説明

閲覧装置

【課題】画像の媒体に制限されることなく、正当な利用者にのみ隠し画像を閲覧可能とする。
【解決手段】閲覧装置1は、光の透過性を有する透過部10と、閲覧装置1の利用者を識別するための虹彩の撮像画像を取得する虹彩画像取得部20と、虹彩画像取得部20により取得された虹彩の撮像画像に基づいて利用者の認証を行い、認証の結果に基づいて画像に予め含まれている隠し画像の視認の可否を判定し、判定の結果に基づいて透過部10を通過する光を調整して隠し画像の視認の可否を切り替えるCPU41と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閲覧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像の閲覧において、画像から利用者の眼に届く光の調整(例えば偏光等)を行うことにより画像内に予め設けられた隠し画像を浮かび上がらせて視認可能とする方法が知られている。さらに、この方法を応用し、専用の画像表示装置と偏光レンズとを組み合わせた場合にのみ、当該画像表示装置に表示された画像に含まれる隠し画像を視認可能とすることで、偏光レンズを有する利用者のみに隠し画像を閲覧させる表示システムがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−169148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の表示システムは、隠し画像を閲覧させる利用者の制限としては不十分であった。なぜならば、何らかの方法により偏光レンズを入手することにより、隠し画像の視認を許可されていない不正な利用者であっても隠し画像を閲覧することができてしまうからである。
【0005】
また、従来の表示システムでは、隠し画像を含む画像の表示を専用の画像表示装置により行わなければならない。このため、紙に印刷された画像等、専用の画像表示装置によらない他の媒体の画像に含まれる隠し画像については全く取り扱うことができなかった。
【0006】
本発明の課題は、画像の媒体に制限されることなく、正当な利用者にのみ隠し画像を閲覧可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の閲覧装置は、光の透過性を有する透過部を備え当該透過部越しに画像を閲覧する閲覧装置であって、当該閲覧装置の利用者を識別するための識別情報を取得する識別情報取得手段と、前記識別情報取得手段により取得された前記識別情報に基づいて前記利用者の認証を行う認証手段と、前記認証手段による認証の結果に基づいて前記画像に予め含まれている隠し画像の視認の可否を判定する判定手段と、前記判定手段による判定の結果に基づいて前記透過部を通過する光を調整して前記隠し画像の視認の可否を切り替える調整手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像の媒体に制限されることなく、正当な利用者にのみ隠し画像を閲覧可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による閲覧装置の主要構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による閲覧装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による閲覧装置を図2とは異なる角度から示す斜視図である。
【図4】透過部の詳細構成の一例を示す図である。
【図5】透過部を通過する光の調整前後の視認画像の一例を示す図である。図5(A)は、CPUにより透過部を通過する光の調整が行われる前の媒体上の画像の視認状態の一例を示す図である。図5(B)は、図5(A)に示す画像について、CPUにより透過部を通過する光の調整が行われた後の視認状態の一例を示す図である。
【図6】認証処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図7】レンチキュラーレンズとシャッター等の遮蔽部材とを併用した透過部の一例を示す図である。
【図8】図7に示す透過部におけるシャッターの位置パターンの一例を示す図である。図8(A)は平板部を光の経路とした場合を示す図である。図8(B)は、レンチキュラーレンズ部のかまぼこ形状を二分した一方を光の経路とした場合を示す図である。図8(C)は、レンチキュラーレンズ部のかまぼこ形状を二分した他方を光の経路とした場合を示す図である。
【図9】図8(A)〜(C)に示すシャッターの位置パターンに応じた視認画像の一例を示す図である。図9(A)は、図8(A)に示す光の経路を取る場合に視認可能な画像の一例を示す図である。図9(B)は、図8(B)に示す光の経路を取る場合に視認可能な画像の一例を示す図である。図9(C)は、図8(C)に示す光の経路を取る場合に視認可能な画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0011】
本実施形態の閲覧装置1は、光の透過性を有する透過部10を有し、透過部10越しに画像を閲覧する閲覧装置である。
図1は、本発明の一実施形態による閲覧装置1の主要構成を示すブロック図である。
図2、図3は、本発明の一実施形態による閲覧装置1を示す斜視図である。
図1に示すように、閲覧装置1は、透過部10、虹彩画像取得部20、バーコード読取部30、制御部40を備え、これらの構成はバス2により接続される。
また、図2、図3に示すように、閲覧装置1の各部は、フレーム50により保持される。フレーム50は、二つの透過部10、10をメガネのレンズとするメガネフレームの形状を有する。制御部40及びバス2は、フレーム50の内部に設けられる。
【0012】
フレーム50の耳かけ部51、51を自身の両耳にかけて閲覧装置1を装着することにより、二つの透過部10、10は利用者の両眼の眼前で保持される。これによって、利用者は、二つの透過部10、10を介して眼前の外界を視認することができ、例えば用紙に形成された画像等、媒体上の画像を視認することができる。
ここで、フレーム50は、透過部10を利用者の眼前で保持する保持手段として機能する。
以下、フレーム50により保持された透過部10を基準として、耳かけ部51、51が延設されている側を閲覧装置1の内側、その逆側を閲覧装置1の外側とする。
【0013】
なお、「画像」とは紙に印刷された印刷画像に限らず、文字、写真、線分、幾何学模様、その他のあらゆる画像及びこれらの一部又は全部の組み合わせを含みうる。
【0014】
図4は、透過部10の詳細構成の一例を示す図である。
透過部10は、透過性を有する板状の部材である透過板11と、透過部10を通過する光を調整するシャッター12を有する。図4に示すように、シャッター12は、透過板11に対してその位置を変更可能に設けられた格子状の部材である。本実施形態のシャッター12は、利用者の眼と外界との間で透過部10を通過する光Lの経路上において二つ設けられ、当該二つのシャッター12の位置により透過部10を通過する光Lの量、光Lの角度又はその両方を調節する。シャッター12の位置は、制御部40により調整される。
【0015】
虹彩画像取得部20は、閲覧装置1の利用者を識別するための識別情報として、利用者の虹彩を撮像した撮像画像を取得する。
本実施形態の虹彩画像取得部20は、CMOSイメージセンサ(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有し、当該撮像素子により利用者の虹彩を撮像する。図2に示すように、虹彩画像取得部20は、撮像素子が閲覧装置1を装着した利用者の眼の方を向くよう、閲覧装置1の内側に設けられる。
ここで、虹彩画像取得部20は、利用者の眼の虹彩を撮像した撮像画像を取得する撮像手段として機能する。
【0016】
バーコード読取部30は、媒体(例えば用紙等)に形成されているバーコードBを読み取り、情報を取得する。
本実施形態のバーコード読取部30は、CMOSイメージセンサ等の撮像素子を有し、当該撮像素子によりQRコード(登録商標)等の二次元バーコードを撮像して読み取る。図3に示すように、バーコード読取部30は、閲覧装置1の外側に向けて設けられる。
ここで、バーコード読取部30は、バーコードを読み取る読取手段として機能する。
【0017】
制御部40は、閲覧装置1の各部の動作制御を行う。また、制御部40は、各種の処理を行う。
制御部40は、CPU41、RAM42、ROM43を備える。
CPU41は、ROM43に記憶されたプログラムと協働し、RAM42に展開されたプログラムやデータ等に従って閲覧装置1の動作制御や各種の処理を行う。
RAM42は、CPU41の処理によって展開されたデータや、当該処理によって一時的に生じたデータ等を格納する。
【0018】
ROM43は、CPU41によって読み出されるプログラムやデータ等を記憶する。また、ROM43は、予め撮像された、閲覧装置1の利用者の虹彩の画像データを記憶する。ROM43に虹彩の画像データが記憶されている利用者は、隠し画像の視認を予め許可されている利用者である。ROM43は、複数の利用者の虹彩の画像データを記憶することができる。
ここで、ROM43は、隠し画像の視認を予め許可されている者の眼の虹彩の画像を記憶する記憶手段として機能する。
【0019】
この他、図1では図示を省略しているが、閲覧装置1は、各部の動作のための電力を供給する電源部や、閲覧装置1の動作のON/OFFを切り替えるための電源スイッチ、閲覧装置1の利用者及び当該利用者による隠し画像の視認の開始/終了を指示するための認証スイッチ等を備えている。
【0020】
以下、CPU41の行う処理のうち、隠し画像の視認に係る認証処理(以下、単に認証処理と記載)について説明する。当該記載では、利用者が閲覧装置1を装着した状態で認証スイッチを操作したものとして説明する。
【0021】
認証処理の開始後、CPU41は、まず、虹彩画像取得部20を動作させ、利用者の虹彩の撮像画像を取得する。
次に、CPU41は、虹彩認識処理を行う。具体的には、CPU41は、ROM43に記憶された虹彩の画像データを読み出して、当該画像データが虹彩画像取得部20により取得された利用者の虹彩の撮像画像と一致又は近似するか否か判定する。画像データと撮像画像との一致/近似判定は、既知の画像近似判定処理によるので、その詳細を省略する。
ここで、虹彩画像取得部20は、閲覧装置の利用者を識別するための識別情報を取得する識別情報取得手段として機能する。
また、CPU41は、識別情報に基づいて利用者の認証を行う認証手段として機能する。
【0022】
虹彩認識処理の結果、ROM43に記憶された虹彩の画像データのいずれも虹彩画像取得部20により撮像された虹彩の撮像画像と一致も近似もしない場合(虹彩認識不成立)、CPU41は認証不成立として処理を終了する。即ち、CPU41は、現在の利用者が隠し画像の視認を許可された利用者ではないと判定する。
【0023】
一方、虹彩認識処理の結果、RAM43に記憶された虹彩の画像データのいずれかが虹彩画像取得部20により撮像された虹彩の撮像画像と一致又は近似する場合(虹彩認識成立)、CPU41はバーコード読取部30を動作させ、媒体に形成されているバーコードBから情報を取得する。
【0024】
バーコードBには利用者情報及び調整パラメータが含まれており、CPU41は、バーコード読取部30を介して利用者情報及び調整パラメータを取得する。
【0025】
利用者情報とは、バーコードBを形成された媒体に形成されている隠し画像の視認を予め許可されている利用者を示す情報である。利用者情報が示す利用者の数は、一でも複数でもよい。
ここで、バーコード読取部30は、隠し画像の視認を予め許可されている者を示す利用者情報を取得する利用者情報取得手段として機能する。
【0026】
なお、利用者情報は、ROM43に記憶された虹彩の画像データに対応する利用者と対照可能な情報として設けられている。例えば、ROM43に記憶された虹彩の画像データが複数の利用者(第1の利用者、第2の利用者)に対応する場合において、利用者情報は、複数の利用者のいずれか一又は複数あるいは全員にその媒体の隠し画像が閲覧可能であるか否かを示す。利用者情報に第1の利用者、第2の利用者又はその両方を示す情報が含まれれば、第1の利用者、第2の利用者又はその両方はその媒体の隠し画像を閲覧できることとなる。一方、利用者情報が第1の利用者、第2の利用者のいずれの情報も含まない場合、その媒体の隠し画像は第1の利用者、第2の利用者とも閲覧できない。
【0027】
調整パラメータとは、当該隠し画像を視認可能とするために行われる透過部10の光の調整において用いられるパラメータである。本実施形態の調整パラメータは、シャッター12の位置調整に係る情報を含み、制御部40のCPU41は調整パラメータに基づいてシャッター12を動作させる。
また、調整パラメータは、利用者情報により隠し画像の視認を予め許可されている利用者と、シャッター12の位置調整に係る情報とを対応付ける。ここで、調整パラメータは、利用者と調整手段により調整される光の角度とを対応付ける対応付け情報として機能する。
【0028】
また、本実施形態の利用者情報及び調整パラメータは暗号化された状態でバーコードBに含まれる情報として存在する。CPU41は、暗号化された利用者情報及び調整パラメータを復号して利用者情報及び調整パラメータを取得する。
本実施形態では、利用者情報及び調整パラメータの全部が暗号化されているが、暗号化は、各データの一部分でもよい。例えば、ヘッダ情報を平文とし、実データ部分を暗号化するようにしてもよい。
【0029】
利用者情報及び調整パラメータの取得後、CPU41は、虹彩認識処理により認証された虹彩の画像データが示す利用者が、利用者情報に含まれているか否か判定する照合処理を行う。照合処理の結果、虹彩認識処理により認証された虹彩の画像データが示す利用者が、利用者情報に含まれていないと判定された場合(照合不成立)、CPU41は認証不成立として処理を終了する。認証不成立の場合、隠し画像を視認可能とするための処理である、透過部10を通過する光Lの調節は行われない。
【0030】
一方、照合処理において虹彩認識処理により認証された虹彩の画像データが示す利用者が、利用者情報に含まれていると判定された場合(照合成立)、CPU41は、利用者の虹彩の撮像画像、ROM43の画像データ及びバーコードBの利用者情報に基づく利用者の認証が成立したものと判定する(認証成立)。認証成立の場合、CPU41は、バーコードBから取得した調整パラメータに基づいて透過部10を通過する光Lの調節を行う。
【0031】
図5(A)、(B)に、透過部10を通過する光Lの調整前後の視認画像の一例を示す。図5(A)は、CPU41により透過部10を通過する光Lの調整が行われる前の媒体上の画像の視認状態の一例を示し、図5(B)は、図5(A)に示す画像について、CPU41により透過部10を通過する光Lの調整が行われた後の視認状態の一例を示す。
図5(A)に示すように、CPU41により透過部10を通過する光Lの調整が行われる前は、媒体上において図5(B)に示す隠し画像Hを視認することはできない。一方、CPU41により透過部10を通過する光Lの調整が行われると、図5(B)に示すように、図5(A)に示す画像に予め形成されていた隠し画像Hを視認することができるようになる。
CPU41は、照合処理の結果が照合成立であった場合、バーコードBから取得した調整パラメータに基づいてシャッター12を動作させて透過部10を通過する光Lの調節を行うことにより、図5(A)、(B)に示す例のように、バーコードBが形成された媒体上の画像に含まれる隠し画像Hを視認可能とする。これにより、閲覧装置1の利用者は、隠し画像を閲覧することができる。
このように、CPU41は、認証手段による認証の結果に基づいて画像に予め含まれている隠し画像の視認の可否を判定する判定手段として機能する。
また、CPU41は、判定手段による判定の結果に基づいて透過部を通過する光を調整して隠し画像の視認の可否を切り替える調整手段として機能する。
【0032】
ユーザは、認証処理の途中又は隠し画像の視認後に所定の終了処理を行うことで認証処理を終了することができる。所定の終了処理とは、例えば電源OFFや、認証スイッチによる隠し画像の視認の終了指示等である。
【0033】
以下、図6のフローチャートを用いて、認証処理の流れを説明する。
CPU41は、まず、虹彩画像取得部20を動作させ、利用者の虹彩の撮像画像を取得する(ステップS1)。次に、CPU41は、虹彩認識処理を行い(ステップS2)、虹彩認識成立となったか否か判定する(ステップS3)。
【0034】
虹彩認識成立の場合(ステップS3:YES)、CPU41は、バーコード読取部30を動作させて媒体に形成されているバーコードBから利用者情報及び調整パラメータを取得、復号する(ステップS4)。そして、CPU41は、虹彩認識処理により認証された虹彩の画像データが示す利用者が利用者情報に含まれているか否か即ち照合成立であるか否か判定する(ステップS5)。
【0035】
照合成立の場合(ステップS5:YES)、CPU41は、認証成立したものとして、バーコードBから取得した調整パラメータに基づいて透過部10を通過する光Lの調節を行う(ステップS6)。一方、ステップS3において虹彩認識不成立の場合(ステップS3:NO)又はステップS5において照合不成立の場合(ステップS5:NO)、CPU41は認証不成立として(ステップS7)、処理を終了する。
ステップS6の処理後又は認証処理の途中で所定の終了処理が行われた場合、認証処理は終了する。
【0036】
以上のように、本実施形態の閲覧装置1によれば、CPU41が、虹彩認識処理の結果を含めて認証成立と判定した場合に、シャッター12を動作させて透過部10を通過する光Lの調整を行い、媒体上の画像に予め設けられていた隠し画像Hを視認することができるようにする。
これによって、認証成立となる正当な利用者のみに隠し画像Hを閲覧させることができる。加えて、閲覧装置1の透過部10を通過する光の調整の有無により隠し画像Hの視認可否が決定するので、隠し画像Hを含む画像の媒体を問わない。このように、本実施形態の閲覧装置1は、画像の媒体に制限されることなく、正当な利用者にのみ隠し画像Hを閲覧可能とすることができる。
【0037】
さらに、閲覧装置1はバーコード読取部30を有し、調整パラメータをバーコードBから取得するので、媒体上の画像に予め設けられている隠し画像と、当該隠し画像のための光の調整に係る情報とを媒体上の情報により対応付けることができる。
【0038】
さらに、認証処理において、閲覧装置1は利用者情報をバーコードBから取得する。そして、CPU41が虹彩認識成立と判定した利用者が利用者情報に含まれるか否かを判定する。これによって、媒体上の画像に予め設けられている隠し画像と、当該隠し画像の視認を許可された利用者とを媒体上の情報により対応付けることができる。
【0039】
さらに、調整パラメータ、利用者情報はバーコードBに含まれる情報である。これによって、調整パラメータ、利用者情報を媒体上に容易に記録することができ、閲覧装置1は既存のバーコード読取技術により調整パラメータ、利用者情報を媒体上から容易に取得することができる。
【0040】
さらに、調整パラメータ、利用者情報が暗号化されているので、媒体上からの調整パラメータ、利用者情報の容易な取得と、これらの情報の不正利用の防止とを両立することができる。
【0041】
さらに、閲覧装置1は、虹彩認識処理を行い、その結果に基づいて利用者の認証を行うので、利用者の生体情報に基づいた極めて正確な利用者の認証を行うことができる。
【0042】
さらに、メガネフレームの形状を有するフレーム50、50により透過部10を利用者の眼前で保持するので、透過部10と利用者の眼との距離を一定に保つことができ、CPU41による透過部10の光の調整結果に応じた隠し画像の視認可否をより正確に反映することができる。
【0043】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【0044】
例えば、透過部は、光の調整を行うことが可能な構成であれば他の形態を取っても良い。
他の形態の透過部の一例として、液晶を用いた透過性を有するフィルター構造を用いる方法が挙げられる。この場合、フィルター内に収められた液晶や、液晶シャッター等、液晶を用いたフィルターにおいて光の透過性を変化させる構成の動作をCPU41により制御することにより透過部を通過する光の量や角度を調整する。これによって、より多彩な光の調整パターンを実現することができる。
【0045】
他の形態の透過部の別の一例として、レンチキュラーレンズとシャッター等の遮蔽部材とを併用する方法が挙げられる。
【0046】
図7に、レンチキュラーレンズとシャッター等の遮蔽部材とを併用した透過部10Aの一例を示す。
図7に示す透過部10Aは、複数のレンチキュラーレンズ部13を有するレンズ部11Aと、レンズ部11Aを通過する光Lの経路を限定するシャッター12Aとを有する。
【0047】
レンズ部11Aは、所定の角度で光を屈折させる複数のレンチキュラーレンズ部13と、当該レンチキュラーレンズ部13の間に設けられてその面部に対して直交する光を屈折させない平板部14とを有する。レンチキュラーレンズ部13は、図7に示すように、その断面がかまぼこ形状の凸レンズであり、当該かまぼこ形状を二分した幅が、一箇所の平板部14の幅と同一である。
シャッター12Aは、レンズ部11Aに対してその位置を変化させるスリット形状の遮蔽部材であり、一つのスリットの幅は一箇所の平板部14の幅の2倍即ち一のレンチキュラーレンズ部13のかまぼこ形状の幅と同一である。
【0048】
CPU41は、シャッター12Aの位置を変化させることにより透過部10Aを通過する光Lの経路を変化させる。具体的には、CPU41は、透過部10Aを通過する光Lの経路を、平板部14、レンチキュラーレンズ部13のかまぼこ形状を二分した一方又は他方のいずれかとする。これによって、図8(A)〜(C)に示すように、透過部10Aを通過する光Lの角度を変化させる。
例えば、正当な第1の利用者にレンチキュラーレンズ部13のかまぼこ形状を二分した一方の光Lの角度を割り当て、第1の利用者とは異なる正当な第2の利用者にレンチキュラーレンズ部13のかまぼこ形状を二分した他方の光Lの角度を割り当て、さらに認証処理が未完了の間又は認証不成立の場合に光Lの経路を平板部14とすることにより、図9(A)〜(C)に示すように、複数の利用者に対して個別に視認可能な隠し画像H1、H2を設定することができる。
【0049】
図8(A)〜(C)及び図9(A)〜(C)に示す例の場合、複数の利用者の各々について用いる光Lの角度に応じた調整パラメータをバーコードBに含ませることにより、複数の利用者に応じた調整パラメータの取得を容易に行うことができる。
【0050】
また、上記の第1の利用者、第2の利用者等の複数の利用者を利用権限グループとして用い、各利用権限グループに複数の利用者を設定することにより、閲覧装置1をさらに多くの利用者で共用することができる。第1の利用者、第2の利用者に限らず、三以上の利用者又は利用権限グループを設定してもよい。
【0051】
また、利用者情報及び調整パラメータの取得は、二次元バーコードを用いるものに限定されない。例えば、一次元バーコードでもよいし、その他の埋め込み情報によってもよい。また、バーコードBを含む埋め込み情報は、隠し画像の設けられた画像を形成された媒体上に限定されず、画像と別個に設けられてもよい。
また、バーコードB及びバーコード読取部30は省略することができる。その場合、利用者情報に基づく照合処理を省略する。また、調整パラメータは予めROM43等に記憶させておくこととなる。
【0052】
また、利用者の認証は、虹彩の撮像画像以外によってもよい。例えば網膜の撮像画像に基づく認証や指紋認証、その他の生体認証や、生体情報によらない認証方法も適用することができる。
また、光の調整は透過部を通過する光の角度に限らない。例えば、特定の色(スペクトル)の光を通すフィルターの位置、角度や、当該フィルターの複数の組み合わせによる透過色の変化により隠し画像の視認可否を切り替えるようにしてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態における閲覧装置1はメガネの形状を有しているが、これに限らない。他の形態として、例えば虫眼鏡のように手その他の保持機構で支持する形態や、紙等の媒体に載置可能なシートやバインダーの形態等が挙げられ、この他の形態を取ってもよい。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
光の透過性を有する透過部を備え当該透過部越しに画像を閲覧する閲覧装置であって、
当該閲覧装置の利用者を識別するための識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記識別情報取得手段により取得された前記識別情報に基づいて前記利用者の認証を行う認証手段と、
前記認証手段による認証の結果に基づいて前記画像に予め含まれている隠し画像の視認の可否を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定の結果に基づいて前記透過部を通過する光を調整して前記隠し画像の視認の可否を切り替える調整手段と、を備えることを特徴とする閲覧装置。
<請求項2>
前記調整手段は、前記利用者と前記画像との間で前記透過部を通過する光の角度を調整して前記隠し画像の視認の可否を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の閲覧装置。
<請求項3>
前記利用者と前記調整手段により調整される光の角度とを対応付ける対応付け情報を取得する対応付け情報取得手段をさらに備え、
前記調整手段は、前記対応付け情報取得手段により取得された前記対応付け情報に基づいて前記利用者と前記画像との間で前記透過部を通過する光の角度を調整することを特徴とする請求項2に記載の閲覧装置。
<請求項4>
前記隠し画像の視認を予め許可されている者を示す利用者情報を取得する利用者情報取得手段をさらに備え、
前記認証手段は、前記利用者情報取得手段により取得された前記利用者情報と前記識別情報取得手段により取得された前記識別情報とに基づいて、前記識別情報に基づいて特定された利用者が前記隠し画像の視認を予め許可されている者である場合に当該利用者を認証することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の閲覧装置。
<請求項5>
前記利用者情報は、バーコードに含まれる情報であり、
前記利用者情報取得手段は、前記バーコードを読み取る読取手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の閲覧装置。
<請求項6>
前記利用者情報は、その一部又は全部が暗号化されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の閲覧装置。
<請求項7>
前記隠し画像の視認を予め許可されている者の眼の虹彩の画像を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記識別情報取得手段は、前記利用者の眼の虹彩を撮像した撮像画像を取得する撮像手段を備え、前記撮像手段により撮像された前記撮像画像を前記利用者を識別するための識別情報として取得し、
前記認証手段は、前記撮像画像と前記記憶手段に記憶された虹彩の画像とに基づいて前記利用者の認証を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の閲覧装置。
<請求項8>
前記透過部を前記利用者の眼前で保持する保持手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の閲覧装置。
<請求項9>
前記保持手段は、メガネフレームであることを特徴とする請求項8に記載の閲覧装置。
【符号の説明】
【0055】
1 閲覧装置
10 透過部
11 透過板
12 シャッター
20 虹彩画像取得部
30 バーコード読取部
40 制御部
50 フレーム
B バーコード
H 隠し画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の透過性を有する透過部を備え当該透過部越しに画像を閲覧する閲覧装置であって、
当該閲覧装置の利用者を識別するための識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記識別情報取得手段により取得された前記識別情報に基づいて前記利用者の認証を行う認証手段と、
前記認証手段による認証の結果に基づいて前記画像に予め含まれている隠し画像の視認の可否を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定の結果に基づいて前記透過部を通過する光を調整して前記隠し画像の視認の可否を切り替える調整手段と、を備えることを特徴とする閲覧装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記利用者と前記画像との間で前記透過部を通過する光の角度を調整して前記隠し画像の視認の可否を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の閲覧装置。
【請求項3】
前記利用者と前記調整手段により調整される光の角度とを対応付ける対応付け情報を取得する対応付け情報取得手段をさらに備え、
前記調整手段は、前記対応付け情報取得手段により取得された前記対応付け情報に基づいて前記利用者と前記画像との間で前記透過部を通過する光の角度を調整することを特徴とする請求項2に記載の閲覧装置。
【請求項4】
前記隠し画像の視認を予め許可されている者を示す利用者情報を取得する利用者情報取得手段をさらに備え、
前記認証手段は、前記利用者情報取得手段により取得された前記利用者情報と前記識別情報取得手段により取得された前記識別情報とに基づいて、前記識別情報に基づいて特定された利用者が前記隠し画像の視認を予め許可されている者である場合に当該利用者を認証することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の閲覧装置。
【請求項5】
前記利用者情報は、バーコードに含まれる情報であり、
前記利用者情報取得手段は、前記バーコードを読み取る読取手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の閲覧装置。
【請求項6】
前記利用者情報は、その一部又は全部が暗号化されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の閲覧装置。
【請求項7】
前記隠し画像の視認を予め許可されている者の眼の虹彩の画像を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記識別情報取得手段は、前記利用者の眼の虹彩を撮像した撮像画像を取得する撮像手段を備え、前記撮像手段により撮像された前記撮像画像を前記利用者を識別するための識別情報として取得し、
前記認証手段は、前記撮像画像と前記記憶手段に記憶された虹彩の画像とに基づいて前記利用者の認証を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の閲覧装置。
【請求項8】
前記透過部を前記利用者の眼前で保持する保持手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の閲覧装置。
【請求項9】
前記保持手段は、メガネフレームであることを特徴とする請求項8に記載の閲覧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−168346(P2012−168346A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29289(P2011−29289)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】