説明

防しわ性を有する伸縮繊維

本開示は、防しわ性を有する伸縮性又は弾性の織物製品に関する。これらの織物製品は、好ましくはセルロース系であり、より好ましくは綿系である。これらの製品の伸縮性レベルは、好ましくは約8%を超え、好ましくは少なくとも3.0のDP評価(AATCC 143−1996又はAATCC 124−2001に準拠して決定される)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された防しわ性を有する伸縮繊維に関する。一態様において、本発明は、合成繊維と天然繊維(特に綿)とを含み、その合成繊維が、繊維に防しわ性を付与するために一般に使用される化学処理に耐えることができる架橋した耐熱弾性繊維を含む、伸縮繊維に関する。本発明の別の態様は、このような繊維から製造されしわに対して抵抗性を示す製品、たとえば衣料品である。
【背景技術】
【0002】
織物製品、たとえばリネン及び衣料品が使用されると、その製品の表面にしわが現れる。衣料品、特にセルロース系衣料品の場合、衣料品の着用及び特に洗濯によって、一般に望ましくない外観を与えるしわが生じる。しわを除去するために、衣料品の消費者は、種々の方法、たとえばアイロンがけ、プレス作業、及びさらには乾燥機による乾燥の厳重な監視を使用する。頻繁又は困難なしわの発生により、消費者に不満が生じる。織物製品の製造元及びデザイナーは、製品に対してデュラブルプレスを行うことで、その製品がしわ形成を回避する能力及び/又は最小限の努力でしわを迅速に除去できる能力を示すようにしようとしてきた。典型的なデュラブルプレスコーティングは、織物表面に化学コーティングを適用することを含む。これらのコーティングは、典型的には架橋剤と触媒とを含み、それによって架橋剤と、織物の形態の繊維中のセルロースとの間で架橋させる。これらの架橋によって、防しわ性が付与されるだけでなく、寸法安定性の改善、繊維のなめらかさの増加及び折り目保持力の改善が得られることもある。
【0003】
防しわ性を織物製品に付与するために現在頻繁に使用されている化学コーティングは比較的過酷なものである。多くの繊維に適しているが、このような処理は繊維に伸縮性を付与するために一般に使用されるスパンデックス繊維としての伸縮繊維に適用すると、化学的処理及び熱(硬化)処理のいずれにも耐えられないため、不成功に終わっている。したがって、防しわ性を示す伸縮繊維は現在存在しない。したがって、防しわ性伸縮繊維、特にセルロース系の防しわ性伸縮繊維が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、防しわ性を有する伸縮性又は弾性の織物製品に関する。これらの織物製品は、好ましくはセルロース系であり、より好ましくは綿系である。これらの製品の伸縮性レベルは、好ましくは約10%を超え、これらの製品は好ましくは少なくとも3.0のDP評価(衣料品の場合はAATCC 143−1996、又は繊維の場合はAATCC 124−2001に準拠して決定される)を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明は、伸縮性を有し防しわ性である織物製品に関する。本発明の目的において、「織物製品」は、織布、並びに繊維から製造される製品、たとえば敷布及び他のリネン、並びに衣料品を含んでいる。バイアス力を与えた後で高パーセント弾性回復(すなわち、低パーセント永久ひずみ)を有する場合に、材料は、典型的には弾性である(又は伸縮性を有する)と特徴づけられる。理想的には、弾性材料は、(i)ひずみ時の低応力又は荷重;(ii)低パーセント応力又は荷重緩和、並びに(iii)低パーセント永久ひずみの3つの重要な性質によって特徴づけられる。言い換えると、(i)材料を延伸させるために低応力又は荷重を必要とし、(ii)材料が延伸された後、応力の緩和又は荷重除去が0又は小さな値となり、さらに(iii)延伸、バイアシング、又はひずみが解除された後に元の寸法に完全に又は高レベルで回復するべきである。
【0006】
本発明の目的において、ASTM D3107−1980に準拠して、製品を、経糸(warp)又は緯糸(weft)の方向で少なくとも8%(すなわち、元の長さの少なくとも1.08倍)、好ましくは少なくとも10%延伸することができ、次に、延伸力から解放した後に繊維が元の寸法に近い値にもどる場合に、その製品が「弾性」又は「伸縮性」の製品であると見なす。本発明の繊維は、パーセント伸縮率に対するパーセント増加率の比率が0.5未満、より好ましくは0.4未満、さらに好ましくは0.3未満となるべきである(たとえば、25%延伸して、元の寸法より5%大きな値まで回復する繊維は0.2の比率を有する)。延伸及び回復の量は、繊維の重量の関数となり(すなわち、より軽い繊維、たとえばボイルは一般に延伸がより大きく、回復がより小さい)、そして繊維構造の関数となることを理解されたい(たとえばヘリンボン繊維は、より高い伸縮性を有することが知られている)。場合によっては、本発明の製品は、経糸又は緯糸の方向に少なくとも15%、さらには少なくとも25%延伸することができる。本発明の製品が、その一方向においてより伸縮性を有することも考慮され、実際に多くの用途においてはこのことが好ましい。本発明の範囲内に含まれるために、本発明の製品は2つ以上の方向で伸縮性を有する必要はないし、各方向で同程度の伸縮性を有する必要もない。
【0007】
本発明の織物製品の第2の特徴は、それらが防しわ性であることである。繊維産業における防しわ性は、AATCC 143−1996(衣料品の場合)又はAATCC−124−2001(織布)に準拠して測定することができる。この試験プロトコルを使用すると、本発明の製品は、5回の洗浄後のデュラブルプレス(DP)評価が少なくとも3.0、より好ましくは少なくとも3.5、最も好ましくは少なくとも約4.0となる。理想的には、このDP評価は、25回、さらには50回の洗浄後でも少なくとも3.0となる。
【0008】
本発明の織物製品は、好ましくは、セルロース系材料、たとえば綿、亜麻(リネン)、ラミー、レーヨン、ビスコース及び/又は麻を含む。好ましくは、セルロース系材料は、本発明の織物製品の60〜98重量%を構成し、より好ましくは約90%超を構成する。繊維が綿を含むことが好ましい。1以上の別の材料を、単独で、又は好ましくはセルロース系材料と組み合わせて、本発明の織物製品中に使用することもできる。このような別の材料としては、天然繊維、たとえば羊毛、絹又はモヘア、並びに合成繊維、たとえばポリエステル、ポリアミド又はポリプロピレンが挙げられる。
【0009】
弾性を付与するために、本発明の製品は弾性繊維も含む。本発明の目的において、弾性繊維は、第1回の延伸後であって4分の1から100%の変形(2倍の長さ)の後に、その延伸された長さの少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、さらに好ましくは70%を回復することが可能な繊維である。この試験を行うための好適な方法の1つは、人造繊維の規格化のための国際事務局(International Bureau for Standardization of Manmade Fibers), BISFA 1998, chapter 7, option Aに見ることができる方法に基づいている。このような試験においては、繊維は、4インチ離れたグリップセットの間に配置され、次にこれらのグリップ約20インチ/分の速度で8インチの距離まで引き離し、次に直ちに回復させる。
【0010】
本発明において使用すると好ましい弾性繊維は、架橋しており均一に分岐したエチレンポリマーである。この材料は米国特許第6,437,014号明細書に記載されており、ラストール(lastol)として一般に知られている。このような繊維はザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)より商品名ダウXLA(Dow XLA)繊維として入手可能である。弾性繊維が製品の2〜10重量%を構成することが好ましい。弾性繊維はあらゆる適切な厚さであってよく、20〜140デニールの範囲内の繊維が入手容易であることから一般に好ましく、40〜70デニールの繊維がこの用途にもっとも一般的に利用されている。
【0011】
弾性繊維は、そのまま使用することもできるし、あるいは最初にマルチフィラメント糸に組み込むこともできる。多くの用途においては、弾性繊維は、天然繊維、たとえば綿で包みこむと好都合となる場合がある。
【0012】
一部の用途、たとえばズボンにおいては、製品に折り目が維持されることが望ましい。この折り目を維持するという要求は、しわを防止するために使用される技術的解決法と対立することが多い。驚くべきことに本発明の好ましい織物製品は、AATCC 143−1996に記載される試験プロトコルに準拠して測定される折り目保持(Crease Retention)(「CR」)評価が少なくとも3.5となることを見出した。CRを決定するためにはAATCC 143−1996 3(IV)A(iii)が特に好ましい。したがって、本発明の織物製品は、好ましくはCRが少なくとも3.0、より好ましくは3.5、最も好ましくは4.0である。
【0013】
本発明の製品は、それらの製造方法によって限定されるものではない。したがって、本発明の製品は、織られた(弾性繊維が経糸方向、緯糸方向又はその両方に存在することができる)、あるいは編まれた繊維を含む。
【0014】
同様に、防しわ性を付与するためのあらゆる公知の方法を、本発明の織物製品に使用することができる。典型的には繊維が準備され、架橋剤を触媒とともに含有する仕上溶液が適用される。当技術分野において公知のように、仕上溶液の適用は、繊維又は完成製品に対して行うことができる。一般に、架橋剤及び硬化触媒は、仕上溶液を含有する浴にセルロース系材料を浸漬することによって適用されるが、他の方法、たとえば吹き付けなども知られており、これらを使用して本発明の織物製品を作製することができる。防しわ性衣料品を製造するための別の方法は、二酸化硫黄、ホルムアルデヒド及び蒸気を含有する反応チャンバー中にプレスした衣料品を入れることを含み、これによってその場でセルロースの架橋が起こる。典型的な架橋剤としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド誘導体(尿素との付加生成物など)及びカルバミン酸エステルが挙げられる。他の架橋剤は、国際公開第89/12714号パンフレット(有機ポリカルボン酸)、米国特許第5,300.240号明細書(ホスフィニココハク酸及び/又はホスフィニコビコハク酸);米国特許第6,585,780号明細書(ホスフィナト置換ポリカルボン酸)及び米国特許出願公開第2003/0111633号明細書に記載されている。これらの参考文献の記載内容の全体が本明細書に組み込まれる。
【0015】
本発明の繊維に使用される非弾性繊維の選択は、所望の繊維構造、及び防しわ性を繊維に付与するために使用する方法に依存することがあり、これによって選択された繊維が好適なテナシティを有するようになる。たとえば、軽量の綿含有繊維が望ましく、防しわ性を付与するために比較的過酷な化学的処理が使用される場合、より高い初期テナシティを有する綿繊維、たとえばPIMA綿を使用すると、織布中の繊維がなお許容されるテナシティを有するようになるので、好都合となる場合がある。
【実施例】
【0016】
実施例1 湿気硬化
本発明を実証するために、以下の平織繊維を作製した:CPT40XCM80/2+SUPIMA40+70DXLA/120×74,53/54(すなわち、経糸120本/インチ×緯糸74本/インチの平織、織布の幅53〜54インチ、経糸はコンパクトコットン糸Ne40であり、緯糸は、コーマ綿糸Ne80/2撚り及びコアスパン糸のスーピマ(SUPIMA)綿Ne40と70デニールのダウXLA(DOW XLA)繊維との組み合わせである)。
【0017】
繊維を織った後、湯通し(desizing)、漂白、液体アンモニアによる処理及び予備柔軟化のステップを含む仕上工程を行った。この仕上工程の後、繊維のしわなし処理(non-wrinkling treatment)を行った。このしわなし処理は、化学的浸漬の後、湿気架橋(湿気X連結)を行うことからなった。しわなし処理に使用される装置は、図1に示されるようなモンフォーツ・モンテックス(Monforts Montex)5000であった。しわなし化学浴(1)は、3g/lのコグニス(Cognis)BF 5527、3.4g/lの48° Be NaOH、6.8g/lの28%H22、0.48%owf ABPL漂白剤(ハイAff(High Aff))を含有する水溶液であった。浴中の溶液/基質の比率を約12:1に維持した。浴のpHは1.5〜1.8の間に維持した。プレヒーター(2)を停止させ(休止のみ)、繊維がドライヤー(3)を通過する速度を43m/分に設定した。ドライヤーユニット(3)が70℃から95℃までの温度勾配を有するように設定した。ドライヤーユニット(3)内の空気循環(Air Circulation)が約65%rhの相対湿度を維持するように設定した。次に、繊維をロール上に巻き付け、これらのロールを温度30〜35℃で16〜24時間維持することで架橋させた。
【0018】
繊維の処理後、その繊維に対して、ASTM D3107に準拠して伸縮性及び増加率を測定し、AATCC−124−2001 TEST NO.1(IV)A(i)に準拠して5回洗浄後のDP評価を求めた。これらの値を表1に報告する。表1は実施例1の引張強度及び引裂強度も含んでいる。引張強度はASTM D 5034に準拠して測定し、引裂強度はASTM D 1424に準拠して測定した。
【0019】
実施例2〜4 衣料品の浸漬
防しわ性溶液中に浸漬した衣料品に対して2組目の実験を行った。これらの衣料品は、以下の繊維から作製した:実施例2は綾織繊維の144X75 50 X CVC 45+70D XLA(コアスパンダウXLA繊維)(すなわち、経糸144本/インチ×緯糸75本/インチの綾織、織布の幅53〜54インチ、経糸は綿糸Ne50であり;緯糸コアスパン糸はCVC(50%綿50%ポリエステル)糸Ne45及び70デニールのダウXLA繊維)であった。
【0020】
実施例3は、ポプリン繊維の144×75 50×cvc45(コアスパンXLA)であった(すなわち経糸144/インチ×緯糸75本/インチのポプリン、経糸は綿糸Ne50であり、緯糸コアスパン糸はCVC(50%綿50%ポリエステル)糸Ne 45及び70デニールのダウXLA繊維)。
【0021】
実施例4は、ピンポイントオックスフォードの75%C 22%ダウXLA繊維160×72 80/2//×cvc45(コアスパンダウXLA繊維)(すなわち経糸160本/インチ×緯糸72本/インチのピンポイントオックスフォード、経糸は綿糸Ne80/2撚りであり、緯糸コアスパン糸はCVC(50%綿50%ポリエステル)糸Ne45及び70デニールのダウXLA繊維)であった。
【0022】
以上の繊維に対して、湯通し、乾燥、仕上を行い、次にこれらから衣料品を作製した。次に、これらの衣料品に対して、米国特許出願公開第2003/0111633号明細書(この記載内容の全体が本明細書に組み込まれる)に記載される浸漬方法を実施した。浸漬後、衣料品を取り出し、部分的に乾燥させ、プレスし、硬化させた。
【0023】
衣料品の処理後、それらについて、伸縮性(伸び)及び増加率をASTM D3107に準拠して測定し;5回洗浄後のDP評価をAATCC 143−1996 3(IV)A(iii)に準拠して測定した。これらの値を表1に報告している。表1は引張強度及び引裂強度も含んでいる。引張強度はASTM D 5034に準拠して測定し、引裂強度はASTM D 1424に準拠して測定した。
【表1】

【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも8%の伸縮性及び少なくとも3.0のDP評価を有する、防しわ伸縮性製品。
【請求項2】
セルロース系繊維を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記セルロース系繊維が前記製品の60〜97重量%を構成する、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記セルロース系繊維が前記製品の少なくとも90%重量%を構成する、請求項3に記載の製品。
【請求項5】
前記セルロース系繊維が綿繊維を含む、請求項3に記載の製品。
【請求項6】
10%を超える伸縮性を有する、請求項1に記載の製品。
【請求項7】
15%を超える伸縮性を有する、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
25%を超える伸縮性を有する、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
少なくとも3.5のDP評価を有する、請求項1に記載の製品。
【請求項10】
少なくとも4.0のDP評価を有する、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
1以上の架橋ポリオレフィンポリマーから製造された繊維を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記架橋ポリオレフィンポリマーの少なくとも1種類が、均等に分岐したエチレンポリマーである、請求項10に記載の製品。
【請求項13】
架橋ポリオレフィンポリマーから製造された前記繊維が前記製品の2重量%〜10重量%を構成する、請求項11に記載の製品。
【請求項14】
少なくとも3.5の折り目保持(Crease Retention)評価を有することをさらに特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項15】
衣料品の形態である、請求項1に記載の製品。
【請求項16】
リネンの形態である、請求項1に記載の製品。
【請求項17】
少なくとも10%の伸縮性及び少なくとも3.0のCR評価を有する、防しわ伸縮性製品。
【請求項18】
1以上の架橋ポリオレフィンポリマーから製造された弾性繊維と、綿、亜麻、ラミー、レーヨン、ビスコース、麻、羊毛、絹、モヘア、ポリエステル、ポリアミド及びポリプロピレンの繊維からなる群より選択される1以上の非弾性繊維とを含む、請求項1に記載の製品。

【公表番号】特表2008−504459(P2008−504459A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518167(P2007−518167)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/021728
【国際公開番号】WO2006/012081
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】