説明

防振ゴム組成物

【課題】耐熱性、動特性に優れるとともに、加硫成形時の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良を解消することができる防振ゴム組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)および(B)成分とともに、下記の(C)成分を含有する防振ゴム組成物であって、(C)成分の配合量が、(A)成分100重量部に対して5〜20重量部の範囲である防振ゴム組成物とする。
(A)キサントゲン変性クロロプレンゴム。
(B)可塑剤。
(C)アミン系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤およびスルフィド系シランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つのシランカップリング剤で表面処理されたシリカ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ゴム組成物に関するものであり、詳しくは、自動車のエンジンを支持し、かつその振動伝達を抑制するためのエンジンマウント等に使用される防振ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンマウント等の防振ゴムの材料として使用されるゴム組成物(防振ゴム組成物)の開発において、従来の天然ゴムに代えて、合成ゴムであるクロロプレンゴムの使用が検討されている(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3852171号公報
【特許文献2】特許第3957425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防振ゴム組成物に使用されるクロロプレンゴムとしては、非変性のクロロプレンゴムが一般的であるが、近年、変性クロロプレンゴムの使用も検討されている。本発明者らは、各種の変性クロロプレンゴムのなかでも、キサントゲン変性クロロプレンゴムが、硫黄変性クロロプレンゴムよりも耐熱性に優れるといった利点や、メルカプト変性クロロプレンゴムよりも動特性に優れるといった利点を有するとの知見を得たことから、防振ゴム組成物のポリマーとしてキサントゲン変性クロロプレンゴムを使用することを検討した。
【0005】
しかしながら、キサントゲン変性クロロプレンゴムは、他のクロロプレンゴムに比べ、防振ゴム組成物に一般的に配合される可塑剤に対するなじみ(混合性)が非常に悪いといった欠点がある。このように可塑剤とのなじみが悪いと、例えば射出成形によりゴム組成物を加硫する際、ミルフィーユのように層状になり、融着不良や成形不良が生じる。このようになる理由は、本発明者らの検討によれば、上記射出成形時にゴム組成物が高温の金型に接した際、その接触部分が瞬間的に加硫してゴム層となるが、上記混合性の悪さから、ゴム層に焼けが生じるとともにゴム層表面に可塑剤がブリードして層状となり、さらにその可塑剤層の上から、次々、ゴムが射出成形されることにより、可塑剤層とゴム層との積層が繰り返されるためと考えられる。また、上記のような融着不良や成形不良は、成形後のゴム加硫体において、破壊の起点となるおそれもある。
【0006】
従来、上記のようなゴムの加硫成形時のブリードやゴム焼けを抑制する手法は、加硫温度を低くする等の手法しかなく、そのため、製造時間の短縮化や製品性の点で、改善が求められている。また、ブリードしにくい特殊な可塑剤を使用するといった手法も検討されているが、この手法では、ゴム特性を落とすおそれがあるため、可塑剤は変えずにブリードを抑制する手法が求められている。また、可塑剤の配合量を抑えるといった手法も検討されているが、練り加工性、ゴムの流れ性に支障が生じるため、この手法によらずにブリードを抑制する手法が求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐熱性、動特性に優れるとともに、加硫成形時の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良を解消することができる防振ゴム組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の防振ゴム組成物は、下記の(A)および(B)成分とともに、下記の(C)成分を含有する防振ゴム組成物であって、(C)成分の配合量が、(A)成分100重量部に対して5〜20重量部の範囲であるという構成をとる。
(A)キサントゲン変性クロロプレンゴム。
(B)可塑剤。
(C)アミン系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤およびスルフィド系シランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つのシランカップリング剤で表面処理されたシリカ。
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、耐熱性、動特性に優れるキサントゲン変性クロロプレンゴムをポリマーとする防振ゴム組成物において、その加硫時の可塑剤のブリードを抑えるため、可塑剤の吸着作用に優れた成分材料をゴム組成物中に配合することを想起した。そして、上記作用を有する成分材料であって、キサントゲン変性クロロプレンゴムのゴム特性に影響を与えずに、キサントゲン変性クロロプレンゴムと可塑剤とのなじみ(混合性)の悪さを改善することが可能なものについて各種研究を重ねた。その結果、アミン系シランカップリング剤等の特定のシランカップリング剤で表面処理されたシリカを特定の範囲内で配合すると、キサントゲン変性クロロプレンゴムとの組み合わせにおいて、ゴム物性を低下させることなく、加硫成形時の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良の問題を、悉く解消することができるようになることを突き止め、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の防振ゴム組成物は、キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)と、可塑剤(B成分)とともに、アミン系シランカップリング剤等の特定のシランカップリング剤で表面処理されたシリカ(C成分)を特定量配合してなるものである。そのため、本発明の防振ゴム組成物は、耐熱性、動特性に優れるとともに、加硫成形時の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良を解消することができる。また、このゴム組成物により、射出成形を良好に行うことができ、さらに、成形後のゴム加硫体におけるゴム破壊の問題を解消することができる。
【0011】
特に、上記シリカ(C成分)の可塑剤吸着速さが10秒以内を示すものであると、加硫成形時の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良の問題を、より解消することができる。
【0012】
また、上記シリカ(C成分)が、シランカップリング剤で表面処理されたシリチンであると、加硫成形時の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良の問題を、より解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0014】
本発明の防振ゴム組成物は、キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)と、可塑剤(B成分)と、特定のシランカップリング剤で表面処理されたシリカ(C成分)とを配合してなるものであり、そのシリカの配合量が特定の範囲に設定されている。
【0015】
上記キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)は、例えば、クロロプレン単量体等を乳化重合してクロロプレンゴムを調製する際に使用する分子量調節剤として、アルキルキサントゲン化合物を用いることにより、得ることができる。
【0016】
上記アルキルキサントゲン化合物としては、例えば、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0017】
なお、上記乳化重合の際に、クロロプレン単量体以外に、必要に応じ、クロロプレンと共重合可能な他の単量体を加えてもよい。上記他の単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、硫黄、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン並びにアクリル酸、メタクリル酸及びこれらのエステル類等があげられる。
【0018】
また、上記乳化重合は、通常、重合開始剤の存在下で行われる。上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物類等があげられる。
【0019】
また、上記乳化重合に使用される乳化剤は、例えば、炭素数が6〜22の飽和または不飽和の脂肪酸のアルカリ金属塩、ロジン酸または不均化ロジン酸のアルカリ金属塩、β−ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のアルカリ金属塩等があげられる。
【0020】
また、上記乳化重合の重合温度は、重合温度は0〜50℃であることが好ましく、更に20〜50℃であることが好ましい。また、モノマーの最終転化率は、60〜90%の範囲に入るように行うことが好ましく、この転化率に達した時点で重合禁止剤を少量添加して重合を停止させる。
【0021】
上記重合禁止剤としては、例えば、チオジフェニルアミン、4−ターシャリーブチルカテコール、2,2−メチレンビス−4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール等があげられる。
【0022】
上記乳化重合において未反応の単量体は、例えば、スチームストリッピング法によって除去することができる。その後、ラテックスのpHを調整し、常法の凍結凝固、水洗、熱風乾燥等を行うことにより、重合体であるキサントゲン変性クロロプレンゴムを単離することができる。
【0023】
つぎに、上記キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)とともに用いられる可塑剤(B成分)としては、例えば、ナフテン系オイル,パラフィン系オイル,アロマ系オイル等のプロセスオイル、石油アスファルト、ナタネ油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0024】
上記可塑剤(B成分)の配合量は、上記キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)100重量部(以下、「部」と略す)に対して、3〜30部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜20部の範囲である。すなわち、可塑剤の配合量が上記範囲よりも少ないと、所望の練り加工性、ゴムの流れ性が得られず、逆に上記範囲を超えると、可塑剤がブリードし、接着不良、成形不良等、製造上の問題を生じるからである。
【0025】
つぎに、上記(A)および(B)成分とともに用いられる、特定のシランカップリング剤で表面処理されたシリカ(以下、適宜「表面処理シリカ」と略す。)(C成分)としては、アミン系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤およびスルフィド系シランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つのシランカップリング剤で表面処理されたシリカが用いられる。なかでも、本発明の防振ゴム組成物が、より動特性に優れるようになることから、アミン系シランカップリング剤で表面処理されたシリカが好ましい。
【0026】
また、上記表面処理シリカ(C成分)としては、その可塑剤吸着速さが10秒以内を示すものが、加硫成形時の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良の問題を、より解消することができることから、好ましい。なお、上記可塑剤吸着速さは、例えば、可塑剤100gに対し、フィラー(表面処理シリカ)10gを投入した際、その可塑剤の液面下にフィラーが沈みはじめるまでの時間を測定することにより求められる。
【0027】
そして、上記(C)成分の表面処理に使用されるアミン系シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0028】
また、上記(C)成分の表面処理に使用されるエポキシ系シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0029】
また、上記(C)成分の表面処理に使用されるビニル系シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0030】
また、上記(C)成分の表面処理に使用されるメルカプト系シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0031】
また、上記(C)成分の表面処理に使用されるスルフィド系シランカップリング剤としては、例えば、ビス−(3−(トリエトキシシリル)−プロピル)−ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス−(3−(トリエトキシシリル)−プロピル)−テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0032】
また、上記表面処理の対象となるシリカは、乾式シリカ等、特に限定されるものではないが、加硫成形時の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良の問題を、より解消することができることから、シリチンが好ましく用いられる。
【0033】
また、本発明の防振ゴム組成物における上記表面処理シリカ(C成分)の配合量は、キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)100部に対して、5〜20部の範囲であり、好ましくは5〜10部の範囲である。すなわち、この範囲内で上記表面処理シリカを配合すると、ゴム物性を低下させることなく、加硫成形時の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良の問題を解消することができるからである。
【0034】
また、本発明の防振ゴム組成物においては、上記(A)〜(C)成分とともに、補強材、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、受酸剤等を必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0035】
上記補強材としては、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、クレー等があげられる。
【0036】
また、上記補強材の配合量は、上記キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)100部に対して、5〜100部の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜70部の範囲である。
【0037】
上記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0038】
また、上記加硫促進剤の配合量は、上記キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)100部に対して、0.1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3〜5部の範囲である。
【0039】
上記加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛、活性亜鉛華、ステアリン酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0040】
また、上記加硫促進助剤の配合量は、上記キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)100部に対して、0.1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3〜5部の範囲である。
【0041】
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0042】
また、上記老化防止剤の配合量は、上記キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)100部に対して、0.1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5部の範囲である。
【0043】
上記受酸剤としては、例えば、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、水酸化アルミニウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、塩基性二酸化ケイ素、水酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0044】
また、上記受酸剤の配合量は、上記キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)100部に対して、1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは2〜5部の範囲である。
【0045】
本発明の防振ゴム組成物は、例えば、つぎのようにして調製することができる。すなわち、上記キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)と、可塑剤(B成分)と、表面処理シリカ(C成分)と、必要に応じて、補強材,加硫促進剤,加硫促進助剤,老化防止剤,受酸剤等とを配合し、これらを、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、二軸混練押出機等の混練機を用いて混練(100〜130℃で、3〜5分間)することにより、目的とする防振ゴム組成物を得ることができる。その後、得られた防振ゴム組成物を、射出成形、注型成形等の成形方法に従い、金型等の型に流し込み、高温(150〜170℃)で5〜30分間、加硫することにより防振ゴム(加硫体)を作製することができる。
【0046】
上記のように、本発明の防振ゴム組成物は、キサントゲン変性クロロプレンゴムをポリマーとするものである。キサントゲン変性クロロプレンゴムは、耐熱性、動特性に優れるが、その反面、加硫成形時(特に射出成形時)の可塑剤のブリードに起因する融着不良、成形不良が従来問題視されてきた。しかしながら、上記のようにして得られた本発明の防振ゴム組成物は、たとえ射出成形を行っても、これらの問題が生じない。そのため、製造時間の短縮化、製品性等の点で優れている。
【0047】
また、上記問題が解決されたことから、ゴム加硫体におけるゴム破壊の問題も解消することができる。このことから、本発明の防振ゴム組成物は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の防振ゴム材料として好ましく用いられる。
【実施例】
【0048】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0049】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0050】
〔キサントゲン変性クロロプレンゴム(A成分)〕
電気化学工業社製、DCR−66
【0051】
〔メルカプト変性クロロプレンゴム〕
電気化学工業社製、DCR−35
【0052】
〔受酸剤〕
協和化学工業社製、協和マグ#150
【0053】
〔加硫促進助剤(i)〕
花王社製、ルーナックS30
【0054】
〔老化防止剤〕
精工化学社製、オゾノン6C
【0055】
〔カーボンブラック〕
東海カーボン社製、シーストSO
【0056】
〔可塑剤(B成分)〕
セバシン酸ジオクチル(DOS)
【0057】
〔表面処理シリカ(i)(C成分)〕
アミン系シランカップリング剤(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)で表面処理されたシリチン(ホフマンミネラル社製、AKTISIL AM)
【0058】
〔表面処理シリカ(ii)(C成分)〕
エポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)で表面処理されたシリチン(ホフマンミネラル社製、AKTISIL EM)
【0059】
〔表面処理シリカ(iii)(C成分)〕
ビニル系シランカップリング剤(ビニルトリエトキシシラン)で表面処理されたシリチン(ホフマンミネラル社製、AKTISIL VM56)
【0060】
〔表面処理シリカ(iv)(C成分)〕
メルカプト系シランカップリング剤(3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン)で表面処理されたシリチン(ホフマンミネラル社製、AKTISIL MM)
【0061】
〔表面処理シリカ(v)(C成分)〕
スルフィド系シランカップリング剤(ビス−(3−(トリエトキシシリル)−プロピル)−テトラスルフィド)で表面処理されたシリチン(ホフマンミネラル社製、AKTISIL PF216)
【0062】
〔表面処理シリカ(vi)(C成分)〕
スルフィド系シランカップリング剤(ビス−(3−(トリエトキシシリル)−プロピル)−テトラスルフィド)で表面処理されたシリカ(デグッサ社製、カプシル8113)
【0063】
〔シリカ(i)〕
シリカ(東ソーシリカ社製、ニップシールVN3)
【0064】
〔シリカ(ii)〕
シリカ(東ソーシリカ社製、ニップシールE743)
【0065】
〔加硫促進助剤(ii)〕
酸化亜鉛2種
【0066】
〔加硫促進剤(i)〕
三新化学工業社製、サンセラー22C
【0067】
〔加硫促進剤(ii)〕
住友化学社製、ソクシノールCZ
【0068】
〔実施例1〕
キサントゲン変性クロロプレンゴム100部と、受酸剤4部と、加硫促進助剤(i)0.5部と、老化防止剤1部と、カーボンブラック30部と、可塑剤10部と、表面処理シリカ(i)10部とを配合し、これらを、バンバリーミキサーによって、140℃で5分間混練した。つぎに、これに、加硫促進助剤(ii)5部と、加硫促進剤(i)2部と、加硫促進剤(ii)0.5部とを配合し、オープンロールを用いて、60℃で5分間混練することにより、防振ゴム組成物を調製した。
【0069】
〔実施例2〜9、比較例1〜5〕
後記の表1〜表3に示すように、各成分の配合量等を変更する以外は、実施例1に準じて、防振ゴム組成物を調製した。
【0070】
このようにして得られた実施例および比較例の防振ゴム組成物に関し、下記の基準に従って、各特性の測定・評価を行った。その結果を、後記の表1〜表3に併せて示した。
【0071】
〔可塑剤吸着速さ〕
可塑剤(DOS)100gに対し、各防振ゴム組成物に使用されているフィラー(シリカ)10gを投入した際、その可塑剤の液面下にフィラーが沈みはじめるまでの時間を測定した。そして、その時間が10秒以内であるものを○、10秒より長くかかったものを×と評価した。
【0072】
〔可塑剤吸収性〕
可塑剤(DOS)100gに対し、各防振ゴム組成物に使用されているフィラー(シリカ)10gを投入し、1分間撹拌した。そして、可塑剤とフィラーがなじんでペースト状になるものを○、可塑剤とフィラーが分離しペースト状にならないものを×と評価した。
【0073】
〔ゴム表面ブリード〕
各防振ゴム組成物を、注型成形により170℃で30分間加硫することにより防振ゴム(加硫体)を作製した。そして、その加硫体の表面に可塑剤がブリードアウトし、べたつきがあるものを×、可塑剤のブリードアウトが確認されないものを○と評価した。
【0074】
〔動倍率〕
各防振ゴム組成物の加硫体から、幅5mm×長さ30mm程度の短冊状の試験片を切り出して、室温(25℃)にてユービーエム社製のRheogel−E4000を用い、周波数100Hz、歪み0.05%のときの貯蔵弾性率〔E'(100Hz*0.05%)〕、および周波数15Hz、歪み4.5%のときの貯蔵弾性率〔E'(15Hz*4.5%)〕をそれぞれ測定した。そして、E'(100Hz*0.05%)/E'(15Hz*4.5%)=動倍率として示した(算定値)。この動倍率の算定値が1.50以下のものを○、1.50を超えるものを×と評価した。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
上記結果から、実施例のゴム組成物は、その可塑剤とフィラー(シリカ)とのなじみが良く、そのため、可塑剤吸着速さが短時間で、可塑剤吸収性評価にも優れている。また、実施例のゴム組成物の加硫体は、その表面に可塑剤のブリードアウトもみられず、動倍率特性にも優れていることがわかる。
【0079】
これに対して、比較例1,比較例2では、表面処理されていないシリカを使用している。そして、比較例1のゴム組成物は、実施例のゴム組成物に比べ、可塑剤吸着速さ、ゴム表面ブリード、動倍率の各評価に劣る結果となった。また、比較例2のゴム組成物は、実施例のゴム組成物に比べ、可塑剤吸着速さ、可塑剤吸収性、ゴム表面ブリードの各評価に劣る結果となった。比較例3では、表面処理シリカの使用料が多すぎるため、実施例のゴム組成物に比べ、動倍率の評価に劣る結果となった。比較例4では、表面処理シリカの使用料が少なすぎるため、実施例のゴム組成物に比べ、ゴム表面ブリードの評価に劣る結果となった。比較例5では、メルカプト変性クロロプレンゴムをポリマーに使用しているため、キサントゲン変性クロロプレンゴム変性をポリマーとする実施例のゴム組成物に比べ、動倍率の評価に劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の防振ゴム組成物は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の防振材料として好ましく用いられるが、それ以外にも、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の用途にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)および(B)成分とともに、下記の(C)成分を含有する防振ゴム組成物であって、(C)成分の配合量が、(A)成分100重量部に対して5〜20重量部の範囲であることを特徴とする防振ゴム組成物。
(A)キサントゲン変性クロロプレンゴム。
(B)可塑剤。
(C)アミン系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤およびスルフィド系シランカップリング剤からなる群から選ばれた少なくとも一つのシランカップリング剤で表面処理されたシリカ。
【請求項2】
上記(C)成分の可塑剤吸着速さが10秒以内を示すものである、請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
上記(C)成分が、アミン系シランカップリング剤で表面処理されたシリカである請求項1または2記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
上記(C)成分が、シランカップリング剤で表面処理されたシリチンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物の加硫体。

【公開番号】特開2013−72035(P2013−72035A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213291(P2011−213291)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】