説明

防振ローラ

【課題】内外の金具ならびに防振弾性体および外周弾性体を有する防振ローラにおいて、径方向ばね定数を可変とする。
【解決手段】内周側にベアリングを保持する内側金具2とその外周側に配置した外側金具4とを両金具の間に配置した防振弾性体5を介して連結するとともに外側金具4の外周面に外周弾性体6を設けた防振ローラ1において、両弾性体5,6にそれぞれ中空部5a,6aを設け、両中空部を連通路10,11を介して互いに連通し、両中空部内にエアー等の圧縮性流体を封入する。連通路は複数設けられ、一部の連通路10は、外側中空部6aから内側中空部5aへ向けての流体の流れを許容する一方向弁12を有し、他の連通路11は反対向きの一方向弁13を有し、両連通路は流体の流量特性が互いに異なるように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振機能を有する回転ローラすなわち防振ローラに関するものである。本発明の防振ローラは例えば、エスカレータのステップローラ、エレベータの昇降を案内するガイドローラ、各種台車の車輪または一般産業機器の動力伝動輪などとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から図5に示すように、内周側にベアリングを保持する内側金具51とこの内側金具51の外周側に配置した外側金具52とを両金具51,52の間に配置した防振弾性体53を介して連結するとともに外側金具52の外周面に外周弾性体54を設ける構造とした防振ローラが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記防振ローラは、相手側部品より受ける荷重や衝撃(以下、単に荷重と称する)を防振弾性体53で緩和して振動を抑えるように作動し、また低荷重時には特に振動を抑え、高荷重時には特に荷重に耐えるように作動する。
【0004】
しかしながら上記防振ローラでは、防振弾性体53および外周弾性体54が共に中実構造のソリッドタイプであることから、振動吸収作用が十分でなく、また低荷重用もしくは高荷重用のどちらかにしか対応できない不都合がある。
【0005】
【特許文献1】特開平5−215127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて、内外の金具ならびに防振弾性体および外周弾性体を有する防振ローラにおいて、径方向ばね定数を可変とし、もって対応範囲が広く、優れた振動吸収作用を発揮することが可能な防振ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による防振ローラは、内周側にベアリングを保持する内側金具と前記内側金具の外周側に配置した外側金具とを前記両金具の間に配置した防振弾性体を介して連結するとともに前記外側金具の外周面に外周弾性体を設けた防振ローラにおいて、前記両弾性体にそれぞれ中空部を設け、前記両中空部を連通路を介して互いに連通し、前記両中空部内にエアー等の圧縮性流体を封入することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項2による防振ローラは、上記した請求項1記載の防振ローラにおいて、連通路は複数設けられ、一部の連通路は、外周弾性体内部の中空部から防振弾性体内部の中空部へ向けての流体の流れを許容し反対向きの流れを遮断する一方向弁を有し、他の連通路は反対に、防振弾性体内部の中空部から外周弾性体内部の中空部へ向けての流体の流れを許容し反対向きの流れを遮断する一方向弁を有し、前記両連通路は流体の流量特性が互いに異なるように設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成を有する本発明の防振ローラにおいては、内側金具、防振弾性体、外側金具および外周弾性体がこの順に並べられるのみでなく、両弾性体にそれぞれ中空部が設けられ、両中空部が連通路を介して互いに連通し、両中空部内にエアー等の圧縮性流体が封入される構造とされている。したがって両弾性体のたわみによる振動吸収作用のほかに、以下の作用が発揮される。
【0010】
すなわち、内側金具がベアリングを介して軸等の取付部品に取り付けられるとともに最外周の外周弾性体がその外周面をもって相手側部品に接触した状態で相手側部品が取付部品に近付く方向に相対変位して当該ローラに径方向荷重が入力すると、外周弾性体が凹むように弾性変形し、これに応じて外周弾性体内部の中空部(以下、外側中空部とも称する)の容積が縮小して圧力が高くなる。したがってこの外側中空部と防振弾性体内部の中空部(以下、内側中空部とも称する)に圧力差が発生することから、外側中空部内の流体が連通路を経由して内側中空部へ移動する。そして、荷重の入力がなくなると、外側中空部の容積が復帰し圧力が低くなって上記とは大小関係が反対の圧力差が発生することから、内側中空部から外側中空部へ流体が戻る。
【0011】
また、荷重入力の当初は、両弾性体が未だあまり圧縮されておらず外側中空部から内側中空部へ流体が移動しやすいことから、防振弾性体のたわみ量が大きく変化し、よって図3のグラフ図のA部に示すように荷重・たわみの相関関係による径方向ばね定数が小さく設定される。その後、流体の移動がつづくと内側中空部の圧力が高まって流体が移動しにくくなることから、同図のB部に示すように径方向ばね定数が大きくなる。したがってA部からB部へかけて径方向ばね定数が大きく立ち上がることになり、これにより径方向ばね定数が可変とされる。この径方向ばね定数の可変は上記したように、入力荷重が小さいときにばね定数が低く、入力荷重が大きいときにばね定数が高いものである。したがって低ばねで振動を抑え、高ばねで荷重に耐えると云う防振ローラの製品特性に合致したものとなる。
【0012】
またこれに加えて、連通路が複数設けられ、一部の連通路に外側中空部から内側中空部へ向けての流体の流れを許容し反対向きの流れを遮断する一方向弁が設けられ、他の連通路に内側中空部から外側中空部へ向けての流体の流れを許容し反対向きの流れを遮断する一方向弁が設けられ、両連通路における流体の流量特性を互いに異なるように設定されると、外側中空部から内側中空部へかけて流体が移動する「行き行程」と、反対に内側中空部から外側中空部へかけて流体が移動する「戻り行程」とで流路が異なり、流量特性も異なることから、特性の差にもとづいて径方向ばね定数のあり様が変更されることになる。例えば「行き行程」での単位時間当たりの流量を大きく設定するとともに「戻り行程」での流量を小さく設定すると、図4のグラフ図に示すように「行き行程」Cと「戻り行程」Dとで作動特性を変えることができ、これにより振動の吸収を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0014】
すなわち、本発明によれば、弾性体のたわみのほかに流体の移動が作動に加わることから、防振ローラの径方向ばね定数を大きく可変とすることができ、低ばねで振動を抑え、高ばねで荷重に耐えると云う防振ローラの製品特性を十分に発揮することができる。また請求項2によれば、流体移動の「行き行程」と「戻り行程」とで特性が変わることから、振動吸収作動を一層大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係る防振ローラ1を中心軸線0と直交する一平面で裁断した断面を示している。また図2は、同ローラ1を中心軸線0を含む一平面で裁断した半裁断面図であって、図1におけるE−E線拡大断面を示している。
【0017】
当該実施例に係るローラ1は、図示するように内周側にベアリング3を保持する内側金具2とこの内側金具2の外周側に配置した外側金具4とを両金具2,4の間に配置した防振弾性体5を介して連結するとともに外側金具4の外周面に外周弾性体6を設けたものであって、両弾性体5,6にそれぞれ中空部5a,6aが設けられ、両中空部5a,6aが連通路10,11を介して互いに連通し、両中空部5a,6a内に圧縮性流体としてエアー(図示せず)が封入されている。
【0018】
内側金具2は、環状体であって、その一端内周部に設けた内向きフランジ部2aと他端内周部に取り付けた止め輪7との間にベアリング3が所要数保持されている。
【0019】
外側金具4は、同じく環状体であって、内側金具2の外周側に同軸上に配置されている。またこの外側金具4の円周上1箇所には、後記する挿入金具9を差し込み固定するための径方向の貫通穴4aが設けられている。
【0020】
防振弾性体5は、ウレタンゴムによって環状に成形され、その内周面をもって内側金具2に焼付け固定されるとともにその外周面をもって外側金具4に焼付け固定されている。またこの防振弾性体5の内部には内側中空部(内側エアー室とも称する)5aが全周に亙って設けられている。また一方の軸方向端面部には、内部にエアーを注入するための常時閉形の注入弁(空気弁とも称する)8が設けられている。以下この防振弾性体5をその材質からして、防振ウレタンとも称する。
【0021】
外周弾性体6は、同じくウレタンゴムによって環状に成形され、その一端内周部および他端内周部に設けた内向きフランジ状の端面部6bをもって外側金具4に焼付け固定されている。またこの外周弾性体6の内部には外側中空部(外側エアー室とも称する)6aが全周に亙って設けられている。この外周弾性体6の外周面は作動に際してのローラ転動面6cとされる。以下この外周弾性体6をその材質からして、外周ウレタンとも称する。
【0022】
上記外側金具4に設けた径方向の貫通穴4aに挿入金具9が差し込み固定されており、この挿入金具9に外側中空部6aおよび内側中空部5aを連通するための連通路10,11が複数設けられている。
【0023】
挿入金具9は、筒状体9aの一端外周部に外向きフランジ状の突出部9bを設けたものであって、上記貫通穴4aに外側金具4の径方向外方から圧入されている。金具9の先端部9cは防振ウレタン5の外周膜を貫通して内側中空部5aに達している。
【0024】
上記複数の連通路10,11のうち、第1の連通路10は、筒状体9aの内周穴によって構成されており、その内側開口部に、外側中空部6aから内側中空部5aへ向けてのエアーの流れを許容するとともに反対向きの流れを遮断する第1の一方向弁12が設けられている。一方向弁12としては例えばリード弁が用いられる。
【0025】
また、上記複数の連通路10,11のうち、第2の連通路11は、筒状体9aの肉厚内に設けた小孔によって構成されており、その外側開口部に、内側中空部5aから外側中空部6aへ向けてのエアーの流れを許容するとともに反対向きの流れを遮断する第2の一方向弁13が設けられている。第2の連通路11は複数設けられており、図では筒状体9aの円周上対称位置に2箇所設けられ、それぞれに第2の一方向弁13が設けられている。一方向弁13としては例えばリード弁が用いられる。
【0026】
また、第1の連通路10および第2の連通路11は流量特性が互いに異なるように設定されており、具体的には、第1の連通路10のほうが第2の連通路11よりも単位時間当たりのエアー流量が大きく設定されている。
【0027】
上記構成の防振ローラ1においては、内側金具2、防振ウレタン5、外側金具4および外周ウレタン6が内周側から外周側へこの順序で並べられるが、それのみでなく両ウレタン5,6にそれぞれ中空部5a,6aが設けられ、両中空部5a,6aが連通路10,11を介して互いに連通し、両中空部5a,6a内にエアーが封入されている。したがって両ウレタン5,6のたわみによる振動吸収作用のほかに、以下の作用が発揮される。
【0028】
すなわち、内側金具2がベアリング3を介して軸(図示せず)に取り付けられるとともに外周ウレタン6がその外周面の転動面6cをもって円周上1箇所にて相手側部品21に接触した状態で、相手側部品21が軸に近付く方向に相対変位して当該ローラ1に径方向荷重が入力すると、外周ウレタン6が円周上1箇所の荷重入力部にて径方向内方へ凹むように弾性変形し、これに応じて外側中空部6aの容積が縮小してその圧力が高くなる。したがって外側中空部6aおよび内側中空部5aに圧力差が発生することから、外側中空部6a内のエアーが第1の連通路10を経由して内側中空部5aへ移動する。そして、荷重の入力がなくなると、外側中空部6aの容積が復帰し圧力が低くなって上記とは大小関係が反対の圧力差が発生することから、内側中空部5aから第2の連通路11を経由して外側中空部6aへエアーが戻る。
【0029】
荷重入力の当初は、両ウレタン5,6が未だあまり圧縮されておらず外側中空部6aから内側中空部5aへエアーが移動しやすいことから、防振ウレタン5のたわみ量が大きく変化し、よって図3のA部に示したように荷重・たわみの相関関係による径方向ばね定数が小さく設定される。その後、エアーの移動がつづくと内側中空部5aの圧力が高まってエアーが移動しにくくなることから、同図のB部に示したように径方向ばね定数が徐々に大きくなる。したがってA部からB部へかけて径方向ばね定数が大きく立ち上がり、よって径方向ばね定数が可変とされる。ばね定数の可変は上記したように、入力荷重が小さいときはばね定数が低く、入力荷重が大きいときはばね定数が高いものである。したがって低ばねで柔らかく振動を抑え、高ばねで硬く荷重に耐えると云う防振ローラ1の製品特性に合致したものである。
【0030】
またこれに加えて、連通路として第1および第2の連通路10,11が並列に設けられ、第1の連通路10に外側中空部6aから内側中空部5aへ向けてのエアーの流れを許容する第1の一方向弁12が設けられ、第2の連通路11に内側中空部5aから外側中空部6aへ向けてのエアーの流れを許容する第2の一方向弁13が設けられ、両連通路10,11におけるエアーの流量特性を互いに異なるように設定され、具体的には、第1の連通路10のほうが第2の連通路11よりも単位時間当たりのエアー流量が大きく設定されている。したがって外側中空部6aから内側中空部5aへかけてエアーが移動する「行き行程」と、内側中空部5aから外側中空部6aへかけてエアーが移動する「戻り行程」とで流路が異なり、流量特性も異なることから、特性の差にもとづいて径方向ばね定数のあり様が変更され、具体的には図4に示したように「行き行程」Cと「戻り行程」Dとで作動特性を変えることができる。したがって振動吸収性能を一層大きくすることが可能とされている。
【0031】
尚、上記ローラ1の作動特性は、ウレタン5,6の弾性のほか、中空部5a,6aの容積、封入するエアー圧力、連通路10,11の流量、一方向弁12,13の絞り量等によって調整することが可能である。弾性体の種類は必ずしもウレタンに限られず、その他のエラストマー類などであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例に係る防振ローラの縦断面図
【図2】同防振ローラの横拡大半裁断面図
【図3】同防振ローラの特性を示すグラフ図
【図4】同防振ローラの特性を示すグラフ図
【図5】従来例に係る防振ローラの半裁断面図
【符号の説明】
【0033】
1 防振ローラ
2 内側金具
2a フランジ部
3 ベアリング
4 外側金具
4a 貫通穴
5 防振弾性体(防振ウレタン)
5a 内側中空部
6 外周弾性体(外周ウレタン)
6a 外側中空部
6b 端面部
6c 転動面
7 止め輪
8 注入弁
9 挿入金具
9a 筒状体
9b 突出部
9c 先端部
10 連通路(第1の連通路)
11 連通路(第2の連通路)
12 一方向弁(第1の一方向弁)
13 一方向弁(第2の一方向弁)
21 相手側部品
0 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側にベアリングを保持する内側金具と前記内側金具の外周側に配置した外側金具とを前記両金具の間に配置した防振弾性体を介して連結するとともに前記外側金具の外周面に外周弾性体を設けた防振ローラにおいて、
前記両弾性体にそれぞれ中空部を設け、前記両中空部を連通路を介して互いに連通し、前記両中空部内にエアー等の圧縮性流体を封入することを特徴とする防振ローラ。
【請求項2】
請求項1記載の防振ローラにおいて、
連通路は複数設けられ、一部の連通路は、外周弾性体内部の中空部から防振弾性体内部の中空部へ向けての流体の流れを許容し反対向きの流れを遮断する一方向弁を有し、他の連通路は反対に、防振弾性体内部の中空部から外周弾性体内部の中空部へ向けての流体の流れを許容し反対向きの流れを遮断する一方向弁を有し、前記両連通路は流体の流量特性が互いに異なるように設定されていることを特徴とする防振ローラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−2025(P2010−2025A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162943(P2008−162943)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】