説明

防弾用途のための多軸布帛

本発明は、第1の方向に実質的に平行である複数の第1の糸を含んでなる第1の層と、第2の方向に実質的に平行で第1の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第2の糸を含んでなる第2の層と、第3の方向に実質的に平行で第1の糸および第2の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第3の糸を含んでなる第3の糸層と、第4の方向に実質的に平行で第1、第2、および第3の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第4の糸を含んでなる第4の糸層と、少なくとも1つの繊維網状構造層と、多軸布帛内で横断的に交絡された横断糸とを含んでなり、各層があらゆる逐次順序で配列され、場合により約−40〜約0℃の範囲内のTg、および20℃で約2×10〜約1013ポアズのゼロ剪断溶融粘度を有する高粘度ポリマーで被覆されてもよい、多軸布帛に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その開示を参照によって本明細書に援用する2005年12月8日に出願された米国仮特許出願第60/748,758号明細書の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、防弾用途で有用な多軸布帛に関する。
【背景技術】
【0003】
個人用防弾ボディアーマー、特にベスト、ヘルメット、およびその他の物品は、一般に、銃弾またはその他の発射体、およびアーマーに力強く押しつけられるナイフなどのあらゆるその他の物体の貫通を防止する役割を果たす材料から形成される。これらの物品は、主として軍隊のために使用されるが、警察および民生用途もまた有する。闘争的環境において兵士および警察署が使用するアーマーシステムの装用性および総合的有効性を改善することに対して、高まる需要がある。アーマーシステムの総合的な厚さおよび重量は装用性をもたらすことができるが、目下知られているシステムでこれらのパラメーターを減少させることは、貫通に対するアーマーの有効性を損ない得る。
【0004】
防弾用途のために知られている布帛としては、第2の層中の繊維が第1の層中の繊維に対して斜行することが知られているような、一方向性繊維を有する少なくとも2つの層を有するものが挙げられる。例えば特許文献1、特許文献2、および特許文献3を参照されたい。
【0005】
同様の構造体が結合材で含浸されている。特許文献4および特許文献5を参照されたい。特許文献6は、マトリックス材料中の特定の高強度フィラメントの網目状組織である、少なくとも1つの層を有する複合材を開示する。特許文献7は、多数の横編み目と、横編み布帛中に保持される多数の平行長手方向に伸びる縦糸挿入断片とから形成される横編み布帛を含む、一方向性強化布帛中でのラミネートの使用を開示する。
【0006】
特許文献8は、一方向性延伸繊維束の第1および第2の配列を含むシート形態の防弾ラミネート構造を開示する。第2の配列の繊維束は、第1の配列の繊維束に対して交差状に交差パイルされる。この構造体中では、ポリマー性フィルムは、繊維束中へのフィルムの実質的な貫通なしに、第1および第2の繊維束配列を共に接着するように、第1および第2の繊維束の交差パイル配列の間にある。特許文献9は、少なくとも1つの繊維層と、繊維層の全部または一部に接してそれと結合する少なくとも1つのポリマー層とを有する防弾物品を開示する。
【0007】
織布および不織布層の双方を含有する特定の布帛もまた知られている。特許文献10を参照されたい。
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0164911号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0228815号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0081571号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0045428号明細書
【特許文献5】米国特許第6,238,768号明細書
【特許文献6】米国特許第5,160,776号明細書
【特許文献7】米国特許第4,183,993号明細書
【特許文献8】米国特許第5,935,678号明細書
【特許文献9】米国特許第5,677,029号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0132368号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
改善された性能の防弾布帛および物品に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の方向に実質的に平行である複数の第1の糸を含んでなる第1の層、
第2の方向に実質的に平行で第1の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第2の糸を含んでなる第2の層、
少なくとも1つの繊維網状構造層、
第3の方向に実質的に平行で第1の糸および第2の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第3の糸を含んでなる第3の糸層、
第4の方向に実質的に平行で第1、第2、および第3の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第4の糸を含んでなる第4の糸層、および
多軸布帛内で横断的に交絡された横断糸
を含んでなり、各層があらゆる逐次順序で配列され、場合により約−40〜約0℃の範囲内のTg、および20℃で約2×10〜約1013ポアズのゼロ剪断溶融粘度を有する高粘度ポリマーで被覆されてもよい、多軸布帛が提供される。
【0011】
このような布帛を含んでなる被服および物品、およびこのような布帛を作る方法もまた提供される。
【0012】
前述の一般説明および次の詳細な説明は、例示的かつ説明的であることのみを意図し、添付の特許請求の範囲で定義される本発明を制限するものではない。
【0013】
実施態様を添付図で図解し、ここで提示される概念の理解を向上させる。
【0014】
当業者は、図中の対象物が簡潔さと明瞭さのために図示されて、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解する。例えば図中の対象物のいくつかの寸法は、実施態様の理解向上を助けるために、その他の対象物と比べて誇張されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
いくつかの実施態様では、本発明は、
第1の方向に実質的に平行である複数の第1の糸を含んでなる第1の層、
第2の方向に実質的に平行で第1の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第2の糸を含んでなる第2の層、
少なくとも1つの繊維網状構造層、
第3の方向に実質的に平行で第1の糸および第2の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第3の糸を含んでなる第3の糸層、
第4の方向に実質的に平行で第1、第2、および第3の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第4の糸を含んでなる第4の糸層、および
多軸布帛内で横断的に交絡された横断糸
を含んでなり、各層があらゆる逐次順序で配列され、場合により約−40〜約0℃の範囲内であるTg、および20℃で約2×10〜約1013ポアズのゼロ剪断溶融粘度を有する高粘度ポリマーで被覆されてもよい、多軸布帛に関する。
【0016】
特定の実施態様では、第1、第2、第3、および第4の糸層の少なくとも1つがアラミド繊維を含んでなる。好ましい1つのアラミド繊維はポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。
【0017】
いくつかの実施態様では、第1、第2、第3、および第4の糸層の少なくとも1つがポリピリダゾール繊維を含んでなる。好ましい1つのポリピリダゾールはポリピリドビスイミダゾールである。好ましい1つのポリピリダゾールはポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)である。
【0018】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの繊維網状構造層がアラミドフェルトである。いくつかの実施態様では、アラミドはポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。特定の実施態様では、アラミドフェルトはポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)ステープルファイバーを含んでなる。
【0019】
適切な横断糸としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、アラミド、ポリアレーンアゾール、ポリピリダゾール、またはポリピリドビスイミダゾール繊維を含んでなるものが挙げられる。
【0020】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つの繊維網状構造層が、織物、不織、またはニット構造である。
【0021】
ここで述べられる布帛を含んでなる、被服および物品もまた提供される。
【0022】
いくつかの実施態様では、本発明はまた、
第1の方向に実質的に平行である複数の第1の糸を含んでなる第1の層を提供するステップと、
第2の方向に実質的に平行で第1の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第2の糸を含んでなる第2の層を提供するステップと、
少なくとも1つの繊維網状構造層を提供するステップと、
第3の方向に実質的に平行で第1の糸および第2の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第3の糸を含んでなる第3の糸層を提供するステップと、
第4の方向に実質的に平行で第1、第2、および第3の糸に対して斜行しまたは片寄っている第4の糸を含んでなる複数の第4の糸層を提供するステップと、
層を統合シート構造中に統合するステップと、
複数統合シート構造を共に結合するステップと
を含んでなる、布帛を製造する方法にも関する。
【0023】
本発明は、本開示の一部を構成する次の例示的で好ましい実施態様の詳細な説明を参照して、より容易に理解されてもよい。特許請求の範囲は、ここで述べられるおよび/または示される特定の装置、方法、条件またはパラメーターに限定されるものではなく、ここで使用される用語法は、特定の実施態様を単に一例として述べる目的のためであり、特許請求される発明を限定することは意図されないものと理解される。また添付の特許請求の範囲を含めて明細書中の用法で、文脈で特に断りのない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形を含み、特定数値への言及は少なくともその特定値を含む。一定範囲の値が表現される場合、別の実施態様は、1つの特定値からおよび/またはその他の特定値までを含む。同様に先行する「約」の使用によって、値が近似として表現される場合、特定の値は別の実施態様を形成するものと理解される。全ての範囲は包括的で組み合わせ可能である。
【0024】
ここでの用法では、「片寄っている」という用語は、単に直上でないことを意味する。「斜行」という用語は、2つの複数の糸について言及する場合、複数が互いに異なる角度で横たわることを意味する。許容可能な性能を提供するあらゆる角度が使用できる。当業者は特定の構造体のための最適斜行を判定できる。例えば2つの層では、複数は0度と90度であってもよい。その他の例は、0度/45度/90度、および0度/45度/90度/45度である。
【0025】
層中で使用するための適切な繊維の例としては、ポリオレフィン(例えばポリエチレンまたはポリプロピレン)、ポリイミド、ポリエステル、ポリ(ビニルアルコール)などのポリマーと、ポリベンゾイミダゾール(PBI)などのポリベンゾアゾールと、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemous and Company(Wilmington,DE))(DuPont)から商品名ケブラー(KEVLAR)(登録商標)の下に販売されるポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)などのポリアラミドと、バージニア州リッチモンドのマジェラン・システムズ・インターナショナル(Magellan Systems International(Richmond,VA))から商品名M5(登録商標)の下に入手できるポリピリドビスイミダゾールなどのポリピリダゾールからできたものが挙げられる。優れた弾道貫通抵抗性を提供するために、繊維の引張り強さは、ASTMD−885に準じて少なくとも約900MPaであるべきである。好ましくは繊維はまた、少なくとも約10GPaの弾性率も有する。
【0026】
ポリマーがポリアミドの場合、アラミドが好ましい。「アラミド」とは、アミド(−CO−NH−)結合の少なくとも85%が2個の芳香族環に直接付着するポリアミドを意味する。適切なアラミド繊維については「人造繊維−科学と技術(Man−Made Fibers−Science and Technology)」、第2巻、「繊維形成芳香族ポリアミド(Fiber−Forming Aromatic Polyamides)」と題されたセクション、297頁、W.ブラック(Black)ら、Interscience Publishers、1968年で述べられる。アラミド繊維はまた、米国特許第4,172,938号明細書、米国特許第3,869,429号明細書、米国特許第3,819,587号明細書、米国特許第3,673,143号明細書、米国特許第3,354,127号明細書、および米国特許第3,094,511号明細書でも開示される。添加剤がアラミドと共に使用でき、10重量%程度までのその他のポリマー材料をアラミドに混合でき、またはアラミドのジアミンと置換された10%程度のその他のジアミン、またはアラミドの二酸クロリドと置換された10%程度のその他の二酸クロリドを有する共重合体を使用できることが分かっている。
【0027】
好ましいアラミドはパラ−アラミドであり、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)が好ましいパラ−アラミドである。「PPD−T」とは、p−フェニレンジアミンと塩化テレフタロイルとのほぼ等モルの重合からもたらされるホモポリマー、およびp−フェニレンジアミンへの少量のその他のジアミンの組み込み、および塩化テレフタロイルへの少量のその他の二酸クロリドの組み込みからもたらされる共重合体も意味する。その他のジアミンおよび二酸クロリドが重合反応を妨げる反応性基を有しさえしなければ、原則として、その他のジアミンおよびその他の二酸クロリドをp−フェニレンジアミンまたは塩化テレフタロイルの約10モル%程度まで、またはおそらくわずかに高い量で使用できる。PPD−Tはまた、例えば塩化2,6−ナフタロイルまたはクロロ−または塩化ジクロロテレフタロイルまたは3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのその他の芳香族ジアミンおよびその他の芳香族二酸クロリドの組み込みからもたらされる、共重合体も意味する。
【0028】
ポリマーがポリオレフィンの場合、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましい。ポリエチレンとは、好ましくは分子量が100万を超える主に直鎖状ポリエチレン材料を意味し、それは主鎖炭素原子100個あたり変性単位が5個を超えない少量の分枝鎖またはコモノマーを含有してもよく、またそれと混合されて、特に低密度ポリエチレン、プロピレンなどのアルケン−1−ポリマーなどの、約50重量%以下の1つまたはそれ以上のポリマー添加剤、または一般に組み込まれる抗酸化剤、潤滑剤、紫外線遮断剤、着色剤などの低分子量添加剤もまた含有してもよい。このような1つのポリマーは、伸びきり鎖ポリエチレン(ECPE)として一般に知られている。同様に、ポリプロピレンは好ましくは分子量100万を超える主に直鎖状のポリプロピレン材料である。高分子量直鎖状ポリオレフィン繊維は市販される。ポリオレフィン繊維の調製については、米国特許第4,457,985号明細書で考察される。
【0029】
ポリベンゾアゾールおよびポリピリダゾールなどのポリアレーンアゾールポリマーは、乾燥成分混合物とポリリン酸(PPA)溶液とを反応させて作成できる。乾燥成分は、アゾール形成モノマーおよび金属粉末を含んでなってもよい。これらの乾燥成分の正確に秤量されたバッチは、本発明の好ましい実施態様の少なくともいくつかの使用を通じて得ることができる。
【0030】
例示的なアゾール形成モノマーとしては、2,5−ジメルカプト−p−フェニレンジアミン、テレフタル酸、ビス−(4−安息香酸)、オキシ−ビス−(4−安息香酸)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ピリドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾール、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、4,6−ジアミノレソルシノール、2,5−ジアミノヒドロキノン、1,4−ジアミノ−2,5−ジチオベンゼン、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。好ましくはアゾール形成モノマーとしては、2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸が挙げられる。特定の実施態様では、アゾール形成モノマーはリン酸化されることが好ましい。好ましくはリン酸化アゾール形成モノマーは、ポリリン酸および金属触媒の存在下で重合される。
【0031】
金属粉末を用いて、最終ポリマーの分子量を高めるのを助けることができる。金属粉末としては、典型的に鉄粉末、スズ粉末、バナジウム粉末、クロム粉末、およびそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。
【0032】
アゾール形成モノマーおよび金属粉末は混合され、次に混合物をポリリン酸と反応させてポリアレーンアゾールポリマー溶液を形成する。所望ならば追加的ポリリン酸をポリマー溶液に添加できる。ポリマー溶液は、典型的にダイまたは吐糸管を通して押出しまたは紡績されて、フィラメントが調製または紡績される。
【0033】
ポリベンゾオキサゾール(PBO)およびポリベンゾチアゾール(PBZ)が、2つの適切なポリベンゾアゾールポリマーである。これらのポリマーについては、国際公開第93/20400号パンフレットで述べられる。ポリベンゾオキサゾールおよびポリベンゾチアゾールは、好ましくは次の構造の繰り返し単位から作られる。
【0034】
【化1】

【0035】
窒素原子に結合して示される芳香族基は複素環であってもよいが、それらは好ましくは炭素環であり、それらは縮合または非縮合多環系であってもよいが、それらは好ましくは六員環の単環である。ビス−アゾールの主鎖中に示される基が好ましいパラ−フェニレン基であるが、その基は、ポリマー調製を妨げないあらゆる二価の有機基によって置換されていても、または置換されていなくてもよい。例えばその基は、トリレン、ビフェニレン、ビス−フェニレンエーテルなどの炭素原子12個までの脂肪族であってもよい。
【0036】
本発明の繊維を作るために使用されるポリベンゾオキサゾールおよびポリベンゾチアゾールは、少なくとも25個、好ましくは少なくとも100個の繰り返し単位を有するべきである。ポリマーの調製およびこれらのポリマーの紡績については、前述の国際公開第93/20400号パンフレットで開示される。
【0037】
ポリ(ピリダゾール)ポリマーから作られた繊維が本発明で使用するのに適する。これらのポリマーとしては、ポリ(ピリドイミダゾール)、ポリ(ピリドチアゾール)、ポリ(ピリドオキサゾール)、ポリ(ピリドビスイミダゾール)、ポリ(ピリドビスチアゾール)、およびポリ(ピリドビスオキサゾール)が挙げられる。
【0038】
ポリ(ピリドビスイミダゾール)は、高強度の硬質棒状ポリマーである。ポリ(ピリドビスイミダゾール)繊維は、少なくとも20dl/gまたは少なくとも25dl/gまたは少なくとも28dl/gの固有粘度を有することができる。このような繊維としては、PIPD繊維(M5(登録商標)繊維およびポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレンから作られた繊維としても知られている)が挙げられる。PIPD繊維は次の構造に基づいている。
【0039】
【化2】

【0040】
ポリ(ピリドビスイミダゾール)繊維は、その中でポリ(ベンゾイミダゾール)繊維がポリ(ビベンゾイミダゾール)である、よく知られている市販のPBI繊維またはポリ(ベンゾイミダゾール)繊維と区別できる。ポリ(ビベンゾイミダゾール)繊維は硬質棒状ポリマーでなく、ポリ(ピリドビスイミダゾール)と比べて低繊維強度および低引張り弾性率を有する。
【0041】
PIPD繊維には、約310GPa(2100グラム/デニール)の平均弾性率、および約5.8GPa(39.6グラム/デニール)までの平均引張り強さを有する可能性があることが報告されている。これらの繊維については、ブルー(Brew)ら、Composites Science and Technology、1999年、59、1109頁;バン・デル・ジャック(Van der Jagt)およびボイカース(Beukers)、Polymer、1999年、40、1035頁;シッケマ(Sikkema)、Polymer、1998年、39、5981頁;クロップ(Klop)およびラマーズ(Lammers)、Polymer、1998年、39、5987頁;ハーゲマン(Hageman)ら、Polymer、1999年、40、1313頁で述べられている。
【0042】
布帛、物品、被服などは追加的な層を有することができ、またはここで述べられる布帛をその他の布帛またはシートに隣接して有することができる。高性能繊維構造は、メリヤス、織布、不織構造、一方向性シート、多方向性シート(例えば約20〜90度の間の角度で交差する繊維を有するもの)、不織層(例えばフェルト)など多くの形態を取ることができ、または単一繊維であってさえよい。繊維構造は、10、20、40、または60層を超える本発明の個々の繊維構造の形態を取ってもよい。
【0043】
いくつかの層をポリマーで処理してもよい。処理された層は、弾着点から離れた背面に配置してもよく、または中央に、またはボディアーマー中の性能を最適化するためのあらゆるその他の様式で配置してもよい。ポリマー濃度は、処理された層のそれぞれで同一であってもよく、またはパックを通じて所望の堅さのバリエーションを提供するように、層から層で変動しても良い。処理された層は、層から層で変動してもよい布帛構造タイプからなるパック中で使用できる。
【0044】
防護用ボディアーマーは、本発明の一主要用途である。高性能繊維構造は、縫合などの標準ベスト製造工程によってボディアーマーに作られてもよい。ボディアーマーは、国立司法研究所によってNIJ 100−98を通じて確立された貫通抵抗性、鈍的外傷、およびその他の要件を満たすように、製造業者によって構築される。NIJ100−98に従って防弾パネルが単一ユニットにアセンブルされる様式は、製造業者毎に異なる。場合によっては、パネルの縁全体の周囲で、複数層がバイアス縫合される。別の場合には、層がいくつかの位置で共にかがり縫いされる。いくつかの製造業者は、布帛を数列の垂直または水平縫合でアセンブルする。製造業者によっては防弾パネル全体をキルト縫いさえするかもしれない。縫合がパネルの防弾抵抗特性を損なうという証拠は存在しない。むしろ縫合は、使用される布帛タイプ次第で、特に鈍的外傷の場合に総合的性能を改善する傾向がある。
【0045】
本発明のいくつかの実施態様では、ガラス転移温度が低い1つまたはそれ以上の高粘度ポリマー接着剤が、繊維構造上に被覆されまたはその中に含浸されてもよい。高粘度ポリマー接着剤は、ポリマーまたは接着剤と様々に称されてもよい。また含浸という用語が使用される場合、それはまたコーティングも包含することが意図されることを理解すべきである。鈍的外傷抵抗性は改善されながら、優れた防弾抵抗性は維持される。背面変形(BFD)は鈍的外傷の指標であり、すなわちBFDが低いほど防護用具を着用した個人が被る外傷はより少ない。低レベルで繊維構造中に含浸される液体接着剤は、弾道衝撃条件下における織物中のフィラメントの滑り摩擦を修正することで、本質的に摩擦促進剤として機能すると考えられる。さらにこのような材料は、ボディアーマーなどの物品に貫通する防弾抵抗性を維持し、またはわずかに改善しながら、背面変形の減少を提供する。BFDはミリメートル(mm)で表わされる。
【0046】
いくつかの実施態様では、本発明はまた、Tが約−40℃〜0℃の間の約1〜15重量%の高粘度接着剤で含浸された(または被覆された)、1つまたはそれ以上の高性能繊維構造の層を含んでなる物品である。ガラス転移温度は、10℃/分の加熱速度で、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定された。転移中点をTとして選択した。Tは明細書全体を通じて℃で表わされる。
【0047】
一般に固体接着剤よりも液体接着剤が好ましい。固体接着剤マトリックスは、弾道貫通抵抗性の低下をもたらすことができ、その他のより堅い添加剤、ならび約15重量%以上の接着剤添加剤の存在のために、堅すぎるまたは摩擦が大きすぎるにシステムについても同様である。下で考察するように、このような動態は、複数層が高速度発射体で衝撃を受けた場合に、含浸布帛の非常に大きい摩擦および堅さについて予期される。
【0048】
衝撃時における、接着剤のTが低い布帛の反応に関して、これらのシステムの歪み速度依存性を考察することが重要である。これを実験的に理解する一方法は、周波数依存動的機械的方法を応用することである。試験のために、不活性ガラス支持布帛をポリ(ビニルプロピオネート)(PVP)またはポリ(ヘキシルメタクリレート)(PHM)のどちらかで含浸する。PHMをトルエン溶液から付着させて、トルエンを除去する。これらのサンプルを周波数依存動的機械的分析(DMA)で使用する。実験および機器は標準規格であり、「支持ポリマーを研究するための動的機械的分析器の使用(Use of a Dynamical Mechanical Analyzer to Study Supported Polymers)」、スタークウェザー(Starkweather),H.W.,ギリ(Giri),M.R.、J.Appl.Polym.Sci.、1982年、27、1243頁で述べられる。周波数依存ガラス転移は、損失シグナルの最大値として解決される。周波数の極値である0.1Hzおよび30Hzにおいて、PHMのTはそれぞれ−18.5℃〜−2℃の範囲である。同一周波数範囲において、PVPのTは3℃〜12.5℃の範囲である。これらはPHMおよびPVPについて、40kcal/molおよび65kcal/molの活性化エネルギーにそれぞれ対応する。弾道事象の非常に高い歪み速度は、高い変形相当周波数(>>10Hz)に寄与する。これの増大した歪み速度は、PVPおよびPHMを容易に液体からガラス質固相に転換する。例えば10Hzでは、PHMに関するこの活性化エネルギーに基づいたTは、25℃に移行する。この値は、弾道衝撃が誘発する高歪み速度の下では、PHMでさえも室温で十分ガラス相になることを示す。
【0049】
本発明で使用される高粘度接着剤のTは約−40〜約0℃の範囲内に入り、好ましくは約−35〜約−10℃の範囲内である。これらの材料では、弾道事象からの高い歪み速度は、この周波数依存Tを室温を超えて移行するのに十分であり、粘稠な接着剤を堅いガラス質固形物に転換する。低いTおよび「流動」性のために、これらの接着剤は、静的条件下で快適な防護ベストを作成するための可撓性の布帛を提供する。ガラス転移が約−40℃未満である場合、歪み速度の高さはシステムをガラス相に転換させるのに十分でない。
【0050】
上述のように、いくつかの好ましい実施態様では、接着剤は高粘度ポリマー流体であるべきである。それらは弾性固形物、非常に高分子量のポリマー、半結晶質弾性固形物、または架橋弾性固形物であってはならない。これらのようなポリマーは貫通抵抗性を低下でき、より堅いために快適さの低下を引き起こす。さらに特に、低レベルで塗布された固体接着剤は自己回復せず、ひとたび布帛が変形すると実質的に有効性を失う。
【0051】
これらの高粘度接着剤は、中程度から比較的高い摩擦を与える。約−40℃〜約0℃の範囲内であるTを有する高粘度接着剤では、乾燥布帛対照サンプルよりも高い摩擦は、BFDと良好に相関して性能利点に寄与する。含浸添加剤の粘度もまた、布帛の堅さに相関する。
【0052】
に加えて、本発明で使用される接着剤はまた、それらの分子量(Mw)および粘度によって特徴づけられる。分子量は重量平均であり、典型的にゲル透過クロマトグラフィーによって判定される。例えば粘稠な流体ポリマーの分子量は、約20,000〜400,000g/mol(いくつかの実施態様では20,000〜100,000)の範囲内であってもよい。粘稠な流体ポリマーのための所望の粘度範囲は、約2×10〜約1013ポアズである。粘度は典型的に室温で測定されるが、一般に、ここで提供されるような対象接着剤の粘度は、室温で標準技術によって測定するには高すぎる。この場合、粘度は、高温溶融粘度からの外挿、メルトフローインデックス特性決定またはその他の定性的流動学的特性決定によって推定される。ポリマー流体のゼロ剪断粘度特性決定のために応用される典型的な一方法は、円錐平板流体測定法または毛管粘度測定法である。上の範囲外の低い粘度は、シロキサン流体のTが低い場合のように、分子量が高いものであってさえも典型的に性能を低下させる。これらの材料は、潤滑のために摩擦を低下させる。これはブリスコエ(Briscoe),B.J.、モタメディ(Motamedi),F.による「アラミド布帛の弾道衝撃特徴:境界面摩擦の影響(The ballistic impact characteristics of aramid fabrics:the influence of interface friction)」、Wear、1992年、158(1−2)、229頁で開示されるように、防弾性能不良と相関している。
【0053】
適切な特性がある液体接着剤は、懸濁液、エマルジョンまたは溶融重合をはじめとする多くのやり方で、配合物または共重合体の形態で形成できる。ここで高粘度接着剤として有用なポリマーの例としては、ポリ(ビニルプロピオネート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、および(エチレン含量38重量%、メチルアクリレート含量62重量%の)エチレン/メチルアクリレート共重合体が挙げられる。
【0054】
固体エラストマーとは際立って異なる流動および弾性率特性がある高粘度接着剤を防弾布帛に含浸させた。処理された層の数次第で、ポリアラミド布帛中で約1〜約15重量%の添加剤レベルの範囲内で、弾道貫通抵抗性および背面変形(鈍的外傷の測定)双方の望ましく高いレベルが見られた。このタイプのシステムは、目下使用されている布帛ベスト中で満足のいく鈍的外傷保護を提供するのに必要な面密度と比べて、約20〜30%の重量節約を提供すると考えられる。本発明で使用されるような高粘度接着剤は、本発明で望ましい液体接着性能を与えるガラス転移温度Tを有し、繊維構造中での粘度および摩擦効果を通じて背面変形を制御する。
【0055】
ここでの目的では、「繊維」という用語は、長さと、その長さに垂直なその断面積を横切る幅との比率が高い、比較的可撓性で巨視的に均質な本体と定義される。繊維断面はあらゆる形状であることができるが、典型的に丸い。ここで「フィラメント」または「連続フィラメント」という用語は、「繊維」という用語と同義的に使用される。
【0056】
ここでの用法では、「ステープルファイバー」という用語は、所望の長さに切断された繊維、またはフィラメントと比べると、長さとその長さに垂直なその断面積を横切る幅との低い比率を有して天然に存在する、または自然に有する繊維を指す。長さは約0.1インチから数フィートで変動できる。いくつかの実施態様では、長さは0.1インチ〜約8インチである。人造ステープルファイバーは、綿、羊毛、または梳毛糸紡績機上での加工に適した長さに切断される。
【0057】
ステープルファイバーは、(a)実質的に均一の長さ、(b)可変またはランダムの長さ、または(c)実質的に均一の長さを有するステープルファイバーのサブセットおよび別のサブセット中の異なる長さを有するステープルファイバーを有することができ、共に混合されたサブセット中のステープルファイバーは実質的に均一の分布を形成する。
【0058】
いくつかの実施態様では、適切なステープルファイバーは1〜30cmの長さを有する。短ステープル工程によって作られるステープルファイバーは、1〜6cmの繊維長をもたらす。
【0059】
ステープルファイバーは、あらゆる工程によって作成ができる。ステープルファイバーは、連続繊維をけん切して、クリンプとして機能する変形セクションがあるステープルファイバーをもたらして形成できる。ステープルファイバーは、ロータリーカッターまたはギロチン断裁機を使用して連続の直線繊維から切断して、直線(すなわちクリンプしていない)ステープルファイバーをもたらすことでができ、またはさらに1cmあたり8個のクリンプを超えないクリンプ(または反復する屈曲)頻度で、ステープルファイバーの長さに沿って、のこ歯形状のクリンプを有するクリンプした連続繊維から切断できる。
【0060】
けん切されたステープルファイバーは、破断ゾーン調節によって制御される平均切断長を有する、繊維のランダム可変質量を作り出す所定の距離である、1つまたはそれ以上の破断ゾーンを有するけん切操作中に、連続フィラメントのトウまたは束を破断して作ることができる。
【0061】
本発明のステープルファイバーは、技術分野でよく知られている伝統的な長短ステープルリング精紡工程を使用して糸に転換できる。短ステープルでは、3/4インチ〜2−1/4インチ(すなわち1.9〜5.7cm)の綿系紡績繊維長が典型的に使用される。長ステープルでは6−1/2インチ(すなわち16.5cm)までの梳毛糸または紡毛系紡績繊維が典型的に使用される。しかし糸はまた、空気ジェット紡績、オープンエンド紡績、およびステープルファイバーを使用可能な糸に転換する多くのその他のタイプの紡績を使用して紡績してもよいので、リング精紡に限定することは意図されない。
【0062】
けん切されたステープルファイバーは、典型的に長さ7インチ(すなわち17.8cm)以下で、15であることができる長さを有し、ステープル工程をトップする伝統的なけん切されたトウを使用して作られる。例えば国際公開第0077283号パンフレットで述べられる工程を通じて、約20インチ(すなわち51cm)までの最大長を有するステープルファイバーが可能である。糸は、空気ジェットによるフィラメントの絡み合いを使用して、紡績糸への繊維統合によって、1デシテックスあたり3〜7グラムの範囲内である引張り強さを有するように作られたものである。これらの糸は第2の撚りを有してもよく、すなわちそれらを形成後に撚って糸により大きな引張り強さを与えてもよく、その場合、引張り強さは1デニールあたり10〜18グラム(すなわち1dtexあたり9〜17グラム)の範囲であることができる。工程は繊維にある程度のクリンプを与えるので、けん切されたステープルファイバーは常態ではクリンプを必要としない。
【0063】
連続フィラメントという用語は、比較的小さな直径を有して、その長さがステープルファイバーに用いられるものよりも長い、可撓性の繊維を指す。連続フィラメント繊維は、当業者によく知られている工程によって、マルチフィラメント糸に転換できる。
【0064】
本発明の布帛は、ニットまたは織布または不織構造をはじめとするが、これに限定されるものではない、多数の形態をとることができる。このような布帛形態については、当業者によく知られている。
【0065】
「不織」布帛とは、一方向性(マトリックス樹脂内に含有される場合)、フェルト、繊維バットなどをはじめとする、繊維の網目状組織を意味する。
【0066】
「織」布とは、平織、千鳥綾織、斜子織、朱子織、綾織などのあらゆる布帛の織り方を使用して織られた布帛を意味する。平織および綾織が、業界で使用される最も一般的な織り方と考えられる。
【0067】
本発明の範囲を限定することを意図しない次の実施例によって、本発明を例示する。
【実施例】
【0068】
比較例1
比較例1では、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)から登録商標ケブラー(Kevlar)(登録商標)129の下に入手できる、フィラメントあたり線密度が1.66dtexである、930dtexの高引張り強さポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)連続フィラメント糸から多軸布帛の層が作られる。布帛の各層は、異なる角度で配列され、低デニールおよび低引張り強さのループ形成ポリエチレン糸の組によって共に結合される、1cmあたり7.1末端の4組の平行糸で構築される。各多軸布帛層の面密度は約0.28kg/mである。多軸布帛で使用される4組の糸の引張り強さは24.3グラム/dtexであり、繊維密度は1.44グラム/cmである。多軸布帛層は安定性が良くない。多軸布帛層中の糸は、鋭器の貫通によって歪んで押しのけられる。約15”×15”サイズの17層の多軸布帛を縁周辺で縫い合わせて、千鳥掛けして総面密度約4.8kg/mの複合構造を形成する。次にレベルIIのためのNIJ防弾基準0101.04による357マグナム銃弾に対して、アセンブリーを防弾V50および背面変形の双方について試験する。結果、特に実施例の複合構造の背面変形は、布帛層の低い構造安定性のために不良であることが予期される。
【0069】
比較例2
比較例2では、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)から登録商標ケブラー(Kevlar)(登録商標)129の下に入手できる、フィラメントあたり線密度が1.66dtexである、930dtexの高引張り強さポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)連続フィラメント糸から織布の層が作られる。布帛の各層は、縦糸および横糸双方の方向で1cmあたり7.1末端の平織で構築される。織布層の面密度は約0.132kg/mである。織布で使用される糸の引張り強さは24.3グラム/dtexであり、繊維密度は1.44グラム/cmである。織布層は安定性が比較的良くない。織布層中の糸は、鋭器の貫通によって歪んで押しのけられる。約15”×15”サイズの36層の織布を縁周辺で縫い合わせて、千鳥掛けして総面密度約4.8kg/mの複合構造を形成する。次にレベルIIのためのNIJ防弾基準0101.04による357マグナム銃弾に対して、アセンブリーを防弾V50および背面変形の双方について試験する。結果、特に実施例の複合構造の背面変形は、布帛層の低い構造安定性のために不良であることが予期される。
【0070】
実施例1
実施例1では、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)から登録商標ケブラー(Kevlar)(登録商標)129の下に入手できる、フィラメントあたり線密度が1.66dtexである、930dtexの高引張り強さポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)連続フィラメント糸から本発明の複合材層が作られる。布帛の各層は、異なる角度で配列される1cmあたり7.1末端の平行糸の第1および第2の組と、縦糸および横糸双方の方向で1cmあたり7.1末端の織布繊維の網目状組織の糸の第3の組と、および異なる角度で配列される1cmあたり7.1末端の平行糸の第4および第5の組とで構築され、次に低デニールおよび低引張り強さのループ形成ポリエチレン糸の組によって共に結合される。本発明の複合材層の面密度は約0.412kg/mである。複合材層で使用される4組の糸の引張り強さは24.3グラム/dtexであり、繊維密度は1.44グラム/cmである。本発明の複合材布帛層の構造安定性は良好である。約15”×15”サイズの本発明の12層の複合材層を縁周辺で縫い合わせ、千鳥掛けして総面密度約4.9kg/mの複合構造を形成する。次にレベルIIのためのNIJ防弾基準0101.04による357マグナム銃弾に対して、アセンブリーを防弾V50および背面変形の双方について試験する。防弾V50は良好であることが予期され、実施例の複合構造の背面変形は、44mm未満であることが予期され、比較例1および2で開示されるものよりもはるかに良い。
【0071】
実施例2
実施例2では、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)から登録商標ケブラー(Kevlar)(登録商標)129の下に入手できる、フィラメントあたり線密度が1.66dtexである、930dtexの高引張り強さポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)連続フィラメント糸から本発明の複合材層が作られた。布帛の各層は異なる角度で配列される1cmあたり7.1末端の平行糸の第1および第2の組と、縦糸および横糸双方の方向で1cmあたり7.1末端の織布繊維の網目状組織の糸の第3の組と、および異なる角度で配列される1cmあたり7.1末端の平行糸の第4および第5の組とで構築され、次に低デニールおよび低引張り強さのループ形成ポリエチレン糸の組によって共に結合される。本発明の複合材層の面密度は約0.412kg/mである。複合材層で使用される4組の糸の引張り強さは24.3グラム/dtexであり、繊維密度は1.44グラム/cmである。−40℃〜約10℃の範囲内のTgを有して、20℃におけるゼロ剪断溶融粘度が2×10〜約1013ポアズであり、分子量が約20,000〜100,000である、約5重量%の高粘度ポリマーで複合材層をさらに被覆する。被覆された各複合材層の面密度は約0.432kg/mである。本発明の複合材布帛層の構造安定性は非常に良好である。約15”×15”サイズの本発明の11層の被覆された複合材層を縁周辺で縫い合わせ、千鳥掛けして総面密度約4.8kg/mの複合構造を形成する。次にレベルIIのためのNIJ防弾基準0101.04による357マグナム銃弾に対して、アセンブリーを防弾V50および背面変形の双方について試験する。結果、特に実施例の複合構造の背面変形は、44mmを十分に下回って非常に良好であることが予期され、比較例1および2で述べられる結果よりもはるかに良い。
【0072】
明瞭さのためにここで別々の実施態様の文脈で述べられる特定の特徴はまた、単一実施態様中で組み合わせて提供されてもよいものと理解される。反対に、簡潔さのために単一実施態様の文脈で述べられる様々な特徴はまた、別々にまたはあらゆる下位の組み合わせで提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】多軸布帛の構築における、複数の一方向性層および横断繊維の使用の図解を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に実質的に平行である複数の第1の糸を含んでなる第1の層、
第2の方向に実質的に平行で第1の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第2の糸を含んでなる第2の層、
少なくとも1つの繊維網状構造層、
第3の方向に実質的に平行で第1の糸および第2の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第3の糸を含んでなる第3の糸層、
第4の方向に実質的に平行で第1、第2、および第3の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第4の糸を含んでなる第4の糸層、および
多軸布帛内で横断的に交絡された横断糸
を含んでなり、各層があらゆる逐次順序で配列され、場合により約−40〜約0℃の範囲内のTg、および20℃で約2×10〜約1013ポアズのゼロ剪断溶融粘度を有する高粘度ポリマーで被覆されてもよい多軸布帛。
【請求項2】
第1、第2、第3、および第4の糸層の少なくとも1つがアラミド繊維を含んでなる請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
アラミド繊維がポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である請求項2に記載の布帛。
【請求項4】
第1、第2、第3、および第4の糸層の少なくとも1つが、ポリピリダゾール繊維を含んでなる請求項1に記載の布帛。
【請求項5】
ポリピリダゾールがポリピリドビスイミダゾールである請求項4に記載の布帛。
【請求項6】
ポリピリダゾールがポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)である請求項4に記載の布帛。
【請求項7】
少なくとも1つの繊維網状構造層がアラミドフェルトを含んでなる請求項1に記載の布帛。
【請求項8】
アラミドがポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である請求項7に記載の布帛。
【請求項9】
アラミドフェルトがポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)ステープルファイバーを含んでなる請求項7に記載の布帛。
【請求項10】
横断糸が、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、アラミド、ポリアレーンアゾール、ポリピリダゾール、またはポリピリドビスイミダゾールの繊維を含んでなる請求項1に記載の布帛。
【請求項11】
少なくとも1つの層が、−40〜約0℃の範囲内であるTgと、20℃で約2×10〜約1013ポアズのゼロ剪断溶融粘度とを有する高粘度ポリマーで被覆される請求項1に記載の布帛。
【請求項12】
少なくとも1つの繊維網状構造層が、織布、不織、またはニット構造である請求項1に記載の布帛。
【請求項13】
少なくとも1つの繊維網状構造層が織布構造である請求項1に記載の布帛。
【請求項14】
少なくとも1つの繊維網状構造層が不織構造である請求項1に記載の布帛。
【請求項15】
少なくとも1つの繊維網状構造層がニット構造である請求項1に記載の布帛。
【請求項16】
請求項1に記載の布帛を含んでなる被服。
【請求項17】
請求項1に記載の布帛を含んでなる物品。
【請求項18】
第1の方向に実質的に平行である複数の第1の糸を含んでなる第1の層を提供するステップと、
第2の方向に実質的に平行で第1の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第2の糸を含んでなる第2の層を提供するステップと、
少なくとも1つの繊維網状構造層を提供するステップと、
第3の方向に実質的に平行で第1の糸および第2の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第3の糸を含んでなる第3の糸層を提供するステップと、
第4の方向に実質的に平行で第1、第2、および第3の糸に対して斜行しまたは片寄っている複数の第4の糸を含んでなる第4の糸層を提供するステップと、
層を統合シート構造中に統合するステップと、
複数統合シート構造を共に結合するステップと
を含んでなる布帛を製造する方法。
【請求項19】
第1、第2、第3、および第4の糸層の少なくとも1つがアラミド繊維を含んでなる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1、第2、第3、および第4の糸層の少なくとも1つが、ポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)繊維を含んでなる請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−518210(P2009−518210A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544654(P2008−544654)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/061740
【国際公開番号】WO2007/067951
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】