説明

防振ゴムの塗装装置及び塗装方法

【課題】簡単な構成で、防振ゴムの塗装時間を短縮して作業効率を向上させる。
【解決手段】各々左右一対の底板部(又は頂板部)と把手部55とを有する上側及び下側マスキング部材15,25からなるマスキング治具5と、マスキング治具5を載置するための架台3と、スプレー塗装機7と、を備えた防振ゴムの塗装装置1である。マスキング治具5には棒状突起部95が設けられ、架台3の一方側の竪壁部13には把手部55が係止する第1切欠部が、他方側の竪壁部23には棒状突起部95が係止する第2切欠部がそれぞれ形成されている。マスキング治具5は、把手部55,55と第1切欠部との係止を解いた状態では、取付金具29を挟んだまま、第2切欠部と係止した棒状突起部95を支点として反転可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のサスペンションブッシュとして用いられる防振ゴムの塗装装置及び塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の防振ゴムとしては、例えば、図13に示すように、金属製の外筒体19と、両端部が当該外筒体19から突き出るように当該外筒体19に挿通された取付金具29と、当該外筒体19と当該取付金具29とを連結するゴム弾性体39と、を有するものがよく知られている。
【0003】
かかる防振ゴム9においては、リンク等と繋がれる外筒体19には、その周面19a及び端面19b,19cに錆止め塗料を塗装する一方、車体等と繋がれる取付金具29には、緩みの原因となるおそれがあるため、錆止め塗料を塗装しないことが多い。
【0004】
このため、防振ゴム9の従来の塗装方法としては、例えば、図14(a)に示すように、上方に突出する筒状の下側マスキング治具115が設けられた架台103を用意し、図14(b)に示すように、取付金具29の一方の端部をかかる下側マスキング治具115に挿入し、図14(c)に示すように、取付金具29の他方の端部に上側マスキング治具125を被せることによって、外筒体19から突き出た取付金具29の両端部を覆った状態で、塗装を行うことが多い。なお、図14では、1つの架台103に対して1つの下側マスキング治具115しか示していないが、1つの架台103に対して通常複数の下側マスキング治具115,115,…が設けられている。
【0005】
ところが、このような塗装方法では、1回の吹付工程において、外筒体19の周面19a及び上側の端面19bを塗装することはできるが、下側の端面19cを塗装することができない。このため、かかる方法を採用した場合には、外筒体19の周面19a及び上側の端面19bの塗装を、乾燥炉で乾かした後、上側マスキング治具125を取り外し、防振ゴム9の天地をひっくり返して下側マスキング治具115に挿入し、再び上側マスキング治具125を被せて、2回目の吹付工程で残りの端面19cを塗装しなければならず、作業効率が低下するという問題がある。
【0006】
このような下側及び上側マスキング治具115,125を用いない塗装治具として、例えば、特許文献1には、ワークを塗装するためのワーク受け部が、ワークを支持できるように樹脂製の材料で形成されているとともに、ワークの非塗装部を覆うマスキング部を備えている塗装台が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−21857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、横置きにしたワークの表面しか塗装できず、乾燥炉で乾かした後に、ワークの表裏をひっくり返して残りの部分を塗装しなければならず、作業効率が低下するという問題を解消できない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、防振ゴムの塗装装置及び塗装方法において、簡単な構成で、塗装時間を短縮して作業効率を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明では、被塗装体である防振ゴムを縦置きではなく(立てるのではなく)横置きにし、上下一対のマスキング部材の板状部材によって、外筒体を露出させた状態で取付金具の両端部を上下から覆い、かかる板状部材によって取付金具を挟んだまま、防振ゴムを上下一対のマスキング部材ごと反転させるようにしている。
【0011】
具体的には、第1の発明は、外筒体と、両端部が当該外筒体から突き出るように当該外筒体に挿通された取付金具と、当該外筒体と当該取付金具とを連結するゴム弾性体と、を有する防振ゴムの塗装装置を対象とする。
【0012】
そして、上記外筒体を露出させた状態で上記取付金具の両端部を覆うための、当該外筒体の軸方向長さよりも若干広い間隔をあけて略同一水平面上に並ぶ左右一対の板状部材と、左右方向及び上下方向と直交する長手方向一方側の端部で、これらの板状部材と連結される把手部と、をそれぞれ有する上下一対のマスキング部材からなるマスキング治具と、長手方向に対向する一対の竪壁部を有する、上記マスキング治具を載置するための架台と、上記外筒体に塗料を吹き付けるためのスプレー塗装手段と、を備え、上記マスキング治具の長手方向他方側の端部には、長手方向他方側に延びる棒状突起部が設けられており、上記架台の一方側の竪壁部には、上記把手部が回転不能に係止する、上方に開口した第1切欠部が形成されている一方、当該架台の他方側の竪壁部には、上記棒状突起部が回転可能に係止する、上方に開口した第2切欠部が形成されており、上記マスキング治具は、上下一対の上記把手部を掴んで持ち上げることによって、当該把手部と上記第1切欠部との係止を解いた状態では、上下一対の上記板状部材によって上記取付金具の両端部を上下から挟んだまま、上記第2切欠部と係止した上記棒状突起部を支点として反転可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
第1の発明では、マスキング治具は、左右一対の板状部材と、長手方向一方側の端部に設けられた把手部と、長手方向他方側の端部に設けられた棒状突起部と、をそれぞれ有する上下一対のマスキング部材からなる。また、当該マスキング治具を載置するための架台の一方側の竪壁部には、把手部が回転不能に係止する、上方に開口した第1切欠部が形成されている一方、架台の他方側の竪壁部には、棒状突起部が回転可能に係止する、上方に開口した第2切欠部が形成されている。このように、第1及び第2切欠部を上方に開口した切欠部とすることにより、マスキング治具の把手部及び棒状突起部をこれら第1及び第2切欠部に上方から係止させるだけで、マスキング治具を架台に簡単に載置することができるとともに、第1切欠部に対して把手部が回転不能に係止することから、マスキング治具が架台上でぐらつくのを抑えることができる。
【0014】
ここで、上下一対のマスキング部材における左右一対の板状部材は、外筒体の軸方向長さよりも若干広い間隔をあけて略同一水平面上に並んでいるので、筒軸が左右方向を向くような姿勢をとった外筒体が左右一対の板状部材の間に位置するように防振ゴムを配置し、取付金具の両端部を上下一対のマスキング部材の板状部材によって上下から挟めば、外筒体を露出させた状態で取付金具の両端部が上下から覆われるので、取付金具に塗料が付着することなく、外筒体の上半分における周面及び端面を塗装することができる。
【0015】
そうして、マスキング治具は、上下一対の把手部を掴んで持ち上げることによって、把手部と第1切欠部との係止を解いた状態では、上下一対の板状部材によって取付金具の両端部を上下から挟んだまま、第2切欠部と係止した棒状突起部を支点として反転可能に構成されていることから、防振ゴムをマスキング治具ごと反転させて、把手部を再び第1切欠部に上方から係止させるだけで、外筒体を裏返して未塗装部分を上側に向けることができる。したがって、乾燥炉での乾燥工程を間に挟むことなく、外筒体の周面及び両端面を連続して塗装することが可能となるので、塗装時間を短縮することができる。
【0016】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記各マスキング部材の左右一対の板状部材には、上下一対のマスキング部材を重ねた状態で、先端同士が上下方向に対向するように相手側に向かって延び、且つ、長手方向に延びる突設部がそれぞれ形成されており、上記突設部には、上記取付金具の端部が嵌る切欠凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
第2の発明によれば、各マスキング部材の左右一対の板状部材には、上下一対のマスキング部材を重ねた状態で、先端同士が上下方向に対向するように相手側に向かって延びる突設部がそれぞれ形成されていることから、これらの突設部で取付金具の端部を上下に挟むことによって、防振ゴムを上下方向に拘束することができる。また、突設部には、取付金具の端部が嵌る切欠凹部が形成されていることから、防振ゴムを長手方向に拘束することができる。さらに、突設部を取付金具の断面変化部に併せて形成すれば、左右一対の突設部でかかる断面変化部を挟むことによって、防振ゴムを左右方向にも拘束することができる。よって、安定した状態で塗装を行うことができるので、作業効率を向上させることができる。
【0018】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記各マスキング部材は、長手方向他方側の端部で上記左右一対の板状部材を連結する連結部材と、当該連結部材から長手方向他方側に突出する断面半円形の突出部と、を有しており、上記突出部は、上下一対のマスキング部材を重ねることにより、上記棒状突起部を形成するように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
第3の発明によれば、上側及び下側のマスキング部材のいずれか一方に棒状突起部を形成した場合と異なり、上側のマスキング部材と下側のマスキング部材との組合せのみならず、上側のマスキング部材同士又は下側のマスキング部材同士を組み合わせた場合にも、棒状突起部を形成することが可能となる。
【0020】
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、上記把手部は、左右方向に延びる把持部と、当該把持部の両端から長手方向に延びる2つの脚部とからなる略コ字状に形成されていて、当該各脚部が上記左右一対の板状部材の長手方向他方側の端部に取り付けられており、上記架台の一方側の竪壁部には、上記脚部と係止する、上方に開口した2つの上記第1切欠部が形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第4の発明によれば、把手部を2つの脚部を有する略コ字状に形成するとともに、架台の一方側の竪壁部に上方に開口した2つの第1切欠部を形成する簡単な構成で、第1切欠部に対して把手部を回転不能に係止させることができる。
【0022】
第5の発明は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、上記架台の一方側の竪壁部には、上記第1切欠部とは異なる位置に、上方に開口した第3切欠部が形成されている一方、当該架台の他方側の竪壁部には、当該第3切欠部に対応する位置に、上方に開口した第4切欠部が形成されており、上記架台は、上記マスキング部材を当該架台に載置される状態から長手方向軸周りに90°回転させた姿勢で、上記把手部を上記第3切欠部に係止させるとともに、上記マスキング部材の突出部を上記第4切欠部に係止させることにより、当該マスキング部材を仮置きすることが可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
第5の発明によれば、第3及び第4切欠部を上方に開口した切欠部とすることにより、マスキング治具の把手部及び棒状突起部をこれら第3及び第4切欠部に上方から係止させるだけで、マスキング部材を架台に簡単に仮置きすることができるので、作業効率が向上する。
【0024】
また、マスキング部材は、架台に載置される状態から長手方向軸周りに90°回転させた状態で仮置きされることから、左右一対の板状部材が略同一鉛直面上に並ぶことになるので、左右方向のスペースをとらず、塗装装置をコンパクトにすることができる。
【0025】
第6の発明は、外筒体と、両端部が当該外筒体から突き出るように当該外筒体に挿通された取付金具と、当該外筒体と当該取付金具とを連結するゴム弾性体と、を有する防振ゴムの塗装方法を対象とする。
【0026】
そして、上記外筒体を露出させた状態で上記取付金具の両端部を覆うための、当該外筒体の軸方向長さよりも若干広い間隔をあけて略同一水平面上に並ぶ左右一対の板状部材と、左右方向及び上下方向と直交する長手方向一方側の端部で、これらの板状部材と連結される把手部と、をそれぞれ有する上下一対のマスキング部材からなるマスキング治具と、長手方向に対向する一対の竪壁部を有する、上記マスキング治具を載置するための架台と、上記外筒体に塗料を吹き付けるためのスプレー塗装手段と、を備えた塗装装置を用意し、上記マスキング治具の長手方向他方側の端部には、棒状突起部が設けられており、上記架台の一方側の竪壁部には、上記把手部が回転不能に係止する、上方に開口した第1切欠部が形成されている一方、当該架台の他方側の竪壁部には、上記棒状突起部が回転可能に係止する、上方に開口した第2切欠部が形成されており、上記把手部を上記第1切欠部に係止させるとともに、上記マスキング部材の突出部を上記第2切欠部に係止させることにより、上記下側のマスキング部材を、上記架台に載置する載置工程と、上記下側のマスキング部材における左右一対の板状部材の間に、筒軸が左右方向を向くような姿勢をとった外筒体が嵌るように、防振ゴムを上記下側のマスキング部材上に配置する配置工程と、上記上側のマスキング部材を上記下側のマスキング部材に重ねて、上記外筒体を露出させた状態で上記取付金具の両端部を、上下のマスキング部材の左右一対の板状部材で上下から覆う覆い工程と、上記スプレー塗装手段を用いて、上記外筒体の上半分に塗料を吹き付ける第1吹付工程と、上下一対の上記把手部を掴んで持ち上げることにより、当該把手部と上記第1切欠部との係止を解いた状態で、上下一対の上記板状部材によって取付金具を上下から挟んだまま、上記第2切欠部と係止した上記棒状突起部を支点として、上記マスキング治具を反転させる反転工程と、上記スプレー塗装手段を用いて、反転して上側を向いた上記外筒体の未塗装の部位に塗料を吹き付ける第2吹付工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0027】
第6の発明によれば、第1の発明と同様に、簡単な構成で、防振ゴムの塗装時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る防振ゴムの塗装装置及び塗装方法によれば、第1及び第2切欠部を上方に開口した切欠部とすることにより、マスキング治具の把手部及び棒状突起部をこれら第1及び第2切欠部に上方から係止させるだけで、マスキング治具を架台に簡単に載置できるとともに、第1切欠部に対して把手部が回転不能に係止することから、マスキング治具が架台上でぐらつくのを抑えることができる。
【0029】
また、左右一対の板状部材は、外筒体の軸方向長さよりも若干広い間隔をあけて略同一水平面上に並んでいるので、外筒体を露出させた状態で取付金具の両端部が当該左右一対の板状部材によって覆われることから、取付金具に塗料が付着することなく、外筒体の上半分における周面及び端面を塗装することができる。そうして、マスキング治具は、上下一対の把手部を掴んで持ち上げて第1切欠部との係止を解いた状態では、取付金具の両端部を上下から挟んだまま、第2切欠部と係止した棒状突起部を支点として反転可能に構成されていることから、防振ゴムをマスキング治具ごと反転させるだけで、外筒体の未塗装部分を上側に向けることができ、これにより、乾燥炉での乾燥工程を間に挟むことなく、外筒体の周面及び両端面を連続して塗装することが可能となる。
【0030】
以上により、防振ゴムの塗装装置及び塗装方法において、簡単な構成で、塗装時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る防振ゴムの塗装装置を模式的に示す図である。
【図2】塗装装置の架台を模式的に示す斜視図である。
【図3】マスキング部材を模式的に示す斜視図である。
【図4】マスキング治具の長手方向一方側の側面図であり、同図(a)は、上下一対のマスキング部材を分解した状態を示し、同図(b)は、上下一対のマスキング部材を重ねた状態を示す。
【図5】マスキング治具の長手方向他方側の側面図であり、同図(a)は、上下一対のマスキング部材を分解した状態を示し、同図(b)は、上下一対のマスキング部材を重ねた状態を示す。
【図6】上下一対のマスキング部材によって、取付金具の両端部を固定している状態を模式的に示す断面図である。
【図7】架台に下側マスキング部材を載置した状態を模式的に示す斜視図である。
【図8】架台に載置された下側マスキング部材上にサスペンションブッシュを配置した状態を模式的に示す斜視図である。
【図9】上側マスキング部材を、架台に載置された下側マスキング部材に重ねた状態を模式的に示す斜視図である。
【図10】マスキング治具を反転させている状態を模式的に説明する斜視図である。
【図11】塗装設備を模式的に示す平面図である。
【図12】上側マスキング部材を、架台に仮置きした状態を模式的に示す斜視図である。
【図13】防振ゴムとしてのサスペンションブッシュの一例を模式的に示す図である。
【図14】従来のマスキング治具による塗装方法を模式的に説明する図であり、同図(a)は、下側マスキング部材を示し、同図(b)は、サスペンションブッシュを下側マスキング部材に挿入した状態を示し、同図(c)は、上側マスキング部材をサスペンションブッシュに被せた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
−塗装装置の構造−
図1は、本発明に係る防振ゴムの塗装装置を模式的に示す図である。この塗装装置1は、上記図13に例示したような、外筒体19と、両端部が当該外筒体19から突き出るように当該外筒体19に挿通された取付金具29と、当該外筒体19と当該取付金具29とを連結するように、主としてこれらの間に成形されたゴム弾性体39と、を有するサスペンションブッシュ(防振ゴム)9を、より詳しくは、取付金具29を塗装することなく外筒体19の周面19a及び端面19b,19cに錆止め塗料を塗装するためのものである。なお、以下の説明では、基本的に、下側マスキング部材15が下側に位置し、上側マスキング部材25が上側に位置した状態について説明するが、下側マスキング部材15と上側マスキング部材25との区別は便宜的なものであり、下側マスキング部材15と上側マスキング部材25とを逆に取り扱うようにすることも可能である。
【0034】
この塗装装置1は、図1に示すように、上下一対のマスキング部材15,25からなる、外筒体19を露出させた状態で取付金具29の両端部を上下から覆うためのマスキング治具5と、当該マスキング治具5の把手部55,55及び棒状突起部95が係止する一対の竪壁部13,23を有する、マスキング治具5を載置するための架台3と、外筒体19に塗料を吹き付けるためのスプレー塗装機(スプレー塗装手段)7と、を備えている。なお、以下の説明では、マスキング治具5の配列方向を左右方向とし、左右方向及び上下方向と直交する方向(マスキング治具5が延びる方向)を長手方向とし、把手部55が位置する側を長手方向一方側、また、棒状突起部95が位置する側を長手方向他方側とする。
【0035】
上記架台3は、図2に示すように、帯状の金属プレートを略コ字状に曲げ加工するとともにその両端にプレートを溶接することによって矩形枠状に形成されたものであり、長手方向に対向する一対の竪壁部13,23と、これらの両端同士を連結する一対の側壁部33,33とを有している。なお、長手方向他方側の竪壁部23の下端部と両側壁部33,33の下端部とは、座屈防止のために水平ブレス材43,43で連結されている。
【0036】
この架台3は、マスキング治具5を3つ載置できるように、その一方側の竪壁部13には、把手部55,55が係止する、略U字状で上方に開口した2つ1組の第1切欠部13aが3組形成されている一方、その他方側の竪壁部23には、3組の第1切欠部13aに対応する位置に、棒状突起部95が係止する、略U字状で上方に開口した第2切欠部23aが3つ形成されている。また、架台3の一方側の竪壁部13には、2つ1組の第1切欠部13a,13aの左側(第1切欠部13aとは異なる位置)に、略U字状で上方に開口し且つ第1切欠部13aよりも深く切り欠かれた第3切欠部13bがそれぞれ形成されている一方、架台3の他方側の竪壁部23には、各第2切欠部23aの左側(第3切欠部13bに対応する位置)に、略U字状で上方に開口した第4切欠部23bが3つ形成されている。さらに、架台3の一方側の竪壁部13には、サスペンションブッシュ9の外筒体19に錆止め塗料を噴射しやすくするために、各組の第1切欠部13a,13aの間に、切欠窓部13cが形成されている。
【0037】
上記マスキング治具5を構成する下側マスキング部材15は、図3に示すように、左右一対のカバー部材35,35と、長手方向一方側の端部でこれらのカバー部材35,35と連結される把手部55と、長手方向他方側の端部でこれらのカバー部材35,35を連結する連結部材65と、かかる連結部材65から長手方向他方側に突出する断面半円形の突出部75と、を有している。なお、以下、下側マスキング部材15の構造について詳細に説明するが、上側マスキング部材25は、カバー部材45における頂板部45aの左右方向の幅が、下側マスキング部材15におけるカバー部材35の底板部35aの左右方向の幅よりも若干長いこと、及び、カバー部材45における側板部45bの高さが、下側マスキング部材15のカバー部材35における側板部35bの高さよりも若干低いことを除けば、下側マスキング部材15とほぼ同様の構造なので、その詳細な説明を省略する。
【0038】
左右一対のカバー部材35,35は、各々底板部(板状部材)35aと側板部35bとを有する断面L字状に形成されていて、外筒体19を露出させた状態で取付金具29の両端部を覆うために、左右一対の底板部35a,35aが外筒体19の軸方向長さよりも若干広い間隔をあけて略同一水平面上に並ぶように配置されているとともに、左右一対の側板部35b,35bが左右方向外側に位置するように対向配置されている。そうして、これら左右一対のカバー部材35,35は、長手方向他方側の端部で、四角柱状の連結部材65を底板部35a,35aに溶接することで連結されている。
【0039】
ここで、上側マスキング部材25におけるカバー部材45の頂板部(板状部材)45aは、下側マスキング部材15の底板部35aよりも左右方向両外側に長く形成されていることから、上側マスキング部材25と下側マスキング部材15とを上下に重ねると、図4及び図5に示すように、下側マスキング部材15の両側板部35b,35bが、上側マスキング部材25の両側板部45b,45bの内側に位置する。一方、上側マスキング部材25における側板部45bは、下側マスキング部材15の側板部35bよりも低く形成されていることから、上側マスキング部材25と下側マスキング部材15とを上下に重ねると、図4及び図5に示すように、下側マスキング部材15の両側板部35b,35bの上端が、上側マスキング部材25の両頂板部45a,45aの内面(下面)に当接することによって、上側マスキング部材25の高さ位置が決まることになる。
【0040】
また、各把手部55は、左右方向に延びる把持部55aと、当該把持部55aの両端から長手方向他方側に延びる2つの脚部55b,55bと、からなる略コ字状に形成されていて、各脚部55b,55bが左右一対の底板部35a,35aの長手方向他方側の端部に溶接されている。かかる把手部55は、図4(a)に示すように、上側マスキング部材25にも設けられており、図4(b)に示すように、上側マスキング部材25と下側マスキング部材15とを上下に重ねることにより、2つの把手部55,55が上下に近接することから、手が大きくない作業員でも、上下一対の把手部55,55を同時に掴む(握る)ことが可能となっている。
【0041】
上記突出部75は、連結部材65から平面視で凸字状をなすように長手方向他方側に突出しており、換言すると、大きな半径を有する断面半円形の部位75aと、小さな半径を有する断面半円形の部位75bとを長手方向に連結した形状となっている。かかる突出部75は、図5(a)に示すように、上側マスキング部材25にも設けられており、上側マスキング部材25と下側マスキング部材15とを上下に重ねると、図5(b)に示すように、大きな半径を有する断面半円形の部位75aが大きい半径を有する円柱部95aを形成するとともに、小さな半径を有する断面半円形の部位75bが小さい半径を有する円柱部95bを形成するようになっている。これにより、下側及び上側マスキング部材15,25の突出部75,75は、大きい半径を有する円柱部95aと小さい半径を有する円柱部95bとを長手方向に連結したような形状を有する棒状突起部95を形成するようになっている。換言すると、マスキング治具5の長手方向他方側の端部には、長手方向他方側に延びる棒状突起部95が設けられている。
【0042】
加えて、各カバー部材35,45の底板部35a(又は頂板部45a)には、突設部85bと取付部85aとを有する断面L字状に形成された、長手方向に延びるがブッシュ固定部材85が、かかる取付部85aを底板部35a(又は頂板部45a)に溶接することで取り付けられている。このブッシュ固定部材85の突設部85bは、図4(b)及び図5(b)に示すように、上下一対のマスキング部材15,25を重ねた状態で、先端同士が上下方向に対向するように相手側に向かって延びており、かかる上下の突設部85bには、取付金具29の端部が嵌る切欠凹部85c,85c,…が等間隔をあけてそれぞれ5つ形成されている。
【0043】
そうして、下側マスキング部材15の突設部85bの切欠凹部85cに、サスペンションブッシュ9の取付金具29の端部を嵌めた後、上側マスキング部材25を下側マスキング部材15に重ねると、かかる取付金具29の端部が上側マスキング部材25の突設部85bの切欠凹部85cにも嵌り込み、図6に示すように、サスペンションブッシュ9が、外筒体19が露出するとともに取付金具29の両端部が上下から覆われた状態で、マスキング治具5に固定される。
【0044】
このように、上側及び下側マスキング部材15,25に設けられた突設部85b,85bで取付金具29の端部を上下に挟むことによって、サスペンションブッシュ9を上下方向に拘束することができる。また、各突設部85bには、取付金具29の端部が嵌る切欠凹部85cが形成されていることから、サスペンションブッシュ9を長手方向にも拘束することができる。さらに、左右の突設部85bがゴム弾性体39(取付金具29の断面変化部)を挟むことによって、サスペンションブッシュ9を左右方向にも拘束することができる。なお、この突設部85bは、図6を見れば分かるように、取付金具29の端部が位置する空間と、ゴム弾性体39及び外筒体19が位置する空間とを仕切る役目も果たしており、かかる突設部85bが存在することにより、塗装の際に飛び散った錆止め塗料の取付金具29への付着が抑制される。
【0045】
上記スプレー塗装機7は、一般的なものであり、詳しい説明は省略するが、サスペンションブッシュ9に錆止め塗料を噴射するためのスプレーガン17と、塗料ホース27を介して、このスプレーガン17に塗料を供給するための塗料供給手段37とを有していて、塗料供給手段37から供給された錆止め塗料を、作業員の操作するスプレーガン17によりワークに向けて噴射するように構成されている。
【0046】
以上のように構成された本実施形態の塗装装置1では、左右一対の底板部35a,35a(及び頂板部45a,45a)は、外筒体19の軸方向長さよりも若干広い間隔をあけて略同一水平面上に並んでいるので、筒軸が左右方向を向くような姿勢をとった外筒体19が左右一対の底板部35a,35aの間に位置するようにサスペンションブッシュ9を配置することにより、外筒体19を露出させた状態で取付金具29の両端部が覆われるので、取付金具29に錆止め塗料が付着することなく、外筒体19の上半分における周面19a及び端面19b,19cを塗装することができる。
【0047】
また、かかる塗装装置1では、図7〜図9に示すように、把手部55及び棒状突起部95を、第1及び第2切欠部13a,23aに上方から係止させるだけで、マスキング治具5を架台3に簡単に載置することができるとともに、把手部55の2つの脚部55b,55bを2つの第1切欠部13a,13aに上方から挿入するだけで、把手部55が第1切欠部13a,13aに対して回転不能に係止することから、マスキング治具5が架台3上でぐらつくのを抑えることができる。
【0048】
そして、マスキング治具5の長手方向他方側の端部に設けられた棒状突起部95は、円柱状に形成されていることから、略U字状に形成された第2切欠部23aに対して回転可能に係止している。これにより、マスキング治具5は、上下一対の把手部55,55を掴んで持ち上げることにより、把手部55,55と第1切欠部13a,13aとの係止を解いた状態では、図10に示すように、頂板部45a,45a及び底板部35a,35a(より正確には上下一対の突設部85b,85b)によって取付金具29の両端部を上下から挟んだまま、第2切欠部23aと係止した棒状突起部95を支点として反転することが可能になっている。これにより、従来のもののように、乾燥炉67(図11参照)での乾燥工程を間に挟まずに、外筒体19の周面19a及び両端面19b,19cを連続して塗装することが可能となるので、塗装時間を短縮することができる。
【0049】
なお、かかる塗装装置1は、小さい半径を有する円柱部95bが第2切欠部23aの円弧状部で回転する際には、大きい半径を有する円柱部95aが、架台3の長手方向他方側の竪壁部23とカバー部材35,35,45,45との間に所定の間隔を生じさせるので、マスキング治具5の反転が阻害され難い構造となっている。
【0050】
また、本実施形態の塗装装置1では、図12に示すように、架台3に載置される状態から長手方向軸周りに90°回転させた姿勢で、把手部55を第3切欠部13bに係止させるとともに、マスキング部材の突出部75を第4切欠部23bに係止させることにより、上側マスキング部材25を仮置きすることが可能になっている。これにより、下側マスキング部材15にサスペンションブッシュ9を配置する間など、上側マスキング部材25が不要なときに、上側マスキング部材25を簡単に仮置きすることができる。また、マスキング部材は、仮置きされた状態では、左右一対の頂板部45a,45aが略同一鉛直面上に並ぶことになるので、左右方向のスペースをとらず、塗装装置1をコンパクトにすることができる。なお、図12では図を見易くするために、載置されている下側マスキング部材15のすぐ隣に形成された(右側の)第3及び第4切欠部13b,23bではなく、中央部に形成された第3及び第4切欠部13b,23bに上側マスキング部材25を係止させているが、仮置きされる上側マスキング部材25は、通常、ペアとなる下側マスキング部材15のすぐ隣に形成された第3及び第4切欠部13b,23bに係止される。
【0051】
−塗装方法−
次いで、本実施形態の塗装装置1を用いた塗装方法について説明する。
【0052】
先ず、図11に示すような塗装ブース47に設置された台座(図示せず)に架台3を載置し、かかる塗装ブース47において、下側マスキング部材15の把手部55を当該架台3の第1切欠部13a,13aに係止させるとともに、下側マスキング部材15の突出部75を当該架台3の第2切欠部23aに係止させることにより、図7に示すように、3つの下側マスキング部材15,15,15を架台3上に載置する(載置工程)。
【0053】
次いで、各下側マスキング部材15における左右一対の底板部35a,35aの間に、筒軸が左右方向を向くような姿勢で外筒体19を挿入するとともに、各下側マスキング部材15における左右一対の突設部85bの切欠凹部85cに、取付金具29の端部を嵌めることにより、サスペンションブッシュ9を下側マスキング部材15上に配置する(配置工程)。このようなサスペンションブッシュ9の配置作業を1つの下側マスキング部材15につき5回繰り返すことにより、図8に示すように、1つの架台3につき15個のサスペンションブッシュ9が配置される。
【0054】
次いで、下側マスキング部材15の両側板部35b,35bが、上側マスキング部材25の両側板部45b,45bの内側に位置するように、上側マスキング部材25を下側マスキング部材15に上方から重ねる(覆い工程)。このとき、下側マスキング部材15の両側板部の上端が、上側マスキング部材25の両頂板部45a,45aの内面に当接するとともに、上側マスキング部材25における左右一対の突設部85bの切欠凹部85cに、取付金具29の端部が嵌る。これにより、図9に示すように、外筒体19を露出させた状態で取付金具29の両端部が、下側マスキング部材15の左右一対の底板部35a,35aと、上側マスキング部材25の左右一対の頂板部45a,45aとによって上下から覆われる。
【0055】
次いで、スプレー塗装機7を用いて、外筒体19の上半分に錆止め塗料を吹き付ける(第1吹付工程)。このとき、外筒体19は左右一対の頂板部45a,45aの間で露出している一方、取付金具29の両端部は頂板部45a,45aで覆われているので、取付金具29に錆止め塗料が付着することなく、外筒体19の上半分における周面19a及び両端面19b,19cを塗装することができる。なお、塗装ブース47の台座は架台3を載せた状態で、上下方向周りに360°回転するように構成されており、これにより、スプレーガン17を持った作業員が位置を変えることなく、平面全方向から外筒体19を塗装することが可能となっている。
【0056】
次いで、上下一対の把手部55,55を、手の平を上に向けた姿勢で下側から掴み、かかる把手部55,55を持ち上げることによって、把手部55,55と第1切欠部13a,13aとの係止を解く。そうして、図10に示すように、頂板部45a,45a及び底板部35a,35a(より正確には上下一対の突設部85b,85b)によって取付金具29を挟んだまま(上下一対の把手部55,55を掴んだまま)、手首を返すことにより、第2切欠部23aと係止した棒状突起部95を支点として、マスキング治具5を反転させる(反転工程)。
【0057】
次いで、スプレー塗装機7を用いて、反転して上側を向いた外筒体19の未塗装の部位に錆止め塗料を吹き付ける(第2吹付工程)。
【0058】
以上のようにして、15個のサスペンションブッシュ9全てについて外筒体19の周面19a及び両端面19b,19cの塗装が完了すると、コンベア57を回転させ、塗装が完了したサスペンションブッシュ9を乾燥炉67で乾燥させるとともに、上記載置工程から第2吹付工程までの作業を所定回数(n回)繰り返す。そうして、コンベア57上にn個の架台3,3,…が並んだ後は、換言すると、コンベア57が1周して最初に上記載置工程から第2吹付工程までを行った1番目の架台3が再び塗装ブース47に帰ってきた後は、載置工程を省略し、その代わりに、塗装ブース47に帰ってきた時点で上側に位置しているマスキング部材15(又は25)を取り外し(分解工程)、錆止め塗料が乾燥したサスペンションブッシュ9を回収する回収工程を加えて、上記配置工程から第2吹付工程までの作業を繰り返す。
【0059】
なお、分解工程で取り外した、上側に位置していたマスキング部材15(又は25)は、上記の如く、既塗装のサスペンションブッシュ9の回収、及び、未塗装のサスペンションブッシュ9の配置の間、第3及び第4切欠部13b,23bを用いて仮置きしてもよいし、以下のようにしてもよい。すなわち、コンベア57上に並んだn個の架台3のうちn番目の架台3だけ上側マスキング部材25又は下側マスキング部材15を初めから使用しないようにし、塗装ブース47で未塗装のサスペンションブッシュ9の配置が完了した下側に位置しているマスキング部材25(又は15)に、一つ手前の1番目の架台3に載置された上側に位置しているマスキング部材15(又は25)を取り外して、これを重ねるようにしてもよい。
【0060】
より詳しくは、n番目の架台3については、塗装ブース47において載置工程及び配置工程を行った後、一つ手前の1番目の架台3(コンベア57が1周して最初に載置工程から第2吹付工程までを行った架台3)から取り外した上側に位置しているマスキング部材15(又は25)を用いて、覆い工程を行うようにする。そして、コンベア57が回転すると、塗装ブース47には上側に位置しているマスキング部材が取り外された1番目の架台3が帰ってくることになる。そうして、1番目の架台3に対して、回収工程及び配置工程を行った後、一つ手前の2番目の架台3から取り外したマスキング部材を用いて、覆い工程を行うようにし、各架台3についてかかる作業を繰り返す。このようにすれば、取り外したマスキング部材15(又は25)を仮置きする必要がなく、また、覆い工程において一つ手前の架台3から上側に位置しているマスキング部材15(又は25)が取り外されるので、さらに塗装時間を短縮することができる。
【0061】
−効果−
本実施形態によれば、左右一対の底板部35a,35a及び頂板部45a,45aは、外筒体19の軸方向長さよりも若干広い間隔をあけて略同一水平面上に並んでいるので、筒軸が左右方向を向くような姿勢をとった外筒体19が左右一対の底板部35a,35aの間に位置するようにサスペンションブッシュ9を配置し、取付金具29の両端部を底板部35a,35a及び頂板部45a,45aによって上下から挟めば、外筒体19を露出させた状態で取付金具29の両端部が上下から覆われるので、取付金具29に錆止め塗料が付着することなく、外筒体19の上半分における周面19a及び端面19b,19cを塗装することができる。
【0062】
また、マスキング治具5は、上下一対の把手部55,55を掴んで持ち上げることによって、把手部55,55と第1切欠部13a,13aとの係止を解いた状態では、底板部35a,35a及び頂板部45a,45aによって取付金具29の両端部を上下から挟んだまま、第2切欠部23aと係止した棒状突起部95を支点として反転可能に構成されていることから、サスペンションブッシュ9をマスキング治具5ごと反転させて、把手部55,55を再び第1切欠部13a,13aに上方から係止させるだけで、外筒体19を裏返して未塗装部分を上側に向けることができる。したがって、乾燥炉67での乾燥を間に挟むことなく、外筒体19の周面19a及び両端面19b,19cを連続して塗装することが可能となるので、塗装時間を短縮することができる。
【0063】
なお、本実施形態の塗装装置1及び塗装方法による作業効率の向上を確認するために、試験を行ったところ、未塗装の端面19cを塗装するためだけに、周面19aを再度塗装する従来の塗装方法に比べて、本実施形態の塗装装置1及び塗装方法では、錆止め塗料の使用量が約半分になるとともに、塗装時間の短縮により生産性が80%以上向上することが確認された。
【0064】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0065】
上記実施形態では、架台3を矩形枠状に形成したが、これに限らず、長手方向に対向する一対の竪壁部13,23を有するのであれば、例えば、一対の竪壁部13,23の下端部同士を金属プレートで連結した、縦断面L字状に形成してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、3つのマスキング治具5を架台3に載置するとともに、5つのサスペンションブッシュ9を各マスキング治具5に配置するようにしたが、これに限らず、架台3に載置するマスキング治具5の数や、各マスキング治具5に配置されるサスペンションブッシュ9の個数は適宜決定することができる。
【0067】
さらに、上記実施形態では、上下一対の突出部75を重ねることにより、棒状突起部95を形成したが、これに限らず、上側又は下側マスキング部材15のどちらか一方にだけ棒状突起部95を形成してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、把手部55の形状を略コ字状としたが、これに限らず、上下一対の把手部55を片手で掴めるような形状であれば、どのような形状でもよい。
【0069】
さらに、上記実施形態では、上側マスキング部材25の頂板部45aの左右方向の幅を、下側マスキング部材15の底板部35aの左右方向の幅よりも若干長くし、且つ、上側マスキング部材25の側板部45bの高さを、下側マスキング部材15の側板部35bの高さよりも若干低くしたが、これに限らず、上側マスキング部材25と下側マスキングとを全く同じ形状としてもよい。
【0070】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明は、例えば車両のサスペンションブッシュとして用いられる防振ゴムの塗装装置及び塗装方法等について有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 塗装装置
3 架台
5 マスキング治具
7 スプレー塗装機(スプレー塗装手段)
9 サスペンションブッシュ(防振ゴム)
13 竪壁部
13a 第1切欠部
13b 第3切欠部
15 下側マスキング部材
19 外筒体
23 竪壁部
23a 第2切欠部
23b 第4切欠部
25 上側マスキング部材
29 取付金具
35a 底板部(板状部材)
39 ゴム弾性体
45a 頂壁部(板状部材)
55 把手部
55a 把持部
55b 脚部
65 連結部材
75 突出部
85b 突設部
85c 切欠凹部
95 棒状突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒体と、両端部が当該外筒体から突き出るように当該外筒体に挿通された取付金具と、当該外筒体と当該取付金具とを連結するゴム弾性体と、を有する防振ゴムの塗装装置であって、
上記外筒体を露出させた状態で上記取付金具の両端部を覆うための、当該外筒体の軸方向長さよりも若干広い間隔をあけて略同一水平面上に並ぶ左右一対の板状部材と、左右方向及び上下方向と直交する長手方向一方側の端部で、これらの板状部材と連結される把手部と、をそれぞれ有する上下一対のマスキング部材からなるマスキング治具と、
長手方向に対向する一対の竪壁部を有する、上記マスキング治具を載置するための架台と、
上記外筒体に塗料を吹き付けるためのスプレー塗装手段と、を備え、
上記マスキング治具の長手方向他方側の端部には、長手方向他方側に延びる棒状突起部が設けられており、
上記架台の一方側の竪壁部には、上記把手部が回転不能に係止する、上方に開口した第1切欠部が形成されている一方、当該架台の他方側の竪壁部には、上記棒状突起部が回転可能に係止する、上方に開口した第2切欠部が形成されており、
上記マスキング治具は、上下一対の上記把手部を掴んで持ち上げることによって、当該把手部と上記第1切欠部との係止を解いた状態では、上下一対の上記板状部材によって上記取付金具の両端部を上下から挟んだまま、上記第2切欠部と係止した上記棒状突起部を支点として反転可能に構成されていることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
請求項1記載の塗装装置において、
上記各マスキング部材の左右一対の板状部材には、上下一対のマスキング部材を重ねた状態で、先端同士が上下方向に対向するように相手側に向かって延び、且つ、長手方向に延びる突設部がそれぞれ形成されており、
上記突設部には、上記取付金具の端部が嵌る切欠凹部が形成されていることを特徴とする塗装装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塗装装置において、
上記各マスキング部材は、長手方向他方側の端部で上記左右一対の板状部材を連結する連結部材と、当該連結部材から長手方向他方側に突出する断面半円形の突出部と、を有しており、
上記突出部は、上下一対のマスキング部材を重ねることにより、上記棒状突起部を形成するように構成されていることを特徴とする塗装装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の塗装装置において、
上記把手部は、左右方向に延びる把持部と、当該把持部の両端から長手方向に延びる2つの脚部とからなる略コ字状に形成されていて、当該各脚部が上記左右一対の板状部材の長手方向他方側の端部に取り付けられており、
上記架台の一方側の竪壁部には、上記脚部と係止する、上方に開口した2つの上記第1切欠部が形成されていることを特徴とする塗装装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の塗装装置において、
上記架台の一方側の竪壁部には、上記第1切欠部とは異なる位置に、上方に開口した第3切欠部が形成されている一方、当該架台の他方側の竪壁部には、当該第3切欠部に対応する位置に、上方に開口した第4切欠部が形成されており、
上記架台は、上記マスキング部材を当該架台に載置される状態から長手方向軸周りに90°回転させた姿勢で、上記把手部を上記第3切欠部に係止させるとともに、上記マスキング部材の突出部を上記第4切欠部に係止させることにより、当該マスキング部材を仮置きすることが可能に構成されていることを特徴とする塗装装置。
【請求項6】
外筒体と、両端部が当該外筒体から突き出るように当該外筒体に挿通された取付金具と、当該外筒体と当該取付金具とを連結するゴム弾性体と、を有する防振ゴムの塗装方法であって、
上記外筒体を露出させた状態で上記取付金具の両端部を覆うための、当該外筒体の軸方向長さよりも若干広い間隔をあけて略同一水平面上に並ぶ左右一対の板状部材と、左右方向及び上下方向と直交する長手方向一方側の端部で、これらの板状部材と連結される把手部と、をそれぞれ有する上下一対のマスキング部材からなるマスキング治具と、
長手方向に対向する一対の竪壁部を有する、上記マスキング治具を載置するための架台と、
上記外筒体に塗料を吹き付けるためのスプレー塗装手段と、を備えた塗装装置を用意し、
上記マスキング治具の長手方向他方側の端部には、棒状突起部が設けられており、
上記架台の一方側の竪壁部には、上記把手部が回転不能に係止する、上方に開口した第1切欠部が形成されている一方、当該架台の他方側の竪壁部には、上記棒状突起部が回転可能に係止する、上方に開口した第2切欠部が形成されており、
上記把手部を上記第1切欠部に係止させるとともに、上記マスキング部材の突出部を上記第2切欠部に係止させることにより、上記下側のマスキング部材を、上記架台に載置する載置工程と、
上記下側のマスキング部材における左右一対の板状部材の間に、筒軸が左右方向を向くような姿勢をとった外筒体が嵌るように、防振ゴムを上記下側のマスキング部材上に配置する配置工程と、
上記上側のマスキング部材を上記下側のマスキング部材に重ねて、上記外筒体を露出させた状態で上記取付金具の両端部を、上下のマスキング部材の左右一対の板状部材で上下から覆う覆い工程と、
上記スプレー塗装手段を用いて、上記外筒体の上半分に塗料を吹き付ける第1吹付工程と、
上下一対の上記把手部を掴んで持ち上げることにより、当該把手部と上記第1切欠部との係止を解いた状態で、上下一対の上記板状部材によって取付金具を上下から挟んだまま、上記第2切欠部と係止した上記棒状突起部を支点として、上記マスキング治具を反転させる反転工程と、
上記スプレー塗装手段を用いて、反転して上側を向いた上記外筒体の未塗装の部位に塗料を吹き付ける第2吹付工程と、を含むことを特徴とする防振ゴムの塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−35201(P2012−35201A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177963(P2010−177963)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】