説明

防カビ及び抗菌組成物及びその塗料並びにその皮膜

【課題】 この発明は、無臭・無害で防カビ、殺菌機能を有する組成物、その塗料及びその皮膜を得ることを目的としたものである。
【解決手段】 この発明は、無機系材料粉末80%〜97%(質量)と、無機銅粉末20%〜3%(質量)を混合したことを特徴とする防カビ及び抗菌組成物により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無機系材粉末と無機銅粉末(純銅粉末)を混合し、銅イオンにより防カビ、殺菌を目的とした防カビ及び抗菌組成物及び防カビ抗菌塗料並びに防カビ、抗菌皮膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来防カビ、抗菌塗料としては、溶剤系、アクリル系などの樹脂に殺菌作用のある薬剤及び殺虫剤を混ぜた物を塗布していた。
【0003】
また無機系の塗膜形成組成物と、銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属及び/又はその化合物を含有した無機物とを含有する無機系コーティング剤が提案され、プールの表面に塗布されていた。
【特許文献1】特開平7−158299
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来使用されている殺菌塗料は、溶剤系、アクリル系などの樹脂に殺菌作用の薬剤及び殺虫剤を混ぜ、問題箇所に塗る方法が採用されていた。然し乍ら、この方法では薬剤効果が短期間で無くなり、また溶剤及び薬剤の臭いがして、食品工場などでは使用できない問題点があった。
【0005】
前記公知発明においても、エポキシ、アクリル、ポリエステルなどが塗膜形成組成物として使用され、前記従来の問題点を完全に是正することはできないものと推定される。
【0006】
前記のように、無臭で、塗膜強度良好で、人体に悪影響なく、しかも長期に亘り有効な防カビ、抗菌組成物塗料はなく、その開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
然るにこの発明は、塗膜性のよい無機系材粉末と、無機銅粉末とを混合することにより、無臭、塗膜性良好で、しかも防カビ、抗菌良好な組成物を得て、前記従来の問題点を解決したのである。
【0008】
即ちこの発明は、無機系材粉末80%〜97%(質量)と、無機銅粉末20%〜3%(質量)を混合したことを特徴とする防カビ及び抗菌組成物であり、無機系材粉末をポルトランドセメントを主材とし、これに親和性のある無機材粉末を混合したものであり、無機銅を、高純度銅としたものである。
【0009】
次に他の発明は、請求項1記載の組成物75%〜50%(質量)に、水25%〜50%(質量)を混合したことを特徴とする防カビ及び抗菌塗料である。また他の発明は、請求項2記載の塗料を、0.2kg/m〜1.5kg/mの薄層にしたことを特徴とする防カビ、抗菌皮膜である。
【0010】
前記発明において、無機銅粉末は、純銅(例えば不純物0.001以下)3%以下では、効果の低下が認められ、20%以上添加しても効果の向上は認められないので、添加量を3%〜20%(質量)とした。
【0011】
前記発明において、使用量を0.2kg/m以下にすると、塗着面への付着強度の低下又は防カビ、抗菌能の低下のおそれがあり、1.5kg/mで十分の効力を奏し、これ以上使用の必要性がない。
【0012】
前記において、0.2kg/mであっても、無機銅の混合量が多い場合には、防カビ、抗菌効果はあるが、塗膜強度の低下の関係で下限を0.2kg/mを低限とした。例えば、防カビ、抗菌効果は、1m当り6gの無機銅が散在しておれば、目的を達成するものと認められた。
【0013】
この発明における無機系材粉末としては、セメントを主材とし、これに炭酸カルシウムその他無機粉末を混合して得たもので、無害、無臭であって、造膜性の強い材料であれば使用することができる。例えばセメントは、通常ポルトランドセメントを使用する。
【0014】
前記ポルトランドセメントの成分は、SiO20〜25%、Al4〜6%、Fe2〜4%、CaO62〜66%、MgO1〜2%、SO1.5〜3.5%とされている。
【0015】
製造に際しては、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄を微粉砕混合し、ロータリーキルンなどで最高1450℃に焼成し、1200℃まで徐冷した後、急冷してクリンカーを作り、これに石膏3〜4%を加えて微粉砕すれば、前記ポルトランドセメント製品ができる。
【0016】
従って前記発明においては、セメント成分中の無機物割合を増加し、又は割合を多少変化を与える為に、前記成分中の1つ又は複数を少量添加(無機粉末として)することになる。
【0017】
例えば、石灰石、珪石、石膏などの粉末を添加することにより、使途に最適の組成物を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、銅イオンの作用により、防カビ、殺菌を行うことができると共に、無機系材料の混合により臭いが全く無くなり、食品工場を始めとし、貯水槽内部など、今まで臭いの為に採用されなかった場所の防カビ、抗菌に使用し得る効果がある。
【0019】
また造膜性に優れている為に、薄く塗布できて十分の効果を奏すると共に、耐久性に富み、効力も持続するなどの諸効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明はポルトランドセメントに、石灰石粉末、珪石粉末及び純銅粉末夫々の適量を混合機に入れて均一に混合して、この発明の組成物を得る。これを定量宛(例えば50kg)包装して製品にする。
【0021】
次に前記製品に対し、適量の水を加入して混練すれば、この発明の塗料ができる。そこでこの塗料を例えば水槽の内面へ塗布すれば、防カビ、殺菌水槽ができる。
【実施例1】
【0022】
この発明の組成物の実施例について説明すると、ポルトランドセメント90%に、石灰石粉末3%と、珪石粉末3%及び純銅粉末(異物0.001%以下)4%を混入し、均一に撹拌すれば、この発明の組成物ができる。従ってこれを定量(例えば30kg)宛包装すれば、製品となる。
【実施例2】
【0023】
前記実施例1で得た製品10kgに、水1.5リットル〜4.5リットルを加えて混練すれば、この発明の塗料ができる。
【0024】
前記実施例において、使用水分量に幅があるのは、環境条件(例えば温度、湿度、日照条件など)に合った水分量とする為である。また使用場所により粘度を変える場合もあるので、使用時の条件に合致した水分量を用いるからである。
【0025】
前記塗料を水槽の防カビ及び殺菌に使用する場合には、前記水槽の内壁へ、1kg/mの割合に塗布すれば、防カビ、殺菌機能を有する水槽ができる。前記水槽には、防カビ、殺菌作用があるので、安心して使用することができる。
【0026】
また水槽がコンクリート製の場合には、前記塗料と、壁面とが緊密に一体化し、剥落などのおそれはない。また銅が露出して防カビ、殺菌作用を奏するので、長年継続して使用することができる。
【0027】
またこの発明の塗料は、無害かつ無臭であるから、食品関係に用いる水槽であっても、安心して使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機系材粉末80%〜97%(質量)と、無機銅粉末20%〜3%(質量)を混合したことを特徴とする防カビ及び抗菌組成物。
【請求項2】
無機系材粉末をポルトランドセメントを主材とし、これに親和性のある無機材粉末を混合したことを特徴とする請求項1記載の防カビ及び抗菌組成物。
【請求項3】
無機銅を、高純度銅としたことを特徴とする請求項1記載の防カビ及び抗菌組成物。
【請求項4】
請求項1記載の組成物75%〜50%(質量)に、水25%〜50%(質量)を混合したことを特徴とする防カビ及び抗菌塗料。
【請求項5】
請求項2記載の塗料を、0.2kg/m〜1.5kg/mの薄層にしたことを特徴とする防カビ、抗菌皮膜。

【公開番号】特開2006−249041(P2006−249041A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71174(P2005−71174)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(597159329)サンカイ化成株式会社 (3)
【Fターム(参考)】