説明

防振装置

【課題】取付金具のプレート部を折り曲げることで、振動受側の部材に組み付けるタイプの防振装置において、ゴム弾性体の折曲げ角に亀裂が生じるのを抑える。
【解決手段】エンジン側に取り付けられる第1取付金具3と、車体側に取り付けられる第2取付金具5と、これらを連結するゴム弾性体7と、を備えるエンジンマウント1である。第2取付金具5は、プレート部25と当該プレート部25から上方に突出する突出部15とを有していて、突出部15の付け根部15aで、プレート部25を折り曲げることにより、取付ブラケットの下側梁部に固定されるようになっている。ゴム弾性体7は、突出部15及びプレート部25を覆うように第2取付金具5に接着され、且つ、ゴム弾性体7には、プレート部25を折り曲げた際に当該プレート部25の折曲げ縁部に位置する付け根部15aに対応する部位に、窪み部37が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動源側に取り付けられる取付金具と、振動受側に取り付けられる取付金具と、これらの取付金具を連結するゴム弾性体と、を備える防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の防振装置を振動受側へ取り付ける場合には、取付金具に形成された取付脚部を振動受側の部材に直接ボルト締結したり、振動受側に固定されるブラケットに当該取付金具を取り付けたりすることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、固定側(振動受側)に取り付けられるブラケットに設けられた係合部に対し、防振部材の取付金具の一部をなすプレート片を当該係合部の断面形状に沿って折り曲げることで、防振部材をブラケットに組み付けるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−290999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、防振部材(防振装置)の取付金具の一部をなすプレート片(プレート部)を、ブラケットに設けられた係合部の断面形状に沿って折り曲げることで、防振部材をブラケットに組み付ける場合には、以下のような問題がある。
【0006】
すなわち、図8(a)に示すような防振装置101では、ゴム弾性体107は、振動源側に取り付けられる略筒状の取付金具103の内周面及び振動受側に取り付けられる取付金具105の突出部115のみならず、取付金具105の錆止めのために当該取付金具105のプレート部125をも覆っていることが多い。そうして、ゴム弾性体107で覆われているプレート部125を、図8(b)に示すように、突出部115の付け根部115aで係合部111d側に折り曲げることにより、防振装置101をブラケット111に組み付けると、ゴム弾性体107における折曲げ部(図9(b)の符号127dで示す部分)に応力が残留することになる。このように折曲げ部127dに応力が残留した状態で、図9(a)に示すように、防振装置101に荷重が入力してゴム弾性体が上方(白抜き矢印の方向)に引っ張られると、応力が残留した折曲げ部127dに引張力が作用することで引張応力が重畳的に発生し、換言すると、折曲げ部127dに大きな応力が生じ、ここを起点としてゴム弾性体107に亀裂が生じるおそれがある。
【0007】
このような問題を解決するために、例えば、取付金具105の突出部115のみを覆うように、ゴム弾性体107を取付金具105に接着することも考えられるが、ゴム弾性体107を金型内で加硫成形する際にプレート部125にゴムがまわらないようにするのは難しい上、プレート部125に対し別途錆止め塗装等が必要となり、工数及び工費が増大するという新たな問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、取付金具のプレート部を折り曲げることで、振動受側の部材に組み付けるタイプの防振装置において、ゴム弾性体の折曲げ角(かど)に亀裂が生じるのを抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る防振装置では、ゴム弾性体における、プレート部を曲げることによって応力が残留している部位(折曲げ角)に、防振装置に荷重が入力してゴム弾性体が上方に引っ張られたときに、引張応力が重畳的に発生するのを抑えるべく、かかる折曲げ角近傍のゴム弾性体の形状を、引張力を伝え難い形状としている。
【0010】
具体的には、第1の発明は、振動源側に取り付けられる第1取付金具と、振動受側に取り付けられる第2取付金具と、当該第1取付金具と当該第2取付金具とを連結するゴム弾性体と、を備える防振装置を対象とする。
【0011】
そして、上記第2取付金具は、プレート部と当該プレート部から上記第1取付金具に向かって突出する突出部とを有していて、当該突出部の付け根部で、当該プレート部を上記第1取付金具とは反対側に折り曲げることにより、上記振動受側の部材に固定されるようになっており、上記ゴム弾性体は、上記突出部及び上記プレート部を覆うように上記第2取付金具に接着され、且つ、上記ゴム弾性体には、上記プレート部を折り曲げた際に当該プレート部の折曲げ縁部に位置する上記付け根部に対応する部位に、窪み部が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明によれば、ゴム弾性体には、プレート部を折り曲げた際に当該プレート部の折曲げ縁部に位置する突出部の付け根部に対応する部位に、窪み部が形成されていることから、換言すると、かかる部位のゴムの厚さが薄くなっていることから、防振装置に荷重が入力してゴム弾性体が上方に引っ張られても、ゴムの厚さが薄くなっている部位で引張力の伝達が抑えられる。これにより、ゴム弾性体における、プレート部を曲げることによって応力が残留している部位(折曲げ角)に、引張応力が重畳的に発生するのを、換言すれば、大きな応力が発生するのを抑制して、ゴム弾性体の折曲げ角に亀裂が生じるのを抑えることができる。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記窪み部は、上記ゴム弾性体における、上記プレート部を折り曲げた際に当該プレート部の折曲げ縁部に位置する上記付け根部に対応する部位にのみ形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
ここで、たとえプレート部を曲げることによってゴム弾性体の折曲げ角に応力が残留していても、突出部の付け根部から離れた折曲げ角では、ゴム弾性体が上方に引っ張られても大きな引張応力が発生し難い。それ故、プレート部を折り曲げた際にプレート部の折曲げ縁部に位置する突出部の付け根部に対応する部位にのみ窪み部を形成している第2の発明によれば、例えば突出部の付け根部を全周に亘って窪ます場合に比して、効率良く引張応力の発生を抑えることができる。また、第2の発明によれば、金型内でゴム弾性体を加硫成形する際に、ゴムの流れを阻害する部分が少ないので、錆止めとしてのゴムをプレート部全体に行き渡らせることができる。
【0015】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記振動源はエンジンである一方、上記振動受は車体であり、上記振動受側の部材は、車体に取り付けられる取付ブラケットの、略水平方向に延びる断面略矩形状の梁部であり、上記第1取付金具は、上記第2取付金具の上方に位置しており、上記プレート部は略矩形状に形成されている一方、上記突出部は当該プレート部の中央部を上方に膨出させた有頂円筒状に形成されており、上記第2取付金具は、上記突出部が上記梁部材の上面に載り、且つ、上記プレート部の長手方向が上記梁部材の延びる方向と交差した状態から、当該梁部をくるむように当該プレート部を折り曲げることにより、当該梁部にかしめ固定されるようになっていることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明によれば、第1の発明をエンジンマウントに好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る防振装置によれば、ゴム弾性体には、プレート部を折り曲げた際に当該プレート部の折曲げ縁部に位置する突出部の付け根部に対応する部位に、窪み部が形成されていることから、防振装置に荷重が入力してゴム弾性体が上方に引っ張られたときに当該ゴム弾性体に作用する引張力が、プレート部を曲げることによって応力が残留している当該ゴム弾性体の折曲げ角に、伝達するのを抑えて、ゴム弾性体に亀裂が生じるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンマウントを示す斜視図である。
【図2】エンジンマウントを取付ブラケットを介して車体に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】エンジンマウントの断面図であり、同図(a)は全体図であり、同図(b)は同図(a)のA部の拡大図である。
【図4】エンジンマウントを取付ブラケットに取り付けた状態を示す断面図であり、同図(a)は全体図であり、同図(b)は同図(a)のA部の拡大図である。
【図5】図4のV−V線の矢視断面図である。
【図6】防振装置に荷重が入力してゴム弾性体が上方に引っ張られた状態におけるエンジンマウントの断面図であり、同図(a)は全体図であり、同図(b)は同図(a)のA部の拡大図である。
【図7】その他の実施形態に係るエンジンマウントの断面図であり、同図(a)は全体図であり、同図(b)はエンジンマウントを取付ブラケットに取り付けた状態を示す図である。
【図8】従来のエンジンマウントの断面図であり、同図(a)は全体図であり、同図(b)はエンジンマウントを取付ブラケットに取り付けた状態を示す図である。
【図9】防振装置に荷重が入力してゴム弾性体が上方に引っ張られた状態における従来のエンジンマウントの断面図であり、同図(a)は全体図であり、同図(b)は同図(a)のA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図1、図3、図4、図6及び図7においては、図を見易くするために、エンジンマウント1のうち第1取付金具3、第2取付金具5、ゴム弾性体7及びストッパゴム19のみを示す。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンマウントを示す斜視図である。このエンジンマウント(防振装置)1は、振動源側(本実施形態ではエンジン21側)に取り付けられる第1取付金具3と、振動受側(本実施形態では車体31,41側)に取り付けられる第2取付金具5と、当該第1取付金具3と当該第2取付金具5とを連結するゴム弾性体7と、オリフィス盤(図示せず)と、ダイヤフラム9(図2参照)と、当該第1取付金具3に装着された一対のストッパゴム19と、を備えた液体封入式エンジンマウントである。
【0021】
このエンジンマウント1は、図2に示すように、第1取付金具3がエンジン21に取り付けられる一方、第2取付金具5が、車体に設けられた車両前後方向に延びるサイドフレーム31及びタイヤハウス41に取り付けられる取付ブラケット11に取り付けられることで車体側に取り付けられるようになっている。
【0022】
取付ブラケット11は、アルミダイキャスト製であり、各々上下方向に延びる一対の脚部11a,11bと、これら一対の脚部11a,11bの上端部を連結する上側梁部11cと、これら一対の脚部11a,11bの中央部を連結する、略水平方向に延びる断面略矩形状の下側梁部11dと、を備えている。そうして一方(図2の左側)の脚部11aの下端部には、当該脚部11aをサイドフレーム31に取り付けるための第1締結部11eが設けられている一方、他方(図2の右側)の脚部11bの下端部には、当該脚部11bをサイドフレーム31に取り付けるための第2締結部11fが設けられている。また、脚部11bの上端部には、当該脚部11bをタイヤハウス41に取り付けるための第3締結部11gが設けられている。
【0023】
これら第1及び第2締結部11e,11fには、それぞれ上下方向に延びるボルト孔11h,11iが形成されている一方、第3締結部11gには、斜め下方に延びるボルト孔11jが形成されており、これらのボルト孔11h,11i,11jに挿通された不図示のボルトによって、取付ブラケット11は車体31,41に固定されるようになっている。
【0024】
上記第1取付金具3は、図3に示すように、第2取付金具5の上方に位置していて、略円筒状の金具本体部13と、当該金具本体部13の外側に形成された取付部23とからなり、当該取付部23に貫通形成された3つのボルト孔23aに挿通される不図示のボルトによってエンジン21に取り付けられるようになっている。
【0025】
第2取付金具5は、略矩形状の金属板がL字状に折り曲げられたプレート部25と、当該プレート部25の中央部を上方に(第1取付金具3に向かって)膨出させた、有頂円筒状の突出部15とを有している。
【0026】
ゴム弾性体7は、不図示の金型内で第1取付金具3と第2取付金具5と一体加硫成形されるものであり、ゴム本体部17と薄膜部27とを有している。ゴム本体部17は、図3(a)に示すように、その下部に下方に向かって開口する下側凹部17bが形成されていて、この下側凹部17bの内周面が突出部15を覆うように第2取付金具5に加硫接着されているとともに、かかる突出部15の全周から斜め上方に向って延びて、金具本体部13の内周面の略下半分を覆うように第1取付金具3に加硫接着されている。これにより、ゴム弾性体7は、上方に向かって開口しているすり鉢状の上側凹部17cがその上部に形成された略逆円錐台状に形成されている。一方、薄膜部27は、ゴム本体部17の下端部と一体形成され且つ約1mmの厚さを有していて、プレート部25のほぼ全面及び突出部15の内周面を覆っており、第2取付金具5の錆止めとしての役割を果たしている。
【0027】
このように、第1取付金具3と第2取付金具5とをゴム弾性体7で連結した後(ゴム弾性体7を、金型内で第1取付金具3と第2取付金具5と一体加硫成形した後)、不図示のオリフィス盤やダイヤフラム9等を、第1取付金具3の金具本体部13の内周側に嵌め、すり鉢状に形成された上側凹部17cとダイヤフラム9とによって囲まれた空間に非圧縮性流体を封入することで、液体封入式エンジンマウント1が構成される。
【0028】
そうして、液体封入式エンジンマウント1は、図4(a)に示すように、第2取付金具5のL字状の折曲げ部25aを下側梁部11dの角に当てて位置決めした後、突出部15の付け根部15aで、プレート部25を下側(第1取付金具3とは反対側)に折り曲げるとともに、当該プレート部25を下側梁部11dの断面形状に沿って折り曲げることにより、下側梁部11dに固定されるようになっている。換言すると、第2取付金具5は、突出部15が下側梁部11dの上面に載り、且つ、プレート部25の長手方向が下側梁部11dの延びる方向と交差した状態から、当該下側梁部11dをくるむようにプレート部25を折り曲げることにより、下側梁部11dにかしめ固定されるようになっている。なお、「突出部の付け根部」とは、プレート部25から突出部15が立ち上がる際(きわ)の部分を意味する。
【0029】
これにより、このエンジンマウント1では、例えば自動車が停止していてエンジン21がアイドル運転状態にあるときには、トルク変動等に起因する低周波のアイドル振動がゴム弾性体7により吸収され、車体への振動伝達が抑制される。一方、例えば自動車の急加速時のように大きな駆動反力(トルク)が作用してエンジン21が前後に揺れようとすると、一対のストッパゴム19が取付ブラケット11の脚部11a,11bに当接することにより、ゴム弾性体7の前後の変形が制限されるとともに、エンジン21が上下に揺れようとすると、一対のストッパゴム19が取付ブラケット11の上側梁部11cに当接することにより、ゴム弾性体7の上下の変形が制限されるようになっている。
【0030】
ところで、本実施形態では、上述の如く、第2取付金具5のプレート部25を、突出部15の付け根部15aで下側に折り曲げることで、エンジンマウント1を取付ブラケット11に組み付けるところ、このような組付構造には、以下のような問題がある。すなわち、図4(a)に示すプレート部25の4つの折曲げ部のうち、図の右上の折曲げ部25aでは、予め折り曲げられた部位に対して薄膜部27が被覆されるのでゴムの角部27aには、プレート部25を折り曲げることによる応力が生じない。また、図の右下及び左下の折曲げ部25b,25cでは、薄膜部27が被覆された後プレート部25が折り曲げられるので、ゴムの折曲げ角部27b,27cにはプレート部25を折り曲げることによって応力が残留するが、これらの折曲げ角部27b,27cは、ゴム本体部17の下端部から離れた位置にあることから、ゴム本体部17が変形しても、ほとんど影響を受けない。
【0031】
これに対し、図の左上の折曲げ部25dでは、薄膜部27が被覆された後プレート部25が折り曲げられるので、ゴム本体部17における付け根部15aに近い折曲げ角部27d(以下、単に「折曲げ角部27d」という)には、プレート部25を折り曲げることによって応力が残留するとともに、ゴム本体部17の下端部から近い位置にあることから、エンジンマウント1に荷重が入力してゴム本体部17が上方に引っ張られると、応力が残留している折曲げ角部27dに、引張力が伝達された引張応力が重畳的に発生し、ここを起点としてゴム弾性体7に亀裂が生じるおそれがある。
【0032】
そこで、本実施形態のエンジンマウント1では、図1、図3(b)及び図5に示すように、ゴム弾性体7における、プレート部25を折り曲げた際に当該プレート部25の折曲げ縁部25eに位置する付け根部15aに対応する部位27eにのみ、窪み部37を形成するようにしている。換言すると、このエンジンマウント1では、第2取付金具5の環状の付け根部15aのうち、プレート部25を折り曲げた際に当該プレート部25の折曲げ縁部25eに近い部位、を覆っているゴム本体部17にのみ窪み部37が形成されている。
【0033】
このように、窪み部37を形成することにより、図4(b)に示すように、ゴム弾性体7における、プレート部25を折り曲げることによって応力が残留している折曲げ角部27dと、ゴム本体部17との間に薄肉部が形成されることから、図6(a)に示すように、エンジンマウント1に荷重が入力してゴム本体部17が上方に引っ張られた場合でも、図4(b)と図6(b)とを見比べれば明らかなように、窪み部37よりも下の部分には引張力が伝わらず、折曲げ角部27dに引張応力が発生するのを抑えることができる。したがって、ゴム弾性体7において残留応力と引張応力とを分断して、ゴム弾性体7の折曲げ角に亀裂が生じるのを抑えることができる。
【0034】
また、かかる窪み部37による引張応力の発生を抑える効果を確認すべく、プレート部25の折曲げ縁部25eに位置する付け根部15aに対応する部位27eに窪み部37を形成したエンジンマウント1(本発明例)と、窪み部37が形成されていないこと以外は本発明例と全く同じ構成のエンジンマウント(比較例)とを対象として、引張試験のシミュレーションを行ったところ、本発明例における折曲げ角部27dに発生する応力は、比較例における同じ部位に発生する応力の約64%まで低減されることが確認された。
【0035】
なお、窪み部37は、例えば、金型における窪み部37に対応する部位を、第2取付金具5の付け根部15aに向かって突出させることで、容易に形成することができる。このように、金型における窪み部37に対応する部位を突出させると、かかる部位では金型と第2取付金具5との間の隙間が狭くなり、射出されたゴム材料がプレート部25に行き渡り難くなるが、本実施形態では、プレート部25を折り曲げた際に当該プレート部25の折曲げ縁部25eに位置する付け根部15aに対応する部位27eにのみ窪み部37を形成するので、錆止めとしての薄膜部27をプレート部25全体に行き渡らせることができる。
【0036】
−効果−
本実施形態によれば、ゴム弾性体7はプレート部25を折り曲げた際に当該プレート部25の折曲げ縁部25eに位置する突出部15の付け根部15aに対応する部位27eに窪み部37が形成されていることから、換言すると、かかる部位のゴムの厚さが薄くなっていることから、液体封入式エンジンマウント1に荷重が入力してゴム本体部17が上方に引っ張られても、ゴム弾性体7における、プレート部25を曲げることによって応力が残留している部位(折曲げ角部27d)に引張応力が発生するのを抑えることができる。これにより、残留応力と引張応力とを分断して、ゴム弾性体7の折曲げ角部27dに亀裂が生じるのを抑えることができる。
【0037】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0038】
上記実施形態では、防振装置をエンジンマウント1として用いたが、これに限らず、突出部15の付け根部15aでプレート部25を折り曲げることにより、防振装置を対象部材に固定するのであれば、他の用途に用いてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、エンジンマウント1を液体封入式エンジンマウントとしたが、これに限らず、例えば、第1取付金具3と、第2取付金具5と、ゴム弾性体7と、ストッパゴム19とを備える、液体を封入していない防振装置としてもよい。
【0040】
さらに、上記実施形態では、プレート部25をL字状に形成したが、これに限らず、例えば、図7に示すように、プレート部25をフラットに形成し、突出部15を挟んだ長手方向両側を折り曲げて、下側梁部11dにかしめ固定してもよい。なお、この場合には、図7に示すように、左右両側の折曲げ縁部25eに位置する突出部15の付け根部15aに対応する部位に窪み部37を形成する必要がある。
【0041】
また、上記実施形態では、突出部15を有頂円筒状に形成したが、これに限らず、突出部15を有頂角筒状、角柱状、円柱状に形成してもよい。
【0042】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、取付金具のプレート部を折り曲げることで、振動受側の部材に組み付けるタイプの防振装置等について有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 液体封入式エンジンマウント(防振装置)
3 第1取付金具
5 第2取付金具
7 ゴム弾性体
11 取付ブラケット
11d 下側梁部(梁部材(振動受側の部材))
15 突出部
15a 付け根部
21 エンジン(振動源)
25 プレート部
25e 折曲げ縁部
31 サイドフレーム(振動受)
37 窪み部
41 タイヤハウス(振動受)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源側に取り付けられる第1取付金具と、振動受側に取り付けられる第2取付金具と、当該第1取付金具と当該第2取付金具とを連結するゴム弾性体と、を備える防振装置であって、
上記第2取付金具は、プレート部と当該プレート部から上記第1取付金具に向かって突出する突出部とを有していて、当該突出部の付け根部で、当該プレート部を上記第1取付金具とは反対側に折り曲げることにより、上記振動受側の部材に固定されるようになっており、
上記ゴム弾性体は、上記突出部及び上記プレート部を覆うように上記第2取付金具に接着され、且つ、上記ゴム弾性体には、上記プレート部を折り曲げた際に当該プレート部の折曲げ縁部に位置する上記付け根部に対応する部位に、窪み部が形成されていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
請求項1記載の防振装置において、
上記窪み部は、上記ゴム弾性体における、上記プレート部を折り曲げた際に当該プレート部の折曲げ縁部に位置する上記付け根部に対応する部位にのみ形成されていることを特徴とする防振装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防振装置において、
上記振動源はエンジンである一方、上記振動受は車体であり、
上記振動受側の部材は、車体に取り付けられる取付ブラケットの、略水平方向に延びる断面略矩形状の梁部であり、
上記第1取付金具は、上記第2取付金具の上方に位置しており、
上記プレート部は略矩形状に形成されている一方、上記突出部は当該プレート部の中央部を上方に膨出させた有頂円筒状に形成されており、
上記第2取付金具は、上記突出部が上記梁部材の上面に載り、且つ、上記プレート部の長手方向が上記梁部材の延びる方向と交差した状態から、当該梁部をくるむように当該プレート部を折り曲げることにより、当該梁部にかしめ固定されるようになっていることを特徴とする防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−108522(P2013−108522A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251851(P2011−251851)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】