説明

関節角度予測装置及び関節角度予測方法

【課題】人体の関節角度を計測する装置において、関節角度の予測精度向上を図る。
【解決手段】本発明の関節角度予測装置は、前記センサーによって検出された関節角度が、関節の可動範囲中、関節の可動限界に隣接する可動制限範囲内にあり、かつ、前記センサーの検出結果に基づく関節角度の角速度が所定値より大きい場合、関節の角速度が減衰することを条件として予測関節角度を算出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーが歩行あるいは荷物の上げ下ろしを行う際、アシスト力を付与することで補助する補助装置、あるいは、人体の動きを追跡するモーションキャプチャー装置などにおいて、測定結果に基づいて関節角度を予測する関節角度予測装置、関節角度予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザーの体に装着して、ユーザーの脚部、腕部などの可動部に対してアシスト力を付与する補助装置が開発されている。このような補助装置では、高齢者や身障者の歩行、動作を補助する装置として利用されることが期待されている。また高齢者などに限らず、宅配業者など重い荷物を運ぶ作業者に対する補助装置としても利用することで、作業者に対する負担を軽減することが期待されている。
【0003】
このような補助装置として特許文献1には、生態信号検出手段が検出した筋電位信号に基づいてモーターなどのアクチュエーターを駆動することで、装着者の意志によってアシスト力を付与する動作補助装置が開示されている。
【0004】
このような動作補助装置においては、装着者のとる体勢に基づいて制御を行う必要があるため、物理現象検出手段により関節角度の検出が行われている。検出した関節角度、そして、装着者の筋電位信号に基づいて駆動源(モータ)を駆動してアシスト力が加えられる。
【0005】
一方、特許文献2には、リハビリ回復具合の調査、人体の運動解析を目的として関節がどのような動きをしているのかを測定する検出装置が開示されている。この検出装置では、角速度を検出するジャイロスコープが、人体の特定位置に位置決めされる装着具を利用することで、人体の動作、位置を検出可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−25053号公報
【特許文献2】特開2011−92274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、各種制御システムにおいては、過去の事象に基づいて将来の状態を予測することで、潤滑な制御を行うことが行われている。近年ではモデル予測制御など高度な制御の導入も盛んになっている。特許文献1に記載される動作補助装置においても関節角度の検出に予測制御を導入することで、快適にアシスト力を付与することが考えられる。また、特許文献2に記載されるような関節の動きに対しても予測を行うことで、さらに正確な関節角度の検出が可能となる。
【0008】
本発明は、人体の関節角度の予測において、人体の動きの特性を考慮し、より正確な関節角度の推定を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る関節角度予測装置は、
人体の関節角度を検出するセンサーと、
前記センサーによって検出された関節角度に基づいて、予測関節角度を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記センサーによって検出された関節角度が、関節の可動範囲中、関節の可動限界に隣接する可動制限範囲内にあり、かつ、前記センサーの検出結果に基づく関節角度の角速度が所定値より大きい場合、関節の角速度が減衰することを条件として予測関節角度を算出することを特徴とする。
【0010】
さらに本発明に係る関節角度予測装置において、
前記可動制限範囲は、複数のサブ領域に分割され、
前記制御部は、関節の可動限界に近いサブ領域ほど、関節の角速度の減衰率が大きくなるように予測関節角度を算出することを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る関節角度予測方法は、
人体の関節角度を検出するセンサーによって検出された関節角度に基づいて、予測関節角度を算出する関節角度予測方法において、
前記センサーによって検出された関節角度が、関節の可動範囲中、関節の可動限界に隣接する可動制限範囲内にあり、かつ、前記センサーの検出結果に基づく関節角度の角速度が所定値より大きい場合、関節の角速度が減衰することを条件として予測関節角度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の関節角度予測装置、関節角度予測方法によれば、人体の構造上、動かしにくく運動の速度が低下する範囲である可動制限範囲、並びに、可動制限範囲内での関節の角速度を考慮し、実際の人体の動きに近い予測を実現し、予測関節角度の予測精度の向上を図ることが可能となる。
【0013】
さらに本発明によれば、可動制限範囲内を複数のサブ領域に分割し、関節の可動限界に近いサブ領域ほど、関節の角速度の減衰率が大きくなるように予測関節角度を算出することで、さらなる予測精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る歩行補助装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施形態に係る歩行補助装置の制御ブロックを示す図
【図3】本発明の実施形態に係る関節角度測定を説明するための図
【図4】本発明の他の実施形態に係る関節角度測定を説明するための図
【図5】本発明の実施形態に係る関節の可動範囲、可動制限範囲を説明するための図
【図6】本発明の実施形態に係る予測処理を示すフロー図
【図7】本発明の実施形態に係る関節角度の変化の様子、並びに、予測処理を説明するための図
【図8】本発明の他の実施形態に係るサブ領域に分割された可動制限範囲を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る歩行補助装置の構成を示す図であって、図1(a)は、歩行補助装置を装着したユーザーの側面図、図1(b)は、その正面図となっている。本実施形態の歩行補助装置10は、ユーザーの体躯に固定して用いられる形態であって、左右大腿部、左右下腿部にアシスト力を加えることで歩行を補助する。主な構成としては、体躯装着部11、制御ユニット100を備え、左右それぞれに、大腿支持部12、大腿装着部13、下腿支持部14、下腿装着部15、踵回動部23、足底部16、腰部アクチュエーター21、膝部アクチュエーター22などを備えている。
【0016】
腰部アクチュエーター21は、大腿支持部12を図1(a)に示す方向に回動可能とするとともに、同方向にアシスト力を加えることが可能となっている。さらに、本実施形態では、図1(b)に破線で示すように股を開く方向に対しても回動可能、かつ、アシスト力を加えることとしている。大腿支持部12は、大腿装着部13によってユーザーの大腿部に装着される。腰部アクチュエーター21にて加えられるアシスト力は、ユーザーの大腿部の動作補助を行うこととなる。
【0017】
膝部アクチュエーター22は、下腿支持部14を図1(a)に示す方向に回動可能とするとともに、同方向にアシスト力を加えることが可能とされている。下腿支持部14は、下腿装着部15によってユーザーの下腿部に装着される。膝部アクチュエーター22にて加えられるアシスト力は、ユーザーの下腿部を動作補助する。
【0018】
踵回動部23、足底部16を回動可能に支持する部材である。下腿支持部14に連なる足底部16が足底に対して固定された場合、歩行が不安定となるが、この踵回動部23を回動可能とすることで、人体の動きにあわせることができ、歩行を安定させるとともに、歩行補助装置10の装着を安定させている。なお、本実施形態では、この踵回動部23は、人体の動きに連動して回動するのみで、アシスト力を加えていないが、この踵回動部23に対しても腰部アクチュエーター21などと同様、アシスト力を加える構成としてもよい。
【0019】
体躯装着部11に固定されている制御ユニット100は、各種センサーからの出力に応じて、腰部アクチュエーター21、膝部アクチュエーター22にアシスト力を加える。アシスト力を加えるために用いられるセンサーとしては、大腿部、下腿部などに貼付した筋電位センサーや、関節角度を計測する関節センサーなどを用いることが考えられる。各アクチュエーターに対するアシスト力を加える制御方法は、各種センサー、各種アルゴリズムを用いて適宜に設計したものを採用することができる。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る歩行補助装置の制御ブロックを示す図である。本実施形態では、左右脚部について、体幹に対する下腿部の関節角度を検出する股関節センサー21c、d、大腿部に対する下腿部の関節角度を検出する膝関節センサー22c、d、下腿部に対する足部の関節角度を検出する足関節センサー18a、bが設けられている。制御ECU101(制御部)は、これら関節センサーの出力信号に基づいて体躯の動きを予測し、アシスト力を加えることとしている。また、各足底部26には、足裏センサー17a、bが設けられており、足の裏が地面についた立脚状態であるか、地面から浮いた遊脚状態を取得することが可能とされている。足裏センサー17は、さらに、足裏の荷重分布などを取得することとしてもよい。制御ECU101は、各アクチュエーター21、22付近に設けられた関節センサー、並びに、足裏センサー17からの出力信号に基づいて、各アクチュエーター21、22に対してアシスト力を付与してユーザーの方向を補助する。なお、各アクチュエーター21、22は、図示しないバッテリーからの電力供給を受けてアシスト力を発生することとしている。
【0021】
また、本実施形態の制御ユニット100には、歩行補助装置10を装着したユーザーの周囲を検出する各種周囲センサーが設けられている。周囲センサーとしては、発光素子と、当該発光素子から発光された光の反射光を受光し、周囲の障害物を検出する光センサー31、ユーザーの前方、後方の様子をそれぞれ撮影する前方カメラ32a、後方カメラ32b、衛星からのGPS信号を受信し、歩行位置を検出するとともに、地図情報を参照することでユーザーを目的地に導くナビモジュール、インターネットなどの通信網に接続し、各種情報を取得する無線モジュールなどがある。なお、前方カメラ32a、後方カメラ32bは、それぞれについて2つのカメラユニットを設けることで外界を立体的に撮像し
、障害物までの距離を算出可能としてもよい。
【0022】
この他、各種設備に設置され、当該位置の位置信号を送出する狭エリア位置確認システムのための受信モジュール35が設けられている。この狭エリア位置確認システムとしては、例えば、LED照明などの照明駆動信号中に、当該位置の位置信号を含ませておき、照明光から位置信号を抽出することで位置を確認するシステムや、あるいは、室内GPSなど室内における位置確認システムなどが考えられる。
【0023】
以上、本実施形態では、歩行補助装置10に対して、このような各種周囲センサーを設けたことで、安全な歩行補助を行うことのみならず、目的地までのルート案内や、各種情報をユーザーに提供することが可能となる。なお、各種情報の確認は、制御ユニット100に接続される拡声装置、表示装置などで音声、画像出力することとしてもよいし、制御ユニット100と無線あるいは有線で接続された携帯情報端末(図示せず)に対して音声、画像出力することとしてもよい。
【0024】
では、本発明の実施形態に係る関節角度予測装置について、図1に示される歩行補助装置10に適用した場合を例にとって説明する。
【0025】
図3には、本発明の実施形態に係る関節センサーを示す図が示されている。ここでは大腿部と下腿部が形成する膝関節角度の計測について説明する。図3には、図1に示される大腿支持部12と下腿支持部14を回動可能に接続する回動部40を示している。この図に示されるように大腿支持部12と下腿支持部40とは、1つの軸で回動可能とする回動部40によって接続されている。このような1軸で接続された形態では、回動部40に設けられたロータリーエンコーダーなどを用いることで膝関節角度αは、比較的簡単な構成で、また簡単な処理で取得することが可能である。
【0026】
関節センサーは、このように1つの回転軸の回転角度にて直接検出する形態に限らず、各種形態を採用することが可能である。図4には他の実施形態に係る関節センサーの形態が示されている。
【0027】
歩行補助装置10の応用に伴う人体の動きの解析が進むに従って、人体の関節をこのような1軸の回動で賄うことに限界が生じてきた。そのため複数軸の回動でもって人体の動きに追従させる回動部40が開発されている。
【0028】
図4は、このような複数軸(この場合2軸)の回動を利用した回動部40が示されており、図3と同様、大腿支持部12と下腿支持部14を回動可能に接続した回動部40となっている。本実施形態の回動部40は、第1ギア部41と、第2ギア部42と、支持プレート43を備えて構成されている。第1ギア部41は大腿支持部12の先端に設けられ、下腿支持部14の先端に設けられた第2ギア部42とかみ合うことで回動可能とされている。支持プレート43は、第1ギア部41の回動中心と第2ギア部42の回動中心を回動可能に支持している。
【0029】
このような複数軸による回動部40では、図3で説明した回動部40と比較して、人体の複雑な関節の動きに追従させることが可能とされている。このような構成においても関節角度を取得することは、歩行補助装置10などに対する制御において重要となる。しかしながら、このような複雑な機構を有する回動部40において、直接、ロータリーエンコーダーなどを用いて関節角度を取得することは困難となっている。そのため、本実施形態の関節角度測定装置では、大腿支持部12、下腿支持部14のそれぞれに角度検出用センサー24、25を設置し、これらの出力に基づいて関節角度αを取得することとしている。すなわち、角度検出用センサー21、22でもって膝関節角度を検出する角度センサー
が構成されることとなる。
【0030】
本実施形態の角度検出用センサー24、25は、それらが取り付けられた大腿支持部12と下腿支持部14が形成する関節角度αを算出できる信号を出力するものであればよく、例えば加速度センサーを利用することができる。加速度センサーの出力を積分することで、速度並びに位置を取得することができる。大腿支持部12と下腿支持部14の相対値を特定することができれば、角度検出用センサー24、25の取り付け位置に基づいて、関節角度αを算出することが可能となる。
【0031】
角度検出用センサー24、25は、このような形態に限られるものではなく、例えば、地磁気センサーや重力センサーなど、所定の方向を特定できるセンサー類であってもよい。所定の方向に対して各角度検出センサー24、25がとる方向を得ることで、両者の角度関係、すなわち、関節角度αを算出することが可能となる。なお、本実施形態では、紙面上のみに回動可能な回動部40について説明したが、回動部40は、立体的に回動、すなわち、紙面手前あるいは奥行き方向に対しても回動可能な構成としてもよい。
【0032】
以上、図3を用いた関節センサーでは、ロータリーエンコーダーなどで構成される関節センサーから直接、関節角度を取得することが可能となる。一方、図4に示される複数の角度検出用センサー21、22で構成される関節センサーでは、角度検出用センサー21、22が示す所定方向の差に基づいて関節角度を取得することが可能となる。
【0033】
では、本発明の実施形態に係る関節角度予測装置、方法について、図3、4で説明したような関節センサーを利用した場合について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る関節の可動範囲、可動制限範囲を説明するための図である。図5(a)には、歩行補助装置を利用するユーザーの脚部の様子が示されている。大腿部と下腿部は膝関節を介して回動可能となっている。図3あるいは図4の関節センサーでは、この大腿部と下腿部の関節角度が検出される。
【0034】
ところで、人体の関節は可動できる範囲が限られており可動限界を有している。図に示される脚部の場合、実線で示される延ばした状態と、破線で示される折り曲げた状態が可動限界となる。延ばした状態における下腿部の中心線をB1、折り曲げた状態における下腿部の中心線をB2で示している。線分B1とB2が膝関節の可動限界であって、それらが成す角度βが膝関節の可動範囲となる。
【0035】
図5(b)は、図5(a)から可動範囲と可動限界を抽出した図となっている。本実施形態では、この可動範囲中、可動限界と隣接する所定領域を可動制限範囲γ1、γ2に設定している。人体の運動は、関節限界に近い範囲では関節角度を反転させて運動することが多い。また、可動限界の近傍では、関節限界まで関節を回動させることは希であって、可動限界の手前で回動速度が緩められることが多い。一方、関節をゆっくりと回動させる、すなわち、関節の角速度が遅い場合には、関節限界ぎりぎりまで略一定の角速度で回動させることが可能である。本実施形態では、このような人体の運動特性を考慮して、関節角度の予測を行うこととしている。
【0036】
図6は、本発明の実施形態に係る予測処理を示すフロー図である。図1に示す歩行補助装置に対して予測処理を利用した場合、予測結果は、各種アクチュエーターの制御に利用されることとなる。
【0037】
本実施形態の予測処理は、1制御周期前に関節センサーから取得した関節角度と、現時点で取得した関節センサーに基づいて、1制御周期後の関節角度を予測することとしている。そのため、S101では1制御周期前の関節角度が、また、S102では現在の関節
角度が関節センサーから取得される。S103では、S101とS102で取得した関節角度の差分に基づいて、関節の角速度が算出される。
【0038】
次に、S104では関節角度の可動制限範囲が、制御部100内のデータベースから取得される。このデータベースには、各関節について、図5に示されるような可動範囲、可動限界、可動制限範囲、さらに可動制限範囲に対応づけられた制限角速度、並びに、角速度の減衰率が記憶されている。S105では、このデータベースを参照し、S102にて取得した現在の関節角度が、可動制限範囲内にあるか否かを判定する。可動制限範囲外であると判定された場合(S105:No)には、S103で算出した角速度に基づいて、1制御周期後の予測値(予測関節角度)が算出される(S110)。
【0039】
一方、関節角度が可動制限範囲内であると判定された場合(S105:Yes)には、データベースに記憶されている可動制限範囲に対応する制限角速度が読み出される。S106では、現在の角速度が読み出された制限角速度以上であるか否かが判定される。現在の角速度が制限角速度を超えていないと判定された場合(S107:No)には、S110にて1制御周期後の予測値が算出される。このように本実施形態では、制限角速度を超えていない場合、可動制限範囲であっても他の範囲と同様の予測を行うこととしてる。これは、ゆっくりと関節角度を開土させるときには、関節限界ぎりぎりまで略一定の角速度で回動させることができるという人体の特性に基づくものである。
【0040】
一方、角速度が制限速度以上であると判定された場合(S107:Yes)には、S108にて、データベースから現在の可動制限範囲に対応する角速度の減衰率が読み出される。S109では、現在の角速度に対して減衰率を適用した値を用いて予測値(予測関節角度)が算出される。
【0041】
図7には、本発明の実施形態に係る関節角度の変化の様子、並びに、予測処理を説明するための図が示されている。この図に示されるように、関節角度の可動限界に隣接して可動制限範囲が設定されている。この可動制限範囲内、すなわち、S109で説明した予測では、角速度に対する減衰率を適用して予測値が算出されることとなる。時刻tにおいて時刻t+1の関節角度を予測する場合、通常の予測であれば、予測値は矢印で示すような関節角度の変化曲線の接線方向上に予測される。一方、本実施形態では、可動制限範囲内では、所定値以上の角速度は下落するという人体の特性を見込んだ予測とされており、図に矢印で示すように傾斜の緩やかな線分上に予測される。そのため実際の関節の動きに近い値で関節角度を予測することが可能となっている。
【0042】
以上、本実施形態の関節角度予測装置、予測方法について説明したが、本実施形態では可動制限範囲を設けることで、人体の関節の動きにマッチした予測を実現し、より正確な予測値(予測関節角度)を算出することが可能とされている。なお、本実施形態では2次元的に回動をする脚部膝関節を用いて説明したが、他の各種関節における関節角度の予測に適用できることはいうまでもない。また、関節によっては3次元的に回動可能なものもあるが、そのような場合、可動限界、可動範囲、可動制限範囲などは実態に即して3次元的に設定されることとなる。
【0043】
また、本実施形態では、1制御周期前の関節角度と現在の関節角度に基づいて、1制御周期後の関節角度を予測することとしているが、予測方法はこのような形態に限らず、関節センサーによって取得した過去複数の関節角度を使用するなど、各種形態を採用することができる。
【0044】
また、本実施形態では可動制限範囲内では、1つの制限角速度、並びに、1つの角速度の減衰率が対応づけられたデータベースを用いることとしたが、可動制限範囲をサブ領域
に細分化し、サブ領域毎に制限角速度、減衰率を設けることとしてもよい。
【0045】
図8には、本発明の他の実施形態に係る可動制限範囲が示されている。この図は図5(b)と同様、脚部膝関節の可動範囲を示したものである。この実施形態に設定される各可動制限範囲γ1、γ2は、サブ領域γ1a〜c、γ2a〜cに分割されて構成されている。データベースには、このサブ領域毎に、制限角速度、減衰率が記憶されている。
【0046】
予測処理では、現在の関節角度がどのサブ領域に位置しているかを判定し、位置するサブ領域に対応した制限角速度、減衰率を使用して予測値(予測関節角度)を算出する。特に、減衰率は可動限界に近いものほど大きく設定することで実際の関節角度の変化に即した予測値を算出することが可能となる。図の例では、可動制限範囲γ1における減衰率は、γ1a>γ1b>γ1cの関係となるように設定されることとなる。
【0047】
このように可動制限範囲をサブ領域に分割し、サブ領域毎の予測処理を実行することでさらに精度の高い関節角度の予測を実行することが可能となる。
【0048】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0049】
10…歩行補助装置
11…体躯装着部
12a、b…大腿支持部
13a、b…大腿装着部
14a、b…下腿支持部
15a、b…下腿装着部
16a、b…足底部
17a、b…足裏センサー
18a、b…足関節センサー
21a、b…腰部アクチュエーター
21c、d…股関節センサー
22a、b…膝部アクチュエーター
22c、d…膝関節センサー
23a、b…踵回動部
31…光源装置
32a…前方カメラ
32b…後方カメラ
33…ナビモジュール
34…無線通信モジュール
40…回動部
41…第1ギア部
42…第2ギア部
43…支持プレート
100…制御ユニット
101…制御ECU(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の関節角度を検出するセンサーと、
前記センサーによって検出された関節角度に基づいて、予測関節角度を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記センサーによって検出された関節角度が、関節の可動範囲中、関節の可動限界に隣接する可動制限範囲内にあり、かつ、前記センサーの検出結果に基づく関節角度の角速度が所定値より大きい場合、関節の角速度が減衰することを条件として予測関節角度を算出することを特徴とする
関節角度予測装置。
【請求項2】
前記可動制限範囲は、複数のサブ領域に分割され、
前記制御部は、関節の可動限界に近いサブ領域ほど、関節の角速度の減衰率が大きくなるように予測関節角度を算出することを特徴とする
請求項1に記載の関節角度予測装置。
【請求項3】
人体の関節角度を検出するセンサーによって検出された関節角度に基づいて、予測関節角度を算出する関節角度予測方法において、
前記センサーによって検出された関節角度が、関節の可動範囲中、関節の可動限界に隣接する可動制限範囲内にあり、かつ、前記センサーの検出結果に基づく関節角度の角速度が所定値より大きい場合、関節の角速度が減衰することを条件として予測関節角度を算出することを特徴とする
関節角度予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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