関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニット
【課題】ロボットの関節装置に組み込まれた減速機に許容外部トルクを超える過大な力が作用した場合でも、減速機に作用する外力を開放して減速機の破損を防止することができる関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットを提供する。
【解決手段】関節部材Jに、リンク部材L1に組み付けられたモータMの出力が伝動機構Tを介して伝達され所定軸心P周りに回転するウェーブジェネレータ31と、ウェーブジェネレータ31の外周部と接合する内周部を備えたフレクスプライン32と、フレクスプライン32の外周部に形成された歯部37と噛合する歯部38が内周部に形成されたサーキュラスプライン34とからなるハーモニックドライブHを備え、フレクスプライン32がトルク制限機構Rを介して一方のリンク部材L1に固定されるとともに、サーキュラスプライン34が他方のリンク部材L2に固定される。
【解決手段】関節部材Jに、リンク部材L1に組み付けられたモータMの出力が伝動機構Tを介して伝達され所定軸心P周りに回転するウェーブジェネレータ31と、ウェーブジェネレータ31の外周部と接合する内周部を備えたフレクスプライン32と、フレクスプライン32の外周部に形成された歯部37と噛合する歯部38が内周部に形成されたサーキュラスプライン34とからなるハーモニックドライブHを備え、フレクスプライン32がトルク制限機構Rを介して一方のリンク部材L1に固定されるとともに、サーキュラスプライン34が他方のリンク部材L2に固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のリンク部材を所定軸心周りに回転する関節部材を介して連結した関節装置、関節装置を用いたロボットアーム、及び、フィンガーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
生産現場において利用されている産業用ロボットの把持装置(以下、「ハンド」とも記す。)にはプライヤのような開閉機構で対象物を掴む形態のメカニカルグリッパが多用されているが、多くの場合、対象物を把持するために相対的に運動する二つのリンクまたは三爪チャックのような三リンクを有する機構で構成されている。
【0003】
このようなメカニカルグリッパは高度な制御を必要とせず、機械的に開閉するために、確実な繰り返し動作が保証されているが、把持動作を機械的に実現することから、生産現場の定められた位置・姿勢に整列された既知形状の対象物に対しては確実な把持を保証するが、鋳造部品やプレス成形部品のような様々な曲面を持つ複雑形状の部品を適切に把持することが困難であり、バラ積み部品等のように対象物の置かれた位置・姿勢、或いは対象物の形や寸法が少しでも異なると、最早一つのメカニカルグリッパでは対応できない。
【0004】
そのため、生産現場では、視覚センサを導入して複雑な形状認識処理によって部品の位置・姿勢を測定してメカニカルグリッパで把持可能な把持点を決定したり、対象物の形状・寸法の種類に応じて複数のメカニカルグリッパを準備して、対象物に応じてその都度グリッパを交換するといった多大なコストを必要とする複雑なロボットシステムの導入を余儀なくされている。
【0005】
一方、人は複数の関節を持つ5本の指からなる手で複雑な作業を器用に実行することができる。人の手のような構造ならびに形状を持ち、人の手と同様の運動制御機能を有したユニバーサルなロボットハンドを実現することができるならば、ロボットは、人間と同様、一つのハンド機構で様々な複雑作業を器用に行うことが可能になる。また、ロボットに合わせてその都度開発していた特殊作業工具は必要でなくなり、ロボットは、従来、人が使用してきた汎用作業工具を用いて作業を行うことも可能となる。
【0006】
このような背景の下、人間の手のような機構と人間の手のような巧みな作業機能を有したロボットハンドを実現すべく、人間の手を模した複数の関節を備えた複数の指から構成されるユニバーサルロボットハンドが研究開発されてきた。
【0007】
このようなロボットハンドとして、特許文献1には、図11に示すように、人間の手と類似した運動ができるロボットハンド構造、即ち、四関節J100,J200,J300,J400備えた指を複数本配置し、各関節を駆動するモータを内蔵したロボットハンドにおいて、各指の根本側の第一関節J100と第二関節J200の軸が1点で直交し、その二つの関節を独立に駆動できるように1つの指について二つのモータを掌に設けたことを特徴とするロボットハンドが提案されている。
【0008】
上述の文献には、第三関節J300用のモータM300と駆動連結された4節リンク機構Lを介して第四関節J400の軸を駆動することで、一つのモータにより第三関節J300と第四関節J400を同時に同じ方向に回転可能な構成、及び、指先に力覚センサS100を備えた構成が提案されている。
【0009】
しかし、関節で連結されるリンクL300、L400に対して、モータM300からギア式の減速機構を介してリンクL300を駆動するとともに減速機構からさらにリンクやワイヤー等の駆動伝動機構、ここでは4節リンク機構Lを介してリンクL400を駆動するごとき構成を採用する場合には、減速機構によるギアのバックラッシュや駆動伝動機構による機械的遊びによるガタの発生のために正確な指の動作制御が困難となるばかりか、モータから減速機構を経て駆動伝動機構に動力を伝達するために駆動伝達機構は多大のトルクを伝達することが必要となり駆動伝達機構の大型化、延いてはロボットハンドの大型化を招くという問題があった。
【0010】
そこで、本願発明者らは、特許文献2に示すように、駆動系の機械的ガタを効果的に除去するとともに、力覚等のセンシング系の実装上の工夫を施すことにより、人の指のごとき微妙な動作を実現することが可能な関節装置、関節装置を用いたコンパクト設計が可能なロボットフィンガー、及び、ユニバーサルロボットハンドを提供することを目的とした関節装置を提案している。
【0011】
具体的には、図12に示すように、一方のリンク部材L101に固定したフレクスプラインと、その回転軸心と交差する方向に延出形成した薄肉部を他方のリンク部材L202に固定したサーキュラスプラインとを備えてなるハーモニックドライブ減速機H101を関節部材に組み込み、基端側リンク部材L101に収容したモータ(アクチュエータ)M101の出力を基端側のウェーブジェネレータに伝達する第一の伝動機構T101と、モータM101の出力を第一の伝動機構T101及び基端側リンク部材L101に隣接するリンク部材L202に収容した伝達シャフトS101を介して基端側のウェーブジェネレータに隣接する関節部材に組み込んだハーモニックドライブ減速機H202のウェーブジェネレータに伝達する第二の伝動機構T202を備えた関節装置である。
【特許文献1】特開平11−156778号公報
【特許文献2】特開2007−152528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、関節装置の駆動機構として、アクチュエータからの動力を減速機を介して関節軸へ伝達してリンクを駆動する方式を採用すると、減速機によって増力することができるため、小さな出力のアクチュエータでも関節リンクを駆動するために必要な大きな動力が得られるという利点を持つ。
【0013】
アクチュエータとして、取扱いの容易さからDCモータなどの電気モータが多く使用されているが、電気モータは一般に高速回転・低トルクであるためロボットの関節機構では高減速比の減速機を介して使用することが必要となる。
【0014】
こうしたアクチュエータ及び減速機から構成される関節駆動機構はバックドライバビリティ(関節軸からアクチュエータ出力軸を動かすこと)に劣るため、環境から駆動リンクへ外部トルクが作用すると、そのほとんどが減速機の構造へ作用することとなる。
【0015】
そのため、ロボットアームやロボットフィンガー等に用いられる関節装置に使用される減速機は、外部トルクに対して十分な構造強度を有することが必要となる。
【0016】
しかも、ロボットの関節装置はその運動の高速化ならびに機構の軽量化の必要から、より小型軽量で高減速比の減速機を限られたスペースにコンパクトに配置するように設計することが要求される。
【0017】
しかし、小型軽量で高減速比の減速機を得ようとすると、その歯型形状を小さくしなければならず、出力軸に作用する外部トルクに対して十分な構造強度を得ることは困難となる。
【0018】
従って、ロボットアーム等の運転に際しては、環境から関節リンク機構へ作用する力が減速機出力軸の許容外部トルクの範囲内に収まるように、限定して使用することが要求されるという問題があった。
【0019】
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、ロボットの関節装置に組み込まれた減速機に許容外部トルクを超える過大な力が作用した場合でも、減速機に作用する外力を開放して減速機の破損を防止することができる関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の目的を達成するため、本発明による関節装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、一対のリンク部材を所定軸心周りに回転する関節部材を介して連結した関節装置であって、前記関節部材に、一方のリンク部材に組み付けられたモータの出力が伝動機構を介して伝達され前記所定軸心周りに回転するウェーブジェネレータと、前記ウェーブジェネレータの外周部と接合する内周部を備えたフレクスプラインと、前記フレクスプラインの外周部に形成された歯部と噛合する歯部が内周部に形成されたサーキュラスプラインとからなるハーモニックドライブ減速機構を備え、前記フレクスプラインがトルク制限機構を介して一方のリンク部材に固定されるとともに、前記サーキュラスプラインが他方のリンク部材に直接または間接的に固定されている点にある。
【0021】
上述の特徴構成によれば、モータの出力が伝動機構を介してハーモニックドライブ減速機構を構成するウェーブジェネレータに伝達されると、フレクスプラインを介してサーキュラスプラインに伝達されるので、サーキュラスプラインと固定された他方のリンク部材は、フレクスプラインと固定された一方のリンク部材に対してウェーブジェネレータの回転軸心周りに、相対的に回転することになる。前記モータにより前記関節部材を介して他方のリンク部材に付与される回転トルクと逆方向に、前記トルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、前記トルク制限機構により前記関節部材が前記回転トルクと逆方向へ回転して、ハーモニックドライブ減速機構にかかる外部トルクが開放されるので、関節装置の破損を防止することがきる。
【0022】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記トルク制限機構は、一方のリンク部材に固定された環状の受圧体と、転動軸心が前記受圧体の径方向対して所定の角度で傾斜した姿勢で前記受圧体の周方向に沿って配列された複数のローラと、各ローラを所定間隔で転動自在に保持する環状の保持体と、前記ローラを挟み前記受圧体と対向配置された環状の加圧体とを備え、前記フレクスプラインの延出軸に外嵌された環状の回転摩擦機構と、前記延出軸と前記受圧体とを前記加圧体を介して直接または間接的に所定の締付力で締付固定する固定機構を備えている点にある。
【0023】
上述の構成によれば、フレクスプラインの延出軸の軸方向に固定機構により所定の締付力で締付固定した状態で一対のリンク部材を相対的に回転させると、各ローラが受圧体及び加圧体に接しながら転動する。各ローラは延出軸の回転軌道に対して所定角度だけ傾斜した方向に転動しようとするのを保持体で規制されながら延出軸の回転軌道に沿って移動するため、各ローラと受圧体及び加圧体との間に前記延出軸の軸方向の締付力に比例した摩擦力が発生する。その際、各ローラは、転動しながら滑り摩擦を発生させるので、静摩擦は発生せずに常に動摩擦による安定した抵抗力が得られる。従って、固定機構により延出軸の軸方向の締付力を適切に設定することにより、一対のリンク部材に対する許容外部トルクを適切に調整することができる。
【0024】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記固定機構による前記延出軸と前記受圧体との間の締付力を動的に調整するアクチュエータを備えている点にある。
【0025】
上述の構成によれば、関節装置の用いられる環境により適宜トルク制限機構の許容外部トルクを動的に調整することができる。
【0026】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記モータにより前記関節部材を介して他方のリンク部材に付与される回転トルクと逆方向に、前記トルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、前記トルク制限機構により前記関節部材が前記回転トルクと逆方向へ回転するように構成され、前記一対のリンク部材が直線状に位置する特異姿勢で姿勢保持されるように、一方のリンク部材にストッパ機構を設けている点にある。
【0027】
上述の構成によれば、前記モータにより前記関節部材を介して他方のリンク部材に付与される回転トルクと逆方向に、前記トルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、前記トルク制限機構により前記関節部材が前記回転トルクと逆方向へ回転して、ハーモニックドライブ減速機構を破損から保護するとともに、リンク部材がストッパ機構に当接し特異姿勢となることで、各構成部材の剛性で前記大きな外力を支持することができる。
【0028】
本発明によるロボットアームの特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成を備えた関節装置が組み込まれた点にある。
【0029】
上述の構成によれば、ロボットアームの関節に上述の関節装置を組み込むことにより、駆動リンクに過大な外力が作用した際に高減速比のハーモニックドライブ減速機を保護するとともにメカニカルストッパの位置まで回転して機構的に大きな外力の支持が可能な特異姿勢を自ら採らせることができる。このことにより幅広いレンジにわたって外界との力学的相互作用に対応することが可能なロボットアームを実現することができる。
【0030】
本発明によるフィンガーユニットの特徴構成は、同請求項6に記載した通り、ユニバーサルロボットハンドに用いられ、複数の関節装置を備えたフィンガーユニットであって、上述の第一から第四の何れかの特徴構成を備えた関節装置が組み込まれた点にある。
【0031】
上述の構成によれば、各関節装置に組み込まれたハーモニックドライブにトルク制限機構の保持トルクを超える過大な力が作用した場合には、機械的にハーモニックドライブに作用する外力を開放してハーモニックドライブの破損を防止することができる。つまり、より人に近い関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットを実現することができる
【発明の効果】
【0032】
以上説明した通り、本発明によれば、ロボットの関節装置に組み込まれた減速機に許容外部トルクを超える過大な力が作用した場合でも、減速機に作用する外力を開放して減速機の破損を防止することができる関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本発明による関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットの実施の形態を説明する。
【0034】
図1に示すように、関節装置1は、一対のリンク部材L1,L2と、一対のリンク部材L1,L2を軸心P周りに回転する関節部材Jと、一方のリンク部材L1に固定された軸心Pと直交する方向に回転軸を有するエンコーダ内蔵のモータMと、伝動機構Tを備え、リンク部材L1の一端に固定されたモータMの出力が伝動機構Tを介してリンク部材L1の他端に軸支された関節部材Jに伝達され、関節部材Jが軸心P周りに回転することで、関節部材Jに接続されたリンク部材L2がリンク部材L1に対して相対的に回転するように構成されている。リンク部材L1の他端側には、リンク部材L2がリンク部材L1に対して直線状に位置する特異姿勢で姿勢保持されるようにストッパ機構13がネジ14により固着されている。
【0035】
伝動機構Tは、小径のベベルギアG1と、ベベルギアG1と噛合する大径のベベルギアG2と、平歯車G3と、平歯車G3と噛合する平歯車G4で構成されている。ベベルギアG1はモータMの出力軸に嵌入連結され、ベベルギアG2は平歯車G3の回転軸に止めねじ15で嵌入固定され、平歯車G4の回転軸には関節部材Jが連結されている。
【0036】
関節部材Jは、ハーモニックドライブ減速機構(以下、「ハーモニックドライブ」と記す。)Hと、トルク制限機構Rで構成されている。
【0037】
ハーモニックドライブHは、楕円状のカムとその外周に嵌めたベアリングにより構成された入力部としてのウェーブジェネレータ31と、薄肉カップ状の金属弾性体で開口部の外周に歯部が形成された回転部としてのフレクスプライン32と、リング状の剛体内周にフレクスプライン32と同ピッチでその歯数がフレクスプライン32の歯部より二枚多い歯部が形成された出力部としてのサーキュラスプライン34で構成されている。ウェーブジェネレータ31は、伝動機構Tの平歯車G4の回転軸に止めねじ16で嵌入固定され、フレクスプライン32のカップ底面部には固定部としての延出軸33が固着され、延出軸33はサーキュラスプライン34にベアリング35を介して支持され、サーキュラスプライン34の外周にはケーシング36が固着され、ケーシング36にはリンク部材L2が接続されている。尚、サーキュラスプライン34の外周に直接リンク部材L2を接続する場合は、ケーシング36は必ずしも備える必要はない。
【0038】
図2に示すように、モータMの出力が伝動機構Tを介してウェーブジェネレータ31に伝達され、図中破線矢印で示される方向に回転すると、それに伴ないフレクスプライン32が弾性変形し、フレクスプライン32の外周部に形成された歯部37と、歯部37と噛合するサーキュラスプライン34の内周部に形成された歯部38との噛み合い位置が順次移動しながら、フレクスプライン32に対してサーキュラスプライン34が図中実線矢印で示される方向に相対的に回転する。歯部37の歯数は、歯部38の歯数より二枚少ないので、これによりモータMからの出力が減速されることとなる。
【0039】
トルク制限機構Rは、軸心P方向の締付力に応じた回転摩擦が得られる回転摩擦機構40と、回転摩擦機構40を所定の締付力で締付固定する固定機構50を備えている。
【0040】
回転摩擦機構40は、図3(a),(b),(c)に示すように、転動軸心bが軸心Pと垂直方向aに対して所定の傾斜角度θで転動自在に且つ受圧体41の回転軌道に沿って保持体43に保持された複数のローラ42が、受圧体41と加圧体45の対向面間に所定の締付力で挟持されている。複数のローラ42は転動軸心b方向に一様に延びる円柱形状をなし、後述する保持体43に形成された保持孔44により受圧体41の周方向に等間隔で転動自在に配列されている。また、各ローラ42の両端面は保持体43との摩擦を少なくするために凸球面状に形成されている。尚、受圧体41及び加圧体45はローラ42との当接面が平面に形成されていればよく、その形状は円環状に限られない。
【0041】
保持体43は、軸心P方向の厚みがローラ42の外径よりも小さく形成されている。保持体43にはローラ42を保持する複数の保持孔44が形成され、各保持孔44にはローラ42が転動自在に収容されている。また、各保持孔44は、図3(c)に示すようにローラ42の転動軸心bが受圧体41の径方向aに対して所定の角度θだけ傾斜するように形成されている。
【0042】
従って、図3(d)に示すように、受圧体41及び加圧体45を軸心P方向に加圧した状態で回転させると、ローラ42が受圧体41及び加圧体45に接しながら転動し、これに追従して保持体43も回転する。その際、各ローラ42は、受圧体41及び加圧体45の回転軌道に対して角度θだけ傾斜した方向に転動しようとするのを保持体43で規制されながら受圧体41及び加圧体45の回転軌道に沿って移動するため、各ローラ42と受圧体41及び加圧体45との間には軸心P方向の荷重に比例した摩擦力が発生する。
【0043】
つまり、上述の摩擦力を上回る回転トルクにより初めて受圧体41及び加圧体45は相対的に回転するのである。
【0044】
上述の回転摩擦装置40がフレクスプライン32の延出軸33に外嵌され、固定機構50として延出軸33に筒状体55を外嵌固定し、その周囲おねじを形成し、バネ座金53を介してナット51が螺着することで、受圧体41と加圧体45が軸心P方向に所定の締付力で締付固定される。ナット51は止めねじ52により任意の締付力となるように延出軸33に固定できる。このように、ナット51の締付力によって、受圧体41及び加圧体45の相対的な回転運動に軸心P方向の荷重に比例した任意の保持トルクを付与することができ、しかも止めねじ51により締付力を調整固定することにより、トルク制限機構Rの保持トルクを極めて容易に制御することができる。尚、延出軸33の外周におねじを形成し、ナット51と噛合させる場合は、筒状体55は必ずしも備える必要はない。
【0045】
尚、固定機構50として、ナット51、止めねじ52、バネ座金53により出力軸33と受圧体41との間の締付力を固定する構成に限らず、前記締付力を動的に調整するアクチュエータを備えてもよい。このようなアクチュエータとしては超音波モータ、圧電素子、エアシリンダ等を用いることができる。
【0046】
超音波モータを用いる場合は、延出軸33に回転摩擦装置40を外嵌し、超音波モータを構成する圧電セラミック、ステータを外嵌し、その後延出軸33に形成したおねじと噛合するめねじが形成されたロータを外嵌するように構成にすればよい。前記圧電セラミックにより発生させた超音波振動を利用してステータにたわみ波動を発生させ、その進行波を利用してロータを回転させると、前記ロータは回転に伴ない延出軸33に沿って軸心P方向に移動するので、回転摩擦機構40の軸心P方向の締付力を任意に調整することができる。
【0047】
圧電素子を用いる場合は、バネ座金53に替えて、またはバネ座金53を介してナット51及び回転摩擦機構40の間に圧電素子を挟持するように構成にすればよい。前記圧電素子に電圧を加えることで、前記圧電素子自体の厚みが変位するので回転摩擦機構40の軸心P方向の締付力を任意に調整することができる。
【0048】
エアシリンダを用いる場合は、バネ座金53に替えて、またはバネ座金53を介してナット51及び回転摩擦機構40の間にエアシリンダを挟持するように構成にすればよい。前記エアシリンダに外部から注入する空気圧を調整することで、回転摩擦機構40の軸心P方向の締付力を任意に調整することができる。
【0049】
上述の構成により、関節装置1は、モータMを一方向に回転駆動することにより、その出力が伝動機構Tを介してハーモニックドライブHのウェーブジェネレータ31を駆動し、フレクスプライン32はトルク制限機構Rを介してリンク部材L1へ固定されているため、サーキュラスプライン34が軸心P周りに回転し、リンク部材L2はリンク部材L1に対して相対的に回転(以下、「正回転」と記す。)することとなる。モータMを逆方向に回転駆動することにより、リンク部材L2は、正回転とは逆方向に回転(以下、「負回転」と記す。)することとなる。
【0050】
ここで、モータMにより関節部材Jを介してリンク部材L2に付与される回転トルクと逆方向に、トルク制限機構Rによる保持トルクより大きな外力が付与されると、回転摩擦機構40の受圧体41と加圧体45が相対的に回転しはじめ、外力に伴なって出力軸33が回転トルクと逆方向へ回転(以下、「逆回転」と記す。)するので、前記外力がハーモニックドライブHを破損する虞が回避されるのである。
【0051】
正回転時には、リンク部材L2が逆回転し続け、ストッパ機構13に当接すると、リンク部材L1,12が直線状に位置する特異姿勢となり、外力を支持することとなる。負回転時には、リンク部材L2が逆回転し続け、リンク部材L1と当接し外力を支持することとなる。
【0052】
関節部材Jには軸心P周りのリンク部材L2のリンク部材L1に対する回転角度を検出するエンコーダを内装することが可能である。リンク部材L2の回転角度は、正回転及び負回転時、つまりモータMによる回転に伴なって回転するときは、モータMに備えられたエンコーダにより回転角度は検出できる。モータMと逆回転時には、モータMに備えられたエンコーダと関節部材Jに備えたエンコーダによって、リンク部材L2の回転角度が検出できるようになる。つまり、リンク部材L2に付与される回転トルクと逆方向に、トルク制限機構Rによる保持トルクより大きな外力が付与され、リンク部材L2が外力により回転トルクと逆方向へ回転していることを検出できる。
【0053】
尚、ストッパ機構13にリンク部材L2と当接したことを検出する接触センサを備え、リンク部材L2がリンク部材L1と直線状に位置する特異姿勢でとなったことを検出し、モータMに備えられたエンコーダと関節部材Jに備えられたエンコーダにより検出される回転角度をリセットするように構成してもよい。
【0054】
次に、上述の関節装置をユニバーサルロボットハンドのフィンガーユニットの関節に用いた構成を説明する。
【0055】
図4(a)に示すように、ユニバーサルロボットハンドUは、人間の掌に対応する基体60と、人間の手の母指(第一指)、示指(第二指)、中指(第三指)、薬指(第四指)、小指(第五指)に対応する五本のフィンガーユニット(以下、「指体」とも記す。)F1,F2,F3,F4,F5とから構成されている。
【0056】
各指体Fは、夫々複数のリンク部材Lと、リンク部材Lを所定の軸心周りに回転する複数の関節部材Jを介して連結した複数の関節装置で構成される。
【0057】
指体F2は、図4(b)に示すように、基体60に一端が接続されたリンク部材L21の他端に第一軸心P21周りに回転可能な第一関節部材J21が接続され、第一関節部材J21にリンク部材L22の一端が接続され、リンク部材L22の他端に第一軸心P21と直交する第二軸心P22周りに回転可能な第二関節部材J22が接続され、第二関節部材J22にリンク部材L23の一端が接続され、リンク部材L23の他端に第二軸心P22と平行な第三軸心P23周りに回転可能な第三関節部材J23が接続され、第三関節部材J23にリンク部材L24の一端が接続され、リンク部材L24の他端に第三軸心P23と平行な第四軸心P24周りに回転可能な第四関節部材J24が接続され、第四関節部材J24に指先を構成するリンク部材L25が接続され構成されている。尚、指体F3,F4,F5も同様の構成である。
【0058】
第一関節部材J21の回転により指体F2,F3,F4,F5の間隔が広がりまたは狭まるように変位し、第二関節部材J22から第四関節部材J24の回転により対象物を把持しまたは開放するように変位可能に構成されている。
【0059】
指体F1は、図4(c)に示すように、基体60に一端が接続されたリンク部材L11の他端に第一軸心P11周りに回転可能な第一関節部材J11が接続され、第一関節部材J11にリンク部材L12の一端が接続され、リンク部材L12の他端に第一軸心P11と直交する第二軸心P12周りに回転可能な第二関節部材J12が接続され、第二関節部材J12にリンク部材L13の一端が接続され、リンク部材L13の他端に第一軸心P12と平行な第三軸心P13周りに回転可能な第三関節部材J13が接続され、第三関節部材J13にリンク部材L14の一端が接続され、リンク部材L14の他端に第一軸心P12と平行な第四軸心P14周りに回転可能な第四関節部材J14が接続され、第四関節部材J14に指先を構成するリンク部材L15が接続され構成されている
【0060】
第一関節部材J11を回転し、指体F1を指体F2と対向配置にすることで指体F1と指体F2間で対象物を挟持可能となる。尚、前記指体F3,F4,F5は指体F2と平行に配列されているので、指体F1は指体F3,F4,F5とも対向配置され、指体F1と指体F3,F4,F5の間でも対象物を挟時可能である。また、指体F2,F3,F4,F5の第一関節部材Jの各軸心Pは平行であるため、指体F2,F3,F4,F5の夫々の間での挟持も可能である。
【0061】
各指体F1,F2,F3,F4,F5は基本的に同一構造であるので、以下、代表として指体F2について説明する。図5(a),(b)に示すように、リンク部材L21に固定されたモータM21の出力が伝動機構T21を介して関節部材J21のハーモニックドライブH21に伝達されリンク部材L22(L22a,22b)を回転させ、リンク部材L22に固定されてたモータM22の出力が伝動機構T22を介して関節部材J22のハーモニックドライブH22に伝達されリンク部材L23(L23a,23b)を回転させ、リンク部材23に内装されたモータM23の出力が伝動機構T23を介して関節部材J23のハーモニックドライブH23に伝達されリンク部材L24(L24a,L24b)を回転させるように構成されている。尚、リンク部材L22a及びL22bはモータM22に対して夫々固定されるので、機械的に一体とみなし、リンク部材L22a,L22bを特に区別することなくリンク部材L22と表現する。リンク部材L23,L24も同様である。
【0062】
モータM23の出力は伝動機構T23及び伝動機構T24を介してリンク部材24に接続された関節部材J24のハーモニックドライブH24に伝達され、指先を構成するリンク部材L25を回転するように構成されている。
【0063】
従って、モータM22,M23を一方向に回転駆動することにより、伝動機構T22,T23,T24を介してハーモニックドライブ,H22,H23,H24が回転され、関節部材J22,J23,J24の夫々が軸心P22,P23,P24周りで対象物に対して把持方向に揺動駆動され、モータM22,M2,M23を逆方向に回転駆動することにより、関節部材J22,J23,J24の夫々が軸心P22,P23,P24周りで開放方向に揺動駆動されるフィンガーユニットF2となる。
【0064】
次に、フィンガーユニットF2の把持動作の一例について詳述する。図6(a)に示すように、フィンガーユニットF2を把持対象物90に対向させ、モータM22,23を一方向に回転させると、関節部材J22,J23,J24が把持方向に回転駆動される。基端側の関節部材J22に接続されたリンク部材L23に把持対象物90が当接すると、把持対象物90からの反力を受け、その強さが保持トルク以上になるとトルク制限機構R22がモータM22による回転トルクをハーモニックドライブH22に伝達しなくなる。つまり、リンク部材L23はリンク部材L21に対して回転しない。このとき、モータM22による回転駆動力によりリンク部材L23は対象物に一定の接触力で接触し続けることになる。関節部材J23,J24及びリンク部材L24,L25に関しても同様の動作が繰り返されることで、対象物に対して複数点で接当支持することができるようになるのである。このときの状態が図6(b)に示されている。
【0065】
図6(b)に示される状態からモータM22,23を逆方向に回転させると、関節部材J22,J23,J24が把持対象物90を開放する方向に回転駆動され、リンク部材Lが各関節装置に備えられたストッパ機構に当接するまで回転し、フィンガーユニットF2は特異姿勢となる。このときの状態が図6(a)に示される。
【0066】
つまり、モータM22,M23を正方向に回転させることにより実行される上述の把持動作の後に、モータM22,M23を逆方向に回転させることにより、逆方向に回転する関節部材J22,J23,J24に連動してリンク部材L23,L24,L25が逆方向に回転駆動され、対象物に接当しているリンク部材L23,L24,L25が把持対象物90から離間する。その後、ストッパ機構によりリンク部材L23,L24,L25の回転が所定位置で阻止されるので、トルク制限機構Rが作動して、モータM22,M23の出力がリンク部材Lに伝達されず、一定の初期姿勢に確実に復帰させることができるようになるのである。
【0067】
尚、各関節部材Jのトルク制限機構Rの保持トルクは、同じ値に設定してもよく、また、フィンガーユニットF及びユニバーサルロボットハンドUの用いられる環境に応じて、夫々個別の強さに設定してもよい。
【0068】
次に、フィンガーユニットF2による把持動作時に、障害物等による外力91がある場合についてその一例を説明する。
【0069】
図6(a)に示すように、フィンガーユニットF2を把持対象物90に対向させ、モータM22,23を一方向に回転させると、関節部材J22,J23,J24が把持方向に回転駆動される。このとき、図7(a)に示すように、把持対象物90の付近に障害物等があり、リンク部材L24にトルク制限機構R24の保持トルク以上の外力91が働くと、トルク制限機構R24はモータM23の回転トルクをリンク部材L25に伝達しなくなる。関節部材J23は外力により、モータM23による回転トルクと逆方向に回転し、図7(b)に示すように、リンク部材L24はリンク部材L23のストッパ機構に当接するまで逆回転することになる。このようにして、関節部材J23のハーモニックドライブH23は破損の虞を回避できるのである。
【0070】
さらに、フィンガーユニットのリンク部材の関節側端部に力覚センサを備えることで、指体にかかる歪を検出することができる。力覚センサとしては、ストレインゲージ式圧力センサや圧電素子等の任意の歪検出素子を用いることができる。
【0071】
また、フィンガーユニットのリンク部材の中央部に触覚センサを備えることでフィンガーユニットが把持対象物に接触したことを検出できる。
【0072】
上述のように、フィンガーユニットのリンク部材に力覚センサ及び触覚センサを備えることで、挟持対象物の形状がどのような形においても、指体の姿勢制御及び圧力制御が可能となり、その具体的構成は特開2006−198748号公報に記載されているように適宜構成することが可能である。
【0073】
尚、上述のフィンガーユニットやユニバーサルロボットハンドの構造については基本的な要素のみの説明であり、実際に設計する際には、本発明の作用効果が奏される範囲で種々の変更が許容されるものである。例えば、フィンガーユニットを弾性を有する樹脂カバー体で被覆し、把持対象物を衝撃から保護できるように構成することが可能である。
【0074】
従って、上述のフィンガーユニットFを備えたユニバーサルロボットハンドUによれば、対象物の形状や大きさが多少変わるものであっても、またバラ積み部品等のように対象物の置かれた位置・姿勢が夫々異なるものであっても適切に把持動作することができる。さらに、フィンガーユニットFに備えられた力覚センサ及び触覚センサからの情報に基づいて、アクチュエータにより関節部材Jの締付力を動的に調整することで、把持対象物に応じて柔軟に対応することができる。しかも、フィンガーユニットが把持等の動作中に、障害物等によりトルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、回転摩擦機構の受圧体と加圧体が相対的に回転しはじめ、前記外力に伴なって出力軸が回転トルクと逆方向へ回転するので、前記外力がハーモニックドライブHを破損する虞が回避され、リンク部材がストッパ機構に当接し、一対のリンク部材が特異姿勢となった状態では、より大きな外力を支持することができるのである。
【0075】
上述の関節装置は、ユニバーサルロボットハンドのフィンガーユニットに限らず、ロボットアームの関節にも用いることができる。この場合も、関節装置がリンク部材を回転させるときに、当該関節装置に備えられたトルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、回転摩擦機構の受圧体と加圧体が相対的に回転しはじめ、外力に伴なって出力軸が回転トルクと逆方向へ回転するので、前記外力がハーモニックドライブ減速機構を破損する虞が回避されリンク部材がストッパ機構に当接し、一対のリンク部材が特異姿勢となった状態では、ハーモニックドライブによる保持トルクより大きな外力を支持することができるのである。
【0076】
このように、フィンガーユニット及びユニバーサルロボットハンドUは高度な制御を必要とせず、機械的に開閉するために確実な繰り返し動作が保証され、把持動作を機械的に実現することから、鋳造部品やプレス成形部品のような様々な曲面を持つ複雑形状の部品を適切に把持することができ、バラ積み部品等のように把持対象物の置かれた位置・姿勢、或いは把持対象物の形や寸法が少しでも異なる場合でも把持動作が行えるようになり、各関節装置に組み込まれたハーモニックドライブにトルク制限機構の保持トルクを超える過大な力が作用した場合には、機械的にハーモニックドライブに作用する外力を開放してハーモニックドライブの破損を防止することができる。つまり、より人に近い関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットを実現することができるようになるのである。
【0077】
以下に本発明による関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットの別の実施の形態を説明する。
【0078】
上述の実施形態では、リンク部材L1の他端側に、リンク部材L2がリンク部材L1に対して直線状に位置する特異姿勢で姿勢保持されるようにストッパ機構13がネジ14により固着されている構成について説明したが、ストッパ機構はこれに限られず、ストッパ機構としての板状体を、リンク部材L1の上端部からリンク部材L2の方向へ延出配置し、リンク部材L2とストッパ機構が当接することで、リンク部材L2の逆方向への回転を所定位置で阻止するように構成するものであってもよく、その具体的構成は適宜変更することができる。
【0079】
上述の実施形態では、回転摩擦機構40は、転動軸心bが軸心Pの垂直方向a対して所定の角度θ傾斜した構成について説明したが、転動軸心bが軸心Pの垂直方向aとのなす角度は得に限定するものではなく適宜設定されるものであり、その具体的構成は特開平08−074843号公報に記載されているように適宜構成することが可能である。
【0080】
上述の実施形態では、トルク制限機構に回転摩擦機構を用いたものを説明したが、トルク制限機構としてはこれに限るものではなく、公知のトルクリミッタで構成することも可能である。
【0081】
上述の実施形態では、アクチュエータとしてモータについて明示しなかったがアクチュエータとしては、エアモータ、電磁モータ、油圧モータ、電磁回転ソレノイド、パワーシリンダ等の直動アクチュエータ等、適宜使用することができることはいうまでもない。
【0082】
上述の実施形態では、伝動機構としてベベルギア及び平歯車によりモータの出力を関節部材に伝達する構成について説明したが、これもそのように限定するものではなく、プーリとタイミングベルト、ギアートレイン、コントロールワイヤ、ベルト、チェーン等の無限回転機構等公知の伝動機構を採用することができる。
【0083】
例えば、図8(a)に示すような、小径のベベルギアG10とそれに噛合する大径のベベルギアG20を介してモータMの出力をハーモニックドライブHに伝達する伝動機構であったり、図8(b)に示すように、小径のベベルギアG30に小径のベベルギアG40が噛合し、ベベルギアG40を平歯車W10、アイドル平歯車W20、平歯車W30を介してモータMの出力をハーモニックドライブHに伝達する伝動機構であってもよい。上述の構成を採用することによって、関節部材Jの径を小さく構成することが可能となる。
【0084】
同様に、図8(c)に示すように、平歯車W10,W30及びアイドル平歯車W20の代わりにタイミングプーリ・ベルトBを用いた場合も関節部材Jを小さくすることが可能となる。
【0085】
何れの場合にも、関節部材Jを小さくすることができるため、関節装置1を小さくすることが可能となる。
【0086】
上述の実施形態では、関節装置の関節部分に組み込む減速機構として、高減速比のハーモニックドライブ減速機構を備えた構成について説明したが、減速機構としてはハーモニックドライブ減速機構に限定するものではなく、適宜、関節駆動機構の構成を変更することにより遊星歯車減速機構、サイクロ減速機(登録商標、以下同じ)等の減速機構を備えて構成することが可能である。
【0087】
つまり、本発明による関節装置は、一対のリンク部材を所定軸心周りに回転する関節部材を介して連結した関節装置であって、前記関節部材に、一方のリンク部材に組み付けられたモータの出力が伝動機構を介して伝達され前記所定軸心周りに回転する入力部と、前記入力部の外周部と接合する回転部を備えた固定部と、前記回転部に形成された歯部と噛合する歯部が内周部に形成された出力部とからなる減速機構を備え、前記固定部がトルク制限機構を介して一方のリンク部材に固定されるとともに、前記出力部が他方のリンク部材に直接または間接的に固定されて構成されていればよい。
【0088】
以下、関節装置の別実施形態として、減速機構として遊星歯車減速機構を用いた関節装置2の構成について説明する。なお、図1(b)に示す関節装置1と同じ構成については同じ符号を付し説明を省略する。
【0089】
図9(a)に示すように、遊星歯車減速機構Yは、入力部としての太陽歯車70と、太陽歯車70と噛合する回転部としての複数の遊星歯車71と、遊星歯車71を保持する固定部としての遊星キャリア72と、出力部としての外輪歯車73で構成され、図9(b)に示すように、太陽歯車70が伝動機構Tの平歯車G4の回転軸に止めねじ16で嵌入固定され、遊星キャリア72に延出軸74が固着され、延出軸74がトルク制限機構Rを介してリンク部材L1に固定される。外輪歯車73の外周にはケーシング36が固着され、ケーシング36にはリンク部材L2が接続され関節部材J2が構成される。尚、外輪歯車73の外周に直接リンク部材L2を接続する場合は、ケーシング36は必ずしも備える必要はなく、伝達機構Tの構成も上述の図8に示すように適宜選択される。
【0090】
モータMの出力が伝動機構Tを介して太陽歯車70に伝達されると、遊星歯車の71の回転軸は遊星キャリア72により支持されているので、太陽歯車70の回転は、遊星歯車71に伝達され、遊星歯車71の回転が外輪歯車73に伝達され、リンク部材L2は、リンク部材L1に対して相対的に回転することとなる。
【0091】
ここで、モータMにより関節部材J2を介してリンク部材L2に付与される回転トルクと逆方向に、トルク制限機構Rによる保持トルクより大きな外力が付与されると、トルク制限機構の受圧体41と加圧体45が相対的に回転しはじめ、外力に伴なって出力軸74が回転トルクと逆方向へ回転し、前記外力が遊星歯車減速機構Yを破損する虞が回避されるのである。
【0092】
なお、図9(c)に示すように、遊星キャリア73に受圧体41を固定し、受圧体41に出力軸74を備えてトルク制限機構を構成してもよく、具体的な構成は適宜設計される。
【0093】
さらに別の実施形態として、関節部材を構成する減速機構としてサイクロ減速機を用いた関節装置3の構成について説明する。なお、図1(b)に示す関節装置1と同じ構成については同じ符号を付し説明を省略する。
【0094】
図10(a)に示すように、サイクロ減速機Cは、入力部としての偏心カム80と、偏心カム80を挿通する開口が中央部に形成された回転部としての曲線板81と、固定部としての複数の内ピン82と、出力部としての複数の外ピン83を備え、曲線板81には各内ピン82と噛合する内ピンと同数の内ピン用開口85が形成され、さらに外周はエピトロコイド曲線面が形成され外ピン83と噛合するように構成されている。
【0095】
偏心カム80が伝動機構Tの平歯車G4の回転軸に嵌入固定され、曲線板81中央部開口に偏心カム80が挿通される。複数の内ピン82は内ピン保持部材84に所定間隔で固定され夫々が曲線板81の内ピン用開口85に挿通される。内ピン保持部材84に出力軸86が固定され、トルク制限機構Rを介してリンク部材L1に固定される。さらに、曲線板81の外周に形成されたエピトロコイド曲線面に沿って外ピン83を保持する外ピン保持部材87にケーシング36が固着され、ケーシングに36にリンク部材L2が接続される。尚、外ピン保持部材87の外周に直接リンク部材L2を接続する場合は、ケーシング36は必ずしも備える必要はなく、伝達機構Tの構成も上述の図8に示すように適宜選択される。
【0096】
モータMの出力が伝動機構Tを介して偏心カム80に伝達されると、偏心カム80の偏心回転とともに曲線体81が偏心運動し、エピトロコイド曲線面が順次外ピン83と噛合しながらリンク部材L2をリンク部材L1に対して相対的に回転させることとなる。このとき内ピン82及び内ピン保持部材84は、トルク制限機構Rを介してリンク部材L1に固定されているので回転しない。
【0097】
ここで、モータMにより関節部材J3を介してリンク部材L2に付与される回転トルクと逆方向に、トルク制限機構Rによる保持トルクより大きな外力が付与されると、トルク制限機構Rの受圧体41と加圧体45が相対的に回転しはじめ、外力に伴なって出力軸86が回転トルクと逆方向へ回転し、前記外力がサイクロ減速機Cを破損する虞が回避されるのである。
【0098】
なお、図10(c)に示すように、内ピン保持部材84に受圧体45を固定し、受圧体45に出力軸86を備えてトルク制限機構を構成してもよく、具体的な構成は適宜選択される。
【0099】
上述の実施形態では、三個の関節装置で一個のフィンガーユニットを構成するものを説明したが、フィンガーユニットを構成する関節装置の数は特に限定するものではなく、一個の関節装置でフィンガーユニットを構成するものであってもよい。さらには、ユニバーサルロボットハンドを構成するフィンガーユニットの数及びロボットアームを構成する関節装置の数も特に限定するものではない。
【0100】
上述の実施形態で説明した関節装置の具体的構造は一実施形態に過ぎず、本発明の範囲がこれによって制限されるものではなく、同様の作用効果を奏する範囲において適宜構成を変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】(a)は本発明による関節装置の正面図、(b)は関節装置の側断面図
【図2】本発明によるハーモニックドライブの回転動作説明図
【図3】トルク制限機構として回転摩擦機構の説明図で、(a)は分解斜視図、(b)は要部説明図、(c)はローラ群の配置姿勢の説明図、(d)は作用説明図
【図4】(a)は本発明によるユニバーサルロボットハンドの概略図、(b)は示指(第二指)に対応するフィンガーユニットの概略説明図、(c)は母指(第一指)に対応するフィンガーユニットの概略説明図
【図5】(a)は本発明によるフィンガーユニットの平面図、(b)は同正面図
【図6】本発明によるフィンガーユニットの動作説明図で、(a)は初期姿勢の説明図、(b)は把持姿勢の説明図
【図7】本発明によるフィンガーユニットの動作説明図で、(a)は把持動作中に外力が働いたことの説明図、(b)は外力により特異姿勢となることの説明図
【図8】(a)は別実施形態の説明図、(b)は別実施形態の説明図、(c)は別実施形態の説明図
【図9】別実施形態の説明図で(a)は、遊星歯車減速機構の説明図、(b)は関節装置の断面図、(c)は関節装置の概略図
【図10】別実施形態の説明図で(a)は、サイクロ減速機の説明図、(b)は関節装置の断面図、(c)は関節装置の概略図
【図11】従来技術によるロボットハンドの構成図
【図12】従来技術によるロボットハンドの構成図
【符号の説明】
【0102】
1:関節装置
2:関節装置
3:関節装置
13:ストッパ機構
14:ネジ
15:止めねじ
16:止めねじ
31:ウェーブジェネレータ
32:フレクスプライン
33:延出軸
34:サーキュラスプライン
35:ベアリング
36:ケーシング
37:歯部
38:歯部
40:回転摩擦機構
41:受圧体
43:保持体
42:ローラ
45:加圧体
44:保持孔
50:固定機構
51:ナット
52:止めねじ
53:バネ座金
60:基体
70:太陽歯車
71:遊星歯車
72:遊星キャリア7
73:外輪歯車
74:延出軸
80:偏心カム
81:曲線板
82:内ピン
83:外ピン
84:内ピン保持部材
85:内ピン用開口
86:出力軸
87:外ピン保持部材
90:把持対象物
91:外力
B:タイミングプーリ・ベルト
C:サイクロ減速機
F1:母指(第一指)
F2:示指(第二指)
F3:中指(第三指)
F4:薬指(第四指)
F5:小指(第五指)
G1:ベベルギア
G2:ベベルギア
G3:平歯車
G4:平歯車
G10:ベベルギア
G20:ベベルギア
G30:ベベルギア
G40:ベベルギア
H:ハーモニックドライブ
H21:ハーモニックドライブ
H22:ハーモニックドライブ
H24:ハーモニックドライブ
J:関節部材
J2:関節部材
J3:関節部材
J11:第一関節部材
J12:第二関節部材
J13:第三関節部材
J14:第四関節部材
J21:第一関節部材
J22:第二関節部材
J23:第三関節部材
J24:第四関節部材
L1:リンク部材
L2:リンク部材
L11:リンク部材
L12:リンク部材
L13:リンク部材
L14:リンク部材
L15:リンク部材
L21:リンク部材
L22(L22a,22b):リンク部材
L23(L23a,23b):リンク部材
L24(L24a,L24b):リンク部材
L25:リンク部材
P:軸心
P11:第一軸心
P12:第二軸心
P13:第三軸心
P14:第四軸心
P21:第一軸心
P22:第二軸心
P23:第三軸心
P24:第四軸心
R:トルク制限機構
M:モータ
M21:モータ
M22:モータ
M23:モータ
T:伝動機構
T21:伝動機構
T22:伝動機構
T23:伝動機構
T24:伝動機構
U:ユニバーサルロボットハンド
W10:平歯車
W20:アイドル平歯車
W30:平歯車
Y:遊星歯車減速機構
a:径方向
b:転動軸心
θ:角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のリンク部材を所定軸心周りに回転する関節部材を介して連結した関節装置、関節装置を用いたロボットアーム、及び、フィンガーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
生産現場において利用されている産業用ロボットの把持装置(以下、「ハンド」とも記す。)にはプライヤのような開閉機構で対象物を掴む形態のメカニカルグリッパが多用されているが、多くの場合、対象物を把持するために相対的に運動する二つのリンクまたは三爪チャックのような三リンクを有する機構で構成されている。
【0003】
このようなメカニカルグリッパは高度な制御を必要とせず、機械的に開閉するために、確実な繰り返し動作が保証されているが、把持動作を機械的に実現することから、生産現場の定められた位置・姿勢に整列された既知形状の対象物に対しては確実な把持を保証するが、鋳造部品やプレス成形部品のような様々な曲面を持つ複雑形状の部品を適切に把持することが困難であり、バラ積み部品等のように対象物の置かれた位置・姿勢、或いは対象物の形や寸法が少しでも異なると、最早一つのメカニカルグリッパでは対応できない。
【0004】
そのため、生産現場では、視覚センサを導入して複雑な形状認識処理によって部品の位置・姿勢を測定してメカニカルグリッパで把持可能な把持点を決定したり、対象物の形状・寸法の種類に応じて複数のメカニカルグリッパを準備して、対象物に応じてその都度グリッパを交換するといった多大なコストを必要とする複雑なロボットシステムの導入を余儀なくされている。
【0005】
一方、人は複数の関節を持つ5本の指からなる手で複雑な作業を器用に実行することができる。人の手のような構造ならびに形状を持ち、人の手と同様の運動制御機能を有したユニバーサルなロボットハンドを実現することができるならば、ロボットは、人間と同様、一つのハンド機構で様々な複雑作業を器用に行うことが可能になる。また、ロボットに合わせてその都度開発していた特殊作業工具は必要でなくなり、ロボットは、従来、人が使用してきた汎用作業工具を用いて作業を行うことも可能となる。
【0006】
このような背景の下、人間の手のような機構と人間の手のような巧みな作業機能を有したロボットハンドを実現すべく、人間の手を模した複数の関節を備えた複数の指から構成されるユニバーサルロボットハンドが研究開発されてきた。
【0007】
このようなロボットハンドとして、特許文献1には、図11に示すように、人間の手と類似した運動ができるロボットハンド構造、即ち、四関節J100,J200,J300,J400備えた指を複数本配置し、各関節を駆動するモータを内蔵したロボットハンドにおいて、各指の根本側の第一関節J100と第二関節J200の軸が1点で直交し、その二つの関節を独立に駆動できるように1つの指について二つのモータを掌に設けたことを特徴とするロボットハンドが提案されている。
【0008】
上述の文献には、第三関節J300用のモータM300と駆動連結された4節リンク機構Lを介して第四関節J400の軸を駆動することで、一つのモータにより第三関節J300と第四関節J400を同時に同じ方向に回転可能な構成、及び、指先に力覚センサS100を備えた構成が提案されている。
【0009】
しかし、関節で連結されるリンクL300、L400に対して、モータM300からギア式の減速機構を介してリンクL300を駆動するとともに減速機構からさらにリンクやワイヤー等の駆動伝動機構、ここでは4節リンク機構Lを介してリンクL400を駆動するごとき構成を採用する場合には、減速機構によるギアのバックラッシュや駆動伝動機構による機械的遊びによるガタの発生のために正確な指の動作制御が困難となるばかりか、モータから減速機構を経て駆動伝動機構に動力を伝達するために駆動伝達機構は多大のトルクを伝達することが必要となり駆動伝達機構の大型化、延いてはロボットハンドの大型化を招くという問題があった。
【0010】
そこで、本願発明者らは、特許文献2に示すように、駆動系の機械的ガタを効果的に除去するとともに、力覚等のセンシング系の実装上の工夫を施すことにより、人の指のごとき微妙な動作を実現することが可能な関節装置、関節装置を用いたコンパクト設計が可能なロボットフィンガー、及び、ユニバーサルロボットハンドを提供することを目的とした関節装置を提案している。
【0011】
具体的には、図12に示すように、一方のリンク部材L101に固定したフレクスプラインと、その回転軸心と交差する方向に延出形成した薄肉部を他方のリンク部材L202に固定したサーキュラスプラインとを備えてなるハーモニックドライブ減速機H101を関節部材に組み込み、基端側リンク部材L101に収容したモータ(アクチュエータ)M101の出力を基端側のウェーブジェネレータに伝達する第一の伝動機構T101と、モータM101の出力を第一の伝動機構T101及び基端側リンク部材L101に隣接するリンク部材L202に収容した伝達シャフトS101を介して基端側のウェーブジェネレータに隣接する関節部材に組み込んだハーモニックドライブ減速機H202のウェーブジェネレータに伝達する第二の伝動機構T202を備えた関節装置である。
【特許文献1】特開平11−156778号公報
【特許文献2】特開2007−152528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、関節装置の駆動機構として、アクチュエータからの動力を減速機を介して関節軸へ伝達してリンクを駆動する方式を採用すると、減速機によって増力することができるため、小さな出力のアクチュエータでも関節リンクを駆動するために必要な大きな動力が得られるという利点を持つ。
【0013】
アクチュエータとして、取扱いの容易さからDCモータなどの電気モータが多く使用されているが、電気モータは一般に高速回転・低トルクであるためロボットの関節機構では高減速比の減速機を介して使用することが必要となる。
【0014】
こうしたアクチュエータ及び減速機から構成される関節駆動機構はバックドライバビリティ(関節軸からアクチュエータ出力軸を動かすこと)に劣るため、環境から駆動リンクへ外部トルクが作用すると、そのほとんどが減速機の構造へ作用することとなる。
【0015】
そのため、ロボットアームやロボットフィンガー等に用いられる関節装置に使用される減速機は、外部トルクに対して十分な構造強度を有することが必要となる。
【0016】
しかも、ロボットの関節装置はその運動の高速化ならびに機構の軽量化の必要から、より小型軽量で高減速比の減速機を限られたスペースにコンパクトに配置するように設計することが要求される。
【0017】
しかし、小型軽量で高減速比の減速機を得ようとすると、その歯型形状を小さくしなければならず、出力軸に作用する外部トルクに対して十分な構造強度を得ることは困難となる。
【0018】
従って、ロボットアーム等の運転に際しては、環境から関節リンク機構へ作用する力が減速機出力軸の許容外部トルクの範囲内に収まるように、限定して使用することが要求されるという問題があった。
【0019】
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、ロボットの関節装置に組み込まれた減速機に許容外部トルクを超える過大な力が作用した場合でも、減速機に作用する外力を開放して減速機の破損を防止することができる関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の目的を達成するため、本発明による関節装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、一対のリンク部材を所定軸心周りに回転する関節部材を介して連結した関節装置であって、前記関節部材に、一方のリンク部材に組み付けられたモータの出力が伝動機構を介して伝達され前記所定軸心周りに回転するウェーブジェネレータと、前記ウェーブジェネレータの外周部と接合する内周部を備えたフレクスプラインと、前記フレクスプラインの外周部に形成された歯部と噛合する歯部が内周部に形成されたサーキュラスプラインとからなるハーモニックドライブ減速機構を備え、前記フレクスプラインがトルク制限機構を介して一方のリンク部材に固定されるとともに、前記サーキュラスプラインが他方のリンク部材に直接または間接的に固定されている点にある。
【0021】
上述の特徴構成によれば、モータの出力が伝動機構を介してハーモニックドライブ減速機構を構成するウェーブジェネレータに伝達されると、フレクスプラインを介してサーキュラスプラインに伝達されるので、サーキュラスプラインと固定された他方のリンク部材は、フレクスプラインと固定された一方のリンク部材に対してウェーブジェネレータの回転軸心周りに、相対的に回転することになる。前記モータにより前記関節部材を介して他方のリンク部材に付与される回転トルクと逆方向に、前記トルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、前記トルク制限機構により前記関節部材が前記回転トルクと逆方向へ回転して、ハーモニックドライブ減速機構にかかる外部トルクが開放されるので、関節装置の破損を防止することがきる。
【0022】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記トルク制限機構は、一方のリンク部材に固定された環状の受圧体と、転動軸心が前記受圧体の径方向対して所定の角度で傾斜した姿勢で前記受圧体の周方向に沿って配列された複数のローラと、各ローラを所定間隔で転動自在に保持する環状の保持体と、前記ローラを挟み前記受圧体と対向配置された環状の加圧体とを備え、前記フレクスプラインの延出軸に外嵌された環状の回転摩擦機構と、前記延出軸と前記受圧体とを前記加圧体を介して直接または間接的に所定の締付力で締付固定する固定機構を備えている点にある。
【0023】
上述の構成によれば、フレクスプラインの延出軸の軸方向に固定機構により所定の締付力で締付固定した状態で一対のリンク部材を相対的に回転させると、各ローラが受圧体及び加圧体に接しながら転動する。各ローラは延出軸の回転軌道に対して所定角度だけ傾斜した方向に転動しようとするのを保持体で規制されながら延出軸の回転軌道に沿って移動するため、各ローラと受圧体及び加圧体との間に前記延出軸の軸方向の締付力に比例した摩擦力が発生する。その際、各ローラは、転動しながら滑り摩擦を発生させるので、静摩擦は発生せずに常に動摩擦による安定した抵抗力が得られる。従って、固定機構により延出軸の軸方向の締付力を適切に設定することにより、一対のリンク部材に対する許容外部トルクを適切に調整することができる。
【0024】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記固定機構による前記延出軸と前記受圧体との間の締付力を動的に調整するアクチュエータを備えている点にある。
【0025】
上述の構成によれば、関節装置の用いられる環境により適宜トルク制限機構の許容外部トルクを動的に調整することができる。
【0026】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記モータにより前記関節部材を介して他方のリンク部材に付与される回転トルクと逆方向に、前記トルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、前記トルク制限機構により前記関節部材が前記回転トルクと逆方向へ回転するように構成され、前記一対のリンク部材が直線状に位置する特異姿勢で姿勢保持されるように、一方のリンク部材にストッパ機構を設けている点にある。
【0027】
上述の構成によれば、前記モータにより前記関節部材を介して他方のリンク部材に付与される回転トルクと逆方向に、前記トルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、前記トルク制限機構により前記関節部材が前記回転トルクと逆方向へ回転して、ハーモニックドライブ減速機構を破損から保護するとともに、リンク部材がストッパ機構に当接し特異姿勢となることで、各構成部材の剛性で前記大きな外力を支持することができる。
【0028】
本発明によるロボットアームの特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成を備えた関節装置が組み込まれた点にある。
【0029】
上述の構成によれば、ロボットアームの関節に上述の関節装置を組み込むことにより、駆動リンクに過大な外力が作用した際に高減速比のハーモニックドライブ減速機を保護するとともにメカニカルストッパの位置まで回転して機構的に大きな外力の支持が可能な特異姿勢を自ら採らせることができる。このことにより幅広いレンジにわたって外界との力学的相互作用に対応することが可能なロボットアームを実現することができる。
【0030】
本発明によるフィンガーユニットの特徴構成は、同請求項6に記載した通り、ユニバーサルロボットハンドに用いられ、複数の関節装置を備えたフィンガーユニットであって、上述の第一から第四の何れかの特徴構成を備えた関節装置が組み込まれた点にある。
【0031】
上述の構成によれば、各関節装置に組み込まれたハーモニックドライブにトルク制限機構の保持トルクを超える過大な力が作用した場合には、機械的にハーモニックドライブに作用する外力を開放してハーモニックドライブの破損を防止することができる。つまり、より人に近い関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットを実現することができる
【発明の効果】
【0032】
以上説明した通り、本発明によれば、ロボットの関節装置に組み込まれた減速機に許容外部トルクを超える過大な力が作用した場合でも、減速機に作用する外力を開放して減速機の破損を防止することができる関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本発明による関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットの実施の形態を説明する。
【0034】
図1に示すように、関節装置1は、一対のリンク部材L1,L2と、一対のリンク部材L1,L2を軸心P周りに回転する関節部材Jと、一方のリンク部材L1に固定された軸心Pと直交する方向に回転軸を有するエンコーダ内蔵のモータMと、伝動機構Tを備え、リンク部材L1の一端に固定されたモータMの出力が伝動機構Tを介してリンク部材L1の他端に軸支された関節部材Jに伝達され、関節部材Jが軸心P周りに回転することで、関節部材Jに接続されたリンク部材L2がリンク部材L1に対して相対的に回転するように構成されている。リンク部材L1の他端側には、リンク部材L2がリンク部材L1に対して直線状に位置する特異姿勢で姿勢保持されるようにストッパ機構13がネジ14により固着されている。
【0035】
伝動機構Tは、小径のベベルギアG1と、ベベルギアG1と噛合する大径のベベルギアG2と、平歯車G3と、平歯車G3と噛合する平歯車G4で構成されている。ベベルギアG1はモータMの出力軸に嵌入連結され、ベベルギアG2は平歯車G3の回転軸に止めねじ15で嵌入固定され、平歯車G4の回転軸には関節部材Jが連結されている。
【0036】
関節部材Jは、ハーモニックドライブ減速機構(以下、「ハーモニックドライブ」と記す。)Hと、トルク制限機構Rで構成されている。
【0037】
ハーモニックドライブHは、楕円状のカムとその外周に嵌めたベアリングにより構成された入力部としてのウェーブジェネレータ31と、薄肉カップ状の金属弾性体で開口部の外周に歯部が形成された回転部としてのフレクスプライン32と、リング状の剛体内周にフレクスプライン32と同ピッチでその歯数がフレクスプライン32の歯部より二枚多い歯部が形成された出力部としてのサーキュラスプライン34で構成されている。ウェーブジェネレータ31は、伝動機構Tの平歯車G4の回転軸に止めねじ16で嵌入固定され、フレクスプライン32のカップ底面部には固定部としての延出軸33が固着され、延出軸33はサーキュラスプライン34にベアリング35を介して支持され、サーキュラスプライン34の外周にはケーシング36が固着され、ケーシング36にはリンク部材L2が接続されている。尚、サーキュラスプライン34の外周に直接リンク部材L2を接続する場合は、ケーシング36は必ずしも備える必要はない。
【0038】
図2に示すように、モータMの出力が伝動機構Tを介してウェーブジェネレータ31に伝達され、図中破線矢印で示される方向に回転すると、それに伴ないフレクスプライン32が弾性変形し、フレクスプライン32の外周部に形成された歯部37と、歯部37と噛合するサーキュラスプライン34の内周部に形成された歯部38との噛み合い位置が順次移動しながら、フレクスプライン32に対してサーキュラスプライン34が図中実線矢印で示される方向に相対的に回転する。歯部37の歯数は、歯部38の歯数より二枚少ないので、これによりモータMからの出力が減速されることとなる。
【0039】
トルク制限機構Rは、軸心P方向の締付力に応じた回転摩擦が得られる回転摩擦機構40と、回転摩擦機構40を所定の締付力で締付固定する固定機構50を備えている。
【0040】
回転摩擦機構40は、図3(a),(b),(c)に示すように、転動軸心bが軸心Pと垂直方向aに対して所定の傾斜角度θで転動自在に且つ受圧体41の回転軌道に沿って保持体43に保持された複数のローラ42が、受圧体41と加圧体45の対向面間に所定の締付力で挟持されている。複数のローラ42は転動軸心b方向に一様に延びる円柱形状をなし、後述する保持体43に形成された保持孔44により受圧体41の周方向に等間隔で転動自在に配列されている。また、各ローラ42の両端面は保持体43との摩擦を少なくするために凸球面状に形成されている。尚、受圧体41及び加圧体45はローラ42との当接面が平面に形成されていればよく、その形状は円環状に限られない。
【0041】
保持体43は、軸心P方向の厚みがローラ42の外径よりも小さく形成されている。保持体43にはローラ42を保持する複数の保持孔44が形成され、各保持孔44にはローラ42が転動自在に収容されている。また、各保持孔44は、図3(c)に示すようにローラ42の転動軸心bが受圧体41の径方向aに対して所定の角度θだけ傾斜するように形成されている。
【0042】
従って、図3(d)に示すように、受圧体41及び加圧体45を軸心P方向に加圧した状態で回転させると、ローラ42が受圧体41及び加圧体45に接しながら転動し、これに追従して保持体43も回転する。その際、各ローラ42は、受圧体41及び加圧体45の回転軌道に対して角度θだけ傾斜した方向に転動しようとするのを保持体43で規制されながら受圧体41及び加圧体45の回転軌道に沿って移動するため、各ローラ42と受圧体41及び加圧体45との間には軸心P方向の荷重に比例した摩擦力が発生する。
【0043】
つまり、上述の摩擦力を上回る回転トルクにより初めて受圧体41及び加圧体45は相対的に回転するのである。
【0044】
上述の回転摩擦装置40がフレクスプライン32の延出軸33に外嵌され、固定機構50として延出軸33に筒状体55を外嵌固定し、その周囲おねじを形成し、バネ座金53を介してナット51が螺着することで、受圧体41と加圧体45が軸心P方向に所定の締付力で締付固定される。ナット51は止めねじ52により任意の締付力となるように延出軸33に固定できる。このように、ナット51の締付力によって、受圧体41及び加圧体45の相対的な回転運動に軸心P方向の荷重に比例した任意の保持トルクを付与することができ、しかも止めねじ51により締付力を調整固定することにより、トルク制限機構Rの保持トルクを極めて容易に制御することができる。尚、延出軸33の外周におねじを形成し、ナット51と噛合させる場合は、筒状体55は必ずしも備える必要はない。
【0045】
尚、固定機構50として、ナット51、止めねじ52、バネ座金53により出力軸33と受圧体41との間の締付力を固定する構成に限らず、前記締付力を動的に調整するアクチュエータを備えてもよい。このようなアクチュエータとしては超音波モータ、圧電素子、エアシリンダ等を用いることができる。
【0046】
超音波モータを用いる場合は、延出軸33に回転摩擦装置40を外嵌し、超音波モータを構成する圧電セラミック、ステータを外嵌し、その後延出軸33に形成したおねじと噛合するめねじが形成されたロータを外嵌するように構成にすればよい。前記圧電セラミックにより発生させた超音波振動を利用してステータにたわみ波動を発生させ、その進行波を利用してロータを回転させると、前記ロータは回転に伴ない延出軸33に沿って軸心P方向に移動するので、回転摩擦機構40の軸心P方向の締付力を任意に調整することができる。
【0047】
圧電素子を用いる場合は、バネ座金53に替えて、またはバネ座金53を介してナット51及び回転摩擦機構40の間に圧電素子を挟持するように構成にすればよい。前記圧電素子に電圧を加えることで、前記圧電素子自体の厚みが変位するので回転摩擦機構40の軸心P方向の締付力を任意に調整することができる。
【0048】
エアシリンダを用いる場合は、バネ座金53に替えて、またはバネ座金53を介してナット51及び回転摩擦機構40の間にエアシリンダを挟持するように構成にすればよい。前記エアシリンダに外部から注入する空気圧を調整することで、回転摩擦機構40の軸心P方向の締付力を任意に調整することができる。
【0049】
上述の構成により、関節装置1は、モータMを一方向に回転駆動することにより、その出力が伝動機構Tを介してハーモニックドライブHのウェーブジェネレータ31を駆動し、フレクスプライン32はトルク制限機構Rを介してリンク部材L1へ固定されているため、サーキュラスプライン34が軸心P周りに回転し、リンク部材L2はリンク部材L1に対して相対的に回転(以下、「正回転」と記す。)することとなる。モータMを逆方向に回転駆動することにより、リンク部材L2は、正回転とは逆方向に回転(以下、「負回転」と記す。)することとなる。
【0050】
ここで、モータMにより関節部材Jを介してリンク部材L2に付与される回転トルクと逆方向に、トルク制限機構Rによる保持トルクより大きな外力が付与されると、回転摩擦機構40の受圧体41と加圧体45が相対的に回転しはじめ、外力に伴なって出力軸33が回転トルクと逆方向へ回転(以下、「逆回転」と記す。)するので、前記外力がハーモニックドライブHを破損する虞が回避されるのである。
【0051】
正回転時には、リンク部材L2が逆回転し続け、ストッパ機構13に当接すると、リンク部材L1,12が直線状に位置する特異姿勢となり、外力を支持することとなる。負回転時には、リンク部材L2が逆回転し続け、リンク部材L1と当接し外力を支持することとなる。
【0052】
関節部材Jには軸心P周りのリンク部材L2のリンク部材L1に対する回転角度を検出するエンコーダを内装することが可能である。リンク部材L2の回転角度は、正回転及び負回転時、つまりモータMによる回転に伴なって回転するときは、モータMに備えられたエンコーダにより回転角度は検出できる。モータMと逆回転時には、モータMに備えられたエンコーダと関節部材Jに備えたエンコーダによって、リンク部材L2の回転角度が検出できるようになる。つまり、リンク部材L2に付与される回転トルクと逆方向に、トルク制限機構Rによる保持トルクより大きな外力が付与され、リンク部材L2が外力により回転トルクと逆方向へ回転していることを検出できる。
【0053】
尚、ストッパ機構13にリンク部材L2と当接したことを検出する接触センサを備え、リンク部材L2がリンク部材L1と直線状に位置する特異姿勢でとなったことを検出し、モータMに備えられたエンコーダと関節部材Jに備えられたエンコーダにより検出される回転角度をリセットするように構成してもよい。
【0054】
次に、上述の関節装置をユニバーサルロボットハンドのフィンガーユニットの関節に用いた構成を説明する。
【0055】
図4(a)に示すように、ユニバーサルロボットハンドUは、人間の掌に対応する基体60と、人間の手の母指(第一指)、示指(第二指)、中指(第三指)、薬指(第四指)、小指(第五指)に対応する五本のフィンガーユニット(以下、「指体」とも記す。)F1,F2,F3,F4,F5とから構成されている。
【0056】
各指体Fは、夫々複数のリンク部材Lと、リンク部材Lを所定の軸心周りに回転する複数の関節部材Jを介して連結した複数の関節装置で構成される。
【0057】
指体F2は、図4(b)に示すように、基体60に一端が接続されたリンク部材L21の他端に第一軸心P21周りに回転可能な第一関節部材J21が接続され、第一関節部材J21にリンク部材L22の一端が接続され、リンク部材L22の他端に第一軸心P21と直交する第二軸心P22周りに回転可能な第二関節部材J22が接続され、第二関節部材J22にリンク部材L23の一端が接続され、リンク部材L23の他端に第二軸心P22と平行な第三軸心P23周りに回転可能な第三関節部材J23が接続され、第三関節部材J23にリンク部材L24の一端が接続され、リンク部材L24の他端に第三軸心P23と平行な第四軸心P24周りに回転可能な第四関節部材J24が接続され、第四関節部材J24に指先を構成するリンク部材L25が接続され構成されている。尚、指体F3,F4,F5も同様の構成である。
【0058】
第一関節部材J21の回転により指体F2,F3,F4,F5の間隔が広がりまたは狭まるように変位し、第二関節部材J22から第四関節部材J24の回転により対象物を把持しまたは開放するように変位可能に構成されている。
【0059】
指体F1は、図4(c)に示すように、基体60に一端が接続されたリンク部材L11の他端に第一軸心P11周りに回転可能な第一関節部材J11が接続され、第一関節部材J11にリンク部材L12の一端が接続され、リンク部材L12の他端に第一軸心P11と直交する第二軸心P12周りに回転可能な第二関節部材J12が接続され、第二関節部材J12にリンク部材L13の一端が接続され、リンク部材L13の他端に第一軸心P12と平行な第三軸心P13周りに回転可能な第三関節部材J13が接続され、第三関節部材J13にリンク部材L14の一端が接続され、リンク部材L14の他端に第一軸心P12と平行な第四軸心P14周りに回転可能な第四関節部材J14が接続され、第四関節部材J14に指先を構成するリンク部材L15が接続され構成されている
【0060】
第一関節部材J11を回転し、指体F1を指体F2と対向配置にすることで指体F1と指体F2間で対象物を挟持可能となる。尚、前記指体F3,F4,F5は指体F2と平行に配列されているので、指体F1は指体F3,F4,F5とも対向配置され、指体F1と指体F3,F4,F5の間でも対象物を挟時可能である。また、指体F2,F3,F4,F5の第一関節部材Jの各軸心Pは平行であるため、指体F2,F3,F4,F5の夫々の間での挟持も可能である。
【0061】
各指体F1,F2,F3,F4,F5は基本的に同一構造であるので、以下、代表として指体F2について説明する。図5(a),(b)に示すように、リンク部材L21に固定されたモータM21の出力が伝動機構T21を介して関節部材J21のハーモニックドライブH21に伝達されリンク部材L22(L22a,22b)を回転させ、リンク部材L22に固定されてたモータM22の出力が伝動機構T22を介して関節部材J22のハーモニックドライブH22に伝達されリンク部材L23(L23a,23b)を回転させ、リンク部材23に内装されたモータM23の出力が伝動機構T23を介して関節部材J23のハーモニックドライブH23に伝達されリンク部材L24(L24a,L24b)を回転させるように構成されている。尚、リンク部材L22a及びL22bはモータM22に対して夫々固定されるので、機械的に一体とみなし、リンク部材L22a,L22bを特に区別することなくリンク部材L22と表現する。リンク部材L23,L24も同様である。
【0062】
モータM23の出力は伝動機構T23及び伝動機構T24を介してリンク部材24に接続された関節部材J24のハーモニックドライブH24に伝達され、指先を構成するリンク部材L25を回転するように構成されている。
【0063】
従って、モータM22,M23を一方向に回転駆動することにより、伝動機構T22,T23,T24を介してハーモニックドライブ,H22,H23,H24が回転され、関節部材J22,J23,J24の夫々が軸心P22,P23,P24周りで対象物に対して把持方向に揺動駆動され、モータM22,M2,M23を逆方向に回転駆動することにより、関節部材J22,J23,J24の夫々が軸心P22,P23,P24周りで開放方向に揺動駆動されるフィンガーユニットF2となる。
【0064】
次に、フィンガーユニットF2の把持動作の一例について詳述する。図6(a)に示すように、フィンガーユニットF2を把持対象物90に対向させ、モータM22,23を一方向に回転させると、関節部材J22,J23,J24が把持方向に回転駆動される。基端側の関節部材J22に接続されたリンク部材L23に把持対象物90が当接すると、把持対象物90からの反力を受け、その強さが保持トルク以上になるとトルク制限機構R22がモータM22による回転トルクをハーモニックドライブH22に伝達しなくなる。つまり、リンク部材L23はリンク部材L21に対して回転しない。このとき、モータM22による回転駆動力によりリンク部材L23は対象物に一定の接触力で接触し続けることになる。関節部材J23,J24及びリンク部材L24,L25に関しても同様の動作が繰り返されることで、対象物に対して複数点で接当支持することができるようになるのである。このときの状態が図6(b)に示されている。
【0065】
図6(b)に示される状態からモータM22,23を逆方向に回転させると、関節部材J22,J23,J24が把持対象物90を開放する方向に回転駆動され、リンク部材Lが各関節装置に備えられたストッパ機構に当接するまで回転し、フィンガーユニットF2は特異姿勢となる。このときの状態が図6(a)に示される。
【0066】
つまり、モータM22,M23を正方向に回転させることにより実行される上述の把持動作の後に、モータM22,M23を逆方向に回転させることにより、逆方向に回転する関節部材J22,J23,J24に連動してリンク部材L23,L24,L25が逆方向に回転駆動され、対象物に接当しているリンク部材L23,L24,L25が把持対象物90から離間する。その後、ストッパ機構によりリンク部材L23,L24,L25の回転が所定位置で阻止されるので、トルク制限機構Rが作動して、モータM22,M23の出力がリンク部材Lに伝達されず、一定の初期姿勢に確実に復帰させることができるようになるのである。
【0067】
尚、各関節部材Jのトルク制限機構Rの保持トルクは、同じ値に設定してもよく、また、フィンガーユニットF及びユニバーサルロボットハンドUの用いられる環境に応じて、夫々個別の強さに設定してもよい。
【0068】
次に、フィンガーユニットF2による把持動作時に、障害物等による外力91がある場合についてその一例を説明する。
【0069】
図6(a)に示すように、フィンガーユニットF2を把持対象物90に対向させ、モータM22,23を一方向に回転させると、関節部材J22,J23,J24が把持方向に回転駆動される。このとき、図7(a)に示すように、把持対象物90の付近に障害物等があり、リンク部材L24にトルク制限機構R24の保持トルク以上の外力91が働くと、トルク制限機構R24はモータM23の回転トルクをリンク部材L25に伝達しなくなる。関節部材J23は外力により、モータM23による回転トルクと逆方向に回転し、図7(b)に示すように、リンク部材L24はリンク部材L23のストッパ機構に当接するまで逆回転することになる。このようにして、関節部材J23のハーモニックドライブH23は破損の虞を回避できるのである。
【0070】
さらに、フィンガーユニットのリンク部材の関節側端部に力覚センサを備えることで、指体にかかる歪を検出することができる。力覚センサとしては、ストレインゲージ式圧力センサや圧電素子等の任意の歪検出素子を用いることができる。
【0071】
また、フィンガーユニットのリンク部材の中央部に触覚センサを備えることでフィンガーユニットが把持対象物に接触したことを検出できる。
【0072】
上述のように、フィンガーユニットのリンク部材に力覚センサ及び触覚センサを備えることで、挟持対象物の形状がどのような形においても、指体の姿勢制御及び圧力制御が可能となり、その具体的構成は特開2006−198748号公報に記載されているように適宜構成することが可能である。
【0073】
尚、上述のフィンガーユニットやユニバーサルロボットハンドの構造については基本的な要素のみの説明であり、実際に設計する際には、本発明の作用効果が奏される範囲で種々の変更が許容されるものである。例えば、フィンガーユニットを弾性を有する樹脂カバー体で被覆し、把持対象物を衝撃から保護できるように構成することが可能である。
【0074】
従って、上述のフィンガーユニットFを備えたユニバーサルロボットハンドUによれば、対象物の形状や大きさが多少変わるものであっても、またバラ積み部品等のように対象物の置かれた位置・姿勢が夫々異なるものであっても適切に把持動作することができる。さらに、フィンガーユニットFに備えられた力覚センサ及び触覚センサからの情報に基づいて、アクチュエータにより関節部材Jの締付力を動的に調整することで、把持対象物に応じて柔軟に対応することができる。しかも、フィンガーユニットが把持等の動作中に、障害物等によりトルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、回転摩擦機構の受圧体と加圧体が相対的に回転しはじめ、前記外力に伴なって出力軸が回転トルクと逆方向へ回転するので、前記外力がハーモニックドライブHを破損する虞が回避され、リンク部材がストッパ機構に当接し、一対のリンク部材が特異姿勢となった状態では、より大きな外力を支持することができるのである。
【0075】
上述の関節装置は、ユニバーサルロボットハンドのフィンガーユニットに限らず、ロボットアームの関節にも用いることができる。この場合も、関節装置がリンク部材を回転させるときに、当該関節装置に備えられたトルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、回転摩擦機構の受圧体と加圧体が相対的に回転しはじめ、外力に伴なって出力軸が回転トルクと逆方向へ回転するので、前記外力がハーモニックドライブ減速機構を破損する虞が回避されリンク部材がストッパ機構に当接し、一対のリンク部材が特異姿勢となった状態では、ハーモニックドライブによる保持トルクより大きな外力を支持することができるのである。
【0076】
このように、フィンガーユニット及びユニバーサルロボットハンドUは高度な制御を必要とせず、機械的に開閉するために確実な繰り返し動作が保証され、把持動作を機械的に実現することから、鋳造部品やプレス成形部品のような様々な曲面を持つ複雑形状の部品を適切に把持することができ、バラ積み部品等のように把持対象物の置かれた位置・姿勢、或いは把持対象物の形や寸法が少しでも異なる場合でも把持動作が行えるようになり、各関節装置に組み込まれたハーモニックドライブにトルク制限機構の保持トルクを超える過大な力が作用した場合には、機械的にハーモニックドライブに作用する外力を開放してハーモニックドライブの破損を防止することができる。つまり、より人に近い関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットを実現することができるようになるのである。
【0077】
以下に本発明による関節装置、ロボットアーム、及び、フィンガーユニットの別の実施の形態を説明する。
【0078】
上述の実施形態では、リンク部材L1の他端側に、リンク部材L2がリンク部材L1に対して直線状に位置する特異姿勢で姿勢保持されるようにストッパ機構13がネジ14により固着されている構成について説明したが、ストッパ機構はこれに限られず、ストッパ機構としての板状体を、リンク部材L1の上端部からリンク部材L2の方向へ延出配置し、リンク部材L2とストッパ機構が当接することで、リンク部材L2の逆方向への回転を所定位置で阻止するように構成するものであってもよく、その具体的構成は適宜変更することができる。
【0079】
上述の実施形態では、回転摩擦機構40は、転動軸心bが軸心Pの垂直方向a対して所定の角度θ傾斜した構成について説明したが、転動軸心bが軸心Pの垂直方向aとのなす角度は得に限定するものではなく適宜設定されるものであり、その具体的構成は特開平08−074843号公報に記載されているように適宜構成することが可能である。
【0080】
上述の実施形態では、トルク制限機構に回転摩擦機構を用いたものを説明したが、トルク制限機構としてはこれに限るものではなく、公知のトルクリミッタで構成することも可能である。
【0081】
上述の実施形態では、アクチュエータとしてモータについて明示しなかったがアクチュエータとしては、エアモータ、電磁モータ、油圧モータ、電磁回転ソレノイド、パワーシリンダ等の直動アクチュエータ等、適宜使用することができることはいうまでもない。
【0082】
上述の実施形態では、伝動機構としてベベルギア及び平歯車によりモータの出力を関節部材に伝達する構成について説明したが、これもそのように限定するものではなく、プーリとタイミングベルト、ギアートレイン、コントロールワイヤ、ベルト、チェーン等の無限回転機構等公知の伝動機構を採用することができる。
【0083】
例えば、図8(a)に示すような、小径のベベルギアG10とそれに噛合する大径のベベルギアG20を介してモータMの出力をハーモニックドライブHに伝達する伝動機構であったり、図8(b)に示すように、小径のベベルギアG30に小径のベベルギアG40が噛合し、ベベルギアG40を平歯車W10、アイドル平歯車W20、平歯車W30を介してモータMの出力をハーモニックドライブHに伝達する伝動機構であってもよい。上述の構成を採用することによって、関節部材Jの径を小さく構成することが可能となる。
【0084】
同様に、図8(c)に示すように、平歯車W10,W30及びアイドル平歯車W20の代わりにタイミングプーリ・ベルトBを用いた場合も関節部材Jを小さくすることが可能となる。
【0085】
何れの場合にも、関節部材Jを小さくすることができるため、関節装置1を小さくすることが可能となる。
【0086】
上述の実施形態では、関節装置の関節部分に組み込む減速機構として、高減速比のハーモニックドライブ減速機構を備えた構成について説明したが、減速機構としてはハーモニックドライブ減速機構に限定するものではなく、適宜、関節駆動機構の構成を変更することにより遊星歯車減速機構、サイクロ減速機(登録商標、以下同じ)等の減速機構を備えて構成することが可能である。
【0087】
つまり、本発明による関節装置は、一対のリンク部材を所定軸心周りに回転する関節部材を介して連結した関節装置であって、前記関節部材に、一方のリンク部材に組み付けられたモータの出力が伝動機構を介して伝達され前記所定軸心周りに回転する入力部と、前記入力部の外周部と接合する回転部を備えた固定部と、前記回転部に形成された歯部と噛合する歯部が内周部に形成された出力部とからなる減速機構を備え、前記固定部がトルク制限機構を介して一方のリンク部材に固定されるとともに、前記出力部が他方のリンク部材に直接または間接的に固定されて構成されていればよい。
【0088】
以下、関節装置の別実施形態として、減速機構として遊星歯車減速機構を用いた関節装置2の構成について説明する。なお、図1(b)に示す関節装置1と同じ構成については同じ符号を付し説明を省略する。
【0089】
図9(a)に示すように、遊星歯車減速機構Yは、入力部としての太陽歯車70と、太陽歯車70と噛合する回転部としての複数の遊星歯車71と、遊星歯車71を保持する固定部としての遊星キャリア72と、出力部としての外輪歯車73で構成され、図9(b)に示すように、太陽歯車70が伝動機構Tの平歯車G4の回転軸に止めねじ16で嵌入固定され、遊星キャリア72に延出軸74が固着され、延出軸74がトルク制限機構Rを介してリンク部材L1に固定される。外輪歯車73の外周にはケーシング36が固着され、ケーシング36にはリンク部材L2が接続され関節部材J2が構成される。尚、外輪歯車73の外周に直接リンク部材L2を接続する場合は、ケーシング36は必ずしも備える必要はなく、伝達機構Tの構成も上述の図8に示すように適宜選択される。
【0090】
モータMの出力が伝動機構Tを介して太陽歯車70に伝達されると、遊星歯車の71の回転軸は遊星キャリア72により支持されているので、太陽歯車70の回転は、遊星歯車71に伝達され、遊星歯車71の回転が外輪歯車73に伝達され、リンク部材L2は、リンク部材L1に対して相対的に回転することとなる。
【0091】
ここで、モータMにより関節部材J2を介してリンク部材L2に付与される回転トルクと逆方向に、トルク制限機構Rによる保持トルクより大きな外力が付与されると、トルク制限機構の受圧体41と加圧体45が相対的に回転しはじめ、外力に伴なって出力軸74が回転トルクと逆方向へ回転し、前記外力が遊星歯車減速機構Yを破損する虞が回避されるのである。
【0092】
なお、図9(c)に示すように、遊星キャリア73に受圧体41を固定し、受圧体41に出力軸74を備えてトルク制限機構を構成してもよく、具体的な構成は適宜設計される。
【0093】
さらに別の実施形態として、関節部材を構成する減速機構としてサイクロ減速機を用いた関節装置3の構成について説明する。なお、図1(b)に示す関節装置1と同じ構成については同じ符号を付し説明を省略する。
【0094】
図10(a)に示すように、サイクロ減速機Cは、入力部としての偏心カム80と、偏心カム80を挿通する開口が中央部に形成された回転部としての曲線板81と、固定部としての複数の内ピン82と、出力部としての複数の外ピン83を備え、曲線板81には各内ピン82と噛合する内ピンと同数の内ピン用開口85が形成され、さらに外周はエピトロコイド曲線面が形成され外ピン83と噛合するように構成されている。
【0095】
偏心カム80が伝動機構Tの平歯車G4の回転軸に嵌入固定され、曲線板81中央部開口に偏心カム80が挿通される。複数の内ピン82は内ピン保持部材84に所定間隔で固定され夫々が曲線板81の内ピン用開口85に挿通される。内ピン保持部材84に出力軸86が固定され、トルク制限機構Rを介してリンク部材L1に固定される。さらに、曲線板81の外周に形成されたエピトロコイド曲線面に沿って外ピン83を保持する外ピン保持部材87にケーシング36が固着され、ケーシングに36にリンク部材L2が接続される。尚、外ピン保持部材87の外周に直接リンク部材L2を接続する場合は、ケーシング36は必ずしも備える必要はなく、伝達機構Tの構成も上述の図8に示すように適宜選択される。
【0096】
モータMの出力が伝動機構Tを介して偏心カム80に伝達されると、偏心カム80の偏心回転とともに曲線体81が偏心運動し、エピトロコイド曲線面が順次外ピン83と噛合しながらリンク部材L2をリンク部材L1に対して相対的に回転させることとなる。このとき内ピン82及び内ピン保持部材84は、トルク制限機構Rを介してリンク部材L1に固定されているので回転しない。
【0097】
ここで、モータMにより関節部材J3を介してリンク部材L2に付与される回転トルクと逆方向に、トルク制限機構Rによる保持トルクより大きな外力が付与されると、トルク制限機構Rの受圧体41と加圧体45が相対的に回転しはじめ、外力に伴なって出力軸86が回転トルクと逆方向へ回転し、前記外力がサイクロ減速機Cを破損する虞が回避されるのである。
【0098】
なお、図10(c)に示すように、内ピン保持部材84に受圧体45を固定し、受圧体45に出力軸86を備えてトルク制限機構を構成してもよく、具体的な構成は適宜選択される。
【0099】
上述の実施形態では、三個の関節装置で一個のフィンガーユニットを構成するものを説明したが、フィンガーユニットを構成する関節装置の数は特に限定するものではなく、一個の関節装置でフィンガーユニットを構成するものであってもよい。さらには、ユニバーサルロボットハンドを構成するフィンガーユニットの数及びロボットアームを構成する関節装置の数も特に限定するものではない。
【0100】
上述の実施形態で説明した関節装置の具体的構造は一実施形態に過ぎず、本発明の範囲がこれによって制限されるものではなく、同様の作用効果を奏する範囲において適宜構成を変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】(a)は本発明による関節装置の正面図、(b)は関節装置の側断面図
【図2】本発明によるハーモニックドライブの回転動作説明図
【図3】トルク制限機構として回転摩擦機構の説明図で、(a)は分解斜視図、(b)は要部説明図、(c)はローラ群の配置姿勢の説明図、(d)は作用説明図
【図4】(a)は本発明によるユニバーサルロボットハンドの概略図、(b)は示指(第二指)に対応するフィンガーユニットの概略説明図、(c)は母指(第一指)に対応するフィンガーユニットの概略説明図
【図5】(a)は本発明によるフィンガーユニットの平面図、(b)は同正面図
【図6】本発明によるフィンガーユニットの動作説明図で、(a)は初期姿勢の説明図、(b)は把持姿勢の説明図
【図7】本発明によるフィンガーユニットの動作説明図で、(a)は把持動作中に外力が働いたことの説明図、(b)は外力により特異姿勢となることの説明図
【図8】(a)は別実施形態の説明図、(b)は別実施形態の説明図、(c)は別実施形態の説明図
【図9】別実施形態の説明図で(a)は、遊星歯車減速機構の説明図、(b)は関節装置の断面図、(c)は関節装置の概略図
【図10】別実施形態の説明図で(a)は、サイクロ減速機の説明図、(b)は関節装置の断面図、(c)は関節装置の概略図
【図11】従来技術によるロボットハンドの構成図
【図12】従来技術によるロボットハンドの構成図
【符号の説明】
【0102】
1:関節装置
2:関節装置
3:関節装置
13:ストッパ機構
14:ネジ
15:止めねじ
16:止めねじ
31:ウェーブジェネレータ
32:フレクスプライン
33:延出軸
34:サーキュラスプライン
35:ベアリング
36:ケーシング
37:歯部
38:歯部
40:回転摩擦機構
41:受圧体
43:保持体
42:ローラ
45:加圧体
44:保持孔
50:固定機構
51:ナット
52:止めねじ
53:バネ座金
60:基体
70:太陽歯車
71:遊星歯車
72:遊星キャリア7
73:外輪歯車
74:延出軸
80:偏心カム
81:曲線板
82:内ピン
83:外ピン
84:内ピン保持部材
85:内ピン用開口
86:出力軸
87:外ピン保持部材
90:把持対象物
91:外力
B:タイミングプーリ・ベルト
C:サイクロ減速機
F1:母指(第一指)
F2:示指(第二指)
F3:中指(第三指)
F4:薬指(第四指)
F5:小指(第五指)
G1:ベベルギア
G2:ベベルギア
G3:平歯車
G4:平歯車
G10:ベベルギア
G20:ベベルギア
G30:ベベルギア
G40:ベベルギア
H:ハーモニックドライブ
H21:ハーモニックドライブ
H22:ハーモニックドライブ
H24:ハーモニックドライブ
J:関節部材
J2:関節部材
J3:関節部材
J11:第一関節部材
J12:第二関節部材
J13:第三関節部材
J14:第四関節部材
J21:第一関節部材
J22:第二関節部材
J23:第三関節部材
J24:第四関節部材
L1:リンク部材
L2:リンク部材
L11:リンク部材
L12:リンク部材
L13:リンク部材
L14:リンク部材
L15:リンク部材
L21:リンク部材
L22(L22a,22b):リンク部材
L23(L23a,23b):リンク部材
L24(L24a,L24b):リンク部材
L25:リンク部材
P:軸心
P11:第一軸心
P12:第二軸心
P13:第三軸心
P14:第四軸心
P21:第一軸心
P22:第二軸心
P23:第三軸心
P24:第四軸心
R:トルク制限機構
M:モータ
M21:モータ
M22:モータ
M23:モータ
T:伝動機構
T21:伝動機構
T22:伝動機構
T23:伝動機構
T24:伝動機構
U:ユニバーサルロボットハンド
W10:平歯車
W20:アイドル平歯車
W30:平歯車
Y:遊星歯車減速機構
a:径方向
b:転動軸心
θ:角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のリンク部材を所定軸心周りに回転する関節部材を介して連結した関節装置であって、
前記関節部材に、一方のリンク部材に組み付けられたモータの出力が伝動機構を介して伝達され前記所定軸心周りに回転するウェーブジェネレータと、前記ウェーブジェネレータの外周部と接合する内周部を備えたフレクスプラインと、前記フレクスプラインの外周部に形成された歯部と噛合する歯部が内周部に形成されたサーキュラスプラインとからなるハーモニックドライブ(登録商標、以下同じ)減速機構を備え、前記フレクスプラインがトルク制限機構を介して一方のリンク部材に固定されるとともに、前記サーキュラスプラインが他方のリンク部材に直接または間接的に固定されている関節装置。
【請求項2】
前記トルク制限機構は、一方のリンク部材に固定された環状の受圧体と、転動軸心が前記受圧体の径方向に対して所定の角度で傾斜した姿勢で前記受圧体の周方向に沿って配列された複数のローラと、各ローラを所定間隔で転動自在に保持する環状の保持体と、前記ローラを挟み前記受圧体と対向配置された環状の加圧体とを備え、前記フレクスプラインの延出軸に外嵌された環状の回転摩擦機構と、前記延出軸と前記受圧体とを前記加圧体を介して直接または間接的に所定の締付力で締付固定する固定機構を備えている請求項1記載の関節装置。
【請求項3】
前記固定機構による前記延出軸と前記受圧体との間の締付力を動的に調整するアクチュエータを備えている請求項2記載の関節装置。
【請求項4】
前記モータにより前記関節部材を介して他方のリンク部材に付与される回転トルクと逆方向に、前記トルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、前記トルク制限機構により前記関節部材が前記回転トルクと逆方向へ回転するように構成され、前記一対のリンク部材が直線状に位置する特異姿勢で姿勢保持されるように、一方のリンク部材にストッパ機構を設けている請求項1から3の何れかに記載の関節装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の関節装置が組み込まれたロボットアーム。
【請求項6】
ユニバーサルロボットハンドに用いられ、複数の関節装置を備えたフィンガーユニットであって、請求項1から4の何れかに記載の関節装置が組み込まれたフィンガーユニット。
【請求項1】
一対のリンク部材を所定軸心周りに回転する関節部材を介して連結した関節装置であって、
前記関節部材に、一方のリンク部材に組み付けられたモータの出力が伝動機構を介して伝達され前記所定軸心周りに回転するウェーブジェネレータと、前記ウェーブジェネレータの外周部と接合する内周部を備えたフレクスプラインと、前記フレクスプラインの外周部に形成された歯部と噛合する歯部が内周部に形成されたサーキュラスプラインとからなるハーモニックドライブ(登録商標、以下同じ)減速機構を備え、前記フレクスプラインがトルク制限機構を介して一方のリンク部材に固定されるとともに、前記サーキュラスプラインが他方のリンク部材に直接または間接的に固定されている関節装置。
【請求項2】
前記トルク制限機構は、一方のリンク部材に固定された環状の受圧体と、転動軸心が前記受圧体の径方向に対して所定の角度で傾斜した姿勢で前記受圧体の周方向に沿って配列された複数のローラと、各ローラを所定間隔で転動自在に保持する環状の保持体と、前記ローラを挟み前記受圧体と対向配置された環状の加圧体とを備え、前記フレクスプラインの延出軸に外嵌された環状の回転摩擦機構と、前記延出軸と前記受圧体とを前記加圧体を介して直接または間接的に所定の締付力で締付固定する固定機構を備えている請求項1記載の関節装置。
【請求項3】
前記固定機構による前記延出軸と前記受圧体との間の締付力を動的に調整するアクチュエータを備えている請求項2記載の関節装置。
【請求項4】
前記モータにより前記関節部材を介して他方のリンク部材に付与される回転トルクと逆方向に、前記トルク制限機構による保持トルクより大きな外力が付与されると、前記トルク制限機構により前記関節部材が前記回転トルクと逆方向へ回転するように構成され、前記一対のリンク部材が直線状に位置する特異姿勢で姿勢保持されるように、一方のリンク部材にストッパ機構を設けている請求項1から3の何れかに記載の関節装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の関節装置が組み込まれたロボットアーム。
【請求項6】
ユニバーサルロボットハンドに用いられ、複数の関節装置を備えたフィンガーユニットであって、請求項1から4の何れかに記載の関節装置が組み込まれたフィンガーユニット。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図4】
【公開番号】特開2009−291874(P2009−291874A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147149(P2008−147149)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(596132721)財団法人近畿高エネルギー加工技術研究所 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(596132721)財団法人近畿高エネルギー加工技術研究所 (18)
【Fターム(参考)】
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