説明

防振固定部材

【課題】振動減衰効果が高い防振固定部材を提供すること。
【解決手段】粘性エラストマーから成る粘性エラストマー部材3と、前記粘性エラストマー部材3の両端にそれぞれ取り付けられた一対の固定端5、7、9、11、13、15と、前記一対の固定端5、7、9、11、13、15に両端が取り付けられた弾性部材17と、を備え、前記一対の固定端5、7、9、11、13、15のうちの一方を外部の部材Aに固定し、他方を外部の部材Bに固定することで、前記外部の部材Aに対し前記外部の部材Bを固定する用途に用いられる防振固定部材1であって、前記粘性エラストマー部材3と前記弾性部材17とは、前記固定端5、7、9、11、13、15以外では非接触であることを特徴とする防振固定部材1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材Aを部材Bに対し固定するとともに、振動減衰効果を奏する防振固定部材が知られている。例えば、特開2005−207589号公報(特許文献1)の第7実施例には、圧縮コイルバネ及びその周囲に巻かれた粘弾性シートの上端及び下端に、一対の取付軸を備えたダンピングコイルばねが記載されている。このダンピングコイルばねの一対の取付軸のうちの一方を部材Aに固定し、他方を部材Bに固定することで、ある程度の振動減衰効果を奏しながら、部材Aに対し部材Bを固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−207589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防振固定部材は、振動減衰効果が充分ではなかった。本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、振動減衰効果が高い防振固定部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の防振固定部材は、粘性エラストマーから成る粘性エラストマー部材と、前記粘性エラストマー部材の両端にそれぞれ取り付けられた一対の固定端と、前記一対の固定端に両端が取り付けられた弾性部材と、を備え、前記一対の固定端のうちの一方を外部の部材Aに固定し、他方を外部の部材Bに固定することで、前記外部の部材Aに対し前記外部の部材Bを固定する用途に用いられる防振固定部材であって、前記粘性エラストマー部材と前記弾性部材とは、前記固定端以外では非接触であることを特徴とする。
【0006】
本発明の防振固定部材は、一対の固定端の間に、減衰係数Cが大きい粘性エラストマーから成る粘性エラストマー部材と、弾性部材との両方を備えることにより、防振固定部材が縮む方向と伸びる方向との両方の振動を抑制することができる。そのため、本発明の防振固定部材は、振動減衰効果が高い。本発明の防振固定部材におけるバネ定数Kは、主として、弾性部材により影響され、減衰定数Cは、主として、粘性エラストマー部材に影響される。
【0007】
前記固定端は、粘性エラストマー部材及び弾性部材とは別部材であり、硬質樹脂から成ることが好ましい。また、硬質樹脂は、粘性エラストマーに対して一体成形(熱融着)可能なものであることが好ましい。この場合、たとえ、粘性エラストマーの粘着性が温度によって変化したとしても、粘性エラストマー部材と固定端との接合は粘性エラストマーの粘着力に依存するものではないので、固定端と粘性エラストマー部材との接合強度を高くすることができる。また、粘性エラストマーの自己粘着性は低くてもよいので、粘性エラストマーの選択範囲が広がる。
【0008】
また、硬質樹脂は、粘性エラストマーに対して相溶性が高いものであることが好ましい。例えば、粘性エラストマーとして、スチレン系、オレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、TPU(熱可塑性ポリウレタン)系等が挙げられ、それらに対し相溶性が高い硬質樹脂として、PP、PE、PC、ABS、PMMA、PBT、PA等が挙げられる。また、粘性エラストマーは、熱硬化性のゴムでもよい。
【0009】
また、粘性エラストマー部材と固定端とを一体成形する場合、粘性エラストマーの粘着強度は重要ではないため、軟化材を多く含んだばね定数(K)の低い材料も選択可能になる。
【0010】
粘性エラストマー部材と弾性部材とは、固定端において直接接触していてもよいし、直接の接触はなく、固定端を介して接触していてもよい。
また、前記粘性エラストマー部材は、固定端が取り付けられる端面に凹部を備え、固定端の一部が凹部に嵌入されていることが好ましい。この場合、前記粘性エラストマー部材がその軸方向に伸縮するとき、粘性エラストマー部材と固定端との界面でせん断エネルギーが発生し、振動減衰効果が一層高くなる。また、接触面積が増えるために、粘性エラストマー部材と固定端との密着性も高くなる。
【0011】
本発明の防振固定部材において、前記固定端のうち、前記凹部の内側面に接する部分に、凹凸が形成されていることが好ましい。この場合、粘性エラストマー部材が伸縮するとき、粘性エラストマー部材と固定端との界面で発生するせん断エネルギーが凹凸によって一層大きくなり、振動減衰効果が一層高くなる。
【0012】
本発明の防振固定部材において、粘性エラストマー部材のうち、前記一対の固定端の間にある一部の領域の硬度は、それ以外の領域の硬度より高いことが好ましい。
この場合、硬度が高い領域が一対の固定端の間に存在するので、粘性エラストマー部材が軸方向に縮む方向に過剰の外力を受けた場合でも、硬度が高い領域が一種のストッパーとなって、一対の固定端間の距離が一定以上縮まらないようにすることができる。また、粘性エラストマー部材がある程度縮み、一対の固定端が、粘性エラストマー部材における硬度が高い領域に接すると、一対の固定端に対し、元の位置に戻そうとする反発力が働くため、防振固定部材が早期に正常な状態に戻る。
【0013】
前記粘性エラストマー部材は、その軸方向における略中央部に、断面積が極小となる部分を有することが好ましい。この場合、粘性エラストマー部材が縮み、その中央部分が外側に膨らんだとしても、粘性エラストマー部材が他の部材(例えば弾性部材等)に接触してしまうようなことがない。
【0014】
前記粘性エラストマーとしては、例えば、特開2006−111756号公報において開示されている粘性エラストマーを使用することができる。すなわち、粘性エラストマーは、例えば、スチレン系エラストマーからなる基材樹脂100重量部と、軟化剤50重量部〜600重量部と、粘着付与樹脂30〜500重量部とを含有するものとすることができる。
【0015】
前記スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)、及びスチレンイソブチレンスチレン共重合体(SIBS)等から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0016】
前記軟化剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ポリαオレフィン(PAO)、液状ポリブテン、及び液状ポリイソブチレン等から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0017】
前記粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、石炭樹脂、フェノール樹脂、及びキシレン樹脂等から選ばれる1種以上を用いることができる。
また、前記粘性エラストマーは、前記基材樹脂、前記軟化剤、及び前記粘着付与樹脂の他に、流動性向上樹脂、フィラー、及び着色顔料等を含有することができる。
【0018】
前記流動性向上樹脂は、前記基材樹脂100重量部に対して、1〜50重量部含有させることができる。前記流動性向上樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、変性ポリオレフィン、ポリペンテン、及びフッ素系ポリマー等から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0019】
前記フィラーは、前記基材樹脂100重量部に対して、100重量部以下含有させることができる。前記着色顔料は、前記基材樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部含有させることができる。前記着色顔料としては、例えば、天然無機顔料、合成無機顔料、天然有機顔料、合成有機顔料等がある。
【0020】
前記粘性エラストマーは、前記基材樹脂、前記軟化剤、及び前記粘着付与樹脂をニーダーや押出機などを用いて加熱溶融・混練することにより作製することができる。また、必要に応じて前記流動性向上樹脂、フィラー、着色顔料等を加えることができる。混練後、例えば射出成形、コンプレッション成形、Tダイ押出成形等により、所望の形状(立体的な形状を含む)に成形することができる。
【0021】
前記固定端は、一つの部品から構成されるものであってもよいし、複数の部品を組み合わせて構成されるものであってもよい。前記固定端、又はその一部は、例えば、異材質成形等の方法により、粘性エラストマーから成る粘性エラストマー部材と一体に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】防振固定部材1の分解斜視図である。
【図2】防振固定部材1の斜視図である。
【図3】防振固定部材1の側面図である。
【図4】防振固定部材1のA−A断面での断面図である。
【図5】棒状部材3及び端面板5、7の側面図である。
【図6】領域3bを有する棒状部材3(軸方向に伸縮していない状態)及び端面板5、7の側面図である。
【図7】領域3bを有する棒状部材3(軸方向に伸縮している状態)及び端面板5、7の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
1.防振固定部材1の構成
防振固定部材1の構成を図1〜図5に基づいて説明する。図1は防振固定部材1の分解斜視図であり、図2は防振固定部材1の斜視図であり、図3は防振固定部材1の側面図であり、図4はA−A断面での断面図であり、図5は後述する棒状部材3及び端面板5、7の側面図である。
【0024】
防振固定部材1は、棒状部材(粘性エラストマー部材)3、一対の端面板5、7、一対の留め板9、11、一対の両端ねじ13、15、及びコイルバネ17から構成される。なお、端面板5、留め板9、及び両端ねじ13が一方の固定端に該当し、端面板7、留め板11、及び両端ねじ15が他方の固定端に該当する。
【0025】
棒状部材3は、粘性エラストマーから成り、略円筒形状を有する。棒状部材3は、以下の原料をニーダーや押出機等を用いて加熱溶融・混練し、混練後、射出成形により棒状に成形して製造する。なお、棒状部材3を成形するときは、異材質成形により、端面板5、7と一体に形成する。
【0026】
基材樹脂(SEEPS(数平均分子量が20万程度でスチレン含有量が30wt%のもの)):100重量部
軟化剤(パラフィン系プロセスオイル((温度40℃における動粘度が400mm2/sのもの))):200重量部
粘着付与樹脂(水添石油樹脂(脂環族系水添石油樹脂で軟化点が100℃のもの)):300重量部
流動性向上樹脂(ランダムポリプロピレン(MFRが33g/10minのもの)):15重量部
フィラー(炭酸カルシウム(平均粒子径が2.7μmのもの)):45重量部
着色顔料(カーボンブラック(粒子径が16nmで窒素吸着比表面積が250m2/gのもの)):10重量部
棒状部材3は、その軸方向における中央部に、断面積(棒状部材3の軸方向に直交する断面での断面積)が極小となる中央部3aを有する。すなわち、棒状部材3の断面積は、端面板5と接する部分において最大であり、端面板7へ近づくにつれて徐々に小さくなり、中央部3aにおいて最小(極小)となる。中央部3aを過ぎてさらに端面板7に近づくと、棒状部材3の断面積は徐々に大きくなり、端面板7と接する部分において再び最大となる。
【0027】
棒状部材3は、図4、図5に示すように、その両端面に、凹部19、21を備える。凹部19、21は、棒状部材3の端面における中央部に形成され、断面が一定の大きさの円形である孔であり、棒状部材3の軸方向に沿って、所定の深さまで延びている。
【0028】
端面板5、7は硬質樹脂から成り、円板状の本体部23と、本体部23における一方の面に形成された円柱状の嵌入部25とを備える。嵌入部25の外周面は、図5に示すように、凹凸面25aとなっている。この凹凸面25aは、嵌入部25の外周面に、周方向に延びる互いに平行な突条25bが等間隔で複数存在することにより形成されている。
【0029】
また、端面板5、7の中央部には、本体部23を貫通して嵌入部25の内部にまで達するねじ孔27が形成されている。ねじ孔27は端面板5、7を完全に貫通していてもよいし、嵌入部25の途中で止まっていてもよい。また、本体部23のうち、嵌入部25が形成された面とは反対側の面には、ねじ孔27の周囲を囲むように、4個の突起29が形成されている。
【0030】
端面板5、7は、棒状部材3と一体成形(熱融着)される。一体成形された端面板5、7と棒状部材3との位置関係は次のようになる。端面板5の嵌入部25は、棒状部材3の凹部19に嵌入され、凹部19の奥まで達する。嵌入部25の凹凸面25aは、凹部19の内側面に当接している。凹凸面25aと凹部19の内側面との界面は、棒状部材3の軸方向に平行である。また、本体部23のうち、嵌入部25の周囲の部分は、棒状部材3の端面のうち、凹部19の周囲の部分に当接する。同様に、端面板7の嵌入部25は、棒状部材3の凹部21に嵌入され、凹部21の奥まで達する。本体部23のうち、嵌入部25の周囲の部分は、棒状部材3の端面のうち、凹部21の周囲の部分に当接する。
【0031】
留め板9、11は金属から成る部材であって、円板状の中央部31と、中央部31に対し屈曲し、立ち上がった外縁部33とを備える。中央部31の中心には、貫通孔35が形成されており、その周囲には、4個の微小貫通孔37が形成されている。
【0032】
留め板9は、外縁部33が端面板5の側面を覆う向きで、端面板5の上に被せられる。このとき、留め板9の貫通孔35と端面板5のねじ孔27とは同心となる。また、端面板5の4個の突起29は、留め板9の4個の微小貫通孔37にそれぞれ嵌入する。同様に、留め板11は、外縁部33が端面板7の側面を覆う向きで、端面板7の上に被せられる。このとき、留め板11の貫通孔35と端面板7のねじ孔27とは同心となる。また、端面板7の4個の突起29は、留め板11の4個の微小貫通孔37にそれぞれ嵌入する。
【0033】
両端ねじ13、15は、中央の仕切り板39により、第1のねじ41と第2のねじ43とに仕切られた両端ねじである。両端ねじ13の第1のねじ41を、留め板9の貫通孔35を通し、端面板5のねじ孔27にねじ込むと、両端ねじ13が端面板5に対し固定されるとともに、留め板9は、端面板5と両端ねじ13の仕切り板39とに挟まれて固定される。このとき、端面板5の4個の突起29は、留め板9の4個の微小貫通孔37にそれぞれ嵌入しているので、留め板9が端面板5に対し回転してしまうことはない。同様に、両端ねじ15の第1のねじ41を、留め板11の貫通孔35を通し、端面板7のねじ孔27にねじ込むと、両端ねじ15が端面板7に対し固定されるとともに、留め板11は、端面板7と両端ねじ15の仕切り板39とに挟まれて固定される。このとき、端面板7の4個の突起29は、留め板11の4個の微小貫通孔37にそれぞれ嵌入しているので、留め板11が端面板7に対し回転してしまうことはない。
【0034】
コイルバネ17は、棒状部材3に外挿されていており、その両端が、それぞれ、留め板9の外縁部33と留め板11の外縁部33に保持されている。コイルバネ17は、通常時(両端ねじ13、15に外力が加わっていないとき)、留め板9、11によって圧縮されており、留め板9、11に対し、それらが離間する方向(棒状部材3を伸長させる方向)に付勢している。コイルバネ17は、端面板5、7以外においては、棒状部材3に対し非接触である。
【0035】
2.防振固定部材1の使用方法
両端ねじ13を外部の部材Aに固定し、両端ねじ15を外部の部材Bに固定する。こうすることにより、外部の部材Aに対し外部の部材Bを固定することができる。この場合、両端ねじ13と両端ねじ15との間に粘性エラストマーから成る棒状部材3が存在し、ダンパーとして機能することにより、外部の部材Aと外部の部材Bのうちの一方から他方へ伝わる振動を減衰することができる。
【0036】
3.防振固定部材1が奏する効果
(1)防振固定部材1は、両端ねじ13と両端ねじ15との間に、減衰係数Cが大きい粘性エラストマーから成る棒状部材3を備える。そのため、本発明の防振固定部材1は、振動減衰効果が高い。
(2)棒状部材3は、端面板5、7が取り付けられる端面に凹部19、21を備え、端面板5、7の嵌入部25は、棒状部材3の凹部19、21に嵌入されている。そのため、棒状部材3が軸方向に伸縮するとき、棒状部材3と端面板5、7との界面でせん断エネルギーが発生し、振動減衰効果が一層高い。また、棒状部材3と端面板5、7との密着性が高い。
(3)端面板5、7の嵌入部25の外周面には、凹凸面25aが形成されている。そのため、棒状部材3が軸方向に伸縮するとき、棒状部材3と端面板5、7(凹凸面25a)との界面で発生するせん断エネルギーが一層大きくなり、振動減衰効果が一層高くなる。
(4)防振固定部材1は、棒状部材3を伸長させる方向に付勢するコイルバネ17を備えている。そのため、棒状部材3の永久歪(へたり)を防止できる。
(5)棒状部材3は、その軸方向における中央部分において細くくびれている。そのため、棒状部材3が縮み、その中央部分が外側に膨らんだとしても、コイルバネ17に接触してしまうようなことがない。
(6)部材A、部材Bと棒状部材3との間には、端面板5、7、留め板9、11、両端ねじ13、15(特に硬質樹脂から成る端面板5、7)が介在し、それらは断熱材として機能するため、部材A、部材Bから棒状部材3に熱が伝わり難い。そのため、棒状部材3が温度による影響を受け難くなる。
(7)棒状部材3はコイルバネ17の内側に設置されているため、外部からの応力により、棒状部材3に破れや穴あき等の破損は生じにくい。
<第2の実施形態>
本実施形態における防振固定部材1の構成は基本的には前記第1の実施形態と同様であるが、棒状部材3の構成において相違する。以下ではこの相違点を中心に、図6、図7に基づいて説明する。図6は、軸方向に圧縮されていない状態における棒状部材3及び端面板5、7の側面図である。図7は、軸方向に圧縮されている状態における棒状部材3及び端面板5、7の側面図である。
【0037】
本実施形態では、図6に示すように、棒状部材3のうち、端面板5、7の間にある一部の領域(以下、高硬度領域3bとする)の硬度は、棒状部材3における他の領域の硬度より高い。このような構造は、高硬度領域3bを構成する第1の粘性エラストマーと、棒状部材3における他の領域を構成する第2の粘性エラストマーとを用いて異材質成形を行うことにより実現することができる。
【0038】
ここで、第1の粘性エラストマーは、前記第1の実施形態で用いた粘性エラストマーから、軟化剤と粘着付与樹脂とを減らしたものである。すなわち、第1の粘性エラストマーは、以下の原料を用いて製造したものである。
【0039】
基材樹脂(SEEPS(数平均分子量が20万程度でスチレン含有量が30wt%のもの)):100重量部
軟化剤(パラフィン系プロセスオイル((温度40℃における動粘度が400mm2/sのもの):100重量部
粘着付与樹脂(水添石油樹脂(脂環族系水添石油樹脂で軟化点が100℃のもの)):40重量部
流動性向上樹脂(ランダムポリプロピレン(MFRが33g/10minのもの)):15重量部
フィラー(炭酸カルシウム(平均粒子径が2.7μmのもの)):45重量部
着色顔料(カーボンブラック(粒子径が16nmで窒素吸着比表面積が250m2/gのもの)):10重量部
また、第2の粘性エラストマーは、前記第1の実施形態で用いた粘性エラストマーである。
【0040】
本実施形態の防振固定部材1は、上記の構成を有することにより、高硬度領域3bが端面板5、7の間に存在するので、棒状部材3が縮む方向に過剰の外力を受けた場合でも、図7に示すように、高硬度領域3bがストッパーの機能を奏し、棒状部材3が一定限度以上縮んでしまうことがない。また、棒状部材3がある程度縮み、端面板5、7が高硬度領域3bに接すると、端面板5、7に対し、元の位置に戻そうとする反発力が働くため、防振固定部材1が早期に正常な状態に戻る。
【0041】
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、棒状部材3に形成された凹部19、21は、種々の態様とすることができる。例えば、凹部19、21は、深い部分ほど横幅が広がる凹部であってもよいし、その反対に、深い部分ほど横幅が小さくなる凹部であってもよい。また凹部19、21の断面形状は、円形以外の種々の形状(例えば多角形)であってもよい。また、凹部19、21の軸方向は、棒状部材3の軸方向と一致していてもよいし、棒状部材3の軸方向に対し傾斜していてもよい。また、凹部19、21は、棒状部材3の端面における中心に位置していてもよいし、偏心していてもよい。なお、端面板5、7における嵌入部25の形状や位置は、上述した凹部19、21に対応するものとすればよい。
【0042】
また、嵌入部25に形成された凹凸面25aは、種々の形態にすることができる。例えば、凹凸面25aは、嵌入部25の外周面に設けられた複数の溝(例えば周方向に延びる溝)から成るものであってもよいし、嵌入部25の外周面に複数独立して設けられた突起や凹みにより形成されるものであってもよい。また、凹凸面25aは、嵌入部25の外周面をランダムに荒らした面であってもよい。
【0043】
また、嵌入部25の外周面は凹凸面25aを備えず、平坦な面であってもよい。
また、棒状部材3は、中空円筒形状を有し、コイルバネ17は、棒状部材3の内部に収容されていてもよい。
【0044】
また、両端ねじ13、15の代わりに、ねじの嵌合以外の方式で他の部材に固定される部材を用いてもよい。
また、凹部19、21のうち、一方のみが形成されていてもよい。その場合、端面板5、7のうち、対応する凹部が形成されているものだけが、嵌入部25を備えていればよい。
【0045】
また、コイルバネ17と端面板5、7とは一体の部材であってもよい。すなわち、コイルバネ17が、その両端に、バネ形状の本体部と一体に形成された金属製の端面板を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1・・・防振固定部材、3・・・棒状部材、3a・・・中央部、3b・・・高硬度領域、
5、7・・・端面板、9、11・・・留め板、17・・・コイルバネ、
19、21・・・凹部、23・・・本体部、25・・・嵌入部、25a・・・凹凸面、
25b・・・突条、27・・・孔、29・・・突起、31・・・中央部、33・・・外縁部、
35・・・貫通孔、37・・・微小貫通孔、39・・・仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性エラストマーから成る粘性エラストマー部材と、
前記粘性エラストマー部材の両端にそれぞれ取り付けられた一対の固定端と、
前記一対の固定端に両端が取り付けられた弾性部材と、
を備え、
前記一対の固定端のうちの一方を外部の部材Aに固定し、他方を外部の部材Bに固定することで、前記外部の部材Aに対し前記外部の部材Bを固定する用途に用いられる防振固定部材であって、
前記粘性エラストマー部材と前記弾性部材とは、前記固定端以外では非接触であることを特徴とする防振固定部材。
【請求項2】
前記固定端は、前記粘性エラストマー部材及び前記弾性部材とは別部材であり、硬質樹脂から成ることを特徴とする請求項1記載の防振固定部材。
【請求項3】
前記硬質樹脂は、前記粘性エラストマーに対して熱融着可能なものであることを特徴とする請求項2記載の防振固定部材。
【請求項4】
前記硬質樹脂は、前記粘性エラストマーに対して相溶性が高いものであることを特徴とする請求項2又は3記載の防振固定部材。
【請求項5】
前記粘性エラストマー部材は、前記固定端が取り付けられる端面に凹部を備え、前記固定端の一部が前記凹部に嵌入していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防振固定部材。
【請求項6】
前記固定端のうち、前記凹部の内側面に接する部分に、凹凸が形成されていることを特徴とする請求項5記載の防振固定部材。
【請求項7】
前記粘性エラストマー部材のうち、前記一対の固定端の間にある一部の領域の硬度は、それ以外の領域の硬度より高いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の防振固定部材。
【請求項8】
前記粘性エラストマー部材は、その軸方向における略中央部に、断面積が極小となる部分を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の防振固定部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108518(P2013−108518A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251708(P2011−251708)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】