説明

防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料及びその形成方法

【課題】医療及び外科手術用途等における使用に適した防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料の製造方法であって、該スパンボンド材料の多孔性シートを形成する工程;及び該材料の個々の繊維を親水性化合物で被覆する工程;を含む上記製造方法により、医療及び外科手術用途等における使用に適した防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には医療及び外科手術用途等における使用に適したスパンボンドシート材料の分野に関し、より具体的には、改良された防塵(non−linting)吸水性ポリプロピレンスパンボンド(「PSB」」材料及びその改良された形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子スパンボンド材料は公知である。製造コストが比較的安価であるため、そのような高分子スパンボンド材料はさまざまな可能性のある用途を有する。ポリプロピレンは本来疎水性の材料であるため、そのようなPSB材料は、特に外科手術用の掛け布及び衣服における使用に好適である。
【0003】
一般的には、親水性である高分子スパンボンド材料を提供することが望ましい。吸水を阻むよりはむしろ、これらの親水性PSB材料は水を吸収する。しかしながら、医療及び外科手術用途等において使用される場合、そのような材料は、外科手術場所の汚染を防ぐために防塵であることが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単なる例示であって限定しない目的で開示された態様の該当する部分、部位又は表面に関して言えば、本発明は広義には、医療及び外科手術用途等における使用に適した、改良された防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料及びその改良された形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの側面において、本発明は、医療及び外科手術用途等における使用に適した防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料の改良された製造方法であって、ポリプロピレンスパンボンド材料の多孔性シートを形成する工程、及び、そのような材料の個々の繊維を親水性化合物で被覆する工程を含み、それにより、医療及び外科手術用途における使用に適した防塵吸水性スパンボンド材料のシートを形成する、上記方法を提供する。
【0006】
好ましい方法において、この多孔性シートはポリプロピレンの(単独重合体ではなく)共重合体で形成される。この材料は、被覆される前から本来的に疎水性である。この被覆化合物はR−O−(CHCHO)Hとすることができる。この多孔性シートの繊維は、該親水性化合物の液体溶液中に浸漬することによって被覆し、次いで乾燥することができる。
【0007】
もう一つの側面において、本発明は、医療及び外科手術用途等における使用に適した防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料であって、そのようなスパンボンド材料の多孔性シート、及びその材料の個々の繊を被覆する親水性化合物を含み、それにより、その被覆シートが防塵吸水性となり、医療及び外科手術用途等における使用に適したものとなる、上記材料を提供する。
【0008】
この多孔性シートは、ポリプロピレン共重合体で形成され、被覆される前から本来的に疎水性である。この被覆化合物はR−O−(CHCHO)Hとすることができる。
【0009】
従って、本発明の一般的目的は、医療及び外科手術用途等における使用に適した、改良された吸水性のポリプロピレンスパンボンド材料を提供することである。
【0010】
もう一つの目的は、そのような防塵性の高分子スパンボンド材料を提供することである。
【0011】
更にもう一つの目的は、防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料の改良された製造方法を提供することである。
【0012】
これら及びその他の目的及び利点は、上記及び下記の明細書、図面及び添付請求項から明らかになるであろう。
【0013】
(好ましい態様の説明)
最初に、参照符番がいくつかの図を通して一貫して同一の構造要素、部位又は表面を特定することを意図しているとおり、そのような要素、部位又は表面は明細書の記載全体によって更に記述又は説明され得るものであり、その詳細な説明が統合部分であることを明確に理解すべきである。特に断らない限り、これらの図は本明細書と合わせて読まれること(例えば、斜線、部分の配置、割合、程度等)が意図されており、本発明の明細書全体の一部と考えられるべきである。下記の記述において使用される用語「水平」、「垂直」、「左」、「右」、「上」及び「下」は、それらの形容詞及び副詞活用形(例えば、「水平に」「右方向に」「上方向に」等)と同様、単に、当該図が読者に面したままの、図示された構造の向きを示している。同様に、用語「内側に」及び「外側に」は一般に、適宜、その延長軸又は回転軸に対する表面の向きを示す。
【0014】
これらの図に関していえば、本発明は広義には、医療及び外科手術用途等における使用に適した防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料の改良された製造方法を提供する。もう一つの側面において、本発明は前述の方法に従って製造された改良された材料を提供する。図1はPSBの製造に使用される装置の模式図であり、図2は、本来的に疎水性であるPSB材料を親水性である改質された形態に変換するために使用される装置の模式図である。
【0015】
図1において、粒状又はペレット状のポリプロピレン共重合体材料がホッパー21に供給され、その中に堆積される。この粒状材料は重力によってホッパー内を落下して、スクリューコンベア22の左端に入る。このスクリューコンベアは、シリンダー内部に配置された螺旋スクリュー(図示されていない)を有する。公知の方法においては、このスクリューの隣接する渦巻きは、材料が左端から右端へ移送されるにつれて間隔が狭くなる。その結果、ペレットに摩擦加熱が発生する。この螺旋スクリューは約150ミリメートルの公称直径を有し、約28:1から30:1のオーダーの長さ対直径比を有する。このスクリューは約20から80rpmの範囲で回転する。このシリンダーは所望ならば補助的な外部加熱装置を有してもよい。このスクリューが回転すると、粒状材料が摩擦によって約250℃の温度まで加熱され、その結果、粒状ペレットはしだいに温度が上がり、このシリンダーに沿って進むにつれて融解する。ペレットがスクリューコンベア22の右端または出口端に達するまでには、供給された又は投入された材料は融解して粘稠液体に液状化しており、約250℃である。その後、この材料は導管23を介して通過しフィルター24に到る。このフィルターは単に、液状ポリプロピレンから埃と汚れを除去するために使用される篩状又はメッシュ状の装置とすることができる。
【0016】
この粘稠ポリプロピレン液はフィルター24から導管25を通って圧力開放装置26に到る。この装置は単に液化樹脂の圧力を約60バールに安定化させる。
【0017】
その後、この液化樹脂は導管28を通って排出頭部29に到り、ここで直径がおよそ40ミクロンの複数の長い連続フィラメントストランドが下方向に排出される。この排出圧力は約20バールである。排出されたこれらのフィラメントの温度はまだ約250℃である。その後、(ボックス30、30で示される)対向する空気流が、押し出されたこれらのフィラメントに向けられる。この空気流の機能はこれらのフィラメントをその初期排出温度である約250℃(上端部で)から約145℃(下端部で)に急冷することである。言い換えれば、この押出物は、約1メートルの長さを下方向に移動する間に急冷される。この冷却用空気流は毎分約40立方メートルである。公称空気圧は2バールであり、そして好ましい態様においては、それは実質的に室温(つまり、約22℃)である。上に示した如く、この量の空気流は、押し出されたフィラメント27を、下方向に移動する間に約105℃急冷する。
【0018】
次いで、この押し出されたフィラメントは、その下方端部で連続ステンレス鋼コンベア31上に落下して、毎分約10メートルから毎分約100メートルで移動する。所望ならば、ベルト(ボックス32で示されている)の下方の圧力は約−3バールとすることができる。言い換えれば、ウエブを横切って約3バールの圧力差が存在し、それによってウエブをコンベアにしっかりと付着させる。その後、この移動コンベアがシート材料33をカレンダー装置34まで運ぶ。このシート材料は、2つの向き合ったロールの間を通過するが、このシート材料の温度はまだ約145℃である。好ましい態様においては、これらのロールは、このウエブ上に約50ニュートン/平方メートルの圧力をかけて、表面を押し付け、これに均一な外観を付与する。その後、冷却を促進する他のいくつかのロール(35で示されている)の周辺を通った後、このカレンダー加工されたシート材料36は次に38で示されているロールに巻き取られる。
【0019】
ポリプロピレンは本来的に疎水性の材料である。このことは、それが水を吸収しないことを意味する。むしろ逆に、水はこの材料の上で玉状になる傾向がある。
【0020】
さて、図2について述べると、本来的に疎水性の材料36が水を吸収できるようにするために、そのような材料がロール38から巻き戻されて、親水性化合物の液体溶液39中に浸漬される。この高分子スパンボンド材料は多孔性であるため、親水性化合物の液体溶液は直ちにその個々の繊維に浸透して被覆する。添加される薬品の量は約0.5重量パーセントまでである。この浸漬浴40を通過させた後、次に41で示される湿潤材料を、過剰の液体をそれから選択的に絞るよう調整できる42で示される一連のロールに通す。このロール圧力は約40ニュートン/平方メートルまでとすることができる。これらのロールを通した後、次に43で示される材料を、乾燥機44に送る。この乾燥オーブンは約110から120℃の温度とすることができ、このオーブンを通過する時間は約2から3分とすることができる。この乾燥機を通過させた後、個々の繊維が親水性化合物で被覆される。次いで、この材料はロール45に再度巻き取られる。
【0021】
図3は本方法に含まれる工程のシークエンスを示す流れ図である。第一に、粒状又はペレット状のポリプロピレン材料がボックス46で示されるホッパー中に置かれる。その後、この材料はスクリューコンベアを通過する際に融解して、ボックス48で示される液化樹脂を形成する。次いで、この液化樹脂は、ボックス49に示されるように濾過され、圧力開放装置によって制御されることにより、ボックス50に示されるように、その圧力が安定化される。その後、ボックス52,52に示されるように冷空気(つまり、室温での空気流)にさらされながら、個々の繊維がボックス51に示されるように紡糸され、移動コンベアの表面上でウエブ53を形成する。ボックス54に示されるように吸引を行い、このウエブをコンベアにもっとしっかり付着させることができる。その後、このウエブをボックス55に示されるようにカレンダーロールに通し、ボックス56に示されるようにロールに巻き取る。
【0022】
さて、図4について述べると、PSB材料を本来的に疎水性であるものから親水性であるものへ変えるために、そのような材料を巻いたものを次に、58に示されるように巻き戻して、ボックス59に示されるように親水性化合物の液体溶液の浸漬浴に通した。この湿潤ウエブを次に(60に示されているように)カレンダーロールに通し、(ボックス61に示されるように)乾燥し、次いで(ボックス62に示されるように)もう一つのロールに再度巻き取る。
【0023】
このように、本発明は広義には、医療及び外科手術用途等における使用に適した防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料の改良された製造方法であって、スパンボンド材料の多孔性シートを形成する工程、そのような材料の個々の繊維を親水性化合物で被覆する工程を含み、それにより、医療及び外科手術用途等における使用に適した防塵吸水性スパンボンド材料のシートを形成する、上記方法を提供する。
【0024】
(変更)
本発明は、多くの変更及び修正ができることを明確に予想させるものである。例えば、投入材料は、ペレット化された又は粒状のポリプロピレン材料のどちらかとすることができるが、投入材料はまた他の形をとることもできる。好ましい態様において、この投入材料はスクリューコンベアによって、外部熱源の供給を受けて又は受けずに加熱される。しかしながら、他の種類のコンベア類及びヒーター類を使用することもできよう。次いで、この液化樹脂をフィルターに通す。好ましい形態において、このフィルターは細かいメッシュ又は篩状のスクリーンである。しかしながら、他のフィルター類を使用することもできよう。濾過した後、次いで圧力を安定化させ、複数の長い連続繊維を、移動コンベア上に押し出す。これらの繊維のサイズ、数、間隔及び直径は変更することができる。これらの繊維を冷空気浴によって又は若干の他の手段によっても冷却することができる。これらの繊維を好ましくはカレンダーロールに通し、このように形成されたウエブの表面上にパターンを転写させる。しかしながら、異なる圧力を使用でき、及び/又は、種々のパターンをウエブ上に転写することができよう。その後、移動するウエブを冷却し、ロールに巻き取る。室温による冷却以外の冷却方式も使用することができる。
【0025】
高分子スパンボンドウエブを親水性にする方法において、そのロールを親水性化合物の液体溶液に浸漬するのが好ましい。これは変えられないことではない。他の態様においては、この被覆材料を、移動するウエブ上に噴霧することができよう。一連のダイの間で湿潤ウエブを絞る工程は、単に過剰の材料を除去して、このウエブの一貫性及び均一性を改良するよう努めるためのものである。好ましい態様は、湿潤ウエブをオーブン中で乾燥することを意図しているが、これも変えられないことではない。所望ならばこのウエブを室温で簡単に乾燥することもできよう。その後、この製品をもう一つのロールに再度巻き取る。
【0026】
従って、本発明は、防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料製造するための改良された製造方法、及びその材料自体を提供するものの、以下の請求項に定義され、差別化されたような本発明の精神から逸脱することなく、ある程度の修正と変更を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、改良された吸水性高分子スパンボンド材料を形成するために使用される装置の模式図である。
【図2】図2は、PSB材料形態を疎水性から親水性形態に変換するために使用される装置の模式図である。
【図3】図3は、図1に示される方法の実施において含まれる種々の工程を示す流れ図である。
【図4】図4は、図2に示される変換操作において含まれる種々の工程を示す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料の製造方法であって、
該スパンボンド材料の多孔性シートを形成する工程;及び
該材料の個々の繊維を親水性化合物で被覆する工程;
を含み、それにより、医療及び外科手術用途における使用に適した防塵吸水性スパンボンド材料のシートを形成する、上記製造方法。
【請求項2】
該多孔性シートがポリプロピレン共重合体で形成されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該多孔性シートが被覆される前から本来的に疎水性である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該被覆化合物がR−O−(CHCHO)Hである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該多孔性シートが該親水性化合物の液体溶液中に浸漬することによって被覆される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該多孔性シートが該親水性化合物の液体溶液中に浸漬した後に乾燥される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
防塵吸水性ポリプロピレンスパンボンド材料であって、
該スパンボンド材料の多孔性シート;及び
該材料の個々の繊維を被覆する親水性化合物;
を含み、それにより、該被覆シートが防塵吸水性となり、医療及び外科手術用途における使用に適したものとなる、上記材料。
【請求項8】
該多孔性シートがポリプロピレン共重合体で形成されている、請求項7記載の材料。
【請求項9】
該多孔性シートが被覆される前から本来的に疎水性である、請求項7記載の材料。
【請求項10】
該被覆化合物がR−O−(CHCHO)Hである、請求項7記載の材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−291443(P2006−291443A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−102628(P2006−102628)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(506114492)プロメディカル プロダクツ カンパニー、リミテッド (1)
【Fターム(参考)】