説明

関節鏡ガイド、関節鏡器具セット及び関節鏡

【課題】 骨板の表面上で関節鏡の遠心端を誘導するためのガイドを開示している。
【解決手段】 このガイドは、骨板の上部側面上に配置される、関節鏡を誘導するための切欠き及び/又は溝を有する本体部を備えている。更に、関節鏡は、遠心端の近くに球形のスライダを有する。このスライダは、ガイドと整合するように構成されるとともに、関節鏡の遠心端が切欠き又は溝に沿って動くことを可能にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節鏡の器具及びインプラント、特に、関節鏡及びインプラントプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
骨折した骨の固定又は骨の切断手術後の骨の固定及び安定化のために、骨板が使用されている。そのような骨板を取り付ける旧来の手法は、手術領域を完全に開くことである。それにより、骨と骨板に自由にアクセスでき、そのため、骨板と骨板を固定するための螺子を正確に配置することができる。その欠点は、感染の虞、神経及び血管の損傷、並びに大きな傷跡である。そのため、小さい切り口を通して骨板を挿入して、それを骨と周囲の組織の間に押し込むことが好ましい。螺子は、組織を貫通する個々の小さい切り口を通して取り付けられる。この手法の欠点は、骨板が隠れてしまうことである。骨板が組織によって覆われるので、螺子の正確な位置を見付けることは非常に難しい。
【0003】
骨折を安定化させるための骨板が特許文献1に開示されている。それは、骨に適合する表面と、骨板を骨に固定する螺子を挿入するための穴とを備えている。インプラントプレートに螺子回しを位置決めするためのガイドが特許文献2に開示されている。骨板と骨板を調整するためのシステムが特許文献3に記載されている。骨板を保持するための器具及び方法が特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2005/0021033号明細書
【特許文献2】中国実用新案201283001号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第1808137号明細書
【特許文献4】米国特許公開第2005/0283155号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、周囲の組織の下の骨板における螺子の位置決めを改善する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題の解決策が独立請求項に記載されている。従属請求項は、本発明の更なる改善策に関する。
【0007】
螺子の位置決めを改善するために、切り口を通して関節鏡を挿入して、螺子の先端の位置を見付ける。そのような関節鏡は、骨板と周囲の組織の間に挿入される。
【0008】
第一の実施形態は、骨板上に配置できるガイドで構成される。このガイドは、関節鏡の遠心端を所定の方向、好ましくは、骨板の主軸に対してほぼ平行な第一の方向にスライドさせることを支援する表面構造を有する。この表面構造は、好ましくは、溝、切欠き又は隙間である。この表面構造は、好ましくは、骨板の主軸又は骨板を取り付けた骨の中心を通る軸に対してほぼ平行な方向を向いて延びる。それは、関節鏡が骨板から滑り落ちて、外科医が螺子穴と螺子を見失うことを防止している。好ましくは、このガイドは、プラスチック又は樹脂から製作される。そのようなガイドが無いと、螺子穴の有る骨板の表面の特定の区画を見るために関節鏡の遠心端を正確に位置決めして、螺子を組織に差し込んで、螺子穴に入れることが極めて困難となる。このガイドは、好ましくは、第一の方向に対して垂直な方向にガイドが骨板に対して動くことを防止するように骨板に固定される。
【0009】
更に、このガイドを骨板に留めるか、或いは少なくとも摩擦で骨板に保持できることが好ましい。このガイドは、好ましくは、骨板との整合を可能とする側面を有する。そのような整合は、骨板の螺子穴の中の少なくとも一つ又は骨板のそれ以外の構造との係合によって行なうこともできる。このガイドは、骨板の上に緩く設置して、重力又は周囲の組織の圧力だけで骨に対して保持することもできる。このガイドは、更に、骨板と一緒に、或いは骨板を伴わずに骨と周囲の組織の間のスペースにガイドを簡単に挿入するための手段を有する。そのような手段は、少なくとも一つのテーパー部である。ガイドの本体部の外側に骨板を取り付けた後、骨板を本体部に挿入できることが好ましい。
【0010】
関節鏡の光学システムは、限られた焦点範囲しか持たない。そのため、通常は観察する物体に対する器具の遠心端に有る関節鏡のレンズの距離を最小限としなければならない。従って、視野の大部分が焦点範囲内に有るとともに、骨板の表面や螺子穴などの部分を明確に見れるような骨板からの距離に、ガイドが関節鏡を保持することが好ましい。
【0011】
別の実施形態は、螺子の先端又はそれ以外の医療用インプラント及び/又は器具を位置決めするために、切り口を通して関節鏡を挿入することにより螺子の位置決めを改善する方法で構成される。そのような関節鏡は、骨板と周囲の組織の間に挿入される。
【0012】
別の実施形態は、遠心端にスライダを有する関節鏡で構成される。このスライダは、直径を拡大された区画で構成される。それは、円筒形、好ましくは、球形の形状を有する。それは、球形又は楕円形の形状を持つこともできる。スライダの直径は、好ましくは、5mm〜15mmの範囲内にある。更に、この直径を拡大された区画と関節鏡の遠心端の間隔が約5mm〜30mmであることが好ましい。このスライダによって、、焦点範囲内で骨板の表面を見るとともに、動かしている間に骨板の螺子穴に嵌まり込まずに骨板の表面との充分な間隔を維持しながら、骨板の上を表面構造に沿って関節鏡の遠心端をスライドさせることが可能となる。ここで、関節鏡との用語は、骨板と周囲の組織の間のスペースを見るのに適した内視鏡に関する用語である。
【0013】
別の実施形態では、外装内に関節鏡を収容することができる。この外装は、スライダを備えることができる。
【0014】
好ましい実施構成では、関節鏡器具セットは、互いに適合するガイドと関節鏡で構成される。ここで、スライダは、ガイドと整合して動作するように、例えば、ガイドの溝内をスライドするように構成される。
【0015】
以下において、図面を参照して、実施例により例示して本発明を説明するが、本発明の一般的な考えを制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スライダとガイドの一つの実施形態の図
【図2】スライダとガイドの斜視図
【図3】骨板に取り付けられたガイドの図
【図4】骨板に取り付けられたガイドの側面図
【図5】ガイドの第一の断面図
【図6】ガイドの第二の断面図
【図7】ガイドの別の実施形態の図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、様々な変化形態及び代替構成が可能である一方、その特定の実施形態を例として図面に図示して、ここで詳しく説明する。しかし、図面及びその詳しい記述は、ここに開示された特定の構成に本発明を制限することを意図するものではなく、それとは逆に、本発明は、特許請求の範囲に規定される通りの、本発明の考え及び範囲内に有る全ての変化形態、同様の形態及び代替形態を含むことを理解されたい。
【0018】
図1は、スライダとガイドの一つの実施形態を図示している。ガイド20が骨板10に取り付けられている。骨板とガイドの両方は、ここでは図示されていない骨と、ここでは図示されていない筋肉などの周囲の組織との間のスペースに挿入される。この図面の向きでは、骨が骨板の下に有る一方、組織は骨板とガイドの上に有る。更に、関節鏡30が、骨板の上で骨と周囲の組織の間のスペースに挿入される。組織が骨を取り囲んでいるために、関節鏡は、骨板に対してほぼ平行にしか挿入できない。この関節鏡によって、整形外科医は、骨板の個々の螺子穴の位置を見付けて、螺子を正確に位置決めし、骨に対して骨板を固定することができる。このガイドによって、関節鏡は、骨板の表面の上を誘導される。それによって、関節鏡が骨板から滑り落ちて、外科医が螺子穴と螺子を見失うことを防止している。このガイドは、好ましくは、焦点範囲内の視野32の中に対象物の大部分を捉えられるように、骨板から間隔を開けて関節鏡を保持する。
【0019】
この図面は、スライダ31が遠心端の近くに有る関節鏡30の好ましい実施形態を図示している。このガイドによって、スライダを誘導して、骨板上に所定の間隔で正確に位置決めすることが可能である。このガイド20は、少なくとも一つの、好ましくは全ての螺子を骨板に差し込んだ後、骨と周囲の組織の間のスペースから引き抜くことにより容易に取り外すことができる。一つの実施形態では、関節鏡が必ずしもスライダを備える必要の無いことは明らかである。その場合、スライダの直径と比べて小さい直径の関節鏡に適合するようにガイドを構成することが好ましい。更に、別の実施形態では、関節鏡は、ガイドを用いなくとも骨板に対して所定の間隔を保持するとともに、螺子穴又は螺子の頭に押し付けずにスライドさせることが可能なスライダを備えることができる。
【0020】
図2は、ガイド20と関節鏡30を伴った骨板10の斜視図を図示している。ここでも、関節鏡の遠心端に配置されたレンズ33が図示されている。ガイド20が無くとも、スライダ31により骨板の表面上で関節鏡を良好にスライドさせることが可能であることは明らかである。関節鏡のレンズを備えた遠心端は、通常繊細で比較的鋭い先端を有し、その先端は、骨板の表面上をスライドさせる時に骨板の表面上の螺子穴又は螺子の頭に容易に押し付けることができる一方、スライダ31の半径を大きくすることによって、骨板の表面上を容易にスライドさせることができる。
【0021】
図3は、骨板に取り付けられたガイドを図示している。ここで、骨板の螺子穴11,12,13,14及び15が図示されている。それらは、ガイド20の上面21の切欠き22内に有る。これらの骨板の螺子穴は、骨板を挿入するための切り口の近くに有るので容易に見ることができる。勿論、ガイドが、骨板10の表面の、より大きな領域を覆うこともできる。このガイドは、骨板の全長又は全表面を覆うことさえ可能である。このガイドは、複数列の螺子、好ましくは、複数の平行な列の螺子の上で関節鏡を誘導するための二つ以上の切欠き又は溝を持つこともできる。このガイドは、x軸に沿って直線的に動くように関節鏡を誘導する。そのためには、ガイドが骨板に対してy軸方向に動くことを防止するように、ガイドを骨板に固定する。
【0022】
図4は、骨板に取り付けられたガイドの側面図を図示している。側壁24は、骨板上でのガイドの保持及び位置決めを支援している。ガイドと一緒に骨板を骨と周囲の組織の間のスペースに挿入すること、並びにそこから除去することを容易にするために、ガイドが少なくとも一方の終端に少なくとも一つのテーパー部23を有することが好ましい。
【0023】
図5は、図3のA−A位置での第一の断面図を図示している。ここでは、関節鏡を誘導するための溝25が図示されている。この溝の直径及び/又は深さが関節鏡の直径と適合するように構成することが好ましい。
【0024】
図6は、図3のB−B位置での第二の断面図を図示している。この図は、更に、螺子穴14との自由なアクセスを可能とする切欠き22を図示している。更に、骨板の端部に配置されたテーパー部23が図示されている。
【0025】
この開示から利益を得る当業者には、本発明が骨板上で関節鏡を正確に位置決めするためのガイドとスライダを提供することを確信するものと理解される。本発明の様々な観点による更に別の変化形態及び代替形態は、当業者には、この記述を見れば明らかである。従って、この記述は、単なる例であり、本発明を実施する一般的な形態を当業者に教示することを目的としているものと理解されたい。ここに図示して説明した本発明の構成は、現在の好ましい実施形態として見做されるものと理解すべきである。ここで図示して説明した構成要素及び材料は、別の物と置き換えることができ、部品及びプロセスは、入れ換えることができ、本発明の或る特徴は、独立して用いることができ、これらのことは、全て本発明の記述から利益を得た後の当業者には明らかである。請求項に規定された本発明の考え及び範囲を逸脱すること無く、ここで説明した構成要素に変更を加えることが可能である。
【0026】
図7は、ガイドの別の実施形態を図示している。このガイドは、少なくとも骨板10の一部を覆っている。その結果、好ましくは、少なくとも二つの軸に沿って、関節鏡30を良好に誘導することができる。関節鏡は、関節鏡用の穴27を通して挿入されて、x軸に沿って骨板10に対してほぼ平行に誘導される。関節鏡は、y軸の方向への関節鏡のずれを防止するために、側壁24の中の少なくとも一つによって誘導されるだけでなく、z軸の方向への関節鏡のずれを防止するために、切欠き22を有する上部側面によって誘導することも可能である。この場合、関節鏡から滑り落ちることを防止するために、切欠き22の幅を関節鏡の直径よりも小さくする。最も好ましくは、ガイドの内側におけるガイドの側壁の間隔は、関節鏡の直径と同じか、或いは僅かに大きい。骨板に螺子を挿入するための更に別の穴を設けることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 骨板
11〜15 骨板の螺子穴
20 ガイド
21 本体部
22 切欠き
23 テーパー部
24,26 側壁
25 溝
27 関節鏡用の穴
28 穴
30 関節鏡
31 スライダ
32 視野
33 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨板上に配置される本体部(21)を備えた、骨板(10)の表面上において第一の方向(x)に関節鏡(30)の遠心端を誘導するためのガイド(20)であって、
この本体部が、少なくとも
関節鏡の遠心端を誘導するように構成された、少なくとも一つの切欠き(22)と少なくとも一つの溝(25)の一方又は両方と、
本体部が第一の方向に対して垂直の方向に動くことを防止するように、本体部を骨板(10)に固定するための少なくとも一つの手段(24)と、
を有するガイド。
【請求項2】
本体部(21)が、ガイドを骨板上に配置して保持するための少なくとも一つの側壁(24,26)を有することを特徴とする請求項1に記載のガイド。
【請求項3】
当該の少なくとも一つの切欠き(22)と少なくとも一つの溝(25)の中の一方又は両方が、関節鏡の遠心端の直径に適合するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガイド。
【請求項4】
本体部(21)が、骨板(10)の表面に対して所定の間隔を開けて関節鏡(30)を誘導するように構成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のガイド。
【請求項5】
当該のガイドが樹脂又はプラスチック材料から構成されることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載のガイド。
【請求項6】
本体部(21)が、骨板(10)の表面の少なくとも一部と密着していることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載のガイド。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載のガイド(20)と、
このガイドの少なくとも一つの切欠き(22)と少なくとも一つの溝(25)の一方又は両方に沿ってスライドさせるための少なくとも一つのスライダ(31)が関節鏡の遠心端の近くに配置された関節鏡(30)と、
を備えた関節鏡器具セット。
【請求項8】
本体部(21)が、骨板上にガイドを配置して保持するための少なくとも二つの側壁(24,26)を有することを特徴とする請求項7に記載の関節鏡器具セット。
【請求項9】
当該の少なくとも一つの切欠き(22)と少なくとも一つの溝(25)の一方又は両方が、関節鏡の遠心端の直径と適合するように構成されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の関節鏡器具セット。
【請求項10】
本体部(21)が、骨板(10)の表面に対して所定の間隔を開けて関節鏡(30)を誘導するように構成されていることを特徴とする請求項7から9までのいずれか一つに記載の関節鏡器具セット。
【請求項11】
当該のガイドが樹脂又はプラスチック材料から構成されることを特徴とする請求項7から10までのいずれか一つに記載の関節鏡器具セット。
【請求項12】
本体部(21)が、骨板(10)の表面の少なくとも一部と密着していることを特徴とする請求項7から11までのいずれか一つに記載の関節鏡器具セット。
【請求項13】
関節鏡であって、この関節鏡の遠心端の近くに、骨板の表面上をスライドさせるか、或いは請求項1から6までのいずれか一つに記載のガイド上をスライドさせるための少なくとも一つのスライダ(31)が配置された関節鏡(30)。
【請求項14】
スライダ(31)の形状が球形であることを特徴とする請求項13に記載の関節鏡(30)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−66716(P2013−66716A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−207987(P2012−207987)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(512245861)アルトレクス・メディツィーニッシェ・インストルメンテ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】