説明

防塵衣用織物及びその製造方法並びにそれを用いた防塵衣

【課題】 発塵性、フィルター性、通気性の性能を悪化させることなく、ストレッチ性を有する防塵衣用織物を提供すること。
【解決手段】 仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を、経方向、緯方向の少なくとも1方向に使用してなることを特徴とする防塵衣用織物、仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を、経方向、緯方向の少なくとも1方向に使用して製織した後、60〜98℃で精練処理を行い、次いで110〜130℃で撚糸の解撚処理を行うことを特徴とする防塵衣用織物の製造方法及び仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を、経方向、緯方向の少なくとも1方向に使用してなる織物からなることを特徴とする防塵衣。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵衣用織物及びその製造方法に関し、更に、クリーンルーム内の作業用にも適した防塵衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーンルーム内で使用されている防塵衣としては、合成繊維フィラメントを高密度に織り上げた生地、また、更に導電糸を織り込んだ生地が用いられており、低発塵性、高フィルター性を満たし、静電気を抑制させている。
【0003】
しかし、このような防塵衣は、高密度のため、生地の柔軟性がなくなり、動きにくい。そのため、ストレッチ性が要望されている。
ストレッチ性を付与する手段として、ウレタン糸を用いることやニット素材を用いることが提案されている(特許文献1及び2等)が、これらの防塵衣は劣化しやすく、発塵性が高くなる、フィルター性が低下する、通気性が高くなり過ぎるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平4−136234号公報
【特許文献2】特開平6−101103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、発塵性、フィルター性及び通気性の性能を悪化させることがなく、ストレッチ性を有し、着用快適性に優れた防塵衣用織物及びその製造方法並びにそれを用いた防塵衣を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を、経方向、緯方向の少なくとも1方向に使用してなることを特徴とする防塵衣用織物によって達成される。
また、本発明の目的は、仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を、経方向、緯方向の少なくとも1方向に使用して製織した後、60〜98℃で精練処理を行い、次いで110〜130℃で撚糸の解撚処理を行うことを特徴とする防塵衣用織物の製造方法によって達成される。
また、本発明の目的は、仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を、経方向、緯方向の少なくとも1方向に使用してなる織物からなることを特徴とする防塵衣によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、発塵性、フィルター性及び通気性の性能を悪化させることがなく、ストレッチ性を有し、着用快適性に優れた防塵衣用織物を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の防塵衣用織物には、仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を用いる。
【0009】
用いる繊維としては、ポリエステルフィラメントが好適であるが、ポリアミドフィラメント、ポリ乳酸フィラメント等の化学繊維も使用できる。
また、用いる繊維の総繊度及びフィラメント数は、56dT/24F〜167dT/48Fが好ましい。
【0010】
仮撚の条件は、回転数は、30000〜 40000rpmが好ましい。
また、撚数は、3000〜4000T/Mが好ましい。
【0011】
仮撚糸に撚をかけるにあたっては、上記仮撚の方向と反対の方向に撚をかけることが必要である。また、その撚数は、200〜500T/Mが好適である。
本発明においては、仮撚回転数を低くし、未解撚を防ぐために撚数を上げることが好ましく、更に、仮撚の方向とは逆方向に撚をかけることで糸の良好なストレッチ性が得られる。
【0012】
防塵衣用織物には、上記撚糸を経方向、緯方向の少なくとも1方向に用いる。
上記撚糸を経方向、緯方向のどちらか一方のみに用いる場合、撚糸と共に用いる糸は、ポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸等の化学繊維が挙げられる。
【0013】
防塵衣用織物の織組織は、綾織(2/2,2/3,2/1)が好適であるが、平織でもよい。
【0014】
また、織密度は、経126〜220本、緯100〜130本が好ましい。
【0015】
防塵衣用織物を製造するにあたっては、下記方法によることが好ましい。すなわち、上記撚糸を用いて製織した後、まず、60〜98℃で、好ましくは連続精練機を用いて精練処理を行い、次に、110〜130℃で、好ましくは液流機を用い、撚糸の解撚処理を行う。
上記処理は、温度を段階的に上げ、特に、連続機と揉み効果のある液流機とを順次用いることにより、撚糸のストレッチ効果を十分引き出すことができる。
【0016】
上記精練後、寸法安定性、染色性向上のため、190℃前後でヒートセットを行うことが好適である。
上記ヒートセット後、常法により染色工程、仕上工程を行う。
仕上加工は、160〜180℃で行うことが好ましい。
【0017】
上記のようにして得られた防塵衣用織物は、ストレッチ性を有しながら、発塵性、フィルター性及び通気性の性能を悪化させることがないものである。
【0018】
本発明の防塵衣用織物は、下記条件を満たすことが望ましい。すなわち、フィルター性は、0.3μm以上の塵埃の塵補修率75%〜85%、通気性は、3〜7cc/cm2/sec、ストレッチ性は、JIS L−1096.8.14B法により、10〜15%とすることが好適である。
【0019】
本発明の防塵衣用織物を用いて、通常の方法で防塵衣を作製することで、防塵衣全体がストレッチ性を有し、着心地の優れたものとなり、また、発塵性がなく、フィルター性及び通気性が適した防塵衣とすることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
各評価は下記のようにして行った。
【0021】
1)ストレッチ性(伸長率)
JIS L−1096.8.14B法
2)通気性
JIS L―1906.8.27A法
3)フィルター性(塵捕集率)
面風速 0.96cm/sec
測定器 MET−ONE パーティクルカウンター237B
測定環境 21.5〜23℃、24.6〜33.6%RH
大きさ0.3μm以上の塵埃について、伸長しない織物と15%伸長した織物について測定器で測定した。
4)発塵性
JIS B−9923(タンブリング法)
大きさ0.3μm以上の塵埃について測定した。
【0022】
〔実施例1〕
84dT/36Fのポリエステルフィメントを、37400rpm(Z方向)で仮撚し、得られた仮撚糸を、S方向に300T/Mで撚をかけ、220℃でセットし、撚糸を調製した。
得られた撚糸を緯方向に用い、経方向に84dT/36Fのポリエステルフィラメント(無撚糸)を用い、2/2綾織(経136本、緯108本)で製織した。
得られた生織を、連続精練機を用い、80℃で精練を行い、次いで、液流精練機を用い、120℃で撚糸の解撚を実施した。
次に、190℃でヒートセットした後、液流染色機により染色し、170℃で仕上げ加工を行い、防塵衣用織物を得た。
得られた防塵衣用織物の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、クリーンルーム内の作業用にも適した防塵衣を提供し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を、経方向、緯方向の少なくとも1方向に使用してなることを特徴とする防塵衣用織物。
【請求項2】
仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を、経方向、緯方向の少なくとも1方向に使用して製織した後、60〜98℃で精練処理を行い、次いで110〜130℃で撚糸の解撚処理を行うことを特徴とする防塵衣用織物の製造方法。
【請求項3】
仮撚糸に対して仮撚方向とは逆方向に撚をかけた撚糸を、経方向、緯方向の少なくとも1方向に使用してなる織物からなることを特徴とする防塵衣。



【公開番号】特開2006−316358(P2006−316358A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137177(P2005−137177)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】