防振床構造および防振材
【課題】広い範囲の周波数域の振動を効果的に防振することができる防振床構造を提供する。
【解決手段】構造物の床基盤5aと、該床基盤の上に敷設された防振材1と、防振材1の上に配置されたコンクリート床などの面材5bとからなる防振床構造において、防振材1として、少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部2と、平板部2の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部3a,3bを備え、複数の発泡体凸部3a,3bの中に平板部2の上板面に配置される第1種の発泡体凸部3aと平板部2の下板面に配置される第2種の発泡体凸部3bがあり、第1種の発泡体凸部3aの平板部2の上板面に配置される位置と第2種の発泡体凸部3bの平板部2の下板面に配置される位置とが異なるように発泡体凸部3a,3bが平板部2の板面に配設され、発泡体凸部3a,3bと平板部2の面積等が所定の関係を満足するものに設計されているものとした。
【解決手段】構造物の床基盤5aと、該床基盤の上に敷設された防振材1と、防振材1の上に配置されたコンクリート床などの面材5bとからなる防振床構造において、防振材1として、少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部2と、平板部2の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部3a,3bを備え、複数の発泡体凸部3a,3bの中に平板部2の上板面に配置される第1種の発泡体凸部3aと平板部2の下板面に配置される第2種の発泡体凸部3bがあり、第1種の発泡体凸部3aの平板部2の上板面に配置される位置と第2種の発泡体凸部3bの平板部2の下板面に配置される位置とが異なるように発泡体凸部3a,3bが平板部2の板面に配設され、発泡体凸部3a,3bと平板部2の面積等が所定の関係を満足するものに設計されているものとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振性能に優れる防振床構造および防振材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防振材として、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形板やグラスウール製ボードが知られている。
しかし、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形板には、発泡倍率にもよるが柔軟性が乏しいため、発泡板をあらかじめ圧縮処理して気泡を座屈させるなどして柔軟性を付与したものが防振材として使用されており、生産性、上載荷重制限における課題がある。一方、グラスウール製ボードには、施工性に課題があり、また水分を吸収したり長期に亘るクリープによって厚みの減少が生じ、その結果、必要な防振効果を維持できなくなる虞もある。
【0003】
そこで、本発明者等は、先に前記課題を解決するための防振材を提案した(特許文献1および特許文献2)。
【0004】
特許文献1の防振材は、複数の防振ゴムが所定の間隔部分を設けて配設され、間隔部分には合成樹脂発泡体と板材または網材とが積層されて配設されており、合成樹脂発泡体と防振ゴムと、板材または網材とを一体化した構成の防振材である。
この特許文献1の防振材は、工場生産が可能であると共に軽量性に優れ、施工現場での取り付け、施工が簡単に行なうことができるものである。また、発泡体と防振ゴムとを組み合わせたものであり、要求される振動減衰量、耐荷重に対し、比較的自由に対応することができるものである。さらに、合成樹脂発泡体としてポリオレフィン系樹脂発泡体を選択した場合には、圧縮回復性、耐水性に優れているため、住宅用防振材としても好適なものであった。
【0005】
特許文献2の防振材は、合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の片面に所定の間隔を設けて配設された複数のポリオレフィン系樹脂発泡体凸部とからなり、該凸部の形状が柱状であり、該凸部の高さが防振材の厚みの25%以上である防振材である。
この特許文献2に開示された防振材は、合成樹脂発泡体平板部と特定のポリオレフィン系樹脂発泡体凸部とが組み合わされた形状のものからなるので、該防振材を基礎コンクリート床と浮きコンクリート床との間にポリオレフィン系樹脂発泡体凸部を下側に向けて敷設することにより、該凸部の周囲に空気層による空間を形成することができ、防振特性に優れる簡易的な浮床式の防振床構造を容易に施工することができるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−242314号公報
【特許文献2】実用新案登録3159295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1,2等に開示された防振材は、いずれも合成樹脂発泡体の圧縮変形を利用して振動を減衰させるものであり、例えば、減衰対象の振動数が低くなって来ると圧縮強度との兼ね合いから防振設計が難しいものであった。即ち、従来は、防振材の弾性率を小さくすることにより、防振性能を改善する努力もなされてきたが、材料の弾性率を小さくすることには圧縮強度との兼ね合いから限界があり、十分な防振性能を有するものとすることは困難であった。
【0008】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、優れた防振性能が発現される防振床構造および防振材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の〔1〕〜〔7〕の防振床構造および防振材とした。
〔1〕構造物の床基盤と、該床基盤の上に敷設された防振材と、該防振材の上に配置された面材とからなる防振床構造であって、上記防振材が、少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部を備え、上記複数の合成樹脂発泡体凸部は上記平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される第1種の発泡体凸部と上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される第2種の発泡体凸部とにより構成され、上記第1種の発泡体凸部が上記平板部の上板面に配置されている位置と上記第2種の発泡体凸部が上記平板部の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように、上記合成樹脂発泡体凸部が上記平板部の板面に配設されており、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、かつs1とs2との比(s1/s2)が0.3〜3.5であることを特徴とする、防振床構造。
〔2〕上記合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される上記第1種の発泡体凸部が正方形格子点を形成するように配設され、上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される上記第2種の発泡体凸部が上記正方形の対角線の交点の位置に配設されていることを特徴とする、上記〔1〕に記載の防振床構造。
〔3〕上記合成樹脂発泡体平板部の適所に、該平板部を貫通した状態で防振ゴムが取り付けられていることを特徴とする、上記〔1〕または〔2〕に記載の防振床構造。
〔4〕上記合成樹脂発泡体平板部と上記第1種および第2種の発泡体凸部とが、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子型内成形体であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の防振床構造。
〔5〕上記合成樹脂発泡体平板部と上記第1種および第2種の発泡体凸部とが、架橋ポリエチレン系樹脂発泡粒子型内成形体であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の防振床構造。
〔6〕少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部を備え、上記複数の合成樹脂発泡体凸部は上記平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される第1種の発泡体凸部と上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される第2種の発泡体凸部とにより構成され、上記第1種の発泡体凸部が上記平板部の上板面に配置されている位置と上記第2種の発泡体凸部が上記平板部の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように、上記合成樹脂発泡体凸部が上記平板部の板面に配設されており、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、かつs1とs2との比(s1/s2)が0.75〜1.25であることを特徴とする、防振材。
〔7〕上記合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される上記第1種の発泡体凸部が正方形格子点を形成するように配設され、上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される上記第2種の発泡体凸部が上記正方形の対角線の交点の位置に配設されていることを特徴とする、上記〔6〕に記載の防振材。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明の防振床構造によれば、合成樹脂発泡体凸部を合成樹脂発泡体平板部の上下板面にそれぞれ配設した防振材が床基盤上に敷設され、該防振材の上にコンクリート床などの面材が配置されたものであって、上記防振材は、合成樹脂発泡体平板部の上板面と下板面で合成樹脂発泡体凸部が該平板部に配置される位置が異なる位置に配設されていると共に、該発泡体凸部と該平板部の面積等が所定の関係を満足するものに設計されているため、振動に対して合成樹脂発泡体平板部の圧縮変形のみならず効果的な撓み変形によっても振動を減衰させることができ、より広い範囲の周波数域の振動を効果的に防振し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の防振床構造に係る防振材の第1の実施形態を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図2】図1の防振材を用いて構築した本発明の防振床構造を示した図であって、(a)は図1のA−A線に沿う部分に相当する防振床部分の概念的な断面図、(b)は(a)図のB部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態において用いる第1の合成樹脂発泡体板を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図4】本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態において用いる第2の合成樹脂発泡体板を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図5】図3、図4に示した合成樹脂発泡体板を組み合わせて形成した本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図6】図3〜図5の防振材を用いて構築した本発明の防振床構造を示した図であって、図5のC−C線に沿う部分に相当する防振床部分の概念的な断面図である。
【図7】防振材の振動伝達率の測定方法を概念的に示した正面図である。
【図8】強制加振の振動数を変えたときの理論に基づく振動伝達率の変化を示した図である。
【図9】本発明の防振床構造に係る防振材の第1の実施形態の一例として作製した実施例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図10】図9の実施例の試験体に対して圧縮変形のみを生じさせる従来技術の一例として作製した比較例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図11】本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態の一例として作製した実施例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図12】図11の実施例の試験体に対して圧縮変形のみを生じさせる従来技術の一例として作製した比較例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図13】本発明の防振床構造に係る防振材の第1の実施形態の他の例として作製した実施例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図14】図13の実施例の試験体に対して上面の面積が小さな第1種の発泡体凸部が形成されている一例として作製した実施例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、上記した本発明の防振床構造に係る防振材の実施形態を、図面を示して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の防振床構造に係る防振材の第1の実施形態を示した図である。
この例では、防振材1は、一枚の合成樹脂発泡体平板部2を備えている。そして、該合成樹脂発泡体平板部2の上板面と下板面に、多数の合成樹脂発泡体凸部3a,3bが正方形格子点を形成するようにそれぞれ配設されている。
【0014】
合成樹脂発泡体平板部2の上下板面に配設された上記合成樹脂発泡体凸部3a,3bは、図1に示されているように、上板面に合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aが配設されている箇所の下板面には合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bがなく、下板面に合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bが配設されている箇所の上板面には合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aがなく、上下板面で平面視で重ならないように配設されている。具体的には、上板面の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aが配設されている正方形格子点の各正方形の中心(対角線の交点)が作る格子点の位置に、下板面の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bが配設されている。そして好ましくは、上記合成樹脂発泡体凸部3a,3bは、上記合成樹脂発泡体平板部2に接着或いは一体成型等により固定されており、図示した実施形態のものにあっては、合成樹脂発泡体平板部2と合成樹脂発泡体凸部3a,3bとが、合成樹脂発泡粒子の型内成型にて一体的に形成されている。また、この例では、4個の防振ゴム4が、荷重負担ができるだけ均等になるような位置で合成樹脂発泡体平板部2を貫通して設けられている。この防振ゴム4は、合成樹脂発泡体平板部2に現場で固定されても、或いは予め工場で固定されてもよい。
【0015】
上記合成樹脂発泡体凸部(第1種と第2種の発泡体凸部)3a,3bは、均等に分布するように合成樹脂発泡体平板部2の上下板面にそれぞれ配設されていればよく、ここでは正方形格子点を形成するように配設した例を示したが、長方形格子点、或いは三角形格子点、六角形格子点を形成するように配設してもよい。また、合成樹脂発泡体平板部2の上下板面で、合成樹脂発泡体凸部3a,3bが該合成樹脂発泡体平板部2に配置される位置が平面視で重ならないものであれば、一見乱雑に見えるような配置であってもよい。
【0016】
図2は、図1の防振材を用いて浮き床構造の防振床を構築した状態を示した図である。
この防振床10は、基礎コンクリート床5a上に上記した防振材1を敷設し、その上方に合板6を介してコンクリートを打設しコンクリート床からなる面材を形成し、浮きコンクリート床5bを構築したものである。この場合、荷重分布が均等になるように防振材1に防振ゴム4が配設されているので、合成樹脂発泡体凸部(第1種と第2種の発泡体凸部)3a,3bだけで上部からの荷重を支えるとき、一部の合成樹脂発泡体凸部が潰れたり、振動吸収力が低下することがあるが、防振ゴム4は、これを防止する効果を有する。また、防振ゴム4の振動吸収周波数帯は、防振材1の他の部分を構成する合成樹脂発泡体平板部2などの合成樹脂発泡体のそれとは異なるので、防振ゴム4を適所に設けることは、広い周波数帯域で振動を吸収することができる効果も期待できる。
【0017】
また、上記構造の防振床10において振動を受けた場合、合成樹脂発泡体凸部3a,3bが圧縮変形すると共に合成樹脂発泡体平板部2が撓み変形し、振動を吸収する。即ち、上方の浮きコンクリート床5aの振動は、防振ゴム4および上方の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aの圧縮変形を生じさせると共に、下方の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bは上方の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aの直下ではない箇所で合成樹脂発泡体平板部2を支えるため、図2(b)に拡大して示すような剪断力による合成樹脂発泡体平板部2の撓み変形を生じさせ、さらに合成樹脂発泡体平板部2を支える合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bに圧縮変形を生じさせる。そのため、振動は、合成樹脂発泡体の圧縮変形のみならず撓み変形によっても吸収される。
【0018】
ここで、固体の圧縮変形に関係する縦弾性係数Eと撓み変形に関係する横弾性係数Gは、ポアソン比をν(ν>0)とすると、E=G/2(1+ν)の関係がある。
そのため、一般に固体の縦弾性係数Eは横弾性係数Gよりも大きい。また図2から分かるように、形成される床の厚さを考慮した場合、合成樹脂発泡体凸部の厚みより合成樹脂発泡体凸部の間隔(支点間の距離)を大きくすることができる。そのため、横弾性係数Gと支点間の距離が関係する撓み変形の固有振動数は、縦弾性係数Eと厚みが関係する圧縮変形の固有振動数より低いものとなり、この両者の変形を利用することとなる上記防振材1の固有振動数は、圧縮変形のみを利用するものに比して低いものとなると考えられる。防振材の固有振動数が低い方向にシフトすることは、防振効果が認められる周波数域が広がることを意味し、上記第1の実施形態に係る防振材1は、広い周波数域で振動を効果的に防振することができるものとなる。
【0019】
図3〜図5は、本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態を示した図であり、図3は第2の実施形態に係る防振材を構成する第1の合成樹脂発泡体板を示した図、図4は同じく第2の実施形態に係る防振材を構成する第2の合成樹脂発泡体板を示した図、図5は前記第1、第2の合成樹脂発泡体板を組み合わせて形成した本発明に係る防振材の第2の実施形態を示した図である。
この第2の実施形態に係る防振材11では、第1と第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bを備える。第1の合成樹脂発泡体板11Aの合成樹脂発泡体平板部12aの下板面には、多数の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aが正方形格子点を形成するように配設されている。この第1の合成樹脂発泡体板11Aに配設された合成樹脂発泡体凸部13aが配設されている格子点の各正方形の中心(対角線の交点)が作る格子点に対応する位置で、第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの下板面に合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bが配設されている。逆に、第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの下板面の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bが配設されている格子点の各正方形の中心(対角線の交点)が作る格子点に対応する位置で、第1の合成樹脂発泡体板11Aの合成樹脂発泡体平板部12aの下板面に合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aが配設されている。そして好ましくは、合成樹脂発泡体凸部13a,13bは、接着或いは一体成形によりそれぞれ合成樹脂発泡体平板部12a,12bに固定され、第1と第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bが形成されている。図示した実施形態のものにあっては、上記第1の合成樹脂発泡体板11Aは、合成樹脂発泡体平板部12aと上記第1種の発泡体凸部13a、および上記第2の合成樹脂発泡体板11Bは、合成樹脂発泡体平板部12bと上記第2種の発泡体凸部13bとが、合成樹脂発泡粒子の型内成型にてそれぞれ一体的に形成されている。
【0020】
図5に示したように、第1、第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bを組み合わせて形成したこの第2の実施形態に係る防振材11では、第2の合成樹脂発泡体板11Bの下板面に形成された合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bが、第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bを支えている。他方、該第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの上板面に第1の合成樹脂発泡体板11Aの下板面に形成された合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aが当接しているが、その直下には前記合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bがなく、発泡体凸部13bと13aとはずれた位置、即ち平面視にて重ならないように配設されている。また、この例では、4個の防振ゴム14が、荷重負担ができるだけ均等になるような位置で第1と第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bを貫通して設けられている。この第1と第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bの組み合わせ、および防振ゴム14の固定は、現場で行なっても、或いは工場で行なってもよい。
【0021】
なお、上記した第1の実施形態と同じく、上記合成樹脂発泡体凸部(第1種と第2種の発泡体凸部)13a,13bは、異なる位置で第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの上板面、下板面にそれぞれ当接或いは固定されていればよく、図3〜図5では正方形格子点を形成する位置に配設した例を示したが、長方形格子点、或いは三角形格子点、六角形格子点を形成する位置であってもよい。また、第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの上下板面で、合成樹脂発泡体凸部13a,13bが該発泡体平板部に当接或いは固定される位置が平面視で重ならないものであれば、一見乱雑に見えるような配置であってもよい。
【0022】
図6は、図3〜図5に示した防振材11を用いて浮き床構造の防振床を構築した状態を示した図である。
この防振床20は、基礎コンクリート床15a上に上記した防振材11を敷設し、その上方からコンクリートを打設し、浮きコンクリート床15bを構築したものである。この第2の実施形態に係る防振材11を用いた防振床20の場合においても、防振ゴム14が適所に配設されているので、この防振ゴム14は、合成樹脂発泡体凸部(第1種と第2種の発泡体凸部)13a,13bだけで上部からの荷重を支えるとき、一部の合成樹脂発泡体凸部が潰れたり、振動吸収力がなくなるのを防止する効果を有する。また、防振材11の他の部分を構成する合成樹脂発泡体と防振ゴム14の振動吸収周波数帯が異なるので、広い周波数帯域で振動を吸収することができる効果も期待できる。
【0023】
また、上記構造の防振床20において振動を受けた場合、防振ゴム14は圧縮変形により振動を吸収し、また、合成樹脂発泡体凸部13a,13bの圧縮変形および第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの撓み変形により振動を吸収する。即ち、上方の浮きコンクリート床15bの振動は防振ゴム14および第1の合成樹脂発泡体板11Aを支える合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aの圧縮変形を生じさせると共に、下方の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bは上方の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aの直下ではない箇所で第2の合成樹脂発泡体板11Bを支えるため、上記第1の実施形態の場合の図2(b)と同様に剪断力による第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの撓み変形を生じさせ、さらに該第2の合成樹脂発泡体板11Bを支える下方の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bに圧縮変形を生じさせる。そのため、振動は、合成樹脂発泡体の圧縮変形のみならず撓み変形によっても吸収され、上記第1の実施形態の場合と同様の理由により、この第2の実施形態に係る防振材11は、広い範囲の周波数域にて効果的に防振し得るものとなる。
【0024】
上記した第2の実施形態に係る防振材11は、2枚の合成樹脂発泡体板11A,11Bを備えるが、3枚以上の合成樹脂発泡体板を重ねることも可能である。この際、少なくとも1枚の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)の直下には、その合成樹脂発泡体平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)が平面視にて重ならないように、第1種と第2種の発泡体凸部を配設することにより、その合成樹脂発泡体平板部に撓み変形を起こさせて、振動を吸収させる。その場合においても、全ての合成樹脂発泡体板を貫通するように防振ゴムを配設し、上からの荷重が均等に合成樹脂発泡体凸部に分散されるように、防振ゴムを配設することが好ましい。
【0025】
上記した本発明に係る防振材の合成樹脂発泡体平板部や第1種および第2種の発泡体凸部を構成する基材樹脂としては、ポリエチレン系樹脂(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン系樹脂(エチレン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、ブテン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体、ポリプロピレン)、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン系共重合体樹脂)、その他、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。これらの基材樹脂は、架橋されたものであっても或いは無架橋のものであってもいずれでもよいが、耐久性の観点から架橋されていることが好ましい。前記の合成樹脂の中でも、得られる防振材の柔軟性と機械的強度とのバランスに優れ、耐水性が高く、また繰り返し圧縮永久歪が小さいことから、架橋ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂が好ましく、防振性能の観点から架橋ポリエチレン系樹脂が最も好ましい。
【0026】
また、上記合成樹脂発泡体平板部の製造方法としては、前記の樹脂を用いる押出発泡法、発泡粒子を用いる型内成形する方法等、従来公知の方法が挙げられる。それらの方法の中でも、得られる防振材の防振特性等の観点から発泡粒子型内成形法が好ましい。当該方法により得られた発泡粒子型内成形体は、縦、横、および厚み方向の機械的物性の均一性に優れることから本発明における防振材として特に好ましい。したがって、上記合成樹脂発泡体平板部や上記発泡体凸部としては、架橋ポリエチレン系樹脂発泡粒子型内成形体が特に好ましい。
【0027】
本発明において、上記の合成樹脂発泡体平板部と発泡体凸部の基材樹脂は通常、同じものを選択するが、異なるものを選択しても構わない。また、発泡体凸部と合成樹脂発泡体平板部を構成する発泡体の密度は、防振機能の観点から、0.02〜0.09g/cm3、更に0.03〜0.06g/cm3が好ましい。なお、本発明における防振材として、発泡体凸部と合成樹脂発泡体平板部を構成する発泡体の密度を異なるように設計することもできる。
また、上記した本発明に係る防振材の発泡体凸部は合成樹脂発泡体平板部に当接或いは固定されて配置される。なお、発泡体凸部と合成樹脂発泡体平板部とが固定される場合は、両者を接着剤にて接着することもできるし、発泡粒子の型内成形法等にて両者を一体成形することもできる。
【0028】
上記合成樹脂発泡体平板部の形状は、正方形、或いは長方形の板状であることが好ましく、具体的には縦900〜2000mm、横600〜1500mmの板状が好ましい。また、上記第1種の発泡体凸部の合成樹脂発泡体平板部への配置は、該合成樹脂発泡体平板部を下から支える第2種の発泡体凸部の位置の中間位置付近であることが、合成樹脂発泡体平板部に撓み変形を有効に生じさせる上で好ましく、支点間距離となる発泡体凸部の間隔は、5〜30mmが好ましく、10〜25mmより好ましい。
【0029】
また、上記第1種および第2種の発泡体凸部の形状は、円柱、角柱、円錐、角錐、角錐台形、逆角錐台形など合成樹脂発泡体平板部を押圧する、或いは支えることのできる柱状であれば特に制限はないが、製造し易く、強度に優れ、破損しにくいことなどから、円柱、多角柱、円錐台形、多角錐台形、或いはそれらの一部を切欠いた形状のものから選択される1種以上の柱状であることが好ましい。これらの中では、圧縮されるに従がってより一層強い弾性が発現する、円錐台形、多角錐台形が好ましい。
【0030】
また、第1種および第2種の発泡体凸部の先端の形状は、防振床構造を構成する際の安定性に優れることから、少なくとも施工状態において平面となるように形成されている。その場合、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に複数配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に複数配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、更に0.15〜0.56、更に0.20〜0.55、特に0.25〜0.53であることが好ましい。該((S1+S2)/S)の値が小さすぎると、防振材の歪量が大きくなり施工性、防振性能等が低下する虞がある。一方、該((S1+S2)/S)の値が大きすぎると、合成樹脂発泡体平板部の撓み変形による防振性能が不十分となる虞がある。したがって、該先端の平面の合計面積(S1+S2)は、防振材1m2あたり、好ましくは1500〜8000cm2であり、更に好ましくは2000〜6000cm2、特に好ましくは2500〜5000cm2である。
【0031】
また、上記のs1とs2との比(s1/s2)は0.3〜3.5であり、更に0.3超、3.0以下、特に0.4〜2.5であることが好ましい。該(s1/s2)の値が小さすぎたり大きすぎたりすると、片側の凸部が他方の凸部よりも過度に大きく歪み、合成樹脂発泡体平板部の撓み変形による防振性能が不十分となる。
【0032】
なお、通常、本発明における防振材は第1種および第2種の発泡体凸部が規則的に繰り返して配置された正方形或いは長方形の定形の板状に形成されるため、上記の面積S、S1、およびS2は、当該防振材の合成樹脂発泡体平板部の板面の面積をS、平板部の上板面に複数配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積s1の合計面積をS1、平板部の下板面に複数配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積s2の合計面積をS2とする。稀に、本発明における防振材が不定形の板状である場合もあるが、その場合には第1種および第2種の発泡体凸部の繰り返し単位を見定めて面積S、S1、およびS2の値を求めることができる。また、大きさや形状の異なる第1種または第2種の発泡体凸部が形成されている防振材においては、s1、s2の値は大きさや形状の異なる発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積の平均値(S1/第1種の発泡体凸部の個数、またはS2/第2種の発泡体凸部の個数)を採用することとする。
【0033】
さらに、第1種および第2種の発泡体凸部の合計数は、凸部の形状等にもよるが特に優れた合成樹脂発泡体平板部の撓み変形による防振性能を発現させる上で、合成樹脂発泡体平板部1m2あたり80〜200個、更に100〜180個であることが好ましい。
【0034】
発泡体凸部の高さは、凸部の形状等にもよるが防振材の特に優れた防振性能を発現させる上で、第1の実施形態、即ち一枚の合成樹脂発泡体平板部の上下板面にそれぞれ第1種および第2種の発泡体凸部を配設した防振材にあっては、合成樹脂発泡体平板部の厚さと第1種および第2種の発泡体凸部の厚さの和の厚み(防振材1の全体厚み)の25〜45%、さらに30〜40%が好ましい。第2の実施形態では、少なくとも上下板面に発泡体凸部が位置する合成樹脂発泡体平板部において、該合成樹脂発泡体平板部の厚さと、該平板部の上下板面の発泡体凸部の厚さの和の厚みの25〜45%、さらに30〜40%が好ましい。凸部の高さは、具体的には10〜100mm、更に20〜50mmが好ましい。
【0035】
上記した本発明の防振床構造において防振材の上に配置される面材としては、コンクリート、フローリング材、合板、樹脂タイルなどが挙げられる。かかる面材は、面材の曲げ撓みによる下方の防振材への振動の伝播を考慮して防振作用を設計する場合には、曲げ剛性が0.5〜30N・m2であることが好ましく、0.6〜20N・m2であることが更に好ましい。なお、本明細書における上記曲げ剛性は、JIS A1408:2001に記載の曲げ試験に基づき、試験体寸法:長さ200mm、幅150mm、曲げ試験スパン:150mm、気燥状態:試験体を通風の良い室内に7日間静置、測定雰囲気温度23℃、湿度50%の条件にて測定される値である。
一方、コンクリートなど殆ど面材の曲げ撓みを考慮しなくてよい程の高い曲げ剛性を有する面材を用いる場合には、面材の振動を広範囲の面積で防振材へ伝播することができ、効率的に本発明の防振作用効果が発現される。
【0036】
本発明の防振材には、必要に応じ本発明の防振材を配置することによる防振作用を阻害しない範囲内で、上記したように防振ゴムを貫通して設けることができる。この防振ゴムは等間隔など規則的に配設されていることが好ましい。この防振ゴムが配設される間隔は、耐荷重性能向上の観点から、100〜500mm、さらに150〜350mmであることが好ましい。防振ゴムが規則的に配設されていると、例えば、防振材の上にコンクリートを打設して浮き床構造を形成したときなど、上のコンクリートの荷重が均等に分散されるので、一部の合成樹脂発泡体凸部に大きい荷重がかかり該凸部が潰れることを防止できる。
【0037】
防振ゴムの材質としては、防振材を構成する発泡体、特に凸部を構成する発泡体の防振性能を阻害せずに防振材の耐荷重を向上させる観点から、前記凸部の動的バネ定数よりも小さな動的バネ定数を有する防振ゴムが好ましく選択され、具体的には、天然ゴム製のものなどを採用することができる。なお、上記動的バネ定数はJIS A 6321で規定されている測定方法に基づいて、正弦波加振法で得られた固有振動数から求められる値である。
【0038】
防振ゴムの形状に制限はないが、防振材に取り付け易いことから、四角柱または円柱が好ましい。その水平断面が正方形や長方形の場合、最大辺の長さは、30〜100mm、好ましくは40〜70mmである。その水平断面が円形の場合、直径の長さは、30〜100mm、好ましくは40〜70mmである。防振ゴムの取り付け方としては、平板部に防振ゴムの水平断面形状の孔を形成し、該孔に防振ゴムを嵌入させる方法が挙げられる。防振材の厚みは、防振床構造における十分な防振材容積および防振のための空間容積を保ち優れた防振性能を発揮させる上で、防振材の全体高さと同様、或いは防振材の全体高さよりも多少厚くすることが好ましく、具体的には25mm以上が好ましい。かかる観点から、より好ましくは30mm以上、さらに好ましくは50mm以上である。該厚みが厚すぎると、一定の大きさの建築物において居住等の空間が狭くなることから、その上限は、好ましくは150mm、さらに好ましくは100mmである。
【0039】
なお、ビル地下駐車場の防振床構造の上にエレベータ設備を設ける場所やマンション個室の防振床構造の上にピアノなどの重量物が載置される場所には多くの防振ゴムを配設できるように、合成樹脂発泡体平板部に防振ゴム用の予備の貫通孔を設けておいてもよい。また、そのような箇所に設置するために特別に多数の防振ゴムを工場で配設したものを出荷してもよい。
【0040】
また、第1の実施形態において、第1種と第2種の発泡体凸部の発泡倍率を同一にせず異なる発泡倍率とすることにより、第1種と第2種の発泡体凸部の圧縮弾性率を変えることにより、異なる周波数帯で振動を吸収させ広い周波数帯で振動吸収の効率を向上させてもよい。また、同様の観点から、第2の実施形態において、第1の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部とこれに固定された第1種の発泡体凸部の発泡倍率と、第2の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部とこれに固定された第2種の発泡体凸部の発泡倍率とを異なるものとしてもよい。
【0041】
本発明の防振材は、住宅の床、精密機器を設置する測定室基礎床、スタジオ等に用いられる床用の防振材;住宅、ビル、スタジオ等に用いられる防振壁面;精密機器等の振動を嫌うもの等の基台等として用いられる除振用の防振材;鉄道、地下鉄等の振動遮断の目的で用いられる振動遮断材;工事車両、機械の振動吸収用等として用いられる仮設防振材等の用途に用いることができ、防振性、遮音性に優れたものであり、特に、防振床用等の構造物用防振材として好適なものである。
【0042】
以上、本発明に係る防振床構造および防振材の好ましい実施形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、さらに種々の変形および変更が可能であることは当然である。
【実施例】
【0043】
上記した本発明の第1と第2の実施形態に係る防振材と、それぞれに対応する従来技術の防振材とを比較する試験等を行った。
【0044】
図7は各試験体の振動伝達率の測定方法を概念的に示した図である。
この方法は、防振ゴムなどの試験に広く使われているものであり、試験体100の上に重量物101を置き、加振装置102で試験体100を加振し、重量物101の振動の振幅を測定するものである。加振装置102の強制加振の振幅a1を入力とし、これに対する出力である重量物101の振幅をa2とするとき、振動が伝わった割合τを振動伝達率といい、次の(1)式で表わされる。
τ=|a2/a1|・・・(1)
また、防振支持をした時の固有振動数をf0、強制加振の振動数をfとするとき、τは次の(2)式で表わされる。
τ=|1/(1−(f/f0)2)|・・・(2)
強制加振の振動数fを変えながら、a1とa2を測定し、(1)式で振動伝達率τを求め、(2)式を用いて固有振動数f0が求まる。
【0045】
図8は、強制加振の振動数fを変えたときの理論に基づく振動伝達率τの変化を示した図である。上記式(2)および図8から分かるように、τはf=f0において発散する。同じことであるが、τの逆数はゼロ点となる。このゼロクロス点から固有周波数f0が求まる。理論により、固有振動数f0ラ√2以上の振動数領域で防振効果があることが分かっている。これ故、固有振動数f0を測定することにより、そのものの防振効果を判定することができる。
上記理論に基づき、幾つかの試験体について次のように試験を行った。
【0046】
全ての試験において、重量物としては25mm厚300ラ300mmの鉄板(荷重:17.6kg)、強制加振は5〜100Hz、0.2Gで行った。試験体は全てポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体(株式会社ジェイエスピー製:ミラブロック26S)で作製した合成樹脂発泡体平板部と種々の形状寸法の合成樹脂発泡体凸部を接着剤で接着して作った。第1〜4の試験においては合成樹脂発泡体平板部は全て同一寸法であり、厚さ25mm、縦横300mmの正方形板体で行なった。また、第5、6の試験においては合成樹脂発泡体平板部は、厚さ25mm、縦横250mmの正方形板体で行なった。図9〜図14は、作製した種々試験体を示した図である。
【0047】
第1の試験は、図9に示した試験体により行なった。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の下板面の四隅と周縁中央および中心に40ラ40mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計9個配設され、その下板面の合成樹脂発泡体凸部が作る正方形の対角線の交点に対応する位置で、合成樹脂発泡体平板部の上板面に60ラ60mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計4個配設されているものである。この試験体において得られた固有振動数f0は8Hzであった。なお、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)は0.32、(s1/s2)は2.3である。
【0048】
第2の試験は、図10に示した試験体で行った。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の上板面と下板面の対応する位置にそれぞれ40ラ40mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部を計9個ずつ配設したものである。この試験体において得られた固有振動数f0は15Hzであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.32、(s1/s2)は1.0である。
【0049】
第1の試験で得られた固有振動数(8Hz)が第2の試験で得られた固有振動数(15Hz)より小さい理由は,次のように説明される。
第1の試験体は、本発明の第1の実施形態に対応する。理解を容易にするために、図9には、図1の部材に対応する部材に同一の参照番号を付した。上の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aと下の合成樹脂発泡体凸部(第2種の脂発泡体凸部)3bが、合成樹脂発泡体平板部2の上板面と下板面において対応しない位置に配設されているので、合成樹脂発泡体平板部2には撓み変形が起こり、固有振動数は低いものとなった。これに対して、第2の試験の比較用試験体では、合成樹脂発泡体凸部の両者が対応する位置に配設されているので、合成樹脂発泡体平板部の撓み変形は起らず、合成樹脂発泡体凸部の圧縮変形のみが起っており、固有振動数は高い。
この第1と第2の試験の対比結果は、本発明の第1の実施形態が、撓み変形により低い振動数域まで防振効果を有することを示している。
【0050】
第3の試験は、図11に示した試験体で行った。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の下板面にそれぞれ合成樹脂発泡体凸部を配設した2枚の合成樹脂発泡体板が重ねられている試験体である。下の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部の下板面の四隅と周縁中央および中心に40ラ40mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計9個配設されている。上の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部の下板面の合成樹脂発泡体凸部は、下の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体凸部が作る正方形格子の中心(対角線の交点)に対応する位置に60ラ60mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計4個配設されている。この試験体において得られた固有振動数f0は8Hzであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.32、(s1/s2)は2.3である。
【0051】
第4の試験は、図12に示した試験体で行った。この試験体は、2枚の合成樹脂発泡体板のそれぞれの合成樹脂発泡体平板部の下板面の同一位置に40ラ40mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部を計9個ずつ配設し、その2枚の合成樹脂発泡体板を重ね合わせたものである。この試験体において得られた固有振動数f0は14Hzであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.32、(s1/s2)は1.00である。
【0052】
第3の試験で得られた固有振動数(8Hz)が第4の試験で得られた固有振動数(14Hz)より小さい理由は、第1と第2の試験の結果と同様に、次のように説明される。
第3の試験の試験体は、本発明の第2の実施形形態に対応する。理解を容易にするために、図11において、図3〜図5の部材に対応する部材に同一の参照番号を付した。下の合成樹脂発泡体板11Bについて、その平板部12bの上面に配設されている合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aと下面に配設されている合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bが、この合成樹脂発泡体平板部12bの上板面と下板面において平面視で重なり合わない位置に配設されているので、この合成樹脂発泡体平板部12bに撓み変形が起こり、固有振動数は低いものとなった。これに対して、第4の試験の比較用試験体では、合成樹脂発泡体凸部の両者が平面視で重なる位置に配設されているので、合成樹脂発泡体平板部の撓み変形は起らず、合成樹脂発泡体凸部の圧縮変形のみが起っており、固有振動数は高い。
この第3と第4の試験の対比結果は、本発明の第2の実施形態が、撓み変形により低い振動数域まで防振効果を有することを示している。
【0053】
第5の試験は、図13に示した試験体で行った。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の下板面の四隅と周縁中央および中心に底面が50ラ50mm、上面が40ラ40mmの正四角錐台形(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計9個配設され、その下板面の合成樹脂発泡体凸部が作る正方形の対角線の交点に対応する位置で、合成樹脂発泡体平板部の上板面に底面が50ラ50mm、上面が40ラ40mmの正四角錐台形(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計4個配設されているものである。この試験体において得られた固有振動数f0は10Hzであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.28、(s1/s2)は1.0である。
【0054】
第6の試験は、図14に示した試験体で行った。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の下板面の四隅と周縁中央および中心に底面が50ラ50mm、上面が40ラ40mmの正四角錐台形(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計9個配設され、その下板面の合成樹脂発泡体凸部が作る正方形の対角線の交点に対応する位置で、合成樹脂発泡体平板部の上板面に20ラ20mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計4個配設されているものである。この試験体において得られた固有振動数f0は9Hzであったが、振動伝達率曲線において固有振動数f0の高周波数側の17Hz付近に第2のピークが現れるものであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.21、(s1/s2)は0.3である。
【0055】
第5、6の試験で、使用した試験体は、第1種の発泡体凸部3aが平板部2の上板面に配置されている位置と第2種の発泡体凸部3bが平板部2の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように配置された防振材であるため、共に良好な固有振動数を示した。しかしながら、第6の試験において、使用した試験体は(s1/s2)が0.3であったため、第1種の発泡体凸部3aが圧縮による底付きを起こし振動伝達率曲線において固有振動数f0の高周波数側の17Hz付近にピークが現れ防振効果が第5の試験の結果よりも劣るものとなった。この第5と第6の試験の対比結果は、本発明の((S1+S2)/S)の要件を満足するものであっても、(s1/s2)の値が小さすぎたりする場合には、優れた防振効果に差異が生じ悪い影響を与えることがあることを示している。また、第6の試験結果は、第1種の発泡体凸部および/または第2種の発泡体凸部が、顕著な圧縮による底付きを起こすような場合、即ち((S1+S2)/S)の値が小さすぎる場合などは、防振効果が劣るものとなることを示唆している。
【符号の説明】
【0056】
1 防振材
2 合成樹脂発泡体平板部
3a 第1種の発泡体凸部
3b 第2種の発泡体凸部
4 防振ゴム
5a 基礎コンクリート床
5b 浮きコンクリート床
6 合板
10 防振床
11 防振材
11A 第1の合成樹脂発泡体板
11B 第2の合成樹脂発泡体板
12a 合成樹脂発泡体平板部
12b 合成樹脂発泡体平板部
13a 第1種の発泡体凸部
13b 第2種の発泡体凸部
14 防振ゴム
15a 基礎コンクリート床
15b 浮きコンクリート床
20 防振床
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振性能に優れる防振床構造および防振材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防振材として、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形板やグラスウール製ボードが知られている。
しかし、ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形板には、発泡倍率にもよるが柔軟性が乏しいため、発泡板をあらかじめ圧縮処理して気泡を座屈させるなどして柔軟性を付与したものが防振材として使用されており、生産性、上載荷重制限における課題がある。一方、グラスウール製ボードには、施工性に課題があり、また水分を吸収したり長期に亘るクリープによって厚みの減少が生じ、その結果、必要な防振効果を維持できなくなる虞もある。
【0003】
そこで、本発明者等は、先に前記課題を解決するための防振材を提案した(特許文献1および特許文献2)。
【0004】
特許文献1の防振材は、複数の防振ゴムが所定の間隔部分を設けて配設され、間隔部分には合成樹脂発泡体と板材または網材とが積層されて配設されており、合成樹脂発泡体と防振ゴムと、板材または網材とを一体化した構成の防振材である。
この特許文献1の防振材は、工場生産が可能であると共に軽量性に優れ、施工現場での取り付け、施工が簡単に行なうことができるものである。また、発泡体と防振ゴムとを組み合わせたものであり、要求される振動減衰量、耐荷重に対し、比較的自由に対応することができるものである。さらに、合成樹脂発泡体としてポリオレフィン系樹脂発泡体を選択した場合には、圧縮回復性、耐水性に優れているため、住宅用防振材としても好適なものであった。
【0005】
特許文献2の防振材は、合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の片面に所定の間隔を設けて配設された複数のポリオレフィン系樹脂発泡体凸部とからなり、該凸部の形状が柱状であり、該凸部の高さが防振材の厚みの25%以上である防振材である。
この特許文献2に開示された防振材は、合成樹脂発泡体平板部と特定のポリオレフィン系樹脂発泡体凸部とが組み合わされた形状のものからなるので、該防振材を基礎コンクリート床と浮きコンクリート床との間にポリオレフィン系樹脂発泡体凸部を下側に向けて敷設することにより、該凸部の周囲に空気層による空間を形成することができ、防振特性に優れる簡易的な浮床式の防振床構造を容易に施工することができるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−242314号公報
【特許文献2】実用新案登録3159295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1,2等に開示された防振材は、いずれも合成樹脂発泡体の圧縮変形を利用して振動を減衰させるものであり、例えば、減衰対象の振動数が低くなって来ると圧縮強度との兼ね合いから防振設計が難しいものであった。即ち、従来は、防振材の弾性率を小さくすることにより、防振性能を改善する努力もなされてきたが、材料の弾性率を小さくすることには圧縮強度との兼ね合いから限界があり、十分な防振性能を有するものとすることは困難であった。
【0008】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、優れた防振性能が発現される防振床構造および防振材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、次の〔1〕〜〔7〕の防振床構造および防振材とした。
〔1〕構造物の床基盤と、該床基盤の上に敷設された防振材と、該防振材の上に配置された面材とからなる防振床構造であって、上記防振材が、少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部を備え、上記複数の合成樹脂発泡体凸部は上記平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される第1種の発泡体凸部と上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される第2種の発泡体凸部とにより構成され、上記第1種の発泡体凸部が上記平板部の上板面に配置されている位置と上記第2種の発泡体凸部が上記平板部の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように、上記合成樹脂発泡体凸部が上記平板部の板面に配設されており、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、かつs1とs2との比(s1/s2)が0.3〜3.5であることを特徴とする、防振床構造。
〔2〕上記合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される上記第1種の発泡体凸部が正方形格子点を形成するように配設され、上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される上記第2種の発泡体凸部が上記正方形の対角線の交点の位置に配設されていることを特徴とする、上記〔1〕に記載の防振床構造。
〔3〕上記合成樹脂発泡体平板部の適所に、該平板部を貫通した状態で防振ゴムが取り付けられていることを特徴とする、上記〔1〕または〔2〕に記載の防振床構造。
〔4〕上記合成樹脂発泡体平板部と上記第1種および第2種の発泡体凸部とが、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子型内成形体であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の防振床構造。
〔5〕上記合成樹脂発泡体平板部と上記第1種および第2種の発泡体凸部とが、架橋ポリエチレン系樹脂発泡粒子型内成形体であることを特徴とする、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の防振床構造。
〔6〕少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部を備え、上記複数の合成樹脂発泡体凸部は上記平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される第1種の発泡体凸部と上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される第2種の発泡体凸部とにより構成され、上記第1種の発泡体凸部が上記平板部の上板面に配置されている位置と上記第2種の発泡体凸部が上記平板部の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように、上記合成樹脂発泡体凸部が上記平板部の板面に配設されており、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、かつs1とs2との比(s1/s2)が0.75〜1.25であることを特徴とする、防振材。
〔7〕上記合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される上記第1種の発泡体凸部が正方形格子点を形成するように配設され、上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される上記第2種の発泡体凸部が上記正方形の対角線の交点の位置に配設されていることを特徴とする、上記〔6〕に記載の防振材。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明の防振床構造によれば、合成樹脂発泡体凸部を合成樹脂発泡体平板部の上下板面にそれぞれ配設した防振材が床基盤上に敷設され、該防振材の上にコンクリート床などの面材が配置されたものであって、上記防振材は、合成樹脂発泡体平板部の上板面と下板面で合成樹脂発泡体凸部が該平板部に配置される位置が異なる位置に配設されていると共に、該発泡体凸部と該平板部の面積等が所定の関係を満足するものに設計されているため、振動に対して合成樹脂発泡体平板部の圧縮変形のみならず効果的な撓み変形によっても振動を減衰させることができ、より広い範囲の周波数域の振動を効果的に防振し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の防振床構造に係る防振材の第1の実施形態を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図2】図1の防振材を用いて構築した本発明の防振床構造を示した図であって、(a)は図1のA−A線に沿う部分に相当する防振床部分の概念的な断面図、(b)は(a)図のB部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態において用いる第1の合成樹脂発泡体板を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図4】本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態において用いる第2の合成樹脂発泡体板を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図5】図3、図4に示した合成樹脂発泡体板を組み合わせて形成した本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図6】図3〜図5の防振材を用いて構築した本発明の防振床構造を示した図であって、図5のC−C線に沿う部分に相当する防振床部分の概念的な断面図である。
【図7】防振材の振動伝達率の測定方法を概念的に示した正面図である。
【図8】強制加振の振動数を変えたときの理論に基づく振動伝達率の変化を示した図である。
【図9】本発明の防振床構造に係る防振材の第1の実施形態の一例として作製した実施例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図10】図9の実施例の試験体に対して圧縮変形のみを生じさせる従来技術の一例として作製した比較例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図11】本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態の一例として作製した実施例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図12】図11の実施例の試験体に対して圧縮変形のみを生じさせる従来技術の一例として作製した比較例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図13】本発明の防振床構造に係る防振材の第1の実施形態の他の例として作製した実施例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図14】図13の実施例の試験体に対して上面の面積が小さな第1種の発泡体凸部が形成されている一例として作製した実施例の試験体を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、上記した本発明の防振床構造に係る防振材の実施形態を、図面を示して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の防振床構造に係る防振材の第1の実施形態を示した図である。
この例では、防振材1は、一枚の合成樹脂発泡体平板部2を備えている。そして、該合成樹脂発泡体平板部2の上板面と下板面に、多数の合成樹脂発泡体凸部3a,3bが正方形格子点を形成するようにそれぞれ配設されている。
【0014】
合成樹脂発泡体平板部2の上下板面に配設された上記合成樹脂発泡体凸部3a,3bは、図1に示されているように、上板面に合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aが配設されている箇所の下板面には合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bがなく、下板面に合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bが配設されている箇所の上板面には合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aがなく、上下板面で平面視で重ならないように配設されている。具体的には、上板面の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aが配設されている正方形格子点の各正方形の中心(対角線の交点)が作る格子点の位置に、下板面の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bが配設されている。そして好ましくは、上記合成樹脂発泡体凸部3a,3bは、上記合成樹脂発泡体平板部2に接着或いは一体成型等により固定されており、図示した実施形態のものにあっては、合成樹脂発泡体平板部2と合成樹脂発泡体凸部3a,3bとが、合成樹脂発泡粒子の型内成型にて一体的に形成されている。また、この例では、4個の防振ゴム4が、荷重負担ができるだけ均等になるような位置で合成樹脂発泡体平板部2を貫通して設けられている。この防振ゴム4は、合成樹脂発泡体平板部2に現場で固定されても、或いは予め工場で固定されてもよい。
【0015】
上記合成樹脂発泡体凸部(第1種と第2種の発泡体凸部)3a,3bは、均等に分布するように合成樹脂発泡体平板部2の上下板面にそれぞれ配設されていればよく、ここでは正方形格子点を形成するように配設した例を示したが、長方形格子点、或いは三角形格子点、六角形格子点を形成するように配設してもよい。また、合成樹脂発泡体平板部2の上下板面で、合成樹脂発泡体凸部3a,3bが該合成樹脂発泡体平板部2に配置される位置が平面視で重ならないものであれば、一見乱雑に見えるような配置であってもよい。
【0016】
図2は、図1の防振材を用いて浮き床構造の防振床を構築した状態を示した図である。
この防振床10は、基礎コンクリート床5a上に上記した防振材1を敷設し、その上方に合板6を介してコンクリートを打設しコンクリート床からなる面材を形成し、浮きコンクリート床5bを構築したものである。この場合、荷重分布が均等になるように防振材1に防振ゴム4が配設されているので、合成樹脂発泡体凸部(第1種と第2種の発泡体凸部)3a,3bだけで上部からの荷重を支えるとき、一部の合成樹脂発泡体凸部が潰れたり、振動吸収力が低下することがあるが、防振ゴム4は、これを防止する効果を有する。また、防振ゴム4の振動吸収周波数帯は、防振材1の他の部分を構成する合成樹脂発泡体平板部2などの合成樹脂発泡体のそれとは異なるので、防振ゴム4を適所に設けることは、広い周波数帯域で振動を吸収することができる効果も期待できる。
【0017】
また、上記構造の防振床10において振動を受けた場合、合成樹脂発泡体凸部3a,3bが圧縮変形すると共に合成樹脂発泡体平板部2が撓み変形し、振動を吸収する。即ち、上方の浮きコンクリート床5aの振動は、防振ゴム4および上方の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aの圧縮変形を生じさせると共に、下方の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bは上方の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aの直下ではない箇所で合成樹脂発泡体平板部2を支えるため、図2(b)に拡大して示すような剪断力による合成樹脂発泡体平板部2の撓み変形を生じさせ、さらに合成樹脂発泡体平板部2を支える合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)3bに圧縮変形を生じさせる。そのため、振動は、合成樹脂発泡体の圧縮変形のみならず撓み変形によっても吸収される。
【0018】
ここで、固体の圧縮変形に関係する縦弾性係数Eと撓み変形に関係する横弾性係数Gは、ポアソン比をν(ν>0)とすると、E=G/2(1+ν)の関係がある。
そのため、一般に固体の縦弾性係数Eは横弾性係数Gよりも大きい。また図2から分かるように、形成される床の厚さを考慮した場合、合成樹脂発泡体凸部の厚みより合成樹脂発泡体凸部の間隔(支点間の距離)を大きくすることができる。そのため、横弾性係数Gと支点間の距離が関係する撓み変形の固有振動数は、縦弾性係数Eと厚みが関係する圧縮変形の固有振動数より低いものとなり、この両者の変形を利用することとなる上記防振材1の固有振動数は、圧縮変形のみを利用するものに比して低いものとなると考えられる。防振材の固有振動数が低い方向にシフトすることは、防振効果が認められる周波数域が広がることを意味し、上記第1の実施形態に係る防振材1は、広い周波数域で振動を効果的に防振することができるものとなる。
【0019】
図3〜図5は、本発明の防振床構造に係る防振材の第2の実施形態を示した図であり、図3は第2の実施形態に係る防振材を構成する第1の合成樹脂発泡体板を示した図、図4は同じく第2の実施形態に係る防振材を構成する第2の合成樹脂発泡体板を示した図、図5は前記第1、第2の合成樹脂発泡体板を組み合わせて形成した本発明に係る防振材の第2の実施形態を示した図である。
この第2の実施形態に係る防振材11では、第1と第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bを備える。第1の合成樹脂発泡体板11Aの合成樹脂発泡体平板部12aの下板面には、多数の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aが正方形格子点を形成するように配設されている。この第1の合成樹脂発泡体板11Aに配設された合成樹脂発泡体凸部13aが配設されている格子点の各正方形の中心(対角線の交点)が作る格子点に対応する位置で、第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの下板面に合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bが配設されている。逆に、第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの下板面の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bが配設されている格子点の各正方形の中心(対角線の交点)が作る格子点に対応する位置で、第1の合成樹脂発泡体板11Aの合成樹脂発泡体平板部12aの下板面に合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aが配設されている。そして好ましくは、合成樹脂発泡体凸部13a,13bは、接着或いは一体成形によりそれぞれ合成樹脂発泡体平板部12a,12bに固定され、第1と第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bが形成されている。図示した実施形態のものにあっては、上記第1の合成樹脂発泡体板11Aは、合成樹脂発泡体平板部12aと上記第1種の発泡体凸部13a、および上記第2の合成樹脂発泡体板11Bは、合成樹脂発泡体平板部12bと上記第2種の発泡体凸部13bとが、合成樹脂発泡粒子の型内成型にてそれぞれ一体的に形成されている。
【0020】
図5に示したように、第1、第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bを組み合わせて形成したこの第2の実施形態に係る防振材11では、第2の合成樹脂発泡体板11Bの下板面に形成された合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bが、第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bを支えている。他方、該第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの上板面に第1の合成樹脂発泡体板11Aの下板面に形成された合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aが当接しているが、その直下には前記合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bがなく、発泡体凸部13bと13aとはずれた位置、即ち平面視にて重ならないように配設されている。また、この例では、4個の防振ゴム14が、荷重負担ができるだけ均等になるような位置で第1と第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bを貫通して設けられている。この第1と第2の合成樹脂発泡体板11A,11Bの組み合わせ、および防振ゴム14の固定は、現場で行なっても、或いは工場で行なってもよい。
【0021】
なお、上記した第1の実施形態と同じく、上記合成樹脂発泡体凸部(第1種と第2種の発泡体凸部)13a,13bは、異なる位置で第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの上板面、下板面にそれぞれ当接或いは固定されていればよく、図3〜図5では正方形格子点を形成する位置に配設した例を示したが、長方形格子点、或いは三角形格子点、六角形格子点を形成する位置であってもよい。また、第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの上下板面で、合成樹脂発泡体凸部13a,13bが該発泡体平板部に当接或いは固定される位置が平面視で重ならないものであれば、一見乱雑に見えるような配置であってもよい。
【0022】
図6は、図3〜図5に示した防振材11を用いて浮き床構造の防振床を構築した状態を示した図である。
この防振床20は、基礎コンクリート床15a上に上記した防振材11を敷設し、その上方からコンクリートを打設し、浮きコンクリート床15bを構築したものである。この第2の実施形態に係る防振材11を用いた防振床20の場合においても、防振ゴム14が適所に配設されているので、この防振ゴム14は、合成樹脂発泡体凸部(第1種と第2種の発泡体凸部)13a,13bだけで上部からの荷重を支えるとき、一部の合成樹脂発泡体凸部が潰れたり、振動吸収力がなくなるのを防止する効果を有する。また、防振材11の他の部分を構成する合成樹脂発泡体と防振ゴム14の振動吸収周波数帯が異なるので、広い周波数帯域で振動を吸収することができる効果も期待できる。
【0023】
また、上記構造の防振床20において振動を受けた場合、防振ゴム14は圧縮変形により振動を吸収し、また、合成樹脂発泡体凸部13a,13bの圧縮変形および第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの撓み変形により振動を吸収する。即ち、上方の浮きコンクリート床15bの振動は防振ゴム14および第1の合成樹脂発泡体板11Aを支える合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aの圧縮変形を生じさせると共に、下方の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bは上方の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aの直下ではない箇所で第2の合成樹脂発泡体板11Bを支えるため、上記第1の実施形態の場合の図2(b)と同様に剪断力による第2の合成樹脂発泡体板11Bの合成樹脂発泡体平板部12bの撓み変形を生じさせ、さらに該第2の合成樹脂発泡体板11Bを支える下方の合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bに圧縮変形を生じさせる。そのため、振動は、合成樹脂発泡体の圧縮変形のみならず撓み変形によっても吸収され、上記第1の実施形態の場合と同様の理由により、この第2の実施形態に係る防振材11は、広い範囲の周波数域にて効果的に防振し得るものとなる。
【0024】
上記した第2の実施形態に係る防振材11は、2枚の合成樹脂発泡体板11A,11Bを備えるが、3枚以上の合成樹脂発泡体板を重ねることも可能である。この際、少なくとも1枚の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)の直下には、その合成樹脂発泡体平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)が平面視にて重ならないように、第1種と第2種の発泡体凸部を配設することにより、その合成樹脂発泡体平板部に撓み変形を起こさせて、振動を吸収させる。その場合においても、全ての合成樹脂発泡体板を貫通するように防振ゴムを配設し、上からの荷重が均等に合成樹脂発泡体凸部に分散されるように、防振ゴムを配設することが好ましい。
【0025】
上記した本発明に係る防振材の合成樹脂発泡体平板部や第1種および第2種の発泡体凸部を構成する基材樹脂としては、ポリエチレン系樹脂(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン系樹脂(エチレン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、ブテン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体、ポリプロピレン)、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン系共重合体樹脂)、その他、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。これらの基材樹脂は、架橋されたものであっても或いは無架橋のものであってもいずれでもよいが、耐久性の観点から架橋されていることが好ましい。前記の合成樹脂の中でも、得られる防振材の柔軟性と機械的強度とのバランスに優れ、耐水性が高く、また繰り返し圧縮永久歪が小さいことから、架橋ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との複合樹脂が好ましく、防振性能の観点から架橋ポリエチレン系樹脂が最も好ましい。
【0026】
また、上記合成樹脂発泡体平板部の製造方法としては、前記の樹脂を用いる押出発泡法、発泡粒子を用いる型内成形する方法等、従来公知の方法が挙げられる。それらの方法の中でも、得られる防振材の防振特性等の観点から発泡粒子型内成形法が好ましい。当該方法により得られた発泡粒子型内成形体は、縦、横、および厚み方向の機械的物性の均一性に優れることから本発明における防振材として特に好ましい。したがって、上記合成樹脂発泡体平板部や上記発泡体凸部としては、架橋ポリエチレン系樹脂発泡粒子型内成形体が特に好ましい。
【0027】
本発明において、上記の合成樹脂発泡体平板部と発泡体凸部の基材樹脂は通常、同じものを選択するが、異なるものを選択しても構わない。また、発泡体凸部と合成樹脂発泡体平板部を構成する発泡体の密度は、防振機能の観点から、0.02〜0.09g/cm3、更に0.03〜0.06g/cm3が好ましい。なお、本発明における防振材として、発泡体凸部と合成樹脂発泡体平板部を構成する発泡体の密度を異なるように設計することもできる。
また、上記した本発明に係る防振材の発泡体凸部は合成樹脂発泡体平板部に当接或いは固定されて配置される。なお、発泡体凸部と合成樹脂発泡体平板部とが固定される場合は、両者を接着剤にて接着することもできるし、発泡粒子の型内成形法等にて両者を一体成形することもできる。
【0028】
上記合成樹脂発泡体平板部の形状は、正方形、或いは長方形の板状であることが好ましく、具体的には縦900〜2000mm、横600〜1500mmの板状が好ましい。また、上記第1種の発泡体凸部の合成樹脂発泡体平板部への配置は、該合成樹脂発泡体平板部を下から支える第2種の発泡体凸部の位置の中間位置付近であることが、合成樹脂発泡体平板部に撓み変形を有効に生じさせる上で好ましく、支点間距離となる発泡体凸部の間隔は、5〜30mmが好ましく、10〜25mmより好ましい。
【0029】
また、上記第1種および第2種の発泡体凸部の形状は、円柱、角柱、円錐、角錐、角錐台形、逆角錐台形など合成樹脂発泡体平板部を押圧する、或いは支えることのできる柱状であれば特に制限はないが、製造し易く、強度に優れ、破損しにくいことなどから、円柱、多角柱、円錐台形、多角錐台形、或いはそれらの一部を切欠いた形状のものから選択される1種以上の柱状であることが好ましい。これらの中では、圧縮されるに従がってより一層強い弾性が発現する、円錐台形、多角錐台形が好ましい。
【0030】
また、第1種および第2種の発泡体凸部の先端の形状は、防振床構造を構成する際の安定性に優れることから、少なくとも施工状態において平面となるように形成されている。その場合、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に複数配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に複数配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、更に0.15〜0.56、更に0.20〜0.55、特に0.25〜0.53であることが好ましい。該((S1+S2)/S)の値が小さすぎると、防振材の歪量が大きくなり施工性、防振性能等が低下する虞がある。一方、該((S1+S2)/S)の値が大きすぎると、合成樹脂発泡体平板部の撓み変形による防振性能が不十分となる虞がある。したがって、該先端の平面の合計面積(S1+S2)は、防振材1m2あたり、好ましくは1500〜8000cm2であり、更に好ましくは2000〜6000cm2、特に好ましくは2500〜5000cm2である。
【0031】
また、上記のs1とs2との比(s1/s2)は0.3〜3.5であり、更に0.3超、3.0以下、特に0.4〜2.5であることが好ましい。該(s1/s2)の値が小さすぎたり大きすぎたりすると、片側の凸部が他方の凸部よりも過度に大きく歪み、合成樹脂発泡体平板部の撓み変形による防振性能が不十分となる。
【0032】
なお、通常、本発明における防振材は第1種および第2種の発泡体凸部が規則的に繰り返して配置された正方形或いは長方形の定形の板状に形成されるため、上記の面積S、S1、およびS2は、当該防振材の合成樹脂発泡体平板部の板面の面積をS、平板部の上板面に複数配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積s1の合計面積をS1、平板部の下板面に複数配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積s2の合計面積をS2とする。稀に、本発明における防振材が不定形の板状である場合もあるが、その場合には第1種および第2種の発泡体凸部の繰り返し単位を見定めて面積S、S1、およびS2の値を求めることができる。また、大きさや形状の異なる第1種または第2種の発泡体凸部が形成されている防振材においては、s1、s2の値は大きさや形状の異なる発泡体凸部の凸部上面(先端の平面)の面積の平均値(S1/第1種の発泡体凸部の個数、またはS2/第2種の発泡体凸部の個数)を採用することとする。
【0033】
さらに、第1種および第2種の発泡体凸部の合計数は、凸部の形状等にもよるが特に優れた合成樹脂発泡体平板部の撓み変形による防振性能を発現させる上で、合成樹脂発泡体平板部1m2あたり80〜200個、更に100〜180個であることが好ましい。
【0034】
発泡体凸部の高さは、凸部の形状等にもよるが防振材の特に優れた防振性能を発現させる上で、第1の実施形態、即ち一枚の合成樹脂発泡体平板部の上下板面にそれぞれ第1種および第2種の発泡体凸部を配設した防振材にあっては、合成樹脂発泡体平板部の厚さと第1種および第2種の発泡体凸部の厚さの和の厚み(防振材1の全体厚み)の25〜45%、さらに30〜40%が好ましい。第2の実施形態では、少なくとも上下板面に発泡体凸部が位置する合成樹脂発泡体平板部において、該合成樹脂発泡体平板部の厚さと、該平板部の上下板面の発泡体凸部の厚さの和の厚みの25〜45%、さらに30〜40%が好ましい。凸部の高さは、具体的には10〜100mm、更に20〜50mmが好ましい。
【0035】
上記した本発明の防振床構造において防振材の上に配置される面材としては、コンクリート、フローリング材、合板、樹脂タイルなどが挙げられる。かかる面材は、面材の曲げ撓みによる下方の防振材への振動の伝播を考慮して防振作用を設計する場合には、曲げ剛性が0.5〜30N・m2であることが好ましく、0.6〜20N・m2であることが更に好ましい。なお、本明細書における上記曲げ剛性は、JIS A1408:2001に記載の曲げ試験に基づき、試験体寸法:長さ200mm、幅150mm、曲げ試験スパン:150mm、気燥状態:試験体を通風の良い室内に7日間静置、測定雰囲気温度23℃、湿度50%の条件にて測定される値である。
一方、コンクリートなど殆ど面材の曲げ撓みを考慮しなくてよい程の高い曲げ剛性を有する面材を用いる場合には、面材の振動を広範囲の面積で防振材へ伝播することができ、効率的に本発明の防振作用効果が発現される。
【0036】
本発明の防振材には、必要に応じ本発明の防振材を配置することによる防振作用を阻害しない範囲内で、上記したように防振ゴムを貫通して設けることができる。この防振ゴムは等間隔など規則的に配設されていることが好ましい。この防振ゴムが配設される間隔は、耐荷重性能向上の観点から、100〜500mm、さらに150〜350mmであることが好ましい。防振ゴムが規則的に配設されていると、例えば、防振材の上にコンクリートを打設して浮き床構造を形成したときなど、上のコンクリートの荷重が均等に分散されるので、一部の合成樹脂発泡体凸部に大きい荷重がかかり該凸部が潰れることを防止できる。
【0037】
防振ゴムの材質としては、防振材を構成する発泡体、特に凸部を構成する発泡体の防振性能を阻害せずに防振材の耐荷重を向上させる観点から、前記凸部の動的バネ定数よりも小さな動的バネ定数を有する防振ゴムが好ましく選択され、具体的には、天然ゴム製のものなどを採用することができる。なお、上記動的バネ定数はJIS A 6321で規定されている測定方法に基づいて、正弦波加振法で得られた固有振動数から求められる値である。
【0038】
防振ゴムの形状に制限はないが、防振材に取り付け易いことから、四角柱または円柱が好ましい。その水平断面が正方形や長方形の場合、最大辺の長さは、30〜100mm、好ましくは40〜70mmである。その水平断面が円形の場合、直径の長さは、30〜100mm、好ましくは40〜70mmである。防振ゴムの取り付け方としては、平板部に防振ゴムの水平断面形状の孔を形成し、該孔に防振ゴムを嵌入させる方法が挙げられる。防振材の厚みは、防振床構造における十分な防振材容積および防振のための空間容積を保ち優れた防振性能を発揮させる上で、防振材の全体高さと同様、或いは防振材の全体高さよりも多少厚くすることが好ましく、具体的には25mm以上が好ましい。かかる観点から、より好ましくは30mm以上、さらに好ましくは50mm以上である。該厚みが厚すぎると、一定の大きさの建築物において居住等の空間が狭くなることから、その上限は、好ましくは150mm、さらに好ましくは100mmである。
【0039】
なお、ビル地下駐車場の防振床構造の上にエレベータ設備を設ける場所やマンション個室の防振床構造の上にピアノなどの重量物が載置される場所には多くの防振ゴムを配設できるように、合成樹脂発泡体平板部に防振ゴム用の予備の貫通孔を設けておいてもよい。また、そのような箇所に設置するために特別に多数の防振ゴムを工場で配設したものを出荷してもよい。
【0040】
また、第1の実施形態において、第1種と第2種の発泡体凸部の発泡倍率を同一にせず異なる発泡倍率とすることにより、第1種と第2種の発泡体凸部の圧縮弾性率を変えることにより、異なる周波数帯で振動を吸収させ広い周波数帯で振動吸収の効率を向上させてもよい。また、同様の観点から、第2の実施形態において、第1の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部とこれに固定された第1種の発泡体凸部の発泡倍率と、第2の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部とこれに固定された第2種の発泡体凸部の発泡倍率とを異なるものとしてもよい。
【0041】
本発明の防振材は、住宅の床、精密機器を設置する測定室基礎床、スタジオ等に用いられる床用の防振材;住宅、ビル、スタジオ等に用いられる防振壁面;精密機器等の振動を嫌うもの等の基台等として用いられる除振用の防振材;鉄道、地下鉄等の振動遮断の目的で用いられる振動遮断材;工事車両、機械の振動吸収用等として用いられる仮設防振材等の用途に用いることができ、防振性、遮音性に優れたものであり、特に、防振床用等の構造物用防振材として好適なものである。
【0042】
以上、本発明に係る防振床構造および防振材の好ましい実施形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、さらに種々の変形および変更が可能であることは当然である。
【実施例】
【0043】
上記した本発明の第1と第2の実施形態に係る防振材と、それぞれに対応する従来技術の防振材とを比較する試験等を行った。
【0044】
図7は各試験体の振動伝達率の測定方法を概念的に示した図である。
この方法は、防振ゴムなどの試験に広く使われているものであり、試験体100の上に重量物101を置き、加振装置102で試験体100を加振し、重量物101の振動の振幅を測定するものである。加振装置102の強制加振の振幅a1を入力とし、これに対する出力である重量物101の振幅をa2とするとき、振動が伝わった割合τを振動伝達率といい、次の(1)式で表わされる。
τ=|a2/a1|・・・(1)
また、防振支持をした時の固有振動数をf0、強制加振の振動数をfとするとき、τは次の(2)式で表わされる。
τ=|1/(1−(f/f0)2)|・・・(2)
強制加振の振動数fを変えながら、a1とa2を測定し、(1)式で振動伝達率τを求め、(2)式を用いて固有振動数f0が求まる。
【0045】
図8は、強制加振の振動数fを変えたときの理論に基づく振動伝達率τの変化を示した図である。上記式(2)および図8から分かるように、τはf=f0において発散する。同じことであるが、τの逆数はゼロ点となる。このゼロクロス点から固有周波数f0が求まる。理論により、固有振動数f0ラ√2以上の振動数領域で防振効果があることが分かっている。これ故、固有振動数f0を測定することにより、そのものの防振効果を判定することができる。
上記理論に基づき、幾つかの試験体について次のように試験を行った。
【0046】
全ての試験において、重量物としては25mm厚300ラ300mmの鉄板(荷重:17.6kg)、強制加振は5〜100Hz、0.2Gで行った。試験体は全てポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体(株式会社ジェイエスピー製:ミラブロック26S)で作製した合成樹脂発泡体平板部と種々の形状寸法の合成樹脂発泡体凸部を接着剤で接着して作った。第1〜4の試験においては合成樹脂発泡体平板部は全て同一寸法であり、厚さ25mm、縦横300mmの正方形板体で行なった。また、第5、6の試験においては合成樹脂発泡体平板部は、厚さ25mm、縦横250mmの正方形板体で行なった。図9〜図14は、作製した種々試験体を示した図である。
【0047】
第1の試験は、図9に示した試験体により行なった。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の下板面の四隅と周縁中央および中心に40ラ40mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計9個配設され、その下板面の合成樹脂発泡体凸部が作る正方形の対角線の交点に対応する位置で、合成樹脂発泡体平板部の上板面に60ラ60mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計4個配設されているものである。この試験体において得られた固有振動数f0は8Hzであった。なお、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)は0.32、(s1/s2)は2.3である。
【0048】
第2の試験は、図10に示した試験体で行った。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の上板面と下板面の対応する位置にそれぞれ40ラ40mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部を計9個ずつ配設したものである。この試験体において得られた固有振動数f0は15Hzであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.32、(s1/s2)は1.0である。
【0049】
第1の試験で得られた固有振動数(8Hz)が第2の試験で得られた固有振動数(15Hz)より小さい理由は,次のように説明される。
第1の試験体は、本発明の第1の実施形態に対応する。理解を容易にするために、図9には、図1の部材に対応する部材に同一の参照番号を付した。上の合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)3aと下の合成樹脂発泡体凸部(第2種の脂発泡体凸部)3bが、合成樹脂発泡体平板部2の上板面と下板面において対応しない位置に配設されているので、合成樹脂発泡体平板部2には撓み変形が起こり、固有振動数は低いものとなった。これに対して、第2の試験の比較用試験体では、合成樹脂発泡体凸部の両者が対応する位置に配設されているので、合成樹脂発泡体平板部の撓み変形は起らず、合成樹脂発泡体凸部の圧縮変形のみが起っており、固有振動数は高い。
この第1と第2の試験の対比結果は、本発明の第1の実施形態が、撓み変形により低い振動数域まで防振効果を有することを示している。
【0050】
第3の試験は、図11に示した試験体で行った。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の下板面にそれぞれ合成樹脂発泡体凸部を配設した2枚の合成樹脂発泡体板が重ねられている試験体である。下の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部の下板面の四隅と周縁中央および中心に40ラ40mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計9個配設されている。上の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体平板部の下板面の合成樹脂発泡体凸部は、下の合成樹脂発泡体板の合成樹脂発泡体凸部が作る正方形格子の中心(対角線の交点)に対応する位置に60ラ60mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計4個配設されている。この試験体において得られた固有振動数f0は8Hzであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.32、(s1/s2)は2.3である。
【0051】
第4の試験は、図12に示した試験体で行った。この試験体は、2枚の合成樹脂発泡体板のそれぞれの合成樹脂発泡体平板部の下板面の同一位置に40ラ40mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部を計9個ずつ配設し、その2枚の合成樹脂発泡体板を重ね合わせたものである。この試験体において得られた固有振動数f0は14Hzであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.32、(s1/s2)は1.00である。
【0052】
第3の試験で得られた固有振動数(8Hz)が第4の試験で得られた固有振動数(14Hz)より小さい理由は、第1と第2の試験の結果と同様に、次のように説明される。
第3の試験の試験体は、本発明の第2の実施形形態に対応する。理解を容易にするために、図11において、図3〜図5の部材に対応する部材に同一の参照番号を付した。下の合成樹脂発泡体板11Bについて、その平板部12bの上面に配設されている合成樹脂発泡体凸部(第1種の発泡体凸部)13aと下面に配設されている合成樹脂発泡体凸部(第2種の発泡体凸部)13bが、この合成樹脂発泡体平板部12bの上板面と下板面において平面視で重なり合わない位置に配設されているので、この合成樹脂発泡体平板部12bに撓み変形が起こり、固有振動数は低いものとなった。これに対して、第4の試験の比較用試験体では、合成樹脂発泡体凸部の両者が平面視で重なる位置に配設されているので、合成樹脂発泡体平板部の撓み変形は起らず、合成樹脂発泡体凸部の圧縮変形のみが起っており、固有振動数は高い。
この第3と第4の試験の対比結果は、本発明の第2の実施形態が、撓み変形により低い振動数域まで防振効果を有することを示している。
【0053】
第5の試験は、図13に示した試験体で行った。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の下板面の四隅と周縁中央および中心に底面が50ラ50mm、上面が40ラ40mmの正四角錐台形(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計9個配設され、その下板面の合成樹脂発泡体凸部が作る正方形の対角線の交点に対応する位置で、合成樹脂発泡体平板部の上板面に底面が50ラ50mm、上面が40ラ40mmの正四角錐台形(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計4個配設されているものである。この試験体において得られた固有振動数f0は10Hzであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.28、(s1/s2)は1.0である。
【0054】
第6の試験は、図14に示した試験体で行った。この試験体は、合成樹脂発泡体平板部の下板面の四隅と周縁中央および中心に底面が50ラ50mm、上面が40ラ40mmの正四角錐台形(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計9個配設され、その下板面の合成樹脂発泡体凸部が作る正方形の対角線の交点に対応する位置で、合成樹脂発泡体平板部の上板面に20ラ20mm(厚さ25mm)の合成樹脂発泡体凸部が計4個配設されているものである。この試験体において得られた固有振動数f0は9Hzであったが、振動伝達率曲線において固有振動数f0の高周波数側の17Hz付近に第2のピークが現れるものであった。なお、この試験体における((S1+S2)/S)は0.21、(s1/s2)は0.3である。
【0055】
第5、6の試験で、使用した試験体は、第1種の発泡体凸部3aが平板部2の上板面に配置されている位置と第2種の発泡体凸部3bが平板部2の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように配置された防振材であるため、共に良好な固有振動数を示した。しかしながら、第6の試験において、使用した試験体は(s1/s2)が0.3であったため、第1種の発泡体凸部3aが圧縮による底付きを起こし振動伝達率曲線において固有振動数f0の高周波数側の17Hz付近にピークが現れ防振効果が第5の試験の結果よりも劣るものとなった。この第5と第6の試験の対比結果は、本発明の((S1+S2)/S)の要件を満足するものであっても、(s1/s2)の値が小さすぎたりする場合には、優れた防振効果に差異が生じ悪い影響を与えることがあることを示している。また、第6の試験結果は、第1種の発泡体凸部および/または第2種の発泡体凸部が、顕著な圧縮による底付きを起こすような場合、即ち((S1+S2)/S)の値が小さすぎる場合などは、防振効果が劣るものとなることを示唆している。
【符号の説明】
【0056】
1 防振材
2 合成樹脂発泡体平板部
3a 第1種の発泡体凸部
3b 第2種の発泡体凸部
4 防振ゴム
5a 基礎コンクリート床
5b 浮きコンクリート床
6 合板
10 防振床
11 防振材
11A 第1の合成樹脂発泡体板
11B 第2の合成樹脂発泡体板
12a 合成樹脂発泡体平板部
12b 合成樹脂発泡体平板部
13a 第1種の発泡体凸部
13b 第2種の発泡体凸部
14 防振ゴム
15a 基礎コンクリート床
15b 浮きコンクリート床
20 防振床
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の床基盤と、該床基盤の上に敷設された防振材と、該防振材の上に配置された面材とからなる防振床構造であって、上記防振材が、少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部を備え、上記複数の合成樹脂発泡体凸部は上記平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される第1種の発泡体凸部と上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される第2種の発泡体凸部とにより構成され、上記第1種の発泡体凸部が上記平板部の上板面に配置されている位置と上記第2種の発泡体凸部が上記平板部の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように、上記合成樹脂発泡体凸部が上記平板部の板面に配設されており、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、かつs1とs2との比(s1/s2)が0.3〜3.5であることを特徴とする、防振床構造。
【請求項2】
上記合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される上記第1種の発泡体凸部が正方形格子点を形成するように配設され、上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される上記第2種の発泡体凸部が上記正方形の対角線の交点の位置に配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の防振床構造。
【請求項3】
上記合成樹脂発泡体平板部の適所に、該平板部を貫通した状態で防振ゴムが取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防振床構造。
【請求項4】
上記合成樹脂発泡体平板部と上記第1種および第2種の発泡体凸部とが、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子型内成形体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の防振床構造。
【請求項5】
上記合成樹脂発泡体平板部と上記第1種および第2種の発泡体凸部とが、架橋ポリエチレン系樹脂発泡粒子型内成形体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の防振床構造。
【請求項6】
少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部を備え、上記複数の合成樹脂発泡体凸部は上記平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される第1種の発泡体凸部と上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される第2種の発泡体凸部とにより構成され、上記第1種の発泡体凸部が上記平板部の上板面に配置されている位置と上記第2種の発泡体凸部が上記平板部の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように、上記合成樹脂発泡体凸部が上記平板部の板面に配設されており、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、かつs1とs2との比(s1/s2)が0.75〜1.25であることを特徴とする、防振材。
【請求項7】
上記合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される上記第1種の発泡体凸部が正方形格子点を形成するように配設され、上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される上記第2種の発泡体凸部が上記正方形の対角線の交点の位置に配設されていることを特徴とする、請求項6に記載の防振材。
【請求項1】
構造物の床基盤と、該床基盤の上に敷設された防振材と、該防振材の上に配置された面材とからなる防振床構造であって、上記防振材が、少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部を備え、上記複数の合成樹脂発泡体凸部は上記平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される第1種の発泡体凸部と上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される第2種の発泡体凸部とにより構成され、上記第1種の発泡体凸部が上記平板部の上板面に配置されている位置と上記第2種の発泡体凸部が上記平板部の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように、上記合成樹脂発泡体凸部が上記平板部の板面に配設されており、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、かつs1とs2との比(s1/s2)が0.3〜3.5であることを特徴とする、防振床構造。
【請求項2】
上記合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される上記第1種の発泡体凸部が正方形格子点を形成するように配設され、上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される上記第2種の発泡体凸部が上記正方形の対角線の交点の位置に配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の防振床構造。
【請求項3】
上記合成樹脂発泡体平板部の適所に、該平板部を貫通した状態で防振ゴムが取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の防振床構造。
【請求項4】
上記合成樹脂発泡体平板部と上記第1種および第2種の発泡体凸部とが、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子型内成形体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の防振床構造。
【請求項5】
上記合成樹脂発泡体平板部と上記第1種および第2種の発泡体凸部とが、架橋ポリエチレン系樹脂発泡粒子型内成形体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の防振床構造。
【請求項6】
少なくとも一枚の合成樹脂発泡体平板部と、該平板部の板面に配設される複数の合成樹脂発泡体凸部を備え、上記複数の合成樹脂発泡体凸部は上記平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される第1種の発泡体凸部と上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される第2種の発泡体凸部とにより構成され、上記第1種の発泡体凸部が上記平板部の上板面に配置されている位置と上記第2種の発泡体凸部が上記平板部の下板面に配置されている位置とが平面視で重ならないように、上記合成樹脂発泡体凸部が上記平板部の板面に配設されており、上記合成樹脂発泡体平板部の板面の面積Sに対する、該平板部の上板面に配置される第1種の発泡体凸部の凸部上面の面積s1の合計面積S1と該平板部の下板面に配置される第2種の発泡体凸部の凸部上面の面積s2の合計面積S2との合計面積の割合((S1+S2)/S)が0.15以上であり、かつs1とs2との比(s1/s2)が0.75〜1.25であることを特徴とする、防振材。
【請求項7】
上記合成樹脂発泡体平板部の上板面に当接或いは固定されて配置される上記第1種の発泡体凸部が正方形格子点を形成するように配設され、上記平板部の下板面に当接或いは固定されて配置される上記第2種の発泡体凸部が上記正方形の対角線の交点の位置に配設されていることを特徴とする、請求項6に記載の防振材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−36211(P2013−36211A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172407(P2011−172407)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】
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