沈降速度(ESR)、リウマチ因子(RF)陽性、又は血清C反応性タンパク質(CRP)レベル、及び関節損傷のうち少なくとも1つから選択されるものを挙げることができる。
【0038】
このような方法には、治療が、抗リウマチ剤、TNF拮抗薬、筋弛緩剤、睡眠薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤及び麻酔薬のうち少なくとも1つから選択されるものを挙げることができる。
【0039】
このような方法には、この抗リウマチ剤が、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド又はスルファサラジン(sulfasalzine)から選択される少なくとも1つであるものを挙げることができる。
【0040】
このような方法には、このTNF拮抗薬が、少なくとも1つのTNFの生物活性を阻害する小分子又は生物製剤から選択されるものを挙げることができる。
【0041】
このような方法には、このTNF拮抗薬生物製剤が、TNF抗体又はTNF受容体融合タンパク質であるものを挙げることができる。
【0042】
このような方法には、このTNF拮抗薬生物製剤が、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト(enteracept)又はゴリムマブから選択されるものを挙げることができる。
【0043】
代替実施形態では、本発明は、このような疾患又は疾病を調節する候補剤及び/又は標的を同定並びに使用することにより、RA及び/又は関連疾患若しくは疾病を診断するための、並びに、それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの負の転帰と相関することが知られている2つ又はそれ以上の特徴に基づいてRA及び/又は関連疾患若しくは疾病に対する治療の有効性を決定するためのキットを含む。
【0044】
本発明の別の実施形態は、RA関連の遺伝子の転写又は遺伝子産物の作用薬及び/又は拮抗薬、並びに、RA関連産物に対する抗体を含む、RA関連拮抗薬を用いて、RA又は関連疾病を治療する方法に関する。
【0045】
1つの態様では、RA関連拮抗薬は、RA関連産物に特異的に結合する抗体である。このような抗体の具体的な利点は、抗体が、その作用を妨げる方法でRA関連産物に結合できる点である。本発明の方法は、したがって、ヒト又は非ヒト患者における、種々のRA関連疾病に付随する病状の治療的及び予防的処置に対して理想的に適した状態にする所望の中和特性を有する抗体を使用する。したがって、本発明は、ある量の中和RA関連抗体を患者に投与して、RA関連疾患又は状態を阻害することを含む、このような治療を必要とする患者のRA又は関連疾患若しくは状態を治療する方法を目的とする。
【0046】
別の態様では、本発明は、細胞内での活性又は発現が調節されるように、RA関連遺伝子パネルのメンバーの活性又は発現を調節(阻害又は増強)する剤(例えば、拮抗薬又は作用薬)と細胞とを接触させることを含む、RA関連のメンバーの活性を調節する方法を提供する。好ましい実施形態では、剤は、RA関連遺伝子パネルに特異的に結合する抗体である。他の実施形態では、修飾因子はペプチド、ペプチド模倣薬又は他の小分子である。
【0047】
定義
以下の定義は、本明細書で発明を記載するために用いる種々の用語の意味及び範囲を説明及び定義するために記載される。
【0048】
ポリペプチドの「活性」、生物活性及び機能活性は、標準的な技術により、インビボ、インサイチュ又はインビトロで決定するとき、別のタンパク質又は分子との特異的相互作用に応答してRA関連の遺伝子により発揮される活性を指す。このような活性は、第2のタンパク質に関連する若しくはそれに対する酵素活性のような直接的活性、又は、タンパク質と第2のタンパク質との相互作用により介在される細胞プロセス、若しくは細胞内シグナル伝達若しくは凝固カスケードに見られるような一連の相互作用のような間接的活性であることができる。
【0049】
「抗体」には、H鎖若しくはL鎖の相補性決定領域(CDR)又はそのリガンド結合部、H鎖若しくはL鎖の可変領域、H鎖若しくはL鎖の定常領域、フレームワーク領域、又はその任意の部分、断片又は変異体の少なくとも1つなどであるが、これらに限定されない、免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む任意のポリペプチド又はペプチド含有分子が挙げられる。用語「抗体」は、更に、抗体、その消化断片、特定部分及び変異体を包含することを意図し、これには抗体模倣薬が挙げられ、あるいは抗体の構造及び/若しくは機能を模倣する抗体の部分若しくはその特定断片若しくは一部を含み、単鎖抗体及びその断片が挙げられる。例えば、Fab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化及び部分的還元による)及びF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシン又はプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元及び再集合による)、Fv又はscFv(例えば、分子生物学的技術による)断片、及び単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL)が挙げられるが、これらに限定されない抗体断片が、本発明に包含される(例えば、Colligan, et al., eds., Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc., NY(1994〜2007年);Colligan et al., Current Protocols in Polypeptide Science, John Wiley & Sons, NY(1997〜2007年)を参照のこと)。
【0050】
本明細書で使用するとき、語句「標識された生体分子」又は「検出可能な組成物で標識された」又は「検出可能な部分で標識された」は、以下で詳細に記載するように、検出可能な組成物、すなわち標識を含む、例えば核酸などの生体分子を指す。標識はまた、以下に記載するように、例えば「分子指標」のようなステムループ構造の形態の核酸などの核酸のような、別の生体分子であることもできる。これは、例えばニックトランスレーション、ランダムプライマー伸長法、変性したプライマーによる増幅などにより、標識された塩基(又は検出可能な標識に結合できる塩基)を核酸に組み込むことを含む。例えば、化学発光標識、放射標識、酵素標識などの任意の標識を用いることができる。標識は、例えば、視覚的、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、物理的、化学的及び/又は化学発光的検出などの任意の手段により検出可能である。本発明は、検出可能な標識を含む固定化核酸を含むアレイを用いることができる。
【0051】
用語「プロファイル」は、パターンを意味し、多数の特性の変化の規模及び方向に関する。プロファイルは、厳密に解釈してもよく、すなわち、特徴を示すプロファイル内の規模及び/若しくは数の変化が実質的に参照プロファイルに類似し、あるいは、特徴の全て若しくは部分集合の絶対的な一致ではなく傾向を必要とすることにより、それほど厳密に解釈しなくてもよい。
【0052】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」は、上記で詳細に論じたように、変異体の由来するポリペプチドに実質的に一致する構造及び活性を有する「類似体」又は「保存された変異体」及び「模倣物質」若しくは「ペプチド模倣物質」を含む。
【0053】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合により結合したアミノ酸残基のポリマーであり、ペプチドは一般に12個以下の残基のアミノ酸ポリマーを指す。ペプチド結合は、核酸テンプレートにより導かれるように天然に、又は当該技術分野で周知である方法により合成的に生成することができる。
【0054】
「タンパク質」は、1つ又はそれ以上のポリペプチド鎖を含む巨大分子である。タンパク質は更に、ペプチド結合の形成に関与しないアミノ酸の側基に結合した置換基を含んでもよい。典型的には、真核細胞の発現により形成されるタンパク質はまた、炭水化物を含有する。タンパク質は、本明細書では、既知であろうとなかろうと、そのアミノ酸配列又は骨格鎖及び置換基の観点で定義される。
【0055】
用語「受容体」は、特異的リガンド又は結合パートナーとの相互作用の結果として、例えば細胞内で、生物活性に影響を及ぼす能力を有する分子を指す。細胞膜結合受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、1つ又はそれ以上の膜貫通又はトランスメンブレンドメイン、及び典型的にはシグナル伝達に関与する細胞内エフェクタードメインを特徴とする。細胞膜受容体にリガンドが結合することにより、細胞膜を超えて連絡している細胞外ドメインに変化が生じ、1つ又はそれ以上の細胞内タンパク質と直接的に又は間接的に相互作用し、酵素活性、細胞形状又は遺伝子発現プロファイルのような細胞特性を変化させる。受容体はまた、細胞表面につながっていなくてもよく、細胞質性、核性であってよく、又は一緒に細胞から放出されてもよい。非細胞関連受容体は、可溶性受容体又はリガンドと呼ばれる。
【0056】
本明細書で引用する全ての刊行物又は特許は、適宜明示されているかどうかによらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、本発明の時点での当該技術分野の状態を示し、並びに/又は、本発明の説明及び使用可能性を提供する。刊行物は、任意の科学刊行物若しくは特許公報、又は全ての記録された電子若しくは印刷型式を含む、任意のメディア型式で利用可能な他の任意の情報を指す。以下の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:Ausubel, et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY(1987〜2007年);Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor, NY(1989年);arlow and Lane, antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY(1989年);Colligan, et al., eds., Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc., NY(1994〜2007年);Colligan et al., Current Protocols in Protein Science, John Wiley & Sons, NY(1997〜2007年)。
【0057】
治療薬
拮抗薬
本明細書で使用するとき、用語「拮抗薬」は、RA関連遺伝子又はタンパク質の生物活性を阻害する又は中和する物質を指す。このような拮抗薬は、種々の方法でこの効果を実現する。ある部類の拮抗薬は、十分な親和性で遺伝子産物のタンパク質に結合し、タンパク質の生物学的効果を特異的に中和する。この部類の分子に含まれるのは、抗体及び抗体断片(例えば、F(ab)又はF(ab’)2分子など)である。別の部類の拮抗薬は、同種の結合パートナー又は遺伝子産物のリガンドに結合し、それにより遺伝子産物とその同種のリガンド又は受容体との特異的相互作用の生物活性を阻害する、遺伝子産物タンパク質、突然変異タンパク質、又は小有機分子、すなわちペプチド模倣薬の断片を含む。RA関連遺伝子拮抗薬は、遺伝子産物の少なくとも1つの生物活性を阻害する物質である限り、これらの部類のいずれであってもよい。
【0058】
拮抗薬には、遺伝子産物タンパク質又はその断片の1つ又はそれ以上の領域に対する抗体、同種のリガンド又は受容体に対する抗体、及び遺伝子産物の少なくとも1つの生物活性を阻害する遺伝子産物又はその同種のリガンドの部分ペプチドが挙げられる。当該技術分野で既知であるような遺伝子配列を標的とするsiRNA、shRNA、アンチセンス分子及びDNAザイムを含む別の部類の拮抗薬が、本明細書に開示されている。
【0059】
好適な抗体には、RA関連遺伝子産物の活性をブロックするか、又はRA関連遺伝子産物がその同種のリガンドに結合するのを妨げるか、又はRA関連遺伝子産物のシグナル伝達を妨げる、RA関連遺伝子産物のモノクローナル抗体との結合に競合するものが挙げられる。
【0060】
本発明はまた、キメラタンパク質又は融合タンパク質を提供する。本明細書で使用するとき、「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわち、同じRA関連遺伝子産物ポリペプチド以外のポリペプチド)に操作可能に結合するRA関連遺伝子産物ポリペプチドの全て又は一部(好ましくは生物学的に活性である)を含む。融合タンパク質内では、用語「操作可能に結合(operably linked)」は、RA関連遺伝子産物ポリペプチド及び異種ポリペプチドが互いにインフレームで融合することを示すことを意図する。異種ポリペプチドは、RA関連遺伝子産物ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端に融合することができる。別の実施形態では、RA関連遺伝子産物ポリペプチド又はそのドメイン若しくは活性断片は、異種タンパク質配列又はその断片に融合して、キメラタンパク質を形成することができ、そこではポリペプチド、ドメイン又は断片が端と端とで融合しないが、異種タンパク質のフレームワーク内に介入する。
【0061】
更に別の実施形態では、融合タンパク質は、RA関連遺伝子産物ポリペプチドの全て又は一部が免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバー由来の配列に融合している、免疫グロブリン融合タンパク質である。本発明の免疫グロブリン融合タンパク質は、薬剤組成物に組み込むことができ、また被験者に投与してリガンド(可溶性又は膜結合)と細胞の表面上のタンパク質(受容体)との間の相互作用を阻害して、それによりインビボでのシグナル伝達を抑制することができる。免疫グロブリン融合タンパク質を用いて、RA関連遺伝子産物ポリペプチドの同種のリガンドの生物学的利用能に影響を及ぼすことができる。リガンド/受容体相互作用の阻害は、増殖性及び分化性疾病の治療並びに細胞生存の調節(例えば、促進又は阻害)の両方に対して、治療的に有用であり得る。免疫グロブリンキメラタンパク質の好ましい実施形態は、CH1ドメイン欠失免疫グロブリン又は同時係属出願の国際公開第04002417号の教示のような修飾されたフレームワーク領域内に介入した活性ポリペプチド断片を有する「ミメティボディ(mimetibody)」である。更に、本発明の免疫グロブリン融合タンパク質を、免疫源として用いて、被験者中のRA関連遺伝子産物ポリペプチドに対する抗体を産生し、リガンドを精製して、スクリーニングアッセイで受容体とリガンドとの相互作用を阻害する分子を同定することができる。
【0062】
組成物に好適なTNF拮抗薬、併用療法、同時投与、本発明の装置及び/又は方法(更に、本発明の、少なくとも1つの抗体、その特異的部分及び変異体を含む)には、抗TNF抗体、その抗原結合断片、及びTNFに特異的に結合する受容体分子;TNF合成、TNF放出若しくはサリドマイド、テニダップ(tenidap)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、ペントキシフィリン及びロリプラム)、A2bアデノシン受容体作用薬及びA2bアデノシン受容体エンハンサーを、妨げる及び/又は阻害する化合物;マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ阻害剤のようなTNF受容体シグナル伝達を妨げる及び/又は阻害する化合物;メタプロテイナーゼ阻害剤のような膜TNF切断をブロック及び/又は阻害する化合物;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、カプトプリル)のようなTNF活性をブロック及び/又は阻害する化合物;並びに、MAPキナーゼ阻害剤のような、TNF産生と/若しくは合成をブロック及び/又は阻害する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書で使用するとき、「腫瘍壊死因子抗体」、「TNF抗体」、「TNFα抗体」又は断片などは、インビトロ、インサイチュ及び/又は好ましくはインビボでのTNFα活性を低下させる、ブロックする、阻害する、抑止する又は干渉する。例えば、本発明の好適なTNFヒト抗体はTNFαと結合することができ、抗TNF抗体、その抗原結合断片、及びTNFαに特異的に結合するその特定の突然変異体又はドメインが挙げられる。好適なTNF抗体又は断片はまた、TNFのRNA、DNA又はタンパク質合成、TNF放出、TNF受容体シグナル伝達、膜TNF切断、TNF活性、TNF産生及び/又は合成を低下させる、ブロックする、抑止する、干渉する、妨げる及び/又は阻害することもできる。
【0064】
キメラ抗体cA2は、高親和性中和マウス抗ヒトTNFαIgG1抗体の抗原結合可変領域、指定されたA2、及びヒトIgG1の定常領域、κ免疫グロブリンからなる。ヒトIgG1のFc領域は、同種抗原エフェクター機能を改善し、循環血清半減期を増大させ、抗体の免疫原性を低下させる。キメラ抗体cA2のアビディティ及びエピトープ特異性は、マウス抗体A2の可変領域由来である。特定の実施形態では、マウス抗体A2の可変領域をコードする核酸の好ましい源は、A2ハイブリドーマ細胞株である。
【0065】
キメラA2(cA2)は、用量依存的な方法で、天然及び組み換えヒトTNFαの両方の細胞傷害性効果を中和する。キメラ抗体cA2及び組み換えヒトTNFαの結合アッセイから、キメラ抗体cA2の親和定数は、1.04×1010-1と算出された。競合阻害によるモノクローナル抗体の特異性及び親和性を決定する好ましい方法は、Harlow, et al., antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York、1988年;Colligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, New York(1992〜2007年);Kozbor et al., Immunol. Today、4巻:72〜79頁(1983年);Ausubel et al., eds. Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York(1987〜2007年);及びMuller, Meth. Enzymol.92巻:589〜601頁(1983年)中に見い出すことができ、これらの参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
特定の実施形態では、マウスのモノクローナル抗体A2は、c134Aと呼ばれる細胞株により産生される。キメラ抗体cA2は、c168Aと呼ばれる細胞株により産生される。
【0067】
本発明で用いることができるモノクローナル抗TNF抗体の追加例は、当該技術分野で記載されている(例えば、米国特許第5,231,024号;Moller, A. et al., Cytokine、2巻3号:162〜169(1990年);米国特許出願第07/943,852号(1992年9月11日出願);Rathjen et al.、国際公開第91/02078号(1991年2月21日公開);Rubin et al.、欧州特許公開第0 218 868号(1987年4月22日公開);Yone et al.、欧州特許公開第0 288 088号(1988年10月26日);Liang, et al., Biochem. Biophys. Res. Comm.137巻:847〜854頁(1986年);Meager, et al., Hybridoma6巻:305〜311頁(1987年);Fendly et al., Hybridoma6巻:359〜369頁(1987年);Bringman, et al., Hybridoma6巻:489〜507頁(1987年);及びHirai, et al., J. Immunol. Meth.96巻:57〜62頁(1987年)を参照のこと、これらの参考文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0068】
TNF受容体分子
本発明で有用な好ましいTNF受容体分子は、高親和性でTNFαと結合するもの(例えば、Feldmann et al.、国際公開第92/07076号(1992年4月30日公開);Schall et al., Cell61巻:361〜370頁(1990年)及びLoetscher et al., Cell61巻:351〜359頁(1990年)を参照のこと、これらの参考文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)及び所望により低い免疫原性を有するものである。具体的には、55kDa(p55 TNF−R)及び75kDa(p75 TNF−R)TNF細胞表面受容体が、本発明で有用である。受容体又はその機能部分の細胞外ドメイン(ECD)を含む、これらの受容体の切断型(例えば、Corcoran et al., Eur. J. Biochem.223巻:831〜840頁(1994年)を参照のこと)もまた、本発明で有用である。ECDを含む、TNF受容体の切断型は、30kDa及び40kDaのTNFα阻害結合タンパク質として、尿及び血清中で検出されている(Engelmann, H. et al., J. Biol. Chem.265巻:1531〜1536頁(1990年))、TNF受容体多量体分子及びTNF免疫受容体融合分子、及びその誘導体及び断片又は一部は、本発明の方法及び組成物で有用なTNF受容体分子の追加例である。本発明で用いることができるTNF受容体分子は、症状を緩和する力が良好〜優良であり、かつ毒性の低い、長期間患者を治療する能力を特徴とする。低い免疫原性及び/又は高い親和性、並びに他の不確定な特性が、得られる治療結果に寄与することができる。
【0069】
本発明で有用なTNF受容体多量体分子は、1つ又はそれ以上のポリペプチドリンカー又はポリエチレングリコール(PEG)のような他の非ペプチドリンカーを介して結合した、2つ又はそれ以上のTNF受容体のECDの全て又は機能部分を含む。多量体分子は、更に、分泌されたタンパク質のシグナルペプチドを含んで、多量体分子の発現を導くことができる。これらの多量体分子及びその産生方法は、米国特許出願第08/437,533号(1995年5月9日出願)に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0070】
本発明の方法及び組成物で有用なTNF免疫受容体融合分子は、1つ又はそれ以上の免疫グロブリン分子の少なくとも一部及び1つ又はそれ以上のTNF受容体の全て若しくは機能部分を含む。これらの免疫受容体融合分子は、モノマー、又はヘテロ若しくはホモマルチマーとして集合することができる。免疫受容体融合分子はまた、一価又は多価であることができる。このようなTNF免疫受容体融合分子の例は、TNF受容体/IgG融合タンパク質である。TNF免疫受容体融合分子及びその産生方法は、当該技術分野で記載されている(Lesslauer et al., Eur. J. Immunol.21巻:2883〜2886頁(1991年);Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA88巻:10535〜10539頁(1991年);Peppel et al., J. Exp. Med.174巻:1483〜1489頁(1991年);Kolls et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA91巻:215〜219頁(1994年);Butler et al., Cytokine6巻6号:616〜623頁(1994年);Baker et al., Eur. J. Immunol.24巻:2040〜2048頁(1994年);Beutler et al.、米国特許第5,447,851号;及び米国特許出願第08/442,133号(1995年5月16日出願)、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。免疫受容体融合分子を産生する方法はまた、Capon et al.、米国特許第5,116,964号;Capon et al.、米国特許第5,225,538号;及びCapon et al., Nature337巻:525〜531頁(1989年)にも見い出すことができ、これらの参考文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0071】
TNF受容体分子の機能的等価物、誘導体、断片又は領域は、TNF受容体分子の一部、又はTNF受容体分子をコードしているTNF受容体分子配列の一部を指し、これは本発明で用いることができるTNF受容体分子に機能的に類似するのに十分な大きさ及び配列を有する(例えば、高親和性でTNFαと結合し、低い免疫原性を有する)。TNF受容体分子の機能的等価物はまた、本発明で用いることができるTNF受容体分子に機能的に類似する、修飾されたTNF受容体分子を含む(例えば、高親和性でTNFαと結合し、低い免疫原性を有する)。例えば、TNF受容体分子の機能的等価物は、「サイレント(SILENT)」コドン又は1つ若しくはそれ以上のアミノ酸置換、欠失又は付加を含有することができる(例えば、1つの酸性アミノ酸を別のアミノ酸に置換する;又は、同じ若しくは異なる疎水性アミノ酸をコードする1つのコドンを疎水性アミノ酸をコードする別のコドンに置換する)。例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience, New York(1987〜2007年)。
【0072】
組成物及びその使用
本発明に関連して、本明細書に記載されている、モノクローナル抗体のような、抗RA関連遺伝子産物拮抗薬の中和を用いて、RA関連遺伝子産物活性を阻害することができる。更に、このような拮抗薬を用いて、リウマチ性疾患を挙げることができるが、これらに限定されない、このような治療を受け入れられるRA及びRA関連炎症性疾患の病原性を阻害することができる。治療されるべき個体は、任意の哺乳類であってよく、好ましくは霊長類、哺乳類であるコンパニオンアニマルであり、最も好ましくはヒトの患者である。投与される拮抗薬の量は、使用の目的及び投与方法によって変動する。
【0073】
RA関連遺伝子拮抗薬は、病理学的活性が予防又は停止されることが望ましい組織において効果が得られる多くの方法により投与してよい。更に、抗RA関連遺伝子産物拮抗薬は、RA関連遺伝子産物活性に影響を与えるために局所的に存在する必要はなく、それ故、RA関連遺伝子産物を含有する身体区画又は体液にアクセスできる場所であればどこにでも投与してよい。炎症を起こした、悪性の又は別の方法で易感染性である組織の場合、これらの方法には、拮抗薬を含有する製剤を直接適用することを挙げてもよい。このような方法には、液体組成物の静脈投与、液体若しくは固体製剤の経皮投与、経口、局所性投与、又は間質性若しくは手術中投与(inter-operative)が挙げられる。投与は、その主な機能が薬物送達賦形剤としての機能ではない場合があるデバイスの移植により影響を受ける場合がある。
【0074】
抗体の場合、好ましい用量は約0.1mg/kg〜100mg/kg(体重)(一般に約10mg/kg〜20mg/kg)である。抗体が脳で作用する場合、約50mg/kg〜100mg/kgの用量が通常適切である。一般に、部分的ヒト抗体及び完全なヒト抗体は、他の抗体よりもヒトの体内で長い半減期を有する。したがって、より少ない用量かつより少ない頻度の投与での使用が可能であることが多い。脂質化のような修飾を用いて、抗体を安定化し、(例えば、脳への)取り込み及び組織透過性を高めることができる。抗体の脂質化の方法は、Cruikshank et al.((1997年)J. Acquired Immune Deficiency Syndromes and Human Retrovirology14巻:193頁)に記載されている。
【0075】
RA関連遺伝子産物拮抗薬の核酸分子をベクターに挿入し、遺伝子治療用ベクターとして用いることができる。遺伝子治療用ベクターは、例えば、静脈注射、局所性投与(米国特許第5,328,470号)又は、定位的(stereotactic)注射(例えば、Chen et al.(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA91巻:3054〜3057頁)により被験者に送達することができる。遺伝子治療用ベクターの医薬品には、許容可能な希釈剤中の遺伝子治療用ベクターを挙げることができる、又はそれは遺伝子送達賦形剤が埋め込まれた徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターを組み換え細胞、例えば、レトロウイルスベクターからインタクトに生成できる場合、医薬品は遺伝子送達系を生成する1つ又はそれ以上の細胞を含むことができる。
【0076】
薬剤組成物は、投与の指示書とともに、容器、パック又はディスペンサに含むことができる。
【0077】
治療方法
本発明は、疾病の危険性を有する(又は疾病になりやすい)、又はRA関連遺伝子産物ポリペプチドの異常な発現若しくは活性に関連する及び/若しくはRA関連遺伝子産物ポリペプチドが関与している疾病を有する被験者を治療する、予防的及び治療的方法をともに提供する。
【0078】
本発明は、少なくとも1つのRA関連遺伝子産物拮抗薬を用いて、当該技術分野で既知であるか又は本明細書に記載されているような、細胞、組織、器官、動物又は患者の、少なくとも1つのRA関連疾患若しくは状態を調節又は治療する方法を提供する。RA関連遺伝子産物拮抗薬の組成物は、RA又は関連状態の治療における治療的用途を見い出すことができる。RA関連遺伝子産物ポリペプチドの異常な発現又は活性を特徴とする疾病については、本開示の他の箇所で更に説明される。
【0079】
予防的方法
1つの態様では、本発明は、ポリペプチドの発現又は少なくとも1つの活性を調節する剤を被験者に投与することにより、RA関連遺伝子産物ポリペプチドの異常な発現若しくは活性に関連する疾患又は状態を、被験者において少なくとも実質的に予防する方法を提供する。RA関連遺伝子産物の異常な発現又は活性を原因とする又はそれに起因する疾患のリスクを有する被験者は、例えば、本明細書に記載するような診断若しくは予後アッセイのいずれか又は組み合わせにより同定することができる。予防薬の投与は、疾患又は疾病を予防する、あるいはその進行を遅らせるように、異常型の特徴を有する症状が顕在化する前に行うことができる。異常型の種類に応じて、例えば、作用薬又は拮抗薬を被験者の治療に用いることができる。適切な剤は、本明細書に記載するスクリーニングアッセイに基づいて決定することができる。
【0080】
治療的方法
本発明の別の態様は、治療目的のために、RA関連遺伝子若しくは遺伝子産物の発現又は活性を調節する方法に関する。本発明の調節方法は、ポリペプチドの1つ又はそれ以上の活性を調節する剤と、細胞を接触させることを含む。活性を調節する剤は、核酸若しくはタンパク質、ポリペプチドの天然由来の同種リガンド、ペプチド、ペプチド模倣薬、又は他の小分子のような、本明細書に記載する剤であることができる。1つの実施形態では、剤は、ポリペプチドの生物活性の1つ又はそれ以上を刺激する。別の実施形態では、剤は、RA関連遺伝子又は遺伝子産物のポリペプチドの1つ又はそれ以上の生物活性を阻害する。このような阻害剤の例には、アンチセンス核酸分子及び抗体、並びに本明細書に記載する他の方法が挙げられる。これらの調節方法は、インビトロで(例えば、剤とともに細胞を培養することにより)又は、あるいは、インビボで(例えば、被験者に剤を投与することにより)実施することができる。このように、本発明は、RA関連遺伝子産物ポリペプチドの異常な発現若しくは活性を特徴とする疾患又は疾病に罹患している個体を治療する方法を提供する。1つの実施形態では、方法は、発現若しくは活性を調節する(例えば、上方制御又は下方制御)、剤(例えば、本明細書に記載するスクリーニングアッセイにより同定された剤)又は剤の組み合わせを投与することを含む。活性の阻害は、活性若しくは発現が異常に高いか若しくは上方制御されている状況で、及び/又は、活性の低下が有益な効果を有する可能性がある状況で、望ましい。
【0081】
本発明は一般条件で記述されてきているが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲の範囲を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【実施例】
【0082】
実施例1:炎症性−自己免疫疾患関節リウマチマーカーのマトリックスモデル化
患者及び研究プロトコル
我々がモデルを試験した患者集団及び研究プロトコルの詳細は、既に提示されている(StClair et al. Arthritis Rheum2004年;50巻:3432〜3443頁)。簡潔には、研究に登録された患者は活動性RAを有しており、予めMTXを服用しておらず、持続性滑膜炎の病歴を有していた(診断の日から>3ヶ月であるが、<3年である)。更に、患者は、≧10の腫脹関節(66関節数)、≧12の疼痛関節(68関節数)及び、以下の、リウマチ因子(RF)陽性、手若しくは足の放射線学的びらん、又は≧2.0mg/dLの血清C反応性タンパク質(CRP)レベルのうちの1つ以上を有していた。
【0083】
参加施設の施設内審査委員会が研究プロトコルを承認した。全ての患者が文書によるインフォームドコンセントを提出した。患者を、4:5:5の比で、プラシーボ、インフリキシマブ3mg/kg、又はインフリキシマブ6mg/kgを無作為に割り当て、0、2及び6週目、次いで46週まで8週毎に投与した。全ての患者は、0週に7.5mg/週で開始する経口MTXで治療され;MTX用量は、1〜2週間毎に2.5mgずつ増加させ、4週で15mg/週、8週で20mg/週に達した。MTXは、54週を通して全ての患者に投与された。患者はまた、≧5mg/週の葉酸を服用した。
【0084】
研究評価及び評価項目
臨床及び実験室分析
疼痛及び腫脹関節の数を含む米国リウマチ学会コアセット変数(The American College of Rheumatology core set variable)(Felson A&R、1993)は、各来院で文書化された。66/68数と比べたとき、毎日の臨床行為でより適切にかつより頻繁に用いられるように、モデルの作成では28の関節数(Prevoo A&R、1995)を用いた。ウェスターグレン法(Koepke、1998年)を用いて、0、6、30及び54週での赤血球沈降速度(ESR)を決定した;正常ESRレベルは女性で≦20mm/時間、男性で≦15mm/時間であった。CRPレベル(正常<0.8mg/dL)を、スクリーニング時及びその後の各来院時に比濁法(Stites、1997年)により測定した(可能な場合、RF試験は、放射線学的進行と様々な相関関係を有する様々なIGに対して試験したときに特定されるべきである)。研究用薬物の最初の用量を服用した4週間以内、30週及び54週、並びに、該当する場合にはプロトコル禁止薬物の使用時又は研究の終了時に、手及び足のレントゲン写真を得た。関節の損傷は、ベースラインから54週までの、改訂シャープ/ファンデルハイジェスコア(Sharp/van der Heijde score)(SHS)(vander Heijde Lancet、1989年)の変化で評価した。
【0085】
統計的分析及びモデル化
本分析の目的は、ベースライン変数を急速な放射線学的進行の確率と関連づけるモデルにおいて、放射線学的進行の予測因子として同定されたベースライン変数を使用することである。ASPIRE研究は、この分析のために特別に設計されたものではなかった。我々はまた、モデルに、治療レジメン、すなわち、MTX単独療法又はMTX+IFXを組み込んだ。これにより、モデルが治療方針の決定を導くことが可能になる。
【0086】
ASPIRE治験に登録している1,049人の患者を、非盲検化前に、有効性分析に含める資格があるものとして、予め同定しておいた(StClair A&R、2004年)。2群のインフリキシマブ投与群はベースラインから54週までのSHSスコアにおいて同様の変化を示したため(StClair A&R、2004年)、MTX単独群と比較するために、今回の分析ではそれらを組み合わせた。メジアン、平均及び四分位範囲の要約統計量を、連続変数のために提示した。Spearman相関分析を実施して、ベースライン共変量と放射線学的スコアの変化との間の関連を評価した。統計的有意性試験を、van der Waerdenの正規スコアの分散分析を用いて実施した。カテゴリー的反応パラメータの場合、治療群の比較は、カイ二乗検定を用いて行った。ロジスティック回帰分析を実施して、両方の治療レジメンについて、54週の関節損傷の悪化の予測における個々の変数の優位性を評価した。臨床行為で用いることができるモデルを作成することが我々の意図であるため、放射線学的進行と有意に相関し、毎日の臨床で容易に利用可能である共変量のみを、モデルのために選択した。モデルを単純化する試みにおいて、ベースライン特徴が記載された患者の部分集団もまたASPIRE研究において公平な患者の表現を有することを可能にするために、放射線学的進行との線形関係にある場合、3値表現を選択した。毎日の臨床行為での適用を容易にするために、可能な場合、臨床的に意味のある閾値(例えば、正常の上限)を選択した。変数の2値表現を、適用可能な場合に用いた。
【0087】
放射線学的結果(vander Heijde A&R、2005年)を説明する、より適切な方法であるために、モデルは、平均及び標準偏差又は平均及び四分位数ではなく、急速な放射線学的進行の確率に基づいていた。急速な進行は、ベースラインから54週までのSHSスコアが少なくとも5進行することとして定義した。SHSスコア化方法では、4の関節烈隙狭小化スコア単位又は5のびらんスコア単位を有する場合、関節が破壊されたと考えられる(Sharp A&R、1985年、Sharp A&R、1991年)。このように、我々のモデルにおける放射線学的転帰は、「1年毎に少なくとも1つの関節が破壊されるのに等しい進行」として記載することができ;この定義は、患者又は第三者支払人にリスクを説明しようとするとき役に立つ。同じ研究結果について行われた分析では、放射線学的に評価された全ての関節に対するSHS進行の希釈(dilution)が存在するが、びらんの進行又は関節烈隙狭小化(JSN)は、ベースラインでびらん又はJSNを有していたこれらの関節で主に見られることが示された(vander Heijde ACR、2005年)。これは、ベースラインで破壊を示す関節が、破壊を示し始めるであろう予め影響を受けていない関節より、完全な破壊に進行する確率が高いことを意味する。
【0088】
統計的分析は、SASシステム(SAS Institute, Cary, NC)を用いて実施した。全ての統計検定は両側性であり、0.05のアルファレベルで実施した。
【0089】
結果:
患者の特徴
この研究に参加している患者の年齢のメジアンは51歳(18〜76歳の範囲)であった。これらの分析に含まれる1,004人の患者は、被験者の68〜71%が女性であり、平均年齢が50〜51歳であり、罹病期間は0.8〜0.9年であった。71〜73%がRF陽性であった。疾患活性は、腫脹及び疼痛関節数(それぞれ21〜22及び31〜33)(66/68関節を数えた);CRP及びESR(平均はそれぞれ2.6〜3.0mg/dL及び43〜45mm/時間の範囲);痛みの順序、総合評価及び健康評価質問表スコアの観点で中〜高であった。ベースラインにおける平均及びメジアン放射線学的スコアは、それぞれ11.2〜11.6及び5.1〜5.3であった。研究集団は、ベースラインの人口統計的及び臨床的特徴では、治療群に対してよくバランスがとれていた(StClair A&R、2004年)。
【0090】
関節損傷の進行
ベースラインから54週までのSHS変化は、MTXのみを服用したものより、MTXとインフリキシマブ3mg/kg、及びMTXとインフリキシマブ6mg/kgの併用療法を受けた患者の方が有意に低かった(それぞれ、平均+/−SDは0.4+/−5.8、0.5+/−5.6、及び3.7+/−9.6;各比較についてP<0.001)。この時間フレームの間、インフリキシマブ+MTXを服用した39%の患者は、MTXを単独で服用した61%の患者と比べて、放射線学的スコアの増加を示した(P<0.001)。それぞれ8%及び23%は、放射線学的スコアが少なくとも5SHS単位の増加を示した。ベースラインでSHSが0であった17/27(63%)の患者は、MTX服用で進行していなかったが、一方これはインフリキシマブ+MTX併用群では47/59(80%)であった。
【0091】
ベースライン特徴に関連する関節損傷の進行
MTXのみを服用した患者では、ベースラインでの腫脹関節数(相関係数:0.156、p=0.0088)、ESR(0.268、p<0.0001)、CRP(0.242、p<0.0001)及びRFレベル(0.127、p=0.0324)が高いほど、54週で関節損傷がより進行していることと相関していた。インフリキシマブ+MTXで治療した患者の中では、ベースラインのSHSは逆相関しており(−0.191、p<0.0001)、年齢(0.081、p=0.0297)はベースラインから54週までのSHSの変化と正に相関していた。ベースラインでSHSが高いことと54週で放射線学的進行がそれ程進行していないこととの連関は、インフリキシマブ+MTX群の一部の患者におけるSHSの低下に大きく起因していた(Smolen A&R、2004年)。
【0092】
急速な放射線学的進行の予測のためのマトリックスモデル
腫脹関節数、ESR、CRP及びRFは、放射線学的進行と線形相関を示し、モデルでは3値変数として入力された。変数に対する集団の分布の閾値は、臨床的に意義があるように、及びベースラインでの集団の有意な特性を表すように選択された。年齢は放射線学的進行の増加と線形相関を有したが、それはMTX治療集団における進行とはこのような関係を示さなかった。しかしながら、変数が65歳以下/65歳超という2値変数として入力されたとき、年齢と放射線学的進行との有意な相関が、MTX単独治療集団でも観察された。年齢及び治療はともに、2値変数として入力された。ベースラインのSHSスコアはモデルに導入されなかったが、それは毎日の臨床で利用可能ではないため、及び、より悪い放射線学的転帰よりむしろより良い転帰に関連しているためである。
【0093】
54週での急速な放射線学的進行の確率が、ベースラインでの個々の患者の関連する疾患特徴に関するマトリックスモデルを作成した。青(急速な進行のリスクが最低である)から赤(急速な進行のリスクが最高である)で変動する色スキームは、リスク分布をよりよく可視化するために適用されるが、これは表1を参照されたい。
【0094】
モデルを用いる治療ガイダンス
MTX単独に比べて、MTXとインフリキシマブとの併用療法の急速な進行の相対的リスク減少は、疾患活性が低く(ESR、CRP及びSJC)、年齢のカテゴリーに関わらずベースラインでのRF力価が低い患者の50%から、疾患活性が高く、RF力価が高く、またそれぞれ年齢が<65及び≧65の患者の66%〜74%まで変動した。急速な進行の絶対的リスク低下は、これらのそれぞれの群に対して1%〜3%から20%〜35%で変動した。これは、インフリキシマブ+MTX併用療法の相対効果が、ベースラインでのSJC、CRP、ESR、RF力価及び年齢により決定されるような、急速な放射線学的進行のリスクが最高である群で最も高いことを示す。
【0095】
表1は、モデルで用いるような閾値で表現するときのベースラインの疾患特徴により定義された部分集団に対する、54週での総SHSスコアのベースラインからの変化の平均van der Waerden(VW)正規スコア(縦棒)及び関連する95%信頼区間(水平棒)の、MTX群とIFX+MTXの併用群との間の差を示す。
【0096】
【表1】

【0097】
利点
モデルは、疾患のリスク評価のために最も広く用いられていると思われるモデル、すなわち、心臓血管リスクチャートに基づく。このモデルの利点は、それが、患者及び医師が容易に理解可能である方法で、転帰に関連していることが既知であるいくつかの特徴を組み合わせていることである。IMIDにおける転帰を予測するための我々のモデルでは、リスク要因の組み合わせに同じ方法を用いているが、リスクチャートに治療レジメンも組み込んでいる。この利点は、個体で予測されるリスクが、医師が有する治療可能性に関連していることである。このように、ただ情報価値があるというだけではなく、治療ガイダンスに容易に用いることができる。
【0098】
IMIDでは、転帰を予測するために疾患特徴を組み合わせる特許化されたモデルが存在している(例えば、van der Helm-van Mil et al. Arthritis Rheum、2007年;56巻2号:433〜440頁、Drs. van der Helm-van Mil及びHuizingaは、特許「発現している関節リウマチの個体のリスクを予測するためのシステム及び方法(Systems and methods for predicting an individual's risk of developing rheumatoid arthritis)」に発明者として名前が記載されている)。これらは、彼らがこれらの疾患に対して高い科学的関心を示していることを確認し、彼らの特許はこのようなモデルの知的財産を保護する必要性を確認する。
【0099】
上記モデルと比較して、我々のマトリックスモデルの利点は、van der Helm−van Mil et al.により用いられているような、「中間予測スコア(intermediate prediction score)」を最初に算出する必要なく、直接パラメータを予測されるリスクに関連づけるため、より実用的であることである。またここでは、治療レジメンの組み込みは、我々のモデルに好都合な利点である。
【0100】
結論として、我々は、他のモデルとは対照的に我々のモデルの3つの利点を理解しており、以下のことを承知している。
1.容易に読み取り可能なテンプレートにおいて特徴の組み合わせを用いる。
2.全ての異種集団を反映するマトリックスを提供することにより、個々の患者のプロファイルに直接関連する確率(リスク)を提供する。
3.モデルを治療ガイダンスに用いることを可能にするモデルに治療レジメンを含める。
【0101】
参照
1.Boers M, Verhoeven AC, Markusse HM, van de Laar MA,Westhovens R, van Denderen JC, et al. Randomised comparison of combined step-down prednisolone, methotrexate and sulphasalazine with sulphasalazine alone in early rheumatoid arthritis. Lancet、1997年;350巻:309〜18頁
2.St.Clair EW, van der Heijde DM, Smolen JS, Maini RN, Bathon JM, Emery P, et al. Combination of infliximab and methotrexate therapy for early rheumatoid arthritis: a ramdomized, controlled trial. Arthritis Rheum、2004年;50巻:3432〜43頁
3.Felson DT, Anderson JJ, Boers M, Bombardier C, Chernoff M, Fried B, et al. The American College of Rheumatology preliminary core set of disease activity measures for rheumatoid arthritis clinical trials. Arthritis Rheum、1993年;36巻:729〜40頁
4.Prevoo ML, van 't Hof MA, Kuper HH, van Leeuwen MA, van de Putte LB, van Riel PL. Modified disease activity scores that include twenty-eight-joint counts: development and validation in a prospective longitudinal study of patients with rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum、1995年;38巻:44〜8頁
5.Landewe RB, Boers M, Verhoeven AC, Westhovens R, Mart AF, van de Laar MA, et al. COBRA combination therapy in patients with early rheumatoid arthritis: long-term structural benefits of a brief intervention. Arthritis Rheum、2002年;46巻:347〜56頁
6.Smolen JS, Han C, Bala M, Maini R, Kalden J, van der Heijde D, et al, for the ATTRACT Study Group. Evidence of radiographic benefit of treatment with infliximab plus methotrexate in rheumatoid arthritis patients who had no clinical improvement: a detailed subanalysis from the Anti-Tumor Necrosis Factor Trial in Rheumatoid Arthritis with Concomitant Therapy Study. Arthritis Rheum、2005年;52巻:1020〜30頁
7.Breedveld FC, Emery P, Keystone E, Patel K, Furst DE, Kalden JR, et al. Infliximab in active early rheumatoid arthritis. Ann Rheum Dis、2004年;63巻:149〜55頁
8.Etanercept versus methotrexate in patients with early rheumatoid arthritis: two-year radiographic and clinical outcomes.
Arthritis Rheum.2002年6月;46巻6号:1443〜50頁
9.The PREMIER study: A multicenter, randomized, double-blind clinical trial of combination therapy with adalimumab plus methotrexate versus methotrexate alone or adalimumab alone in patients with early, aggressive rheumatoid arthritis who had not had previous methotrexate treatment.2006年1月;54巻1号:26〜37頁
10.The effect of treatment on radiological progression in rheumatoid arthritis: a systematic review of randomized placebo-controlled trials.
Rheumatology (Oxford).2003年1月;42巻1号:6〜13頁
11.COBRA combination therapy in patients with early rheumatoid arthritis: long-term structural benefits of a brief intervention.
Arthritis Rheum.2002年2月;46巻2号:347〜56頁
12.Presentation and analysis of data on radiographic outcome in clinical trials: experience from the TEMPO study.2005年1月;52巻1号:49〜60頁
13.Huizinga T. sing predicted disease outcome to provide differentiated treatment of early rheumatoid arthritis.2006年9月;33巻9号:1747〜53頁、電子出版2006年7月15日
14.Annette H. M. van der Helm-van Mil, Saskia le Cessie, Henrike van Dongen, Ferdinand C. Breedveld, Rene´ E. M. Toes, and Tom W. J. Huizinga A Prediction Rule for Disease Outcome in Patients With Recent-Onset Undifferentiated Arthritis. How to Guide Individual Treatment Decisions Arthritis Rheum、2007年;56巻2号:433〜440頁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の、少なくとも1つの関節リウマチ関連疾患の治療の予後又は診断評価のための方法であって、
(a)それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの放射線学的進行と有意に相関する2つ又はそれ以上の共変量のセットを作成する工程と、
(b)前記選択的治療と、対応する前記臨床転帰の負の確率との統計的比較を実施する工程と、
(c)最低の負の臨床転帰の確率に基づいて1つ又はそれ以上の前記選択的治療を選択する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記被験者が、関節リウマチに罹患している又は関節リウマチを発現する可能性を有する患者であり、前記患者が関節リウマチの治療を受ける前、受けている間又は受けた後に工程(a)〜(c)が実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が、前記関節リウマチの治療を受けている間及び治療の開始から約1〜30週間後に工程(a)〜(c)が実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記共変量が、年齢、疼痛関節数、腫脹関節数、赤血球沈降速度(ESR)、リウマチ因子(RF)陽性、又は血清C反応性タンパク質(CRP)レベル、及び関節損傷のうち少なくとも1つから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記治療が、抗リウマチ剤、TNF拮抗薬、筋弛緩剤、睡眠薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤及び麻酔薬のうち少なくとも1つから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記抗リウマチ剤が、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド又はスルファサラジンから選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項7】
前記TNF拮抗薬が、少なくとも1つのTNFの生物活性を阻害する小分子又は生物製剤から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記TNF拮抗薬生物製剤が、TNF抗体又はTNF受容体融合タンパク質である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記TNF拮抗薬生物製剤が、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト(enteracept)又はゴリムマブから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
被験者の、少なくとも1つの関節リウマチ関連疾患の治療の予後又は診断評価のための方法であって、
(a)それぞれの選択的治療下で負の臨床転帰の確率を有するRAの負の転帰と相関することが知られている2つ又はそれ以上の特徴のセットを作成する工程と、
(b)前記選択的治療と、対応する前記臨床転帰の負の確率との統計的比較を実施する工程と、
(c)最低の負の臨床転帰の確率に基づいて1つ若しくはそれ以上の前記選択的評価又は治療を選択する工程と、を含む方法。
【請求項11】
前記被験者が、関節リウマチに罹患している又は関節リウマチを発現する可能性を有する患者であり、前記患者が関節リウマチの治療を受ける前、受けている間又は受けた後に工程(a)〜(c)が実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、前記関節リウマチの治療を受けている間及び治療の開始から約1〜30週間後に工程(a)〜(c)が実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記共変量が、疼痛関節数、腫脹関節数、赤血球沈降速度(ESR)、リウマチ因子(RF)陽性、手若しくは足の放射線学的びらん、又は血清C反応性タンパク質(CRP)レベル、放射線学的進行及び関節損傷のうち少なくとも1つから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記治療が、抗リウマチ剤、TNF拮抗薬、筋弛緩剤、睡眠薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤及び麻酔薬のうち少なくとも1つから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記抗リウマチ剤が、メトトレキサート、オーラノフィン、アウロチオグルコース、アザチオプリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、硫酸ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジンから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記TNF拮抗薬が、少なくとも1つのTNFの生物活性を阻害する小分子又は生物製剤から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記TNF拮抗薬生物製剤が、TNF抗体又はTNF受容体融合タンパク質である、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記TNF拮抗薬生物製剤が、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト(enteracept)又はゴリムマブから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
本明細書に記載されたいずれかの発明。

【公表番号】特表2010−526303(P2010−526303A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506711(P2010−506711)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/062621
【国際公開番号】WO2008/137828
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】