説明

防かび組成物

【課題】本発明は、アルタナリア属菌に特異的に優れた防除効果を有し、建材用等として有用な抗アルタナリア剤を提供する。
【解決手段】4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミンを含有する、抗アルタナリア剤が、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用、特に建材用等として有用な、抗アルタナリア剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建築の分野において、建材に発生するかびは、美観上、材料劣化上の問題がある。また、建築物の施工時、居住時及び使用時において、施工者、居住者及び使用者への健康上の被害、例えば、かびの胞子を吸引することによるアレルギー等も問題となる。そのため、従来建材に防かび剤が添加されることが広く実施されているが、建材にはほとんど発生しないかびにまで広く抗かび作用を有する抗かび剤を建材に用いることは、該抗かび剤によって建築物の施工者、居住者及び使用者の健康に悪影響を及ぼすおそれがあることから好ましいとは言えない。そこで、建材に多く発生するアルタナリア(Alternaria)属菌に特異的に効果を有する抗かび剤が求められている。
【0003】
特許文献1には、2’,5’−ジクロロ−2−(2−ピラジニル)−アセトフェノンo−メチルオキシム、2−(2−ピラジニル)−4’−トリフルオロメチル−アセトフェノンo−メチルオキシム、2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)−4−ペンテノフェノンo−メチルオキシム、2−ブロモ−2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)−アセトフェノンo−メチルオキシム、または、2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)−グリコロフェノンo−メチルオキシムあるいはそのような化合物の酸付加塩の有効量、同時にまた製剤補助剤を含有する、殺かび組成物が開示されている。しかし、該文献には、アルタナリア属菌は具体的に記載されておらず、2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(E)−o−メチルオキシム、2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(Z)−o−メチルオキシムがアルタナリア属菌に特異的に効果を有することは、記載も示唆もされていない。
【0004】
特許文献2には、式I:
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R及びRは互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1ないし3のアルキル基、炭素原子数1ないし2のハロアルキル基、炭素原子数1ないし3のアルコキシ基または炭素原子数1ないし3のハロアルコキシ基を表わし、;Rは水素原子;炭素原子数1ないし4のアルキル基;またはハロゲン原子、水酸基及び/またはシアノ基によって置換された炭素原子数1ないし4のアルキル基;シクロプロピル基;またはメチル基及び/またはハロゲン原子によってモノ−ないしトリ−置換されたシクロプロピル基を表わし、;並びにRは炭素原子数3ないし6のシクロアルキル基またはメチル基及び/またはハロゲン原子によってモノ−ないしトリ−置換された炭素原子数3ないし6のシクロアルキル基を表わす。)で表わされる化合物が記載され、該式Iの化合物に包含される多数の化合物の1例として、本発明の有効成分の1つである4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミンが開示されている。また、該文献には、該式Iの化合物が有害生物、特に害虫及び植物損傷微生物、特に菌を防除するために有効であると記載され、具体的に、不完全菌類[特にポトリチス、及びまたはピリクラリア、ヘルミントスポリウム、フサリウム、セブトリア、セルコスポラおよびアルタナリア]:担子菌類[例えばリゾクトニア、へミレイア、プシニア]の類に属する植物病原性菌類、その他多数の植物性病原性菌を例示している。しかし、該文献には、前記式Iで包括的に示される化合物の1例として4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミンが開示され、及び多数列挙された菌類の一例としてアルタナリアが記載されているに過ぎず、特定の化合物である4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミンが特定のかび菌であるアルタナリア属菌に特異的に効果を有することは、記載も示唆もされていない。また、該文献には、該化合物がアルタナリア属菌に有効であることを示すデータは全く示されてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−183671号公報
【特許文献2】特開平1−113374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アルタナリア属菌に特異的に優れた防除効果を有し、建材用等として有用な抗アルタナリア剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(E)−o−メチルオキシム、2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(Z)−o−メチルオキシムおよび4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミンが、アルタナリア属菌に特異的に優れた防除効果を有することを見出し、この知見に基づいてさらに研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の[1]〜[4]に関する。
[1]2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(E)−o−メチルオキシム、2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(Z)−o−メチルオキシムまたは4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミンを含有する、抗アルタナリア剤(以下、本発明の抗アルタナリア剤とも言う。)。
[2]工業用である、上記[1]記載の剤。
[3]建材用である、上記[1]記載の剤。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の剤が添加された工業製品。
本発明においては、アルタナリア属菌に防除効果を有する剤を抗アルタナリア剤と称する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗アルタナリア剤は、特異的に優れたアルタナリア属菌防除効果を有する。すなわち、本発明の抗アルタナリア剤は、アルタナリア属菌の防除を必要とする対象物(例えば、工業製品等、特に、建材等。)に添加することで該対象物における優れたアルタナリア属菌防除効果を有するだけでなく、該対象物において特に防除を必要としないアルタナリア属菌以外のかび菌に対しては効果を示さないことから、該対象物の利用者(例えば、建材の場合、建築物の施工者、居住者及び使用者)の健康への悪影響が抑制されるという効果も有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の抗アルタナリア剤は、有効成分として2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(E)−o−メチルオキシム、2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(Z)−o−メチルオキシムまたは4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミン(本明細書において、これらをまとめて本発明の有効成分ともいう。)を含有する。
【0013】
2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(E)−o−メチルオキシム、2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(Z)−o−メチルオキシムおよび4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミンは、市販品を用いることもでき、例えば和光純薬工業(株)製市販品として入手できる。また、特開昭58−183671号公報、特開平1−113374号公報に記載の方法、又はこれに準ずる方法により製造することもできる。
【0014】
本発明の抗アルタナリア剤は、本発明の有効成分から選択される1種のみを単独で配合してもよく、2種以上を併用して配合してもよい。また、本発明の抗アルタナリア剤は、本発明の有効成分そのものであってもよく、後述の添加剤等と本発明の有効成分との組成物であってもよい。さらに、本発明の抗アルタナリア剤は、種々の剤型に調製することができる。
【0015】
本発明の抗アルタナリア剤の製剤化は、特に制限されることなく、その目的および用途に応じて、例えば、液剤(水懸濁剤および油剤を含む。)、ペースト剤、粉剤、粒剤、マイクロカプセル等の公知の種々の剤型に製剤化することができる。また、包接化合物として調製してもよく、さらに、層状ケイ酸塩等のモンモリロナイト(スメクタイト類等)等に担持させ、あるいは、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク等に吸着させることにより調製することもできる。
【0016】
本発明の有効成分は、剤型、目的および用途等に応じて配合量を適宜選択することができ特に限定されないが、抗アルタナリア剤に対して、本発明の有効成分の総量として、通常0.1〜100重量%の範囲から適宜選択して配合することができる。より具体的には、例えば、本発明の抗アルタナリア剤を液剤として製剤化する場合には、液剤に対して本発明の有効成分を、総量として、例えば、0.1〜50重量%の範囲で配合することができる。また、ペースト剤として製剤化する場合には、ペースト剤に対して本発明の有効成分を、総量として、例えば、0.1〜70重量%の範囲で配合することができる。また、粉剤、粒剤として製剤化する場合には、粉剤、粒剤に対して本発明の有効成分を、総量として、例えば、0.1〜90重量%の範囲で配合することができる。
【0017】
本発明の抗アルタナリア剤は、本発明の有効成分の溶解を向上させる観点より、溶媒を配合して液剤とすることが好ましい。
【0018】
液剤として調製する場合の溶媒としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール等のアルコール系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、例えば、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の極性溶媒、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒、例えば、キシレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、エチルビフェニル、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等の芳香族系溶媒等が挙げられる。これら溶媒は、単独または2種以上併用してもよく、好ましくは、水、グリコール系溶媒や芳香族系溶媒が挙げられる。
【0019】
溶媒の配合割合は、本発明の有効成分1重量部に対して、通常、1〜1000重量部である。なお、本発明の有効成分の種類や、後述する添加剤の種類によっては、溶媒の比率を大幅に変えて調製することもできる。
【0020】
さらに、本発明の抗アルタナリア剤には、その目的、用途等に応じて、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、光安定剤等を添加してもよい。また、本発明の抗アルタナリア剤には、本発明の有効成分以外の有効成分(例えば、防藻剤および/または本発明の有効成分以外の防かび剤)を配合してもよい。
防藻剤や本発明の有効成分以外の防かび剤を本発明の抗アルタナリア剤と併用することで、工業製品(特に建材等)等に発生する藻やアルタナリア以外のかびへの総合的効果を有する製剤を提供することができる。
【0021】
防藻剤および/または本発明の有効成分以外の防かび剤としては、例えば、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、ジチオール系化合物、チオフェン系化合物、ハロアセチレン系化合物、フタルイミド系化合物、ハロアルキルチオ系化合物、ピリチオン系化合物、フェニルウレア系化合物、トリアジン系化合物、グアニジン系化合物、トリアゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、四級アンモニウム塩系化合物等が挙げられる。
【0022】
イソチアゾリン系化合物としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オンが挙げられる。
【0023】
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール等が挙げられる。
【0024】
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンが等挙げられる。
【0025】
チオフェン系化合物としては、例えば、3,3,4−トリクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド等が挙げられる。
【0026】
ハロアセチレン系化合物としては、例えば、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート等が挙げられる。
【0027】
フタルイミド系化合物としては、例えば、N−1,1,2,2−テトラクロロエチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captafol)、N−トリクロロメチルチオ−テトラヒドロフタルイミド(Captan)、N−ジクロロフルオロメチルチオフタルイミド(Fluorfolpet)、N−トリクロロメチルチオフタルイミド(Folpet)等が挙げられる。
【0028】
ハロアルキルチオ系化合物としては、例えば、N−ジメチルアミノスルホニル−N−トリル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Tolylfluanide)、N−ジメチルアミノスルホニル−N−フェニル−ジクロロフルオロメタンスルファミド(Dichlofluanide)等が挙げられる。
【0029】
ピリチオン系化合物としては、例えば、ナトリウムピリチオン、ジンクピリチオン等が挙げられる。
【0030】
フェニルウレア系化合物としては、例えば、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア等が挙げられる。
【0031】
トリアジン系化合物としては、例えば、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン等が挙げられる。
【0032】
グアニジン系化合物としては、例えば、1,6−ジ−(4’−クロロフェニルジグアニド)−ヘキサン、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩等が挙げられる。
【0033】
トリアゾール系化合物としては、例えば、α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:プロピコナゾール)、1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(慣用名:アザコナゾール)、α−(4−クロロフェニル)−α−(1−シクロプロピルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:シプロコナゾール)等が挙げられる。
【0034】
ベンズイミダゾール系化合物としては、例えば、メチル 2−ベンズイミダゾールカルバメート、エチル 2−ベンズイミダゾールカルバメート、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0035】
四級アンモニウム塩系化合物としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ジ−n−デシル−ジメチルアンモニウムクロライド、1−ヘキサデシルピリジニウムクロライド等が挙げられる。
【0036】
また、他の防藻剤および/または本発明の有効成分以外の防かび剤として、その他に、例えば、ジヨードメチル−p−トルイルスルホン、p−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルフォルマール等の有機ヨウ素系化合物、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチオカーバメート系化合物、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル等のニトリル系化合物、例えば、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等のピリジン系化合物、例えば、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系化合物、例えば、3−ベンゾ[b]チエン−2−イル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキサイド等のオキサチアジン系化合物、例えば、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロパンアミド等のシアノアセトアミド系化合物、例えば、メチレンビスチオシアネート等のチオシアネート系化合物等が挙げられる。
【0037】
これら防藻剤および/または本発明の有効成分以外の防かび剤は、単独または2種以上併用してもよく、好ましくは、イソチアゾリン系化合物(2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンツイソチアゾリン−3−オン)、ハロアセチレン系化合物(3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート)、ピリチオン系化合物(ジンクピリチオン)、フェニルウレア系化合物(3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア)、トリアジン系化合物(2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン)、トリアゾール系化合物(α−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(慣用名:テブコナゾール))、ベンズイミダゾール系化合物(メチル 2−ベンズイミダゾールカルバメート)と併用することで、相乗的な微生物の防除効果を発現させることができる。
【0038】
また、防藻剤および/または本発明の有効成分以外の防かび剤の配合割合は、剤型、目的および用途によって適宜選択されるが、例えば、本発明の有効成分100重量部に対して、1〜9000重量部、好ましくは、3〜8000重量部である。
【0039】
界面活性剤としては、例えば、石鹸類、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン界面活性剤、高分子界面活性剤等公知の界面活性剤が挙げられる。これら界面活性剤は、単独または2種以上併用してもよく、好ましくは、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0040】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、酸化エチレンと酸化プロピレンブロック共重合物等が挙げられる。
【0041】
また、アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸金属塩、ポリカルボン酸型界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸エステル金属塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩、リグニンスルホン酸金属塩、リグニンスルホン酸金属塩等が挙げられ、金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
【0042】
これら、界面活性剤は、単独または2種以上併用してもよく、その配合割合は、特に制限されず、剤型、目的および用途によって適宜選択されるが、例えば、液剤として製剤化される場合には、その液剤100重量部に対して0.1〜5重量部添加される。
【0043】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、例えば、アルキルジフェニルアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0044】
これら、酸化防止剤は、単独または2種以上併用してもよく、その配合割合は、特に制限されず、剤型、目的および用途によって適宜選択されるが、例えば、液剤として製剤化される場合には、その液剤100重量部に対して0.1〜5重量部添加される。
【0045】
また、光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。光安定剤は、単独または2種以上併用してもよく、その配合割合は、特に制限されず、剤型、目的および用途によって適宜選択されるが、例えば、液剤として製剤化される場合には、その液剤100重量部に対して0.1〜10重量部添加される。
【0046】
本発明の抗アルタナリア剤は、優れた抗アルタナリア属菌防除作用を発現し、アルタナリア属菌に対する防除剤として用いることができる。
【0047】
本発明の抗アルタナリア剤は、例えば、製紙パルプ工場、冷却水循環工程等の種々の産業用水や、切削油等の金属加工用油剤、カゼイン、澱粉糊、にかわ、紙、塗工紙、紙用塗工液、表面サイズ剤、紙力増強剤、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、インキ、ポリビニルアルコールフィルム、塩化ビニルフィルム、樹脂製品、セメント混和剤、シーリング剤、目地剤、木材、シーリング材、保温材、天井材、壁材、石膏ボード、床材等の各種工業製品における工業用抗アルタナリア剤として好適に用いられる。
ここで、本明細書において、工業用とは、工業製品に対して用いられるという意味であり、工業製品とは、広く工業的に生産される製品を含む概念であって、アルタナリア属菌の防除を必要とする製品であれば特に限定されない。
【0048】
本発明の抗アルタナリア剤は、特に建材(即ち、建築の資材)、例えば、カゼイン、澱粉糊、にかわ、紙、塗工紙、紙用塗工液、表面サイズ剤、紙力増強剤、塗料、接着剤、合成ゴムラテックス、インキ、ポリビニルアルコールフィルム、塩化ビニルフィルム、樹脂製品、セメント混和剤、シーリング剤、目地剤、木材、シーリング材、保温材、天井材、壁材、石膏ボード、床材等における建材用抗アルタナリア剤として好適に用いられる。
【0049】
本発明の抗アルタナリア剤は、アルタナリア属菌の防除を必要とする対象物(例えば、工業製品等、特に、建材等。)に添加することで、該対象物において優れたアルタナリア属菌防除効果を発現する。
抗アルタナリア剤の対象物への添加方法は、特に限定されず、混合、塗布等が挙げられる。また、抗アルタナリア剤は対象物の製造工程において原料に添加してもよく、完成品に添加してもよい。具体的には、例えば、対象物が塗料の場合、抗アルタナリア剤を粉状のまま塗料製造時に分散機で分散させ、塗料成分に練り込む方法、抗アルタナリア剤を適切な媒体に練り込みペースト状にまたは適切な媒体に溶解して、塗料製造後に混ぜ込む方法等が挙げられる。
【0050】
なお、本発明の抗アルタナリア剤は、適用対象、防除期間等に応じて、添加量を適宜選択すればよいが、好ましくは1〜50000mg(本発明の有効成分)/kg(製品)、さらに好ましくは10〜10000mg(本発明の有効成分)/kg(製品)となるように添加すればよい。
【実施例】
【0051】
以下に実施例および試験例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
実施例1
2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(E)−o−メチルオキシム0.1重量部、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)20重量部および水79.9重量部を配合して攪拌混合することにより、液剤を得た。
【0052】
実施例2
2’,4’−ジクロロ−2−(3−ピリジル)アセトフェノン(Z)−o−メチルオキシム0.1重量部、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)20重量部および水79.9重量部を配合して、攪拌混合することにより、液剤を得た。
【0053】
実施例3
4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミン0.1重量部、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)20重量部および水79.9重量部を配合して、攪拌混合することにより、液剤を得た。
【0054】
試験例
実施例1〜3で得られた液剤をそれぞれ添加したグルコースブイヨン寒天培地に、ミクロプランタ(佐久間製作所製)を用いて、表1に記載の各菌株のかび胞子懸濁液を接種し、33℃で18時間培養し、さらに、28℃で2日間培養した。次いで、培養後の菌の生育を観察して、最小発育阻止濃度(MIC、μg/mL)を求めた。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果から、本発明の抗アルタナリア剤はアルタナリア属菌に特異的に優れた防除効果を有することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−シクロプロピル−6−メチル−N−フェニルピリミジン−2−アミンを含有する、抗アルタナリア剤。
【請求項2】
工業用である、請求項1記載の剤。
【請求項3】
建材用である、請求項1記載の剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の剤が添加された工業製品。

【公開番号】特開2013−32375(P2013−32375A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223691(P2012−223691)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2007−319910(P2007−319910)の分割
【原出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】