説明

防塵剤

【課題】
学校のグラウンドや工事現場の車両通行部分は土埃の発生により、周辺環境に悪影響を与えている。これを簡易かつ効果的に防止する方法を提供すること。
【解決手段】
前記課題を解決するための手段は,ポリブテンを0.1〜20重量%含有する水溶性エマルションであり、発塵性の土壌表面に散布・含浸させることにより、土埃の原因物質である微細な土粒子を互い、もしくは砂質土に結着させることにより風や人及び車両の重量圧や衝撃により生じる土埃を防止するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンドや工事現場等で発生する土埃に関し、これを防止す
ることのできる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、学校のグラウンド等の土壌面は風や運動者の靴の衝撃圧等により発
生する土埃により、運動者本人や周辺住民に健康や環境面で悪影響を与えて
きた。グラウンドや工事現場の土埃を抑制する方法には次のものが挙げられ
る。
1 散水
2 塩化カルシウム等の潮解性物質の散布
3 合成エマルション樹脂液の散布
【0003】
以下,上記1,2,3の方法による土埃の防塵方法について説明する。
【0004】
1の散水による方法はグラウンド面に水を撒き、その水分により発塵性の微粒子土を一時的に結着させ、土埃を防ぐものである。この方法は、水分の蒸発により、その効果が失われるため一定間隔で散水を繰り返す必要があり、これに要する労力や散水のための水量は無視できないものであった。また、近頃は専用散水設備による方法も採られているが、多大な設備費、水飛沫の近隣への飛散、均一散布の困難さ、使用の中断等数々の問題を抱えている。
【0005】
2の塩化カルシウム等の潮解性物質を散布する方法は、グラウンド面にこれらの結晶を全面に散布し、その後大気中の水分により自然潮解させ、その粘着性により微粒子土を粘着させ防塵させるものである。この方法は雨により薬剤成分が溶出もしくは土中に浸透し、早期に防塵効果が失われる。そのため定期的な散布が必要となり高コストであった。また、薬剤の土中への浸透により土層が固化し、運動に適さないグラウンドの原因の一つともなっている。
【0006】
3の合成エマルション樹脂液の散布による方法は、グラウンド面にエチレン・酢酸ビニル共重合体等のエマルション樹脂液を散布し、乾燥後、その接着性により微粒子土を接着させ防塵させるものである。しかし、乾燥後の接着された微粒子土同士は運動者や車両の重量圧や衝撃により簡単に崩壊し、再度接着されることはなく防塵効果がすぐに失われる。
【0007】
ところで、この欠点を補うためポリビニルアルコールを添加した防塵剤が
提案されている。(特許文献1参照)
【0008】
【特許文献1】特開2002−227155号公報
【0009】
この特許文献に記載された発明は、ポリビニルアルコールの無添加の防塵剤と同様、重量圧や衝撃による微粒子土の崩壊を長期間維持することは困難であり、定期的な散布が必要であった。これは,雨水により、水溶性のポリビニルアルコールが,溶出あるいは,土中に浸透するためと推測される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の問題点を解消し、土埃の発生しにくいグラウ
ンドや工事現場等を実現する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するための手段として、請求項1は、ポリブテ
ンを0.1〜20重量%含有する水溶性エマルションであり、発塵性の土
壌表面に散布・含浸させることにより、土埃の原因物質である微細な土粒子
を互い、もしくは砂質土に結着させることにより風や人及び車両の重量圧や
衝撃により生じる土埃を防止するものである
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、グラウンド面や工事現場の舗装前の土壌部分において土
埃が発生することを抑制することができる。ポリブテンは、紫外線,熱,風
雨等によりほとんど劣化しない。したがってその粘着性も長期間持続する。
また、食品添加物の認可を受けているので安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一例としての防塵剤は,ポリブテンと水、界面活性剤を含有する。
【0014】
前記防塵剤は、平均分子量が250〜2500のポリブテンを含有する他
にポリブテンを水に分散させるための若干の界面活性剤を含む。本発明にお
いては,日本油脂株式会社製ポリブテンエマルション溶液、商品名エマウエ
ット30Eを使用した。
【0015】
前記防塵剤は,ポリブテンを水に対して0.1〜20重量%の割合で含有し
てなることが好ましい。この範囲内であると、よりいっそう土壌面からの土
埃の発生を抑制することができる。
【0016】
本発明に係わる防塵剤の用途としては,具体的には学校の校庭・運動場・公
園・一般競技場・野球場・テニスコート・サッカー場・競馬場・休耕地・庭・
舗装前の工事現場等が挙げられる。
【0017】
本発明に係わる防塵剤の使用方法を述べる。
【0018】
グラウンド表面に本防塵剤を散布後、水分が蒸発することによりポリブテ
ンの粘着性が発現され土埃を防止することができる。
【0019】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は,実施
例の内容に限定されるものではない。
【0020】
〔実施例1〕
クレイ系グラウンド面にポリブテンを4.0重量%含有した本防塵剤を、平米当り2L散布した。
【0021】
〔比較例1〕
クレイ系グラウンド面に水を平米当り2L散布した。
【0022】
〔比較例2〕
クレイ系グラウンド面に塩化カルシウムを平米当り1.5kg均一に散布した。
【0023】
〔比較例3〕
クレイ系グラウンド面にエチレン・酢酸ビニル共重合体の水エマルション(樹脂4.0重量%含有)平米当り2L散布した。実施例1、比較例2、比較例3ともに表層が乾燥していたので,防塵剤を浸透しやすくするためにあらかじめ散水をした。本試験においては、各々の表面に平米当り2Lの散水をした後降雨の影響を避けるため各表層上部に簡易屋根を設けた。
【0024】
(発塵性試験−その1)
実施例1、比較例1、比較例2、比較例3ともに施工直後における効果を測定するため表層の水分の蒸発を確認後(48時間経過後)、土埃の発生具合を観察した。
【0025】
各例とも表層10mm厚を掻き採り、十分乾燥させた後400メッシュのふるいを通過した土を発塵性試験の試料とした。
【0026】
発塵量の測定は,次の方法により測定した。
【0027】
二分割式の透明プラスチック容器の底部に平坦に均した試料土100gをのせた試料皿を置き、20cm上部より2kg/cmの圧縮空気を瞬時に噴出させ、光散乱式デジタル粉塵計で0〜60秒間の粉塵量を測定した。同様の試験を各例ともさらに2回繰り返し、その平均値を粉塵量とした。
【0028】
結果を、表1に示す。
【表1】

【0029】
前記発塵性試験の結果から考察すると、実施例1・比較例2が良好な値を示した。比較例1は、水散布のみであり無処理土といえるので、当然粉塵量は,大きな値を示した。比較例3は,ふるいを通すことにより運動者や車両の重量圧と同様の作用が働いた結果、結着された土粒子の団粒が崩壊し再度決着されることがなく相当量の発塵が見られた。
【0030】
一定期間経過後の粉塵量の発生具合を観察するため次の試験を実施した。
【0031】
(発塵性試験−その2)
実施例1、比較例1、比較例2、比較例3ともに長期間にわたる効果を見るため簡易屋根を取り除き、自然環境化で60日経過後、土埃の発生具合を観察した。
【0032】
各例とも表層10mm厚を掻き採り、十分乾燥させた後400メッシュのふるいを通過した土を発塵性試験の試料とした。
【0033】
発塵量の測定は,前記試験方法と同様に測定した。
【0034】
結果を、表2に示す。
【表2】

【0035】
前記発塵性試験の結果から考察すると、実施例1−2は(発塵性試験−そ
の1)の実施例1と同様良好な値を示した。比較例2−2は、(発塵性試験−
その1)の比較例2の結果と比較すると大幅な粉塵量の増加が見られた。こ
れは,長期にわたる環境の影響(雨等)により塩化カルシウムが溶出及び土
中に浸透したと考えられる。比較例3−2も粉塵量の増加が見られた。これ
は,土粒子を結着している樹脂成分が、剥離され流出したためと思われる。
【0036】
(発塵性試験−その3)
また、さらに長期的な効果をみるため、ポリブテン散布部(実施例1)の180日後のサンプルを採取し、発塵量の測定をした。
【0037】
結果を,表3に示す。
【表3】

【0038】
前記発塵性試験の結果から考察すると、実施例1−3は180日経過後も
若干の発塵性は見られるが、実際上は特に問題のない粉塵量である。一般に
大気中の粉塵量は300CPM以下であれば、特に問題はないと言われている。
長期にわたり防塵効果が維持されるのは、ポリブテンが化学的に安定で、常
態では分解や酸化を起こさず、光や熱に対しても安定で対候性、対老化性に
優れており、また、降雨により溶解流出することがないことに起因している
と思われる。なお、無毒であるため食品添加物としても使用されているので、
環境汚染の問題もない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上の結果から明らかなように、本発明の土壌の防塵剤を使用することに
より健康や環境に悪影響を及ぼす発塵性の微細土粒子を大幅に減少させるこ
とができ、グラウンド等に最適な土壌を提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブテンを0.1〜20重量%含有することを特徴とする水溶性防塵剤。

【公開番号】特開2009−67841(P2009−67841A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235371(P2007−235371)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(307022929)
【Fターム(参考)】