説明

関節角度測定装置及び関節角度測定方法

【課題】人体の関節角度を計測する装置において、ノイズなど様々な要因によって蓄積される誤差の解消を行う。
【解決手段】本発明に係る関節角度測定装置は、関節を挟んでユーザーの肢体の一方に装着される第1支持部に設けられた第1関節角度検出用センサーと、関節を挟んで肢体の他方に装着される第2支持部に設けられた第2関節角度検出用センサーの出力に基づいて関節角度を検出する関節角度検出処理と、所定位置関係にあることを検出したときに、第1支持部の移動速度と第2支持部の移動速度の相対速度が所定未満である場合、第1角度検出用センサーと第2角度検出用センサーに基づいて検出される関節角度を、所定位置関係に対応する関節角度に修正する関節角度修正処理を実行することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーが歩行あるいは荷物の上げ下ろしを行う際、アシスト力を付与することで補助する補助装置、あるいは、人体の動きを追跡するモーションキャプチャー装置などにおいて、関節角度を測定する関節角度測定装置、関節角度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザーの体に装着して、ユーザーの脚部、腕部などの可動部に対してアシスト力を付与する補助装置が開発されている。このような補助装置では、高齢者や身障者の歩行、動作を補助する装置として利用されることが期待されている。また高齢者などに限らず、宅配業者など重い荷物を運ぶ作業者に対する補助装置としても利用することで、作業者に対する負担を軽減することが期待されている。
【0003】
このような補助装置として特許文献1には、生態信号検出手段が検出した筋電位信号に基づいてモーターなどのアクチュエーターを駆動することで、装着者の意志によってアシスト力を付与する動作補助装置が開示されている。
【0004】
このような動作補助装置においては、装着者のとる体勢に基づいて制御を行う必要があるため、物理現象検出手段により関節角度の検出が行われている。検出した関節角度、そして、装着者の筋電位信号に基づいて駆動源(モータ)を駆動してアシスト力が加えられる。
【0005】
一方、特許文献2には、リハビリ回復具合の調査、人体の運動解析を目的として関節がどのような動きをしているのかを測定する検出装置が開示されている。この検出装置では、角速度を検出するジャイロスコープが、人体の特定位置に位置決めされることで、人体の動作、位置を検出可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−25053号公報
【特許文献2】特開2011−92274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように人体の動き、特に関節角度の正確な取得は、歩行にアシスト力を加える歩行補助装置においても重要となる。また、コンピュータグラフィックスの分野では、人体に取り付けたセンサーに基づいて、人体の動きを取得し、コンピュータグラフィックスの動きに適用することも行われている。このようなモーションキャプチャー装置においても、人体の動きを正確に取得することは重要である。
【0008】
本発明は、このような状況を鑑みたものであって、人体の動きの正確な取得、特に人体の関節角度を正確に取得することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る関節角度測定装置は、
関節を挟んでユーザーの肢体の一方に装着される第1支持部と、
前記第1支持部に設けられ、移動速度を検出可能とする第1関節角度検出用センサーと

前記関節を挟んで前記肢体の他方に装着される第2支持部と、
前記第2支持部に設けられ、移動速度を検出可能とする第2関節角度検出用センサーと、
前記第1支持部と前記第2支持部とを回動可能に接続する回動部と、
前記第1支持部と前記第2支持部が所定位置関係にあることを検出する基準位置検出部と、
関節角度検出処理と関節角度修正処理を実行する制御部と、を備え、
前記関節角度検出処理は、前記第1関節角度検出用センサーと前記第2関節角度検出用センサーの出力に基づいて関節角度を検出し、
前記関節角度修正処理は、前記基準位置検出部が前記所定位置関係にあることを検出したときに、前記第1関節角度検出用センサーが出力する移動速度と前記第2関節角度検出用センサーが出力する移動速度の相対速度が所定未満である場合、前記第1角度検出用センサーと前記第2角度検出用センサーに基づいて検出される関節角度を、前記所定位置関係に対応する関節角度に修正することを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の関節角度測定装置において、
前記基準位置検出部は、複数設けられ、
前記関節角度修正処理は、前記基準位置検出部毎に実行されることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の関節角度測定装置において、
前記第1関節角度検出用センサーと前記第1速度検出用センサーの組、もしくは、前記第2関節角度検出用センサーと前記第2速度検出用センサーの組のうち、少なくとも1つの組が加速度センサーで共用されていることを特徴とする。
【0012】
また本発明の関節角度測定方法は、
関節を挟んでユーザーの肢体の一方に装着される第1支持部に設けられ、移動速度を検出可能な第1関節角度検出用センサーと、前記関節を挟んで前記肢体の他方に装着される第2支持部に設けられ、移動速度を検出可能な第2関節角度検出用センサーの出力に基づいて関節角度を検出する関節角度検出処理と、
前記第1支持部と前記第2支持部が所定位置関係にあることを検出したときに、前記第1関節角度検出用センサーが出力する移動速度と前記第2関節角度検出用センサーが出力する移動速度の相対速度が所定未満である場合、前記第1角度検出用センサーと前記第2角度検出用センサーに基づいて検出される関節角度を、前記所定位置関係に対応する関節角度に修正する関節角度修正処理を実行することを特徴とする
関節角度測定方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の関節角度測定装置、関節角度測定方法によれば、角度検出用センサーによって算出される関節角度について、第1支持部と第2支持部が所定位置関係にあることを検出したときに、第1関節角度検出用センサーが出力する移動速度と第2関節角度検出用センサーが出力する移動速度の相対速度が所定未満である場合、所定位置関係に対応した関節角度に修正することで、ユーザー自身による初期化処理を必要とせず、略リアルタイムに初期化を行うことが可能となり、時間の経過に伴って蓄積する誤差を解消することが可能となる。
【0014】
さらに本発明では、第1(第2)関節角度検出用センサーと第1(第2)速度検出用センサーの組を加速度センサーで共用することで、設けるセンサーの数を削減し、構成の簡易化ならびに低コスト化を図ることが可能とされている。
【0015】
さらに本発明では、基準位置検出部を複数設けることで、複数の所定位置関係において関節角度修正処理を実行することが可能となり、関節角度修正処理を実行する機会を増やし、より正確に関節角度を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る歩行補助装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施形態に係る歩行補助装置の制御ブロックを示す図
【図3】従来利用された回動部における関節角度測定を説明するための図
【図4】本発明の実施形態に係る回動部を説明するための図
【図5】本発明の実施形態に係る関節角度修正処理を示すフロー図
【図6】本発明の実施形態に係る回動部を説明するための図
【図7】本発明の実施形態に係る回動部(基準位置時)を説明するための図
【図8】本発明の他の実施形態に係る回動部(第1基準位置時)を説明するための図
【図9】本発明の他の実施形態に係る回動部(第2基準位置時)を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る歩行補助装置の構成を示す図であって、図1(a)は、歩行補助装置を装着したユーザーの側面図、図1(b)は、その正面図となっている。本実施形態の歩行補助装置10は、ユーザーの体躯に固定して用いられる形態であって、左右大腿部、左右下腿部にアシスト力を加えることで歩行を補助する。主な構成としては、体躯装着部11、制御ユニット100を備え、左右それぞれに、大腿支持部12、大腿装着部13、下腿支持部14、下腿装着部15、踵回動部23、足底部16、腰部アクチュエーター21、膝部アクチュエーター22などを備えている。
【0018】
腰部アクチュエーター21は、大腿支持部12を図1(a)に示す方向に回動可能とするとともに、同方向にアシスト力を加えることが可能となっている。さらに、本実施形態では、図1(b)に破線で示すように股を開く方向に対しても回動可能、かつ、アシスト力を加えることとしている。大腿支持部12は、大腿装着部13によってユーザーの大腿部に装着される。腰部アクチュエーター21にて加えられるアシスト力は、ユーザーの大腿部の動作補助を行うこととなる。
【0019】
膝部アクチュエーター22は、下腿支持部14を図1(a)に示す方向に回動可能とするとともに、同方向にアシスト力を加えることが可能とされている。下腿支持部14は、下腿装着部15によってユーザーの下腿部に装着される。膝部アクチュエーター22にて加えられるアシスト力は、ユーザーの下腿部を動作補助する。
【0020】
踵回動部23、足底部16を回動可能に支持する部材である。下腿支持部14に連なる足底部16が足底に対して固定された場合、歩行が不安定となるが、この踵回動部23を回動可能とすることで、人体の動きにあわせることができ、歩行を安定させるとともに、歩行補助装置10の装着を安定させている。なお、本実施形態では、この踵回動部23は、人体の動きに連動して回動するのみで、アシスト力を加えていないが、この踵回動部23に対しても腰部アクチュエーター21などと同様、アシスト力を加える構成としてもよい。
【0021】
体躯装着部11に固定されている制御ユニット100は、各種センサーからの出力に応じて、腰部アクチュエーター21、膝部アクチュエーター22にアシスト力を加える。アシスト力を加えるために用いられるセンサーとしては、大腿部、下腿部などに貼付した筋電位センサーや、関節角度を計測する関節センサーなどを用いることが考えられる。各アクチュエーターに対するアシスト力を加える制御方法は、各種センサー、各種アルゴリズムを用いて適宜に設計したものを採用することができる。
【0022】
図2は、本発明の実施形態に係る歩行補助装置の制御ブロックを示す図である。本実施形態では、腰部アクチュエーター21、膝部アクチュエーター22が設けられ、後述する角度検出用センサー24、25によって体躯の動きを予測してアシスト力を加えることとしている。また、各足底部26には、足裏センサー16c、dが設けられており、足の裏が地面についた立脚状態であるか、地面から浮いた遊脚状態を取得することが可能とされている。足裏センサー16は、さらに、足裏の荷重分布などを取得することとしてもよい。制御ECU101(制御部)は、角度検出センサー24、25、並びに、足裏センサー16などからの出力信号に基づいて、各アクチュエーター21、22に対してアシスト力を付与してユーザーの方向を補助する。なお、各アクチュエーター21、22は、図示しないバッテリーからの電力供給を受けてアシスト力を発生することとしている。
【0023】
また、本実施形態の制御ユニット100には、歩行補助装置10を装着したユーザーの周囲を検出する各種周囲センサーが設けられている。周囲センサーとしては、発光素子と、当該発光素子から発光された光の反射光を受光し、周囲の障害物を検出する光センサー31、ユーザーの前方、後方の様子をそれぞれ撮影する前方カメラ32a、後方カメラ32b、衛星からのGPS信号を受信し、歩行位置を検出するとともに、地図情報を参照することでユーザーを目的地に導くナビモジュール、インターネットなどの通信網に接続し、各種情報を取得する無線モジュールなどがある。なお、前方カメラ32a、後方カメラ32bは、それぞれについて2つのカメラユニットを設けることで外界を立体的に撮像し、障害物までの距離を算出可能としてもよい。
【0024】
この他、各種設備に設置され、当該位置の位置信号を送出する狭エリア位置確認システムのための受信モジュール35が設けられている。この狭エリア位置確認システムとしては、例えば、LED照明などの照明駆動信号中に、当該位置の位置信号を含ませておき、照明光から位置信号を抽出することで位置を確認するシステムや、あるいは、室内GPSなど室内における位置確認システムなどが考えられる。
【0025】
以上、本実施形態では、歩行補助装置10に対して、このような各種周囲センサーを設けたことで、安全な歩行補助を行うことのみならず、目的地までのルート案内や、各種情報をユーザーに提供することが可能となる。なお、各種情報の確認は、制御ユニット100に接続される拡声装置、表示装置などで音声、画像出力することとしてもよいし、制御ユニット100と無線あるいは有線で接続された携帯情報端末(図示せず)に対して音声、画像出力することとしてもよい。
【0026】
本実施形態の関節角度測定装置は、このような歩行補助装置10に対して使用されるものであって、アシスト力を付与するため膝関節など歩行者の体躯の状態を検出するために使用されるものである。また、歩行に限らず腕などユーザーの上半身にアシスト力を加え、荷物の上げ下ろしや農作業、工場での作業に利用される補助装置に使用されるものであってもよい。さらにアシスト力を付与する補助装置に限らず、体躯の動きをコンピュータグラフィックに適用するためのモーションキャプチャー装置に使用されるものであってもよい。
【0027】
では、本発明の実施形態に係る関節角度測定装置について、図1に示される歩行補助装置10に適用した場合を例にとって説明する。
【0028】
まず、本実施形態の関節角度測定装置が必要とされる経緯について説明しておく。図3は、従来利用された回動部を説明する図であって、図1に示される大腿支持部12と下腿支持部14を回動可能に接続する回動部40を示している。この図に示されるように大腿支持部12と下腿支持部40とは、1つの軸で回動可能とする回動部40によって接続さ
れている。このような1軸で接続された形態では、回動部40に設けられたロータリーエンコーダーなどを用いることで膝の関節角度αは、比較的簡単な構成で、また簡単な処理で取得することが可能である。
【0029】
しかしながら、歩行補助装置10の応用に伴う人体の動きの解析が進むに従って、人体の関節をこのような1軸の回動で賄うことに限界が生じてきた。そのため複数軸の回動でもって人体の動きに追従させる回動部40が開発されている。
【0030】
図4は、このような複数軸(この場合2軸)の回動を利用した回動部40が示されており、図3と同様、大腿支持部12と下腿支持部14を回動可能に接続した回動部40となっている。本実施形態の回動部40は、第1ギア部41と、第2ギア部42と、支持プレート43を備えて構成されている。第1ギア部41は大腿支持部12の先端に設けられ、下腿支持部14の先端に設けられた第2ギア部42とかみ合うことで回動可能とされている。支持プレート43は、第1ギア部41の回動中心と第2ギア部42の回動中心を回動可能に支持している。
【0031】
このような複数軸による回動部40では、図3で説明した回動部40と比較して、人体の複雑な関節の動きに追従させることが可能とされている。このような構成においても関節角度を取得することは、歩行補助装置10などに対する制御において重要となる。しかしながら、このような複雑な機構を有する回動部40において、直接、ロータリーエンコーダーなどを用いて関節角度を取得することは困難な構成となっている。そのため、本実施形態の関節角度測定装置では、大腿支持部12、下腿支持部14のそれぞれに角度検出用センサー24、25を設置し、これらの出力に基づいて関節角度αを取得することとしている。
【0032】
本実施形態の角度検出用センサー24、25は、それらが取り付けられた大腿支持部12と下腿支持部14が形成する関節角度αを算出できる信号を出力するものであればよく、例えば加速度センサーを利用することができる。加速度センサーの出力を積分することで、速度並びに位置を取得することができる。大腿支持部12と下腿支持部14の相対的な位置を特定することができれば、角度検出用センサー24、25の取り付け位置に基づいて、関節角度αを算出することが可能となる。
【0033】
角度検出用センサー24、25は、このような形態に限られるものではなく、例えば、地磁気センサーや重力センサーなど、所定の方向を特定できるセンサー類であってもよい。所定の方向に対して各角度検出センサー24、25がとる方向を得ることで、両者の角度関係、すなわち、関節角度αを算出することが可能となる。なお、本実施形態では、紙面上のみに回動可能な回動部40について説明したが、回動部40は、立体的に回動、すなわち、紙面手前あるいは奥行き方向に対しても回動可能な構成としてもよい。
【0034】
このような角度検出用センサー24、25を用いることで比較的簡易なセンサー構成、取り付け、並びに、演算処理で関節角度αを得ることが可能となる。しかしながら、センサー24、25に対するノイズ、各センサー24、25の出力信号を増幅するアンプに乗るノイズ、ヒステリシス特性、ADコンバーターの解像度など各種要因によって、算出される関節角度αに誤差が生じることが考えられる。このような各種要因によって発生する誤差は、時間の経過に伴い蓄積されることが分かっており、所定時間毎に初期化する必要がある。例えば、歩行補助装置10においては、利用開始前あるいは所定時間使用したときに、ユーザーに対して予め決められた姿勢をとらせることで、誤差の蓄積を初期化することが考えられる。しかしながらこのような初期化方法では長時間の利用は不可能であるとともに、ユーザーに対する負担も伴うため、製品化する上でのデメリットとなる。
【0035】
本発明の実施形態に係る関節角度測定装置は、このような支持部に取り付けられた角度検出用センサーを用いて角度検出を行う際に発生する誤差を、ユーザーの負担無く略リアルタイムで初期化することとしている。
【0036】
図5は、本発明の実施形態に係る関節角度修正処理を示すフロー図である。関節角度修正処理は、角度検出用センサー24、25が関節角度αを検出する関節角度検出処理を実行する際、同時に実行される処理である。本実施形態では、この関節角度修正処理を実行するため、大腿支持部12(第1支持部)と下腿支持部14(第2支持部)が特定の位置関係にあることを検出する基準位置検出部が設けられる。
【0037】
図6、図7には、それぞれ、図4で説明した回動部40付近の様子が図示されている。なお、これらの図では、位置関係を分かりやすくするため支持プレート43は省略して記載している。基準位置検出部は、直接図示していないが、第1ギア部41上に示すAの位置と、第2ギア部42上に示すBの位置が対向するとき、所定の出力信号を出力することで、大腿支持部12と下腿支持部14が所定の位置関係にあること検出する。基準位置検出部には、両者が対向することで機械的なスイッチがオンとなるセンサー以外に、光学的、磁気的に対向することを検出する近接センサーを使用することができる。
【0038】
図6の回動状態は、第1ギア部41の位置Aと第2ギア部42の位置A’が対向していない状態、すなわち、大腿支持部12と下腿支持部14が所定の位置関係にない状態を、図7の回動状態は、第1ギア部41の位置Aと第2ギア部42の位置A’が対向した状態、すなわち、大腿支持部12と下腿支持部14が所定の位置関係にある状態が示されている。
【0039】
図5のフロー図に戻り、本実施形態では、このような基準位置検出部の状態を監視し(S101)、基準位置検出部がオン状態(S102:Yes)となったとき、すなわち、図7に示されるように、大腿支持部12と下腿支持部14が所定の位置関係となったときに以降の処理が実行される。
【0040】
基準位置検出部がオン信号を出力すると、制御部101は2つの角度検出用センサー24、25の出力を取得する(S103)。これは、大腿支持部12と下腿支持部14の相対速度を算出するために実行される処理であるが、本実施形態では角度検出用センサー24、25に加速度センサーを使用しているため、角度検出用センサー24、25を速度検出用センサーと兼用することが可能となっている。なお、角度検出用センサー24、25に地磁気センサーや重力センサーを用いるような場合には、角度検出用センサー24、25とは別に、速度検出用センサーを大腿支持部12、下腿支持部14のそれぞれに設けることとしてもよい。
【0041】
S104では、角度検出用センサー24、25の出力に基づいて、それらが取り付けられている大腿支持部12と下腿支持部14の相対速度が算出される。すなわち、基準位置検出部がオン状態にあるときの両者の相対速度が算出される。本実施形態では、このように相対速度が閾値以下(所定未満)の場合、大腿支持部12と下腿支持部14によって構成される関節角度の時間変化が少なく、修正時の誤差が発生しにくいため関節角度の修正(初期化)を実行している。相対速度が大きい場合、すなわち、関節角度の時間的変化が大きい場合に関節角度を修正すると、僅かな時間で異なる関節角度に変化することとなり修正時の誤差が大きくなってしまう。本実施形態では、両者の相対速度が所定未満であることを条件とすることで、関節角度αの時間変化が少ないときに修正を行うこととしている。
【0042】
相対速度が閾値以下の場合(S105:Yes)には、S106にて関節角度の初期化
(修正)が実行される。図7に示されたAとA’が対向する所定位置では、関節角度α1をとるべきであることが予め分かっているため、角度検出用センサー24、25の出力に基づいて算出される関節角度αがα1となるように初期化が実行される。初期化を実行した後は、再度、基準位置検出部の監視(S101)に戻る。一方、相対速度が閾値より大きい場合には、関節角度を初期化すると誤差の発生が大きくなってしまうため、初期化を行うことなく基準位置検出部の監視(S101)に戻ることとなる。
【0043】
以上、本実施形態では、基準位置検出部の状態を監視し、大腿支持部12(第1支持部)の移動速度と下腿支持部14(第2支持部)の移動速度の相対速度が所定未満である場合、所定の位置関係に対応する関節角度α1となるように角度検出用センサー24、25の算出角度αを初期化することとしている。このように本実施形態では、歩行中など他の関節が動作しているときであっても対象とされる関節が、所定の関節角度をとった状態で変化が少ないことを条件として、蓄積した誤差を自動で修正することが可能となる。そのため、ユーザー自身が初期化処理を実行するなどの煩わしさがない。また、所定の位置関係は、1つに限ることなく複数設けることとしてもよい。複数設けることで初期化の機会を増やし、より正確な関節角度の算出を行うことが可能となる。
【0044】
図8、図9は、このように所定の位置関係を複数設けた場合の実施形態となっている。これらの図に示されるように第1ギア部41には、2つの所定位置A、Bが、第2ギア部42にも2つの所定値A、Bが設けられている。基準位置検出部は、位置Aと位置A’が対向するときの第1基準位置(図8)、位置Bと位置B’が対向するときの第2基準位置(図9)をそれぞれ検出することが可能とされている。それぞれの基準位置において、相対速度が所定未満である場合には、基準位置に対応する関節角度に修正される。図8の位置Aと位置A’が対向した状態において、大腿支持部12と下腿支持部14の相対速度が所定未満の場合には、関節角度α1に初期化されることとなる。また、図9の位置Bと位置B’が対向した状態において、大腿支持部12と下腿支持部14の相対速度が所定未満の場合には、関節角度α2に初期化されることとなる。この実施形態では所定位置関係を2つの状態としているが、さらに数を増やすことも可能である。
【0045】
以上、本実施形態では、角度検出用センサーによって算出される関節角度について、所定位置関係となったとき、第1支持部と第2支持部の相対速度が所定未満であることを条件として、所定位置関係に対応した関節角度に修正することで、ユーザー自身による初期化処理を必要とせず、略リアルタイムに初期化を行うことが可能となり、時間の経過に伴って蓄積する誤差を解消することが可能となる。本実施形態では、大腿支持部12と下腿支持部14が構成する膝関節を用いて説明したが、人体の関節であれば何れの関節の角度測定にも利用することが可能である。
【0046】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0047】
10…歩行補助装置
11…体躯装着部
12a、b…大腿支持部
13a、b…大腿装着部
14a、b…下腿支持部
15a、b…下腿装着部
16a、b…足底部
16c、d…足裏センサー
21a、b…腰部アクチュエーター
21c、d…角度検出用センサー
22a、b…膝部アクチュエーター
22c、d…角度検出用センサー
23a、b…踵回動部
24、25…角度検出用センサー
31…光源装置
32a…前方カメラ
32b…後方カメラ
33…ナビモジュール
34…無線通信モジュール
40…回動部
41…第1ギア部
42…第2ギア部
43…支持プレート
100…制御ユニット
101…制御ECU(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節を挟んでユーザーの肢体の一方に装着される第1支持部と、
前記第1支持部に設けられた第1関節角度検出用センサーと、
前記第1支持部に設けられた第1速度検出用センサーと、
前記関節を挟んで前記肢体の他方に装着される第2支持部と、
前記第2支持部に設けられた第2関節角度検出用センサーと、
前記第1支持部に設けられた第2速度検出用センサーと、
前記第1支持部と前記第2支持部とを回動可能に接続する回動部と、
前記第1支持部と前記第2支持部が所定位置関係にあることを検出する基準位置検出部と、
関節角度検出処理と関節角度修正処理を実行する制御部と、を備え、
前記関節角度検出処理は、前記第1関節角度検出用センサーと前記第2関節角度検出用センサーの出力に基づいて関節角度を検出し、
前記関節角度修正処理は、前記基準位置検出部が前記所定位置関係にあることを検出したときに、前記第1関節角度検出用センサーが出力する移動速度と前記第2関節角度検出用センサーが出力する移動速度の相対速度が所定未満である場合、前記第1角度検出用センサーと前記第2角度検出用センサーに基づいて検出される関節角度を、前記所定位置関係に対応する関節角度に修正することを特徴とする
関節角度測定装置。
【請求項2】
前記第1関節角度検出用センサーと前記第1速度検出用センサーの組、もしくは、前記第2関節角度検出用センサーと前記第2速度検出用センサーの組のうち、少なくとも1つの組が加速度センサーで共用されていることを特徴とする
請求項1に記載の関節角度測定装置。
【請求項3】
前記基準位置検出部は、複数設けられ、
前記関節角度修正処理は、前記基準位置検出部毎に実行されることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の関節角度測定装置。
【請求項4】
関節を挟んでユーザーの肢体の一方に装着される第1支持部に設けられた第1関節角度検出用センサーと、前記関節を挟んで前記肢体の他方に装着される第2支持部に設けられた第2関節角度検出用センサーの出力に基づいて関節角度を検出する関節角度検出処理と、
前記第1支持部と前記第2支持部が所定位置関係にあることを検出したときに、前記第1支持部に設けられた第1速度検出用センサーが出力する移動速度と前記第2支持部に設けられた第2速度検出用センサーが出力する移動速度の相対速度が所定未満である場合、前記第1角度検出用センサーと前記第2角度検出用センサーに基づいて検出される関節角度を、前記所定位置関係に対応する関節角度に修正する関節角度修正処理を実行することを特徴とする
関節角度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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