説明

防振吊木及び防音床構造

【課題】軸組工法であるか枠組壁工法であるかに関係なく、天井材を上部構造体に精度良くしかも簡単に吊持ち支持する。防振吊木と相俟って防振及び防音対策の向上を図り得る防音床構造を提供する。
【解決手段】階上の床材側の上部構造体に取り付けられる金属製第1取付プレート2と、階下の天井材裏面の天井下地材に取り付けられる金属製第2取付プレート3と、第1取付プレート2と第2取付プレート3との間に介在されて両者を一体に連結するゴム製防振ブロック9とを備えている。防振ブロック9には、軸組工法による建物の施工時に天井材の上部構造体に対する位置出し用の第1目印9aが設けられている。第2取付プレート3には、枠組壁工法による建物の施工時に天井材の上部構造体に対する位置出し用の第2目印7bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防振吊木及び該防振吊木が適用された防音床構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、階下の天井材を階上の床材側の上部構造体に吊持ち支持する防振吊木に関して出願し、既に特許権を取得している(特許文献1,2参照)。
【0003】
この防振吊木は、階上の床材側の上部構造体に取り付けられる金属製上側取付プレートと、階下の天井材裏面の野縁に取り付けられる金属製下側取付プレートと、上記上側取付プレートと上記下側取付プレートとの間に介在されて両者を一体に連結するゴム製防振ブロックとを備え、階上の床材側で発生した振動を上記防振ブロックで吸収して階下の天井材に伝わり難くして防振及び防音効果を発現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2905699号公報(段落0023欄〜段落0028欄、図1,2)
【特許文献2】特許第2941663号公報(段落0020欄〜段落0023欄、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建物の構造として、在来工法である軸組工法と枠組壁工法(2×4工法)とがある。上記軸組工法による建物では、吊木受材を設けてこれに上記上側取付プレートを取り付け、下側取付プレートを天井材裏面の天井下地材に取り付けている。
【0006】
一方、枠組壁工法による建物では、上部構造体の床根太の上下方向の寸法は枠材(周囲材)の上下方向の寸法とほぼ等しいので、床根太に直接に上側取付プレートを取り付け、下側取付プレートを天井材裏面の天井下地材に取り付けている。
【0007】
上記の軸組工法の場合、吊木受材は枠組壁工法の場合の床根太に比べて上下方向の寸法が短く設定されている。これは床根太と同程度に長くすると、本来、上部構造体の一部ではない吊木受材が大型化して材料費が嵩み、コストダウンを図れなくなることから、一般には採用されていない。
【0008】
したがって、軸組工法と枠組壁工法とで防振吊木の上下方向の取付間隔が異なり、高さ決めの寸法取りが必要で、防振吊木を吊木受材(床根太)及び天井下地材に精度良く取り付けるのに手間取り、しかも天井での作業であるため施工性が低下することになる。
【0009】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軸組工法であるか枠組壁工法であるかに関係なく、天井材を上部構造体に精度良くしかも簡単に吊持ち支持することである。さらには、防振吊木と相俟って防振及び防音対策の向上を図り得る防音床構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、この発明は、防振吊木に目印を付けたことと、床材に遮音下地材を介在させたことを特徴とする。
【0011】
具体的には、この発明は、防振吊木及び防音床構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】
すなわち、第1の発明は、前者の防振吊木に関し、階上の床材側の上部構造体に取り付けられる金属製上側取付プレートと、階下の天井材裏面の天井下地材に取り付けられる金属製下側取付プレートと、上記上側取付プレートと上記下側取付プレートとの間に介在されて両者を一体に連結するゴム製防振ブロックとを備え、上記天井材を上記上部構造体に吊持ち支持する防振吊木であって、上記上側取付プレート又は上記防振ブロックには、軸組工法による建物の施工時に上記天井材の上部構造体に対する位置出し用の上側目印が設けられ、上記下側取付プレートには、枠組壁工法による建物の施工時に上記天井材の上部構造体に対する位置出し用の下側目印が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第2〜第4の発明は、後者の防音床構造に関し、そのうち、第2の発明は、軸組工法による建物の上部構造体に支持された床材と、裏面に天井下地材が取り付けられ、上記上部構造体の下方に上記床材と離間して配置された天井材と、上記上部構造体側に設けられた吊木受材と、請求項1に記載の防振吊木とを備え、上記床材は、床仕上材、遮音下地材及び床下地材が上から順に積層されてなり、上記防振吊木の上側取付プレートが上記吊木受材に取り付けられるとともに、下側取付プレートが上記天井下地材に取り付けられて、上記天井材を上記防振吊木で上部構造体に吊持ち支持するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、枠組壁工法による建物の上部構造体に支持された床材と、裏面に天井下地材が取り付けられ、上記上部構造体の下方に上記床材と離間して配置された天井材と、請求項1に記載の防振吊木とを備え、上記床材は、床仕上材、遮音下地材及び床下地材が上から順に積層されてなり、上記防振吊木の上側取付プレートが上記上部構造体を構成する床根太に取り付けられるとともに、下側取付プレートが上記天井下地材に取り付けられて、上記天井材を上記防振吊木で上部構造体に吊持ち支持するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、上記遮音下地材は、内部に電熱線が張り巡らされた床暖房用のパネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、軸組工法による建物の施工時には、上側取付プレート又は防振ブロックに設けられた上側目印を基準に天井材の上部構造体に対する位置出しが行われ、一方、枠組壁工法による建物の施工時には、下側取付プレートに設けられた下側目印を基準に天井材の上部構造体に対する位置出しが行われる。このように、防振吊木の上下方向の取付間隔が異なる軸組工法と枠組壁工法とに1つの防振吊木を共用できるとともに、上記上側目印及び下側目印を基準とすることで、高さ決めの寸法取りがなくなり、天井材を上部構造体に精度良くしかも簡単に吊持ち支持することができる。
【0017】
第2の発明によれば、軸組工法による建物の防音床構造において、上側取付プレートが吊木受材に、下側取付プレートが天井下地材にそれぞれ取り付けられて、天井材を上部構造体に吊持ち支持する防振吊木の防振ブロックと、床材に介在する遮音下地材との2箇所で、階上の床材側で発生した振動を吸収して階下の天井材に伝わり難くして防振及び防音を向上させることができる。
【0018】
第3の発明によれば、枠組壁工法による建物の防音床構造において、上側取付プレートが床根太に、下側取付プレートが天井下地材にそれぞれ取り付けられて、天井材を上部構造体に吊持ち支持する防振吊木の防振ブロックと、床材に介在する遮音下地材との2箇所で、階上の床材側で発生した振動を吸収して階下の天井材に伝わり難くして防振及び防音を向上させることができる。
【0019】
第4の発明によれば、遮音下地材の内部に張り巡らされた電熱線により、床暖房対応の防音床構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る防振吊木の正面図である。
【図2】実施形態1係る防振吊木の側面図である。
【図3】実施形態1係る防振吊木が適用された軸組工法による建物の防音床構造の説明図である。
【図4】(a)は図3の防振吊木部分の拡大正面図、(b)は(a)の側面図である。
【図5】実施形態1係る防振吊木が適用された枠組壁工法(2×4工法)による建物の防音床構造の説明図である。
【図6】(a)は図5の防振吊木部分の拡大正面図、(b)は(a)の側面図である。
【図7】床衝撃音レベルのデータである。
【図8】床暖房対策を施した遮音下地材の構成図である。
【図9】実施形態2に係る防振吊木の正面図である。
【図10】実施形態2に係る防振吊木の側面図である。
【図11】実施形態2に係る防振吊木が適用された軸組工法による建物の防音床構造の説明図である。
【図12】(a)は図11の防振吊木部分の拡大正面図、(b)は(a)の側面図である。
【図13】実施形態2に係る防振吊木が適用された枠組壁工法(2×4工法)による建物の防音床構造の説明図である。
【図14】(a)は図13の防振吊木部分の拡大正面図、(b)は(a)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1及び図2は実施形態1に係る防振吊木1を、図3及び図4は上記防振吊木1が適用された軸組工法による建物の防音床構造を、図5及び図6は上記防振吊木1が適用された枠組壁工法(2×4工法)による建物の防音床構造をそれぞれ示す。
【0023】
まず、防音床構造について説明した後、防振吊木1について説明する。
【0024】
<軸組工法による建物の防音床構造>
図3及び図4において、11は上部構造体、12は該上部構造体11を構成する梁(周囲材)、15は上記上部構造体11に支持された階上の床材である。
【0025】
14は、上記上部構造体11側で上記床材15の下方に並設された吊木受材であり、該吊木受材14の下端は上記梁12の下端よりも若干奥まった上方に位置している。これは、吊木受材14は上部構造体11ではないため、あまり大きくすると材料費が嵩み、コストダウンを図れなくなるからである。
【0026】
上記床材15は、床仕上材16、遮音下地材17及び床下地材18が上から順に積層されて構成されている。
【0027】
上記床仕上材16は、図3では単層構造として表しているが、樹脂化粧シートと、基材と、樹脂マットとが上から順に積層されて構成され、クッション材が用いられた場合に比べて適度な硬さを備えているものが防音性、歩行性の点で好ましい。
【0028】
上記樹脂化粧シートは表面平滑なものであればよく、例えば、樹脂含浸紙、オレフィ
ン系樹脂シート、ポリエチレンテレフタレート樹脂シート等、またはこれらのシートを複合したもの、さらには、これらのシートの表面に塗装加工を施したシート状物を使用することができる。また、上記床材15に基材として後述する木質繊維板を用いる場合には、基材が湿気の影響を受けないように、防湿性があり、かつ強度に優れたシートを用いることが好ましい。
【0029】
上記基材は、一般に床材に使用される可撓性を有する材料であればよく、例えば、合成樹脂系や木質系の木質基材が使用できる。
【0030】
合成樹脂系の基材としては、塩化ビニル系樹脂、合成ゴム系樹脂、オレフィン系樹脂、これらの樹脂に充填材を混練したもの等が好適に使用される。充填材としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミ等の高比重無機充填剤や木粉が好適である。
【0031】
木質基材としては、合板やパーティクルボード等を使用可能であるが、床材の強度及び可撓性を考慮した場合、木質繊維板を用いることが好ましい。木質繊維板は、比重が0.4以上でかつ1.0以下であることが好ましく、さらには、乾式成形された中比重木質繊維板(MDF)がより好ましい。この乾式成形により成形したMDFは、湿式抄造により成形した低比重繊維板(インシュレーションボード)や高比重木質繊維板(HDF)に比べて基材3の分割が発生しやすくなる。また、木質繊維板は、厚みが2.0mm以上でかつ3.0mm以下であるものが好ましい。厚みが2.0mm未満であれば、床材に使用した際に、表面側からの衝撃による凹み量が大きくなってしまい、厚みが3.0mmよりも大きいものであれば、床材1の可撓性が劣ってしまうので好ましくない。
【0032】
上記樹脂マットは、上記基材として木質基材を使用する場合に特に必要であり、裏担保できるものであればよい。例えば、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ラテックス系樹脂、ポリエステル系樹脂等、また、これらの樹脂の変性物、あるいは各種再生プラスチック等を使用することができる。この樹脂マットは、使用する施工用接着剤の接着適正を考慮して、その組み合わせにより選択して使用する。接着性と品質安定性の観点からは、塩化ビニル樹脂系樹脂マットが好適に用いられる。なお、上記複層構造の床仕上材以外にも、一般的に使用される床材を用いることができる。
【0033】
上記遮音下地材17も、図3では単層構造として表しているが、PP(ポリプロピレン)板と、低密度PE(ポリエチレン)短繊維不織布と、スパンボンド方式により生産された高密度不織布とが上から順に積層されて構成されている。この構造により、適度な弾力性でソフトな歩行感が得られ、床の冷え込みも緩和できる。なお、上記PE短繊維不織布の代わりにPET、PP、ナイロン等の短繊維やウレタンフォームでもよい。
【0034】
上記床下地材18も、図3では単層構造として表しているが、本実施形態では、ALC(軽量気泡コンクリート)パネルと、構造用合板(OSB等)とが上から順に積層されて構成されている。なお、床下地材は一般的な構造ものを用いてもよい。
【0035】
上記上部構造体11の下方には、石膏ボード等からなる天井材19が上記床材15と離間して配置されている。この天井材19は、図3では単層構造であるが、2枚重ねの積層構造であってもよい。なお、天井材19の表面は、クロスやロックウール等の吸音板を貼って仕上げをする。この天井材19の裏面には、複数の天井下地材(野縁20及び野縁受材21)が所定間隔をあけて取り付けられている。図3中、23は天井材19上に敷設されたグラスウールやロックウール等の断熱材である。
【0036】
そして、上記天井材19は、複数の上記防振吊木1で上部構造体11に吊持ち支持されている。具体的には後述するが、防振吊木1の第1取付プレート2が吊木受材14に釘Nで取り付けられるとともに、第2取付プレート3が野縁受材21に釘Nで取り付けられて、天井材19が防振吊木1で上部構造体11に吊持ち支持されている。
【0037】
<枠組壁工法(2×4工法)による建物の防音床構造>
この防音床構造は、上部構造体11の一部を構成する床根太13の下端と枠材(周囲材)22の下端とがほぼ同じ高さ位置に設定されている。
【0038】
また、防振吊木1の第1取付プレート2が床根太13に釘Nで取り付けられるとともに、第2取付プレート3が野縁20に釘Nで取り付けられて、天井材19が防振吊木1で上部構造体11に吊持ち支持されている。
【0039】
そのほかは、上記の<軸組工法による建物の防音床構造>と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0040】
<防振吊木1>
防振吊木1は、階上の床材15側の上部構造体11に取り付けられる金属製上側取付プレートとしての第1取付プレート2と、階下の天井材19裏面の天井下地材(野縁受材21又は野縁20)に取り付けられる金属製下側取付プレートとしての第2取付プレート3とを備えている。
【0041】
上記第1取付プレート2は、略L形状のプレート本体部4と、該プレート本体部4下端から下方に垂設され、軸部5a下端両側に係止片部5bが張り出し形成された逆T形状のフック部5とで一体に形成され、上記プレート本体部4の上端側には2つの挿通孔4aが形成されている。この第1取付プレート2は、矩形金属板材のプレス成形品である。
【0042】
一方、上記第2取付プレート3は、2つの鉛直プレート部6,7を上下に配置して上側の第1鉛直プレート部6の下端と、下側の第2鉛直プレート部7の上端とを水平プレート部8で一体に連結して形成され、上記第2鉛直プレート部7の下端側にも2つの挿通孔7aが形成されている。上記第1鉛直プレート部6は、上記第1取付プレート2のプレート本体部4前側でその上端部分を除く下側部分と対面し、上記水平プレート部8には長孔8aが形成されている。そして、上記第1取付プレート2のフック部5の軸部5aが上記長孔8aに貫挿されている。この長孔8aの長径寸法は、上記フック部5の係止片部5bの長さよりも短く設定されている。この第2取付プレート3も、矩形金属板材のプレス成形品である。
【0043】
上記第1取付プレート2のプレート本体部4中程と、上記第2取付プレート3の第1鉛直プレート部6との間には、両者を一体に連結する直方体形状のゴム製防振ブロック9が介在されている。そして、例えば火災で上記防振ブロック9が焼けて破損した場合には、天井材19が落下しないように第2取付プレート3のフック部5の係止片部5bが上記長孔8a外周りに係止するようになっている。
【0044】
上記防振ブロック9の両側面には、軸組工法による建物の施工時に上記天井材19の上部構造体11である梁12下端に対する位置出し用の上側目印としての第1目印9aが一体に突設されている。なお、この第1目印9aは第1取付プレート2に設けてもよい。
【0045】
一方、上記第2取付プレート3の第2鉛直プレート部7上端寄り両側には、枠組壁工法による建物の施工時に上記天井材19の上部構造体である枠材22下端に対する位置出し用の下側目印としての第2目印7bが切欠き形成されている。
【0046】
このように構成された防振吊木1を用いて天井材19を上部構造体11に吊持ち支持する際、軸組工法による建物の施工時には、防振ブロック9(第1取付プレート2)の第1目印9aを基準に天井材19の上部構造体11(梁12)に対する位置出しを行って釘Nを挿通孔4aから吊木受材14に打ち込み、第1取付プレート2を吊木受材14に固定する。一方、枠組壁工法による建物の施工時には、防振ブロック9(第2取付プレート3)の第2目印7bを基準に天井材19の上部構造体(枠材22)に対する位置出しを行って釘Nを挿通孔7aから野縁20に打ち込み、第2取付プレート3を野縁20に固定する。こうすることで、防振吊木1の上下方向の取付間隔が異なる軸組工法と枠組壁工法とに1つの防振吊木1を共用できるとともに、上記第1目印9a及び第2目印7bを基準とすることで、高さ決めの寸法取りをすることなく、天井材19を上部構造体11に精度良くしかも簡単に吊持ち支持することができる。
【0047】
また、軸組工法による建物の防音床構造において、第1取付プレート2が吊木受材14に、第2取付プレート3が野縁受材21を介して野縁20にそれぞれ取り付けられて、天井材19を上部構造体11に吊持ち支持する防振吊木1の防振ブロック9と、床材15に介在する遮音下地材17とにより、階上の床材15側で発生した振動を2箇所で吸収して階下の天井材19に伝わり難くして防振及び防音を向上させることができる。
【0048】
また、枠組壁工法による建物の防音床構造において、第1取付プレート2が床根太13に、第2取付プレート3が野縁20にそれぞれ取り付けられて、天井材19を上部構造体11に吊持ち支持する防振吊木1の防振ブロック9と、床材15に介在する遮音下地材17とにより、階上の床材15側で発生した振動を2箇所で吸収して階下の天井材19に伝わり難くして防振及び防音を向上させることができる。なお、この防音床構造では、野縁20に階上の振動が伝わらないように野縁20を第1取付プレート2の係止片部5bに接触しないようにしている。
【0049】
次に、床衝撃音レベルのデータを図7に示す。
【0050】
このデータによると、<軸組工法による建物の防音床構造>では、防振吊木1及び遮音下地材17が共にある実施例1の方が、防振吊木1及び遮音下地材17が共にない比較例1に比べて、軽量床衝撃音レベル及び重量床衝撃音レベルが共に優れていた。
【0051】
また、<枠組壁工法(2×4工法)による建物の防音床構造>においても、防振吊木1及び遮音下地材17が共にある実施例2の方が、遮音下地材17はあるが防振吊木1のない比較例2に比べて、軽量床衝撃音レベル及び重量床衝撃音レベルが共に優れていた。
【0052】
図8は床暖房対策を施した遮音下地材17の構成図を示す。
【0053】
この遮音下地材17は、内部に電熱線17dが張り巡らされた床暖房用のパネルである。例えば、合成樹脂低発泡体(PET、PP、PE等)17aと、アルミ箔17bと、低密度不織布(PET、PP、PE、ナイロン等)17cと、電熱線17dと、高密度不織布(PET、PP、PE、ナイロン等)17eとの積層体で構成され、上記合成樹脂低発泡体17aの上には床仕上材16が積層されている。
【0054】
したがって、この遮音下地材17を用いた床材15を採用すれば、特別な施工を要することなく、遮音下地材17の内部に張り巡らされた電熱線17dにより、床暖房対応の防音床構造とすることができる。
【0055】
なお、防振吊木1を上記とは逆に上下方向に180°向きを変えて使用してもよい。この場合には、上記第2取付プレート3が上側取付プレートになるとともに、上記第1取付プレート2が下側取付プレートになり、第2取付プレート3(上側取付プレート)の第2目印7bが上側目印になるとともに、第1取付プレート2(下側取付プレート)側の第1目印9aが下側目印になる。
【0056】
(実施形態2)
図9及び図10は実施形態2に係る防振吊木1を、図11及び図12は上記防振吊木1が適用された軸組工法による建物の防音床構造を、図13及び図14は上記防振吊木1が適用された枠組壁工法(2×4工法)による建物の防音床構造をそれぞれ示す。
【0057】
実施形態2に係る防振吊木1は、第1取付プレート(上側取付プレート)2と第2取付プレート(下側取付プレート)3とを備え、第1取付プレート2に第1目印(上側目印)9aが、第2取付プレート3に第2目印(下側目印)7bがそれぞれ設けられていることに関して実施形態1と同様であるが、上記第2取付プレート3における第2鉛直プレート部7の一側辺で第2目印7bより下側に、第3鉛直プレート部10が第2鉛直プレート部7と直交する方向に延びるように一体に形成されている点で実施形態1と異なる。この第3鉛直プレート部10にも2つの挿通孔10aが形成されている。防振吊木1において、これ以外の同一構成箇所には同一の符号を付して詳細な説明を割愛している。
【0058】
また、<軸組工法による建物の防音床構造(図11参照)>及び<枠組壁工法(2×4工法)による建物の防音床構造(図13参照)>は、床材15を構成する遮音下地材17がある点を含めて実施形態1と同様であるが、後者の<枠組壁工法(2×4工法)による建物の防音床構造>を示す図13では、野縁20は実施形態1の図5の野縁20とは直交する方向(紙面表裏方向)に延びている。防音床構造に関しても、これ以外の同一構成箇所には同一の符号を付して詳細な説明を割愛している。
【0059】
そして、上記第3鉛直プレート部10は、<軸組工法による建物の防音床構造>では、図11及び図12に示すように、野縁受材21から離れて取付けには関与していないが、<枠組壁工法(2×4工法)による建物の防音床構造>では、図13及び図14に示すように、野縁20に沿わされて釘Nを挿通孔10aから野縁20に打ち込むことで野縁20に固定されている。
【0060】
したがって、この実施形態2では、上記実施形態1と同様の効果を奏することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明は、防振吊木及び該防振吊木及が適用された防音床構造について有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 防振吊木
2 第1取付プレート(上側取付プレート)
3 第2取付プレート(下側取付プレート)
7b 第2目印(下側目印)
9 防振ブロック
9a 第1目印(上側目印)
11 上部構造体
13 床根太
14 吊木受材
15 床材
16 床仕上材
17 遮音下地材
17d 電熱線
18 床下地材
19 天井材
20 野縁(天井下地材)
21 野縁受材(天井下地材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階上の床材側の上部構造体に取り付けられる金属製上側取付プレートと、
階下の天井材裏面の天井下地材に取り付けられる金属製下側取付プレートと、
上記上側取付プレートと上記下側取付プレートとの間に介在されて両者を一体に連結するゴム製防振ブロックとを備え、
上記天井材を上記上部構造体に吊持ち支持する防振吊木であって、
上記上側取付プレート又は上記防振ブロックには、軸組工法による建物の施工時に上記天井材の上部構造体に対する位置出し用の上側目印が設けられ、
上記下側取付プレートには、枠組壁工法による建物の施工時に上記天井材の上部構造体に対する位置出し用の下側目印が設けられていることを特徴とする防振吊木。
【請求項2】
軸組工法による建物の上部構造体に支持された床材と、
裏面に天井下地材が取り付けられ、上記上部構造体の下方に上記床材と離間して配置された天井材と、
上記上部構造体側に設けられた吊木受材と、
請求項1に記載の防振吊木とを備え、
上記床材は、床仕上材、遮音下地材及び床下地材が上から順に積層されてなり、
上記防振吊木の上側取付プレートが上記吊木受材に取り付けられるとともに、下側取付プレートが上記天井下地材に取り付けられて、上記天井材を上記防振吊木で上部構造体に吊持ち支持するように構成されていることを特徴とする防音床構造。
【請求項3】
枠組壁工法による建物の上部構造体に支持された床材と、
裏面に天井下地材が取り付けられ、上記上部構造体の下方に上記床材と離間して配置された天井材と、
請求項1に記載の防振吊木とを備え、
上記床材は、床仕上材、遮音下地材及び床下地材が上から順に積層されてなり、
上記防振吊木の上側取付プレートが上記上部構造体を構成する床根太に取り付けられるとともに、下側取付プレートが上記天井下地材に取り付けられて、上記天井材を上記防振吊木で上部構造体に吊持ち支持するように構成されていることを特徴とする防音床構造。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の防音床構造において、
上記遮音下地材は、内部に電熱線が張り巡らされた床暖房用のパネルであることを特徴とする防音床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−197654(P2012−197654A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64180(P2011−64180)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】