説明

防振ブッシュ

【課題】軸直2方向のばね比を十分に確保しつつ、軸方向のばね特性を優れた自由度をもって調節可能とすることが出来ると共に、こじり方向のばね特性の著しい増大も回避され得る、新規な構造の防振ブッシュを提供すること。
【解決手段】径方向に離隔配置したインナ軸部材12とアウタ筒部材14を径方向連結ゴム16で連結せしめた防振ブッシュ10において、径方向連結ゴム16が中間板22で内周連結ゴム26と外周連結ゴム28とに区分されて互いに異なるゴム材料で形成されており、内周連結ゴム26よりも外周連結ゴム28の硬度を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ブッシュに係り、例えば自動車のサスペンションブッシュなどに用いられる防振ブッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム弾性体を用いた防振装置の一種として、径方向に離隔配置したインナ軸部材とアウタ筒部材をゴム弾性体で連結せしめた防振ブッシュが知られている。この防振ブッシュは、例えば自動車のサスペンションアームやサスペンションロッド、サブフレームなどの連結部位に装着されるサスペンションブッシュやサブフレームマウント等として用いられている。
【0003】
ところで、このような防振ブッシュでは、装着部位等に応じて種々な特性が要求される。例えば、自動車のサスペンションブッシュでは、操縦安定性と乗り心地との両立等の目的で車両の前後方向と左右方向に相当する直交する二つの径方向のばね比を大きくする要求が多い。そこで、特開平9−126259号公報(特許文献1)に記載されているように、インナ軸部材とアウタ筒部材を連結するゴム弾性体を、インナ軸部材を径方向で挟んだ両側に配した一対の径方向連結ゴムで構成した防振ブッシュが提案されている。
【0004】
さらに、ゴム弾性体のボリュームや耐久性を確保しつつ、相互に直交する二つの軸直角方向のばね比(軸直2方向ばね比)を一層大きくすることを要求されることがある。そこで、上記特許文献1にも記載されているように、径方向連結ゴムにおける径方向中間部分を仕切るように広がる中間板を設けることも提案されている。
【0005】
ところが、防振ブッシュでは、軸直2方向のばね比に加えて、軸方向のばね特性の調節まで要求されることがある。そのように軸直2方向に軸方向を加えた計3方向のばね特性の調節に対して、上記中間板は、十分な効果を発揮し得るものとは言い難かった。
【0006】
なお、軸方向のばね特性を調節するために、特開2003−262249号公報(特許文献2)に記載されているように、インナ軸部材とアウタ筒部材の各対応する軸方向端部にフランジ部を設けて、それらフランジ部の軸方向対向面間をゴム弾性体で連結することも考えられる。しかし、このような構造では、両フランジ部間のゴム弾性体が、軸方向入力に対する変形が圧縮となって軸方向ばね特性が硬くなり過ぎ、チューニングが難しいという問題があった。また、軸直角方向のばね特性と軸方向のばね特性との相対的な調節が難しいことに加えて、こじり方向のばね特性も硬くなり過ぎてチューニングが難しいという問題もあったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−126259号公報
【特許文献2】特開2003−262249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、軸直2方向のばね比を十分に確保しつつ、軸方向のばね特性を優れた自由度をもって調節可能とすることが出来ると共に、こじり方向のばね特性の著しい増大も回避され得る、新規な構造の防振ブッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、本発明の特徴するところは、インナ軸部材とアウタ筒部材とが、該インナ軸部材を径方向で挟んだ両側部分においてそれぞれ径方向連結ゴムで連結された防振ブッシュにおいて、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との径方向対向面間に中間板が配設されて、前記径方向連結ゴムが該中間板で内周連結ゴムと外周連結ゴムとに区分されて互いに異なるゴム材料で形成されており、該内周連結ゴムよりも該外周連結ゴムの硬度が小さくされている一方、該中間板には一方の端部から径方向に突出して中間フランジ部が設けられており、該中間フランジ部と該アウタ筒部材との軸方向対向面間を連結する軸方向連結ゴムが前記外周連結ゴムと一体形成されていることにある。
【0010】
本発明の防振ブッシュでは、先ず、インナ軸部材とアウタ筒部材とを径方向一方向で弾性連結する径方向連結ゴムを採用したことに加えて、それら各径方向連結ゴムに中間板を固着したことにより、かかる径方向一方向で硬く且つそれに直交する径方向で柔らかいばね特性が与えられる。それ故、本発明の防振ブッシュでは、軸直角2方向でのばね比を十分に大きく設定することが可能となる。
【0011】
一方、インナ軸部材とアウタ筒部材の間への軸方向入力に対しては、軸方向連結ゴムが圧縮変形せしめられることにより有効なばね硬さが発揮され得る。ここにおいて、軸方向入力に伴うインナ軸部材とアウタ筒部材の相対変位が直接に軸方向連結ゴムに及ぼされることがなく、内周連結ゴムを介して、中間板とアウタ筒部材との間で軸方向連結ゴムに軸方向入力が及ぼされることとなる。それ故、軸方向連結ゴムそのものの変形は圧縮変形が支配的であっても、内周連結ゴムの剪断変形によって軸方向ばね硬さの著しい増大が回避されて、軸方向ばね特性の大きなチューニング自由度が確保され得る。
【0012】
しかも、内周連結ゴムと外周連結ゴムのゴム硬度が相互に異ならされていることから、何れの軸直角方向でも非線形特性が発揮され得る。加えて、軸方向入力に際しても、剪断変形が支配的となる内周連結ゴムと圧縮変形が支配的となる軸方向連結ゴムとによって、非線形特性が発揮され得る。このように、本発明の防振ブッシュでは、内周連結ゴム及び外周連結ゴムからなる径方向連結ゴムと、外周連結ゴムと一体形成された軸方向連結ゴムとにおいて、相互に異なるゴム硬度を採用したことにより、軸直角方向および軸方向更にこじり方向やねじり方向の各入力方向において、何れも、小荷重領域で柔らかく且つ荷重増大に伴って大きく立ち上がって硬くなる非線形の荷重−撓み特性が効果的に実現され得るのである。その結果、衝撃的荷重に対する衝撃緩和性能を十分に確保しつつ、最大変位量を確実に制限することが出来ると共に、要求される静的ばね特性を十分に確保しつつ、一般に低ばね特性領域の小振幅である振動に対しては優れた防振性能を得ることが可能となるのである。
【0013】
また、外周連結ゴムは、内周連結ゴムに比して小さなゴム硬度が設定されていることから、外周連結ゴムに対して軸方向連結ゴムを一体形成する等して外周連結ゴムのボリュームが増大しても、軸直角方向のばね特性への悪影響が抑えられて、軸直角方向では所期のばね特性が発揮され得る。
【0014】
更にまた、内周連結ゴムには、外周連結ゴムに比して大きなゴム硬度が設定されていることから、軸方向入力に際しての内周連結ゴムの弾性変形が抑えられて、中間板とアウタ筒部材との軸方向対向面間に配された軸方向連結ゴムへの入力が効果的に確保され得る。それ故、軸方向入力に際して軸方向連結ゴムのばね特性が有効に発揮されて、インナ軸部材とアウタ筒部材との軸方向の過度の相対変位量が効果的に抑えられ得る。
【0015】
ところで、本発明の防振ブッシュでは、前記内周連結ゴムの周方向長さに比して、前記外周連結ゴムの周方向長さが小さくされている態様が、好適に採用され得る。
【0016】
本態様に従えば、軸方向連結ゴムの一体形成等に伴う外周連結ゴムのボリュームの増大を、周方向寸法を小さくすることで抑えることが出来、軸方向連結ゴムの一体形成等に伴う軸方向ばね特性の著しい増大がより効果的に回避され得る。また、内周側に比して周方向長さが大きくなりがちな外周側において、径方向連結ゴムの周方向長さを小さく設定することにより、こじり方向やねじり方向のばね特性を柔らかくすることも可能となり、各方向でのチューニング自由度の更なる向上も図られ得る。
【0017】
また、本発明の防振ブッシュでは、前記外周連結ゴムの周方向長さに比して、前記軸方向連結ゴムの周方向長さが大きくされている態様が、好適に採用され得る。
【0018】
本態様に従えば、外周連結ゴムの周方向長さを大きくすることに伴う径方向ばね特性等への悪影響を回避しつつ、軸方向連結ゴムの周方向長さの設計自由度が大きく確保され得る。それ故、例えば軸直角方向(径方向)のばね特性を柔らかく維持しつつ、軸方向のばね特性を要求レベルまで硬くすること等も容易に対応可能となる。
【0019】
また、本発明の防振ブッシュでは、前記インナ軸部材を径方向に挟んだ両側に位置して、相互に独立形成された一対の前記中間板が配設されており、それぞれの前記径方向連結ゴムに対して各該中間板が固着されている態様が、好適に採用され得る。
【0020】
本発明では、各径方向連結ゴムに固着される中間板を周方向で相互に連結して例えば筒形状等の一体構造とすることも可能であるが、本態様では、各径方向連結ゴムに固着される中間板を相互に独立する構造としたことにより、ばね特性(特に径方向ばね特性)を一層柔らかく設定することが可能となり、例えばゴムボリュームを確保して耐久性等を維持しつつ低ばね領域へのチューニング自由度の増大などが実現可能となる。
【0021】
また、上述の如き周方向で独立した一対の中間板を採用するに際しては、前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との間において、前記径方向連結ゴムによる連結方向とされた径方向に対して直交する径方向両側で、該インナ軸部材と該アウタ筒部材との径方向で突出するストッパゴムが、前記内周連結ゴム及び/又は前記外周連結ゴムと一体形成されている態様が、好適に採用され得る。
【0022】
本態様に従えば、柔らかいばね特性が与えられた径方向においてインナ軸部材とアウタ筒部材との相対的な変位量を確実に且つ緩衝的に制限するストッパ機構が、一対の中間板の周方向間のスペースを巧く利用して実現可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に従う構造とされた防振ブッシュにおいては、軸直角2方向での大きなばね比と、軸方向ばね特性の大きなチューニング自由度とを確保しつつ、各入力方向において非線形のばね特性を設定することが可能となる。その結果、要求される静的ばね特性を確保しつつ、優れた防振性能を得ることも可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態としての防振ブッシュの縦断面図であって、図4におけるI−I断面図に相当する。
【図2】図1におけるII−II断面に相当する端面図である。
【図3】図1に示された防振ブッシュの右側面図である。
【図4】図1に示された防振ブッシュの左側面図である。
【図5】図4におけるV−V断面図である。
【図6】図4におけるVI−VI断面の展開図である。
【図7】図4におけるVII−VII断面の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。先ず、図1〜7には、本発明の実施形態としての防振ブッシュ10が示されている。なお、図2中の上下方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、図1中の左右方向をZ軸方向とする。この防振ブッシュ10は、インナ軸部材12とアウタ筒部材14とが径方向連結ゴム16で連結された構造を有している。また、図面上に明示はされていないが、本実施形態の防振ブッシュ10は、自動車のサスペンション機構を構成する部材間にサスペンションブッシュとして装着されることとなる。
【0026】
より詳細には、インナ軸部材12は、ストレートな円筒形状を有しており、金属等で形成された剛性部材である。このインナ軸部材12は、その内部に貫通される取付ロッド等に対して取り付けられ、防振ブッシュ10で防振連結される一方の部材に装着されるようになっている。なお、インナ軸部材12は、それが装着される部材への取付構造等に応じて、例示の中空形状の他、中実のロッド形状等も採用され得る。
【0027】
このインナ軸部材12の外周側には、所定距離を隔てて囲むようにしてアウタ筒部材14が配設されている。アウタ筒部材14は、インナ軸部材12よりも大径の円筒形状を有しており、金属等の剛性材で形成されている。このアウタ筒部材14は、防振ブッシュ10で防振連結される他方の部材に対して、そのアームアイなどの装着孔に圧入固定されること等により、装着されるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態では、インナ軸部材12とアウタ筒部材14とが、同一中心軸上に配設されている。また、アウタ筒部材14は、インナ軸部材12よりもZ軸方向長さが小さくされており、インナ軸部材12の軸方向中間部分(特に本実施形態では軸方向略中央部分)に配設されている。
【0029】
さらに、アウタ筒部材14には、Z軸方向一方(図1中の右方)の端部にアウタフランジ部18が一体形成されている。このアウタフランジ部18は、アウタ筒部材14の開口縁部から径方向外方に向かって広がる円環板形状を有している。なお、アウタ筒部材14の軸方向端部には、アウタフランジ部18の基端部分において周方向に連続して溝状に延びる環状凹部20が設けられている。この環状凹部20は、アウタ筒部材14を補強すると共に、上述の如き防振連結される他方の部材への装着時にアウタフランジ部18が当該他方の部材に対して密着して重ね合わされるように作用する。
【0030】
また、インナ軸部材12とアウタ筒部材14との径方向対向面間には、一対の中間板22,22が配設されており、インナ軸部材12を挟んだ径方向一方向(X軸方向)にそれぞれ独立して配設されている。この中間板22は、例えばインナ軸部材12よりも薄肉の金属板をプレス加工等することで形成されており、特に本実施形態では、かかる中間板22が、インナ軸部材12またはアウタ筒部材14と略同じ曲率中心をもって周方向に湾曲したアーチ板形状とされている。また、一対の中間板22,22は、互いに異なる形状や大きさとすることも可能であるが、本実施形態では同一形状及び大きさとされている。
【0031】
更にまた、各中間板22は、周方向長さが半周より小さくされており、一対の中間板22,22の周方向端部間には、インナ軸部材12とアウタ筒部材14との径方向対向面間において所定大きさで広がる隙間が設けられている。
【0032】
さらに、中間板22の軸方向長さは、インナ軸部材12より小さく且つアウタ筒部材14より大きくされている。そして、中間板22は、その軸方向両端部分がアウタ筒部材14の軸方向両側に突出して且つインナ軸部材12の軸方向端部からは突出しない状態で、配設されている。
【0033】
特に、中間板22のZ軸方向一方(図1中の右方)の端部が、他方の端部よりも大きく軸方向に突出されており、この突出した先端部部分に中間フランジ部24が一体形成されている。中間フランジ部24は、中間板22の周方向の全長に亘って形成されて、径方向外方に広がっており、その径方向幅寸法がアウタフランジ部18よりも大きくされている。これにより、アウタ筒部材14のアウタフランジ部18と中間板22の中間フランジ部24とが、軸方向で所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
【0034】
また一方、インナ軸部材12とアウタ筒部材14を連結する径方向連結ゴム16は、インナ軸部材12を径方向一方向(X軸方向)で挟んだ両側に位置して、それぞれインナ軸部材12とアウタ筒部材14との径方向対向面間に延びている。そして、かかる径方向連結ゴム16は、インナ軸部材12の外周面とアウタ筒部材14の内周面に加えて、中間板22,22の内外周面に対しても、それぞれ固着されている。
【0035】
また、かかる径方向連結ゴム16は、インナ軸部材12とアウタ筒部材14との中間部分において、中間板22により径方向両側に仕切られて内周側と外周側とに実質的に二分されている。これにより、径方向連結ゴム16は、インナ軸部材12と中間板22とを径方向に連結する内周連結ゴム26と、中間板22とアウタ筒部材14とを径方向に連結する外周連結ゴム28とに区分されている。
【0036】
また、本実施形態では、径方向連結ゴム16によるインナ軸部材12とアウタ筒部材14との連結方向(X軸方向)での投影において、内周連結ゴム26の幅寸法(図2中のA)が、インナ軸部材12の外径寸法を超えないように設定されている。一方、外周連結ゴム28は、その周方向長さ(図7中のB1)が、内周連結ゴム26の周方向長さ(図6中のB2)よりも小さく設定されている。
【0037】
図2に示された横断面において、これら内周連結ゴム26と外周連結ゴム28は、各周方向の中心線が、インナ軸部材12及びアウタ筒部材14における一つの径方向線上で重なっており、かかる径方向線上で、内周連結ゴム26と外周連結ゴム28の各弾性主軸が重ね合わされている。また、中間板22は、周方向および軸方向において、内周連結ゴム26と外周連結ゴム28とを仕切るに十分な大きさをもって、インナ軸部材12とアウタ筒部材14との対向面間に広がっている。特に本実施形態では、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の径方向対向面間の略中央に位置して広がって中間板22が配設されており、内周連結ゴム26と外周連結ゴム28の径方向厚さ寸法が略同じとされている。
【0038】
さらに、アウタ筒部材14のアウタフランジ部18と中間板22の中間フランジ部24との軸方向対向面間には、軸方向連結ゴム30が設けられている。この軸方向連結ゴム30は、アウタ筒部材14と中間板22との対向面間を通じて、外周連結ゴム28と一体形成されている。要するに、アウタ筒部材14と中間板22との径方向および軸方向の対向面間にゴム弾性体が配設されることにより、外周連結ゴム28と軸方向連結ゴム30とが一体的に形成されているのである。
【0039】
特に本実施形態では、図7に示されているように、軸方向連結ゴム30が外周連結ゴム28から周方向両側に突出した形状とされており、外周連結ゴム28の周方向長さB1に比して、軸方向連結ゴム30の周方向長さB3が大きくされている。
【0040】
一方、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の連結ゴム26,28による連結方向となる径方向(X軸方向)に対して直交する径方向で、インナ軸部材12を挟んだ両側部分には、連結ゴム26,28が設けられておらずに軸方向に貫通する一対の貫通スリット32,32が設けられている。
【0041】
また、各貫通スリット32には、インナ軸部材12から径方向外方に向かって突出する内周側ストッパゴム34が形成されていると共に、アウタ筒部材14から径方向内方に向かって突出する外周側ストッパゴム36が形成されている。そして、これら内周側ストッパゴム34と外周側ストッパゴム36とが、貫通スリット32内の所定の間隙を隔てて径方向で対向位置しており、インナ軸部材12とアウタ筒部材14との、Y軸方向への相対変位量が、相互の当接によって緩衝的に制限されるようになっている。
【0042】
なお、本実施形態では、内周側ストッパゴム34が内周連結ゴム26によって一体形成されていると共に、外周側ストッパゴム36が外周連結ゴム28によって一体形成されている。要するに、本実施形態では、ゴムの加硫成形型において、インナ軸部材12、アウタ筒部材14および中間板22,22の存在下で内周連結ゴム26および外周連結ゴム28のゴム材料を充填して加硫処理を施すことにより、それらインナ軸部材12アウタ筒部材14および中間板22,22を備えた一体加硫成形品として、目的とする防振ブッシュ10を得ることが出来る。また、かかる成形に際しては、公知の2色成形法が採用可能であり、例えばゴムの加硫成形型に対して内周連結ゴム26の材料と外周連結ゴム28の材料とを順次(順不動)に充填した後、同時に加硫処理を行うこと等によって実施され得る。
【0043】
ここにおいて、内周連結ゴム26と外周連結ゴム28とは、中間板22によって区分されており、互いに異なるゴム材料によって形成されている。異なるゴム材料とは、主たるゴムの材質(例えばNRとIRなど)を異ならせても良いが、好適には、主たるゴムの材質を共通にしつつ、配合材などの組成を異ならせることによって実現され得る。それによって、耐熱性能や耐油性能などの基本的な特性を共通化させることが出来る。
【0044】
そして、内周連結ゴム26と外周連結ゴム28の材質を異ならせることにより、内周連結ゴム26のゴム硬度が外周連結ゴム28のゴム硬度に比して大きく設定されている。なお、ゴム硬度は、採用するゴム材料等に応じて、公知の試験方法(例えばJISA規格やショアA規格による硬さ試験等)によって測定することが出来る。好適には、ショアA硬さで10〜30の差が設定される。蓋し、内周連結ゴム26と外周連結ゴム28の硬度差が大きすぎると小さい硬度のゴム(外周連結ゴム28)に歪みが集中し易くなる一方、硬度差が小さすぎると内周連結ゴム26および外周連結ゴム28の両方に歪みが分散し易くなり、何れにしても、目的とする防振性能や耐久性が発揮され難くなるからである。
【0045】
すなわち、上述の如き構造とされた防振ブッシュ10においては、単にインナ軸部材12とアウタ筒部材14とを径方向連結ゴム16により径方向一方向で弾性連結すると共に中間板22を採用したことにより、軸直角2方向でのばね比を大きく設定することができるだけでなく、特定構造の軸方向連結ゴム30と、異なるゴム硬度を有する二種類の内周連結ゴム26および外周連結ゴム28を組み合わせて採用したことにより、以下の如き特別な技術的効果を達成し得たのである。
【0046】
先ず、中間板22で仕切られた内周連結ゴム26と外周連結ゴム28とに異なるゴム硬度を設定し、軸方向連結ゴム30を形成する外周連結ゴム28に比して内周連結ゴム26のゴム硬度を大きくしたことから、径方向のばね特性への悪影響を抑えつつ、軸方向のばね特性のチューニング自由度を確保し得た。即ち、軸方向入力に際しては、軸方向連結ゴム30によるばね硬さが発揮されるが、内周連結ゴム26を介して、中間板22とアウタ筒部材14との間で軸方向連結ゴム30に軸方向入力が及ぼされることから、軸方向ばね特性を大きな自由度で変更設定することが可能となる。その際、内周連結ゴム26の硬度が外周連結ゴム28より大きくされていることにより、軸方向入力が内周連結ゴム26の弾性変形によって必要以上に吸収されてしまうことが避けられて、軸方向連結ゴム30による軸方向ばね特性が効果的に発揮され得るのである。
【0047】
特に本実施形態では、外周連結ゴム28に比して軸方向連結ゴム30の周方向長さが大きくされていることから、外周連結ゴム28による径方向やこじり方向などの防振特性への悪影響を可及的に回避しつつ、軸方向ばね特性を大きな領域までチューニングすることが可能となり、設計自由度の更なる向上が図られている。
【0048】
また、径方向だけでなく、軸方向でも、更にこじり方向でも、非線形のばね特性が効果的に発揮され得る。即ち、径方向の荷重入力時には、軸方向連結ゴム30が剪断変形することから、内周連結ゴム26および外周連結ゴム28のばね特性が支配的になるが、外周連結ゴム28が内周連結ゴム26に比して低ゴム硬度で且つ周方向幅寸法も小さくされていることにより、小荷重状態では外周連結ゴム28による低ばね特性が発揮されると共に、荷重増大に伴って内周連結ゴム26による高ばね特性が発揮されて、全体として非線形なばね特性が実現され得るのである。
【0049】
更にまた、軸方向の荷重入力時には、小荷重状態では内周連結ゴム26の剪断変形に基づく低ばね特性が発揮されると共に、荷重増大に伴って軸方向連結ゴム30による高ばね特性が発揮されて、全体として非線形のばね特性が実現され得る。また、こじり方向やねじり方向の荷重入力時にも、ゴム硬度が積極的に異ならされた内周連結ゴム26および外周連結ゴム28における歪みの相対的な分布(偏在)が図られて、非線形なばね特性が発揮され得るのである。
【0050】
更に、本実施形態では、一対の中間板22,22が互いに独立して形成されている。これにより、中間板が一体構造とされている場合に比べ、内周連結ゴム26や外周連結ゴム28のY方向ばねやZ方向のばね定数の増大を一層効果的に抑えつつ、X方向ばね定数を大きく設定することが可能となる。その結果、X方向とY方向のばね比を一層大きくチューニングすること等も可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はその具体的な記載によって限定的に解釈されない。例えば、中間板は例示の如き円弧の湾曲形状や円筒形状に限定されるものではない。また、中間板の個数は2つである必要はない。中間板が2つ以上の場合、それらの中間板は同一の形状及び同一の大きさである必要はなく、更に径方向等において対称に配置される必要もない。更にまた、凹凸のある中間板を採用してゴムの固着強度を向上させるなど、中間板の形状を任意に設定することにより、防振ブッシュを要求される防振特性にチューニングすることが可能である。
【0052】
また、アウタフランジ部18や中間フランジ部24の傾斜角度を調節することにより、径方向や軸方向など各入力方向のばね特性をチューニングすることも可能である。
【0053】
なお、本発明に係る防振ブッシュ10は自動車だけでなく、鉄道用車両や産業用車両等にも採用され得る。
【符号の説明】
【0054】
10:防振ブッシュ、12:インナ軸部材、14:アウタ筒部材、16:径方向連結ゴム、22:中間板、24:中間フランジ部、26:内周連結ゴム、28:外周連結ゴム、30:軸方向連結ゴム、34:内周側ストッパゴム、36:外周側ストッパゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナ軸部材とアウタ筒部材とが、該インナ軸部材を径方向で挟んだ両側部分においてそれぞれ径方向連結ゴムで連結された防振ブッシュにおいて、
前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との径方向対向面間に中間板が配設されて、前記径方向連結ゴムが該中間板で内周連結ゴムと外周連結ゴムとに区分されて互いに異なるゴム材料で形成されており、該内周連結ゴムよりも該外周連結ゴムの硬度が小さくされている一方、該中間板には一方の端部から径方向に突出して中間フランジ部が設けられており、該中間フランジ部と該アウタ筒部材との軸方向対向面間を連結する軸方向連結ゴムが前記外周連結ゴムと一体形成されていることを特徴とする防振ブッシュ。
【請求項2】
前記内周連結ゴムの周方向長さに比して、前記外周連結ゴムの周方向長さが小さくされている請求項1に記載の防振ブッシュ。
【請求項3】
前記外周連結ゴムの周方向長さに比して、前記軸方向連結ゴムの周方向長さが大きくされている請求項1又は2に記載の防振ブッシュ。
【請求項4】
前記インナ軸部材を径方向に挟んだ両側に位置して、相互に独立する構造とされた一対の前記中間板が配設されており、それぞれの前記径方向連結ゴムに対して各該中間板が固着されている請求項1〜3の何れか1項に記載の防振ブッシュ。
【請求項5】
前記インナ軸部材と前記アウタ筒部材との間において、前記径方向連結ゴムによる連結方向とされた径方向に対して直交する径方向両側で、該インナ軸部材と該アウタ筒部材との径方向で突出するストッパゴムが、前記内周連結ゴム及び/又は前記外周連結ゴムと一体形成されている請求項4に記載の防振ブッシュ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−36550(P2013−36550A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173595(P2011−173595)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】