説明

防振器用試験装置

【課題】 防振器の伸縮動と試験装置の伸縮駆動との動作方向を一致させて、試験の精度を向上させる試験装置を提供すること。
【解決手段】 防振器Sに用いられる試験装置1の本体7は、モータ11駆動のねじ付き回転軸13にナット体14を螺合し、このナット体14に摺動杆15を固定し、ロードセル16を介して防振器Sの第2の支持部材S2に着脱自在に連結させる。台枠2は、一端部に防振器Sを着脱自在に固定し、他端部に防振器Sの伸縮方向に回転軸13の軸線を一致させて本体7を固定するように、防振器Sと本体とを直列に配置する。また、ロードセル16を防振器Sの伸縮動と同一軸線上に配置する。防振器取付部2bに固定した防振器Sの第2の支持部材S2との連結位置を調整するために、本体取付部2aに本体7を固定するボルト8aを挿通する調整孔3aを防振器Sの伸縮方向に複数並べて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所や化学プラント等において、配管と構築物との間等に介設されるメカニカル防振器の作動試験に用いられる可搬型の試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
相対的に伸縮可能に結合する第1,第2の支持部材が支持体と被支持体に夫々連結され、第1の支持部材と第2の支持部材との軸線方向の低加速度的な伸縮変位を許容し、かつ高加速度的な伸縮変位を抑制する防振器がある。従来、この種の防振器の適正な防振動作を検査して性能を確認するための試験装置が特許文献1に記載されている。この試験装置は、第1の支持部材と第2の支持部材との間に装着して、一方の支持部材を往復動させて防振器を伸縮駆動する。試験装置は、取付け部材を介して防振器の第1の支持部材の大径部の側方に着脱自在に固定されるケースを備えている。取付け部材は、ケースの外側面に固定されるブロックと、支持部材の大径部をその軸方向の両端から挟み込む対向一対の押え板と、両押え板を締め付けるためにブロック及び両押え板を貫通するボルトと、これに螺合するナットとを備えている。ケース内には、第1,第2の支持部材の軸線と平行に回転軸を回転自在に支持し、その端部にエンコーダ付きのモータの軸を結合し、また回転軸にはナット体を螺合させ、このナット体に軸線方向に移動自在の摺動杆を固定し、摺動杆にロードセルを介して防振器の第2の支持部材を連結する。ロードセルに結合する引き手は、横方向に延びる接続金具を介して側方の防振器の第2の支持部材に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−94582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の試験装置は、試験対象の防振器に対して並列的に接続され、防振器の軸線と試験装置の駆動方向が一致していないため、防振器に曲げモーメントが発生し、引っ張り、圧縮荷重の正確な数値が得難い。
そこで、本発明は、防振器の伸縮動と試験装置の伸縮駆動との動作方向を一致させて、試験の精度を向上させる試験装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、上記課題を解決するため、防振器Sに用いられる試験装置1は、ケース10内に回転自在に架設したねじ付き回転軸13に、これを回転駆動するエンコーダ12付きのモータ11の軸11aを結合し、回転軸13のねじ部にナット体14を螺合し、このナット体14に一端を結合し、他端をケース10の外においてロードセル16を介して、防振器Sの第2の支持部材S2に着脱自在に摺動杆15を連結した本体7と、一端部に防振器Sが着脱自在に固定される防振器取付部2bを有し、他端部に防振器Sの伸縮方向に回転軸13の軸線を一致させて本体7を固定する本体取付部2aを有し、防振器Sと本体とを直列に配置する台枠2とを具備させ、ロードセル16を防振器Sの伸縮動と同一軸線上に配置させた。
防振器取付部2bに取り付けた防振器Sの第2の支持部材S2との連結位置を調整するために、本体取付部2aに本体7を固定するボルト8aを挿通する複数の調整孔3aを防振器Sの伸縮方向に並べて設けた。
防振器取付部2bは、防振器Sの第1の支持部材S1周りを囲むように防振器Sの伸縮方向に延びた4本のねじ付き支持棒20の一端部を台枠2に固定し、枠台2に第1挟持片19を固定し、防振器Sの第1の支持部材S1の大径部の一端を受けるものとし、支持棒20が貫通する第2挟持片21を、支持棒20のねじ部に螺合する止めナット23で固定して、防振器Sの第1の支持部材S1の大径部の他端を受けるものとした。
枠台2に枠片18を設けて、防振器Sの第1の支持部材S1の径に応じて、支持棒20の相互間隔を変更するために支持棒20を横方向に移動させる長孔18aを設けた。
枠片18に、防振器Sの第2の支持部材S2を貫通させる開口付き治具24を着脱可能に固定し、この開口付き治具24に防振器Sの大径部の一端を嵌合して防振器Sを所定の軸線上に位置決めする円弧状凹部24bを設けた。
第1挟持片19に、防振器Sの第1の支持部材S1の大径部の一端が嵌合して防振器Sを所定の軸線上に位置決めする円弧状凹部19a,19bを設けた。
円弧状凹部24b,19a,19bには、防振器Sの第1の支持部材S1の大径部の径に応じて、大径部周りに嵌合する互いに異なる径の開口25aを有する複数のリング状治具25を択一的に嵌合させて、防振器Sを所定の軸線上に位置決めすることとした。
リング状治具26に、防振器Sの大径部の一端面を受ける円弧状鍔26bを設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、試験対象の防振器に対して直列的に接続するので、防振器の伸縮動と試験装置の伸縮駆動とロードセルとが同軸線上に一致するため、防振器に曲げモーメントが発生せず、引っ張り、圧縮荷重を正確に測定することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る試験装置の平面図である。
【図2】本体の正面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】本体の縦断面図である。
【図5】防振器取付部の斜視図である。
【図6】リング状治具の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図について本発明の実施の一形態を説明する。
図1,図2において、試験装置1に取り付けられる試験対象の防振器Sは、直線的に相対変位して伸縮可能な第1の支持部材S1と第2の支持部材S2とを備え、何れか一方の支持部材を構築物のような支持体に、他方を配管のような被支持体に夫々連結して用いる。第1の支持部材S1には、第2の支持部材の軸線方向の低加速度的な相対的直線運動を許容するが、高加速度的な直線運動を抑制する公知の緩衝機構(図示せず)が内蔵されている。
【0009】
試験装置1には、一端部に本体ユニット5が取り付けられる本体取付部2aと、他端部に防振器Sが装着される防振器取付部2bとを有する台枠2を備えている。台枠2は、並行する一対の長尺のチャンネル材からなる側板3の一端部を結合板4及び後記する枠片18で結合して構成される。
【0010】
本体取付部2aに取り付けられる本体ユニット5は、側板3,3の一端部間に取り付けられるユニット枠6と、ユニット枠6に固定された本体7とを具備する。ユニット枠6は、図3に示すように、台枠2に固定される縦断面Π型のブラケット8と、ブラケット8の内側に枢着され、本体7を固定する固定枠9とを備えている。ブラケット8は、本体取付部2aの側板3,3の上面に長手方向に並んでそれぞれ設けられた複数の調整孔3aにボルト8a及びナット8bにより取付位置を変更可能に固定される。固定枠9は、対向する一対の長尺鋼板からなる側板9a,9aと、側板9a,9aの一端部間を結合する前板9bと、側板9a,9aの他端部間及び中間部を結合すると共にケース10を固定する嵌合ブロック9c,9dとを具備する。嵌合ブロック9c,9dには、本体7のケース10が嵌合する開口を有する。
【0011】
図4に示すように、本体7の円筒状のケース10の一端部内にはエンコーダ12付きのモータ11が固定されている。ケース10の他端部内には、一端がモータ11の軸11aに接続された回転軸13が回転自在に支持される。回転軸13にはナット体14が螺合する。ナット体14には、ケース10の他端側の蓋10aを軸線方向に摺動自在に貫通した上下二本の摺動杆15の一端が固定されている。ナット体14は、回転軸13の回転により摺動杆15と共にケース4内を軸線方向に移動自在である。摺動杆15の他端部は、ケース10の外に突出して、ロードセル16に結合される。ロードセル16には防振器Sの第2の支持部材S2に連結される引き手17が接続される。なお、台枠2に本体ユニット5を固定すると、回転軸13、ロードセル16及び引き手17は、同一軸線上に配置される。
【0012】
エンコーダ12及びロードセル16は、図示しない制御装置に電気的に接続される。第1の支持部材S1と第2の支持部材S2との伸縮距離及び速度はモータ11に付設されたエンコーダ12により、また伸縮のストローク端は本体に付設されたリミットスイッチ7aにより、さらに伸縮動に伴う荷重の大きさはロードセル16によって夫々検知することができる。
【0013】
防振器Sが装着される防振器取付部2bは、側板3,3の端部間に渡って固着された上下一対の枠片18,18と、台枠2の側板3,3を終結する左右一対の第1挟持片19と、枠片18を台枠2の長手方向に貫通して並行して延びる4本のねじ付きの支持棒20と、この支持棒20の他端部が貫通する左右一対の第2挟持片21と、支持棒20のねじ部に螺合する止めナット23と、四本の支持棒20周りに巻かれる結束バンド22とを具備する。
【0014】
図5に示すように、枠片18は、支持棒20を横方向に移動可能な長孔18aを備えている。第2挟持片21,21の相互間隔は、支持棒20が長孔18a内を移動すると伸縮するので、大小各種の径を有する防振器Sを内側に配置することができる。支持棒20は、ねじ頭により第1挟持片19から抜け止めされ、螺合する止めナット23により第2挟持片21を抜け止めする。一対の第2挟持片21,21は、防振器Sの第1の支持部材S1の一端を受けるように支持棒20上の長手方向同一位置に配置される。
【0015】
枠片18には、防振器Sの大径部の径が小さい場合に、開口付き治具24を相互間に渡してボルト18bで固定することにより、第2の挟持片21,21に一端が受けられた防振器Sの大径部の他端を受けることができる。開口付き治具24は、防振器Sの第2の支持部材S2を貫通させる開口24aを有すると共に、防振器Sの第1の支持部材S1の大径部の一端を嵌合させて防振器Sを試験装置本体7の軸線上に配置する円弧状凹部24bを有する。
【0016】
第1挟持片19は、枠片18に嵌合させることができないより大きい径の防振器Sの大径部を受けるものである。第1挟持片19には、防振器Sの第1の支持部材S1の大径部の一端を嵌合させて防振器Sを試験装置本体7の軸線上に配置する円弧状凹部19a,19bを有する。
【0017】
図6(a)に示すように、開口付き治具24及び第1挟持片19の円弧状凹部24b,19a,19bには、これらに合致しない径の防振器Sを固定する場合に、径を調整しつつ防振器Sを試験装置本体7の軸線上に配置するリング状治具25を嵌合させることができる。リング状治具25は、防振器Sの大径部周りに嵌合するように、大径部に応じて互いに径の異なる円形開口25aをそれぞれ備えた複数のものが用意されている。従って、径の合致するリング状治具25を円弧状凹部24b,19a,19bに嵌合させて防振器Sの大径部を嵌合させると、防振器Sを試験装置本体7の軸線上に配置することができる。
【0018】
リング状治具25を介して円弧状凹部24b,19a,19bに防振器Sの大径部を嵌合させると、開口付き治具24又は第1挟持片19で大径部の端面を受けることとなるが、開口付き治具24又は第1挟持片19の当接面が狭い場合には、図6(b)に示すように、防振器Sの大径部の端部に嵌合するリング状治具26を用いる。リング状治具26は、防振器Sの大径部の端部周りに嵌合する開口26aを備えたリング部26bと、半径方向に張り出して防振器Sの大径部の端面に当接して荷重を受ける円弧状鍔部26cとを備えている。
【0019】
この試験装置1は、防振器取付部2bに防振器Sの第1の支持部材S1を固定し、引き手17を防振器Sの第2の支持部材S2に連結して使用する。防振器取付部2bは、枠片18の長孔18a内で支持棒20を移動させて、防振器Sの大径部を四本の支持棒20内に配置し、支持棒20周りに結束バンド22を巻き付け結束し、防振器Sの大径部を第1挟持片19の凹部19aに嵌合させると共に、止めナット23を締め込み第2挟持片21と第1挟持片19とで防振器Sの大径部を挟み込んで固定する。防振器Sは、大径部の一端を第1挟持片19の凹部19aに嵌合させれば、試験装置本体7の軸線上に配置される。防振器Sの径がより小さい場合には、第1挟持片19の他方の凹部19bを使用したり、複数種類のリング状治具25,26から合致するものを一つ選択して凹部19a,19bに嵌め込んだり、枠片18に固定した開口付き治具24を使用したり、複数種類のリング状治具25,26から合致するものを一つ選択して凹部24bに嵌め込んで、防振器Sの大径部を受けることとする。
【0020】
本体ユニット5は、防振器取付部4に固定された防振器Sのストロークのほぼ中間位置に引き出した第2の支持部材S2に引き手17を連結するように、ブラケット8の取付位置を調整孔3aにより調整してボルト8a及びナット8bで固定する。
【0021】
この状態でモータ11を正逆回転させて回転軸13を回転させると、回転軸13に螺合するナット体14が軸線方向に相対移動し、ケース10に対して摺動杆15を伸縮変位させる。これに伴う第1の支持部材S1と第2の支持部材S2との伸縮速度はモータ11に付設されたエンコーダ12により、また伸縮のストローク端はリミットスイッチ7aにより、さらに伸縮動に伴う荷重の大きさはロードセル16によって夫々検知され、図示しない出力装置に記録、出力される。本体7と防振器Sとの軸線は一致しており、その軸線上にロードセル16が位置するため、モーメントが作用することなく防振器Sにかかる荷重を正確に測定できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、防振器の伸縮動の軸線上にロードセルを配置して、作動試験の測定精度を高める試験装置である。
【符号の説明】
【0023】
1 試験装置
2a 本体取付部
2b 防振器取付部
2 台枠
3 側板
3a 調整孔
5 本体ユニット
7 本体
8 ブラケット
8a ボルト
8b ナット
10 ケース
11 モータ
13 回転軸
14 ナット体
15 摺動杆
16 ロードセル
18 枠片
18a 長孔
18b ボルト
19 第1挟持片
19a 円弧状凹部
19b 円弧状凹部
20 支持棒
21 第2挟持片
23 止めナット
24 開口付き治具
24a 開口
24b 円弧状凹部
25 リング状治具
25a 開口
26 リング状治具
26a 開口
26c 円弧状鍔
S 防振器
S1 第1の支持部材
S2 第2の支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と被支持体との間に連結され、両者間の相対的な変位態様に応じて軸線方向の伸縮動作を制御して変位を許容・抑制する防振器の動作確認を行うための試験装置であって、
ケース内に回転自在に架設したねじ付き回転軸と、この回転軸を回転駆動するエンコーダ付きモータと、前記回転軸のねじ部に螺合するナット体と、このナット体に一端が結合され、他端が前記ケースの外においてロードセルを介して、前記防振器の第2の支持部材に着脱自在に連結する摺動杆とを具備する本体と、
一端部に前記防振器が着脱自在に固定される防振器取付部を有し、他端部に防振器の伸縮方向に前記回転軸の軸線を一致させて前記本体を固定する本体取付部を有し、防振器と本体を直列に配置する台枠とを具備し、
前記ロードセルが前記防振器の伸縮動と同一軸線上に配置されることを特徴とする防振器用試験装置。
【請求項2】
前記本体取付部には、前記防振器取付部に取り付けられた防振器の第2の支持部材との連結位置を調整するために、前記本体を固定するボルトを挿通する複数の調整孔が防振器の伸縮方向に並んで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防振器用試験装置。
【請求項3】
前記防振器取付部は、一端部が前記台枠に固定され、前記防振器の第1の支持部材周りを囲むように防振器の伸縮方向に延びた4本のねじ付き支持棒と、
前記枠台に固定され、前記防振器の第1の支持部材の大径部の一端を受ける第1挟持片と、
前記支持棒に貫通され、ねじ部に螺合する止めナットで固定され、前記防振器の第1の支持部材の大径部の他端を受ける第2挟持片とを具備することを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の防振器用試験装置。
【請求項4】
前記枠台には、前記防振器の第1の支持部材の径に応じて前記支持棒の相互間隔を変更するために支持棒を横方向に移動可能な長孔を備えた枠片を具備することを特徴とする請求項3に記載の防振器用試験装置。
【請求項5】
前記防振器の第1の支持部材の大径部の一端に嵌合し、防振器を所定の軸線上に位置決めする円弧状凹部を有し、第2の支持部材を貫通させつつ前記枠片に着脱可能に固定される開口付き治具を具備することを特徴とする請求項3又は4に記載の防振器用試験装置。
【請求項6】
前記第1挟持片には、前記防振器の第1の支持部材の大径部の一端に嵌合し、防振器を所定の軸線上に位置決めする円弧状凹部を有することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の防振器用試験装置。
【請求項7】
前記円弧状凹部に択一的に嵌合し、前記防振器の第1の支持部材の大径部の径に応じて、大径部周りに嵌合する互いに異なる径の開口を有し、防振器を所定の軸線上に位置決めする複数のリング状治具を具備することを特徴とする請求項5又は6に記載の防振器用試験装置。
【請求項8】
前記リング状治具には、前記防振器の第1の支持部材の大径部の一端面を受ける円弧状鍔を有することを特徴とする請求項7に記載の防振器用試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−237161(P2010−237161A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87812(P2009−87812)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】